特許第6795033号(P6795033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795033炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法および炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795033
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法および炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/48 20060101AFI20201119BHJP
   C07C 53/21 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 59/135 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C07C51/48
   C07C53/21
   C07C59/135
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-523868(P2018-523868)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2017021478
(87)【国際公開番号】WO2017217333
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2018年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-119807(P2016-119807)
(32)【優先日】2016年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】板谷 修司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 美保子
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−99624(JP,A)
【文献】 特開平6−25072(JP,A)
【文献】 特開2010−65034(JP,A)
【文献】 特表2004−506708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00−66/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と接触させた後、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を濃硫酸相から分離することであって、該接触を、濃硫酸相中に存在する水の量が10質量%以下かつ硫酸の量が90質量%以上となるように実施して、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を、フッ素非含有有機化合物の含有割合が前記混合物に比べて低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得ることを含み、
炭素数2〜20の含フッ素有機酸が、炭素数2〜20のフルオロカルボン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
フッ素非含有有機化合物が、炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸、炭素数8〜50のフッ素非含有炭化水素、および炭素数8〜50のフッ素非含有ポリエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法。
【請求項2】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物が、予め脱水処理されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
脱水処理は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を硫酸濃度70質量%以上の硫酸水溶液で洗浄することにより実施される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸との質量比が、10:1〜1:1である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法に関する。また、本発明は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素数2〜20の含フッ素有機酸が知られており、これは、特に炭素数2〜8の含フッ素有機酸は、例えばポリマーを乳化重合により製造する際の乳化剤として使用されている。乳化剤には、その製法や使用の態様により、水やその他の不純物が混在し得る。乳化重合に意図しない影響を及ぼさないようにするためには、乳化剤中の不純物は少ないほうが好ましい。また、乳化剤は、比較的高価であるので、使用後に回収して再利用することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、乳化剤の1種であるフルオロカルボン酸および水を含む混合物を濃硫酸と接触させることにより脱水して脱水フルオロカルボン酸溶液を得、その後、脱水フルオロカルボン酸溶液を蒸留操作により精製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−65034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、炭素数2〜20の含フッ素有機酸に、不純物としてフッ素非含有有機化合物が混在する場合があることに着目した。かかるフッ素非含有有機化合物としては、例えば、乳化重合において分散安定剤(安定化助剤)または他の目的で使用され得るフッ素非含有のカルボン酸、炭化水素、ポリエーテルなどが挙げられる。
【0006】
かかるフッ素非含有有機化合物は、通常、炭素数2〜20の含フッ素有機酸に微量成分として混在するため、蒸留操作により分離するのは困難である。炭素数2〜20の含フッ素有機酸からフッ素非含有有機化合物を効果的に除去することができれば、例えば乳化剤として使用済みの炭素数2〜20の含フッ素有機酸を再生し、乳化剤として再使用できるので好都合である。
【0007】
本発明の目的は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物からフッ素非含有有機化合物を効果的に除去することができる方法、換言すれば、フッ素非含有有機化合物が低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸を製造する方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、かかる製造方法によって得ることが可能な、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む新規な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、乳化剤の1種であるフルオロカルボン酸の後処理または再生処理において、フルオロカルボン酸および水を含む混合物から脱水するために濃硫酸が使用されており(特許文献1を参照のこと)、フルオロカルボン酸および水を含む混合物を濃硫酸と接触混合した後、有機相と水相とに分離させて、フルオロカルボン酸を有機相の形態で得ている。