特許第6815833号(P6815833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815833
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】車両識別システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20210107BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20210107BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20210107BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   G01S7/41
   G05D1/02 J
   G01S13/931
   G01S7/03 200
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-214271(P2016-214271)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-72235(P2018-72235A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 拓久哉
(72)【発明者】
【氏名】魚津 信一
【審査官】 田中 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−142332(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114815(WO,A1)
【文献】 特開2008−170173(JP,A)
【文献】 特開平07−244154(JP,A)
【文献】 特開2016−053915(JP,A)
【文献】 特開平11−249740(JP,A)
【文献】 特開2004−325113(JP,A)
【文献】 特開昭56−075706(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0259401(US,A1)
【文献】 松波 勲,外1名,“24GHz帯車両RCS特性の実験的検討”,電子情報通信学会論文誌,2010年 2月16日,第J93-B巻,第394-398頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − G01S 7/51
G01S 13/00 − G01S 13/95
G01S 17/00 − G01S 17/95
G05D 1/00 − G05D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内において車両を識別する車両識別システムであって、
前記鉱山内を走行する鉱山機械に搭載されて電磁波を送信するレーダと、
識別対象である前記車両に搭載されて前記レーダから送信された電磁波を反射するレーダ反射体と、
前記レーダ反射体からの反射波の強度を検出して前記車両の種類を識別する検出装置と、を有し、
前記車両に対して平面視で前記車両の周囲360度の方向から前記レーダが送信した電磁波に対する、前記車両からの各反射波の強度の変動範囲が予め定められており、
前記レーダ反射体の反射断面積は、前記検出装置において検出された前記受信強度が、予め定められた前記車両からの各反射波の強度の変動範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする車両識別システム。
【請求項2】
請求項に記載の車両識別システムであって、
前記検出装置において検出された前記受信強度が、前記車両に対して平面視で前記車両の周囲360度の方向から前記レーダが送信した電磁波に対する前記車両からの全反射波の平均強度となるように、前記レーダ反射体の反射断面積が設定されている
ことを特徴とする車両識別システム。
【請求項3】
請求項に記載の車両識別システムであって、
前記レーダ反射体は、前記鉱山機械よりも高さが低い前記車両に搭載されており、前記レーダ反射体の取り付け位置は、前記レーダの照射範囲内である
ことを特徴とする車両識別システム。
【請求項4】
請求項に記載の車両識別システムであって、
前記レーダ反射体の取り付け高さは、前記レーダの取り付け高さと同じである
ことを特徴とする車両識別システム。
【請求項5】
請求項に記載の車両識別システムであって、
前記レーダ反射体は、開口部を有する中空の三角錐状に形成され、前記レーダから送信された電磁波が前記開口部から入射するように、一側面を底面として前記車両の天井部に取り付けられている
ことを特徴とする車両識別システム。
【請求項6】
請求項に記載の車両識別システムであって、
前記レーダ反射体は、開口部を有する中空の三角錐体を環状に複数配置して形成され、
複数の前記三角錐体はそれぞれ、前記レーダから送信された電磁波がそれぞれの前記開口部から入射するように、一側面を底面として前記車両の天井部に取り付けられている
ことを特徴とする車両識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば露天掘り鉱山等において、パトロールカーやサービスカー等の作業車両であるライトビークルを識別する車両識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山用の作業機械、例えばダンプトラック等の運搬車両にミリ波レーダ等のセンサを搭載し、自車の進行方向前方に他の作業車両がないか判断する車両識別技術が知られている。鉱山を走行する運搬車両は一般的な自動車に比べてかなり大型であり、しかも凹凸の大きな路面を走行するため、運搬車両の前方を走行する自動車等の小型車両をミリ波レーダで検出することが困難な場合がある。そのため、検知対象である車両にミリ波レーダの送信波を反射させるためのレーダ反射体を補助的に搭載し、レーダ反射体からの反射波を検出することで車両を識別する技術がある。
