(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示されているように、従来の平行移動式のフック構造では、プランジャ等の付勢力により引き掛け幅を保持する構成となっていた。このため、従来の平行移動式のフック構造では、吊り下げ時の手持ち工具の重量や振動等の影響で引き掛け幅が広くなる方向に変化してしまい、その結果常時安定した姿勢で吊り下げておくことが困難であった。
【0006】
本発明は、一旦設定した引き掛け幅が確実に維持されて、手持ち工具を引き掛け対象に安定して吊り下げておくことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の各発明により解決される。
【0008】
第1の発明は、手持ち工具に備えられ、引き掛け対象に係合して手持ち工具を吊り下げることができるフックである。第1の発明は、引き掛け対象に対する引き掛け幅を変更できるフック本体と、引き掛け幅を変化させる方向に移動可能にフック本体を支持するフックベースと、フックベースに対するフック本体の移動をロックするロック機構を備えている。第1の発明において、ロック機構のアンロック操作方向は、フック本体の移動方向と本体幅方向との両方に交差する方向である。
【0009】
第1の発明によれば、引き掛け対象ごとに適した位置で引き掛け幅を固定できるため、引き掛け対象に依らず安定して手持ち工具を吊り下げることができる。また、第1の発明によれば、ロック機構のアンロック操作方向とフック本体の移動方向とが交差しているため、アンロック操作以外の外力等による意図しないロック解除を防ぐことができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、ロック機構のアンロック操作方向は、前記フック本体の板厚方向に一致する構成としたフックである。
【0011】
第2の発明によれば、アンロック操作方向が、フック本体の移動方向と本体幅方向の両方に交差する板厚方向に一致していることにより、フック移動操作に伴うロック機構の意図しないアンロック操作をより一層確実に防止することができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、フック本体が、その移動方向と本体幅方向との両方に交差する板厚方向に貫通するロック孔とスライド孔とを備えているフックである。第2の発明において、スライド孔は、フック本体の移動方向に延びている。第2の発明において、ロック孔は、スライド孔よりも大きな幅寸法でスライド孔に連接して設けられている。第2の発明において、ロック機構は、ロック孔内に進入してフック本体の移動をロックするストッパを備えている。
【0013】
第3の発明によれば、少ない部品点数でフック本体のロック機構と移動機構とを構成することができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、ストッパは、相互に幅寸法が異なる2つの柱状部を有しているフックである。第4の発明において、一方の柱状部は、スライド孔を通過不能で前記ロック孔を通過可能な幅寸法を有しており、他方の柱状部は、一方の柱状部よりも大きな幅寸法であって、スライド孔とロック孔の双方に対して通過不能な幅寸法を有している。第4の発明は、ストッパをフック本体の板厚方向に移動操作して、一方の柱状部をロック孔に進入させてフック本体の移動をロックするロック部として機能させ、他方の柱状部をロック孔及びスライド孔に対する当該ストッパの抜け止め部として機能させる構成としたフックである。
【0015】
第4の発明によれば、少ない部品点数で複雑な部品を用いずに、フック本体のロック機構と移動機構とを構成することができる。
【0016】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、ストッパにアンロック操作用のボタンを備えているフックである。第5の発明において、ボタンはその側面の少なくとも一部に平坦面を有している。第5の発明は、ボタンの平坦面を、フックベースに設けた平坦面に対向位置させて、ストッパの軸回りの回転を規制する構成としている。
【0017】
第5の発明によれば、ボタンの側面の少なくとも一部に平坦面が設けられている。ボタンの平坦面を、フックベース側の平坦面に対向位置させることにより当該ボタンひいてはストッパが軸回りに回転することを防ぐことができる。
【0018】
第6の発明は、第1〜第5の何れか一つの発明において、フック本体が、フックベースに対して引き掛け幅が広がる方向にばね付勢されたフックである。
【0019】
第6の発明によれば、片手でアンロック操作を行うだけで、引き掛け幅を広げることができる。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、フック本体の引き掛け幅を縮める方向への移動については、ロック機構を機能させない構成としたフックである。
【0021】