仮に、このようなフルオロカルボン酸、水および濃硫酸を含む接触混合系に不純物として有機化合物が混在することを想定した場合、有機化合物は、一般的には、水相よりも有機相に分配されるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と、水が実質的に存在しないか極微量しか存在しない状態で接触させることにより、フッ素非含有有機化合物を炭素数2〜20の含フッ素有機酸相から濃硫酸相に抽出すること(または炭素数2〜20の含フッ素有機酸から少なくとも部分的に除去すること)ができるという独自の知見を得、更なる鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の1つの要旨によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と接触させた後、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を濃硫酸相から分離することであって、該接触を、濃硫酸相中に存在する水の量が10質量%以下となるように実施して、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を、フッ素非含有有機化合物の含有割合が前記混合物に比べて低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得ることを含む、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の1つの態様において、フッ素非含有有機化合物は、炭素数1〜50のフッ素非含有有機化合物を含み得、より詳細には、炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸およびその誘導体、炭素数8〜50のフッ素非含有炭化水素、炭素数6〜50のフッ素非含有フェノール、炭素数1〜30のフッ素非含有アルコール、炭素数8〜50のフッ素非含有ポリエーテルおよび炭素数10〜20のフッ素非含有アルキル基含有イオン性化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0012】
本発明の1つの態様において、炭素数2〜20の含フッ素有機酸は、炭素数2〜20のフルオロカルボン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0013】
本発明の1つの態様において、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物は、予め(上記の水の量に関する条件で実施される濃硫酸との接触の前に)脱水処理されていてよい。かかる脱水処理は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を硫酸濃度70質量%以上の硫酸水溶液で洗浄することにより実施され得るが、これに限定されない。
【0014】
本発明の別の要旨によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む組成物であって、組成物中のフッ素非含有有機化合物の含有割合が0.001〜0.1質量ppmである、組成物(以下、単に本発明の組成物とも言う)が提供される。
【0015】
本発明の組成物において、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物は、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法に関してそれぞれ上述したものと同様であり得る。
【0016】
本発明の1つの態様において、本発明の組成物中の水の含有割合は、0.1質量%以下であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と接触させた後、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を濃硫酸相から分離するのに、この接触を、濃硫酸相中に存在する水の量が10質量%以下となるように実施して、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を、フッ素非含有有機化合物の含有割合が前記混合物に比べて低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得ることができ、これにより、フッ素非含有有機化合物が低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸を製造する方法が提供される。また、本発明によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む組成物であって、組成物中のフッ素非含有有機化合物の含有割合が0.001〜0.1質量ppmである、新規な組成物が提供される。かかる本発明の組成物は、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法によって得ることができるが、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、スタティックミキサーの構成を示す模式断面図であり、図1(b)は、液−液分離塔の構成を示す模式図である。
図2図2は、カールカラム塔の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法および炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む組成物について、以下に本発明の実施形態を通じて詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0020】
まず、本実施形態において用いられる、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を準備する。
【0021】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸は、炭素数2〜20の有機酸であって、フッ素を含むものであればよい。炭素数2〜20の含フッ素有機酸の例としては、炭素数2〜20の含フッ素カルボン酸およびその塩、炭素数2〜20の含フッ素スルホン酸およびその塩が挙げられる。
【0022】
炭素数2〜20の含フッ素カルボン酸として、式(i):
X−Rf−COOH (i)
[式中、Xは、H、FまたはClであり、Rfは、炭素数1〜19の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0023】
上記Rf基における、炭素数1〜19の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基は、C2a−b(式中、aは1〜19の整数であり、bは2a以下の整数である)であってよく、かかる基として、例えば、CF、C、C、C、C10、C12、C14、CHF、CH、C、CFH、CH、C、C、C、C、CH、C、C、C、C、C、CFH、CH、C、C、C、C、C、C、C、CFH、C11H、C10、C、C、C、C、C、C、C、C10、CFH11、C13H、C12、C11、C10、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、CFH13が挙げられる。
【0024】
上記Rf基における、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基およびポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基として、例えば、
(CF−(CFOCF−(CFOCF(CF)) 式(a)
(CF−(CHFOCF−(CFOCF(CF)) 式(b)
(CF−(CFOCHF)−(CFOCF(CF)) 式(c)
(CHF)−(CFOCF−(CFOCF(CF)) 式(d)
(CHF)−(CHFOCF−(CFOCF(CF)) 式(e)
(CHF)−(CFOCHF)−(CFOCF(CF)) 式(f)
[上記式中、lは0または1〜17の整数であり、mは0または1〜9の整数であり、nは0〜6の整数であり、ただし、l+2m+3nは19を超えないこと、そして、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、を条件とする。]
で示される基が挙げられる。
