特許第6790687号(P6790687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790687
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20201116BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20201116BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F28F1/32 D
   F28F1/02 B
   F28D1/053 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-194236(P2016-194236)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54269(P2018-54269A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥野 文
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 俊
(72)【発明者】
【氏名】藤野 宏和
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第01213819(GB,A)
【文献】 特開2011−127867(JP,A)
【文献】 特開2011−220554(JP,A)
【文献】 特開2001−221587(JP,A)
【文献】 特開2010−286187(JP,A)
【文献】 特開2015−132466(JP,A)
【文献】 特開2013−113486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28D 1/053
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠き(21)を有する本体(22)及び前記切欠きの周囲に配置されて前記本体から立ち上がる立上部(23,23A,23B,23C)を有するアルミニウム製フィン(20,20A,20B,20C)と、
前記立上部と対向するように前記切欠きに嵌めこまれて、管軸方向に沿って冷媒の流れる複数の穴が形成されたアルミニウム製多穴管(30)と、
前記立上部と前記アルミニウム製多穴管とを接着する熱硬化性樹脂(41)を含む接着膜(40)と
を備え、
前記立上部は、前記アルミニウム製多穴管の管軸方向に沿う断面表面において前記アルミニウム製多穴管と最も接近する最近接点を有し、前記最近接点の両側の前記断面表面が互いに反対向きに傾き、前記最近接点が前記立上部の高さ寸法の2分の1の中間点よりも前記本体に近い位置に形成され、
前記立上部及び前記立上部近傍の前記本体の前記断面表面がJ字形である、熱交換器。
【請求項2】
前記接着膜は、前記管軸方向において、前記立上部と前記アルミニウム製多穴管との間の隙間が最小となる前記立上部の高さ寸法の2分の1の部位の平均膜厚が0.03mm以上0.05mm以下である、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記接着膜は、前記最近接点での膜厚が0.02mm以下である、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記アルミニウム製フィン(20,20A)は、厚さが0.08mm以上0.12mm以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記接着膜は、前記樹脂よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラー(42)を含む高熱伝導性接着剤によって形成された膜である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記立上部の先端部(23a)の高さが、前記接着膜40の最も高い位置の高さよりも高いことを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、特に冷媒の熱交換にアルミニウム製多穴管及びアルミニウム製フィンが用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ空調機などに用いられる熱交換器の中には、管軸方向に延びる冷媒流路が複数設けられたアルミニウム製扁平多穴管と、その扁平多穴管の管軸方向に並べて多数配置される差込式アルミニウム製フィンとを備えるものがある。このような熱交換器では、アルミニウム製フィンの間を通過する空気と、アルミニウム製扁平多穴管の中を通過する冷媒との間で熱交換が行われる。このような熱交換器において冷媒と空気との間で効率よく熱交換させるためには、アルミニウム製扁平多穴管とアルミニウム製フィンとの間の熱抵抗を小さくすることが考えられる。そのために、アルミニウム製扁平多穴管とアルミニウム製フィンとを熱抵抗の小さな金属製のロウ材で接着することが行われている。