【0003】
例えば特許文献1では、複数のレーダ反射体の設置間隔の違いに対応した意味づけを行い、識別対象となる車両の各面に設置間隔の異なる複数のレーダ反射体を搭載し、ミリ波レーダでレーダ反射体の設置間隔を検出することで車両の向きを検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−142332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、複数のレーダ反射体をそれぞれ異なるレーダ反射体として分離して検知するために、距離分解能を時間的に可変させる必要がある。そのため、この可変処理に時間がかかり、応答性が悪くなるという課題がある。また、レーダ反射体を小型車両に搭載する場合は、レーダ反射体の設置間隔を狭める必要が生じるため、レーダ反射体を分離する事が物理的に困難となる。その結果、特許文献1では、車両の種類を精度良く識別できないという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、鉱山において鉱山機械の前方を走行する車両の種類を応答性良く、かつ高精度で識別できる車両識別システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、鉱山内において車両を識別する車両識別システムであって、前記鉱山内を走行する鉱山機械に搭載されて電磁波を送信するレーダと、識別対象である前記車両に搭載されて前記レーダから送信された電磁波を反射するレーダ反射体と、前記レーダ反射体からの反射波の強度を検出して前記車両の種類を識別する検出装置と、を有し、前記車両に対して平面視で前記車両の周囲360度の方向から前記レーダが送信した電磁波に対する、前記車両からの各反射波の強度の変動範囲が予め定められており、前記レーダ反射体の反射断面積は、前記検出装置において検出された前記受信強度が、予め定められた前記車両からの各反射波の強度の変動範囲内となるように設定されていることを特徴とする車両識別システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉱山において鉱山機械の前方を走行する車両の種類を応答性良く、かつ高精度で識別できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両識別システムの概略構成図である。
図2】車両識別システムの構成を説明する図である。
図3図3Aはレーダ反射体の一構成例を示す斜視図、図3Bはレーダ反射体の他の構成例を示す上面図及び側面図である。
図4】検知対象である車両に対して全方向から電磁波を送信したときの反射波の受信強度を表す図である。
図5】車両検出装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】検知対象の車両を識別するための統計量のテーブル値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、鉱山内を走行する鉱山機械の一態様としてのダンプトラック10、及び識別対象物の一態様としての車両20に車両識別システム1を適用する場合について説明する。
【0011】
<ダンプトラック10のシステム構成>
ダンプトラック10の主なシステム構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る車両識別システム1の概略構成図である。図2は、車両識別システム1の構成を説明する図である。
【0013】
ダンプトラック10は、ショベルで掘削した大量の土砂や鉱石を搬送するための運搬車両であり、一般的な乗用車に比べてサイズが大きく、また、走行路の凹凸との干渉を避けるために車高が高い。ダンプトラック10及び車両識別システム1の識別対象である車両20は、鉱山内において、土砂や鉱石をダンプトラック10に積込む積込場、ダンプトラック10が運搬した荷物を放土する放土場、及び積込場と放土場とを連結する搬送路を主に走行する。
【0014】
このダンプトラック10は、図2に示すように、ミリ波レーダ100、自車位置検出センサ130、車両検出装置110、操縦装置170、車両制御装置120、警報装置160、及び車両駆動装置150を含む。
【0015】
ミリ波レーダ100は、ダンプトラック10に搭載されたレーダの一態様であり、一般的に波長域が数mmから数十mmの電磁波を照射し、その反射波が帰ってくるまでの時間及びドップラーシフト量を計測する。これにより、ミリ波レーダ100は、反射対象までの相対距離及び相対速度を検出することができる。ミリ波レーダ100は、粉塵や霧、雨、照明変化などの環境変化に対するロバスト性が高く、鉱山現場で稼動する鉱山機械に搭載されてよく使用される。
【0016】
また、ミリ波レーダ100は、反射波の受信レベルを表す受信強度を得ることができる。この受信強度は、一般的に、反射対象が金属物の場合には高い値となる。そのため、非金属である路面の凹凸からの反射波の受信強度は低い値となり、金属を有する車両等からの反射波の受信強度は高い値となる傾向がある。この特性を利用することで、ミリ波レーダ100が検知した対象の中から識別対象外である路面の凹凸と、識別対象である車両20等を分離することが可能となる。
【0017】
