【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のビーム分離器と前記第2のビーム分離器の間、または、前記1次ビーム源装置と前記第1のビーム分離器の間に配置された少なくとも1つのコンデンサレンズをさらに備える、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記ミラー補正装置は、前記対物レンズおよび前記少なくとも1つのコンデンサレンズうちの少なくとも1つを補正するように適合されている、請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記1次ビーム源装置、前記トランスファレンズ、前記ミラー補正装置および前記第1のビーム分離器は、収差補償ビーム源装置を形成する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記第1のビーム分離器と前記第2のビーム分離器の間の光路上に配置された出口開孔をさらに備え、前記出口開孔が、前記第2のビーム分離器へ向かう前記補償1次荷電粒子ビームの開口角を調整するように適合されている、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記1次ビーム源装置と前記第1のビーム分離器の間の光路上に配置された別の開孔をさらに備え、前記別の開孔が、前記第1のビーム分離器上に入射する前記1次荷電粒子ビームの開口角を調整するように適合されている、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記トランスファレンズとコンデンサレンズのうちの少なくとも一方が、少なくとも2つのレンズを備えるレンズシステムに含まれている、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記第1のビーム分離器によって前記1次荷電粒子ビームから分離される前記補償1次荷電粒子ビームは、球面収差および色収差のうち少なくとも1つの補償を提供するように適合された補正波形を含む、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特段の言及なしに、1つの実施形態の要素を別の実施形態で有利に利用することが企図される。
【0013】
次に、1つまたは複数の例が図に示されている本開示のさまざまな実施形態を詳細に参照する。図面の以下の説明では、同じ参照符号が同じ構成要素を指す。一般に、個々の実施形態についての相違点だけが記載される。それぞれの例は、本開示を説明するために示されているのであり、本開示を限定するものではない。さらに、1つの実施形態の部分として図示または記載された特徴を、他の実施形態上で使用しまたは他の実施形態とともに使用して、さらに別の実施形態を生み出すこともできる。本明細書の説明は、このような変更および変型を含むことが意図されている。
【0014】
以下では、いくつかの実施形態に基づく荷電粒子ビーム装置または該装置の構成要素について説明する。本明細書に記載された実施形態は、1次荷電粒子ビームを発生させるように適合された1次ビーム源装置と、球面収差および/または色収差の補償を提供するように適合されたミラー補正装置と、1次荷電粒子ビームをミラー補正装置に伝送し、ミラー補正装置によって反射された補償1次荷電粒子ビームから1次荷電粒子ビームを分離するように適合された第1のビーム分離器と、補償1次荷電粒子ビームを試料上に集束させるように適合された対物レンズと、補償1次荷電粒子ビームを試料に伝送し、試料から生じた2次荷電粒子ビームから補償1次荷電粒子ビームを分離するように適合された第2のビーム分離器とを含む荷電粒子ビーム装置に関する。第1のビーム分離器は、少なくとも1つの双極子磁界を発生させるように構成された少なくとも1つの磁気偏向器を有する。
【0015】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、第1のビーム分離器と第2のビーム分離器の間に少なくとも1つのコンデンサレンズを提供することができる。このようにすると、柔軟性を持ち組立てが容易なビーム検査装置を設計することができる。
【0016】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、1次ビーム源装置から発射された1次荷電粒子ビームを第1のビーム分離器の中心に集束させるように適合されたトランスファレンズ(transfer lens)を提供することができる。
【0017】