【0003】
しかし、ロウ材で接着するためにはロウ材を融かすために高温にしなければならず、高温に曝されたアルミニウム製扁平多穴管及びアルミニウム製フィン並びにそれらのコーティング層は劣化する。そこで、例えば特許文献1(特許第5140051号公報)に記載されているように、ロウ付けを、接着剤を使った接合に置き換えることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロウ材に比べて接着剤の熱伝導率が悪いため、特許文献1に記載されているような接着の仕方では、アルミニウム製扁平多穴管とアルミニウム製フィンとの間の熱抵抗が大きくなり、熱伝達効率が著しく低下する。
【0005】
本発明の課題は、樹脂を含む接着膜により立上部とアルミニウム製多穴管とが接着されている熱交換器において効率良く熱を伝えることのできる熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る熱交換器は、切欠きを有する本体及び切欠きの周囲に配置されて本体から立ち上がる立上部を有するアルミニウム製フィンと、立上部と対向するように切欠きに嵌めこまれて、管軸方向に沿って冷媒の流れる複数の穴が形成されたアルミニウム製多穴管と、立上部とアルミニウム製多穴管とを接着する樹脂を含む接着膜とを備え、立上部は、アルミニウム製多穴管の管軸方向に沿う断面表面においてアルミニウム製多穴管と最も接近する最近接点を有し、最近接点の両側の断面表面が互いに反対向きに傾き、最近接点が立上部の高さ寸法の2分の1の中間点よりも本体に近い位置に形成されている。
【0007】
本発明の第1観点に係る熱交換器においては、立上部とアルミニウム製多穴管とが樹脂を含む接着膜で接着されていることからロウ材で接着される場合に比べて接着膜の熱抵抗が大きくなる。立上部がアルミニウム製多穴管に最も接近する最近接点が設けられることで、接着膜を形成するための接着剤が立上部の最近接点の近傍で押し退けられて接着膜が最も薄くなる部分ができて最近接点の近傍において熱抵抗を小さくすることができる。その最近接点が立上部の高さ寸法の2分の1の中間点よりも本体に近い位置に形成されていることにより、本体と立上部との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る熱交換器は、第1観点の熱交換器において、接着膜は、管軸方向において、立上部とアルミニウム製多穴管との間の隙間が最小となる立上部の高さ寸法の2分の1の部位の平均膜厚が0.03mm以上0.05mm以下である、ものである。
【0009】
本発明の第2観点に係る熱交換器においては、平均膜厚を薄くしすぎると接着剤によって立上部とアルミニウム製多穴管を接着できない部分が大きくなり、平均膜厚を厚くしすぎると熱抵抗が大きくなってしまうが、立上部とアルミニウム製多穴管との間の隙間が最小となる立上部の高さ寸法の2分の1の部位の平均膜厚を0.03mm以上0.05mm以下にすることで、接着できない部分を減らしつつ立上部の高さ寸法の2分の1の部位の平均膜厚を薄く抑えることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る熱交換器は、本発明の第2観点の熱交換器において、接着膜は、最近接点での膜厚が0.02mm以下である、ものである。
【0011】
本発明の第3観点に係る熱交換器においては、最近接点での膜厚が0.02mm以下であるので、最近接点近傍の接着膜の膜厚をその周囲より十分に小さくすることができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る熱交換器は、第1観点から第3観点のいずれかの熱交換器において、アルミニウム製フィンは、厚さが0.08mm以上0.12mm以下であり、立上部及び立上部近傍の本体の断面表面がJ字形である、ものである。
【0013】
本発明の第4観点に係る熱交換器においては、アルミニウム製フィンの厚さが0.08mm以上0.12mm以下であり、立上部及び立上部近傍の本体の断面表面がJ字形であるので、アルミニウム製フィンが薄すぎてアルミニウム製フィンの強度が弱くなりすぎたり熱抵抗が大きくなったりすることはなく、またアルミニウム製フィンが厚すぎて断面表面の形状がJ字形になるように加工するのが難しすぎることもない。
【0014】
本発明の第5観点に係る熱交換器は、第1観点から第4観点のいずれかの熱交換器において、接着膜は、樹脂よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラーを含む高熱伝導性接着剤によって形成された膜である。
【0015】