なお、上記式中において、上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であることを条件とする。
【0025】
式(i)において、XはHまたはFであり、Rfは、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜19の基であるのがより好ましく、Rfは、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜7、特に1〜6の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1〜7、特に1〜6の基であるのが更に好ましい。
【0026】
炭素数2〜20の含フッ素カルボン酸は、式(i−a):
X−Rf−COOH (i−a)
[式中、Xは、HまたはFであり、Rfは、式(a)
(CF−(CFOCF−(CFOCF(CF)) 式(a)
で示される基であって、
上記式(a)中、lは0または1〜17の整数であり、mは0または1〜9の整数であり、nは0〜6の整数であり、ただし、l+2m+3nは19を超えないこと、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、および上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であること、を条件とする。]
で示されるパーフルオロカルボン酸であるのが、さらに好ましい。
【0027】
上記含フッ素カルボン酸において、炭素数は4〜10であるのが好ましく、5〜8であるのがより好ましく、6〜8であるのが特に好ましい。
【0028】
好ましい態様である、炭素数5〜8の含フッ素カルボン酸として、例えば、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CF(CFCOOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH、
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、
CH=CFCFOCF(CF)COOH、
CF(CFCOOH、
CFCFCFOCFCFOCF(CF)COOH
などを例示することができる。
【0029】
炭素数2〜20の含フッ素スルホン酸として、例えば、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、CF=CFOCFCFSOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOH、CF(CFSOHなどが挙げられる。
【0030】
上記含フッ素カルボン酸および含フッ素スルホン酸の塩として、1価のカチオンを対イオンとして有する塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアミン塩(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩など)などが挙げられる。
【0031】
フッ素非含有有機化合物は、フッ素を含まない有機化合物であればよい。フッ素非含有有機化合物の例としては、炭素数1〜50のフッ素非含有有機化合物が挙げられる。炭素数1〜50の有機化合物の例としては、炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸およびその誘導体、炭素数8〜50のフッ素非含有炭化水素、炭素数6〜50のフッ素非含有フェノール、炭素数1〜30のフッ素非含有アルコール、炭素数8〜50のフッ素非含有ポリエーテルおよび炭素数10〜20のフッ素非含有アルキル基含有イオン性化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。上記有機化合物の炭素数は、10〜40の範囲であるのが好ましく、14〜35の範囲であるのがより好ましい。
【0032】
炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸は、カルボキシル基を1つまたは2つ以上有していてよい。炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸の誘導体として、例えば、カルボン酸エステル、および/またはヒドロキシ基、アルコキシ基などの置換基を有するものが挙げられる。炭素数1〜50のフッ素非含有カルボン酸およびその誘導体の例として、以下のものが挙げられる:
炭素数8〜50のフッ素非含有芳香族カルボン酸およびそのエステル、例えば、フタル酸、フタル酸無水物、フタルイミド、フタル酸塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、フタル酸モノまたはジアルキルエステル(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビスブチルベンジルなど)、安息香酸、安息香酸アルキルエステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルなど)、サリチル酸、サリチル酸アルキルエステル(例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチルなど)、没食子酸、没食子酸アルキルエステル(例えば、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルなど)、メリト酸、メリト酸無水物、ケイ皮酸、ケイ皮酸無水物、ケイ皮酸アルキルエステル(例えば、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸プロピル、ケイ皮酸ブチルなど);
炭素数1〜50のフッ素非含有脂肪族カルボン酸およびそのエステル、例えば、ギ酸、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、CF(CFCOOH、CF(CFCOOH、H(CFCOOH、H(CF10COOH、CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸など、ならびにこれらのアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなど)および/またはこれらの1個またはそれ以上の水素原子をヒドロキシ基、アルコキシ基などで置換したもの(例えば、クエン酸など)。
上記カルボン酸およびその誘導体の炭素数は、1〜30の範囲であるのが好ましく、1〜20の範囲であるのがより好ましい。
【0033】
炭素数8〜50のフッ素非含有炭化水素として、炭素数8〜50の、直鎖、分枝状または脂環式の、飽和または不飽和炭化水素が挙げられる。上記炭素数は、10〜40であるのがより好ましく、20〜40であるのがさらに好ましい。炭素数20〜40の飽和炭化水素は、パラフィンと言われることもある。なお、パラフィンは、一般的に、分子量分布を有し、沸点に幅があるため、蒸留操作により分離するのは非常に困難である。
【0034】
炭素数6〜50のフッ素非含有フェノールは、1価または多価のフェノール化合物であってよい。炭素数6〜50のフッ素非含有フェノールの例として、フェノール、ジ−t−ブチルフェノール、クレゾール、ナフトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0035】
