【文献】
Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, 2008, vol. 46, pp. 327-340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一種の無機シリケート化合物が、シリケート、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はケイ酸カルシウム、タルク、アルミノシリケート、カオリン、ベントナイト、0.1〜20nmのシリカナノ粒子、メソポーラスシリカナノ粒子、シリカ被覆磁性ナノ粒子、及びシリカが有機又は無機基に結合している前記シリカナノ粒子から選択されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の三層複合体。
前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物は、性質が有機又は無機であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の三層複合体。
前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、クエン酸とその塩、ホスフェート、ピロホスフェート、トリホスフェート又はポリホスフェートイオン、ホスホン酸、ホスホネート、有機分子に結合したホスホネート若しくはホスホン酸、リン酸ファミリーの化合物、スルホネートファミリーの化合物、洗浄剤ファミリーの化合物及び/又はカルボン酸ファミリーの化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の三層複合体。
前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、モノホスフェート、ピロホスフェート及び/又はトリホスフェートからなることを特徴とする、請求項9に記載の三層複合体。
核酸抽出工程と核酸検出工程との間に、工程1)で使用された複合体から核酸を溶出させる工程及び/又は一般的な技術によって核酸を増幅させる工程があることを特徴とする、請求項20に記載の標的核酸を検出し及び/又は定量するための方法。
少なくとも一つの試料を請求項1から14の何れか一項に記載の少なくとも一つの複合体と接触させることにあり、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、溶解を可能にする洗浄剤ファミリーの少なくとも一種の薬剤を含むことを特徴とする、試料からの微生物及び/又は細胞及び/又は組織を溶解させるための方法。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、分子診断の分野に関する。より具体的には、本発明は、生体試料又は環境試料からの核酸(DNA及び/又はRNA)の抽出及び/又は精製を可能にする固体磁気複合体に関し、これら複合体は少なくとも3つの別々の層を有する。
【0002】
分子生物学の急速な進歩は、診断において計り知れない進歩を遂げることを可能にした。而して、試験試料から出発し、その試料に含まれる宿主又は感染性微生物に属する核酸を抽出し検出することが可能である。この遺伝子材料の検出又は定量によってさえ、微生物感染又はがん遺伝子の存在に関して診断を確立することが可能になる。これは、一般に、以下に記載の3工程で実施される。
1)内容物、特に核酸をそこから放出させるための細胞の化学的又は機械的溶解を含む複雑な生体試料(血液、腫瘍、食品等々)からの核酸の抽出。後者は、それらの量が直接の検出には十分でないならば増幅されるように選択的に精製される。
2)NASBA、RT PCR、PCR等々の遺伝子材料増幅技術による精製された核酸の増幅。この工程は、生体試料から採取された核酸の量が非常に少ない場合又は試験が直接検出には感度が十分ではない場合に必要とされる。
3)エンドポイント、リアルタイム、シーケンシング等々として知られている技術による増幅された核酸の検出。使用される検出技術に応じて、この工程は、標的核酸の選択的定量を可能にする。
【0003】
核酸の高感度かつ特異的な検出、従って最も正確な可能な診断を実施するためには、核酸(DNA及びRNA)を細胞から効率的に抽出及び/又は単離することが必須であると思われる。この抽出及び/又は精製工程は、(試料調製に対して)「サンプルプレプ(Sample Prep)」としても知られており、診断検査の最終結果につながる一連のイベントの全ての品質がこの最初の工程から生じるので、一般に重要である。実際、核酸抽出は、誤った診断に至り患者にとって致命的でありうる情報喪失がないようにできるだけ特異的かつ効率的(量、純度及び時間に関して)であることが必要である。
【0004】
様々な生体試料から核酸を抽出しようと多くの技術が開発されている。最も古い方法は、核酸を含んでいる細胞を濃縮し、これら細胞を溶解し、タンパク質、膜及び他の細胞成分を分離・除去し、残っている核酸を有機溶媒から沈殿させることによって精製することを一般的に含む数多くの工程を使用している。これらの技術は高価であり、多大な時間を要し、しばしば自動化が不可能である。従って、できるだけ早く結果を得ることができ、特に患者の生命予後がかかっている敗血症(「血液感染」)の場合には汚染及び人為的ミスの問題を回避できる自動化が必要とされている現在の業務には、それらはもはや不適である。最新の核酸抽出技術は固相を使用しており、そこでは、細胞が特定の反応条件下で溶解され、放出された核酸は固相に結合する。現在の核酸抽出技術が、シリカ被覆粒子である固相を非常によく使用していることは従来からよく知られている。これは、シリカがある塩濃度及びpH条件下で核酸を可逆的に吸着する性質を有しているためであり、この目的に非常に適した材料となるからである。これらの技術は、“Rapid and simple method for purification of nucleic acids.”, Boom, Journal of Clinical Microbiology, 1990 p 495と米国特許第5234809号に同じ著者によって明確に記載されている。
【0005】
シリカ被覆磁性粒子を使用することもまた知られている。単純な磁石がチューブ内の粒子を移動させ、洗浄工程のために上清を除去することを可能にするので、粒子の磁性部分は、通常、核酸の捕捉、洗浄及び溶出の工程を容易にし、自動化するのに役立つ。核酸抽出収率は、これにより明らかに改善される。これらの技術は、“Magnetic particles for the separation and purification of Nucleic acids”, S. Berensmeier, Applied Microbial Biotechnology 2006 73 495-504;“The use of magnetic nanoparticles in the development of new molecular detection systems”, I. J. Bruce, Journal of Nanosciences and nanotechnology及び“Optimization of influencing factors of nucleic acid adsorption onto silica-coated magnetic particles: Application to viral nucleic acid extraction from serum”, Ning Sun等, Journal of Chromatography A, 2014, 1325, 31- 39によく記載されている。
【0006】
これら磁性シリカ粒子は、核酸を抽出するのに極めて効率的でありうるが、それらの製造プロトコルは長く、難しく、高価である。実際、核酸抽出に使用されるシリカ被覆磁気粒子は、特に完全に安定で、厚さと均一性について制御される必要があるシリカ層のレベルでは、製造するのが非常に複雑であることがしばしばある。このシリカ層の品質と性質は、抽出された核酸の品質のため、またある核酸抽出から他の核酸抽出へわたる結果の再現性のために基本的に重要である。
【0007】
而して、米国特許出願公開第2010/0009375号は、核酸抽出のための1nm未満の連続した超薄シリカ層と結合した磁性粒子の製造を記載している。しかし、この層は測定が非常に困難であり、プロセスレベルでの制御が困難なままである。このため、これら粒子の品質管理が非常に複雑になる。シリカ層が薄すぎると、核酸が、溶出工程中に脱着することができずに磁気コアを構成するマグネタイト上に吸着する可能性がある。
米国特許出願公開第2005/0287583号及び米国特許第6924033号もまたその品質とあるバッチから別のバッチへの再現性が抽出の質に深刻な影響を与えうる凝集物を生じる非常に厚いシリカ層(酸化ケイ素/酸化鉄(SiO
2/Fe
3O
4)比=40/60)で被覆された磁性粒子の製造を記載している。この場合も同様に、製造プロセスが非常に複雑であり、SiO
2/マグネタイト/Na
2O試薬比の厳密な制御を必要とする。
更に、米国特許出願公開第2011/0186524号は、抽出中に受けた処理に応じて、増幅と検出の収率が影響を受けうるので、調製時間、費用及び抽出された核酸のその後の使用(増幅、検出)の点で不利である、200℃で7時間の加熱工程と有機溶媒の使用を含む核酸抽出のための磁性シリカ粒子の製造を記載している。
【0008】
この製造の複雑さに直面し、マグネタイトの被覆層の厚さを制御するための複雑なプロセスを避けるために、ある発明者等は、複合培地からの核酸抽出を実施するためにマグネタイトのみを使用することを提案した。而して、欧州特許出願公開第1674571号、米国特許第6936414号及び米国特許出願公開第2007/0148651号は、金属酸化物と核酸との間の相互作用を促進するために、酸性媒体中のマグネタイトのみからなる粒子を使用して核酸を抽出することを記載している。しかしながら、核酸の脱着は非常に困難であり、吸着された核酸との競合を促進し、吸着された核酸を溶出させるためにリン酸緩衝液中で粒子を加熱する必要があるが、これは抽出収率に悪影響を有する。更に、リン酸などの脱離を促進する溶出緩衝液中での薬剤の使用は、抽出された遺伝子材料を増幅するためのPCR又は他の技術の引き続く阻害をもたらしうる。従って、「ネイキッド」金属酸化物粒子による核酸の抽出は満足のいくものではない。
【0009】
更に、ある発明者等は、金属酸化物粒子の特性を、それらの上に様々な有機又は無機化合物をグラフトすることによって変性させた。一般に、前記粒子は、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシレートの誘導体又は他の有機化合物との錯体形成によって安定化される。これは、Chemical Societyによって1971年に刊行されたLars Gunnar Sille'n及びArthur Earl Martellの書籍“Stability constants of metal-ion complexes”、米国特許第5160725号、G.PourroyによるChem. Comm. 2010 46 985-987又はChem. Mater., 2008, 20 (18), pp 5869-5875に記載されている。これらの複合体は、医用画像診断における造影剤として、インビボで相補的なDNA鎖を検出するためのプローブとして、又は生体適合性の強磁性流体として使用することができる。
【0010】