第7の発明によれば、引き掛け幅を縮める操作において、アンロック操作を必要とせず、片手で操作することができる。
【0022】
第8の発明は、第1〜第7の何れか一つの発明に記載したフックを備えた手持ち工具である。
【0023】
第8の発明によれば、多種多様な手持ち工具にフックを適用することができる。
【0024】
第9の発明は、手持ち工具に備えられ、引き掛け対象に係合させて手持ち工具を吊り下げておくためのフックを手持ち工具に対して組み付けるための方法である。第9の発明に係るフックは、引き掛け対象に対する引き掛け幅を変更できるフック本体と、引き掛け幅を変化させる方向にフック本体を移動可能に支持するフックベースと、フックベースに対するフック本体の移動をロックするロック機構を備えている。第9の発明に係るフック本体は、フック本体の移動方向と本体幅方向との双方に直交する方向に貫通するロック孔とスライド孔とを備えている。このスライド孔は、フック本体の移動方向に延びている。また、このロック孔は、スライド孔よりも大きな幅寸法でスライド孔に連接して設けられている。第9の発明に係るロック機構は、ロック孔内に進入してフック本体の移動をロックするストッパを備えている。第9の発明に係るフックベースは、ストッパを支持するストッパ支持孔と、フック本体をその移動方向に沿って挿通できるフック支持孔とを備えている。第9の発明に係るストッパは、相互に幅寸法が異なる第1〜第3の柱状部を有している。この第1〜第3の柱状部は、ストッパの端部に向けて第1、第2、第3の順に並んで配置されている。第9の発明に係る第1の柱状部は、フック本体のスライド孔内に進入可能な幅寸法を有している。第9の発明に係る第2の柱状部は、第1の柱状部より大きな幅寸法であって、スライド孔内に進入不能でロック孔内に進入可能な幅寸法を有している。第9の発明に係る第3の柱状部は、第2の柱状部より大きな幅寸法であって、スライド孔とロック孔の双方に進入不能な幅寸法を有している。第2及び第3柱状部の側面の少なくとも一部にはスライド孔内に進入可能とするための平坦面が設けられている。第9の発明は、先ずフック本体をフックベースのフック支持孔に挿通した状態で、ストッパをフックベースのストッパ支持孔に挿入する。第9の発明は、次に、第2及び第3の柱状部の平坦面をスライド孔内に進入させて当該第2及び第3の柱状部を該スライド孔の貫通方向反対側に位置させる。第9の発明は、次に、この状態でストッパをその軸回りに回転させて、第3の柱状部をストッパのスライド孔及びロック孔からの抜け止め部として機能させる。第9の発明は、その後、ストッパの頭部に、側面の少なくとも一部に平坦面を有する操作ボタンを取り付け、この操作ボタンの平坦面を、フックベースに設けた平坦面に対向位置させる。これらの手順により、第9の発明は、ストッパをその軸回りの回転を規制した状態で軸方向のロック位置とアンロック位置とに移動操作可能に組み付けることができる。
【0025】
第9の発明によれば、ストッパをフック本体に容易に組み付けることができる。また、第9の発明によれば、ストッパがフック本体のロック孔又はスライド孔から抜け出ることなく、組み付けられた状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフックを手持ち工具に取り付けた正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るフックの全体斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るフックの分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るフックの正面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るフックを
図4中矢印(V)方向から見た下面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るフックの透視斜視図である。本図では、ストッパとフック本体とが係合していない状態を示している。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るフックの透視斜視図である。本図では、ストッパがフック本体のスライド孔に係合している状態を示している。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るフックの透視斜視図である。本図では、
図7の状態からストッパをフック本体のスライド孔に沿ってスライドさせ、ストッパの第2の柱状部をフック本体のロック孔に係合させた状態を示している。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るフックの透視斜視図である。本図では、
