特許第6810903号(P6810903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810903電子機器及び軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810903
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】電子機器及び軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20201228BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20201228BHJP
   G01S 19/49 20100101ALI20201228BHJP
   G01S 19/34 20100101ALI20201228BHJP
【FI】
   G01C21/26 P
   G08G1/005
   G01S19/49
   G01S19/34
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-253143(P2015-253143)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116443(P2017-116443A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】遠田 尚登
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−008154(JP,A)
【文献】 特開2009−229205(JP,A)
【文献】 特開2013−076671(JP,A)
【文献】 特開2013−019725(JP,A)
【文献】 特開2012−052898(JP,A)
【文献】 特開2003−207351(JP,A)
【文献】 特開2015−111096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0156337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G08G 1/00 − 99/00
G01S 5/00 − 5/14
G01S 19/00 − 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
前記電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、
通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、
前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
記憶部を有し、
前記制御部は、
前記電子機器が前記移動経路の始点から終点までを少なくとも1回移動する間に、前記センサ部により検出されるセンサデータによる自律航法に基づく第1位置情報及び前記信号受信部により測位される前記現在位置の第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づいて軌跡情報を取得し、前記第1位置情報、前記センサデータ、前記第2位置情報及び前記信号受信部における前記電波信号の受信状況の少なくとも何れかに基づいて、前記移動経路上の前記経路情報を取得し、前記軌跡情報と前記経路情報とを互いに対応付けて前記記憶部に保存し、
前記記憶部に前記軌跡情報と前記経路情報とが保存された後に前記電子機器が前記移動経路を移動する際に、前記記憶部に保存されている前記軌跡情報と前記経路情報とに基づいて、前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記移動経路を初回に移動した際に取得した前記第1位置情報及び前記第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づく初回の前記軌跡情報を、前記移動経路を次回以降に移動した際に取得した前記第1位置情報及び前記第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づく次回以降の前記軌跡情報に置き換えて更新することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記初回に移動する前記特定の移動経路は前記始点から前記終点に移動する往路であり、前記次回以降に移動する前記特定の移動経路は前記終点から前記始点に移動する復路であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域は、前記センサデータの変化が規定値を逸脱している状態、又は、前記信号受信部における前記電波信号の受信不良状態に起因する特性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記センサ部の前記モーションセンサは、加速度センサ、角速度センサ及び地磁気センサを有し、
前記制御部は、
前記電子機器が前記移動経路を移動する際に、前記軌跡情報及び前記経路情報に応じて、 前記信号受信部における前記測位動作を停止させ、前記センサ部を動作させて前記自律航法により前記第1位置情報を取得する第1の測位モードと、