“Isolation of genomic DNA using magnetic cobalt ferrite and silica particles”, B. Rittich, J. of Chromatography A, 2004, 43-48におけるBohuslav Rittichの研究と、“Ferrite supports for the isolation of DNA from complex samples and polymerase chain reaction amplification”, D. Horack , J. of Chromatography A, 2005, 93-98におけるDavid Horackの研究のみが、核酸抽出のためのリガンドで被覆された磁性粒子に関する。一方、使用条件は、抽出にカオトロピック塩を使用しないため、細胞溶解及びヌクレアーゼ変性には適していない。このように、核酸抽出及び/又は増幅とひいては検出収率は最適ではない。更に、核酸溶出の問題が観察される。
【0011】
上記の従来技術の開示に照らして、核酸の抽出と精製を可能にし、
− 特に磁性化合物を被覆する層のレベルで、合成が容易で安価であり、
− 複雑な生物学的媒体、特に血液中に含まれる核酸の捕捉及び溶出、抽出の収率の点で非常に有効であり、
− 阻害剤の共溶出を伴わず、次に効率的に増幅することができる高純度の核酸を迅速に得ることを可能にし、そして、
− 非常に少量の核酸又は生体分子を捕捉することができるために効率的であり、
− 二本鎖対一本鎖核酸の捕捉選択性を調節することを可能にし、
− 後で抽出の下流で増幅又は分析反応を阻害しうる溶出緩衝液の使用を必要としない
画期的な磁性固体担体を開発することが必要であったことは明らかであると思われる。
【0012】
よって、この発明の主題は、核酸を効率的に抽出し精製することを可能にし、これが試料、好ましくは複雑な生体試料からである、新規な固体複合体の開発及び製造に関する。
第一に、本発明は、
− 少なくとも一種の磁性化合物を含む第一層と、
− 前記第一層を少なくとも部分的に被覆し、かつ少なくとも一種の無機シリケート化合物を含む第二層と、
− 前記第二層を少なくとも部分的に被覆し、かつ前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物を含む第三層と
を含む三層複合体と、またそのような三層複合体を製造するための方法に関する。
【0013】
第二に、本発明は、微生物及び/又は生体分子の精製における、あるいは試料からの生体分子、好ましくは核酸の抽出におけるこの三層複合体の使用にも関する。
【0014】
第三に、本発明は、次の工程:
1.この三層複合体を使用して試料から核酸を抽出する工程、
2.一般的な検出及び/又は定量技術によって標的核酸を検出し及び/又は定量する工程
を含む、標的核酸を含みうる試料からの該標的核酸の検出及び/又は定量におけるこの三層複合体の使用に関する。
【0015】
第四に、本発明は、少なくとも一つの試料を少なくとも一つの本発明に係る複合体と接触させることを含み、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、溶解を可能にする洗浄剤ファミリーの少なくとも一種の薬剤を含むことを特徴とする、試料からの微生物及び/又は細胞の溶解方法におけるこの三層複合体の使用に関する。
【0016】
第五に、本発明は、少なくとも本発明に係る三層複合体を含む分子診断キットに関する。
【0017】
よって、本発明は、分子診断分野において特に有用である三層複合体を提供することを提案する。本発明に係る複合体は、
− 少なくとも一種の磁性化合物を含む第一層と、
− 前記第一層を少なくとも部分的に被覆し、かつ少なくとも一種の無機シリケート化合物を含む第二層と、
− 前記第二層を少なくとも部分的に被覆し、かつ前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物を含む第三層と
を含み又はこれらからなる。
【0018】
「層」という用語は、可変厚さのフィルムを形成するように延びたある厚さの材料又は物質を意味するものとする。層は連続的でも不連続的でもよい。層はまた被覆(コーティング)とも呼ばれうる。
【0019】
「三層複合体」という用語は、少なくとも三つの物理的及び化学的に区別される層からなる固体のコンパクトなアセンブリを意味することを意図している。多層複合体という文脈において、層は重ね合わされ、第一層は第一層の形状に密接に従う第二層で被覆され、第二層自体は第三層で被覆される等々である。三層の連続は、複合体の特性を守るために正確な順序で起こる。第二層が不連続である場合、第三層は、第二層と第一層の両方を被覆し、これらに直接接触している。一方、第一層は、第二層が第三層を被覆できないように、第二又は第三層を被覆することができない。
【0020】
[磁性化合物]
「磁性化合物」という用語は、磁場に該磁場の強度及び配向に依存する配向及び/又は移動に関して反応によって反応することができる化合物を意味することを意図している。この力は磁場によって実行され、電荷又は磁石を動かすことによって生成される。本発明に係る三層複合体に含まれる磁性化合物は、金属及び/又は金属酸化物から選択される。
本発明の三層複合体に使用できる磁気特性を有する金属は、鉄、コバルト、ニッケル、鋼、鋳鉄、更にはマンガン、クロム、白金及びアルミニウムのように磁性に対してより弱く反応する金属である。
【0021】
本発明において使用することができる金属酸化物は、マグネタイト、マグヘマイト及び式MFe
2O
4のフェライトから選択され、M=Mn、Ni、Co、Zn等々又は鉄以外の金属原子がドープされうるフェライトに一般的に使用される任意の他の材料である。好ましくは、本発明の複合体の磁性化合物はマグネタイト又はマグヘマイトであり、更により優先的にはマグネタイトである。
【0022】
本発明の複合体の前記少なくとも一種の磁性化合物は、平面形態であってもよく、膜、ブロックを形成してもよい。それはまた可変形状、例えば立方体形状、結晶、針、円錐又は球体の形状、又はそれ自体が球状、多面体、例えば四面体、八面体等々でありうる粒子の形状を有しうる。本発明の三層複合体の磁性化合物の優先的な形状は、1〜500nm、好ましくは2〜400nm、より優先的には10〜300nm、更により優先的には50〜150nmのサイズを有する粒子である。
【0023】
「粒子」という用語は、水性媒体又は有機溶媒と水性溶媒の混合物又は有機溶媒に不溶性であり、そのサイズがマイクロメートル又はナノメートルでありうる、単離された別個の識別可能な物理的構造を意味することが意図される。好ましくは、粒子はナノメートルであり、1〜400nmの間である。
三層複合体の前記少なくとも一種の磁性化合物が粒子の形状である場合、三層複合体のアセンブリは、前記少なくとも一種の磁性化合物を被覆する無機シリケート化合物の層が後者の形状に密接に追従し、第二層に対する第三層についてもしかりであるので、粒子の形状を有する。
【0024】
粒子の形態の複合体の場合、前記少なくとも一種の磁性化合物は、それがその中心に配置されるので前記粒子のコアを形成すると言うことができる。しかし、前記層が互いに部分的にしか被覆しない場合、三層複合体の最終形状は、前記少なくとも一種の磁性化合物の最初の形状と必ずしも同一である必要はない。このように、磁性化合物を粒子の形状にすることにより、ランダムな最終形状の三層複合体を得ることができる。本発明の好ましい一変形態様では、三層複合体はブラックベリーの形状を有し、磁性化合物は固体のコアを構成し、第二層はコアの周りのサテライトナノスフェアから形成される不連続層を形成する。
【0025】
磁性化合物の層は、マイクロメートル又はナノメートルの厚さを有する。
【0026】
[無機シリケート化合物]
「無機シリケート化合物」という用語は、シリカを含み、無機の性質である任意の化合物を意味するものとする。本発明に係る三層複合体において使用されうる無機シリケート化合物は、シリケート、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はケイ酸カルシウム、タルク、アルミノシリケート、カオリン、ベントナイト、シリカナノ粒子、好ましくはサイズが0.1〜20nm、好ましくは1nm〜20nmであるシリカナノ粒子、メソポーラスシリカナノ粒子、シリカ被覆磁性ナノ粒子、及びまたシリカが有機又は無機基で化学的に変性されている前述のナノ粒子である。
【0027】
シリカを変性させうる有機又は無機基は、アミン、カルボン酸、チオール、アルコール、ホスホン酸又はスルホン酸、ホスホネート及び/又はホスフェート官能基を有する炭素系基を有する化合物、洗浄剤ファミリーの化合物、例えばサポニン、ホモポリマー又はコポリマー、無水マレイン酸ポリマー、N−ビニルピロリドン、ポリエチレン、プロピレン及び無水マレイン酸でグラフトされたメチルビニルエーテル(AMVE)、N−ビニルピロリドン(NVP)/N−アクリロイルオキシスクシンイミド(NAS)、多糖類、アミノラテックスである。
【0028】
本発明に係る三層複合体の製造の好ましい一変形態様では、無機シリケート化合物は、ベントナイト又はサイズが0.1〜20nm、更により優先的には1〜20nmであるシリカナノ粒子である。
これらの化合物は、核酸抽出に関して最良の結果をもたらす。
本発明に係る三層複合体の製造の一変形態様では、無機シリケート化合物は、シリカがサポニンとの結合によって変性されたシリカナノ粒子からなる。
これらの化合物は、核酸抽出に好ましい三層複合体との組み合わせで、細胞溶解に関して、効率的で正確な分子診断を行うことを可能にする良好な結果をもたらす。
【0029】
少なくとも一種の磁性化合物を含む本発明の複合体の第一層と少なくとも一種の無機シリケート化合物を含む第二層との間の結合は、静電結合又は共有結合を介して起こり、三次元構造を生じる。
【0030】
本発明に係る三層複合体の特に有利な一実施態様では、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物は、例えば粒子(grain)、シート、針、繊維、ナノ粒子等の粒子状形態か、又は水性溶媒、水性溶媒/有機溶媒混合物又は有機溶媒に不溶性である形態である。
例えば、シリカは粒子(grain又はparticle)の形態であり得、ベントナイトは一般にシートの形態である。
【0031】
無機シリケート化合物の粒子あるいは水性溶媒又は水性溶媒/有機溶媒混合物又は有機溶媒中で不溶性である形態は、一般に少なくとも一種の無機シリケート化合物の少なくとも一種の磁性化合物の層への良好な付着を可能にするようなナノメートルサイズを有する。好ましくは、これらの粒子又は不溶性形態のサイズは、0.1〜20nm、好ましくは1〜20nm、より優先的には2〜10nm、更により優先的には6〜8nmである。
【0032】
無機シリケート化合物の好ましい粒子形態はナノ粒子状形態である。よって、三層複合体の第一層は、好ましくは0.1〜20nm、より好ましくは1〜20nm、より優先的には2〜10nm、更により優先的には2〜10nm、更により優先的には6〜8nmのシリカナノ粒子からなる第二層で少なくとも部分的に被覆される。本発明の好ましい一実施態様では、Ludox(登録商標)と呼ばれるSigma−Aldrich社により販売されているシリカナノ粒子が無機シリケート化合物として使用され;最も詳細には、Ludox(登録商標)SM 7nmナノ粒子が好ましい。
【0033】
「水性溶媒又は水性溶媒/有機溶媒混合物又は有機溶媒に不溶性である形態」という用語は、媒体の温度にかかわらず、これらの溶媒に溶解しないか又は部分的にしか溶解しない構造を意味することを意図する。これらはまた、不溶性形態又は部分的に不溶性の形態と呼ばれうる。従って、水性条件下でさえ、この形態は、構造化され識別可能な懸濁液の形態で明確に定まったままである。これは電子顕微鏡下で観察することができる。