炭素数1〜30のフッ素非含有アルコールは、1価または多価のアルコール化合物であってよい。炭素数1〜30のフッ素非含有アルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、ブタン−1−オール、ペンタン−1−オール、ヘキサン−1−オール、ヘプタン−1−オール、オクタン−1−オール、ノナン−1−オール、デカン−1−オール、ウンデカン−1−オール、ドデカン−1−オール、トリデカン−1−オール、テトラデカン−1−オール、ペンタデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、ヘプタデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ノナデカン−1−オール、イコサン−1−オール、ヘネイコサン−1−オール、ドコサン−1−オール、トリコサン−1−オール、テトラコサン−1−オール、ペンタコサン−1−オール、ヘキサコサン−1−オール、ヘプタコサン−1−オール、オクタコサン−1−オール、ノナコサン−1−オール、トリアコンタン−1−オール、ポリコサノール、2−メチルプロパン−1−オール、3−メチルブタン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、ペンタン−2−オール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、2−メチルブタン−1−オール、シクロヘキサノール、2−メチルプロパン−2−オール、2−メチルブタン−2−オール、2−メチルペンタン−2−オール、2−メチルヘキサン−2−オール、2−メチルヘプタン−2−オール、3−メチルペンタン−3−オール、3−メチルオクタン−3−オール、エチレングリコール、グリセリン、ヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコールなどが挙げられる。
【0036】
炭素数8〜50のフッ素非含有ポリエーテルとして、例えば、以下のものが挙げられる:
炭素数8〜50であるポリエチレングリコール、炭素数8〜50であるポリプロピレングリコール、炭素数8〜50であるポリエチレン/ポリプロピレングリコール(ここで「ポリエチレン/ポリプロピレン」とは、エチレン部およびプロピレン部より構成される基を意味する)、特に炭素数8〜50であるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテルなどの、炭素数8〜50であるポリエーテルポリオール;
炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)モノアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)ジアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシプロピレン)モノアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシプロピレン)ジアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)モノアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)ジアルキルエーテル(上記において「(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)」とは、オキシエチレン部およびオキシプロピレン部より構成される基を意味する)などの、炭素数8〜50であるポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル;
炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)ジアリールアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシプロピレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシプロピレン)ジアリールアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8〜50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)ジアリールアルキルエーテル(上記において「(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)」とは、オキシエチレン部およびオキシプロピレン部より構成される基を意味する)などの、炭素数8〜50であるポリ(オキシアルキレン)アリールアルキルエーテル。
【0037】
炭素数10〜20のフッ素非含有アルキル基含有イオン性化合物として、例えば、以下のものが挙げられる:
炭素数10〜20のアルキルスルホン酸塩、例えばドデシル硫酸塩など;
炭素数10〜20のアルキルアミン塩、例えばドデシルアミン塩酸塩など;
炭素数10〜20のアルキル4級アンモニウム塩、例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなど;
炭素数10〜20のアルキルベタイン、例えばドデシルベタインなど;
炭素数10〜20のアルキルアミンオキシド塩、例えばドデシルジメチルアミンオキシドなど。
【0038】
しかしながら、フッ素非含有有機化合物はこれらに限定されず、例えば分散安定剤(安定化助剤)、界面活性剤、キレート剤、可塑剤、開始剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、付着防止剤、機械油などとして添加され得る(および/または混在し得る)他の任意の適切なフッ素非含有有機化合物であってもよい。
【0039】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物におけるフッ素非含有有機化合物の含有割合は、例えば1000質量ppm以下、特に500質量ppm以下、200質量ppm以下、100質量ppm以下、50質量ppm以下、30質量ppm以下、20質量ppm以下、10質量ppm以下であってよく、特に限定されるものではないが、例えば0.1質量ppmを超える範囲であってよい。上記混合物におけるフッ素非含有有機化合物の含有割合は、例えば、0.1質量ppmを超え、100質量ppm以下の範囲、特に0.2〜500質量ppm、0.5〜200質量ppm、0.5〜100質量ppm、1〜50質量ppm、1〜30質量ppm、1〜20質量ppm、1〜10質量ppmの範囲であってよい。
【0040】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物は、他の成分、例えば濃硫酸、水、無機物(例えば無機酸、金属、その他の無機化合物または単体)、二価の金属塩などを含んでいてもよい。ただし、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物中の水の含有量は、後述する接触の際の水の量に関する条件を満たし得るように、接触の具体的操作に応じて適宜選択される。
【0041】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物は、任意の適切な方法で得ることができ、例えば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を合成した後の反応混合物に由来するもの、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を乳化重合に使用した後の反応混合物に由来するものであってよい。本発明を限定するものではないが、例えば、炭素数2〜20のフルオロカルボン酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物は、炭素数2〜20のフルオロカルボン酸フルオライドを加水分解することによって、対応するフルオロカルボン酸を生じる反応(合成反応)によって得られる反応混合物や、乳化重合に使用した炭素数2〜20のフルオロカルボン酸塩を酸性化することによって、対応するフルオロカルボン酸を生じる反応(再生反応)によって得られる反応混合物などが挙げられる。なお、本明細書において「由来する」とは、反応混合物を適宜、ろ過、洗浄、脱イオン化、脱水、精製等の後処理に付して得られたものであってよいことを意味する。