前記信号受信部における前記測位動作の周期を所定の第1周期より短くして、前記信号受信部が前記測位動作を行っていない期間に前記センサ部を動作させる第2の測位モードと、
前記信号受信部における前記測位動作の周期を前記第1周期より長くして、前記信号受信部が前記測位動作を行っていない期間に前記センサ部を動作させる第3の測位モードと、
前記センサ部の前記地磁気センサを停止させ、前記角速度センサを動作させ、前記角速度センサにより検出されるデータを前記センサデータとして用いて、前記自律航法に基づいて前記第1位置情報を取得する第4の測位モードと、
前記信号受信部にエフェメリス情報を取得させる第5の測位モードと、
を含む複数の測位モードのうちのいずれかに切り替える制御をすることを特徴とする請求項2乃至のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器の軌跡情報取得方法であって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する、
ことを特徴とする軌跡情報取得方法。
【請求項8】
電子機器の軌跡情報取得プログラムであって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
コンピュータに、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御させる、
ことを特徴とする軌跡情報取得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの移動軌跡に関する情報を収集する機能を備える電子機器、及び、その軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向や自然への関心の高まりにより、登山やトレッキングをはじめ、サイクリングやランニング等を楽しむ人々が増加している。このような移動を伴う動作においては、軌跡情報を収集するロガーと呼ばれる端末を携帯することにより、自分が行動した軌跡(移動軌跡)を取得して、記録として残したり、運動状態の分析等に利用したりすることができる。ここで、軌跡情報を収集する端末は、携帯時に支障にならないように小型軽量であることが好まれるため、内蔵する電池(バッテリ)の容量が制約されることになり、端末を長時間駆動させることが難しい。一方、屋外で移動中の現在位置を測定する手法としては、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を用いた測位方法が一般に知られているが、この測位方法は消費電力が大きいという問題を有している。
【0003】
そのため、例えば特許文献1等に記載されているように、GPSを用いた測位手段を間欠的に動作させるとともに、GPS測位手段がオフ状態の期間では、加速度センサや地磁気センサ等を用いた自律航法(デッドレコニング)により現在位置を推測する手法が提案されている。これによれば、消費電力の大きいGPS測位手段の動作を極力抑制することができるとともに、消費電力の小さいセンサを用いた自律航法により、GPS測位手段がオフ状態の位置情報を補完することができ、測位精度を保ちつつ省電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−134066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなGPS測位機能と自律航法とを切り替えて位置情報を取得する手法においては、次のような問題を有している。すなわち、一般に、加速度センサや地磁気センサ等を用いた自律航法においては、上下の高低差が小さく、急な曲がり角等がない、比較的なだらかな地形の経路では、ある程度の測位精度を維持することはできるが、登山やトレッキング等において出現頻度の高い急峻な坂道や急な曲がり角、鎖場等が存在する経路では十分な測位精度を得られない場合がある。また、経路の近傍に鉄塔等の鉄製構造物が存在する場合や地質的に磁場が乱れている地域等では地磁気を正確に検出することができず、測位精度が低下する場合がある。このような場合には、正確な移動軌跡を取得することができないという問題を有している。
【0006】
そこで、本発明においては上記の問題点に鑑みて、消費電力を抑制しつつ、移動軌跡の精度を向上させることができる機能を備える電子機器、及び、その軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
電子機器であって、
前記電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、
通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、
前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明は、
電子機器の軌跡情報取得方法であって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、
電子機器の軌跡情報取得プログラムであって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
コンピュータに、