図3は、それ自体がピロホスフェート(前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物)で被覆されているLudox SM 7nmシリカ(無機シリケート化合物)ナノ粒子で被覆されたマグネタイト(磁性化合物)粒子を示す。従って、この図は、水性溶媒、水性溶媒/有機溶媒混合物又は有機溶媒に不溶性である形態の無機シリケート化合物との本発明の複合体を例示している。
【0034】
無機シリケート化合物の層は、ナノメートルの厚さを有する。
【0035】
[前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物]
「前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物」という用語は、その各形態がどうであれ、磁性化合物に結合することができるか又は無機シリケート化合物に結合することができる化合物を意味するものである。より具体的には、Chemical Societyによって1971年に刊行されたLars Gunnar Sille'n及びArthur Earl Martellの“Stability constants of metal-ion complexes”に記載されているように、それらは金属酸化物に対して親和性を有する分子である。それらは、有機又は無機の性質のものでありうる。例示的かつ非網羅的には、クエン酸とその塩、ホスフェート、ピロホスフェート、トリホスフェート、ポリホスフェート及びホスホネートイオン、及びホスホン酸、有機分子に結合したホスホネート又はホスホン酸、リン酸ファミリー、スルホネートファミリーの化合物、洗浄剤ファミリーの化合物及び/又はカルボン酸ファミリーの化合物を挙げることができる。
【0036】
ホスホネート又はホスホン酸に結合した有機分子は、例えば、リボース、デオキシリボース、アミノ酸、ペプチド等々でありうる。
洗浄剤ファミリーの化合物の中では、サポニン、ツイン、トリトン等々が挙げられる。
第三層が、上で述べた前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の組み合わせ、例えばサポニンと組み合わせたホスフェート、ピロホスフェート又はトリホスフェートイオンから構成される、本発明に係る三層複合体を有することを想定することが可能である。これらの分子は、その場合、幾つかの追加の性質をもたらす。而して、それらは、同時に、試験試料のヒト細胞を溶解し、これらヒト細胞の核酸又は生体分子を捕捉/精製することができる。
ヒト細胞の選択的溶解と細菌の選択的捕捉、又は標的微生物及び/又は標的核酸又は標的生体分子の富化さえ行うために、本発明の複合体の第二及び/又は第三層の様々な官能化を使用することを想定することが可能である。
【0037】
第一層がマグネタイト又はマグヘマイトである場合、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物は、鉄に対して親和性を有する化合物である。
本発明に係る三層複合体の製造の好ましい変形態様では、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物は、モノホスフェート、ピロホスフェート、トリホスフェート、クエン酸又はその塩、及び/又はサポニンからなる。
【0038】
少なくとも一種の無機シリケート化合物を含む本発明の複合体の第二層と前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物を含む第三層との間の結合は、静電的又は共有結合又は配位結合を介して起こり、三次元構造を生じる。
本発明に係る複合体の第二層が粒子又はナノ粒子、好ましくはシリカのナノ粒子からなる実施態様では、前記粒子又はナノ粒子の間に間隙が生じ得、少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物を含む第三層は、第一層の幾らかの金属及び/又は金属酸化物原子が利用可能で、反応生成又は結合生成のためにより接近可能であるため、第一層に対してより容易で良好な接着性を有する。
少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の層は、ナノメートル以下である厚さを有する。
【0039】
特定の一実施態様では、上で定義したような本発明に係る三層複合体は、少なくとも一種の磁性化合物から構成される第一層の全部又は一部の下に固体担体をまた含む。
【0040】
「固体担体」という用語は、少なくとも一種の磁性材料の層を支持することができる任意の担体(支持体)を意味することを意図する。それは、少なくとも一つの平坦な担体、一つの中空担体、一つの丸い一片、一つの針、一つの膜、一つのブロック、一つのシート、一つの円錐、一つのチューブ、一つのビーズ、一つの粒子等々でありうる。担体は好ましくはビーズ又は粒子である。
【0041】
担体と少なくとも一種の磁性化合物の第一層との結合は、静電結合、共有結合又は任意の他の物理的又は化学的手段によって起こる。例えば、前記少なくとも一種の磁性化合物を担体に付着させるための接着剤、又は固体担体と磁性化合物との間の結合を維持することができる中間物質、例えばタンパク質、ポリマー、親水性又は疎水性ポリマー、ポリドーパミン等々を使用することができる。
【0042】
特定の一実施態様では、担体の有無にかかわらず、上で定義された三層複合体は粒子の形態であり、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物を含む前記第三層は、粒子の外側に存在する。ある意味では、粒子のコアは、
1)第二層が不連続で、最終粒子の外部膜被覆を構成する場合、担体と接触する第一層、第一層に接触する第二層及び第二層又は第一層に接触する第三層を有する本発明の三層複合体で被覆された担体、又は
2)第二及び第三層で被覆された前記少なくとも一種の磁性化合物であって、第三層が最終粒子の外部シェルを構成するもの
から構成される。
【0043】
この製造の変形態様では、好ましい形態は、第一層が前記粒子のコアを構成し、2〜400nm、好ましくは50〜100nmのサイズを有する粒子の形態を有する三層複合体である。
【0044】
本発明に係る複合体の最も特に好ましい形態は、50nm〜100nmのマグネタイト(第一層)、シリカのナノ粒子(最も優先的にはLudox SM 7nm)又はベントナイト(第二層)及びモノホスフェート、ピロホスフェート、トリホスフェートイオン(第三層)を含む複合体である。
【0045】
本発明に係る複合体において、それが粒子の形態である場合、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物と前記少なくとも一種の磁性化合物との間の重量対重量(又はw/w)比は、0.1%〜60%、好ましくは1%〜50%、より優先的には3%〜35%、更により優先的には4%〜10%である。
本発明の好ましい実施変形態様では、無機シリケート化合物がシート形態、例えばベントナイトである場合、ナノ粒子形態である場合よりも、無機シリケート化合物の磁性化合物に対する重量/重量比が高い。例えば、マグネタイト粒子がベントナイトで被覆されている場合、ベントナイト/マグネタイト比は25%〜55%であり、Ludoxナノ粒子で被覆されている場合、Ludox/マグネタイト比は1%〜10%である。
【0046】
同じ文脈で、本発明に係る複合体が粒子の形態である場合、前記少なくとも一種の磁性化合物(好ましくは鉄)/前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物のモル比は、0.1%〜15%、好ましくは0.1%〜10%、より優先的には5%〜10%、更により優先的には6%〜9%である。
【0047】
[製造方法]
本発明に係る三層複合体は、実施が容易で再現性の高い製造方法によって製造される。これにより、製造された複合体の性能レベルとまた製造された複合体のあるバッチから他のバッチ間の均一性、又は少なくとも非常に少ない変動に信頼性を持たせることができる。更に、使用される本発明の複合体を製造するための方法は安価であり、ある種の製造変形態様は非常に速い。
【0048】
本発明に係る複合体を製造するための方法を実施するためには、本発明の複合体の様々な成分を供給するための方法が先ず記載されるべきである。
【0049】
− キャリア磁性化合物の供給
前記少なくとも一種の磁性化合物は、天然に見出されるか、あるいは文献に記載された一般的なプロトコルに従って、又はR.Massart(IEEE Trans. Magn. 1981, 17, p1247-1248.)によって記載されている共沈により、又はT.Sugimoto及びE.Matjevic(Journal of Colloids and Interface Science, 1980, 74, P227-243)に記載されているような金属塩の部分酸化により、又はMaity(Journal of Magnetic Materials 321 1256 (2009))によって記載されているような有機金属前駆体の分解により、合成される。これらの技術の利点は、コバルト、マンガン、亜鉛等々のような他の金属原子を容易に組み込んで、本発明の複合体において上で記載された磁性化合物としてもまた使用できるフェライトを得ることができることである。
あるいは、また好ましくは、前記少なくとも一種の磁性化合物は、商業的に購入することができる。これは、特に、The Journal of Imaging Science and Technology November/December 2000, vol. 44, no. 6; p508-513 “The Influence of Particle Size, Shape and Particle Size Distribution on Properties of Magnetites for the Production of Toners”に記載されているような磁気インク顔料のサプライヤーから購入できる金属酸化物ナノ粒子の場合である。
【0050】
− 無機シリケート化合物の供給
例えば三ケイ酸マグネシウム又はナトリウム、ベントナイト、カオリン、タルク等々のタイプの、上に記載された前記少なくとも一種の無機シリケート化合物は、Sigma−Aldrich(St Louis, USA)のような化学製品のサプライヤーから容易に購入することができる。更に、当業者に知られている多くの一般的プロトコルは、これらの無機シリケート化合物をどのようにして得るかを記載している。例えば、本発明の好ましい実施態様で使用される無機シリケートナノ粒子は、水性及びアルカリ性媒体中でのテトラエトキシシラン(TEOS)の一般的な縮合プロトコルに従って合成することができ、これは、W.Stoeberの文献(Journal of Colloids and Interface Science 1968, 26, p 62-69)に記載されている。あるいは、シリケート含有ナノ粒子は、例えばLudoxレンジの粒子又はその等価物を供給するSigma−Aldrich社(St Louis, USA)、又はNanoH社(Lyons, France)のような化学製品サプライヤーから得ることができる。少なくとも一種の磁性化合物(例えば、ホスホネートナノ粒子)との相互作用の力を増加させるように、これら無機シリケート化合物(好ましくはナノ粒子)の下にアミノ、ホスホネート、アジド、アルキン等々の基のような官能基を、TEOSとの対応シランの共縮合によって導入することが可能であり容易である。
【0051】
