特許第6793532号(P6793532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793532
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】サーモバルブ及びオイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20201119BHJP
   F04C 14/26 20060101ALI20201119BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F16K31/68 A
   F04C14/26 A
   F04C2/10 341E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-230068(P2016-230068)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-87584(P2018-87584A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】宮島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】庄司 一夫
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−108877(JP,U)
【文献】 特開2014−145468(JP,A)
【文献】 特開2016−027253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64 − 31/70
F04C 2/10
F04C 14/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに、流体の温度が上がることによりアクチュエータ本体からロッドが押し出されるサーモアクチュエータと、このサーモアクチュエータに締結され前記流体の流量を制御する弁体と、前記ロッドを前記アクチュエータ本体の内部に押し戻すよう付勢する戻しばねと、が収納されてなるサーモバルブにおいて、
前記サーモアクチュエータは、アクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体から径方向外側に突出した大径部と、を有し、
前記ケースの内径は、前記大径部が収納された部位で大きく、前記弁体が収納された部位で小さく形成され、
これらの径の大きさが変わる部位は、段差状に形成され、
前記戻しばねの外径は、前記大径部が収納された部位の内径よりも小さく、
前記アクチュエータ本体の外径、及び、前記弁体の外径は、前記戻しばねの内径よりも小さく、
前記大径部の外径は、前記大径部が収納された部位の内径よりも小さく、且つ、前記戻しばねの平均径よりも大きく、
前記戻しばねの一端は、前記大径部に接触し
前記戻しばねの他端は、前記ケースの段差状に形成された部位に接触していることを特徴とするサーモバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のサーモバルブが搭載されたオイルポンプであって、
前記ケースは、ハウジングに空けられた穴部によって形成されていることを特徴とするオイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモバルブ及びこのサーモバルブが搭載されたオイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンからオイルパンまで流れたオイルは、オイルポンプによって再びエンジンに流される。オイルが循環する流路(油路)には、オイルの流量を制御するためのバルブが用いられることがある。バルブの1つとして、オイルの温度によって作動するサーモバルブが知られている。サーモバルブに関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、エンジンのオイル流路は、エンジンと、このエンジンを通過したオイルが流れるオイルパンと、このオイルパンに溜まったオイルを循環させるためのオイルポンプと、このオイルポンプによって循環されるオイルの流量を制御するためのリリーフバルブ及びサーモバルブと、エンジン、オイルパン、オイルポンプを繋ぎオイルを循環させるメイン流路と、このメイン流路を迂回させたバイパス流路と、を備えている。
【0004】
サーモバルブは、オイルの温度によって作動するサーモアクチュエータを有し、このサーモアクチュエータによって弁体が動かされる。オイルの温度が高い場合には、サーモアクチュエータ内のワックスが膨張し弁体を前進させる。弁体がバイパス流路を閉じ、オイルは、メイン流路のみを流れる。オイルの温度が低い場合には、サーモアクチュエータ内のワックスが収縮する。サーモアクチュエータ内の戻しばねの付勢力によって弁体は後退する。これによりバイパス流路が開かれる。オイルは、メイン流路及びバイパス流路の両方を流れる。
【0005】
オイルは、温度が低い状態において高い粘性を有する。即ち、温度の低いオイルは、油圧が高くなる。低油温時にオイルの一部をバイパス流路へ流すことにより、メイン流路内の油圧を油温違いによらずにほぼ一定にすることができる。
