(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るステアリング装置の概略を示す模式図である。
図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備えピニオンシャフト87に接合されている。また、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94とを備える。車速センサ95は、車体に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に出力する。
【0022】
図1に示すように、ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態1では、入力軸82a及び出力軸82bは、機械構造用炭素鋼(SC材(Carbon Steel for Machine Structural Use))又は機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材(Carbon Steel Tubes for Machine Structural Purposes))等の一般的な鋼材等から形成される。
【0023】
図1に示すように、ロアシャフト85は、ユニバーサルジョイント84を介して出力軸82bに連結される。ロアシャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、ピニオンシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。
【0024】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。すなわち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式である。
【0025】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。電動モータ93は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコンミテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
【0026】
トルクセンサ94は、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された操作者(運転者)の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。
【0027】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ94から操舵トルクTを取得し、且つ車速センサ95から車体の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0028】
ステアリングホイール81に入力された操作者の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ94から取得し、且つ車速信号Vを車速センサ95から取得する。そして、ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。電動モータ93が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
【0029】
出力軸82bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介してロアシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に伝達される。ピニオンシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
【0030】
図2は、本実施形態に係るステアリング装置の正面図である。
図3は、
図2におけるA−A断面図である。
図2に示すように、ステアリング装置80は、アッパーコラム51と、ロアコラム54と、コラムブラケット52と、スイッチブラケット53と、減速装置カバー59と、キーロックブラケット58と、シェアピン56と、ディスタンスブラケット3と、ハーネスブラケット4と、を備える。
【0031】
図2に示すように、ステアリング装置80は、アッパーコラム51と、ロアコラム54と、コラムブラケット52と、スイッチブラケット53と、減速装置カバー59と、キーロックブラケット58と、シェアピン56と、ディスタンスブラケット3と、ハーネスブラケット4と、を備える。
【0032】
アッパーコラム51及びロアコラム54は、ステアリングシャフト82を回転軸Rを中心に回転できるように支持する。アッパーコラム51は、軸受を介して入力軸82aを支持する筒状部材である。
図2に示すように、アッパーコラム51は、ロアコラム54よりも後方に配置されている。ロアコラム54は、軸受を介して出力軸82bを支持する筒状部材である。アッパーコラム51の少なくとも一部がロアコラム54の内側に挿入される。ロアコラム54は、車体側部材101(