予め取得されている、前記センサ部によるセンサデータの取得又は前記信号受信部による前記測位に関する情報の取得に影響を及ぼす特定の移動経路上の複数の領域の各々に設定されている、前記センサ部及び前記信号受信部の少なくとも何れか一方の制御に関わる特性に基づく経路情報を用いて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの移動軌跡に関する情報を収集する機能を備える電子機器の消費電力を抑制しつつ、移動軌跡の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電子機器の概略構成の一例を示す概略ブロック図である。
図2】一実施形態に係る電子機器を携帯して特定の経路を往路として移動する場合の、軌跡情報取得方法の一例を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る電子機器の測位動作(基本動作)の一例を示すタイミングチャートである。
図4】一実施形態に係る電子機器を携帯して移動する特定の経路(往路)の一例を示す概略図である。
図5】一実施形態に係る電子機器を携帯して往路を移動する際に収集される経路情報の一例を示す概略図である。
図6】一実施形態に係る電子機器を携帯して特定の経路を復路として移動する場合の、軌跡情報取得方法の一例を示すフローチャートである。
図7】一実施形態に係る電子機器を携帯して移動する特定の経路(復路)の一例を示す概略図である。
図8】一実施形態に係る電子機器の測位動作の一例を示すタイミングチャートである。
図9】一実施形態に係る軌跡情報取得方法により置き換えられる移動軌跡の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電子機器、及び、その軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の実施形態においては、本発明に係る電子機器を登山やトレッキングに適用した場合について説明する。
【0013】
(電子機器)
図1は、本発明に係る電子機器の概略構成の一例を示す概略ブロック図である。
電子機器100は、例えば図1に示すように、概略、センサ部110と、信号受信部120と、制御部130と、ROM140、RAM150と、ストレージ(記憶部)160と、通信部170と、を有している。
【0014】
センサ部110は、ユーザの動作による電子機器100の空間的な動作を検出するモーションセンサとして、少なくとも加速度センサと地磁気センサと角速度センサ(ジャイロセンサ)と気圧センサとを有している。これらのモーションセンサにより検出されたセンサデータは、後述する制御部130において自律航法による測位動作(第1測位動作)より現在位置を測位して、現在位置の位置情報(第1位置情報)を取得したり、経路の特徴を検出したりする際に使用される。信号受信部120は、複数の通信衛星からの電波信号(例えば、GPS信号)を受信して、受信した電波信号に基づく測位動作(以下、GPS測位動作とも記す:第2測位動作)により現在位置を測位して、測位した現在位置の緯度、経度情報に基づく地理的な位置情報(第2位置情報)を取得する。本実施形態においては、信号受信部120は、所定の時間間隔で間欠的に動作して、ユーザの現在位置を測位する。
【0015】
制御部130は、CPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)であって、所定のプログラムを実行することにより、センサ部110や信号受信部120におけるセンシング動作や、ストレージ160における各種のデータの読み書き動作、通信部170における送受信動作等、電子機器100全体の動作を制御する。特に、本実施形態においては、制御部130は、センサ部110のモーションセンサにより取得したセンサデータや信号受信部120による測位状況に基づいて、経路中の領域の特性を判別する処理や、その判断結果に基づいて現在位置の測位方式を切り替える処理、センサデータや信号受信部120により取得した位置情報に基づいて軌跡情報を生成する処理を実行する。
【0016】
ROM140は、制御部130において実行される制御プログラムやアルゴリズムプログラムのほか、不揮発性のデータを保存する。RAM150は、スタックやワークメモリとして機能し、制御部130においてプログラムの実行により生成(算出)されたり取得されたりしたデータ等を一時的に保存する。ストレージ160は、センサ部110のモーションセンサにより検出されたセンサデータ(加速度データ、磁気データ、角速度データ、気圧データ)や、当該センサデータに基づく位置情報、又は、信号受信部120により取得された位置情報、これらの位置情報に基づいて生成される軌跡情報等のデータをログファイルとして保存する。
【0017】
通信部170は、図1に示すように、電子機器100の外部の機器(以下、「外部機器」と記す)200との間で、ストレージ160に保存されたログファイル等の各種のデータを送信又は受信する。ここで、通信部170は、例えば各種の無線や有線の通信方法を用いて、電子機器100と外部機器200とを直接接続してデータを送受信するものであってもよいし、インターネット等のネットワークを介してデータを送受信するものであってもよいし、メモリカード等を用いてデータを直接受け渡しするものであってもよい。