【0006】
ところで、エンジンやオイルパン等の各部品は、小さな搭載スペースに搭載することが求められている。サーモバルブを小型化することができれば、部品の配置の自由度が増し、好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−27253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小型化されたサーモバルブ、及び、このサーモバルブが搭載されたオイルポンプの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1による発明によれば、ケースに、流体の温度が上がることによりアクチュエータ本体からロッドが押し出されるサーモアクチュエータと、このサーモアクチュエータに締結され前記流体の流量を制御する弁体と、前記ロッドを前記アクチュエータ本体の内部に押し戻すよう付勢する戻しばねと、が収納されてなるサーモバルブにおいて、
前記サーモアクチュエータは、アクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体から径方向外側に突出した大径部と、を有し、
前記ケースの内径は、前記大径部が収納された部位で大きく、前記弁体が収納された部位で小さく形成され、
これらの径の大きさが変わる部位は、段差状に形成され、
前記戻しばねの外径は、前記大径部が収納された部位の内径よりも小さく、
前記アクチュエータ本体の外径、及び、前記弁体の外径は、前記戻しばねの内径よりも小さく、
前記大径部の外径は、前記大径部が収納された部位の内径よりも小さく、且つ、前記戻しばねの平均径よりも大きく、
前記戻しばねの一端は、前記大径部に接触し
前記戻しばねの他端は、前記ケースの段差状に形成された部位に接触していることを特徴とするサーモバルブが提供される。
【0010】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記サーモバルブが搭載されたオイルポンプであって、
前記ケースは、ハウジングに空けられた穴部によって形成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、アクチュエータ本体の外径、及び、弁体の外径は、戻しばねの内径よりも小さい。戻しばねの内周にアクチュエータ本体を配置することができ、サーモバルブ全体の長さを短くすることができる。即ち、サーモバルブを小型化することができる。加えて、アクチュエータ本体、及び、弁体を一体化した上でケースの内部に収納することができる。このため、サーモアクチュエータの組み立てを容易にすることができる。
【0012】
さらに、アクチュエータ本体に一体的に形成された大径部の外径は、戻しばねの平均径よりも大きく、戻しばねの一端は、大径部に接触している。即ち、アクチュエータ本体に一体的に形成した大径部は、戻しばねの一端を受ける。アクチュエータ本体に一体的に形成された大径部によって戻しばねを受けるため、別部品を用いて戻しばねを受ける場合に比べて、サーモバルブを小型化することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、サーモバルブのケースは、ハウジングに空けられた穴部によって形成されている。即ち、サーモバルブは、オイルポンプ等に一体的に設けられている。ハウジングとケースを別々に設けた場合に比べて全体として小型化を図ることができる。また、サーモバルブのケースとしてハウジングを用いる。ハウジングは、高い強度を有するため、サーモバルブの高い取り付け剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1によるオイルポンプが採用されたオイル流路の回路図である。
図2図1に示されたサーモバルブの分解図である。
図3図2に示されたサーモバルブの作用を説明する図である。
図4図3に示されたサーモバルブの重ね合わせ工程及びかしめ工程を説明する図である。
図5図3に示されたサーモバルブの戻しばね挿入工程及びサーモアクチュエータ挿入工程を説明する図である。
図6図3に示されたサーモバルブのアクチュエータ蓋部取り付け工程を説明する図である。
図7】本発明の実施例2によるオイルポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、上下左右とは、図面を基準として上下左右を指す。また、図中Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0016】
図1を参照する。オイルポンプ20は、オイル流路10において用いられる。例えば、オイル流路10は、オイルパンOpとオイルポンプ20、及び、オイルポンプ20とエンジンEnとを繋いでオイルを循環させる流路である。
【0017】
オイル流路10は、メイン流路11と、このメイン流路11の一部を迂回させたバイパス流路12と、からなる。
【0018】