本明細書に記載されているとおり、荷電粒子ビームを発生させることに関するいくつかの議論および説明は、例示的に、電子顕微鏡内の電子に関してなされている。しかしながら、異なるさまざまな機器内において、この装置によって、他のタイプの荷電粒子、例えば正イオンを提供することもできる。他の実施形態と組み合わせることができる本明細書に記載された実施形態によれば、荷電粒子ビームが電子ビームを表す。
【0018】
本明細書で言及される「試料」には、限定はされないが、半導体ウエハ、マスク、半導体加工物(workpiece)およびその他の加工物、例えばメモリディスクなどが含まれる。検査し、画像化し、材料を堆積させまたは構造化する任意の加工物に対して実施形態を適用することができる。試料は、構造化する表面または層を堆積させる表面を含む。
【0019】
本明細書で使用される用語「収差」は、荷電粒子ビーム中のレンズ焦点またはプローブの拡大を記述することを意図する。収差は、荷電粒子ビーム伝搬経路上の球面収差もしくは色収差、または荷電粒子ビーム伝搬経路上の球面収差と色収差の両方を含みうる。
【0020】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、これらの装置および方法を、電子ビーム検査、微小寸法測定用途および欠陥レビュー用途用に構成することができ、またはこれらの用途に対して適用することができる。「ビーム電流」に言及するときには一般に、その荷電粒子ビームが所定の電荷を運ぶことが理解される。この荷電粒子ビーム装置は特に、高速走査および高速検出に対して使用することができ、例えば、大きなプローブ電流が必要な電子ビーム検査(EBI)システムに対して使用することができる。
【0021】
さらに、本明細書に記載された実施形態は、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法に関する。この方法は、1次荷電粒子ビームを発生させるステップと、荷電粒子ビーム装置の光学部品によって導入された球面収差および/または色収差の、ミラー補正装置による補償を、補償1次荷電粒子ビームが提供されるような態様で提供するステップと、第1のビーム分離器によって、1次荷電粒子ビームから補償1次荷電粒子ビームを分離するステップであり、第1のビーム分離器が、少なくとも1つの双極子磁界を発生させるように構成された少なくとも1つの磁気偏向器を有するステップと、対物レンズによって、補償1次荷電粒子ビームを検査対象の試料上に集束させるステップと、第2のビーム分離器によって、試料から生じた2次荷電粒子ビームを補償1次荷電粒子ビームから分離するステップと、試料から生じた2次荷電粒子ビームを分析するステップとを含む。
【0022】
本明細書で使用される用語「補償1次荷電粒子ビーム」は、荷電粒子ビーム装置の光学部品または荷電粒子ビーム伝搬経路の光学部品によって導入された球面収差および/または色収差を少なくとも部分的に補償することができる1次荷電粒子ビームを記述することを意図する。本明細書で使用される用語「補償1次荷電粒子ビーム」を、収差を必ず完全に補償する荷電粒子ビームとして理解すべきではなく、試料に入射する1次荷電粒子ビーム中にいくらかの収差が残っていてもよい。
【0023】
図1は、一実施形態に基づく荷電粒子ビーム装置を概略的に示す。参照符号100は1次ビーム源装置を示す。1次ビーム源装置100は、熱電界エミッタ(thermal field emitter)TFE源、冷電界エミッタ(cold field emitter)CFE源およびカーボンナノチューブ源からなるグループの中から選択された高輝度低エネルギー幅ビーム源として設計することができる。1次荷電粒子源を動作させることによって、1次荷電粒子ビーム501、例えば1次電子PEのビームを発射し、そのビームを、第1のビーム分離器201に向かって発射方向に、例えば光軸510に沿って導くことができる。それによって、光軸510に沿った1次電子PEのビームの中心線は、第1のビーム分離器201の中心を通る。
【0024】
第1のビーム分離器201では、この1次荷電粒子ビームが、ミラー補正装置600の中心軸とほぼ一致するミラー軸506の方向に偏向する。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1のビーム分離器201は、少なくとも1つの双極子磁界を発生させるように構成された少なくとも1つの磁気偏向器を有する。さらに、第1のビーム分離器201は、磁気偏向ビーム分離器、結合交差静電磁界ビーム分離器(combined crossed electrostatic−magnetic field beam separator)、2つ、3つまたは4つの磁気偏向器の組合せ(いわゆる2B、3Bまたは4B偏向器)、磁気偏向器と静電偏向器の組合せ、例えばウィーンフィルタ(Wien filter)および無分散(dispersion free)結合磁気静電偏向ユニット、結合交差静電磁界偏向に基づく装置、すなわち結合交差静電磁気偏向ビーム分離器、ならびにこれらの任意の組合せからなるグループの中から選択することができる。