【0018】
外部機器200は、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報通信機器であって、図示を簡略化するが、概略、電子機器と同等の機能を有する通信部と制御部とストレージとを有するホストシステム210と、表示部220とを備えている。外部機器200は、所定の通信方法により電子機器100から受信した各種のデータをストレージに保存したり、受信したログファイル等のデータに基づいて、移動軌跡を分析して表示したりする機能を有している。
【0019】
なお、本実施形態においては、本発明に係る電子機器として、センサデータや位置情報を取得、収集し、軌跡情報を生成する機能に特化した機器を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、腕時計型やリストバント型のスマートウォッチやスマートフォン等の、表示部や入力操作部を備える機器に適用するものであってもよい。この場合、ユーザは、収集されたセンサデータや生成された軌跡情報、機器の動作状態等を表示部により確認したり、各種の設定を、入力操作部を介して行ったりすることができる。また、本実施形態において、ストレージ160は電子機器100内に備えられているものとしたが、これに限るものではない。例えば、ストレージ160が電子機器100に接続される外部のクラウドシステム上にあって、電子機器100との間でデータの授受を行うように構成されていてもよい。
【0020】
(軌跡情報取得方法)
次に、本発明に係る電子機器における制御方法(軌跡情報取得方法、軌跡情報取得プログラム)について、図面を参照して説明する。ここで、以下に示す軌跡情報取得方法は、上述した制御部130が所定の制御プログラムやアルゴリズムプログラムに従って処理を実行することにより実現される。また、本実施形態においては、上述した電子機器100を携帯したユーザが、登山道やトレッキングコース等のルート(移動経路)を、麓から山頂方向、及び、山頂から麓方向へ往復する場合について説明する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る電子機器を携帯して特定の経路を往路として移動する場合の、軌跡情報取得方法の一例を示すフローチャートであり、図3は、本実施形態に係る電子機器の測位動作(基本動作)の一例を示すタイミングチャートである。図4は、本実施形態に係る電子機器を携帯して移動する特定の経路(往路)の一例を示す概略図であり、図5は、本実施形態に係る電子機器を携帯して往路を移動する際に収集される経路情報の一例を示す概略図である。
【0022】
また、図6は、本実施形態に係る電子機器を携帯して特定の経路を復路として移動する場合の、軌跡情報取得方法の一例を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態に係る電子機器を携帯して移動する特定の経路(復路)の一例を示す概略図である。図8は、本実施形態に係る電子機器における測位動作の一例を示すタイミングチャートであり、図9は、本実施形態に係る軌跡情報取得方法により置き換えられる移動軌跡の一例を説明するための概略図である。
【0023】
本実施形態に係る軌跡情報取得方法は、まず、上述した電子機器100を携帯したユーザが例えば図4に示すように、麓のスタート地点(始点)から山頂のゴール地点(終点)までのルート(移動経路)RTを、往路として移動する場合には、図2のフローチャートに示すような一連の処理動作が実行される。
【0024】
具体的には、ユーザがルートRTのスタート地点から移動を開始するタイミングに合わせて、電子機器100の電源をオンすると、センサ部110のモーションセンサのうちの、少なくとも加速度センサと地磁気センサと気圧センサ、及び、信号受信部120が起動してセンシング動作を開始する(ステップS102)。制御部130は、加速度センサにより検出された加速度データに基づいて歩数や移動距離を算出し、また、地磁気センサにより検出された磁気データに基づいて進行方向を算出して、これらを順次ベクトル加算することにより現在位置や移動軌跡を取得(推定)する自律航法による測位動作(第1測位動作)を実行する。また、制御部130は、信号受信部120により通信衛星から受信した電波信号(GPS信号)に含まれる緯度、経度情報に基づいて現在位置を算出する、電波信号に基づく測位動作(GPS測位動作:第2測位動作)を実行する。本実施形態においては、これらの電波信号に基づく測位動作と自律航法による測位動作とが、それぞれ所定のタイミングで実行されるように制御される。
【0025】
ここでは、初期設定の測位動作(基本動作)として、制御部130は、例えば図3のタイミングチャートに示すように、信号受信部120の電源を一定の時間間隔でオン、オフを繰り返すことにより、GPS測位動作を間欠的に実行するとともに、GPS測位動作がオフ期間中はセンサ部110のモーションセンサからのセンサデータに基づく自律航法による測位動作を実行する(ステップS104)。また、信号受信部120は、間欠動作中の所定の周期で、電波信号に含まれる、通信衛星の正確な軌道(位置)を特定するためのエフェメリス情報を取得する処理を実行する。ここで、図3に示すように、一般に、信号受信部120における消費電流は、自律航法に使用される加速度センサや地磁気センサの消費電流に比較して、概ね5〜10倍程度大きい。これにより、初期設定の測位動作(基本動作)においては、消費電力の大きい信号受信部120によるGPS測位動作を実行する頻度を極力抑制することができるとともに、消費電力の小さいセンサ部110を用いた自律航法による測位動作により、GPS測位動作がオフ期間中の位置情報を補完することができ、測位精度を保ちつつ省電力化を図ることができる。なお、本実施形態において、GPS測位動作を間欠的に実行する際の周期は、後述する特定領域の特性を判別することができる程度の時間間隔(オフ期間)に設定される。