オイルポンプ20は、いわゆる内接歯車ポンプである。オイルポンプ20は、ハウジング30に、エンジンEnが作動することにより回転される回転軸部22と、この回転軸部22によって回転されるインナーロータ23と、このインナーロータ23の周縁を囲いインナーロータ23によって回転されるアウターロータ24と、オイルの温度によって作動するサーモバルブ40が収納されてなる。
【0019】
回転軸部22は、例えば、クランクシャフトにチェーンやギヤを介して又は直接接続されている。回転軸部22は、クランクシャフトの他、カムシャフト等の任意の部材に接続することができる。即ち、外部駆動源は、クランクシャフトに限られない。
【0020】
サーモバルブ40は、アウターロータ24の下端よりも下方において水平軸に沿って配置されている。サーモバルブ40は、正面視において端部が回転軸部22の下方に位置している。なお正面視とはオイルポンプ20を回転軸部22の軸方向から視るものとする。
【0021】
図2、及び、図3(a)を参照する。図3(a)には、オイルの温度が高温である場合のサーモバルブ40が示されている。サーモバルブ40は、略筒状のケース41に、オイルの温度によって作動するサーモアクチュエータ50と、このサーモアクチュエータ50に締結された弁体43と、これらのサーモアクチュエータ50及び弁体43を戻し方向に付勢している戻しばね44と、が収納されてなる。ケース41の一端は、アクチュエータ蓋部45によって閉じられている。アクチュエータ蓋部45は、ケース41との間に挟まれたC型止め輪46によって、ケース41から外れることを抑制されている。
【0022】
ケース41は、サーモアクチュエータ50の外周に4カ所又は2カ所形成された窓部41aと、弁体43によって開閉されるケース穴部41bと、C型止め輪46が収納される止め輪収納溝41cと、を有している。窓部41aは、オイルが循環している間は常にオイルが通過する。ケース41は、ケース穴部41bの形成された部位の周辺が他の部位に比べて周方向にわたって全周に外径が小さくなるように肉薄に形成されている。これによりケース穴部41bがどの位相であってもオイルはよどみなく排出できる。
【0023】
サーモアクチュエータ50は、アクチュエータ本体51と、このアクチュエータ本体51の一端に空けられた穴に充填され温度が上昇することにより膨張するワックス52と、このワックスが膨張することによりアクチュエータ本体51から押し出されるロッド53と、アクチュエータ本体51から径方向外側に突出した大径部54と、からなる。大径部54は、戻しばね44の端部を受け、ばね受け座の役割を果たしている。
【0024】
弁体43は、アクチュエータ本体51の他端に形成された穴51aに差し込まれ締結されているバルブ小径部43aと、このバルブ小径部43aの端部から外周に向かって広がっているバルブ段差部43bと、このバルブ段差部43bの外側の端部から延びバルブ小径部43aよりも径の大きいバルブ大径部43cと、からなる。なお、弁体43は、ロッド53に締結されていてもよい。
【0025】
バルブ段差部43bは、オイルが通過可能なオイル通過穴部43dを有している。特に図2を参照して、バルブ小径部43aには、溝部43eが形成されている。またバルブ小径部43aには軸中心を貫通する穴が形成されている。これにより弁体43を穴51aに空気の抵抗なく容易に差し込める。
【0026】
なお、溝部43eは、アクチュエータ本体51の内周に形成されていてもよい。また、アクチュエータ本体51の先端がバルブ小径部43aの内周に差し込まれてもよい。この場合には、バルブ小径部43aの内周、または、アクチュエータ本体51の外周に溝部43eが形成される。
【0027】
アクチュエータ蓋部45は、先端部(図2では下端部)に、C型止め輪46が収納される止め輪収納溝45aが形成されている。
【0028】
バルブ大径部43cの外径は、ケース41の内径よりも僅かに小さい。ケース41の内径は、大径部54の周縁で大きく、弁体43の周縁で小さい。これらの径の大きさが変化する部位は段差状に形成され、戻しばね44の端部を受け、ばね受け座の役割を果たしている。
【0029】
オイルポンプ20の作用について説明する。
【0030】
図1を参照する。オイルポンプ20は、エンジンEnが作動することにより作動する。オイルポンプ20が作動すると、矢印(1)によって示されるようにオイルパンOpに溜まったオイルは、オイルポンプ20へ流れる。そして、インナーロータ23、及び、アウターロータ24を経由してオイルポンプ20の外へ吐出される。吐出されたオイルは、矢印(2)によって示されるように、エンジンEnに戻される。そして、エンジンEnを循環したオイルは、矢印(3)に示されるようにオイルパンOpに溜まる。
【0031】
図3(a)を併せて参照する。オイルが高温の状態においては、ワックス52が膨張している。ワックス52が膨張することにより、ロッド53は、アクチュエータ本体51から抜け出す方向の力を受ける。しかし、ロッド53は、先端がアクチュエータ蓋部45に接触しているため、前進することを妨げられている。このため、相対的にアクチュエータ本体51が戻しばね44の付勢力に抗して図面左側に後退する。即ち、ロッド53の前進とは、アクチュエータ本体51に対しての相対的な関係をいう。ロッド53が前進(アクチュエータ本体51が後退)している状態において、弁体43は、ケース穴部41bを塞いでいる。このため、オイルは、窓部41aのみを通過する。これにより、オイルは、メイン流路11のみを流れ、バイパス流路12へは流れない。