− 前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の供給
前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有するこれらの化合物は、一般に、化学製品サプライヤーから容易に入手可能な製品である。そうでなければ、それらは当業者に知られている常法によって化学的に容易に調製される。
【0052】
本発明は、少なくとも次の工程:
a0)任意に上に記載の担体を上に記載の少なくとも一種の磁性化合物と接触させて、少なくとも一種の磁性化合物を担体に付着又は結合させる工程、
a)工程a0)の結果物又は上に記載の少なくとも一種の磁性化合物を、上に記載の少なくとも一種の無機シリケート化合物と接触させて、前記少なくとも一種の磁性化合物と前記少なくとも一種の無機シリケート化合物との間に静電相互作用及び/又は共有結合及び/又は配位結合が生じ、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物の層が前記少なくとも一種の磁性化合物の層を少なくとも部分的に被覆する工程、
b)工程a)で得られた複合体(担体を伴うか伴わない、前記少なくとも一種の磁性化合物/少なくとも一種の無機シリケート化合物からなる二層複合体)を、好ましくは水性媒体中で、上に記載の前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物と接触させ、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、担体を伴うか伴わないで、二層複合体の前記少なくとも一種の無機シリケート化合物の層の上に、又は少なくとも一種の無機シリケート化合物の層が不連続である場合には磁性化合物の上に付着しそれ自体が位置する工程
を含むことを特徴とする、上に記載の少なくとも一つの三層複合体を調製する方法に関する。
【0053】
一般に、水又は水性媒体中での一又は複数回の洗浄が、本発明に係る複合体を製造する各工程の後、好ましくは工程a)及びb)の後に実施される。
【0054】
第二層の第一層への結合は、吸着及び静電結合及び/又は共有結合及び/又は配位結合によって起こる。第三層と第二層との結合についても同様である。
【0055】
一実施変形態様では、複合体は、複合体が付着又は結合される担体を含む。担体は上記の通りである。この場合、担体上に複合体を生成するための方法は、幾つかの方法で実施されうる:
− 担体を少なくとも一種の磁性材料と接触させて、静電結合又は共有結合又は配位結合の何れかによって2つの材料間に相互作用を生じさせ、ついで第二層を担体に付着した第一層に加え、第二層は第一層に付着し担体には付着せず、ついで第三層を担体に付着した二層複合体に加え、
− 又は担体を第二層に結合した第一層からなる二層複合体と接触させ、そのとき担体は上に記載されたものと同じ方法で二層複合体の第一層に付着し、ついで第三層が担体に付着した二層複合体に加えられ、
− 又は担体が既に形成された三層複合体と接触させられ、上に記載されたものと同じ方法で三層複合体の第一層に付着する。
【0056】
担体は、ミリメートルからマイクロメートルの厚さを有する。
【0057】
複合体の第一層を担体に物理的又は化学的に付着させることを可能にする材料を使用することもできる。それは接着剤又はこの機能を果たすことができる他の任意の化合物、すなわち固体担体と磁性化合物との間の結合を維持することができる中間物質、例えばタンパク質、ポリマー、親水性又は疎水性ポリマー、ポリドーパミン等々でありうる。
【0058】
本発明の好ましい一変形実施態様では、最終複合体は、少なくとも一種の磁性化合物のコアを含む粒子の形態であり、これは少なくとも2つの層(少なくとも一種の無機シリケート化合物の層と前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の層)で少なくとも部分的に被覆されており、この最終層は複合体の外側に位置する。
よって、本発明の好ましい実施態様の調製方法は、少なくとも次の工程:
a)上に記載の少なくとも一種の磁性化合物を、上に記載の少なくとも一種の無機シリケート化合物と接触させる工程であって、前記無機シリケート化合物が既に粒子状形態、ナノ粒子状形態又は不溶性形態であり、前記少なくとも二種の化合物の間に静電相互作用及び/又は共有結合及び/又は配位結合が生じ、前記粒子又は不溶性形態が、前記コアを構成する少なくとも一種の磁性化合物の粒子を少なくとも部分的に被覆する工程、
b)工程a)の終わりに得られた被覆粒子を、上に記載の少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物と、好ましくは水性媒体中で、接触させて、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物と工程a)の終わりに得られた二層複合体の前記少なくとも一種の無機シリケート化合物又は工程a)の終わりに得られた二層複合体の前記少なくとも一種の磁性化合物との間に静電相互作用及び/又は共有結合及び/又は配位結合を生じさせ、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が前記少なくとも一種の無機シリケート化合物の表面又は最終粒子のコアに付着する工程
を含む。
【0059】
好ましくは、前記少なくとも一種の磁性化合物と前記少なくとも一種の無機シリケート化合物との間の相互作用は、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物と前記少なくとも一種の無機シリケート化合物又は前記少なくとも一種の磁性化合物との間の相互作用に対してと同様に、非共有結合である。
【0060】
一般に、水中又は水性媒体中での一又は複数回の洗浄が、本発明に係る複合体を製造する各工程の後に実施される。
【0061】
前記少なくとも一種の磁性化合物と前記少なくとも一種の無機シリケート化合物との間の接触は、一般に2〜7、好ましくは3〜6、最も優先的には3〜4のpHで実施される。一般に、前記少なくとも一種の磁性材料の第一層の被覆は、反対の静電相互作用によって促進される。従って、被覆は、米国特許第4280918号に記載されているように、少なくとも一種の無機シリケート化合物と前記少なくとも一種の磁性化合物が反対の表面電荷を有するpH範囲で実施されるべきである。
【0062】
本発明の複合体の好ましい実施態様では、磁性化合物としてマグネタイトが使用され、無機シリケート化合物としてシリカが使用される。マグネタイトの等電点は6.8であり、シリカの等電点は約2である。シリカによるマグネタイトの被覆は、2〜6.8のpH、好ましくは3.5のpHで実施されるべきである。
【0063】
複合体を製造する方法では、使用される温度は15℃〜65℃であり、好ましくは20℃〜60℃が使用される。
本発明の好ましい実施態様は、市販されているか又は容易に合成可能な化合物を使用するので、合成が非常に容易で迅速である。
従って、第一工程において、前記少なくとも一種の磁性化合物(好ましくはマグネタイト粒子)は、前記少なくとも一種の磁性化合物に正電荷を、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に負電荷を与えるために前記少なくとも一種の無機シリケート化合物(好ましくはLudox無機シリケートナノ粒子)と共にpH3〜6の間でインキュベートされる。このようにして、(本発明の優先的に選択された形態では粒子の形態の)2種類の化合物が、(マグネタイトとLudox粒子の使用の場合はブラックベリーの形の)三次元構造を形成することによって非常に堅牢に互いに結合する。
一般に、この第一工程で使用される温度は周囲温度であるが、温度は20℃〜60℃の間で変化しうる。
【0064】
得られたコンポジット複合体、すなわち二層複合体(又は優先的な形態ではLudox被覆粒子)は、ついで、磁化によって又は同じ機能を得ることを可能にする任意の適切な既知の技術によって洗浄される。
第二工程では、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物が、少なくとも一種の無機シリケート化合物で被覆された少なくとも一種の磁性化合物からなる二層複合体上に被覆される。これは、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物と前記二層複合体を水性媒体中、30秒〜24時間、好ましくは2時間、制御されたpH及び制御された温度でインキュベートすることによって実施される。
【0065】
一般に、この工程で使用される温度は周囲温度であるが、温度は20℃と-60℃の間で変化しうる。
三層複合体は、磁化又は同じ機能を有する任意の他の既知の技術によって再び洗浄され、ついで、固形分を測定することによって濃度を決定するために水中に取り上げることができる。
洗浄は一般に水中又は少なくとも水性媒体中で実施される。
【0066】
少なくとも一種の磁性化合物の層を少なくとも一種の無機シリケート化合物、特に水性溶媒中で不溶性である形態(無機シリケート粒子)で被覆するこの方法は、米国特許第4280918号に記載されている。
【0067】
独自の迅速で信頼できる方法で、特に有利な本発明の複合体を製造する方法の一つは、少なくとも一種の磁性化合物、好ましくは少なくとも一種のマグネタイト又はマグヘマイト粒子を使用し、後者の上に、少なくとも一種の無機シリケート化合物、好ましくは性質が不溶性であり、既に構造化されている無機シリケート化合物、例えば粒子(例えばシリカナノ粒子)又はシート(例えばベントナイト)を堆積させるか又は後者を少なくとも部分的に被覆することである。例えば、無機シリケート化合物として、0.1〜20nm、より優先的には1nm〜20nmのシリカナノ粒子、更により優先的にはLudox(登録商標)SM 7nm粒子が好ましくは使用される。これらのタイプの化合物が使用される場合、これら無機シリケート化合物は市販されているので、複合体の製造は単純化される。更に、それらのサイズが完全に制御され、よって複合体の製造は非常に再現性があり、標準化が可能である。複合体の製造のこの変形態様では、良好なpH条件下での前記少なくとも一種の磁性化合物上への前記少なくとも一種の無機シリケート化合物の単純な吸着が、選択された無機シリケートナノ粒子のサイズによって制御され調整される所望厚さのシリカ層を生成するのにこのように十分である。続いて、第三層での被覆の間、無機シリケート材料のナノ粒子間の間隙が、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物で満たされる。これは、一般に、第三層を形成する前記少なくとも一種の化合物が前記少なくとも一種の磁性化合物に対して優先的に親和性を有する場合である。複合体の第三層を形成する化合物が、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して磁性化合物に対してよりも強い親和性を有する場合、複合体の第二層に間隙が存在することは必須ではない。
【0068】
複合体のこの実施態様は、複合体の展開された表面積(又は比表面積)の増加、従って核酸抽出/精製能力の増加を伴うことに留意すべきである。
更に、注目される官能基(アミン、カルボン酸等々)を有する無機シリケート粒子を賢明に選択することによって、有機溶媒の存在下でマグネタイト上へのシランの縮合の、制御が複雑であるプロセスを関与させる必要なしに、これらの官能基で磁性化合物を容易に官能化することができる
【0069】
非常に良好な核酸抽出及び/又は精製捕捉能をもたらすためには、前記少なくとも一種の磁性化合物が前記少なくとも一種の無機シリケート化合物で完全に被覆されていることが好ましい。