【0025】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1次ビーム源装置100と第1のビーム分離器201の間にトランスファレンズ108を配置することができる。トランスファレンズ108は、1次ビーム源装置100から発射された1次荷電粒子ビーム501を第1のビーム分離器201の中心に集束させるように適合されている。1次荷電粒子ビーム501を第1のビーム分離器201の中心に集束させることによって、第1のビーム分離器201の中心にクロスオーバ焦点507を置くことができる。それによって、このようにクロスオーバを配置することにより、第1のビーム分離器201は、収差を全く導入しないか、または少なくとも非常に少量の収差だけを導入する。
【0026】
第1のビーム分離器201は、1次荷電粒子ビーム501を、ミラー補正装置600のミラー軸506の方向に、例えば少なくとも1つの双極子磁界を発生させるように構成された磁気偏向器によって偏向させる。クロスオーバ焦点507は第1のビーム分離器201の中心に位置するため、このクロスオーバを、ミラー補正装置600の補正動作の基礎となる焦点として使用することができる。言い換えると、ミラー補正装置600は、第1のビーム分離器201と調査対象の試料300との間の荷電粒子ビーム伝搬経路の球面収差および/または色収差を補正するように適合されている。
図1に示されているように、このビーム伝搬経路は、限定はされないが、少なくとも1つのコンデンサレンズ104、第2のビーム分離器202、対物レンズ301および制御電極302を含むことができる。このようにすると、対物レンズ301と少なくとも1つのコンデンサレンズ104のうちの少なくとも一方のレンズの球面収差および/または色収差を補償するように、ミラー補正装置600を調整することができる。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、球面収差および/または色収差を補正するように、ミラー補正装置を適合させることができる。第2のビーム分離器202は、少なくとも1つの双極子偏向磁界を有する単純な偏向要素として提供することができる。この少なくとも1つの双極子磁界は、第2のビーム分離器202内に提供された磁気偏向器によって発生させることができる。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第2のビーム分離器を、少なくとも1つの双極子偏向磁界を有する偏向要素とすることができる。
【0027】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、コンデンサレンズ104に対して出口開孔109を提供することができる。出口開孔109は、第1のビーム分離器201と第2のビーム分離器202の間の光路上に配置することができ、また、第2のビーム分離器202へ向かう補償1次荷電粒子ビーム502の開口角(opening angle)を画定することができるように出口開孔109を設計することができる。それによって、第1のビーム分離器201と第2のビーム分離器202の間のビーム伝搬経路を、単純な方式で柔軟に調整することができる。
【0028】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態によれば、第2のビーム分離器202を、磁気偏向ビーム分離器、結合交差静電磁界ビーム分離器、2つ、3つまたは4つの磁気偏向器の組合せ、磁気偏向器と静電偏向器の組合せ、ウィーンフィルタ、無分散結合磁気静電偏向ユニット、およびこれらの任意の組合せからなるグループの中から選択することができる。
【0029】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1次ビーム源装置、トランスファレンズ、ミラー補正装置および第1のビーム分離器が、収差補償ビーム源装置を形成することができる。
図2は、一実施形態に基づく収差補償ビーム源装置700の詳細図である。