図8の状態からストッパを上下方向の軸回りに回転させ、ストッパの第2の柱状部をフック本体のロック孔に係合させた状態を示している。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るフックの斜視図であって、フック本体がロック状態の場合を示している。
【
図11】
図4のA−A断面矢視を示す断面図であって、本発明の第1実施形態に係るフックの左断面図である。本図は、フック本体が
図10の位置にある状態を示している。
【
図12】
図5のB−B断面矢視を示す断面図であって、本発明の第1実施形態に係るフックの正面断面図である。本図は、フック本体が
図10の位置にある状態を示している。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るフックの全体斜視図であって、フック本体がアンロック状態の場合を示している。
【
図14】
図4のA−A断面矢視を示す断面図であって、本発明の第1実施形態に係るフックの左断面図である。本図は、フック本体が
図13の位置にある状態を示している。
【
図15】
図5のB−B断面矢視を示す断面図であって、本発明の第1実施形態に係るフックの正面断面図である。本図は、フック本体が
図13の位置にある状態を示している。
【
図16】本発明の第2実施形態に係るフックの分解斜視図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係るフックの正面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係るフックを
図17中矢印(XVIII)方向から見た下面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係るフックの斜視図であって、フック本体がロック位置にある状態を示している。
【
図20】
図17のC−C断面矢視を示す断面図であって、本発明の第2実施形態に係るフックの左断面図である。本図は、フック本体が
図19の位置にある状態を示している。
【
図21】
図18のD−D断面矢視を示す断面図であって、本発明の第2実施形態に係るフックの正面断面図である。本図は、フック本体が
図19の位置にある状態を示している。
【
図22】
図17のE−E断面矢視を示す断面図であって、本発明の第2実施形態に係るフックの左断面図である。本図は、フック本体が
図19の位置にある状態を示している。
【
図23】本発明の第2実施形態に係るフックの全体斜視図であって、フック本体がアンロック位置にある状態を示している。
【
図24】
図17のC−C断面矢視を示す断面図であって、本発明の第2実施形態に係るフックの左断面図である。本図は、フック本体が
図23の位置にある状態を示している。
【
図25】
図18のD−D断面矢視を示す断面図であって、本発明の第2実施形態に係るフックの正面断面図である。本図は、フック本体が
図23の位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の第1実施形態を
図1〜
図15に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態では、手持ち工具にフックを取り付ける一例として、釘打ち機1にフック2を取り付けた構成を例示する。
【0028】
第1実施形態に係るフック2の詳細が
図2以降に示されている。まず
図2及び
図3に示すように、フック2は、フック本体10と、フック本体10を支持するフックベース20と、ストッパ30と、ストッパ30に付勢力を与えるロックばね35と、ストッパ30に取り付けられる操作ボタン36とを組み付けることで構成される。
【0029】
フック本体10は、帯板形状の鋼板をL字形に折り曲げて製作したもので、移動部11と、移動部11の長手方向の端から延び、移動部11の板厚方向に長手方向を沿わせた腕部15とを備えている。図示するように以下の説明では、移動部11が延びる方向を前後方向とし、腕部15が延びる方向を上下方向とし、これらの幅方向を左右方向として、部材及び構成等の各方向を特定する。
【0030】
移動部11の左右幅方向の中央に、板厚方向に貫通する2つのロック孔12と1つのスライド孔13とが設けられている。スライド孔13は、移動部11の長手方向に延びて設けられている。ロック孔12は、左右幅方向の中央に中心が位置する略円形の孔であり、ロック孔12の孔径は、スライド孔13の幅よりも大きく設けられている。ロック孔12は、スライド孔13の長手方向に延びた両端にそれぞれ1つずつ、スライド孔13と連接して設けられている。
図3に示すように、連接した2つのロック孔12と1つのスライド孔13とは、移動部11の外側面11aの正面から見るといわゆるだるま孔形状になっている。
【0031】
図3に示すように、フックベース20は、箱形形状の取り付け部20aと、取り付け部20aから前方に延びる平板形状の支持部20bとを備えている。取り付け部20aは、支持部20bが延びる方向と反対側の面(後面)が、釘打ち機1に対する取り付け面20cになっている。取り付け部20aには、取り付け面20cに直交して取り付け面20cを貫通するボルト孔20dが設けられている。