【0042】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物は、予め脱水処理されていてよい。脱水処理されていることにより、該混合物中における水の量を所望のレベルまで(例えば実質的に無視可能なレベルまで)低減することができるので、後述する接触の際の水の量に関する条件を簡便に満たし得る状態にすることができる。脱水処理は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。
【0043】
本発明の1つの態様において、脱水処理は、上記「炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物」の前駆体であって、更に水を含む混合物を硫酸濃度70質量%以上の硫酸水溶液で洗浄することにより実施することができる。かかる脱水処理は、例えば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸、フッ素非含有有機化合物および水を含む混合物を硫酸濃度70質量%以上、例えば80質量%以上、特に90質量%以上、より特に96質量%以上、更に特に98質量%以上、より更に特に99.9質量%以下の硫酸水溶液、代表的には濃硫酸と接触させ、その後、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相(または有機相もしくはフルオラス相)と硫酸相(水は含フッ素有機酸相より硫酸相に多く分配されるので、水相として理解され得る)とに相分離させ、上記「炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物」を炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得ることにより実施できる。ここで、硫酸濃度は、脱水処理の間の硫酸相(水相)の硫酸濃度を意味する。炭素数2〜20の含フッ素有機酸、フッ素非含有有機化合物および水を含む混合物と硫酸水溶液との量比は、上記の硫酸濃度を維持できる限り、特に限定されない。
【0044】
かかる態様によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含み、更に水を含む混合物は、脱水を目的とした硫酸水溶液(特に濃硫酸)との接触に付され、そして、後述するフッ素非含有有機化合物の抽出(低減または除去)を目的とした濃硫酸との接触に付されることとなり、概略的には、硫酸(特に濃硫酸)で少なくとも2回洗浄されることとなる。脱水を目的とした硫酸水溶液との接触は、所望の脱水(含水率)レベルに達するまで2回またはそれ以上実施してよく、この場合、フッ素非含有有機化合物の抽出を目的とした濃硫酸との接触と合計すると、概略的には、硫酸(特に濃硫酸)で3回またはそれ以上洗浄されることとなる。脱水を目的とした硫酸水溶液との接触の具体的操作は、後述するフッ素非含有有機化合物の抽出(低減または除去)を目的とした濃硫酸との接触の具体的操作と、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相と相分離されるのが濃硫酸相ではなく硫酸相(水相)である点を除いて、同様のものであってよい。なお、炭素数2〜20の含フッ素有機酸が酸化合物の塩の形態である場合、硫酸または濃硫酸との接触により酸性化され、対応する酸化合物を生じる点に留意されたい。
【0045】
しかしながら、脱水処理は硫酸による洗浄に限定されず、他の任意の適切な方法、例えば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸、フッ素非含有有機化合物および水を含む混合物を五酸化二リンやゼオライトなどの吸水性物質に(上述した硫酸水溶液の存在下または非存在下にて)接触させることなどによって実施してもよい。ゼオライトとしては、例えば、アルミノ珪酸塩等が挙げられる。
【0046】
予め脱水処理された炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物の含水率は、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.7質量%以下である。特に好ましくは0.2質量%以下である。
【0047】
そして、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法においては、フッ素非含有有機化合物を抽出(低減または除去)するために、上述したような炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と接触させる(以下、本明細書において「フッ素非含有有機化合物の抽出処理」とも言う)。
【0048】
本発明において「濃硫酸」とは、硫酸濃度が90質量%以上の硫酸水溶液を言う。濃硫酸の硫酸濃度は、例えば92質量%以上、特に96質量%以上、代表的には98質量%またはそれ以上である。
【0049】
炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸との質量比(連続式の場合は流量比)は、後述する接触の際の水の量に関する条件を満たし得る限り、特に限定されないが、例えば10:1〜1:1、特に10:2〜10:5であり得る。
【0050】
フッ素非含有有機化合物の抽出処理において、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸とが十分に接触するように、これらを撹拌して混合することが好ましい。例えば、濃硫酸相に炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を分散させる、または、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相に濃硫酸相を分散させることが好ましい。より具体的には、例えば連続相としての濃硫酸相中に、分散相としての炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の液滴を分散させ得る。これにより、連続相としての濃硫酸相と分散相としての炭素数2〜20の含フッ素有機酸相との間の接触および物質移動を促進し、フッ素非含有有機化合物を炭素数2〜20の含フッ素有機酸相(または有機相もしくはフルオラス相)から濃硫酸相に効果的に抽出することができる。分散相と連続相を逆にしてもよい。その後、これらの接触混合物を炭素数2〜20の含フッ素有機酸相と濃硫酸相とに相分離させる。炭素数2〜20の含フッ素有機酸と濃硫酸とは、互いに対して低い溶解度を有し、撹拌混合力が実質的に除かれることにより自然に相分離する。そして、目的とする炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を濃硫酸相から分離回収する。
【0051】
フッ素非含有有機化合物の抽出処理における炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸との接触は、濃硫酸相中に存在する水の量が10質量%以下となるように実施する。このように、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と、水が実質的に存在しないか極微量しか存在しない状態で接触させることにより、フッ素非含有有機化合物を炭素数2〜20の含フッ素有機酸相から濃硫酸相に抽出すること(または炭素数2〜20の含フッ素有機酸から少なくとも部分的に除去すること)ができる。
【0052】
本発明において「濃硫酸相中に存在する水の量」は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を分離する前、その間または後の濃硫酸相中に存在する水の量を意味する。かかる水の量は、可能な場合(例えば濃硫酸相が、その部分によらず、実質的に一様であると考えられる場合)には計算により導出したものであってよく、また、分離操作を実施している装置の任意の適切な部分からサンプリングした濃硫酸相を直接分析して測定したものであってもよい。濃硫酸相中に存在する水の量は、炭素数2〜8の含フッ素有機酸相と濃硫酸相との接触界面から装置出口に至るまで、実質的に同じであると考えられ得るので、装置出口から抜き出された濃硫酸相をサンプリングして水の量を測定した出口濃度を、「濃硫酸相中に存在する水の量」として差し支えない。分析は、例えばカールフィッシャー法により行い得る。かかる水の量は、10質量%以下であればよいが、好ましくは8質量%以下、特に4質量%以下、より特に2質量%以下である。