【0070】
従って、本発明に係る三層複合体の利点の一つは、その使用と製造の単純さにあることが理解できる。しかしながら、この複合体の利点はその製造に限定されず、その使用の利点は多い。実際、驚くべきことに、本発明に係る複合体は、特に複合培地又は生体試料における、核酸の捕捉と溶出に、顕著かつ特に有利な特性をもたらすことが留意される。
【0071】
本発明の三層複合体を、複合培地又は血液などの試料に含まれる細胞又は細菌から核酸を抽出するその能力について評価した。
「試料」という用語は、食品、環境、ヒト、獣医学又は化粧品由来のスワブのような様々な由来を有する試料を意味するものとする。
食品由来の試料としては、非網羅的に、乳製品(ヨーグルト、チーズ等々)、肉、魚、卵、果物、野菜、飲料(牛乳、果物ジュース、ソーダ等々)の試料を挙げることができる。もちろん、これらの食品由来の試料は、ソース又はより手の込んだ料理、又は変化していないかもしくは部分的に変化した原材料からのものであってもよい。食品試料はまた動物用飼料、例えば、油粕又は動物用食餌に由来しうる。これらの試料は全て、液体でない場合には、液体の形態になるように前処理される。
【0072】
先に示したように、試料は環境由来であってもよく、例えば表面試料採取、採水等々からなりうる。
試料はまた、生体液(尿、全血又は血清もしくは血漿等の派生物、痰又は唾液、膿、脳脊髄液等々)、便(例えば、コレラ性下痢)の試料採取、鼻、喉、皮膚、創傷、臓器、組織又は単離細胞試料採取、スワブ試料採取、気管支肺胞試料採取又は洗浄、又は生検に対応しうるヒト又は動物由来の生体試料からなりうる。このリストは明らかに網羅的ではない。
一般に、「試料」という用語は、分析目的のために一又は複数の物質(エンティティ)から採取された一部又はある量、より詳細にはごく一部又は少量を指す。この試料は、場合によっては、特に出発物質が固体状態にある場合には、例えば、混合、希釈又は他の粉砕工程を含む前処理を受けていてもよい。
分析される試料は、一般に、検出、特性決定又はモニターされる疾患又は微生物の存在を表す少なくとも一種の生体分子を含みうるか、又は含んでいると疑われる。
【0073】
「生体分子」という用語は、核酸(任意のタイプのDNA又はRNA、ゲノムDNA、相補的DNA、メッセンジャーRNA、相補的RNA、トランスファーRNA、ミトコンドリアRNA、葉緑体DNA、リボソームRNA、プラスミドDNA、ウイルスDNA又はRNA、マイクロRNA、snoRNA、siRNA、iRNAで、一本鎖又は二本鎖形態)又はタンパク質でありうる化合物又は化学物質を意味することを意図している。
【0074】
「微生物」という用語は、細菌、真菌、酵母又はウイルスの全部又は一部を意味することを意図している。
【0075】
従って、本発明はまた、上に記載の少なくとも一つの複合体が使用される、微生物及び/又は生体分子を精製するための、又は試料、好ましくは生体試料から生体分子、好ましくは核酸を抽出するための方法に関する。
【0076】
「抽出」という用語は、例えば、真核細胞、原核細胞、ヒト細胞又は動物細胞、微生物又は組織からのDNA又はRNAの単離など、それが何であれ試料から生体分子を単離することを可能にする技術を意味することを意図する。従って、本発明の目的に対して、抽出には、生体分子の溶解と精製が含まれる。
精製自体は、生体分子及び/又は微生物の吸着又は捕捉、洗浄及び溶出を含む。捕捉は、生体分子及び/又は微生物を複合体上に吸着させることと、本発明に係る複合体からの後者の脱着又は放出のための溶出を含む。微生物の精製について言及される場合、微生物の溶解はない。その場合、それは微生物の豊化の問題でありうる。
【0077】
好ましくは、複合体の試験は、タンパク質、DNA又はRNAのような生体微小分子の三次元構造が変性されたカオトロピック条件下で実施される。カオトロピック剤は、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性力などの弱い(非共有)分子内相互作用を妨害する。カオトロピック剤としては、尿素、塩化又はチオシアン酸グアニジニウムのようなグアニジン塩、及び過塩素酸リチウムが挙げられる。それらは、一般に、特にGuSCN及びGuHClについて、1〜6Mの範囲の濃度で使用される。
一般に、細胞の溶解を助ける洗浄剤もまた添加され、前記洗浄剤は、おそらくツイン、トリトン、SDS及び溶解緩衝液に対して重量又は体積で0.05%〜5%の濃度で一般的に使用される他の洗浄剤から選択される。
従って、ヌクレアーゼ等の核酸を変性又は損傷しうるタンパク質が、カオトロピック条件下で阻害又は破壊され、これが、核酸を効率的に抽出するための最も好ましい条件をもたらす。好ましくは、本発明における核酸の捕捉では、pH7で緩衝化された培地中の塩化グアニジニウム又はチオシアン酸グアニジニウム及び/又は塩酸(HCl)と洗浄剤(好ましくはトリトンX100)が使用される。
【0078】
本発明に係る複合体は、生体分子及び/又は微生物の精製及び/又は抽出、特に核酸の抽出において非常に有効な特性をもたらす。
シリカで被覆された磁性粒子を介した核酸捕捉の良好な特性は広く知られている。前記少なくとも一種の磁性化合物に対して強い親和性を有する化合物を磁性化合物の粒子に添加することは、DNA捕捉に影響を及ぼすことが本出願において示される。一方、非常に驚くべきことに、少なくとも一種の無機シリケート化合物で被覆された磁性化合物で、無機シリケート化合物自体が前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物で被覆されている、つまり、既に知られ、上に記載された二種類の粒子の組み合わせが存在している本発明に係る複合体においては、核酸、特にDNAの捕捉は全く影響を受けず、増強さえされている。この相乗効果は全く予見できなかった。それどころか、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が無機シリケート化合物の被覆を完全に変位させ、DNA抽出収率を低下させるとの予見が可能であった。同様に、三層複合体がRNA溶出能力を改善し、よって、従来技術と比較して明らかに改善されたDNA及びRNA核酸精製及び抽出特性をもたらすであろうことは、先に記載された粒子の種類から想像することはできなかった。実施例はこの現象を非常に明確に例証しており、実施例は数種の磁性化合物、無機シリケート化合物及び前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物に対して親和性を有する化合物に限定されているが、当業者が、得られた効果を、本発明による三層複合体を形成するために上に列挙したこれらの三種の化合物の種々の可能な考えうる組み合わせに一般化することは十分可能である。
【0079】
上で特定されたように、無機シリケート化合物の特に好ましい形態は、0.1〜20nm、より優先的には1〜20nmのシリカナノ粒子から構成される。本発明の複合体の磁性層である第一層に結合した無機シリケート化合物ナノ粒子のサイズが小さい程、本発明に係る複合体を用いた核酸の抽出は大きくより効果的であることに留意すべきである。ある意味では、粒径が核酸抽出収率に影響を及ぼし、無機シリケート化合物ナノ粒子の比表面積が大きければ大きいほど、核酸抽出は良好である:Ludox(登録商標)HS40無機シリケート化合物ナノ粒子で被覆されたマグネタイトを有する複合体は、Ludox(登録商標)SM7nm無機シリケート化合物ナノ粒子で被覆されマグネタイトを有する複合体よりも捕捉する核酸は少ない。
【0080】
微生物及び/又は生体分子の精製又は生体分子、特に核酸の抽出において良好な結果を得るためには、無機シリケート化合物/磁性化合物の重量/重量比は0.1%〜60%、好ましくは0.5%〜30%、より優先的には1%〜20%、更により優先的には2%〜15%、特に最も好ましくは3%〜10%である。
【0081】
微生物及び/又は生体分子の精製又は生体分子、特に核酸の抽出において良好な結果を得るためには、磁性化合物/前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の重量/重量比は、0.1%〜20%、好ましくは0.1%〜10%、より優先的には4%〜8%である。
【0082】
その別の態様では、本発明は、生体分子、特に標的核酸を、前記標的核酸を含みうる試料から検出し及び/又は定量するための方法であって、次の工程:
1)上記の方法を実施することによって試料から核酸を抽出する工程、
2)一般的な検出及び/又は定量技術によって標的核酸を検出し及び/又は定量する工程
を含む方法に関する。
【0083】
実際、本発明に係る複合体を用いてひとたび生体分子が抽出されれば、正確な診断を提供するために標的核酸を検出するか又はそれらを定量化さえすることは有利である。これらの標的核酸は、試験された試料中に存在していることが疑われるか又は存在しうるものである。
【0084】
使用されうる一般的な検出方法は、全て当業者に広く知られているものである。例えば、非網羅的には、放射性標識;低温標識;比色、蛍光、化学発光;分子ハイブリダイゼーション;サザンブロット;ノーザンブロット;ドットブロット又はインサイツハイブリダイゼーションを挙げることができる。優先的には、検出プローブによる検出が使用される。
「検出プローブ」又は「プローブ」という用語は、増幅産物上に特異的にハイブリダイズすることができ、少なくとも一つの標識を含む、アデニン、チミン、グアニン、ウラシル及びシトシンの群から選択される異なるタイプの4塩基のヌクレオチド鎖の核酸配列を意味することを意図する。プローブは、丸型プローブ(Oプローブと呼ばれる、2008年7月4日出願の本出願人の特許出願FR08/54549を参照)、分子ビーコン、Taqman(登録商標)プローブ又はFRETプローブでありうる。これらの後者3つのタイプのプローブは当業者に周知である。これらのプローブは、場合により、全体的に又は部分的に修飾されたヌクレオチドからなりうる。各プローブは、標識と場合によっては消光剤を含む。これらのプローブの中で、相補的配列にハイブリダイズするときに蛍光を発するプローブ、「分子ビーコン」として一般に知られているTyagi&Kramer(Nature Biotech, 1996, 14:303-308)に記載のプローブ又は市販キット、例えば、Argene(ビオメリュー,Verniolle, France)のR−gene(登録商標)レンジのキットが優先的に使用される。リアルタイム又は反応終了時に検出を実施することが可能である。
【0085】
使用される定量方法は、当業者によって通常使用される標準的定量方法である。例えば、Argene(ビオメリュー,Verniolle, France)のR−gene(登録商標)レンジの定量キットを使用することができる。これらの方法は、一般的には、試験された試料中の所定の核酸又は核酸群の実際の量を評価することを可能にする定量スタンダード(QS)レンジを含む。
【0086】
一実施変形態様では、本発明は、上述のような標的核酸を検出し及び/又は定量するための方法であって、核酸を抽出する工程と核酸を検出する工程との間に、抽出工程において使用される複合体から核酸を溶出させる工程及び/又は一般的な技術によって核酸を増幅する工程が存在する方法に関する。
【0087】
溶出工程は、一般に、50℃〜70℃の温度で僅かにアルカリ性のpH及び低いイオン強度の溶液を使用して実施される。一般に、NucliSENS easyMAG抽出レンジ(ビオメリュー,France)の製品のような市販製品が好ましく使用される。これらの条件は、核酸の完全性を保存するための一般的な条件であり、標準的な条件である。
【0088】