図1及び
図3に示すように、フック2の取り付けにあたっては、フックベース20に設けられた取り付け面20cを、釘打ち機1のグリップ部1aの下部であって、使用者の作業性を損なわない面に当接させる。取り付け面20cを釘打ち機1の当該面に当接させた状態で、取り付け面20cに直交して取り付け面20cを貫通するボルト孔20dに挿通したボルトによりねじ締結させることで、フックベース20が釘打ち機1に固定される。引き掛け対象に係合させるフック2の腕部15は、グリップ部1aの長手方向に沿って、釘打ち機1の工具本体に向かって上側に延びている。これにより、引き掛け対象にフック2を係合させたとき、釘打ち機1の重心がフック2の下方に位置するため、釘打ち機1を安定した状態で吊り下げることができる。
【0032】
フックベース20の支持部20bは、フック本体10とストッパ30とを組み付ける部分にあたる。
図11及び
図12に示すように支持部20bには、前方から後方に向かってフック本体10の移動部11を長手方向に挿通させる深い溝孔形状のフック支持孔23と、ストッパ30を挿通させる円形のストッパ支持孔21とを備えている。ストッパ支持孔21とフック支持孔23とは、互いに直交して連接している。ストッパ支持孔21は支持部20bを貫通せず、底部21aを有している。底部21aは、ストッパ支持孔21の入口から見て、ストッパ支持孔21を横断するフック支持孔23の下面よりも奥側にある。これにより、フック支持孔23に移動部11を挿通した時、移動部11の内側面11bよりも奥側にストッパ30の一部が位置することができるスペースが存在する。ストッパ支持孔21の入口側(開口側)は、ボタン配置凹部22になっている。ボタン配置凹部22は、その開けた側(入口側)から見て略矩形に設けられている。ボタン配置凹部22には、操作ボタン36をストッパ30に取り付けた時、操作ボタン36が収まるようにして配置される。
【0033】
図3に示すように、ストッパ30は、樹脂製で、第1の柱状部31と第2の柱状部32と第3の柱状部33との、最大径が異なる概ね円柱形状の3つの柱状部で構成されている。第1〜第3の柱状部31〜33は、同軸で一体に設けられており、下側から順に、第1の柱状部31、第2の柱状部32、第3の柱状部33の順に並んで配置されている。第1の柱状部31の下部は、アンロック操作を行うための操作ボタン36を取り付けるためのボタン嵌合部31aとなっている。ボタン嵌合部31aには、円柱形状の側部の一部が面取りされてなる嵌合平面部31bが設けられている。第2の柱状部32と第3の柱状部33には、相互に面一の二面幅部32a、33aが設けられている。この二面幅部32a、33aは、側面の一部を平坦面に形成した部分でその幅寸法は、フック本体10のスライド孔13に進入できるように設定されている。一方、第2の柱状部32と第3の柱状部33との二面幅になっていない側部は、径方向に円柱形状に膨出した膨出部32b及び膨出部33bである。
【0034】
第1の柱状部31の径はスライド孔13の幅よりも小さくなっているため、第1の柱状部31はスライド孔13に進入できる。また、上記したように第2の柱状部32と第3の柱状部33の二面幅部32a、33aはスライド孔13に進入可能な幅寸法に設定されている。これにより、二面幅部32aと二面幅部33aとの面方向がスライド孔13の延びる方向に沿った向きの場合、第2の柱状部32と第3の柱状部33とは、スライド孔13に進入できる。一方、第2の柱状部32の膨出部32bの径は、スライド孔13の幅より大きく、かつ、ロック孔12の孔径よりも小さくなっている。これにより、第2の柱状部32は、ロック孔12には条件によらず進入できるが、スライド孔13には、二面幅部32aの面方向とスライド孔13の延びる方向とが交差する場合、進入できない。また、第3の柱状部33の膨出部33bの径は、ロック孔12の孔径よりも大きくなっている。これにより、第3の柱状部33は、二面幅部33aの面方向とスライド孔13の延びる方向とが交差する組付け状態では、ロック孔12にもスライド孔13にも進入できない。
図12に示すように組付け状態では、第3の柱状部33の膨出部33bがフック本体10の内側面11bに当接されて、当該ストッパ30の移動部11に対する下方への変位(脱落)が規制されている。また、組み付け状態では、第2の柱状部32の膨出部32bがロック孔12内に進入可能となる。第2の柱状部32の膨出部32bの径は、スライド孔13の幅寸法よりも大きく設定されているため、この組付け状態において第2の柱状部32の膨出部32bはスライド孔13内に進入不能であり、これによりフック本体10の前後位置がロックされた状態となる。二面幅部32a、33aは、当該ストッパ30をフック本体10に対して組み付ける際の便宜を図るために設けられたもので、その組み付け手順については後述する。
【0035】