【0053】
以上のようにして、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を、フッ素非含有有機化合物の含有割合が、元の混合物(炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物)に比べて低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得ることができる。なお、フッ素非含有有機化合物は、そのままの形態で濃硫酸相に抽出される必要はなく、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相においてフッ素非含有有機化合物が、元の混合物に比べて低減または除去されていればよい。例えば、フッ素非含有有機化合物は、濃硫酸相中に分解した状態で抽出されてもよい。
【0054】
得られた炭素数2〜20の含フッ素有機酸相におけるフッ素非含有有機化合物の含有割合は、例えば0.1質量ppm以下、特に0.05質量ppm以下であることが好ましい。炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の残余は実質的に炭素数2〜20の含フッ素有機酸から成ることが好ましい。
【0055】
本発明において、フッ素非含有有機化合物の抽出処理は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。バッチ式で実施する場合は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸とを十分に混合し、その後、混合液を静置して(例えば所定時間混合した後に混合を停止して)、目的とする炭素数2〜20の含フッ素有機酸を含む炭素数2〜20の含フッ素有機酸相と濃硫酸相とに相分離させ、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を分取する。必要な場合、得られた炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を再び、濃硫酸と混合し、この混合物を静置してフッ素非含有有機化合物の量がより少ない炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を得ることができ、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相中のフッ素非含有有機化合物濃度が所望のレベルより低くなるまで、この操作を繰り返してよい。
【0056】
また、フッ素非含有有機化合物の抽出処理は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相と濃硫酸相とを、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相からなる液−液異相分散系にて、連続的に接触させる工程と、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相と濃硫酸相とを相分離する工程とを含むものであってもよい。
【0057】
例えば、図1(a)(b)を参照して、スタティックミキサー10および液−液分離塔20を用いて、以下のようにして実施できる。炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸を、それぞれ供給口11および12のいずれかからスタティックミキサー10に供給する。炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸はエレメント13が内部に配置されたスタティックミキサー10を通過することにより撹拌混合され、フッ素非含有有機化合物の抽出がスタティックミキサー10内で連続的に起こり得る。これらの混合液は排出口14から排出され、次いで、液−液分離塔20に供給される。供給口23から供給された混合液を、液−液分離塔20内で重液21と軽液22とに液−液分離し、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相を回収することができる。炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相と重液および軽液との対応関係は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相の密度(または比重)に応じて決まり、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の種類によって異なり得る。かかる態様において、「濃硫酸相中に存在する水の量」は、液−液分離塔20の出口から抜き出された濃硫酸相中に存在している水の量であり、装置出口からサンプリングした濃硫酸相を直接分析して測定しても、あるいは、スタティックミキサー10に供給した炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸の各含水率から、全部の水が液−液分離塔20内の濃硫酸相に存在するものと仮定して算出してもよい。
【0058】
あるいは、フッ素非含有有機化合物の抽出処理は、接触型の塔を用いて炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸とが向流で流れるように供給して、抽出を連続的に行うものであってもよい。より具体的には、微分接触型の抽出装置、いわゆる「抽出塔」(例えばカールカラム抽出塔等)を使用して、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物および濃硫酸のうち、一方を軽液(即ち、より低い密度)として供給し、他方を重液(即ち、より高い密度)として供給して、2つの液体を向流で接触させることによって、フッ素非含有有機化合物の抽出を実施してよい。
【0059】
例えば、図2を参照して、カールカラム塔30を用いて、以下のようにして実施できる。カールカラム塔30に、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物および濃硫酸のうち一方を重液として円筒状部31の上方部分に供給し、他方を軽液として円筒状部31の下方部分に(供給口32より)供給する。炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物と濃硫酸は撹拌ディスク(図示せず)が内部に配置された円筒状部31を向流で通過することにより撹拌混合され、フッ素非含有有機化合物の抽出がカールカラム塔30内、特に抽出ゾーン35で連続的に起こり得る。これらの混合液は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相を形成し、例えば連続相としての濃硫酸相中に、分散相としての炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の液滴を分散させ得るが、この逆であってもよい。炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相は相分離し、円筒状部上端37に接続された槽部33から軽液が回収され、円筒状部下端36に接続された槽部34から重液が回収される。炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相と重液および軽液との対応関係は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相および濃硫酸相の密度(または比重)に応じて決まり、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の種類によって異なり得る。かかる態様において、「濃硫酸相中に存在する水の量」は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相が軽液である場合には、槽部34の出口から抜き出された濃硫酸相(重液)中に存在している水の量であり、槽部34の出口からサンプリングした濃硫酸相を直接分析して測定でき、炭素数2〜20の含フッ素有機酸相が重液である場合には、槽部33の出口から抜き出された濃硫酸相(軽液)中に存在している水の量であり、槽部33の出口からサンプリングした濃硫酸相を直接分析して測定できる。