本発明の第5観点に係る熱交換器においては、樹脂よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラーによって、接着膜の中に熱伝導性フィラーを通る熱抵抗の低い部分が形成され、特に樹脂が押し退けられる最近接点の近傍に熱伝導性フィラーによる熱抵抗の低い部分が形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る熱交換器では、樹脂を含む接着膜により立上部とアルミニウム製多穴管とを接着している熱交換器において効率良く熱を伝えることができる。
【0017】
本発明の第2観点に係る熱交換器では、安定して接着強度を確保しつつ低い熱抵抗を得ることができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る熱交換器では、本体に近い最近接点近傍の熱抵抗を小さくすることができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る熱交換器では、最近接点が高さ寸法の2分の1の中間点よりも本体に近い位置に形成されている立上部を、熱抵抗の増加を抑えながら容易に実現できる。
【0020】
本発明の第5観点に係る熱交換器では、熱伝導性フィラーによって最近接点近傍の熱抵抗を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器の斜視図。
図2】アルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの一部を拡大した部分拡大断面図。
図3】アルミニウム製扁平多穴管とアルミニウム製フィンの組み立て状態を示す断面図。
図4図2のI−I線に沿ったアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの部分拡大断面図。
図5図4のアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンをさらに拡大した部分拡大断面図。
図6】接着膜が薄い場合のアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの部分拡大平面図。
図7】変形例Aに係るアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの部分拡大断面図。
図8】変形例Bに係るアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの一例を示す部分拡大断面図。
図9】変形例Bに係るアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの他の例を示す部分拡大断面図。
図10】本発明の熱交換器の効果を説明するためのアルミニウム製扁平多穴管と接着膜とアルミニウム製フィンの比較例を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)熱交換器の概要
図1には、本発明の一実施形態に係る熱交換器の概要が示されている。熱交換器10は、矢印AFで概念的に示された空気流が通過する複数のアルミニウム製フィン20と、複数のアルミニウム製フィン20に対して直交するように嵌め込まれた複数のアルミニウム製扁平多穴管30と、複数のアルミニウム製扁平多穴管30の両端部に配置されてアルミニウム製扁平多穴管30に接続されたアルミニウム製第1ヘッダ集合管11及びアルミニウム製第2ヘッダ集合管12とを備えている。
【0023】
複数のアルミニウム製フィン20の間を通る空気は、アルミニウム製扁平多穴管30の中を流れる冷媒と熱交換する。複数のアルミニウム製扁平多穴管30の中を流れる冷媒は、アルミニウム製第1ヘッダ集合管11とアルミニウム製第2ヘッダ集合管12で合流と分配とが行われる。
【0024】
(1−1)アルミニウム製扁平多穴管30の構成
図2に示されているように、1つのアルミニウム製扁平多穴管30の中には、複数の穴31が形成されている。図2に示されたアルミニウム製扁平多穴管30においては、それぞれ10個の穴31が形成されている。冷媒の流路である複数の穴31は、アルミニウム製扁平多穴管30の管軸方向(図1に矢印Ar1で示された方向)に沿って第1ヘッダ集合管11から第2ヘッダ集合管12に延びている。つまり、図2には、管軸方向にアルミニウム製扁平多穴管30の断面が示されている。アルミニウム製扁平多穴管30は、管軸方向に垂直に切断した断面表面において、空気の流れる方向(図2の矢印Ar2の方向)に長く延びている。この矢印Ar2の方向を幅方向と呼び、矢印Ar2に対して垂直な矢印Ar3の方向を厚み方向と呼ぶ。複数の穴31は、幅方向に沿って一列に並んでいる。アルミニウム製扁平多穴管30の外表面においては、幅方向と管軸方向に実質的な平面領域が広がっている。1つのアルミニウム製扁平多穴管30において、2つの平面領域に接着膜40が形成されている。アルミニウム製扁平多穴管30は、接着膜40によってアルミニウム製フィン20と接着されている。従って、アルミニウム製扁平多穴管30は、接着膜40を介してアルミニウム製フィン20と熱的に接続されている。