図2参照)に固定されたコラムブラケット52によって支持されている。アッパーコラム51及びロアコラム54は、例えば機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材)等の一般的な鋼材等から形成される。
【0033】
以下の説明においては、車両における前方は単に前方と記載され、車両における後方は単に後方と記載される。また、回転軸Rに沿うZ軸、車両における左右方向に沿うX軸、及びZ軸及びX軸の両方に対して直交するY軸からなるXYZ直交座標軸が用いられる。X軸に沿う方向はX方向と記載され、Y軸に沿う方向はY方向と記載され、Z軸に沿う方向はZ方向と記載される。
【0034】
図2に示すように、アッパーコラム51は複数の突出部511を外周面に備える。突出部511は、例えばZ方向に沿った直線上の隆起である。突出部511は、ロアコラム54の内周面に接している。例えば、アッパーコラム51はロアコラム54に圧入されている。2次衝突が生じた際、アッパーコラム51が前方に移動する。アッパーコラム51が前方に移動すると、突出部511とロアコラム54との間で摩擦が生じると共に、突出部511の変形が生じる。これにより、衝撃が吸収される。アッパーコラム51の板厚及び突出部511の大きさ等を調整することで衝撃吸収能力を調整することができる。
【0035】
コラムブラケット52は、ロアコラム54を支持する部材である。
図3に示すように、コラムブラケット52は、取付板522と、取付板522に一体に形成された側板521と、を備える。コラムブラケット52の取付板522は、ボルト等の固定部材によって車体側部材101に固定される。車体側部材101は、車体に固定された部材である。側板521は、ロアコラム54の両側に配置され、ロアコラム54を締め付けている。また、側板521には、Y方向に長い長穴であるチルト調整孔521a(
図2参照)が設けられている。
【0036】
スイッチブラケット53は、ステアリングホイール81の周辺に配置されるスイッチを支持するための部材である。スイッチは、例えばウィンカーを操作するためのスイッチ、又はワイパーを操作するためのスイッチ等であり、車両に設けられた制御装置にワイヤーハーネスを介して電気的に接続されている。スイッチブラケット53は、
図2に示すようにアッパーコラム51に固定される。例えば、スイッチブラケット53は、アッパーコラム51の外周面に溶接されている。
【0037】
減速装置カバー59は、減速装置92を覆うための部材である。ロアコラム54の前方端部が減速装置カバー59に固定されている。減速装置カバー59の前方端部は、例えばピボットブラケットを介して車体に支持される。ピボットブラケットは、車体に固定されており、X方向に沿う回転軸を中心として回転できるように減速装置カバー59を支持する。これにより、ロアコラム54は、Y方向に揺動することができる。
【0038】
キーロックブラケット58は、キーロック50(
図2参照)を支持するための部材である。キーロック50は、盗難防止等のためにステアリングホイール81の回転を規制するための装置である。例えば、イグニッションスイッチ98がオフになった時に、キーロック50のロックピンが作動する。ロックピンは、ロアコラム54に設けられた穴を介してロアコラム54の内部に入り、ステアリングシャフト82に噛み合う。キーロックブラケット58は、例えばロアコラム54の外周面に固定される。キーロック50は、例えばボルト等によってキーロックブラケット58に固定される。
【0039】
また、ロアコラム54は、外周面に固定された回り止め部材541を備える。回り止め部材541は、減速装置カバー59に嵌まる。キーロック装置50が作動している状態(ステアリングホイール81の回転が規制された状態)でステアリングホイール81に過大な荷重が加わると、ロアコラム54に荷重が伝達する。このため、ロアコラム54が回転軸Rを中心に回転してしまう可能性がある。回り止め部材541は、ロアコラム54の回転を抑制するための部材である。
【0040】
シェアピン56は、2次衝突が生じた際の衝撃吸収能力を調整するための部材である。シェアピン56は、例えばアッパーコラム51の外周面に取り付けられている。2次衝突が生じると、アッパーコラム51がロアコラム54に対して相対的に移動するので、シェアピン56がロアコラム54の端部に衝突する。これにより、シェアピン56が切断される。シェアピン56がない場合に比較して、アッパーコラム51を移動させるために必要な荷重が増加する。このため、シェアピン56は、2次衝突が生じた際の衝撃吸収能力を調整することができる。
【0041】
図3に示すように、ディスタンスブラケット3は、ロアコラム54に固定されており、2つの側板521の間に配置されている。例えば、ディスタンスブラケット3は、ロアコラム54の下方に配置されている。ディスタンスブラケット3は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材等で形成されている。