【0032】
図1及び図3(b)を参照する。図3(b)には、オイルの温度が低い際のサーモバルブ40が示されている。エンジンの始動直後等においては、オイルの温度が低い。オイルの温度が低い場合には、ワックス52は収縮している。戻しばね44の付勢力により、アクチュエータ本体51は、図面右向きの力を受ける。これにより、ロッド53のアクチュエータ本体51からの突出量は小さくなる。即ち、オイルの高温時に比べて低温時には、ロッド53は後退する。これにより、弁体43は、ケース穴部41bを開放する。
【0033】
ケース穴部41bが解放されている場合には、オイルの一部は、戻しばね44とアクチュエータ本体51との間を通り、オイル通過穴部43dを通過する。オイル通過穴部43dを通過したオイルは、図1の矢印(4)で示されるように、バイパス流路12を介してオイルパンOpへ戻される。つまり、一部のオイルは、エンジンEnへ戻されない。このため、メイン流路11を通過するオイルの流量を減少させ、エンジンEnへの油圧上昇を抑制することができる。
【0034】
サーモバルブ40の製造方法について説明する。
【0035】
図2を参照する。ケース41、サーモアクチュエータ50、弁体43、戻しばね44、アクチュエータ蓋部45及び、C型止め輪46を準備する(準備工程)。
【0036】
図4(a)を参照する。溝部43eが覆われるように弁体43をサーモアクチュエータ50に重ね合わせる(重ね合わせ工程)。換言すれば、溝部43eが重なる位置まで弁体43をアクチュエータ本体51に差し込む。
【0037】
図4(b)を参照する。弁体43をサーモアクチュエータ50に締結するために、治具60を溝部43eの近傍に臨ませる。
【0038】
治具60は、アクチュエータ61に弁体43又はサーモアクチュエータ50を押圧するための押圧部材70が支持されてなる。
【0039】
図4(c)を参照する。押圧部材70によって、アクチュエータ本体51を外周から軸心C2に向かって押圧する。即ち、弁体43及びサーモアクチュエータ50を径方向の外側から軸心C2に向かって押圧することにより、弁体43のサーモアクチュエータ50への取り付け部分をかしめる(かしめ工程)。
【0040】
図5(a)を参照する。ケース41に戻しばね44を挿入する(戻しばね挿入工程)。戻しばね44の外径D1は、ケース41の内径D2よりも小さい。
【0041】
図5(b)を参照する。戻しばね44の挿入されたケース41に、弁体43の締結されたサーモアクチュエータ50を挿入する(サーモアクチュエータ挿入工程)。アクチュエータ本体51の外径D3、及び、弁体43の外径D4は、戻しばね44の内径D5よりも小さい。大径部54の外径D6は、ケース41の内径D2よりも小さく、且つ、戻しばね44の線材の中心を通る径である平均径(中心径)D7よりも大きい。
【0042】
図6(b)に示すように、アクチュエータ蓋部45には、止め輪収納溝45aより先端側に先尖り状の雄テーパー部45bが形成されている。そこで、矢印(5)のように、C型止め輪46を雄テーパー部45bに沿って押し込む。雄テーパー部45bによりC型止め輪46は拡径する。更に押し込むと、止め輪収納溝45aにC型止め輪46が嵌る。
【0043】
ケース41には、止め輪収納溝41cより先端側に先広がり状の雌テーパー部41dが形成されている。矢印(6)のように、ケース41にアクチュエータ蓋部45を差し込もうとすると、C型止め輪46が雌テーパー部41dで縮径される。更に差し込むと、C型止め輪46が止め輪収納溝41cに嵌まる。これにより、アクチュエータ蓋部45がケース41の端部に固定される。
【0044】
図6(b)を参照する。図6(b)は図6(a)の補足説明図である。図6(b)に示すように、C型止め輪46は、ばね座金形状を呈している。C型止め輪46の厚さ(ばね密着長に相当。線材の厚さ)をt1、ばね自由長をt2、止め輪収納溝45aの溝幅をt3とすると、t1<t3,t1<t2の関係に設定されている。
【0045】
具体的には、溝幅t3は、サークリップの厚さt1の1.05〜1.4倍が好ましく、ばね自由長t2は、製造方案により異なるが、厚さ(ばね密着長)t1より大きい。
【0046】
以上に説明した本発明は、以下の効果を奏する。
【0047】
アクチュエータ本体51の外径D3、及び、弁体43の外径D4は、戻しばね44の内径D5よりも小さい。戻しばね44の内周にアクチュエータ本体51を配置することができ、サーモバルブ40全体の長さを短くすることができる。即ち、サーモバルブ40を小型化することができる。加えて、アクチュエータ本体51、及び、弁体43を一体化した後でケース41の内部に収納することができる。このため、サーモアクチュエータ50の組み立てを容易にすることができる。
【0048】
さらに、アクチュエータ本体51に一体的に形成された大径部54の外径D6は、戻しばね44の平均径D7よりも大きく、戻しばね44の一端は、大径部54に接触している。即ち、アクチュエータ本体51に一体的に形成した大径部54は、戻しばね44の一端を受ける。アクチュエータ本体51に一体的に形成された大径部54によって戻しばね44を受けるため、別部品を用いて戻しばね44を受ける場合に比べて、サーモバルブ40を小型化することができる。