【0060】
以上のようにして、フッ素非含有有機化合物の抽出処理が実施される。これにより得られた炭素数2〜20の含フッ素有機酸相は、元の混合物(炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物)に比べて、フッ素非含有有機化合物が少なくとも部分的に除去されているので、フッ素非含有有機化合物の含有割合が低減されており、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の純度が向上している。よって、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を処理する方法であって、フッ素非含有有機化合物を少なくとも部分的に除去するための方法として、あるいは、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の精製方法として理解することができる。
【0061】
かかるフッ素非含有有機化合物の抽出処理は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物を濃硫酸と接触させた後、相分離させることにより実施できるので、従来、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の精製方法として実施されている蒸留等の操作に比べて簡便に実施することができる。また、本発明により得られた炭素数2〜20の含フッ素有機酸相は、更に蒸留に付されてもよいが、この場合、フッ素非含有有機化合物が低減されているので、蒸留への負荷を低減することができる。
【0062】
他方、フッ素非含有有機化合物の抽出処理において生じた濃硫酸相は、別途回収して任意の適切な用途に使用してよい。例えば、これにより回収した濃硫酸相を、上述した脱水処理における硫酸水溶液による洗浄工程に(例えば次バッチまたは連続式で)リサイクル使用してよい。脱水処理および/または抽出処理を、2回以上実施する場合、後段の工程で使用し回収した濃硫酸および/または硫酸を、より前段の工程にリサイクル使用してよく、これにより、フッ素非含有有機化合物の抽出(低減または除去)を効率的に実施しつつ、濃硫酸および/または硫酸の使用量を低減できるので、コスト削減が可能となる。
【0063】
本発明を限定するものではないが、本発明により炭素数2〜20の含フッ素有機酸相の形態で得られた炭素数2〜20の含フッ素有機酸は、必要に応じて後処理に付された後、ポリマーを乳化重合により製造するときの乳化剤として使用可能である。この場合、フッ素非含有有機化合物が低減され、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の純度が向上しているので、重合速度を大きくすることができる。よって、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を主成分とする乳化剤の製造方法または精製方法として理解することができる。本発明において、炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素非含有有機化合物を含む混合物として、炭素数2〜20の含フッ素有機酸を乳化重合に使用した後の反応混合物を用いる場合、本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸(または炭素数2〜20の含フッ素有機酸を主成分とする乳化剤)の再生方法として理解することができる。なお、乳化剤の主成分は、乳化剤として機能する成分を言い、乳化剤の50質量%以上、例えば70質量%以上、特に90質量%以上を占める成分を言う。
【0064】
本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法によって得られる炭素数2〜20の含フッ素有機酸相は、フッ素非含有有機化合物が完全に除去されていることが望ましいものの、炭素数2〜20の含フッ素有機酸とフッ素非含有有機化合物を含む組成物であり得る。
【0065】
本発明によれば、炭素数2〜20の含フッ素有機酸とフッ素非含有有機化合物を含む組成物であって、組成物中のフッ素非含有有機化合物の含有割合が0.001〜0.1質量ppmである組成物を得ることができる。炭素数2〜20の含フッ素有機酸およびフッ素含有有機化合物は、上記と同様であり得る。この組成物中の水の含有割合は、例えば0.1質量%以下、特に0.05質量%以下であってよい。この組成物の残部は、炭素数2〜20の含フッ素有機酸から実質的に成り得、炭素数2〜20の含フッ素有機酸の純度は、測定精度の上限値、例えば99.9質量%以上であり得る。かかる組成物は、上述した本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法によって得ることができるが、これに限定されない。
【0066】
本発明を限定するものではないが、本発明の組成物は、必要に応じて後処理に付された後、ポリマーを乳化重合により製造するときの炭素数2〜20の含フッ素有機酸として使用可能である。この場合、フッ素非含有有機化合物を低レベルで含有しているに過ぎないので、十分に大きい重合速度を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について実施例を挙げて説明する。以下の実施例および比較例における濃度測定は下記の通りとした。
・含フッ素有機酸相中のフッ素非含有有機化合物のうちパラフィンの濃度は、ガスクロマトクラフィー分析により測定した。ガスクロマトグラフィー分析に用いた分析条件は、以下の通りである。
検出器:FID
サンプル注入量:1μl
スプリット比:1/20
・含フッ素有機酸相中のフッ素非含有有機化合物のうちカルボン酸化合物(より詳細にはコハク酸、シュウ酸、クエン酸)の濃度は、HPLC分析により測定した。
・水の濃度はカールフィッシャー法により測定した。
・硫酸濃度はイオンクロマトグラフィー分析により測定した。
【0068】
製造例1
含フッ素有機酸としてCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてパラフィン(炭素数20〜40の飽和炭化水素の混合物、以下も同様)を含む溶液(溶液全体におけるパラフィン濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液1を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液1について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定したところ、7.2質量ppmであり、水の濃度は200質量ppm、硫酸濃度は1200質量ppmであった。
【0069】
実施例1
製造例1で調製した含フッ素有機酸溶液1(パラフィン濃度7.2質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例2
製造例1で調製した含フッ素有機酸溶液1(パラフィン濃度7.2質量ppm)100gに、濃度92質量%の濃硫酸(水8質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
実施例3
製造例1で調製した含フッ素有機酸溶液1(パラフィン濃度7.2質量ppm)100gに、濃度94質量%の濃硫酸(水6質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
実施例4