さらに、受信強度は、ミリ波レーダ100の照射範囲内に含まれる金属部分の面積が広くなるほど反射波の受信強度が高い値となる特性がある。これにより、大きさの異なる車両20等が混在している鉱山環境において、受信強度の大きさの違いに応じて所望の車両20の種類を識別することが可能となる。
【0018】
なお、本実施形態では、ミリ波レーダ100の具体的な出力方式は限定しないが、例えば、アンテナ切り替え式のマルチビームアンテナを有したミリ波レーダ100を用いることができる。
【0019】
自車位置検出センサ130は、ダンプトラック10の位置を検出するためのセンサであり、GPS受信機132、ジャイロ装置133、加速度センサ134、及び車輪速センサ135を含む。なお、これら以外のセンサを用いて自車位置検出センサ130を構成しても良い。
【0020】
GPS受信機132は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から送信される電波をアンテナ131で受信することで、自車両の位置や姿勢を検出する。ジャイロ装置133や加速度センサ134は、ダンプトラック10の加速度を検出する。車輪速センサ135は、ダンプトラック10の車輪回転速度を検出する。
【0021】
車両検出装置110は、後述するレーダ反射体200からの反射波の強度を検出して、警報を出すべき識別対象物(本実施形態では車両20)を検出するためのものであり、メモリに格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することで実現される各種機能構成モジュールを含む電子制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)である。
【0022】
車両検出装置110は、ミリ波レーダ100から出力される車両20までの相対距離、ダンプトラック10と車両20との間における相対速度、ミリ波レーダ100が受信した反射波の受信強度、及び自車位置検出センサ130から得られる車両運動情報に基づき、ミリ波レーダ100で検知した対象が警報を出すべき識別対象物(車両20)であるかを判定する機能を有する。なお、車両検出装置110における処理内容については、後述する。
【0023】
操縦装置170は、ドライバーがダンプトラック10を操縦するための装置であり、ステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル、及びギヤシフトレバー等、ダンプトラック10の操縦に必要な装置を含む。
【0024】
車両制御装置120は、ダンプトラック10の駆動を制御するための装置であり、CPU(Central Processing Unit)がメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される各種機能構成モジュールを含む電子制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)である。
【0025】
車両制御装置120は、操縦装置170の操縦量に応じて、ダンプトラック10を走行させるための車両駆動信号を車両駆動装置150に対して送信する機能を有する。また、車両制御装置120は、車両検出装置110や自車位置検出センサ130の出力情報に応じて、車両駆動装置150に対して出力する車両駆動信号に制限を加えることが可能である。
【0026】
さらに、車両制御装置120は、警報音を出力するスピーカや表示装置を含む警報装置160に対して信号を送信し、ドライバーに警報を発する機能も有する。
【0027】
車両駆動装置150は、ダンプトラック10を駆動させるための装置であり、走行モータ151、制動装置152、及び操舵モータ153を含む。
【0028】
<車両20のシステム構成>
次に、車両20の主なシステム構成について、図1図2図3A及び図3B、並びに図4を参照して説明する。
【0029】
図3Aはレーダ反射体200の一構成例を示す斜視図であり、図3Bはレーダ反射体200の他の構成例を示す上面図及び側面図である。図4は、識別対象である車両20に対して全方向から電磁波を送信したときの反射波の受信強度300を表す図である。
【0030】
図1に示すように、識別対象である車両20には、ミリ波レーダ100から送信された電磁波を反射するレーダ反射体200が搭載されている。車両20は、例えば鉱山内の稼働状況を監視するサービスカー等であり、ダンプトラック10と比べて車高が低い。ダンプトラック10に搭載されたミリ波レーダ100は概ね2mを超える高さに設置されているため、特に車両20がダンプトラック10の近くにいる場合には、ミリ波レーダ100の照射範囲101内に車両20が位置しにくくなる。よって、ミリ波レーダ100において車両20を検知することができない可能性がある。
【0031】
そこで、本実施形態では、ミリ波レーダ100の照射範囲101内にレーダ反射体200が位置するように、車両20の天井部20aにレーダ反射体200が取り付けられている。これにより、ミリ波レーダ100から送信された電磁波をレーダ反射体200でより確実に反射させることができる。また、このように車両20の天井部20aにレーダ反射体200を取り付けることによって、ミリ波レーダ100の照射範囲101内にレーダ反射体200以外の物が入りにくくなるため、レーダ反射体200以外の物によってミリ波レーダ100から送信された電磁波が反射されてしまうことを抑制することができる。
【0032】
なお、レーダ反射体200の取り付け高さは、ミリ波レーダ100の取り付け高さと同じであることが望ましい(図1において高さHで示す)。これにより、車両20がダンプトラック10に対してどの方向から接近した場合であっても、レーダ反射体200からの反射波をミリ波レーダ100で受信しやすくなる。したがって、より信頼性の高い車両識別システム1を提供することができる。
