(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関する。
【0002】
従来、壁面等に設けられたTV端子のような同軸端子と、複数台のTV受像機を同軸ケーブルで接続するときには、分配器あるいは分岐器等と称される電子機器が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平06−203928号公報)には、モールドにより一体的に形成され異なる角度で基板、パネルに取付けられる電気コネクタが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の電気コネクタは、絶縁ハウジングの少なくとも一端近傍の取付耳に取付具用取付穴が形成された電気コネクタにおいて、取付穴は2方向から略D字状のチャンネルを形成して該両チャンネルを一部連通させることにより取付具を前記連通穴を介して前記絶縁ハウジングに対して角度の異なる2方向から挿通可能にすることを特徴とするものである。
【0005】
また、特許文献2(特開2009−295495号公報)には、接栓座の向きをできるだけ自由に変え得る信号分配器、分岐器について開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の信号分配器、分岐器においては、信号分配器/分岐器の筐体に取り付けられる同軸接栓座において、側面形状がL字型で先端に接続口を有する接栓座と、側壁に前記接栓座の基部を回転可能に支持し、底面が締付具を介して前記筐体の面に固定される接栓台とをそなえ、前記接栓座を自在に回転させるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
さらに、特許文献3(特開2006−147310号公報)には、共同受信機器を造営材に対して設置する作業において、共同受信機器の取付位置、接栓座に接続する同軸ケーブルの配線プランを自由に選定することができるようにする共同受信機器について開示されている。
【0008】
特許文献3に記載の共同受信機器は、内部に電子回路を納めるようにした筒状のケースの周面には、上記ケースの軸心方向に向けて複数の接栓座を突出方向を揃えて列設し、上記ケースの両端部には取付部材の合着部を対接させる為の対接部を具備させ、一方、造営材に固着させる為の装着部を夫々具備している二つの取付部材には、上記ケースの両端部に備えさせる対接部に夫々合着させる為の合着部を具備させ、さらに、上記取付部材と上記ケースとは、上記接栓座の突出方向が上記ケースを設置すべき面に直交した方向から、上記ケースを設置すべき面に並行配置される間の任意の位置に回転自在に固定可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、特許文献4(特開2006−147496号公報)には、安価で作業性のよい分岐及び分配器について開示されている。
【0010】
特許文献4に記載の分岐及び分配器は、本体の内部には伝送信号を分岐及び分配するための回路手段を有し,本体の外壁には伝送経路を介して前記回路手段と他の機器に接続するための同軸接栓座を有する分岐及び分配器において,前記本体は,該本体の1つの面に前記同軸接栓座の軸線が並行配置されるように同じ方向を向けて突出するように同軸接栓座と,前記本体における,前記同軸接栓座の配列方向に位置する両側面と,前記同軸接栓座の最も外側に配設され同軸接栓座と,の間における前記本体の両端部には,前記本体を設置すべき面に対して止着ねじを用いて固定できるように形成した止着ねじ挿通用の挿通孔を備え,該挿通孔は,前記本体が前記同軸接栓座の突出方向を前記本体を設置すべき面に止着ねじを用いて並行配置して固定するために夫々対設された止着ねじ挿通用の第1及び第3の挿通孔と,前記同軸接栓座の突出方向を前記本体を設置すべき面に止着ねじを用いて直交配置して固定するために対設された止着ねじ挿通用の第2の挿通孔が備えられ,前記各挿通孔は,内周面に段部が設けられ,該段部に連設して前記止着ねじの挿脱方向側に形成された開口部から段部にかけて配設される大径部と,前記段部から前記設置すべき面に設置するための設置面側に形成された開口部にかけて配設される