特許第6812686号(P6812686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6812686-ボールねじ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812686
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20201228BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   F16H25/24 M
   F16H25/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-138181(P2016-138181)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-9628(P2018-9628A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 基泰
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大介
(72)【発明者】
【氏名】永井 豊
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−145143(JP,A)
【文献】 特開平10−299854(JP,A)
【文献】 特開2014−109304(JP,A)
【文献】 特開2013−249887(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0288063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、
このねじ軸の外側にあり前記ねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して両ねじ溝間に負荷領域を形成するボールナットと、
前記負荷領域内に転動可能に装填される多数のボールと、
前記ボールナットの軸方向の一端にフランジを介して取り付けられ、前記ねじ溝と係合するシール山を内面に備えてなる筒状のシールと、を備えてなるボールねじ装置において、
前記シールは、
複数個に分割された分割構成体により構成され、
前記分割構成体のそれぞれの突き合わせ面に設けられたピン挿入孔と、
前記それぞれのピン挿入孔に挿入して各分割構成体を連結一体化する連結ピンと、を含み、
相対向する分割構成体の突き合わせ面に位置するピン挿入孔同士の連結全体長さは、挿入される連結ピンの長さと略等しくするとともに、前記ピン挿入孔の孔径をφDとし、前記連結ピンの径をφdとしたときに、φD<φdの関係を具備することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記連結ピンは、両端にフランジ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記連結ピンは、中央部にフランジ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、すり割り付きのシールを備えたボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシールを備えたボールねじ装置としては特許文献1に記載されたものがある。このものは、ねじ軸のねじ溝と係合するシール山を内周に備えたシールがボールナットの端面に装着されていて、前記ボールナットから軸方向外側に露出する筒状部は、その筒状部の軸方向に延びる複数本のすり割りで周方向に分割されている。
このすり割りの長さは、ねじ軸のリードの0.7倍以上にしている。このすり割りは、ねじ軸の直径方向の線に対して、ねじ軸が右ねじのときに筒状部の外側端面から見て時計方向に傾斜しており、またこのすり割りは、同文献1の図7、8の例ではねじ軸の軸線に対して、同ねじ軸のリード角を規定するねじ山の接線とは反対の方向に傾斜している。かかるシールの筒状部は、外周からガータスプリングで締め付けられて、ねじ軸の外周に密着されている。
そこで、このボールねじでは、ねじ軸の回転により相対的にボールナットが軸方向に移動すると、露出されたねじ軸の外周に付着していた異物がすり割りにより形成されたシールのエッジ部で削り取られる。その異物は、続いてすり割りにより形成された傾斜面に沿って遠心方向に掻き出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】第3692677号特許掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、他の従来技術も同様であるが、外部からの異物がねじ軸からボールナット内に入り込むのを防止する技術である。そして、すり割りの形状や傾きが前記のように設定されているから、それなりに、異物がボールナット内に入り込むことは抑制されていた。
しかしながら、これらの従来技術では、シール内面とねじ軸表面の隙間が均一且つ微小であるため、シールをねじに組み付けるときに、シールがねじ軸に対して傾いたりした場合には、シールがねじ軸表面にひっかかり、シールがねじ軸に組みつけられない虞がある。
【0005】