「増幅」又は「増幅反応」という用語は、当業者に周知の任意の核酸増幅技術を意味することが意図される。
検出及び/又は定量されるべき核酸の量は非常に少なく、それらを検出し及び/又は正確な診断を与えるためにそれらを定量するために後者を増幅する段階を含むことが必要であるので、増幅工程が一般に実施される。増幅段階がなければ、標的核酸が試料中に存在しないという結論をもたらす誤った結果を得ることが十分に可能である一方、実際には試料中に存在するが、使用される技術がその検出を可能にしない少量である。よって、PCR、RT−PCR、LCR、RCR、3SR、RCA、NASBA、TMA、SDA又は当業者に知られている任意の核酸増幅技術のような多数の増幅方法を使用することができる。
【0089】
本発明に係る複合体を用いて実施された標的核酸検出及び/又は増幅試験は、優れた結果を与える。
その別の態様では、本発明は、微生物及び/又は細胞及び/又は組織を試料から溶解するための方法であって、少なくとも一つの試料を前述の少なくとも一つの三層複合体に接触させることからなり、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が、溶解を可能にする洗浄剤ファミリーの少なくとも一種の薬剤を含むことを特徴とする方法に関する。
【0090】
ある種の分析状況では、細胞、組織及び/又は微生物の細胞を標的とした形で溶解することが有利な場合がある。従って、この複合体の使用は、ある種の細胞型又は微生物型を標的とするのが問題である場合に有利な場合がある。例えば、敗血症の状況では、試料中に多量に存在するヒト血液細胞の膜及び核酸細胞を、標的とした選択的な形で溶解することが必要な場合がある。これは、膜とコレステロールを含むエンベロープに浸透し、これを弱めるサポニンを用いて実施することができる。試験された試料中に非常に少量で存在する病原性微生物を選択し抽出することができるようにこの選択的溶解を実施することが必要な場合がある。非常に少ない数で表されるこれら微生物の溶解後、核酸が初期試料中に非常に少量で存在するにもかかわらず、それらの核酸を精製し、非常に高感度でそれらを選択的に増幅することができる。本発明に係る三層複合体は、この意味で助けとなりうる。上に記載されているように、本発明の複合体の第二及び/又は第三層を構成する化合物は、例えばサポニンのような洗浄剤ファミリーの化合物で官能化することができる。よって、このように官能化されたこれらの複合体はヒト細胞の選択的溶解においてある役割を果たしうる。従って、三層複合体は、非標的核酸の選択的溶解及び捕捉の第一工程を実施し、試料中に存在するが本発明の複合体によって捕捉されていない微生物の標的富化の工程をある意味で促進するために使用されうる。
前記少なくとも一種の無機シリケート化合物及び/又は前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物が異なる相補的な方法で官能化され、様々なタイプの生体分子及び/又は微生物を捕捉し及び/又は溶解することを可能にする本発明に係る三層複合体を有することもまた想定することができる。
【0091】
この方法に係る本発明の好ましい実施態様では、前記少なくとも一種の無機シリケート化合物は、0.1nm〜20nm、より優先的には1nm〜20nmのシリカナノ粒子を含み、そのシリカはサポニンに結合し、並びに/又は前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物は少なくとも一種のサポニンに結合している。官能化が完全ではない、すなわちこのように官能化された化合物が前記少なくとも一種の磁性化合物を部分的にしか被覆していない場合があることもありうる。
【0092】
上に列挙された全ての無機シリケート化合物と少なくとも一種の磁性化合物及び/又は無機シリケート化合物に対して親和性を有する全ての化合物は、サポニン型の洗浄剤で「官能化可能」である。選択的細胞又は微生物溶解の使用の好ましい一実施態様では、無機シリケート化合物はLudox(登録商標)7nmシリカナノ粒子であり、少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物は、ドーパミンとその誘導体、カテコールとその誘導体、ホスホン酸、ホスホネート、ホスフェート及びカルボン酸ファミリーの化合物(好ましくはクエン酸とその塩)から選択され、好ましくは少なくとも一種のサポニンに結合したものである。
【0093】
最後に、最後の態様では、本発明は、上に記載の本発明に係る少なくとも一つの三層複合体を含む分子診断キットに関する。
【0094】
後者は、試験される試料中に含まれている可能性があるか含まれていることが疑われる核酸の特異的増幅を可能にする試薬、及び/又は試験される試料中に含まれている可能性があるか含まれていることが疑われる核酸を検出し及び/又は定量するための試薬をまた含みうる。
【0095】
これらのキットは、上に記載された様々な抽出及び/又は検出及び/又は定量方法を実施することを可能にする。
【0096】
実施例とここに添付された図面は、本発明の特定の実施態様を表しており、本発明の範囲を限定するものと考えることはできない。
【実施例】
【0098】
実施例1:無機シリケート化合物でのマグネタイト粒子の被覆(マグネタイト/無機シリケート化合物)
およそ100nmのマグネタイト粒子を、様々なマグネタイト/シリカ比を使用して市販の無機シリケート化合物で被覆した。以下の実施例では、7nmのLudox SM(登録商標)、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸ナトリウム、「ヒュームド」シリカ又は二酸化ケイ素を使用した。
被覆は、反対の静電相互作用によって促進される。従って、後者は、無機シリケート粒子とマグネタイトが反対の表面電荷を有するpH範囲で実施されなければならない。
マグネタイトの等電点は6.8であり、シリカの等電点は約2である。被覆は、2〜6.8のpH、すなわち以下に記載のように選択されたpH3.5で実施されなければならない。
【0099】
A−マグネタイト被覆プロトコル:
1− 1〜400mgのマグネタイト(92.1mg/mlで11〜814μl)を洗浄し、懸濁液のpHを調整するために、1mM、pH3のHCl溶液に同容量で取り込む。洗浄液の量は、マグネタイトの量(2ml(マグネタイト1-75mg)〜10ml(マグネタイト400mg)に依存する。
2− 上記の無機シリケート化合物の溶液を水中で調製し、その濃度を30〜300mg/mlに調整する前に数滴の1MのHClを加えることによってそれらのpHを約3に調整する。
3− マグネタイト及び無機シリケート化合物の懸濁液を以下の表1に示された比率で混合し、混合は、使用されるマグネタイトの量に応じて2mlと10mlの間で1mMのHCl溶液(pH3)を用いて、容量を調整する直前にボルテックスすることにより実施する。表1は、異なる被覆率を有するナノコンポジットを得るために、マグネタイト/シリカ(重量/重量)比を1%〜50%として実施した無機シリケートナノ粒子によるマグネタイトの幾つかの被覆例を示す。
4− 最終懸濁液のpHを確認し、約3〜3.5でなければならず、無機シリケート化合物の種類に応じて、1Mで数μlのNaOH又はHClでpHを調整する必要があるかもしれない。
5− 懸濁液を周囲温度で1〜2時間ロールミキサー上で撹拌する。
6− 陰性対照は、同じ方法で実施することができるが、pH=9〜11(100μM〜1.5mMのNaOH)の水酸化ナトリウム溶液を用い、無機シリケート化合物のpHを調整しない。このpHでは、シリカナノ粒子とマグネタイトナノ粒子は両方とも負に荷電しており、シリカはマグネタイトを被覆していない。
【0100】
B−マグネタイト/無機シリケート化合物粒子の懸濁液を洗浄するためのプロトコル
1. 上清を、新たに形成されたマグネタイト/シリケートナノ粒子コンポジット粒子の磁化によって除去する。懸濁液を水で最初に磁化によって、ついで100μM、pH9の水酸化ナトリウム溶液を使用して洗浄し、ついで同じ溶液に取り上げ、場合によっては100%出力で10分間超音波処理する(Vibra-cell 75042, Bioblock Scientific, Illkirch, France)。水酸化ナトリウム溶液を磁化により溶液から除去する。これらの工程は、pH9に達するまで3回又はそれ以上実施する。
2. 粒子の溶液を、pH7に達するまで3回連続磁化により水で洗浄し、ついで50mg/mlまで濃縮する。この濃度を確認するために固形分を測定する。
【0101】
C−ゼータメトリー(zetametry)による物理化学的特徴付け
合成したナノ粒子を、等電点を測定するために、Malvern Instruments(Malvern, United Kingdom)製のZetasizer Nano ZS装置でのゼータメトリーによって分析する。測定は、それぞれ3種の異なる溶液中で0.3mg/mlで実施する:
− 5mMのHCl、10mMのNaCl、pH2.5;
− トリス、5mMのHCl、10mMのNaCl、pH7;
− 及び5mMのNaOH、10mMのNaCl、pH11.5。
【0102】
このために、水中50mg/ml(0.3mg)の粒子懸濁液6μlを採取し、0.15mg/mlの懸濁液を得るためにポリプロピレン製ボトルに入れた2mlの上記溶液の一つに加える。pHを測定し、溶液のpHが粒子の添加によって変わっていないことを確認する。ついで、粒子の懸濁液を、2mlのシリンジを使用して測定キュベット(折り畳みキャピラリーセル, DTS 1061)に導入する。全てのゼータ電位測定のために選択された測定プログラムは“BMX Zeta”プログラムである(測定は21℃で実施される)。
【0103】
これらの粒子のゼータ電位をpHの関数として測定することにより、そこからゼータ電位がゼロになるときの等電点を推定することが可能になる。これは、マグネタイトの表面官能化の状態の指標である。
【0104】
結論: 一般的には(表1参照)、マグネタイトの等電点がより低い値に向かって明確にシフトしていることが示され、無機シリケート化合物での被覆に明らかに対応しており、その被覆レベルは、三ケイ酸マグネシウム又は三ケイ酸ナトリウム濃度の濃度の関数として、無機シリケート化合物(これについては、等電点がLudox(登録商標)無機シリケート化合物粒子の濃度の関数として展開する実験KE59、KE58又はAB1760を参照)又はAL1018及びAL1024の濃度によって調整することができる。
【0105】
実施例2:少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物によるマグネタイト粒子の被覆。より簡単にするために、後者の化合物はリガンドとも呼ばれる(マグネタイト/リガンド)
マグネタイト粒子を、選択された少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物(リガンド)のpKa値の関数として、2つのプロトコルに従って以下に記載のようにリガンドで被覆した。
無機シリケートナノ粒子の吸着に関して、鉄リガンドは、リガンドが負に荷電し、マグネタイトが正に荷電しているpH範囲で、つまりリガンドの第一pKaとマグネタイトの等電点(6.8)の間のpHでマグネタイト上に効率的に吸着する。
この原理によれば、ホスフェートタイプ(1〜12のpKa)及びホスホネートタイプ(3〜6のpKa)の前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の被覆を、pH3又はpH5に等しい溶液のpHでそれぞれ実施した。この原理に従って、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する任意の他の化合物を吸着させることができることに留意すべきである(カルボン酸等々)。