【0025】
(1−2)アルミニウム製フィン20の構成
図3には、アルミニウム製扁平多穴管30をアルミニウム製フィン20に差し込んでいる途中の状態が示されている。アルミニウム製フィン20には、熱交換器10の組み立て時に、硬化して接着膜40を形成する前の接着剤90が塗布されたアルミニウム製扁平多穴管30が差し込まれる切欠き21が形成されている。切欠き21の短手方向の長さL1は、例えば、アルミニウム製扁平多穴管30の厚み方向の長さL2と同程度に設定される。例えば、L1≦L2で設計される。
【0026】
アルミニウム製フィン20は、例えば、1枚のアルミニウム板を加工して形成される。アルミニウム製フィン20には、空気との熱交換を促進するために凹凸29が形成されている。凹凸29は、例えば、アルミニウム板を切り起こしたり、ブリッジ構造に加工したりして形成される。
【0027】
図4には、図2におけるI-I線に沿って切断したアルミニウム製フィン20の断面表面が示されている。アルミニウム製フィン20は、本体22と立上部23とを有している。本体22に形成された切欠き21の周囲に立上部23が形成されている。立上部23は本体22から立ち上がっている。このような立上部23は、例えば、切欠き21を形成する際に、切欠かれる部分のアルミニウム板を切り起こすことによって形成することができる。例えば、アルミニウム板を切り起こす際に、立上部23をカールさせる加工を施すことによって、図4に示されているように、立上部23及び立上部23の近傍の本体22の断面表面をJ字形に形成することができる。立上部23は、アルミニウム製フィン20の頂部24は、立上部23の先端部23aである。
【0028】
図4に示されているように、順に並んだアルミニウム製フィン20を第1フィン201、第2フィン202、第3フィン203及び第4フィン204と呼ぶものとする。重ねられた複数のアルミニウム製フィン20においては、例えば、第2フィン202の頂部24は、隣接する第3フィン203の本体22の外面22aに当接する。従って、熱交換器10におけるアルミニウム製フィン20のフィンピッチPtは、本体22の外面22aからアルミニウム製フィン20の頂部24までの距離である。なお、第3フィン203の本体22の内面22bは、第4フィン204に対向する面である。立上部23を形成するには、薄いアルミニウム板を用いれば加工が容易になる。しかし、アルミニウム製フィン20は、厚い方が高い強度を得易い。また、アルミニウム製フィン20の厚み(外面22aと内面22bの距離)を厚くすると、熱抵抗を小さくできる。アルミニウム製フィン20は、管軸方向に沿った断面表面において立上部23及びその近傍の本体22がJ字形に形成されている場合、厚みが0.08mm以上0.12mm以下の範囲において加工性、強度及び熱抵抗について実用的なものが得られる。
【0029】
図4に示されている最近接点NPは、管軸方向(矢印Ar1で示される方向)に沿う断面表面において、アルミニウム製扁平多穴管30に最も接近する点である。最近接点NPの両側の断面表面CS1,CS2は、互いに反対向きに傾いている。つまり、立上部23においては、アルミニウム製扁平多穴管30の幅方向(矢印Ar2の方向)に、最近接点NPが稜線のように延びる。このように構造によって、図3に示されているように、アルミニウム製扁平多穴管30がアルミニウム製フィン20に挿入される組み立て時において、最近接点NPの両側に接着剤90が押し退けられる。従って、最近接点NPとアルミニウム製扁平多穴管30の間の膜厚d1(図5参照)は、塗布された接着剤90の膜厚より小さくなる。
【0030】
この最近接点NPは、立上部23の高さ寸法H1の2分の1の中間点よりも本体22に近い位置に形成されている。ここでは、立上部23の高さ寸法H1がアルミニウム製フィン20のフィンピッチPtに等しいので、高さ寸法H1の2分の1の中間点は、フィンピッチPtの2分の1の点になる(Pt/2=H1/2)。つまり、L3<(Pt/2)である。上述の通り、立上部23がアルミニウム製扁平多穴管30に最も接近する最近接点NPを設けることで、接着膜40の接着剤が押し退けられて接着膜40が最も薄くなる部分ができて、最近接点NPの近傍において熱抵抗を小さくすることができる。その最近接点NPが立上部23の高さ寸法H1の2分の1の中間点よりも本体22に近い位置に形成されていることにより、本体22と立上部23との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0031】
立上部23の先端部23aの高さが、接着膜40の最も高い位置の高さ(=膜厚d2)よりも高ければ、アルミニウム製フィン20を重ねるときに、互いに隣接するアルミニウム製フィン20の間に接着剤が挟まらない。このように、d3>d2とすることにより、フィンピッチPtのばらつきを抑制することができる。