図2に示されているように、収差補償ビーム源装置700は、1次ビーム源装置100と、ミラー補正装置600と、収差補償ビーム源装置700の荷電粒子ビーム伝搬経路上に提供された光学部品とを含む。1次ビーム源装置100は電子銃101を含み、電子銃101は、カソード106、アノード102、およびアノード102とカソード106の間に配置された引出し電極103を有する。走査電子顕微鏡SEMに対しては、1次電子PEのビームを、補償1次荷電粒子ビーム502として、SEMカラムの残りの部分に向かって発射するように、収差補償ビーム源装置700が適合される。このようにすると、
図2に示された配置を、収差補償SEMビーム源とみなすことができる。すなわち、従来のSEM装置内の従来のSEM源の代わりに、
図2に示された「ビーム分離器−補正ミラー−トランスファレンズ−電子銃」配置を使用することができる。
【0030】
例えば
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示されているように、本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態によれば、源100と第1のビーム分離器201の間に、コンデンサレンズ104およびコンデンサレンズ308を含むコンデンサレンズシステムを配置することができる。2つのコンデンサレンズを有するこのコンデンサレンズシステムは、源サイズ、開口角およびクロスオーバの位置を決定するように構成されている。特に、第1のビーム分離器201内のクロスオーバの位置は、2つ以上のコンデンサレンズを有するコンデンサレンズシステムによって提供することができる。
【0031】
図3Aは、1次ビーム源装置、例えば電子銃101を含む1次ビーム源装置によって1次荷電粒子ビーム501を発生させる実施形態を示す。1次ビーム源装置100と第1のビーム分離器201の間の光学経路上に、開孔107、例えばビーム制限開孔を配置することができる。開孔107を使用して、第1のビーム分離器201に入射する1次荷電粒子ビーム501の開口角を調整することができる。さらに、開孔107を使用して、ミラー光学系に入る荷電粒子ビームの開口角を制御することもできる。典型的な実施形態によれば、開孔107を提供して、システム開孔またはこの光学システムの開孔を決定することもでき、すなわち、試料上でのプローブの形成に寄与する目的に使用される荷電粒子を規定することもできる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、開孔107を単開孔、すなわち1つの開孔開口(aperture opening)を有する開孔とすることができる。この開孔は、光軸に対して固定することができ、または、例えばアライメントのために光軸に対して可動とすることができる。他の実施形態によれば、開孔107を、開孔に2つ以上の開孔開口が提供された多開孔とすることもできる。例えば、特に開孔107がビーム制限開孔であるときに、開孔を通過する電流を変化させることができるように、それらの開孔開口は異なるサイズを有することができる。その場合には、その多開孔配置の前後に、個々の開孔に電子ビームを導き、そのビームを光軸510に戻す偏向器(図示せず)が必要となる。
【0033】
図3Bは、
図3Aに関して説明した実施形態と同様のまたは同等の実施形態を示す。
図3Bでは、開孔107が、第1のビーム分離器201と第2のビーム分離器202の間に提供されている。上で述べたとおり、
図3Bに示された開孔107は、単開孔または多開孔とすることができる。さらに、開孔107は可動または固定とすることができる。
【0034】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態によれば、
図3Cに示された別の交差静電磁界要素307によって、分散補正を提供することができる。結合静電磁気偏向器としての要素307によって、分散を補償することができる。光学配置の光学性能および複雑さに対して不利な影響を及ぼすことなく、1次および2次荷電粒子ビーム用の追加のビームアライメント光学系を提供することができる。
【0035】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、ミラー補正装置600はいくつかの別個のミラー電極を含むことができ、それらのミラー電極の数は3つ、典型的には4つ、特に5つ以上である。このようにすると、球面収差もしくは色収差または球面収差と色収差の両方の収差係数範囲(aberration coefficient range)の補償に対する柔軟性を向上させることができる。
【0036】
電極の数を増やすと、球面収差もしくは色収差または球面収差と色収差の両方の収差係数範囲の補償に対する柔軟性がより大きくなる。このことはさらに、ミラーパラメータ(例えば焦点位置、球面収差係数および色収差係数)を概して独立して制御することを可能にする。