【0106】
2つのプロトコルを以下に記載する。
[ホスフェートタイプの少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物を用いてpH=3でマグネタイトを被覆するためのプロトコル]
1− 約1〜80mgの重量に相当する最小量のマグネタイト約550μlを、1mM、pH3のHCl溶液で洗浄し、ついで同じ溶液に取り上げた後、1.5mlのポリプロピレンマイクロチューブに導入する。
2− pHがpH3に調整された40mMの水溶液中のホスフェートタイプのリガンドを、鉄に対して0.1mol%〜10mol%のモル分率に対応するようにボルテックスしながら添加する。
例:
3− pHを、pHメーターを使用して制御する;pHは約3でなければならない。一般にpHを再調整する必要はないが、必要であれば0.1Mの数μlのNaOH又はHClでこれを行うことができる。
4− 容量を、1mM、pH3のHCl溶液で1.5mlにする。
5− エッペンドルフチューブを、ロール上において周囲温度で2時間撹拌する。
6− ついで、反応媒体を、pH7が得られるまで磁化により水で洗浄する。
7− 50mg/mlの濃度(固形分を測定することによって確認される)を得るために、粒子を適切な量の水に取り上げる。
【0107】
[ホスホネートタイプの前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物を用いてpH=5でマグネタイトを被覆するためのプロトコル]
1− 約30〜80mgの重量に相当する約550μlの最小量のマグネタイトを、10μM、pH5のHCl溶液で洗浄し、ついで同じ溶液に取り上げた後、1.5mlのエッペンドルフチューブに導入する。
2− pHが5に調整された40mMの水溶液中のリガンドを、鉄に対して0.1mol%〜10mol%のモル分率に対応するようにボルテックスして添加する。
3− pHを、pHメーターを使用して制御し、必要に応じて0.1Mの水酸化ナトリウム又はHClの溶液で約5に調整する。
4− 10μM、pH5のHCl溶液で容量を1.5mlにする。
5− 反応混合物を60℃で12時間、サーモミキサーで撹拌する。
6− ついで、pH7が得られるまで、粒子を磁化により水で洗浄する。
7− 50mg/mlの濃度(固形分を測定することによって確認される)を得るために、ナノ粒子を適切な量の水に取り上げる。
以下の表は、(核酸の抽出のための最良条件に適合するようにリガンド化合物に対して最適濃度での)前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物によるマグネタイトの被覆の幾つかの例を要約したものである。
【0108】
結論: マグネタイトのもの(等電点IEP:6〜7)より低い値への等電点の値の明確なシフトが観察され、マグネタイトの被覆と、その表面電荷とよってその表面特性の変化とを裏付けている。
【0109】
実施例3:無機シリケート化合物で予め被覆されたマグネタイト粒子の少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物での被覆
(マグネタイト/無機シリケート化合物/リガンド)
実施例1で得られたマグネタイト/無機シリケート化合物コンポジット粒子を、今度はマグネタイト単独の代わりに使用されるのがマグネタイト/無機シリケート化合物粒子であることを除いて、正確に実施例2に記載されたようにして、少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機ケイ酸塩化合物に対して親和性を有する化合物で被覆する(表3参照)。実施例2におけるように、少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物(リガンド)のpKaに従って、2つの被覆プロトコルを使用する。これらの粒子について等電点測定を実施する。
【0110】
結論:等電点の測定は、前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する前記少なくとも一種の化合物による被覆が、粒子の表面電荷を殆ど変更しないことを示す。これは、粒子がpH7で負に荷電したままであることを実証する。
【0111】
実施例4:実施例1に記載の無機シリケート化合物で被覆された磁性粒子によるDNA及びRNA抽出収率の測定
実施例1に記載の無機シリケート化合物で被覆された磁性粒子の能力及び性能レベルを核酸抽出の観点から測定するために、以下に記載のプロトコルを、表4に記載の核酸と共に使用した。
【0112】
捕捉収率の測定
1− 次の溶液を1.5mlのポリプロピレンマイクロチューブ中で調製する:
a− 50mM、pH7(操作前に厳密に再測定したpH)のトリスHClで緩衝された100μlの8M塩化グアニジニウム(GuHCl)。
b− 100mM、pH7のトリスHCl30μl。
c− 50mMのトリスHCl、pH7中1mg/ml(DNAの場合)又はRNAの場合には水中1mg/mlの核酸溶液20μl(20μg)。
d− ボルテックスにより混合を実施する。
2− 水中50mg/ml(2.5mg)で先に記載した実施例1で調製した粒子50μlを即時に添加する。最終条件は、200μlの4MのGuHCl、45mMのトリスHCl(pH7)中の粒子2.5mg当たり100μg/mlの核酸である。
3− 混合物を攪拌機(Thermomixer, Eppendorf, Le Pecq, France)で1000rpm、25℃で15分間撹拌する。
4− 光学密度OD測定を260nmで実施する。
5− 磁化後、懸濁液の上清1.7μlを取り除き、その核酸濃度を決定するためにNanodrop(ThermoScientific, Waltham, USA)を使用して260nmでUV分光光度法によってアッセイする。
6− 捕捉収率を測定するために、溶液の核酸濃度を、粒子を用いずに調製した開始溶液である基準溶液の核酸濃度と比較する:
【0113】
溶出収率の測定
ついで、核酸が上に固定された粒子を磁化によって洗浄する。
1− 予め調製した懸濁液を磁化し、上清を捨てる。
2− 4MのGuHCl、50mMのトリスHCl、pH7の溶液185μlを添加する。混合をボルテックスによって実施し、混合物を磁化し、上清を、それが核酸を含まないことをNanodrop UVアッセイ(ThermoScientific, Waltham, USA)によって確認しながら除去する。
3− 185μlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー2(Ref BMX 280131, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を加える。混合をボルテックスによって実施し、混合物を磁化し、上清を、それが核酸を含まないことをNanodrop UVアッセイ(ThermoScientific, Waltham, USA)によって確認しながら除去する。
4− 185μlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー3(Ref BMX 280131, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を加え、混合をボルテックスによって実施し、混合物を磁化し、上清を、それが核酸を含まないことをNanodrop UVアッセイ(ThermoScientific, Waltham, USA)によって確認しながら除去する。
5− 185μlのNucliSENSeasyMAG抽出バッファー3(Ref BMX 280131, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を加え、混合をボルテックスによって実施し、混合物を70℃、1000rpmで10分間インキュベートする。
6− 混合物を磁化し、溶出収率を計算するために、260nmでNanodrop(ThermoScientific, Waltham, USA)を使用して核酸濃度を測定する。
【0114】
上に記載のプロトコルにより、
図4及び
図5に示されるように、捕捉されたものに基づいて捕捉収率と溶出収率を測定することが可能になる。このように、マグネタイトに関して、DNA捕捉は無機シリケート化合物の被覆によって僅かだけ変更されるが、その溶出は顕著に改善されることが証明された。他方、RNA捕捉の変更はなく、無機シリケート化合物の被覆がその溶出を助ける(程度は低い)。この現象は、図に示されているような様々な種類の無機シリケート化合物に一般化することができる。
より簡単にするために、DNA又はRNA抽出総収率(
図4及び5に示される溶出収率と捕捉収率を掛けたもの)を
図6に示した。従って、無機シリケート化合物を用い、上記のプロトコルに従ってマグネタイトを単純被覆すると、それ自体、マグネタイトの核酸抽出特性の顕著な改善を構成する。
【0115】
実施例5:実施例2に記載の前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物で被覆された磁性粒子によるDNA及びRNA抽出収率
実施例2で合成した少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物のみで被覆したマグネタイト粒子を使用して、実施例4に記載のプロトコルに従ってDNA及びRNA抽出実験を実施した。
図7(
図7A及び7B)は、その捕捉収率及び溶出収率の測定値を記載する。マグネタイトに関しては、DNA捕捉が完全に阻害される一方(
図7A)、RNA捕捉は変わらないが、その溶出は顕著に改善されることが実証されている(
図7B)。
より簡単にするために、DNA又はRNA抽出総収率(溶出収率と捕捉収率を掛けたもの)もまた
図8に示されており、これはまた尚もマグネタイトと比較して、マグネタイト上の前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物の吸着又は捕捉がRNA抽出収率を劇的に改善する一方、それはDNAの収率を何ら減少させないことを再び証明している。
【0116】
実施例6:実施例3に記載の二重被覆磁性粒子によるDNA及びRNA抽出収率
DNA及びRNA抽出実験を、実施例4に記載のプロトコルに従って、1)少なくとも一種の無機シリケート化合物及び2)実施例3において合成した前記少なくとも一種の磁性化合物及び/又は前記少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する少なくとも一種の化合物で、二重被覆した磁性粒子を使用して実施した。50nmの粒子からなるものと100nmのものの2つのバッチのマグネタイトを使用した。驚くべきことに、二重被覆された粒子は優れた結果を示し(
図9及び10に示される)、一回被覆されたもの(実施例1又は2の粒子)よりもかなり良好にDNA及びRNAを抽出することが可能であることが注目される;抽出結果は、実施例1及び2の二層複合体、すなわち無機シリケート化合物で被覆された磁性粒子(実施例1)及び無機シリケート化合物及び/又は磁性化合物に対して親和性を有する化合物で被覆された粒子(実施例2)での2つの抽出結果の単純加算よりもかなり良好である。
DNA捕捉能力は、マグネタイトと比較して実質的に維持されるが、溶出は促進される。RNAに関しては、捕捉能力もまた驚くほど維持され、溶出は非常に明確に促進される。
【0117】
要約すると