【0033】
本実施形態では、レーダ反射体200は、図3Aに示すように、開口部200aを有する中空の三角錐状に形成されている。具体的には、レーダ反射体200は、3つの合同の直角二等辺三角形状の反射板201,202,203を有しており、反射板201,202,203それぞれにおける直角を挟んだ二辺が互いにつなぎ合わされて形成されている。
【0034】
反射板201,202,203は、例えば鉄やアルミニウム等の金属によって形成されており、内側表面がミリ波の反射面となっている。なお、レーダ反射体200を軽くするために、金属以外の材料を用いて反射板201,202,203を形成してもよい。この場合、反射板201,202,203の内側表面にアルミニウム等の金属を含む塗料を塗布する必要がある。
【0035】
レーダ反射体200を車両20に搭載する際には、例えば三角錐の一側面である反射板203を底面として車両20の天井部20aに取り付ける。ミリ波レーダ100から送信された電磁波は、開口部200aからレーダ反射体200の空間内に入射する(図3Aにおいて一点鎖線の矢印で示す)。レーダ反射体200の空間内に入射した電磁波は、反射板201,202,203の内側表面に当たって反射され、開口部200aを介して入射方向と反対の方向、すなわちミリ波レーダ100の方向に向かって反射波として放出される。
【0036】
レーダ反射体200の反射断面積は、ミリ波レーダ100が車両20に送信した電磁波に対する車両20からの反射波の反射断面積に応じて設定されている。ここで、「反射断面積」とは、ミリ波レーダ100が送信した電磁波に対する反射波を、その進行方向に対して交差(直交)する方向に切断したときの断面積をいう。したがって、本実施形態における「レーダ反射体200の反射断面積」とは、反射板201,202,203の内側表面に当たって反射した各反射波が重ね合わされた波を、その進行方向に対して交差する方向に切断したときの断面積をいう。また、「ミリ波レーダ100が車両20に送信した電磁波に対する車両20からの反射波」とは、ミリ波レーダ100を用いて車両20の車体に直接的に電磁波を送信し、車両20の車体表面から反射された反射をいう。
【0037】
本実施形態では、図4に示すように、ミリ波レーダ100を用いて車両20に対して平面視で車両20の周囲360度の方向、すなわち車両20が走行する走行路面を見た場合における360度の方向から電磁波を送信し、車両20からの各反射波の受信強度300を測定する。測定した受信強度300を予め記録しておき、この受信強度300の変動範囲を確認する。なお、図4では、車両20からの各反射波の受信強度300の変動範囲は、最小強度302から最大強度303の間となっている。
【0038】
そして、車両検出装置110において検出されるレーダ反射体200からの反射波の受信強度が、予め定められた受信強度300の変動範囲内に収まる値となるように、レーダ反射体200の反射断面積を設定する。このように設定した反射断面積を有するレーダ反射体200を車両20に搭載することにより、ミリ波レーダ100で検知した対象の中から車両20の種類を精度良く特定することができる。すなわち、レーダ反射体200の反射断面積を利用することにより、ミリ波レーダ100で受信した反射波の受信強度に応じて、検知した対象がどういった種類の車両20であるか、また路面の凹凸のような識別対象外の物であるか等を高精度に識別することができる。
【0039】
また、レーダ反射体200の反射断面積を利用して車両20の種類を識別していることから、車両20にレーダ反射体200を複数設置して、各レーダ反射体200を分離して検知するために距離分解能を時間的に可変させるといった処理等が不要となる。これにより、車両識別システム1は、システム内における処理時間が短縮されて応答性良く車両20の種類を識別することが可能である。また、車両識別システム1は、複数のレーダ反射体200を分離して検知する必要がなくなるため、精度良く車両20の種類を識別することが可能である。
【0040】
例えば、車両検出装置110において検出されるレーダ反射体200からの反射波の受信強度として、車両20に対して平面視で車両20の周囲360度の方向からミリ波レーダ100が送信した電磁波に対する車両20からの全反射波の平均強度301、すなわち受信強度300の平均値が得られるように、反射断面積を設定すればよい。この場合、車両検出装置110において検出されるレーダ反射体200からの反射波の受信強度が平均強度301以外の値であれば車両20以外の車両等であることを容易に識別することができる。
【0041】
ここで、使用するミリ波レーダ100の波長をλ[m]、設定したい反射断面積をσ[m]、反射板201,202,203における直角を挟む辺の長さをa[m]とすると、次の式(1)が成り立つ。
【数1】
この式(1)より辺の長さaを求めることで、所望の受信強度(本実施形態では車両20に対応する受信強度)を得ることができるレーダ反射体200を設計することができる。
【0042】
車両20に搭載するレーダ反射体200は、車両20への搭載性から出来るだけ小さくなることが望ましいため、本実施形態のように大きさに対して反射断面積を大きくする事ができる三角錐状のいわゆる三角コーナリフレクタを用いるとよい。
【0043】