そこで、この発明は、シールがねじ軸表面にひっかからないように、シールを複数分割構成とするとともに、ピンを介して組み付けることにより、シールがねじ軸に組み付けやすくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様のボールねじ装置は、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、このねじ軸の外側にあり前記ねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝を内周面に有して両ねじ溝間に負荷領域を形成するボールナットと、前記負荷領域内に転動可能に装填される多数のボールと、前記ボールナットの軸方向の一端にフランジを介して取り付けられ、前記ねじ溝と係合するシール山を内面に備えてなる筒状のシールと、を備えてなるボールねじ装置において、前記シールは、複数個に分割された分割構成体により構成され、前記分割構成体のそれぞれの突き合わせ面に設けられたピン挿入孔と、前記それぞれのピン挿入孔に挿入して各分割構成体を連結一体化する連結ピンと、を含み、相対向する分割構成体の突き合わせ面に位置するピン挿入孔同士の連結全体長さは、挿入される連結ピンの長さと略等しくするとともに、前記ピン挿入孔の孔径をφDとし、前記連結ピンの径をφdとしたときに、φD<φdの関係を具備することを特徴とする。
【0007】
また、第2の態様のボールねじ装置は、前記第1の態様において、前記連結ピンは、両端にフランジ部を設けたことを特徴とする
さらに、第3の態様のボールねじ装置は、前記第1の態様において、前記連結ピンは、中央部にフランジ部を設けたことを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、シールがねじ軸表面にひっかからないように、シールを複数分割構成とするとともに、ピンを介して組み付けることにより、シールがねじ軸に組み付けやすくするボールねじ装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態を示すもので、一部を断面した側面図である。
図2】(a)は、シールを構成する分割構成体の各ピン挿入孔に連結ピンを挿入する状態を示す図で、(b)はシールを構成する分割構成体の各ピン挿入孔に連結ピンを挿入して1つに組み付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1以下には、本発明のボールねじ装置の一実施形態が示されている。このボールねじ装置は、外周面に螺旋状のねじ溝11を有するねじ軸1と、このねじ軸1の外側にあり前記ねじ溝11に対応する螺旋状のねじ溝(図示せず)を内周面に有して両ねじ溝間に負荷領域を形成するボールナット2と、前記負荷領域内に転動可能に装填される多数のボール(図示せず)と、前記ボールナット2の端部に取り付けられて前記ねじ軸1の外周を囲み且つ内側に前記ねじ軸1のねじ溝11に入り込むシール山31を有してなるシール3と、を備えている。
【0011】
ねじ軸1は、ボールねじ装置が設置される機台(図示せず)に回転自在に軸支され、且つモータ等の回転駆動源(図示せず)に連結されている。また、ボールナット2には、そのフランジ21を介して、このボールねじ装置により進退駆動される移動テーブル等の移動体(図示せず)が装着され、よって、ねじ軸1の回転によりボールナット2を介して前記移動体を進退駆動するようになっている。
【0012】
シール3は、図1に示すように、前記ボールナット2の端部に取り付けられる環状のフランジ33と、前記フランジ33よりも小径で、フランジ33の端部に一体に備えられ、前記ボールナット2の軸方向外側に露出する筒状部32と、を有して構成されている。また、前記筒状部32と前記フランジ部33の内面には連続したシール山31が設けられている。
シール山31は、ポリエチレン(PE)またはポリアセタール(POM)で形成されている。
【0013】
本実施形態のシール3は、複数個に分割された分割構成体によって構成されており、本実施形態では、等分した2つの半筒状の分割構成体3a、3bによって筒状のシール(2つ割れのシール)3が組立て構成されている。本実施形態の2つ割れのシールは、連結ピン50を介して、ねじ軸1の外周にて組立て連結されて一体化される。
分割構成体3a、3bには、図2(a)に示すように、円筒形状の連結ピン50を挿入して組立て連結(嵌合)ができるように、その突き合せ両端面に、円筒状のピン挿入孔35a、35bが形成されている。
【0014】
シール3の組み立て方法について説明する。
例えば、まず、一方の分割構成体3a、3bを、ネジ軸1の外周に位置させるとともに、そのシール山31をネジ軸1のネジ溝11に嵌合させる。そして、その分割構成体3aの突き合せ両端面に設けたピン挿入孔35a、35bに、連結ピン50、50を嵌入させる。
そして次に、上述のとおり一方の分割構成体3aの突き合せ両端面にセットした連結ピン50、50に、他方の分割構成体3bの突き合せ両端面に設けたピン挿入孔35a、35bを位置決めし、シール山31がネジ溝11に嵌合するようにして押し込んでいく。これにより、連結ピン50、50がピン挿入孔35a、35bに嵌入されて双方の分割構成体3a、3bが一体に連結されてシール3が形成配置される。
【0015】