図11にまとめたように、これらの結果は顕著であり、本発明の複合体が二重の性能レベルをもたらすことを示している。すなわち、無機シリケート化合物での被覆が良好なDNA抽出収率の利益を保持することを可能にし、同時に無機シリケート化合物及び/又は磁性化合物に対して親和性を有する化合物の吸着がRNA抽出収率を劇的に増加させる。
【0118】
予め無機シリケート化合物が吸着されている場合、無機シリケート化合物及び/又は磁性化合物に対して親和性を有する化合物でマグネタイトを被覆することはDNA抽出収率を低下させないが、この減少は、無機シリケート化合物及び/又は磁性化合物に対して親和性を有する化合物のみが吸着されている場合にそうであるので、予想されていたことは注目に値する。更に、この二重被覆は、無機シリケート化合物を用いてであろうと無機シリケート化合物及び/又は磁性化合物に対して親和性を有する化合物を用いてであろうと、単一被覆で得られた結果の相加よりも良好な結果を与えるので、核酸の抽出において相乗的かつ協働的な効果をもたらすことが明らかに観察される。
【0119】
実施例7:実施例3に記載の二重被覆磁性粒子を使用する血液試料中に含まれる核酸の抽出に対する二重被覆粒子(三層複合体)の効率の実証
easyMAG(登録商標)自動核酸抽出装置(ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を使用して、血液試料の白血球に含まれる核酸を抽出するその能力について、実施例3で調製された二重被覆磁性粒子(三層複合体)を試験した。このために、以下のプロトコルを使用した:
1− 200μlの血液を2mlの溶解緩衝液(NucliSENS溶解緩衝液BMX200292、ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)に添加する。
2− その試料を数秒間ボルテックスして混合し、ついで周囲温度で10分間放置する。
3− 水中50mg/mlの磁性粒子50μlを、実施例3で調製した溶液、すなわち2.5mgに添加し、直ちに5秒間ボルテックスすることによって混合を実施する。
4−懸濁液を攪拌せずに10分間静置してインキュベートした後、easyMAG(登録商標)シャトルに移し、そこで磁性粒子を洗浄した後、そこから核酸を溶出させる。
a. 簡潔に述べると、粒子を数mlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー1(Ref BMX 280130, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を用いて自動化装置で洗浄する。
b. ついで、粒子を数mlの70%エタノール溶液で取り上げる。
c. 最終的に溶出を、50μlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー3(ref BMX 280132, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を用いて、70℃で5分間、実施する。
5− ついで、抽出された核酸の品質を、220〜750nmの間の溶出液の吸光度を測定することによって評価する(Nanodrop, Thermo Fischer Scientific, USA)。
【0120】
実施例7A:
図12に示される下記の分光写真では、抽出された核酸の質と量が、三層複合体(二重被覆を有する粒子とも呼ばれる)によって顕著に増加することが実証されている。マグネタイト(AB930,100nm)は事実上核酸を抽出せず、マグネタイト/Ludox(登録商標)6%(AB1760)は3倍多くの核酸(260/280比=1.9)を抽出するが、1.1の260/230比は塩汚染を示す。マグネタイト/Ludox(登録商標)6%/PPi 6.8%(AB1773)はまた再び4倍多い核酸を抽出するが、260/280比が2.1であり、260/230比が1.7であるため、今度は優れた品質である。
【0121】
結論: これは、血液等の複合試料からの核酸の抽出に対する三層複合体の有益かつ協働的な効果を実証している。
【0122】
実施例7B:
別のバッチのマグネタイト(AB1757,50nm)もまたピロホスフェート(=KE220)又は6%の量のLudox(登録商標)シリケート含有ナノ粒子(=AB1761)で被覆した。ついで、AB1761生成物を6.8%のPPi(AB1774)又は6.8%のPPPi(AB1777)で被覆した。ついで、これらの粒子を使用して、先に記載されたように血液試料に対して核酸を抽出した。
図13の結果は、顕著な260/280純度での核酸捕捉効率及び溶出効率の上昇をもう一度明らかに示している。また、粒子がより小さいので、核酸抽出能力がより大きいことにも留意することができる。鉄リガンドのみで被覆されたマグネタイト(KE220)は非常に乏しい抽出結果を与え、二種類の被覆(無機シリケート化合物+少なくとも一種の磁性化合物及び/又は少なくとも一種の無機シリケート化合物に対して親和性を有する化合物)の協働的効果を更により明らかに示していることにも留意することができる。
【0123】
結論: 磁性粒子に対する2つの被覆(本発明に係る三層複合体)の相乗効果があり、これは血液から核酸を抽出する場合のものであることがこの実施例で明確に示されている。更に、本発明に係る幾つかの種類の複合体が非常に効果的な結果を与えうることが示されている。
【0124】
実施例7C:
別のバッチのマグネタイト(FSC419,50nm)もまた6%の量のLudox(登録商標)シリケート含有ナノ粒子で被覆した(=AL1001)。ついで、AL1001生成物を6.8%のPPi(AL1013)で被覆した。ついで、これらの粒子を使用して、先に記載されたようにして血液試料から核酸を抽出した。
図14の結果は、顕著な260/280純度の核酸の抽出における本発明に係るこれらの粒子の効率の上昇をもう一度明らかに示している。複合体が三層である場合、核酸抽出が増強されることはまた明らかである。実際、二層複合体(マグネタイト/PPi又はマグネタイト/Ludox)では、抽出が明らかに悪い。本発明に係る三層複合体は、二層複合体の各々について得られた結果の相加よりも更に良好な抽出結果を与えることは全く予見できなかった。
【0125】
実施例7D:
同じバッチのマグネタイト(FSC419,50nm)をまた30%の量のベントナイトのシリケート含有ナノ粒子で被覆した(=AL1014)。次にAL1014生成物を6.8%のPPiで被覆した(AL1015)。ついで、これらの粒子を使用して、先に記載されたようにして血液試料から核酸を抽出した。
図15の結果は、顕著な260/280純度の核酸の抽出における本発明の粒子(三層複合体)の効率の上昇をもう一度明らかに示している。ベントナイトで単一被覆されたAL1014粒子は、良好な純度の核酸を抽出するには効率的でないことに留意することは重要である(260/280比=1.1だけで、
図15のUVスペクトルに見られるように非常に強いタンパク質汚染を示す)。
一方、ピロホスフェートPPiによるこれらの粒子(二層複合体)の被覆は、抽出をかなり改善し(260/280比=1.7)、これは、本発明の三層複合体を形成するために二重被覆によってもたらされる協働的及び相乗的効果の現象をもう一度示している。
【0126】
実施例8:本発明に係る三層複合体(実施例3に記載の粒子)を使用して血液試料から抽出したサイトメガロウイルス(CMV)核酸のリアルタイムPCRによる増幅及び検出。
血液試料から核酸を抽出するその能力とついで増幅されるこれら抽出核酸の能力に関して、本発明に係る三層複合体(実施例3で調製された二重被覆された磁性粒子)を試験するために、easyMAG(登録商標)自動核酸抽出装置(ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)とまたCMV R−geneリアルタイムPCR定量キット(ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を使用した。このために、以下のプロトコルを使用した:
【0127】
1. サイトメガロウイルスのウイルス培養物(CMV Towneから産生されたCMV、ATCC VR−977)を添加することにより汚染された200μlの血液を、2mlの溶解緩衝液(NucliSENS溶解緩衝液BMX200292、ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)に加える。
2. 血液試料を含む溶解緩衝液のチューブに、10μlの抽出及び阻害コントロール溶液(CMV R−gene(登録商標)定量キット(ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)に含まれるIC2)を加える。
2’ 他のチューブにおいて並行して、コントロール範囲のCMVの10
e3〜10
e6コピーを生成する。
3. 試料を数秒間ボルテックスして混合し、ついで周囲温度で10分間放置する。
4. 水中50mg/mlの磁性粒子50μlを、実施例3で調製した溶液、すなわち2.5mgに加え、混合物を直ぐに5秒間ボルテックスして撹拌する。
5. 懸濁液を攪拌せずに10分間静置してインキュベートした後、easyMAG(登録商標)シャトルに移し、そこで磁性粒子が洗浄された後、そこから核酸が溶出される。
a. 簡潔に述べると、数mlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー1(Ref. BMX 280130, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を用いて自動化装置で粒子を洗浄する。
b. ついで、粒子を数mlの50%エタノール溶液で取り上げる。
c. 最終的に溶出を、50μlのNucliSENS easyMAG抽出バッファー3(ref BMX 280132, ビオメリュー, Marcy l’Etoile, France)を用いて70℃で5分間実施する。
6. ついで、抽出されたCMV DNAを、Bio−Rad CFX−96サーモサイクラー(BioRAD, Hercules, California)でCMV R−gene(登録商標)定量キットのプロトコルと試薬を使用して増幅し、定量する。
【0128】
結論:
図16において、本発明に係る三層複合体(二重被覆AL1013粒子(マグネタイト/Ludox6%重量/重量/(PPi6.8%))を使用した場合、AL1001単一被覆粒子(マグネタイト/Ludox6%重量/重量)の使用と比較して、CMVウイルスDNA(円の曲線)がより良好な感度で増幅されていることが実証されており、それぞれLudox(登録商標)6%のみで被覆されたマグネタイトの粒子を用いて抽出された核酸の増幅の場合の35.5のCqと比較して33.7に早められたCqであった。本発明に係る別の複合体(二重被覆粒子:AL1015(マグネタイト/ベントナイト30%/PPi 6.8%))によって保持された核酸の増幅に対しても全く同じであった。更に大なる感度(Cq=34.8)で検出された増幅がまた観測される一方、二層複合体のみ、すなわちAL1014粒子(AL1014マグネタイト/ベントナイト30%)を使用した場合には、増幅は観察されない。
【0129】
各グラフにおいて、10
e3〜10
e6のCMVコピーを含むコントロール範囲の増幅で観察された曲線に対応する、4本の円のない曲線が観察される。
本発明に係る三層複合体を形成するための磁性化合物に対する二重被覆の非常に有利で、相乗的でさえある効果がもう一度示される。
【0130】
これらの使用条件下でのマグネタイト単独は、CMVウイルスの増幅/検出には関与していないことに留意すべきである。
【0131】
参考文献
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