【0037】
ミラー補正装置600のミラー軸506の方向に偏向された1次荷電粒子ビーム501はミラー補正装置600によって反射され、そのようにして、補償1次荷電粒子ビーム502として、第1のビーム分離器201のクロスオーバ焦点507に集束する。補償1次荷電粒子ビーム502は次いで第2のビーム分離器202に向かって偏向し、第2のビーム分離器202は、補償1次荷電粒子ビーム502を入射軸504の方向に偏向させ、調査対象の試料300上へ導くことができる。
【0038】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、前記少なくとも1つのコンデンサレンズ104またはコンデンサレンズシステムはそれぞれ、第1のビーム分離器201と第2のビーム分離器202の間、または例えば
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示されているように1次ビーム源装置100と第1のビーム分離器201の間に配置することができる。したがって、コンデンサ光学系は、トランスファレンズ108とコンデンサレンズ104の組合せまたはトランスファレンズシステムとコンデンサレンズシステムの組合せを含むことができる。コンデンサ光学系は、限定はされないが、少なくとも2つの別個のレンズを含むレンズシステムを含むことができる。コンデンサ光学系を、補償1次荷電粒子ビーム502を第2のビーム分離器202に向かって導き、次いで対物レンズ301を使用して調査対象の試料300上に導くように適合させることができる。制御電極302は、対物レンズ301と試料300の間の荷電粒子ビーム伝搬経路上に配置することができる。制御電極302を、とりわけ試料300の位置における電界強度を調整し、したがって表面からの2次粒子の引出しを調整するように適合させることができる。補償1次荷電粒子ビーム502の荷電粒子が試料300に衝突する際の入射エネルギーは、電子銃101と試料300の間の電圧差によって規定される。
【0039】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、荷電粒子ビームカラム内で1次ビーム源装置100と対物レンズ301の間を伝播する1次荷電粒子ビーム501および/または補償1次荷電粒子ビーム502の荷電粒子は、少なくとも8keV、典型的には少なくとも15keVの高いビームブーストエネルギー(beam boost energy)、特に少なくとも30keVのエネルギーを有する。
【0040】
一方、他の変更または代替実施形態によれば、対物レンズ301内および/または対物レンズ301と試料300の間で、補償1次荷電粒子ビーム502の荷電粒子が、約1keV以下、典型的には約500eV以下の入射エネルギーまで減速される。したがって、高エネルギー荷電粒子ビーム伝搬経路を有し、かつ/または入射エネルギーに比べて約10〜50倍のビームエネルギーをカラム内において有する高エネルギービーム装置でも、電子−電子相互作用などの荷電粒子間の相互作用に起因する広幅化効果(broadening effect)および収差を低減させることができる。広幅化効果および収差を低減させることによって、本明細書に記載された実施形態に基づく荷電粒子ビーム装置の走査電子顕微鏡(SEM)としての適用は、複数の産業分野において、限定はされないが、製造中の電子回路の検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置などを含む、多くの機能を有することができる。
【0041】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、対物レンズ301を、減速電界静電レンズと静電磁気複合レンズとからなるグループから選択された低収差短焦点距離レンズとして提供することができる。補償1次荷電粒子ビーム502を試料300上に低入射エネルギーで微細に集束させることを達成することができる。
【0042】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、対物レンズ301または対物レンズシステムの球面収差および/または色収差に対して収差補償を実行することができる。これに加えてまたはその代わりに、コンデンサレンズ104またはコンデンサレンズシステムがシステム全体の収差に寄与する場合には、コンデンサレンズ104の球面収差および/または色収差に対して収差補償を実行することもできる。上で述べた収差は、色収差もしくは球面収差またはその両方を含むことができる。
【0043】