製造例1で調製した含フッ素有機酸溶液1(パラフィン濃度7.2質量ppm)100gに、濃度96質量%の濃硫酸(水4質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
製造例1で調製した含フッ素有機酸溶液1(パラフィン濃度7.2質量ppm)100gに、濃度98質量%(水2質量%)の濃硫酸50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
製造例2
含フッ素有機酸としてCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてコハク酸を含む溶液(溶液全体におけるコハク酸濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液2を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液2について、フッ素非含有有機化合物であるコハク酸の濃度を測定したところ、4.3質量ppmであり、水の濃度は200質量ppm、硫酸濃度は1200質量ppmであった。
【0075】
実施例6
製造例2で調製した含フッ素有機酸溶液2(コハク酸濃度4.3質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるコハク酸の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
製造例3
含フッ素有機酸としてCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてシュウ酸を含む溶液(溶液全体におけるシュウ酸濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液3を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液3について、フッ素非含有有機化合物であるシュウ酸の濃度を測定したところ、2.8質量ppmであり、水の濃度は200質量ppm、硫酸濃度は1200質量ppmであった。
【0077】
実施例7
製造例3で調製した含フッ素有機酸溶液3(シュウ酸濃度2.8質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるシュウ酸の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
製造例4
含フッ素有機酸としてCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてクエン酸を含む溶液(溶液全体におけるクエン酸濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液4を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液4について、フッ素非含有有機化合物であるクエン酸の濃度を測定したところ、9.8質量ppmであり、水の濃度は200質量ppm、硫酸濃度は1200質量ppmであった。
【0079】
実施例8
製造例4で調製した含フッ素有機酸溶液4(クエン酸濃度9.8質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるクエン酸の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
製造例5
含フッ素有機酸としてC11COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてパラフィン(炭素数20〜40の飽和炭化水素の混合物、以下も同様)を含む溶液(溶液全体におけるパラフィン濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液5を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液5について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定したところ、5.5質量ppmであり、水の濃度は450質量ppm、硫酸濃度は4000質量ppmであった。
【0082】
実施例9
製造例5で調製した含フッ素有機酸溶液5(パラフィン濃度5.5質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
製造例6
含フッ素有機酸としてCOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてパラフィン(炭素数20〜40の飽和炭化水素の混合物、以下も同様)を含む溶液(溶液全体におけるパラフィン濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液6を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液6について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定したところ、6.3質量ppmであり、水の濃度は900質量ppm、硫酸濃度は3200質量ppmであった。
【0084】
実施例10
製造例6で調製した含フッ素有機酸溶液6(パラフィン濃度6.3質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
製造例7
含フッ素有機酸としてCOCF(CF)CFOCF(CF)COOH中に、フッ素非含有有機化合物としてパラフィン(炭素数20〜40の飽和炭化水素の混合物、以下も同様)を含む溶液(溶液全体におけるパラフィン濃度25質量ppm)100gに、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出して含フッ素有機酸溶液7を得た。これにより得られた含フッ素有機酸溶液7について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定したところ、11.2質量ppmであり、水の濃度は250質量ppm、硫酸濃度は1600質量ppmであった。
【0086】
実施例11
製造例7で調製した含フッ素有機酸溶液7(パラフィン濃度11.2質量ppm)100gに、濃度98質量%の濃硫酸(水2質量%)50gを添加後、混合物から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、フッ素非含有有機化合物であるパラフィンの濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例12
製造例1と同様の方法で調製した含フッ素有機酸溶液1’(パラフィン濃度7.0質量ppm)1000gを図1(a)の供給口11から、濃度90質量%の濃硫酸(水10質量%)500gを図1(a)の供給口12から流通させ、スタティックミキサー10にてこれらを混合した。これらの混合液は図(1)の排出口14から排出後、液−液分離塔20に供給された。供給口23から供給された混合液を、液−液分離塔20内で静置分離させ、軽液22から含フッ素有機酸相を取出した。これにより得られた含フッ素有機酸相について、パラフィンの濃度を測定したところ0.01ppm以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の炭素数2〜20の含フッ素有機酸の製造方法は、フッ素非含有有機化合物が低減された炭素数2〜20の含フッ素有機酸、特にフルオロカルボン酸を製造する方法として好適に利用可能である。
【0090】
本願は、2016年6月16日付けで出願された特願2016−119807に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0091】
10 スタティックミキサー
11、12、23、32 供給口
13 エレメント
14 排出口
20 液−液分離塔
21 重液
22 軽液
30 カールカラム塔
31 円筒状部
33、34 槽部
35 抽出ゾーン
36 円筒状部下端
37 円筒状部上端
図1
図2