なお、図3Bに示すように、一側面を底面として車両20の天井部20a(図1参照)に取り付けた三角コーナリフレクタを環状に複数配置したレーダ反射体210を用いると、より望ましい。この場合、ミリ波レーダ100から送信された電磁波は、複数の三角コーナリフレクタそれぞれの開口部200aから入射する(図3Bの側面図において一点鎖線の矢印で示す)。これにより、車両20がダンプトラック10に対してどの方向から接近しても、レーダ反射体210を検知することができる。
【0044】
<車両検出装置110における処理>
次に、車両検出装置110で実行される処理の内容について、図2図5、及び図6を参照して説明する。
【0045】
図5は、車両検出装置110で実行される処理の流れを示すフローチャートである。図6は、検出対象である車両20を識別するための統計量のテーブル値を示す図である。
【0046】
図2に示すように、車両検出装置110は、前処理部111、検知対象識別処理部112、及び警報対象出力処理部113の3つの処理部から構成される。車両検出装置110で実行される具体的な処理内容について、図5を参照して説明する。
【0047】
前処理部111は、ミリ波レーダ100から出力される車両20との相対距離や相対速度、及びミリ波レーダ100で受信された反射波の受信強度の情報を取得する(ステップS601)。そして、取得した情報から単発的に検出されるノイズ状のデータを除去する処理を実行する(ステップS602)。このとき、ステップS601において取得した情報を、予め定められたダンプトラック10の車両座標系に座標変換を行ってもよい。なお、ダンプトラック10と車両20との衝突を回避する場合には、車両座標系への変換が必要となる。
【0048】
次に、得られた受信強度値に対して統計処理を行い、検出した車両20の種類を判別するための統計量を算出する(ステップS603)。なお、この統計量は、車両20の種類を判別することができればどのような値でもよく、例えば累積平均値・累積分散値・移動平均値・移動分散値等を使用することができる。
【0049】
検知対象識別処理部112では、前処理部111によって算出した車両20に対する受信強度値の統計量と、予め設定された判別したい車両の受信強度の統計量とを比較することで、車両20の種類を判別する処理を行う(ステップS604)。
【0050】
具体的には、図6に示すように、判別したい車両に応じた受信強度値の統計量を予め設定しておく。そして、この設定しておいた統計量と、前処理部111で得られた受信強度値の統計量とを比較し、最も近い値となる統計量を求めることで、車両の種類を判別する。
【0051】
例えば、前処理部111によって算出された統計量を(Y1, Y2, ・・・, Yn)とすると、次の式(2)で表される2乗和が最小となる車両を識別対象とすれば良い。なお、式(2)において、iは識別対象(車両)の種類を表す番号、jは統計量の種類を表す番号であり、それぞれ1≦i≦m, 1≦j≦nである。
【数2】
【0052】
警報対象出力処理部113は、検知対象識別処理部112によって識別された車両のうち警報をすべき車両、すなわち車両20に関する相対位置・相対速度・受信強度・統計量・識別結果等の検知結果を車両制御装置120に出力する処理を行う(ステップS605)。
【0053】
そして、図2に示すように、車両制御装置120は、車両検出装置110から受け取った警報対象のデータに基づき、警報装置160に信号を送信する。そして、警報装置160は、ドライバーに対して警報を出す。また、車両制御装置120は、車両検出装置110から受け取った警報対象のデータに基づき、車両駆動装置150に信号を送信する。これにより、車両駆動装置150は、制動装置152を用いてダンプトラック10を減速させたり、操舵モータ153を用いて車両20との接触を回避する自動操舵を行わせたりすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上気した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、鉱山内を走行する鉱山機械としてダンプトラック10を挙げて説明したが、これに限らず、ドーザ、ライトビークル、グレーダ、散水車等、ダンプトラックとは異なる種類の鉱山機械であってもよい。また、鉱山内を自動走行する自律走行ダンプであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、車両20として鉱山内の稼働状況を監視するサービスカーを例に挙げて説明したが、これに限らず、鉱山内を走行する乗用車等であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、レーダ反射体200は車両20に搭載されていたが、これに限らず、走行路面上にレーダ反射体200を設置してもよい。この場合、レーダ反射体200の反射断面積を車両や路面等と異なる値に設定することで、レーダ反射体200が設置された領域に対して進入不可等の意味を持たせることが可能となる。
【0058】
また、上記実施形態では、レーダ反射体200としていわゆる三角コーナリフレクタを用いていたが、これに限らず、ミリ波レーダ100が送信した電磁波を反射し、反射断面積を有する形状のものであればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、レーダ反射体200は車両20の天井部20aに取り付けられていたが、これに限らず、ミリ波レーダ100が送信した電磁波を反射することができる位置であればよい。
【符号の説明】
【0060】
1:車両識別システム、10:ダンプトラック(鉱山機械)、20:車両、20a:天井部、100:ミリ波レーダ(レーダ)、101:レーダの照射範囲、110:車両検出装置(検出装置)、200,210:レーダ反射体、200a:開口部、300:受信強度、301:平均強度
図1
図2
図3
図4
図5
図6