図3に示すように、回転軸Rに対して垂直な平面でディスタンスブラケット3を切った断面形状は略U字状である。ディスタンスブラケット3は、2つの側板31と、底板32と、を備える。
【0042】
側板31は、側板521に沿う板状の部材である。側板31は、溶接等によりロアコラム54に固定されており、
図2に示すように丸孔31aを備える。底板32は、側板31に対して直交する板状の部材であって、2つの側板31を連結する。底板32は、
図3に示すように丸孔32aを備える。丸孔32aの内周面には雌ネジが設けられている。
【0043】
ステアリング装置80においては、ロアコラム54を締め付けるための締付機構が設けられる。締付機構は、チルト調整孔521a及び丸孔31aを貫通するロッドを備える。ロッドは、車室内まで延びる操作レバーに連結されている。操作レバーが操作されることで、ロッドに取り付けられたカムが回転し、側板521がディスタンスブラケット3を介してロアコラム54を締め付ける。締め付けが解除されると、ロアコラム54がY方向に揺動できるようになるので、ステアリングホイール81の上下位置の調整が可能となる。
【0044】
ハーネスブラケット4は、ステアリング装置80の周辺に配置されるワイヤーハーネスを支持するための部材である。ワイヤーハーネスは、例えばステアリングホイール81の周辺に配置される電子機器に接続された配線の束であり、ステアリング装置80に沿って前方に延びる。また、ハーネスブラケット4は、コラムカバー57(
図2参照)を支持するための部材でもある。コラムカバー57は、アッパーコラム51及びロアコラム54等を覆うための部材である。
【0045】
ハーネスブラケット4は、車体に支持された支持部材に固定されている。
図3に示すように、ハーネスブラケット4は、連結部材40によってディスタンスブラケット3に固定されている。すなわち、本実施形態においてハーネスブラケット4の支持部材はディスタンスブラケット3である。例えば、連結部材40は、ボルトであって、丸孔32aに設けられた雌ネジに噛み合う。
【0046】
図4及び
図5は、本実施形態に係るハーネスブラケットの斜視図である。
図6は、本実施形態に係るハーネスブラケットの正面図である。
図7は、本実施形態に係るハーネスブラケットの背面図である。
図8は、本実施形態に係るハーネスブラケットの右側面図である。
図9は、本実施形態に係るハーネスブラケットの左側面図である。
図10は、本実施形態に係るハーネスブラケットの平面図である。
図11は、本実施形態に係るハーネスブラケットの底面図である。
図12は、
図6におけるB−B断面図である。
図13は、
図6におけるC−C断面図である。
図14は、第1クリップの断面図である。
図15は、
図14におけるD矢視図である。
図16は、
図14におけるE矢視図である。
図17は、第2クリップの断面図である。
図18は、
図17におけるF矢視図である。
図19は、
図17におけるG矢視図である。
【0047】
図4に示すように、ハーネスブラケット4は、固定プレート41と、クリップ支持プレート42と、コラムカバー支持プレート43と、を備える。例えば、固定プレート41、クリップ支持プレート42、及びコラムカバー支持プレート43は、一体に形成されている。
【0048】
図3に示すように、固定プレート41は底板32に沿う板状部材である。
図4に示すように、固定プレート41は固定孔41aを備える。連結部材40が固定孔41aを貫通する。
【0049】
図4に示すように、クリップ支持プレート42は、例えば固定プレート41に対して直交する板状部材である。クリップ支持プレート42は、第1凸部421と、第1凸部421に設けられる第1クリップ固定孔421aと、第2凸部422と、第2凸部422に設けられる第2クリップ固定孔422aと、隆起部423と、を備える。第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423は、例えばそれぞれ絞り加工(エンボス加工)で形成されており、同じ方向に突出している。第1凸部421及び第2凸部422においては、孔が開けられた後に段差がつくように絞り加工が施されてもよいし、エンボス加工後に孔が開けられてもよい。例えば、第1凸部421は円形である。
図14に示すように、第1凸部421の側面は、第1凸部421の裏側に形成される第1凹部421bの側面とX方向で重なっている。第2凸部422は略矩形である。
図17に示すように、第2凸部422の側面は、第2凸部422の裏側に形成される第2凹部422bの側面とX方向で重なっている。第2凸部422は、第1凸部421に対して前方に配置されている。隆起部423は線状である。隆起部423は、第1凸部421と第2凸部422との間に配置され、第1凸部421から第2凸部422に向かって延びている。X方向から見て、隆起部423は、固定孔41aの中心を通り且つ固定プレート41に対して直交する第1直線L1と重なる。Z方向から見た時の隆起部423の表面は円弧を描いている。
【0050】
第1クリップ固定孔421aには、
図14に示す第1クリップ6が取り付けられる。第2クリップ固定孔422aには、第1クリップ6とは異なる形状の、