ここで、トランスファレンズ108を、コンデンサ光学系の部分とみなすことができることを指摘しておく。他方で、トランスファレンズ108を、少なくとも2つの別個のレンズを含むレンズシステムとして提供することができる。
【0044】
ミラー補正装置600によって反射された、収差補償情報を既に含む補償1次荷電粒子ビーム502は次いで、試料300をプロービングするための1次荷電粒子ビームとして使用される。補償1次荷電粒子ビーム502を使用して試料300をプロービングするとき、例えばSEMカラムの場合、1次電子ビームは、試料300の画像化および分析に使用することができる2次電子SEおよび/または後方散乱電子のような粒子を発生させる。試料300を分析するために、第2のビーム分離器202によって、試料300から生じた2次荷電粒子ビーム503が補償1次荷電粒子ビーム502から分離され、荷電粒子ビーム検出装置400に向かって導かれる。それによって、例えば走査電子顕微鏡SEMの場合、試料300から放出された2次電子SEが対物レンズ301を通過することができ、次いで、それらの2次電子SEを、荷電粒子ビーム検出装置400によって検出することができる。
【0045】
それによって、球面収差および色収差を補正する補正装置が組み込まれた単純なSEMアーキテクチャを提供することができる。本明細書のさまざまな実施形態に記載されたミラー補正装置構成は、多極補正器(multipole corrector)に比べて光学部品の数が少ないため、ロバストなアーキテクチャを提供することができる。本明細書に記載された実施形態に基づくSEMアーキテクチャは、およそ1/2ナノメートル以下(サブハーフナノメートル)の分解能を低入射エネルギーで提供することができる。さらに、2次電子SEを検出するための柔軟な配置および後方散乱電子BSEを検出するための柔軟な配置をそれぞれ提供することができる。それに加えて、実施形態に基づくSEMアーキテクチャは、汎用性のある1次電子ビーム/2次電子ビーム分離および軸上での検出を提供する。
【0046】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、ミラー補正装置600はいくつかの別個の電極を含むことができ、それらの電極の数は3つ、典型的には4つ、特に5以上である。
図1に関して上で論じたとおり、電極の数を増やすと、球面収差と色収差の両方の収差係数範囲の補償に対する柔軟性をより大きくすることができる。
【0047】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1のビーム分離器201を、少なくとも1つの双極子偏向磁界を有する単純な偏向要素として提供することができる。この少なくとも1つの双極子磁界は、第1のビーム分離器201内に提供された磁気偏向器によって発生させることができる。さらに、またはその代わりに、第1のビーム分離器201を、偏向扇形磁界ビーム分離器または結合交差静電磁界ビーム分離器として設計することもできる。1次ビーム源装置100によって1次荷電粒子ビーム501を発生させる。1次ビーム源装置100と第1のビーム分離器201の間の光学経路上に、開孔107を配置することができる。このようにすると、源出口開孔107を使用して、第1のビーム分離器201に入射する1次荷電粒子ビーム501の開口角を調整することができる。さらに、開孔107を使用して、ミラー光学系に入る荷電粒子ビームの開口角を制御することもできる。
【0048】
ミラー補正装置600に導かれたときの1次荷電粒子ビーム501の開口角509は、1次ビーム源装置100から発射された1次荷電粒子ビーム501を第1のビーム分離器201の中心に集束させるトランスファレンズ108の効果によって提供される立体角にほぼ一致する。さらに、電子銃101の仮想銃クロスオーバ点508の像を第1のビーム分離器201の中心に結ぶように、トランスファレンズ108を適合させることができる。それによって、第1のビーム分離器201の中心にクロスオーバ焦点507を置くことができ、したがって、第1のビーム分離器201に起因する収差を回避しまたは少なくとも低減させることができる。
【0049】
図3Dは、他の実施形態に基づく荷電粒子ビーム装置の略図である。
図3Dに示された荷電粒子ビーム装置の構成は、2つの検出器、すなわち第1の荷電粒子ビーム検出器401および第2の荷電粒子ビーム検出器402を含む。第1の荷電粒子ビーム検出器401は、
図1および2に関して上で説明した検出装置400に対応する。
【0050】
第2の荷電粒子ビーム検出器402は、2次荷電粒子ビーム503の2次荷電粒子を対物レンズと第2のビーム分離器202の間で検出するように適合された、ほぼ環状の検出装置またはセグメント化された検出装置である。