ストッパ30とストッパ支持孔21の底部21aとの間には、ロックばね35が介装されている。ストッパ30の上端面(第3の柱状部33の上面)には、軸方向に延びるロックばね孔34が設けられている。ロックばね孔34は、ロックばね35を配置するための孔であり、孔の深さがロックばね35の自然長よりも短く設けられている。ロックばね35の付勢力により、ストッパ30は下方へ移動する方向(ロック位置側)に付勢されている。
【0036】
ストッパ30の下部に結合された操作ボタン36は、ウレタン等の樹脂で構成される平面視矩形のボタンである。操作ボタン36の上面には、ストッパ30を取り付けるためのストッパ嵌合孔36aが設けられている。ストッパ嵌合孔36aは、ストッパ30のボタン嵌合部31aと嵌め合いになる形状を有している。すなわち、ストッパ嵌合孔36aは、孔形状が概ね円形状であり、一部が嵌合平面部31bに対応する平面の側壁の嵌合平面部36bとなっている。これにより、操作ボタン36に嵌め込んだストッパ30が、操作ボタン36に対して軸回りに回転することを防止することができる。
【0037】
次に、フック本体10とストッパ30とをフックベース20に組み付ける手順を、
図3、及び
図6〜
図9で示す。組み付けにおいては、まず、
図6に示すように、フック本体10の移動部11をフックベース20のフック支持孔23に挿通する。このとき、ストッパ支持孔21の入口から見て、奥側にスライド孔13が見える位置まで移動部11を挿通する。次に、ロックばね35(
図6〜
図9では図示省略)を、ストッパ30に設けたロックばね孔34に挿通する。その後、ストッパ30を、二面幅部32a及び二面幅部33aの面方向がスライド孔13の延びる方向に沿った向き、かつ、第3の柱状部33側の端部が移動部11の外側面11aと対面する向きで、スライド孔13に孔貫通方向に進入させる。次に、
図7に示すように、第3の柱状部33を移動部11の内側面11bから突き出させた状態で、
図8に示すように、ロック孔12までスライド孔13に沿って移動させる。その後、
図8の状態から、
図9に示すようにストッパ30を軸回りに概ね90°回転させて、二面幅部32aと二面幅部33aとの面方向がスライド孔13の延びる方向と交差する状態にする。
図9の状態において、第3の柱状部33の膨出部33bがロック孔12に進入できないため、ストッパ30は、内側面11bから外側面11aへの向き(
図9において下向き)にロック孔12を抜け出ることができなくなる。
図9の状態において、第2の柱状部32の膨出部32bは、ロック孔12には進入できるが、スライド孔13には進入できない。このため、
図9の状態で第2の柱状部32がロック孔12に係合している時、ストッパ30は、ロック孔12からスライド孔13へと進入できない。すなわち、
図9の状態で第2の柱状部32がロック孔12に係合した状態が、移動部11がロック位置にある状態にあたる。第1の柱状部31はロック孔12にもスライド孔13にも進入できる。このため、第1の柱状部31がスライド孔13に進入している時、ストッパ30は、スライド孔13の延びる方向に沿って当該スライド孔13内を相対的に自在に平行移動させることができる。すなわち、第1の柱状部31がスライド孔13に進入した状態が、移動部11がアンロック位置にある状態にあたる。最後に、
図9の状態において、操作ボタン36のストッパ嵌合孔36aをボタン嵌合部31aと嵌め合い、操作ボタン36をボタン配置凹部22に嵌め込ませる。
図9の状態において、操作ボタン36をボタン配置凹部22に嵌め込むことができるような向きに、嵌合平面部31bと嵌合平面部36bとがあらかじめ配置されている。以上の手順を経て組み付けが完了した状態のフック2が
図10〜
図15に示されている。
【0038】
フック本体10の移動をロック、アンロックする態様を
図10〜
図15に示す。
図10〜
図12に示すように、移動部11がロック状態の時、ストッパ30の第2の柱状部32が移動部11に設けられたロック孔12を貫通した状態で係合している。ストッパ30には、ロックばね35によって、ロック孔12の貫通方向で操作ボタン36が位置する向きに付勢力が働いている。第2の柱状部32は、ロック孔12には進入できるが、スライド孔13には進入できない。これにより、ロックばね35の付勢力に抗して第2の柱状部32をロック孔12から外さない限り、移動部11は移動しない。すなわち、ロックばね35の付勢力に抗したアンロック操作を行わない限り、移動部11のロック状態が維持される。
【0039】
ロックばね35の付勢力に抗して操作ボタン36を押し操作をして、第2の柱状部32とロック孔12との係合を外すと、移動部11はアンロック状態になる。
図13〜
図15に示すように、移動部11がアンロック状態の時、ストッパ30の第1の柱状部31が移動部11に設けられたロック孔12又はスライド孔13を貫通した状態で係合している。第1の柱状部31は、ロック孔12とスライド孔13との両方に進入できるため、操作ボタン36を押し操作している間、移動部11を前後方向に移動させることができる。移動部11がアンロック位置(第1の柱状部31をスライド孔13内に位置させる位置)にある時、ストッパ支持孔21の奥側(