小径部と,からなり,前記第1の挿通孔と前記第3の挿通孔は夫々の中心軸線を並列配置して,前記大径部と前記小径部の配列方向を対向するように配設されると共に,前記第1及び第2及び第3の挿通孔の中心軸線が,前記両端部における前記同軸接栓座の配列方向に直交する平面上に配設されたことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、特許文献5(特開2007−18818号公報)には、入力用接栓座と複数の出力用接栓座群とを造営材に対して任意の角度で、しかも同一方向へ向けて設置でき、分岐/分配器の取付位置、接栓座に接続する同軸ケーブルの配線プランを自由に選定することができる分岐/分配器について開示されている。
【0012】
特許文献5に記載の分岐/分配器は、内部に分岐/分配回路を納めるようにした収納空間を備えている筒状のケースの周面には、入力用接栓座と複数の出力用接栓座を夫々筒状ケースの筒芯に対して直交する方向に樹立させる状態で備えさせている分岐/分配器において、上記入力用接栓座と複数の出力用接栓座とは、筒状ケースの筒芯に平行する方向に一列に並べて備えたものである。
【0013】
さらに、特許文献6(特開2004−247228号公報)には、同軸ケーブル分配器や分岐器の汎用性を高くする同軸ケーブル分配器について開示されている。
【0014】
特許文献6に記載の同軸ケーブル分配器は、内部に空洞を有する筐体の表面に、中心コンタクト及び前記中心コンタクトと同心的に設けられた円柱状の外部コンタクトを備える同軸ケーブル接続端子(以下、接栓と称する)が3個以上取り付けられてなり、前記各接栓の前記外部コンタクト同士は前記筐体により電気的に接続され、前記中心コンタクト同士は前記筐体の前記空洞内で電気的に接続された同軸ケーブル分配器であって、前記接栓のうち、すくなくとも2つの接栓は、前記筐体表面からの突出方向と直交する方向を回転軸として、前記外部コンタクト同士及び前記中心コンタクト同士の電気的接続を保ちながら回転することを特徴とするものである。
【0015】
また、特許文献7(特開2017−33755号公報)には、従来の電子機器ケースは取付部が一定方向からの取付のみを想定したものであり、端子の方向を変更する際には、電子機器ケースの端子方向の変更、又は取付面の変更、及びネジの再取付が必要であり、作業性が低いという課題が存在した電子機器ケースについて開示されている。
【0016】
特許文献7に記載の電子機器ケースは、略直方体状の電子機器ケースであって、入力端子と、少なくとも2つ以上の出力端子を有し、該ケースの対向する側面に取付部を有し、該取付部は略直方体形状とされ、該取付部側面の2か所に、隣接する2つの側面に連通する取付開口部を有し、該取付開口部に取付具を挿通し固定を行うことを特徴とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1から特許文献6のいずれにおいても、取り付け面に対し一定方向からの取り付けのみが可能となるものであり、端子または接栓座の方向を変更する場合には、螺子の再取り付け等が必要となり、作業性が低いという課題があった。
【0019】
また、特許文献7記載の技術においては、分配器の両側に設けられた取付部に螺子を完全に貫通させて同軸ケーブル分配器ケースを取り付け面に取り付けた場合、同軸ケーブル分配器ケースの取り付け方向を自由な角度に変更できないという問題があった。すなわち、決められた1の姿勢と、当該姿勢から90度回転させた姿勢との2つの状態しか選択できなかった。
【0020】
さらに、特許文献7記載の技術においては、螺子を取付部に完全に貫通させて同軸ケーブル分配器ケースを取り付け面に取り付けた場合、同軸ケーブル分配器ケースの角部分が取り付け対象に接触するため、回転させることが困難であるという問題があった。
【0021】
本発明の目的は、取り付け対象に対して任意の角度で固定できる電子機器を提供することである。
本発明の他の目的は、端子または接栓座の方向およびケースの姿勢を容易に変更することができる電子機器を提供することである。