【0032】
(1−3)接着膜40
接着膜40を形成するために用いられるのは、例えば、高熱伝導性接着剤である。接着膜40は、樹脂41を含んでいる。接着膜40が含む樹脂41は、例えば熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ基で架橋して硬化させる熱硬化性樹脂であり、例えばエポキシ樹脂である。高熱伝導性接着剤は、熱硬化性樹脂以外に、熱伝導性フィラーを含んでいる。従って、高熱伝導性接着剤を用いて形成される接着膜40は、熱伝導性フィラー42を含んでいる(図5参照)。熱伝導性フィラー42は、接着膜40が含んでいる樹脂41よりも熱伝導性の高い材料である。樹脂よりも熱伝導性の高い材料は、例えば金属粉又はセラミック粉末である。アルミニウム製フィン20とアルミニウム製扁平多穴管30を接着するので、熱伝導性フィラー42としてはアルミニウムと化学反応しないものを用いることが好ましい。金属粉としては例えばアルミニウム粉末又はニッケル粉末を用いることができ、セラミック粉末としては例えば酸化アルミニウム粉末、窒化アルミニウム粉末又は窒化珪素粉末を用いることができる。
【0033】
接着膜40の膜厚は、既に説明したように、最近接点NPで最も薄くなる。例えば、アルミニウム製フィン20の切欠き21の短手方向の長さL1は、アルミニウム製扁平多穴管30の厚み方向の長さL2と接着剤の塗布膜厚の合計よりも小さく形成されている場合は、高熱伝導性接着剤の粘度が高いために、高熱伝導性接着剤のよって押し広げられる。しかし、押し広げられたアルミニウム製扁平多穴管30の切欠き21が元に戻ろうとするため、接着膜40の膜厚が塗布をしてそのまま硬化させる場合に比べて高熱伝導性接着剤が押し退けられるところは薄くなり、押し退けられた高熱伝導性接着剤が溜まるところは逆に接着膜40の膜厚が厚くなる。その結果、d2>d1となる。
【0034】
しかしながら、接着膜40の膜厚d2の近傍では、接着膜40の熱抵抗が大きいのであまり熱交換の熱伝導には寄与しない。重要なのは、立上部23とアルミニウム製扁平多穴管30との間の隙間が最小となる立上部23の高さ寸法H1の2分の1の部位である。この部位の平均膜厚を薄くすることで熱抵抗を小さくすることができる。立上部23とアルミニウム製扁平多穴管30との間の隙間が最小となる立上部23の高さ寸法H1(=フィンピッチPt)の2分の1の部位の平均膜厚Avが0.03mm以上0.05mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、立上部23とアルミニウム製扁平多穴管30との間の隙間が最小となる立上部23の高さ寸法H1の2分の1の部位の平均膜厚Avが0.03mm以上0.04mm以下である。
【0035】
高熱伝導性接着剤が水のように粘度が小さいと、図3で示した熱交換器10の組み立て時に高熱伝導性接着剤が流れて上手く組み立てられない。そこで、組み立て時に高熱伝導性接着剤が流れない程度の粘度が必要になるが、粘度が高くなることで、また熱伝導性フィラー42が存在することで、最近接点NPの膜厚をなくすことができない。そのため、接着剤90を薄く塗りすぎると、接着剤90をあまり押し退けられず、図6に示されているように、接着面積が小さくなり、接着強度が弱くなったり、熱抵抗がかえって大きくなったりする。
【0036】
(2)変形例
(2−1)変形例A
上記実施形態の立上部23は、アルミニウム製扁平多穴管30から先端部23aまでの高さd3が、図7に示されているアルミニウム製フィン20Aのように低いものとすることもできる。図7に示されている立上部23Aが隣接するアルミニウム製フィン20Aの本体22に当接しない場合には、他の部分でフィンピッチPtを決めるようにしてもよい。その場合には、立上部23Aの高さ寸法H1は、フィンピッチPtよりも小さくなる。
【0037】
(2−2)変形例B
上記実施形態の立上部23及び変形例Aの立上部23Aは、管軸方向に沿う断面表面がアルミニウム製扁平多穴管30に向かって凸の曲線を描いている。しかし、図8及び図9に示されているアルミニウム製フィン20B,20Cの立上部23B,23Cのように直線状の部分を持っていてもよい。図8に示されている立上部23Bは、本体22の近傍で折り曲げ、立上部23Bの断面表面CS3の多くの部分は頂部24の側で実質的に直線状に傾いている。アルミニウム製フィン20Bの最近接点NPの両側の断面表面CS3,CS4は互いに反対に傾いている。図9において、アルミニウム製フィン20Cの最近接点NPの両側の断面表面CS5,CS6は実質的に直線状に互いに反対に傾いている。
【0038】
(2−2)変形例C
上記実施形態では、アルミニウム製多穴管として、アルミニウム製扁平多穴管30を例に挙げて説明した。しかし、アルミニウム製多穴管は、アルミニウム製扁平多穴管に限られるものではなく、例えば、円形の多穴管であってもよい。