【0051】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、
図3Dに示された荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム伝搬経路上に配置された3つの追加のビーム偏向器203、204および205を含み、これらの追加のビーム偏向器は、荷電粒子ビームパラメータをさらに改良するように適合されており、特に、ビーム分散を少なくとも部分的に補償するように適合されている。
【0052】
図4は、荷電粒子ビーム源装置を動作させる方法を示す流れ図である。
図4に示されているように、手順の開始(ブロック801)後、1次ビーム源装置100によって1次荷電粒子ビーム501を発生させる(ブロック802)。次いで、ブロック803で、この手順は、第1のビーム分離器201を介して、1次荷電粒子ビーム501をミラー補正装置600に伝送すること、ならびにミラー補正装置600によって、荷電粒子ビーム装置の光学部品によって導入された球面収差および/または色収差を、補償1次荷電粒子ビーム502が提供されるような態様で補償することを提供する。
【0053】
さらに、ブロック804で、第1のビーム分離器201によって、ミラー補正装置600から受け取った補償1次荷電粒子ビーム502から1次荷電粒子ビーム501を分離する。この第1のビーム分離器は、少なくとも1つの双極子磁界を発生させるように構成された少なくとも1つの磁気偏向器を有する。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、1次荷電粒子ビーム501と補償1次荷電粒子ビーム502の両方を、第1のビーム分離器201の中心に集束させる。このようにすると、補償1次荷電粒子ビーム502が、源ビーム、すなわち1次荷電粒子ビーム501から、例えば収差を導入することなしに分離される。このようにすると、第1のビーム分離器201を出るときに第1のビーム分離器201によって1次荷電粒子ビーム501から分離された補償1次荷電粒子ビーム502は、球面収差および/または色収差、例えば完成した光学構成内に配置された光学部品の球面収差および/または色収差の補償を提供するように適合された補正波形を有する。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「補償1次荷電粒子ビーム」は時に、荷電粒子ビーム装置の光学部品および/または荷電粒子ビーム伝搬経路上に配置された光学部品によって導入される収差に対して「負の」収差を有する荷電粒子ビームと呼ばれる。一実施形態によれば、第1のビーム分離器201の中心の1次ビーム源装置100の像によって、仮想ビーム源を表すことができる。発射束(emitting bundle)を有するこの仮想ビーム源は、収差補正に対して少なくとも部分的に使用することができる波形情報を含むことができる。この波形情報は、補正装置によって生み出される対応するそれぞれの「負の」収差によって表すことができる。
【0055】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1のビーム分離器によって1次荷電粒子ビームから分離された補償1次荷電粒子ビームは、球面収差と色収差のうちの少なくとも一方の収差の補償を提供するように適合された補正波形を含むことができる。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、この補正波形は、光学システムの光学部品または光学システム内に配置された光学部品の収差に対して負の収差を含むことによって提供することができる。それによって、対応するそれぞれの負の収差を有する補正波形により、光学部品の球面収差および/または色収差を少なくとも部分的に補償することができる。
【0056】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、この荷電粒子ビーム装置内で分散補償を提供することができる。例えば
図3Cに示された要素307などの交差偏向静電磁界を有する少なくとも1つの要素によって、分散補償および/またはビームアライメントを実行することができる。
【0057】
次いで、ブロック805で、対物レンズ301によって、補償1次荷電粒子ビーム502を検査対象の試料300上に集束させる。試料300から生じた2次荷電粒子ビーム503を補償1次荷電粒子ビーム502から分離する(ブロック806)ために、第2のビーム分離器202が提供される。試料300から生じた2次荷電粒子ビーム503を、荷電粒子ビーム検出器401、402(例えば