図17に示す第2クリップ7が取り付けられる。ワイヤーハーネスが第1クリップ6及び第2クリップ7に支持される。
【0051】
図14に示すように、第1クリップ6は、第1ハーネス支持部64と、第1座面部61と、第1爪部62と、を備える。第1ハーネス支持部64は環状の部材である。第1ハーネス支持部64の内側にワイヤーハーネスが通される。
【0052】
第1座面部61は円盤状の部材であって、第1凸部421の裏側に配置される。すなわち、第1座面部61は、第1凸部421の裏側に形成される第1凹部421bに面する。
図14に示すように、クリップ支持プレート42に沿う方向における第1座面部61の最大幅D61は、面内方向における第1凹部421bの最大幅D421bより大きい。以下において、クリップ支持プレート42に沿う方向は、面内方向と記載される。
【0053】
第1爪部62は、第1クリップ6を第1クリップ固定孔421aから抜け止めするための部材である。第1爪部62の数は、例えば2つである。第1爪部62は、第1座面部61から突出しており、第1クリップ固定孔421aを貫通する。第1爪部62は屈曲しており、第1爪部62の先端が第1凸部421の表面4210に接する。
図14に示すように、2つの第1爪部62の先端部間の面内方向における最小距離D62は、面内方向における第1凸部421の最大幅D421より小さい。また、第1爪部62は、第1クリップ固定孔421aに挿入される時に変形する。第1爪部62が第1クリップ固定孔421aに挿入される時、2つの第1爪部62の先端部間の面内方向における最大距離は、第1クリップ固定孔421aの内径D421aより小さくなる。このため、2つの第1爪部62が第1クリップ固定孔421aを通過できる。
【0054】
図14に示すように最大幅D61が最大幅D421bより大きいため、第1座面部61は第1凹部421bの中には入らない。第1座面部61は、クリップ支持プレート42の第1凹部421bが形成される側(第1凸部421が突出する側とは反対側)の表面420に接し、第1凹部421bの底面に対して隙間を空けて対向する。一方、第1爪部62は第1凸部421の表面4210に接する。このため、
図14に示すように、第1座面部61と第1爪部62の先端との間の距離は、表面420と第1凸部421の表面4210との間の距離T2と等しい。距離T2は、クリップ支持プレート42の板厚T1より大きい。このため、軽量化のためにクリップ支持プレート42の板厚T1を小さくしても、第1座面部61と第1爪部62の先端との間の距離が小さくならない。また、距離T2を調整することで第1クリップ6のガタツキが抑制される。例えば、第1クリップ6がクリップ支持プレート42に取り付けられる前の状態において、第1座面部61と第1爪部62の先端との間の距離T6(
図14参照)は、距離T2より小さい。このため、第1クリップ6がクリップ支持プレート42に取り付けられると、第1座面部61及び第1爪部62には互いに遠ざかる方向に力が加わる。例えば、本実施形態において板厚T1は1.4mmであり、距離T2は2.0mm以上である。第1クリップ6には、板厚が2.0mmである部材に適合するクリップを用いることができる。
【0055】
図17に示すように、第2クリップ7は、第2ハーネス支持部74と、第2座面部71と、第2爪部72と、を備える。第2ハーネス支持部74は環状の部材である。第2ハーネス支持部74の内側にワイヤーハーネスが通される。
【0056】
第2座面部71は板状の部材であって、第2凸部422の裏側に配置される。すなわち、第2座面部71は、第2凸部422の裏側に形成される第2凹部422bに面する。
図18に示すように、X方向から見た第2座面部71は略矩形である。
図17に示すように、面内方向における第2座面部71の最大幅D71は、第2凹部422bの面内方向の最大幅D422bより大きい。なお、第2座面部71の最大幅D71は、必ずしも第2凹部422bの最大幅D422bより大きくなくてもよい。第2座面部71の最大幅D71は、少なくとも第2凹部422bの短辺の幅D422bs(
図19参照)より大きければよい。
【0057】
第2爪部72は、第2クリップ7を第2クリップ固定孔422aから抜け止めするための部材である。第2爪部72の数は、例えば2つである。第2爪部72は、第2座面部71から突出しており、第2クリップ固定孔422aを貫通する。第2爪部72は屈曲しており、第2爪部72の先端が第2凸部422の表面4220に接する。
図17に示すように、2つの第2爪部72の先端部間の面内方向における最小距離D72は、面内方向における第2凸部422の最大幅D422より小さい。また、第2爪部72は、第2クリップ固定孔422aに挿入される時に変形する。第2爪部72が第2クリップ固定孔422aに挿入される時、2つの第2爪部72の先端部間の面内方向における最大距離は、第2クリップ固定孔422aの内径D422aより小さくなる。このため、2つの第2爪部72が第2クリップ固定孔422aを通過できる。第2クリップ固定孔422aが略矩形であるため、第2クリップ7が回転止めされる。
【0058】