<実施例2>
【0049】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7には、実施例2によるオイルポンプ20Aが示されている。実施例2によるオイルポンプ20Aにおいては、サーモアクチュエータ50Aのケースは、ハウジング30Aに空けられた穴部35によって形成されている。つまり、ケース41の内径D2は、穴部35の内径D8と読み替えることができる。その他の基本的な構成については、実施例1によるオイルポンプ、及び、サーモアクチュエータと共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0050】
穴部35は、主にサーモアクチュエータ本体51が収納されたアクチュエータ本体収納部35aと、主に弁体43が移動可能に収納されたバルブ収納部35bと、からなる。アクチュエータ本体収納部35aは、バルブ収納部35bよりも大きな径とされている。アクチュエータ本体収納部35aと、バルブ収納部35bとの径の大きさが変わる部位は段差状に形成されている。この段差状に形成された部位は、戻しばね44を受けている。
【0051】
ハウジング30Aは、穴部35の他に、吐出ポート31bから穴部35までを繋ぐ第1のハウジング流路穴36と、穴部35からハウジング30Aの外周面まで空けられた第2のハウジング流路穴37と、穴部35からハウジング30の外周面まで空けられ弁体43によって開閉される第3のハウジング流路穴38と、を有している。
【0052】
第2のハウジング流路穴37から吐出されたオイルは、エンジンに導かれる。即ち、第2のハウジング流路穴37は、メイン流路11に繋げられている。第3のハウジング流路穴38から吐出されたオイルは、オイルパンOpに導かれる。即ち、第3のハウジング流路穴38は、バイパス流路12に繋げられている。
【0053】
第1のハウジング流路穴36、及び、第2のハウジング流路穴37は、穴部35を介して連続して直線的に設けられている。一度の穴空け作業によって、2つの流路を形成することができる。
【0054】
以上に説明した本発明による実施例2も本発明所定の効果を奏する。本発明の実施例2によれば、さらに以下の効果を奏する。
【0055】
サーモバルブ40Aのケースは、ハウジング30Aに空けられた穴部35によって形成されている。即ち、サーモバルブ40Aは、オイルポンプ20Aに一体的に設けられている。これらを別々に設けた場合に比べて全体として小型化を図ることができる。また、サーモバルブ40Aのケースとしてハウジング30Aを用いる。ハウジング30Aは、高い強度を有するため、サーモバルブ40の高い取り付け剛性を確保することができる。
【0056】
穴部35の段差状に形成された部位によって戻しばね44の一端を受けている。ハウジング30Aの一部を利用しているため、部品点数を増加することなく確実に戻しばね44を受けることができる。
【0057】
尚、本発明によるオイルポンプは、車両のエンジンにオイルを循環させる例を元に説明したが、車両以外の乗り物に搭載することもできるし、乗り物以外の構造物等にも採用することができる。オイルの温度に応じてサーモバルブがバイパス流路への流量を制御するものであれば、適用可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。
【0058】
さらに、サーモアクチュエータの搭載されたオイルポンプは、内接歯車ポンプを例に説明をしたが、外接歯車ポンプやベーンポンプであっても本発明によるサーモアクチュエータを搭載することができ、本発明所定の効果を得ることができる。
【0059】
特に、外接歯車ポンプやベーンポンプであっても、サーモアクチュエータが油路に直交して配置されるならば、内接歯車ポンプの油路に直交してサーモバルブを配置した場合と同じ効果を奏する。
【0060】
さらに、オイルポンプのハウジングは、チェーンケースやバランサハウジングに鋳造等の製造手段により一体的に形成されていてもよい。即ち、本発明によるオイルポンプは、チェーンケースやバランサハウジングに一体的に形成されているものも含む。このため、オイルポンプがチェーンケースやバランサハウジングに対して個別に設けられている必要はない。
【0061】
チェーンケースやバランサハウジングに一体的に形成されたオイルポンプも、内接歯車ポンプには限られない。
【0062】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のオイルポンプは、車両のエンジンにオイルを循環させるのに好適である。
【符号の説明】
【0064】
20,20A…オイルポンプ
22…回転軸部
23…インナーロータ
24…アウターロータ
30,30A…ハウジング
35…穴部
40…サーモバルブ
41…ケース
43…弁体
44…戻しばね
50,50A…サーモアクチュエータ
51…アクチュエータ本体
54…大径部
D1…戻しばねの外径
D2…ケースの内径
D3…アクチュエータ本体の外径
D4…弁体の外径
D5…戻しばねの内径
D6…大径部の外径
D7…戻しばねの平均径(中心径)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7