【0026】
次いで、制御部130は、上述した測位動作により現在位置の位置情報を取得して(ステップS106)、時間情報に関連付けてストレージ160の所定の記憶領域に、往路の軌跡情報として保存する。また、制御部130は、取得した位置情報の時間変化に基づいて、ユーザがルートRT上を移動している状態が継続しているか否かを判定する(ステップS108)。ユーザの移動状態が継続していないと判定された場合には、制御部130は、ユーザがルートRTのゴール地点に到達して移動が終了したか、あるいは、ルートRTの途中で移動が中断されたものと判断して、図2のフローチャートに示す一連の処理動作を終了する。
【0027】
一方、ユーザの移動状態が継続していると判定された場合には、制御部130は、センサ部110のモーションセンサにより検出されるセンサデータ、又は、信号受信部120における測位状況に特異な状態が存在するか否かを判定する(ステップS110)。ここで、センサデータや測位状況の特異な状態とは、所定の閾値を逸脱する異常値や、データの欠落、急な時間変化等の異常状態を示すものに限らず、データが非常に安定している状態や想定以上の好条件等の良好状態を示すものも含まれる。
【0028】
センサデータや測位状況に特異な状態が存在しない場合には、制御部130は、ステップS106に戻って、上述した初期設定の測位動作により位置情報の取得を継続する。一方、センサデータや測位状況に特異な状態が存在する場合には、制御部130は、その特異な状態が上述した初期設定の測位動作における位置情報の取得に影響を及ぼす程度のものであるか否かを判定する(ステップS112)。
【0029】
特異な状態が位置情報の取得に影響を及ぼさない場合には、制御部130は、ステップS106に戻って、上述した初期設定の測位動作により位置情報の取得を継続する。一方、特異な状態が位置情報の取得に影響を及ぼす場合には、制御部130は、当該特異な状態を領域特性に分類して、現在位置の位置情報に関連付けた特定領域ごとにストレージ160の所定の記憶領域に保存する(ステップS114)。
【0030】
具体的には、例えば図4に示すように、ユーザが移動するルートRT上に、GPS測位動作や自律航法による測位動作において位置情報の取得に影響を及ぼす領域特性を有する複数の特定領域PA1〜PA5が存在するものとする。
【0031】
例えば、特定領域PA1は、ルートRTが山の陰になり電波信号の受信が不良、又は、不可能であるため、GPS測位動作により位置情報を取得できない、という特性を有する領域である。上述した初期設定の測位動作においてGPS測位動作を間欠的に実行した際に、通信衛星の捕捉数が規定値よりも少なく、受信した電波信号のCN比(搬送波対雑音比)が規定値よりも悪い(小さい)状態が継続する位置や領域が、上記の特定領域PA1として判別される。なお、初期設定の測位動作において、電波信号が受信できない場合には、制御部130は、例えば図8(a)に示すように、GPS測位動作のオフ期間を短く設定して、短い周期でGPS測位動作を間欠的に行って、電波信号の受信状況を確認することにより、電波信号が受信できない領域を判別することができる。
【0032】
また、特定領域PA2は、磁場の異常や乱れにより、自律航法による測位動作において地磁気センサによる方向情報が良好に取得できない、という特性を有する領域である。地磁気センサにより取得された磁気の大きさや伏角が規定の範囲内にない状態が継続する位置や領域が、上記の特定領域PA2として判別される。
【0033】
また、特定領域PA3は、つづら折りなどの進行方向の頻繁な変化や急な変化等の複雑なルートにより、自律航法による測位動作においてセンサデータの変化が頻繁で所定の規定値より大きく、センサデータによる方向情報が良好に取得できない、という特性を有する領域である。例えば、地磁気センサや角速度センサにより取得される進行方向が頻繁に変化する状態が継続する位置や領域が、上記の特定領域PA3として判別される。
【0034】
また、特定領域PA4は、ルートRTの高低差や屈曲が少ないなだらかな特性を有する領域である。気圧センサにより取得された高度に変化(登り、下り)が少なく、例えば、地磁気センサや角速度センサにより取得される進行方向に変化が少ない、平坦で直線状のルートが継続する位置や領域が、上記の特定領域PA4として判別される。
【0035】
また、特定領域PA5は、天空が開けている、という特性を有する領域である。GPS測位動作を間欠的に実行した際に、通信衛星の捕捉数が規定値よりも多く、受信した電波信号のCN比が規定値よりも良い(大きい)状態が継続する位置や領域が、上記の特定領域PA5として判別される。
【0036】