図17に示すように最大幅D71が最大幅D422bより大きいため、第2座面部71は第2凹部422bの中には入らない。第2座面部71は、クリップ支持プレート42の第2凹部422bが形成される側(第2凸部422が突出する側とは反対側)の表面420に接し、第2凹部422bの底面に対して隙間を空けて対向する。一方、第2爪部72は第2凸部422の表面4220に接する。このため、
図17に示すように、第2座面部71と第2爪部72の先端との間の距離は、表面420と第2凸部422の表面4220との間の距離T3と等しい。距離T3は、クリップ支持プレート42の板厚T1より大きい。このため、軽量化のためにクリップ支持プレート42の板厚T1を小さくしても、第2座面部71と第2爪部72の先端との間の距離が小さくならない。また、距離T3を調整することで第2クリップ7のガタツキが抑制される。例えば、第2クリップ7がクリップ支持プレート42に取り付けられる前の状態において、第2座面部71と第2爪部72の先端との間の距離T7(
図17参照)は、距離T3より小さい。このため、第2クリップ7がクリップ支持プレート42に取り付けられると、第2座面部71及び第2爪部72には互いに遠ざかる方向に力が加わる。例えば、本実施形態において板厚T1は上述したように1.4mmであり、距離T3は距離T2に等しい。第2クリップ7には、板厚が2.0mmである部材に適合するクリップを用いることができる。
【0059】
図4に示すように、コラムカバー支持プレート43は、例えばクリップ支持プレート42に対して直交する板状部材である。すなわち、コラムカバー支持プレート43は、固定プレート41に平行である。コラムカバー支持プレート43は、コラムカバー固定孔43aと、搬送時固定孔43bと、を備える。例えばコラムカバー固定孔43aに取り付けられる連結部材がコラムカバー支持プレート43及びコラムカバー57を連結する。例えば、コラムカバー支持プレート43及びコラムカバー57を連結する連結部材はボルトである。コラムカバー固定孔43aにはバーリング加工が施されている。搬送時固定孔43bは、ステアリング装置80を搬送する際に用いられる。
【0060】
図4に示すように、クリップ支持プレート42の上方端部に固定プレート41が位置し、クリップ支持プレート42の下方端部にコラムカバー支持プレート43が位置する。クリップ支持プレート42に対して、固定プレート41及びコラムカバー支持プレート43は、互いに反対方向に延びている。すなわち、コラムカバー支持プレート43は、固定プレート41と対向しない。固定プレート41、クリップ支持プレート42及びコラムカバー支持プレート43は略S字を描く。このため、固定プレート41をディスタンスブラケット3に連結する際、コラムカバー支持プレート43が邪魔にならないので作業が容易である。
【0061】
図4に示すように、ハーネスブラケット4は、溝部45と、切欠き48と、を備える。溝部45及び切欠き48は、クリップ支持プレート42及び固定プレート41に亘るように配置されている。溝部45の数は2つである。2つの溝部45の間に切欠き48が配置されている。溝部45があることで、固定プレート41を支点としたクリップ支持プレート42の曲げが生じにくい。このため、クリップ支持プレート42がワイヤーハーネスから力を受けた場合でも、クリップ支持プレート42の変形が抑制される。また、切欠き48によりハーネスブラケット4が軽量化する。
【0062】
図6に示すように、X方向から見て、第1凸部421の中心は、溝部45の最深部を通り且つ固定プレート41に対して直交する第2直線L2に対してずれている。例えば、第1凸部421の中心が、第2直線L2に対して第2凸部422とは反対側に位置する。また、X方向から見て、第1凸部421は第2直線L2と重なる。
【0063】
なお、ハーネスブラケット4は、必ずしもボルトである連結部材40でディスタンスブラケット3に固定されていなくてもよく、溶接又は加締め等でディスタンスブラケット3に固定されていてもよい。また、ハーネスブラケット4は、必ずしもディスタンスブラケット3に固定されていなくてもよく、ステアリング装置80の構成のうちの他の部材に固定されていてもよい。例えば、ハーネスブラケット4は、アッパーコラム51、スイッチブラケット53又はロアコラム54等に固定されていてもよい。
【0064】
なお、ステアリング装置80は、必ずしも第1クリップ6及び第2クリップ7の両方を備えていなくてもよく、少なくとも1つのクリップを備えていればよい。また、第2凸部422は、上述したように略矩形でなくてもよく、第1凸部421と同様に円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、第1凸部421は、上述したように円形でなくてもよく、第2凸部422と同様に略矩形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0065】