本発明の他の目的は、同軸ケーブルを取り付けた後であっても、端子の方向およびケースの姿勢を容易に、かつ自由自在に変更することができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(1)
一局面に従う電子機器は、同軸ケーブル用の複数の接栓座が設けられたケースと、ケースの一端部から突出形成された第1軸部と、ケースの他端部から突出形成された第2軸部と、第1軸部を外包する第1取り付け部材と、第2軸部を外包する第2取り付け部材と、を含み、第1軸部および第2軸部の軸心は、同一軸上で形成され、第1取り付け部材および第2取り付け部材は、それぞれ螺子挿入部を有し、螺子挿入部に螺子を挿入することにより第1取り付け部材および第2取り付け部材の外包が締め付けられ、第1軸部が第1取り付け部材により固定され、第2軸部が第2取り付け部材により固定される。また、固定には、摺動可能に保持される場合も含んでも良い。
【0023】
この場合、第1軸部と第2軸部とが、第1取り付け部材および第2取り付け部材に外包され、螺子により締め付けられて互いに摺動可能に保持される。また、第1軸部と第2軸部とからなる同一軸を軸として、当該ケースを回動させることができる。
その結果、同軸ケーブル用の複数の接栓座に同軸ケーブルを取り付けた後でも、端子の方向およびケースの姿勢を容易に変更することができる。
また、第1取り付け部材および第2取り付け部材と、第1軸部および第2軸部とが、摺動可能に保持されているので、自由な角度で保持させることができる。
例えば、ある姿勢のケースを基本として、ケースを15度回転させた姿勢、30度回転させた姿勢、45度回転させた姿勢等、多段階、自由自在な状態を設定することができる。
また、螺子を螺子挿入部に挿入することにより外包が締め付けられる。または螺子を螺子挿入部に挿入し取り付け面に取り付ける。これらのいずれか一方により螺子頭および取り付け面により挟まれることにより外包され、各取り付け部材は各軸部に固定される。
【0024】
(2)
第2の発明にかかる電子機器は、一局面に従う電子機器において、第1軸部の少なくとも一部は円柱形状からなり、第2軸部の少なくとも一部は円柱形状からなり、第1取り付け部材は、円柱形状が回転可能に挿入される軸孔と、軸孔の孔径を拡縮可能とするスリットと、を含み、第2取り付け部材は、円柱形状が回転可能に挿入される軸孔と、軸孔の孔径を拡縮可能とするスリットと、を含み、螺子を螺子挿入部に挿入することにより、スリット間隔を小さくして軸孔の孔径を縮小してもよい。
【0025】
この場合、第1軸部および第2軸部はそれぞれ円柱形状からなり、第1取り付け部材および第2取り付け部材は断面がアルファベットの「C」の文字形状からなる。
第1取り付け部材の螺子貫通部に通した螺子の頭部と螺子のスクリュー部分とで、アルファベットの「C」の文字の書き始めと書き終わりの部分を近づけることにより、スリット間隔を小さくし、第1取り付け部材の孔径を縮小することができる。
第2取り付け部材の螺子貫通部に通した螺子の頭部と螺子のスクリュー部分とで、アルファベットの「C」の文字の書き始めと書き終わりの部分を近づけることにより、スリット間隔を小さくし、第2取り付け部材の孔径を縮小することができる。
その結果、第1軸部および第2軸部を第1取り付け部材および第2取り付け部材に対し容易に摺動可能に保持することができる。
【0026】
(3)
第3の発明にかかる電子機器は、一局面に従う電子機器において、第1軸部の少なくとも一部は円柱形状からなり、第2軸部の少なくとも一部は円柱形状からなり、第1取り付け部材は、円柱形状が回転可能に挿入される軸孔と、軸孔の孔径を拡縮可能とするスリットと、を含み、第2取り付け部材は、円柱形状が回転可能に挿入される軸孔と、軸孔の孔径を拡縮可能とするスリットと、を含み、螺子を螺子挿入部に挿入し取り付け面に取り付けることにより、スリット間隔を小さくして軸孔の孔径を縮小してもよい。
【0027】
この場合、第1軸部および第2軸部はそれぞれ円柱形状からなり、第1取り付け部材および第2取り付け部材は、断面がアルファベットの「C」の文字形状からなる。壁または固定部材等の取り付け面と螺子の頭部とで取り付け部材を挟み、アルファベットの「C」の文字の書き始めと書き終わりの部分を近づけることで、すなわち、スリット間隔を小さくし、孔径を縮小することができる。