すなわち、制御部130は、ユーザの移動に応じて初期設定の測位動作(GPS測位動作及び自律航法による測位動作)により現在位置を取得するとともに、センサ部110のモーションセンサからのセンサデータや信号受信部120における測位状況を監視し、特異な状態が出現した場合には、図5に示すように、その領域特性を判別して分類し、現在位置の位置情報を特定領域PA1〜PA5に関連付ける。このような一連の処理動作をユーザの移動に応じて繰り返し実行することにより、図4に示す特定のルートRTに存在する各特定領域PA1〜PA5について、領域特性が判別され、図5に示すような経路情報としてストレージ160に保存される。
【0037】
次いで、電子機器100を携帯したユーザが例えば図7に示すように、上述した往路と同一のルートRTを、山頂のスタート地点から麓のゴール地点まで、復路として移動する場合には、図6のフローチャートに示すような一連の処理動作が実行される。
【0038】
具体的には、上述した往路での処理動作と同様に、制御部130は、GPS測位動作を間欠的に実行するとともに、GPS測位動作がオフ期間中はセンサ部110のモーションセンサからのセンサデータに基づく自律航法による測位動作を実行する、初期設定の測位動作により、ユーザの移動に応じて現在位置の位置情報を取得する(ステップS202、S204)。取得した位置情報は、時間情報に関連付けてストレージ160の所定の記憶領域に、復路の軌跡情報として保存する。
【0039】
次いで、制御部130は、往路で取得しストレージ160に保存された経路情報を参照して、現在位置が特定領域PA1〜PA5内にあるか否か、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA1〜PA5の近傍にあるか否かを判定する(ステップS206)。現在位置が特定領域PA1〜PA5内であると判定された場合、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA1〜PA5の近傍にあると判定された場合には、制御部130は、いずれの特定領域PA1〜PA5であるかを特定する(ステップS208)。そして、図5に示した経路情報に基づいて、当該特定領域の特性に応じた測位方式による測位動作を実行して(ステップS210)、現在位置の位置情報を取得する処理動作を継続する(ステップS204)。
【0040】
例えば、現在位置が特定領域PA1内、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA1の近傍にある場合には、山の陰になり電波信号の受信が不良、又は、不可能な状態にあるため、制御部130は、図8(b)に示すように、GPS測位動作をオフ状態に設定して、自律航法のみによる測位方式に切り替える(第1の測位モード)。これにより、位置情報を取得することができない無駄なGPS測位動作を抑制して、電子機器100の測位精度をある程度保ちつつ、省電力化を図ることができる。
【0041】
また、現在位置が特定領域PA2内、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA2の近傍にある場合には、磁場の異常や乱れにより地磁気センサによる方向情報が良好に取得できない状態にあるため、制御部130は、自律航法による測位動作に用いる地磁気センサを停止して、角速度センサを起動して角速度データに基づいて算出された進行方向を用いる測位方式に切り替える(第4の測位モード)。これにより、自律航法における測位精度を保つことができる。ここで、一般に、角速度センサにおける消費電力は、加速度センサや地磁気センサの消費電力に比較して、概ね10倍程度大きいため、角速度センサを通常オフ状態に設定しておき、上記の測位方式に切り替えることにより、角速度センサをオフ状態から起動することが好ましい。一方、角速度センサを予め起動(例えば常時動作)させた場合には、電子機器100の消費電力は増えるものの、角速度センサの起動時の遅延(概ね数百ms〜1sec程度)を抑制して、角速度データの欠落を防止することができ、自律航法における測位精度を向上させることができる。なお、磁場の異常や乱れにより地磁気センサによる方向情報が取得できない場合には、角速度センサを用いた自律航法による測位動作に切り替える場合について説明したが、本発明は、自律航法による測位動作をオフ状態に設定して、GPS測位動作のみに切り替えるものであってもよい。これにより、測位精度の低下を抑制することができる。
【0042】
また、現在位置が特定領域PA3内、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA3の近傍にある場合には、進行方向の頻繁な変化や急な変化等の複雑なルートにより地磁気センサや角速度センサによる方向情報が良好に取得できない状態にあるため、制御部130は、GPS測位動作のオフ期間(間欠周期)を短く設定して、短い周期でGPS測位動作を間欠的に実行する測位方式に切り替える(第2の測位モード)。これにより、自律航法による測位動作における誤差の蓄積を抑制することができる。あるいは、自律航法による測位動作をオフ状態に設定して、GPS測位動作のみに切り替える。これにより、測位精度の低下を抑制することができる。
【0043】