以上で説明したように、ステアリング装置80は、車体に支持された支持部材(例えばディスタンスブラケット3)に取り付けられるハーネスブラケット4と、ハーネスブラケット4に取り付けられる第1クリップ6と、を備える。ハーネスブラケット4は、第1凸部421及び第1凸部421に設けられる第1クリップ固定孔421aを備えるクリップ支持プレート42を備える。第1クリップ6は、ワイヤーハーネスが取り付けられる第1ハーネス支持部64と、第1凸部421の裏側に配置され且つクリップ支持プレート42に接する第1座面部61と、第1クリップ固定孔421aを貫通し且つ第1凸部421の表面4210に接する第1爪部62と、を備える。クリップ支持プレート42に沿う面内方向の第1座面部61の最大幅D61は、第1凸部421の裏側にある第1凹部421bの面内方向の最大幅D421bより大きい。
【0066】
これにより、第1座面部61は、第1凹部421bの中には入らず、クリップ支持プレート42の第1凹部421bが形成される側の表面420に接する。このため、クリップ支持プレート42を挟む第1座面部61と第1爪部62との間の距離が、クリップ支持プレート42の板厚T1より大きくなる。このため、軽量化のためにクリップ支持プレート42の板厚T1を小さくしても、クリップ支持プレート42を挟む第1座面部61と第1爪部62との間の距離が小さくならない。すなわち、クリップ支持プレート42の板厚T1を小さくすることと、クリップ支持プレート42を挟む第1座面部61と第1爪部62との間の距離を保つこととが両立される。したがって、ステアリング装置80は軽量化でき且つワイヤーハーネスを支持する第1クリップ6による騒音を抑制できる。
【0067】
また、ステアリング装置80は、ハーネスブラケット4に取り付けられる第2クリップ7を備える。クリップ支持プレート42は、第1凸部421とは異なる位置で第1凸部421と同じ方向に突出する第2凸部422、及び第2凸部422に設けられる第2クリップ固定孔422aを備える。第2クリップ7は、ワイヤーハーネスが取り付けられる第2ハーネス支持部74と、第2凸部422の裏側に配置され且つクリップ支持プレート42に接する第2座面部71と、第2クリップ固定孔422aを貫通し且つ第2凸部422の表面4220に接する第2爪部72と、を備える。面内方向の第2座面部71の最大幅D71は、第2凸部422の裏側にある第2凹部422bの面内方向の最大幅D422bより大きい。
【0068】
これにより、第2クリップ7による騒音が抑制される。また、ワイヤーハーネスが2箇所で支持されるので、第1クリップ6及び第2クリップ7のそれぞれに加わる力が小さくなる。このため、第1クリップ6及び第2クリップ7による騒音がより抑制されやすい。
【0069】
また、クリップ支持プレート42は、第1クリップ固定孔421aから第2クリップ固定孔422aに向かって延びる隆起部423を備える。
【0070】
第1クリップ6及び第2クリップ7に加わる力の差があると、クリップ支持プレート42が例えばY軸を中心に曲がる可能性がある。クリップ支持プレート42の変形は、騒音の原因になるため望ましくない。これに対して、隆起部423が設けられることで、クリップ支持プレート42がワイヤーハーネスから力を受けた場合でも、クリップ支持プレート42の変形が抑制される。その結果、ハーネスブラケット4で生じる騒音が抑制される。
【0071】
また、隆起部423は、第1凸部421と同じ方向に突出している。
【0072】
これにより、第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423は、それぞれ同じ方向から押圧されることで形成される。このため、ハーネスブラケット4の製造効率が向上する。
【0073】
また、ハーネスブラケット4は、クリップ支持プレート42に対して交差する固定プレート41を備える。固定プレート41は、支持部材(例えばディスタンスブラケット3)に締結される連結部材40が貫通する固定孔41aを備える。クリップ支持プレート42に対して直交する方向(X方向)から見て、隆起部423は、固定孔41aの中心を通り且つ固定プレート41に対して直交する第1直線L1と重なる。
【0074】
これにより、ハーネスブラケット4の支持点である固定孔41aに近い部分において、断面二次モーメントが大きくなる。このため、クリップ支持プレート42の変形がより抑制される。
【0075】
また、ハーネスブラケット4は、クリップ支持プレート42及び固定プレート41に亘る溝部45を備える。クリップ支持プレート42に対して直交する方向(X方向)から見て、第1凸部421は、溝部45の最深部を通り且つ固定プレート41に対して直交する第2直線L2と重なる。第1凸部421の中心は、第2直線L2に対して第2凸部422とは反対側に位置する。
【0076】
ワイヤーハーネスの位置決めを容易にするためには、第1クリップ6と第2クリップ7との間の距離が大きい方が好ましい。第1凸部421の中心が第2直線L2に対して第2凸部422とは反対側にあることで、第1クリップ6と第2クリップ7との間の距離が大きくなる。その一方で、第1凸部421が第2凸部422から離れるほどクリップ支持プレート42が変形しやすくなる。しかし、第1凸部421が第2直線L2と重なることで、クリップ支持プレート42の変形が抑制される。したがって、ステアリング装置80は、ワイヤーハーネスの位置決めを容易にし、且つハーネスブラケット4で生じる騒音を抑制できる。