この場合、一方の分割構成体3aの突き合せ面に設けられたピン挿入孔35aと、他方の分割構成体3bとの相対向する分割構成体の突き合わせ面に位置するピン挿入孔同士の連結全体長さは、挿入される連結ピンの長さと略等しくするとともに、ピン挿入孔の孔径35a、35bをφDとし、連結ピン50の径をφdとしたときに、φD<φdの関係にあり、すなわち、ピン挿入孔35a、35bの孔径φDは、連結ピン50の径より小さく形成されているため、ピン挿入孔35a、35bと連結ピン50とは締まり嵌めとなる。
このように構成したことにより、シール3は遠心力により分解することはない。
なお、ピン挿入孔35a、35bを傷つけないために、連結ピン50の材料は、分割構成体3a、3bよりも柔らかいものが好ましい。例えば、分割構成体3a、3bの材料が、ポリアセタール(ロックウェル硬さ:120)の場合、連結ピン50の材料は、ポリエチレン(ロックウェル硬さ:73)とし、また、連結ピン50の材料がポリピロピレン(ロックウェル硬さ:98)や、ポリカーボネート(ロックウェル硬さ:118)などが使用される。
なお、ピン挿入孔35a、35bとピン50の数は、分割構成体3a、3bの端面に複数個所設けてもよい。
【0016】
[本実施形態の変形例]
以上、連結ピン50の形状が円筒状である実施形態をもって説明してきたが、連結ピン50は上述した形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
例えば、図示はしないが、両端に円板状のフランジ部を設けた連結ピンを採用することも可能で本発明の範囲内である。
すなわち、連結ピンは、円筒部の両端にそれぞれ同一径の円板状のフランジ部を一体に突設して側面視で略カナ文字「エ」の形態を有するように形成する。円筒部は上述した本実施形態の連結ピンと同一径に形成する。従って、フランジ部はピン挿入孔35よりも大径となる。
本変形例で示す連結ピンを、上述した本実施形態のピン挿入孔35に挿入すると、フランジ部は挿入に伴ってつぼむことになる。そのためフランジ部とピン挿入孔35とでしまり嵌めとなるので、2つ割れの分割構成体3a、3bが強固に組みつけられる。
【0017】
このとき、連結ピンのフランジ部はピン挿入孔35にてしめしろを持たせるためフランジ部は広がり易いほうがよい。よって、連結ピンの材料は、分割構成体3a、3bの材料よりも硬いものが好ましい。例えば、分割構成体3a、3bの材料が、ポリエチレン(ロックウェル硬さ:73)の場合、連結ピンの材料は、ポリエチレン、ポリピロピレン(ロックウェル硬さ:98)や、ポリカーボネート(ロックウェル硬さ:118)、POM(ロックウェル硬さ:120)などが使用される。
なお、本実施形態においても、ピン挿入孔35a、35bと連結ピンの数は、分割構成体3a、3bの端面に複数個所設けてもよい。
【0018】
さらに、図示はしないが、上記両端にフランジ部を有する連結ピンの中央部にフランジ部を付けることもできる。この中央部のフランジ部は、潤滑剤(グリース)の漏れ防止に寄与する。なお、両端にフランジ部を備えない連結ピン(例えば図2に示す本実施形態の連結ピン50)の中央部にフランジ部を設けるものとすることも可能である。
【0019】
上記説明したように、連結ピン50をピン挿入孔35a、35bに挿入して繋ぎ合わせる(嵌合)ことにより、2つ割れの分割構成体3a、3bを1つにするシール3の構成を採用したため、ねじ軸1の外周に組付ける際にシール3がねじ軸1に噛み込む虞もなく、容易にシール3をねじ軸1に組み付けることが可能となる。
【0020】
ねじ軸1の外面とシール3の内面との間には隙間4が設けられており、この隙間4は0.3mm以下であることが望ましい。またシール3の筒状部32には、その軸方向の外端部から軸方向に延びるすり割り34を設けている。
このすり割り34の数は、筒状部32の円周方向に等間隔に6箇所設けられているが、その数は後述の各機能を考慮して他の数とすることも可能である。
すり割り34は、ねじ軸1の直径方向の線L1に対して、前記ねじ軸1が右ねじのときに前記筒状部32の外側端面から前記ねじ軸1の軸方向に見て半時計方向に角度βを以て傾斜させてある。
【0021】
また、シール3のすり割り34は、ねじ軸1の軸線Xに対して角度αをもって傾斜させてある。この各度αの方向は、前記軸線Xよりも前記ねじ軸1のねじ山12のつる巻き線の接線L2に沿う方向に傾斜している(図1)。なお前記接線L2と前記軸線Xに直角な面Pとのなす角度がねじのリード角γである。
したがって、前記接線L2は、リード角γとの関係で定義すれば、ねじ軸1のねじのリード角γを規定するねじ山12の接線であるということができる。
そこで、すり割り34は、前記ねじ軸1の軸線Xに対して、ねじ軸1のねじのリード角γを規定するねじ山12の接線L2に沿う方向に傾斜させたと表現することができる。
【0022】
ボールネジ装置の運転時には、前記ボールナット2とねじ軸1との間の空間にグリースを充填した状態で運転する。このグリースのちょう度は295以下としているが、295を超えるちょう度のものを使用することができるのは勿論である。ここで、例えば、ねじ軸1を図1において左から右方向に見て回転方向Bに左回転させると、ボールナット2は図1において右方向に移動する。このボールナット2の移動は、ボールナット2内のグリースを、シール3の筒状部32内面とねじ軸1との間の隙間4から、ねじ軸1表面に一定の膜厚となって残留させながら行なわれる。
【符号の説明】
【0023】
1 ねじ軸
11 ねじ溝
2 ボールナット
3 シール
3a、3b 分割構成体
31 シール山
32 筒状部
34 すり割り
35a、35b ピン挿入孔
50 連結ピン
4 隙間

図1
図2