【0039】
(3)特徴
(3−1)
立上部23,23A,23B,23Cは、アルミニウム製扁平多穴管30(アルミニウム製多穴管の例)の管軸方向に沿う断面表面においてアルミニウム製扁平多穴管30と最も接近する最近接点NPを有している。立上部23の最近接点NPの両側の断面表面CS1と断面表面CS2が互いに反対向きに傾いている。同様に、立上部23B,23Cの最近接点NPの両側の断面表面CS3,CS5と断面表面CS4,CS6が互いに反対向きに傾いている。立上部23,23A,23B,23Cがアルミニウム製扁平多穴管30に最も接近する最近接点NPが設けられることで、接着膜40を形成するための接着剤90が最近接点NPの近傍で押し退けられて接着膜40が最も薄くなる部分ができて最近接点NPの近傍において熱抵抗を小さくすることができる。立上部23,23A,23B,23Cとアルミニウム製扁平多穴管30とが樹脂41を含む接着膜40で接着されていることからロウ材で接着される場合に比べて接着膜40の熱抵抗が大きくなるが、最近接点NPが立上部23,23A,23B,23Cの高さ寸法H1の2分の1の中間点よりも本体22に近い位置に形成されているので、このような樹脂41を含む接着膜40により立上部23,23A,23B,23Cとアルミニウム製扁平多穴管30とを接着している熱交換器10において効率良く熱を伝えることができている。
【0040】
例えば、図10に示されているフィン120の場合、頂部124が接着膜40に接着している。図10に矢印Ar4で示されたように、熱は頂部124から立上部123の一方の端から他方の端まで通って本体122に伝わる。このように、立上部123の中を熱の伝達する距離が長くなると熱抵抗が大きくなるが、最近接点NPが立上部23,23A,23B,23Cの高さ寸法H1の2分の1の中間点よりも本体22に近い位置に形成されることで、立上部で生じる熱抵抗を図10のような場合に比べて2分の1程度よりも小さくすることができる。
【0041】
(3−2)
接着膜40の平均膜厚Avを薄くしすぎると例えば図6を用いて説明したように接着膜40によって立上部23とアルミニウム製扁平多穴管30を接着できない部分が大きくなる。しかし、接着膜40の平均膜厚Avを厚くしすぎると熱抵抗が大きくなってしまう。そこで、立上部23,23A,23B,23Cとアルミニウム製扁平多穴管30との間の隙間が最小となる立上部23,23A,23B,23Cの高さ寸法H1の2分の1の部位の平均膜厚Avを0.03mm以上0.05mm以下にすることで、接着できない部分を減らしつつ平均膜厚Avを薄く抑えることができる。このように構成された熱交換器10は、安定して接着強度を確保しつつ低い熱抵抗を得ることができる。
【0042】
(3−3)
上記実施形態では、最近接点NPでの接着膜40の膜厚が0.02mm以下であるので、最近接点NPの近傍の接着膜の膜厚をその周囲の平均膜厚Avが0.03mm以上0.05mm以下の部分よりも十分に小さくすることができる。その結果、本体22の近くの最近接点NPの近傍の接着膜40の熱抵抗を小さくすることができる。
【0043】
(3−4)
図4及び図7のアルミニウム製フィン20,20Aは、立上部23,23A及び立上部23,23Aの近傍の本体22の断面表面がJ字形である。これらアルミニウム製フィン20,20Aの厚さが0.08mm以上0.12mm以下であると、アルミニウム製フィン20,20Aが薄すぎてアルミニウム製フィン20,20Aの強度が弱くなりすぎたり熱抵抗が大きくなったりすることはなく、またアルミニウム製フィン20,20Aが厚すぎて断面表面の形状がJ字形になるように加工するのが難しすぎることもない。そのため、最近接点NPが高さ寸法H1の2分の1の中間点よりも本体22に近い位置に形成されている立上部23,23Aを、熱抵抗の増加を抑えながら容易に実現できている。
【0044】
(3−5)
接着膜40が、樹脂41よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラー42を含むことによって、接着膜40の中に熱伝導性フィラー42を通る熱抵抗の低い部分が形成され、特に樹脂41が押し退けられる最近接点NPの近傍に熱伝導性フィラー42による熱抵抗の低い部分が形成される。その結果、熱伝導性フィラー42によって最近接点NPの近傍の熱抵抗を低くできる。
【符号の説明】
【0045】
10 熱交換器
20,20A,20B,20C アルミニウム製フィン
21 切欠き
22 本体
23,23A,23B,23C 立上部
30 アルミニウム製扁平多穴管(アルミニウム製多穴管の例)
40 接着膜
41 樹脂
42 熱伝導性フィラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特許第5140051号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10