その結果、第1軸部および第2軸部を第1取り付け部材および第2取り付け部材に容易に摺動可能に保持することができる。
【0028】
(4)
第4の発明にかかる電子機器は、一局面から第3の発明にかかる電子機器において、第1軸部および第2軸部に、同一軸に交差する方向に形成された螺子用凹部がそれぞれ形成されていてもよい。
【0029】
この場合、螺子用凹部を有するので、第1取り付け部材および第2取り付け部材の大きさを小さくすることができる。
【0030】
(5)
第5の発明にかかる電子機器は、第4の発明にかかる電子機器において、螺子用凹部は、第1軸部および第2軸部の一部の断面を、一対の扇柱形状に形成してもよい。
【0031】
この場合、螺子用凹部により第1軸部および第2軸部の一部の断面が一対の扇柱形状に形成される。その結果、一対の扇柱形状の間に螺子を挿入することができる。
【0032】
(6)
第6の発明にかかる電子機器は、第4の発明にかかる電子機器において、螺子用凹部は、第1軸部および第2軸部の一部の断面を、該軸から偏芯して形成された一個の楕円柱形状に形成してもよい。
【0033】
この場合、螺子用凹部により第1軸部および第2軸部の一部の断面が該軸から偏芯して形成された一個の楕円柱形状に形成にされる。その結果、偏芯して形成された楕円柱形状以外の部分に、螺子を挿入することができる。
【0034】
(7)
第7の発明にかかる電子機器は、第4から第6の発明にかかる電子機器において、螺子用凹部および軸孔により形成された円柱部に、螺子を貫通させてもよい。
【0035】
この場合、螺子用凹部および軸孔により形成された円柱部に螺子を貫通させることで、第1取り付け部材および第1軸部を係止させることができ、第2取り付け部材および第2軸部を、係止させることができる。
【0036】
(8)
第8の発明にかかる電子機器は、一局面から第7の発明にかかる電子機器において、同一軸は、ケースの外側にオフセットして配置されてもよい。
【0037】
この場合、ケースの外側にオフセットさせて第1軸および第2軸の同一軸を設けている。その結果、電子機器を壁、板、金属等の対象物の平面上に取り付けた場合であっても、略直方体形状からなるケースを回動させる場合に電子機器の角が当該平面上に接触し、回転困難な状態を避けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0040】
(同軸ケーブル分配器100)
図1および
図2は、第1の実施の形態にかかる同軸ケーブル分配器100の外観の一例を示す模式的斜視図である。
【0041】
図1および
図2に示すように、同軸ケーブル分配器100は、主に第1面(前面)120、側面130,140、天面150、第2面(裏面)160、および底面170からなる略直方体形状のケースを有する。
また、
図1および
図2に示すように、ケースの一方の側面130に第1軸部410が突出して設けられ、対向する他方の側面140に第2軸部420が突出して設けられる。
さらに、第1軸部410には、第1取り付け部材510が取り付けられており、第2軸部420には、第2取り付け部材520が取り付けられている。第1軸部410および第2軸部420の詳細形状については、後述する。
【0042】
(入力接栓座200および出力接栓座300)
ケースの第1面120には、同軸ケーブル用の入力接栓座200と、同軸ケーブル用の複数の出力接栓座310,320,330,340,350,360と、が設けられている。以下、出力接栓座310,320,330,340,350,360を示す場合、出力接栓座300と呼ぶ。
本実施の形態において、入力接栓座200および出力接栓座300は、それぞれ第1面120の法線方向に沿って設けられている。
本実施の形態にかかる同軸ケーブル分配器100は、入力接栓座200に入力された電波(信号)を、出力接栓座300のそれぞれに分配させることができる器具である。
【0043】
また、本実施の形態において、入力接栓座200および出力接栓座300を第1面120に全て配置させることとしているが、これに限定されず、入力接栓座200をケースの側面130,140に設けてもよく、入力接栓座200および出力接栓座300のいずれか1つまたは複数を任意の部位に設けてもよい。さらに、本実施の形態において出力接栓座300は、6個の場合について図示しているが、これに限定されず、2、3または任意の数であってもよい。