図15においては上側)に押し込まれた第2の柱状部32は、スライド孔13に進入することができない。このため、移動部11がアンロック位置にある時、操作ボタン36は押し操作された状態のまま保たれ、移動部11のアンロック状態が維持される。移動部11が再びロック位置(第1の柱状部31をロック孔12内に位置させる位置)に来た時、ロックばね35の付勢力によって第2の柱状部32がロック孔12に自動的に進入し、移動部11はロック状態になる。
【0040】
図11、
図12、
図14、
図15に示すように、移動部11は、フックベース20とストッパ30とを除く部品には直接接触していない。例えば、ロックばね35は、移動部11がロック状態かアンロック状態かによらず、移動部11に直接接触していない。これにより、アンロック状態の時には、ロックばね35と移動部11との間に摩擦力等が生じることなく、移動部11を小さな力で楽に移動させることができる。
【0041】
以上説明した本発明の第1実施形態によれば、ストッパ30の第2の柱状部32と移動部11に設けた2つのロック孔12との係合によって、引き掛け幅Wを2段階の位置で固定することができる。これにより、例えば、手持ち工具を腰ベルトに引き掛ける場合と脚立や足場に引き掛ける場合とで、最適な引き掛け幅Wへと適宜変更して固定することができる。また、第1実施形態によれば、操作ボタン36の操作方向が、フック本体10の移動方向及び左右幅方向の双方に対して交差する方向に設定されている。このため、フック本体に対して移動させる方向の力が付加されたことによりロック機構が不用意にロック解除されてしまうことを防止することができる。特に、従来ディテントやプランジャを用いたロック機構による場合とは異なって、フック本体10に対して前後方向の外力が付加されてもストッパ30が移動してしまうことがなく、これにより当該フック本体10の移動操作中に不用意なロック、アンロック操作されてしまうことがなく、この点で当該フック2の操作性を高めることができる。さらに、移動部11のロック状態は、操作ボタン36を押し操作して第2の柱状部32とロック孔12との係合を外さない限り継続される。このため、手持ち工具の重量や振動等の影響で移動部11のロック状態が解除され、引き掛け幅Wが変化する、ということを防ぐことができる。
【0042】
さらに、第1実施形態によれば、フック本体10の移動は、フック支持孔23に沿った移動に制限される。また、第1実施形態によれば、上面視で略距形の操作ボタン36が、ボタン配置凹部22の同じく略矩形の凹部分に係合することによって、操作ボタン36がボタン配置凹部22で回転することがない。このため、操作ボタン36を嵌め込んだ状態のストッパ30は、その軸回りに回転することがない。すなわち、第1実施形態によれば、フック本体10とストッパ30とは、互いに向きが変わることなく係合するため、ストッパ30がロック孔12又はスライド孔13から抜け出ることを防ぐことができ、これにより当該フック2の確実なロック、アンロック動作を得ることができる。
【0043】
また、第1実施形態によれば、フック本体10とフックベース20とストッパ30とロックばね35と操作ボタン36との、少ない部品を組み付けることで、移動部11をロックする機構及び移動させる機構を実現させることができる。また、この組み付けに際しては、特別な道具を用いることなく組み付けることができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態を
図1〜
図2、
図6〜
図9、及び
図16〜
図25に基づいて説明する。本発明の第2実施形態に係るフック42は、外観やフックの取り付け対象、ロック機構の組み付け手順等が第1実施形態に係るフック2と同様である。このため、第1実施形態と異なる構成を含む部品、部分についてのみ、第1実施形態と符号を変えて詳細に説明することとする。また、第1実施形態と同様の構成の部品、部分については、第1実施形態と同じ符号を用いることとする。
【0045】
第2実施形態では、手持ち工具にフックを取り付ける一例として、
図2に示すように、釘打ち機1にフック42を取り付けることとする。フック42の取り付けについては、第1実施形態と同様に行う。
図16に示すように、フック42は、フック本体10と、フック本体10を支持するフックベース20と、フック本体10に付勢力を与える2つのフック幅拡張ばね57と、ストッパ30と、ストッパ30に付勢力を与えるロックばね55と、ストッパ30に取り付けられる操作ボタン36とを組み付けることで構成される。なお、フック幅拡張ばね57の詳細については後述する。
【0046】