図3D参照)で分析する(ブロック807)。この手順はブロック808で終了となる。
【0058】
本明細書では、1次ビーム源装置100と対物レンズ301の間を伝播する1次荷電粒子ビーム501および/または補償1次荷電粒子ビーム502の荷電粒子が、少なくとも8keV、典型的には少なくとも15keVの高いビームブーストエネルギー、特に少なくとも30keVのエネルギーを有する。1次ビーム源装置100内で電子ビームを発生させた場合、電子銃101およびそのアノード102はそれぞれ、中間ビームエネルギー(intermediate beam energy)への大きな電子加速を提供する。
【0059】
さらに、対物レンズ301内および/または対物レンズ301と試料300の間で、補償1次荷電粒子ビーム502の荷電粒子は、約5keV以下、典型的には約500eV以下の入射エネルギーまで減速される。この中間ビーム加速システムは、最初の高い粒子ビームエネルギーを1次荷電粒子ビーム501、502に提供することができる。荷電粒子は次いで、試料300にぶつかる直前にある入射エネルギーまで減速される。カラム内で荷電粒子が誘導される加速電圧V
accと荷電粒子が試料300にぶつかる入射電圧V
landingのエネルギー比またはビーム電圧比V
acc/V
landingは、少なくとも約5以上、例えば10以上、例えば10〜100とすることができる。
【0060】
これに加えてまたはその代わりに、荷電粒子ビームが、その荷電粒子の入射エネルギーで試料300に衝突する前に、
図1および3に示された制御電極302を使用して、1次荷電粒子ビームを減速することもできる。制御電極302を使用して、試料表面の2次粒子を解放する引出し電界を調整することもできる。他の変更または代替実施形態によれば、試料300をバイアスすることによって、試料上の1次電子の入射エネルギーを規定することができる。それによって、電子ビームの入射エネルギーを調整することができる。
【0061】
以前の収差補正アセンブリ、例えば多極補正器またはミラー補正器を使用して球面収差および/または色収差を補正する以前の収差補正アセンブリと比較して、本明細書に記載された実施形態は、低減された複雑さを有し、例えばビームスプリッタ、トランスファレンズなどをその有効な動作のために含む複雑な適応レイパス(adaption ray path)を回避することができる。これに応じて、球面収差および/または色収差を補正するミラー補正器を含む単純でロバストなSEMカラムアーキテクチャを提供することができる。実施形態は、以前に検討された、トランスファレンズと組み合わされた非常に複雑なビーム分割要素を回避する。このロバストな解決策は、CD、DRまたはEBI用途で使用されるプロセス診断ツール内での適用を可能にする。サブナノメートルの分解能を提供することができる。
【0062】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、これらの装置および方法を、電子ビーム検査システム、微小寸法測定用途および欠陥レビュー用途用に構成することができ、またはこれらの用途に対して適用することができる。特に、本明細書に記載された実施形態に基づく荷電粒子ビーム装置を、荷電粒子ビーム検査装置として使用することができ、この荷電粒子ビーム検査装置は、例えば欠陥レビュー用途、集積回路試験、微小寸法測定分析、高速走査などの用途向けに設計することができる。特に、荷電粒子として電子が使用される場合には、この荷電粒子ビーム検査装置を、電子ビーム検査(EBI)装置として設計することができる。
【0063】
特に、熱電界エミッタTFE、冷電界エミッタCFEまたはカーボンナノチューブを含む高輝度低エネルギー幅電子源を提供することができる。さらに、低収差短焦点距離対物レンズ301を使用することができ、この低収差短焦点距離対物レンズ301は、軸方向または半径方向の磁気ギャップを有する静電磁気複合レンズとして、もしくは減速電界静電レンズとして、または他の同種のレンズとして設計することができる。さらに、カラム内において、約8keV以上、例えば15keV以上、30keV以上の荷電粒子(例えば電子)の高いビームブーストエネルギーを達成することができ、その際には、対物レンズ内または対物レンズ301と試料300の間での荷電粒子ビームの低入射エネルギーへの減速を提供することができる。
【0064】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく本開示の他の追加の実施形態を考案することができる。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。