【0077】
(第1変形例)
図20は、第1変形例に係る第1凸部の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0078】
図20に示すように、第1変形例に係るクリップ支持プレート42Aは、上述した第1凸部421とは異なる形状を有する第1凸部421Aを備える。第1凸部421Aは、絞り加工(エンボス加工)で形成される。第1凸部421Aは、外縁421Sと第1クリップ固定孔421aとの間に傾斜部4215を備える。これにより、第1凸部421Aは、上述した第1凸部421に比較して変形しやすくなる。すなわち、第1凸部421Aがバネとして機能する。このため、第1クリップ6が第1凸部421Aに密着しやすくなるので第1クリップ6のガタツキが防止される。
【0079】
(第2変形例)
図21は、第2変形例に係る第1凸部の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0080】
図21に示すように、第2変形例に係るクリップ支持プレート42Bは、上述した第1凸部421とは異なる形状を有する第1凸部421Bを備える。第1凸部421Bは、絞り加工(エンボス加工)で形成される。第1凸部421Bは、外縁421Sと第1クリップ固定孔421aとの間に屈曲部4216を備える。これにより、第1凸部421Bは、上述した第1凸部421に比較して変形しやすくなる。すなわち、第1凸部421Bがバネとして機能する。このため、第1クリップ6が第1凸部421Bに密着しやすくなるので、第1クリップ6のガタツキが防止される。
【0081】
(第3変形例)
図22は、第3変形例に係る第1凸部の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0082】
図22に示すように、第3変形例に係るクリップ支持プレート42Cは、上述した第1凸部421とは異なる形状を有する第1凸部421Cを備える。第1凸部421Cは、絞り加工(エンボス加工)で形成される。第1凸部421Cは、外縁421Sと第1クリップ固定孔421aとの間に2つの屈曲部4217を備える。これにより、第1凸部421Cは、上述した第1凸部421に比較して変形しやすくなる。すなわち、第1凸部421Cがバネとして機能する。このため、第1クリップ6が第1凸部421Cに密着しやすくなるので、第1クリップ6のガタツキが防止される。
【0083】
なお、第1変形例から第3変形例の構成は、第2凸部422及び隆起部423に適用することもできる。
【0084】
(第4変形例)
図23は、第4変形例に係るハーネスブラケットの斜視図である。
図24は、
図23におけるH−H断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0085】
図23に示すように、第4変形例に係るハーネスブラケット4Dのクリップ支持プレート42Dにおいては、第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423Dが一体に形成されている。例えば、
図24に示すように、第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423Dの断面形状として、第3変形例で示した形状が用いられる。なお、第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423Dの断面形状として、他の形状が用いられてもよい。
【0086】
隆起部423Dが上述した隆起部423より長くなるので、クリップ支持プレート42の変形がより抑制される。また、第1凸部421、第2凸部422及び隆起部423Dを一度に形成することができるため、製造効率が向上する。
【0087】
(第5変形例)
図25は、第5変形例に係るハーネスブラケットの斜視図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0088】
図25に示すように、第5変形例に係るハーネスブラケット4Eにおいては、コラムカバー支持プレート43EのZ方向の長さがクリップ支持プレート42のZ方向の長さに等しい。コラムカバー支持プレート43Eがクリップ支持プレート42を補強する。このため、クリップ支持プレート42の変形が抑制される。
【0089】
(第6変形例)
図26は、第6変形例に係るハーネスブラケットの斜視図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0090】
図26に示すように、第6変形例に係るハーネスブラケット4Fの固定プレート41Fは、フィン416と、フィン417と、フィン418と、を備える。フィン416は、固定プレート41Fの前方端部に配置される。フィン417は、固定プレート41Fの後方端部に配置される。フィン418は、切欠き48の内壁から突出している。フィン416、フィン417及びフィン418があることで、上述した実施形態に比較して固定プレート41Fのガタツキが抑制される。