図16に示すように、第2実施形態のフック本体10は、帯板形状の移動部11部分のみ、第1実施形態のフック本体10と異なる形態をしている。移動部11には、フック本体10の本体幅方向についてほぼ中央に、板厚方向に貫通する1つのロック孔12と1つのスライド孔13とが設けられている。移動部11は、第1実施形態の移動部11と比較すると、腕部15に近い側に1つだけロック孔12が設けられている。すなわち、引き掛け幅Wが最小の時のみ移動部11はロック状態になるように、1つのロック孔12が設けられている。移動部11には、2つのばね溝14が設けられている。2つのばね溝14は、スライド孔13の左右両側に設けられている。ばね溝14は、移動部11の後端部から一定の深さで切り込まれてスライド孔13に沿った方向に延びている。ばね溝14は、溝幅がフック幅拡張ばね57の外径よりも大きく設けられ、溝底14aまでの溝深さがフック幅拡張ばね57の自然長よりも短く設けられている。具体的には、引き掛け幅Wが最小になる位置まで移動部11をフック支持孔23に押し込んだ時に、ばね溝14に収まっているフック幅拡張ばね57が自然長よりも縮まって、移動部11に対して付勢力を与えることができるように、ばね溝14の溝深さが設けられている。ばね溝14は、移動部11の板厚方向については貫通して設けられている。
【0047】
図16に示すように、第2実施形態のフックベース20は、第1実施形態のフックベース20と同様に、取り付け部20aと支持部20bとを有している。また、第2実施形態のフックベース20は、第1実施形態のフックベース20と同様に、取り付け部20aには、取り付け面20cとボルト孔20dとが設けられ、支持部20bには、フック支持孔23とストッパ支持孔21とが設けられている。フックベース20には、後述するフック幅拡張ばね57を挿通して配置するためのばね挿通孔24が2つ設けられている。ばね挿通孔24は、フック支持孔23に沿って、フック支持孔23と重なって設けられている。ばね挿通孔24は、フック支持孔23に移動部11を挿通した時、ばね溝14と同じ位置になるように設けられている。
【0048】
図16に示すように、第2実施形態のストッパ30は、第1実施形態のストッパ30と同様に、第1の柱状部31と第2の柱状部32と第3の柱状部33との3つの柱状部で構成されている。第2実施形態のストッパ30は、第1実施形態のストッパ30と比較すると、ロックばね孔34が設けられていない。第2実施形態では、ストッパ30の内側に配置されるロックばね35の代わりに、ストッパ30の軸回りについて外側を覆う形状のロックばね55を用いる。
図20、
図21、
図24、
図25に示すように、操作ボタン36には、ストッパ嵌合孔36aの軸方向について外側に、ロックばね55の一端を挿通して支持するためのロックばね支持溝36cが、環状形状を有して設けられている。
【0049】
次に、第2実施形態のフック本体10とストッパ30とをフックベース20に組み付ける手順について説明する。組み付け手順は、
図6〜
図9で示す第1実施形態の場合と概ね同様である。組み付けにおける第1実施形態との相違点は、第1実施形態のロックばね35が、ロックばね孔34の孔底とストッパ支持孔21の底部21aとによって挟み込まれているのに対し、第2実施形態のロックばね55は、ロックばね支持溝36cとボタン配置凹部22の底面との間に挟み込まれている点である。すなわち、まず
図9に示すように、ストッパ30をロック孔12に組み付ける。その後に、
図16に示すように、ストッパ30を覆うようにロックばね55を配置して、ロックばね支持溝36cにロックばね55が嵌め合うようにして、ボタン嵌合部31aに操作ボタン36を取り付ける。
【0050】
フック本体10の移動をロック、アンロックする態様を
図19〜
図25に示す。
図19〜
図21に示すように、移動部11が小さい引き掛け幅Wでのロック状態の時、ストッパ30の第2の柱状部32が移動部11に設けられたロック孔12を貫通した状態で係合している。ストッパ30には、ロックばね支持溝36cとボタン配置凹部22の底面との間に備えられたロックばね55がばね長さを縮めていることによって、ロック孔12の貫通方向で操作ボタン36を取り付けた側への向きに付勢力が働いている。第2の柱状部32は、ロック孔12には進入できるが、スライド孔13には進入できない。これにより、ロックばね55の付勢力に抗して操作ボタン36を押し込み方向に操作して第2の柱状部32をロック孔12から上方へ抜き出す方向に外さない限り、移動部11は移動しない。すなわち、操作ボタン36の、付勢力に抗したアンロック操作を行わない限り、移動部11の小さい引き掛け幅Wでのロック状態が維持される。
図22に示すように、移動部11が小さい引き掛け幅Wでのロック状態の時は、フック本体10の引き掛け幅Wが最小の時でもある。このため、移動部11がロック状態の時は、ばね溝14の端部とばね挿通孔24の孔底との間に挟まれたフック幅拡張ばね57はばね長さが縮んだ状態になり、移動部11には引き掛け幅Wが広がる方向に付勢力が働いている。
【0051】
ロックばね55の付勢力に抗して操作ボタン36を押し操作をして、第2の柱状部32とロック孔12との係合を外すと、移動部11はアンロック状態になる。