また、現在位置が特定領域PA4内、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA4の近傍にある場合には、高低差や屈曲が少ないなだらかな領域にあるため、自律航法による測位動作における誤差の蓄積が小さい。そこで、制御部130は、GPS測位動作のオフ期間を長く設定して、長い周期でGPS測位動作を間欠的に実行する測位方式に切り替える(第3の測位モード)。これにより、GPS測位動作を抑制して、電子機器100の測位精度を保ちつつ、省電力化を図ることができる。
【0044】
また、現在位置が特定領域PA5内、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA5の近傍にある場合には、天空が開けているため、通信衛星を良好に捕捉して電波信号を良好に受信することができる。そこで、制御部130は、信号受信部120により電波信号に含まれるエフェメリス情報を取得する処理を実行する(第5の測位モード)。これにより、短時間で必要なデータを通信衛星から受信することができ、電子機器100の測位精度を保ちつつ、省電力化を図ることができる。
【0045】
ステップS206において、現在位置が特定領域PA1〜PA5内ではないと判定された場合、又は、現在位置が進行方向にある特定領域PA1〜PA5の近傍にないと判定された場合には、制御部130は、経路情報を参照して現在位置が特定領域PA1〜PA5を抜けた(離脱した)直後か否かを判定する(ステップS212)。現在位置が特定領域PA1〜PA5を抜けた(離脱した)直後であると判定された場合には、制御部130は、ステップS210において各特定領域PA1〜PA5の特性に応じて切り替えた測位方式を初期化して(ステップS214)、上述した初期設定の測位動作により、現在位置の位置情報を取得する処理動作を継続する(ステップS204)。また、制御部130は、各特定領域PA1〜PA5における測位動作を終了する度に、図9に示すように、ストレージ160に保存された往路の軌跡情報を、復路で取得した軌跡情報に置き換えて更新する処理を実行する(ステップS216)。これにより、ユーザがルートRTを移動した際の軌跡情報の精度を向上させることができる。
【0046】
一方、現在位置が特定領域PA1〜PA5を抜けた(離脱した)直後ではないと判定された場合、すなわち、現在位置が特定領域PA1〜PA5間にあって、初期設定の測位動作における位置情報の取得に影響を及ぼす特異な状態が存在しない場合には、制御部130は、取得した位置情報の時間変化に基づいて、ユーザが移動している状態が継続しているか否かを判定する(ステップS218)。ユーザの移動状態が継続していると判定された場合には、制御部130は、ステップS204に戻って、上述した初期設定の測位動作により位置情報の取得を継続する。一方、ユーザの移動状態が継続していないと判定された場合には、制御部130は、ユーザがルートRTのゴール地点に到達して移動が終了したか、あるいは、ルートRTの途中で移動が中断されたものと判断して、図6のフローチャートに示す一連の処理動作を終了する。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、電子機器100を携帯したユーザが特定のルートRTを往復する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、同一のルートRTを異なる時間に(例えば数時間後や後日)、同一方向に移動する場合であっても同様に適用することができる。また、上述した往路の移動を、初回又は前回の移動と読み替え、復路の移動を、二回目以降又は今回の移動と読み替えることにより、ユーザがルートRTを移動した際に取得した経路情報に限定されることなく、別のユーザが当該ルートRTを別の日時に移動した際に取得した経路情報を利用する場合であっても、本発明を良好に適用することができる。
【0048】
このように、本実施形態においては、所定のルートを移動する場合に、位置情報を取得する測位動作として、センサデータに基づく自律航法による測位動作とGPS測位動作とを適用し、往路又は初回の移動においてルート上に存在する、位置情報の取得に影響を及ぼす特異な特性を有する特定領域の情報を含む経路情報を、初期設定の測位動作により取得して保存する。そして、復路又は二回目以降の移動において、当該ルートに関して保存されている経路情報を参照して、特定領域の特性に応じた最適な測位方式に切り替えて測位動作を実行し、取得した位置情報に基づいて軌跡情報を更新する。これにより、消費電力の大きい信号受信部や角速度センサを用いた測位動作を実行する頻度を極力抑制することにより、電子機器における消費電力を抑制しつつ、移動軌跡の精度を向上させることができ、小型軽量の電子機器にも良好に適用することができる。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0050】
(付記)
[1]
電子機器であって、
前記電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、
通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、
前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