図23〜
図25に示すように、移動部11がアンロック状態の時、ストッパ30の第1の柱状部31が移動部11に設けられたロック孔12又はスライド孔13の内部に位置する状態となる。第1の柱状部31は、ロック孔12とスライド孔13との両方に進入できるため、操作ボタン36を押し操作すると、移動部11をアンロック位置に移動させることができる。一方、移動部11がロック状態の時、移動部11は、フック幅拡張ばね57によって引き掛け幅Wが広がる方向に付勢力が働いている。これにより、移動部11がアンロック状態になると、移動部11は、フック幅拡張ばね37の付勢力によって自動的に引き掛け幅Wが広がる方向に移動する。移動部11がアンロック位置にある時、ストッパ支持孔21の奥側(
図25においては上側)に押し込まれた第2の柱状部32は、スライド孔13に進入することができない。また、移動部11のアンロック位置は、フック幅拡張ばね57の付勢力によって保持されるため、引き掛け幅Wが広い状態に維持される。このため、移動部11がアンロック位置にある時、操作ボタン36は押し操作された状態のまま保たれ、移動部11のアンロック状態が維持される。移動部11をアンロック位置からロック位置に移動させて引き掛け幅Wを縮める場合は、フック幅拡張ばね57の付勢力に抗して移動部11をフックベース20側へと押し操作する。移動部11の押し操作は、操作ボタン36の押し操作等の他の操作を行う必要がないため、片手で行うことができる。移動部11がロック位置に来ると、ロックばね55の付勢力によって第2の柱状部32がロック孔12に自動的に進入し、移動部11はロック状態になる。
【0052】
図21、
図22、
図24、
図25に示すように、移動部11は、フックベース20とストッパ30とフック幅拡張ばね57とを除く部品には直接接触していない。特にロックばね55は、移動部11がロック状態かアンロック状態かによらず、移動部11に直接接触していない。これにより、操作ボタン36を押し操作してアンロック操作をする時、ロックばね55の付勢力が移動部11の移動動作に対して抵抗として付加されることがないことから、移動部11(フック本体10)をフック幅拡張ばね57の付勢力によって引き掛け幅Wを大きくする側へスムーズに移動させることができる。
【0053】
以上説明した本発明の第2実施形態によれば、ストッパ30の第2の柱状部32と移動部11に設けた1つのロック孔12との係合によって、引き掛け幅Wが最小の位置で移動部11を固定することができる。これにより、最小の引き掛け幅Wを、例えば、手持ち工具を腰ベルトに引き掛ける場合に最適な引き掛け幅に設けることで、手持ち工具を腰ベルト等に安定して引き掛けることができる。また、第2実施形態によれば、操作ボタン36を押し操作して移動部11をアンロック状態にするだけで、フック幅拡張ばね57の付勢力によって自動的に、移動部11をアンロック位置(引き掛け幅Wが広い位置)へと移動させることができる。また、第2実施形態によれば、操作ボタン36の押し操作等の操作を行わず、フック幅拡張ばね57の付勢力に抗して移動部11をフックベース20側へと押し操作するだけで、引き掛け幅Wが広がった状態から縮めることができる。
【0054】
また、第2実施形態によれば、第1実施形態にフック幅拡張ばね57を追加する構成を備えるだけで、移動部11をロックする機構及び自動的に移動させる機構を組み付けることができる。また、この組み付けに際しては、特別な道具を用いることなく組み付けることができる。
【0055】
以上説明した第1、第2実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、フックを取り付ける手持ち工具は、釘打ち機に限らず、ドライバ、ドリル、マルノコ、カッタ、ブロワ、グラインダ等としてもよい。フック本体にロック孔を2つまたは1つ設ける構成を例示したが、ロック孔を3つ以上設けて、引き掛け幅Wを変更できる段階数を増やしてもよい。いわゆるL字形のフック本体を例示したが、引き掛け対象に引き掛けられる形状であれば、例えば、いわゆるU字形やコ字形等としてもよい。
【0056】
W…引き掛け幅
1…釘打ち機、1a…グリップ部
2…フック
10…フック本体
11…移動部、11a…外側面、11b…内側面
12…ロック孔
13…スライド孔
14…ばね溝、14a…溝底
15…腕部
20…フックベース
20a…取り付け部、20b…支持部、20c…取り付け面、20d…ボルト孔
21…ストッパ支持孔、21a…底部
22…ボタン配置凹部
23…フック支持孔
24…ばね挿通孔
30…ストッパ
31…第1の柱状部、31a…ボタン嵌合部、31b…嵌合平面部
32…第2の柱状部、32a…二面幅部、32b…膨出部
33…第3の柱状部、33a…二面幅部、33b…膨出部
34…ロックばね孔
35…ロックばね
36…操作ボタン
36a…ストッパ嵌合孔、36b…嵌合平面部、36c…ロックばね支持溝
42…フック
55…ロックばね
57…フック幅拡張ばね