予め取得されている特定の移動経路上の複数の領域の各々の、前記センサ部及び前記信号受信部の制御に関わる特性を示す経路情報に基づいて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御することを特徴とする電子機器。
【0051】
[2]
記憶部を有し、
前記制御部は、
前記電子機器が前記移動経路の始点から終点までを少なくとも1回移動する間に、前記センサ部により検出されるセンサデータによる自律航法に基づく第1位置情報及び前記信号受信部により測位される前記現在位置の第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づいて軌跡情報を取得し、前記第1位置情報、前記センサデータ、前記第2位置情報及び前記信号受信部における前記電波信号の受信状況の少なくとも何れかに基づいて、前記移動経路上の前記経路情報を取得し、前記軌跡情報と前記経路情報とを互いに対応付けて前記記憶部に保存し、
前記記憶部に前記軌跡情報と前記経路情報とが保存された後に前記電子機器が前記移動経路を移動する際に、前記記憶部に保存されている前記軌跡情報と前記経路情報とに基づいて、前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御することを特徴とする[1]に記載の電子機器。
【0052】
[3]
前記制御部は、
前記移動経路を初回に移動した際に取得した前記第1位置情報及び前記第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づく初回の前記軌跡情報を、前記移動経路を次回以降に移動した際に取得した前記第1位置情報及び前記第2位置情報の少なくとも何れか一方に基づく次回以降の前記軌跡情報に置き換えて更新することを特徴とする[2]に記載の電子機器。
【0053】
[4]
前記初回に移動する前記特定の移動経路は前記始点から前記終点に移動する往路であり、前記次回以降に移動する前記特定の移動経路は前記終点から前記始点に移動する復路であることを特徴とする[3]に記載の電子機器。
【0054】
[5]
前記経路情報は、前記移動経路に沿った前記複数の領域における、前記自律航法に基づく前記第1位置情報の取得及び前記信号受信部における前記電波信号の受信状況の少なくとも一方に影響を及ぼす特性を有する、少なくとも一つの特定領域に関する情報を含んでいることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の電子機器。
【0055】
[6]
前記特定領域は、前記センサデータの変化が規定値を逸脱している状態、又は、前記信号受信部における前記電波信号の受信不良状態に起因する特性を有することを特徴とする[5]に記載の電子機器。
【0056】
[7]
前記センサ部の前記モーションセンサは、加速度センサ、角速度センサ及び地磁気センサを有し、
前記制御部は、
前記電子機器が前記移動経路を移動する際に、前記軌跡情報及び前記経路情報に応じて、
前記信号受信部における前記測位動作を停止させ、前記センサ部を動作させて前記自律航法により前記第1位置情報を取得する第1の測位モードと、
前記信号受信部における前記測位動作の周期を所定の第1周期より短くして、前記信号受信部が前記測位動作を行っていない期間に前記センサ部を動作させる第2の測位モードと、
前記信号受信部における前記測位動作の周期を前記第1周期より長くして、前記信号受信部が前記測位動作を行っていない期間に前記センサ部を動作させる第3の測位モードと、
前記センサ部の前記地磁気センサを停止させ、前記角速度センサを動作させ、前記角速度センサにより検出されるデータを前記センサデータとして用いて、前記自律航法に基づいて前記第1位置情報を取得する第4の測位モードと、
前記信号受信部にエフェメリス情報を取得させる第5の測定モードと、
を含む複数の測位モードのうちのいずれかに切り替える制御をすることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の電子機器。
【0057】
[8]
電子機器の軌跡情報取得方法であって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
予め取得されている特定の移動経路上の複数の領域の各々の、前記センサ部及び前記信号受信部の制御に関わる特性を示す経路情報に基づいて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御する、
ことを特徴とする軌跡情報取得方法。
【0058】
[9]
電子機器の軌跡情報取得プログラムであって、
前記電子機器は、当該電子機器の空間的な動作を検出するモーションセンサを有するセンサ部と、通信衛星からの電波信号を受信し、前記電波信号に基づいて前記電子機器の現在位置を測位する測位動作を行う信号受信部と、を有し、
コンピュータに、
予め取得されている特定の移動経路上の複数の領域の各々の、前記センサ部及び前記信号受信部の制御に関わる特性を示す経路情報に基づいて、前記電子機器が前記移動経路を移動している間に前記センサ部と前記信号受信部の動作を制御させる、
ことを特徴とする軌跡情報取得プログラム。
【符号の説明】
【0059】
100 電子機器
110 センサ部
120 信号受信部
130 制御部
160 ストレージ
RT ルート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9