さらに、本実施の形態において、入力接栓座200および出力接栓座300を金属で形成し、ケース自体も金属、または樹脂、例えば亜鉛(合金)から形成されていてもよい。さらに、ケース、第1軸部410および第2軸部420は、ダイカスト製品であってもよい。
【0044】
(第1軸部410、第2軸部420)
図3および
図4は、同軸ケーブル分配器100の構造の一例を示す模式的分解図および模式的要部拡大図である。
【0045】
図3に示すように、第1取り付け部材510、第2取り付け部材520は、第1軸部410および第2軸部420を外包するように設けられる。
ここで、「外包」とは、第1軸部410の円柱部分の少なくとも一部を包み込むことが可能な状態を意味する。すなわち、外包するとは、第1軸部410の円柱部分と第1取り付け部材510の貫通孔511との関係、第2軸部420の円柱部分と第2取り付け部材520の貫通孔521との関係を意味する。
【0046】
図4に示すように、第1軸部410および第2軸部420は、主に円柱形状からなり、当該円柱形状の一部に凹部430を有する。凹部430の詳細については、後述する。
なお、凹部430を設けることとしているが、これに限定されず、第1取り付け部材510、第2取り付け部材520の大きさを大きくすることで、任意に設けてもよい。すなわち、後述するように、螺子Bと干渉する問題がなければ、凹部430を設けなくても良い。上記の大きさを大きくするということは、第1取り付け部材510、第2取り付け部材520の中央部に貫通孔511、貫通孔521を設けるのではなく、現状よりも大きな第1取り付け部材510、第2取り付け部材520の中央部から偏芯した位置に貫通孔511、貫通孔521を設ける場合を意味する。
さらに、本実施の形態において、第1軸部410、第2軸部420もケースと同じタイミングで形成されるため、ケースと同様の金属、または樹脂、例えば亜鉛(合金)から形成されていてもよい。
【0047】
(第1取り付け部材510、第2取り付け部材520)
図5は、第1取り付け部材510、第2取り付け部材520の一例を示す模式図である。
本実施の形態において、第1取り付け部材510、第2取り付け部材520は、樹脂、または金属から形成されていてもよい。
【0048】
第1取り付け部材510、第2取り付け部材520は、同一形状からなる。したがって、第1取り付け部材510を例に挙げて説明を行う。
図5に示すように、第1取り付け部材510は、略直方体形状からなり、内部に円柱形状の貫通孔511を有する。また、貫通孔511は、第1軸部410の円柱形状が挿入可能な孔径に設定されている。
さらに、第1取り付け部材510は、略直方体形状の一面側から貫通孔511へ向けてスリットを形成する一対の面512,513を有する。
【0049】
また、第1取り付け部材510の一対の面512,513の法線方向には、螺子Bを挿入または取り付けるための孔525が設けられる。
なお、本実施の形態における第1取り付け部材510は、一対の面512,513をほぼ並行して形成している場合について説明したが、これに限定されず、相対的に任意の角度で形成されてもよい。
【0050】
同様に、第2取り付け部材520は、略直方体形状で内部に円柱形状の貫通孔511を有し、貫通孔521は、第2軸部420の円柱形状が挿入可能な孔径に設定されている。また、第2取り付け部材520は、略直方体形状の一面側から貫通孔521へ向けてスリットを形成する一対の面522,523を有し、螺子Bのための孔525が設けられる。
上記の第1取り付け部材510および第2取り付け部材520は、それぞれ断面がアルファベットの「C」の文字形状に形成されている。アルファベットの「C」の文字の書き始めと書き終わりの部分の間に一対の面522,523からなるスリットが形成されており、スリットの間隔を小さくすると貫通孔511,521の孔径が小さくできる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、螺子Bの頭部と螺子Bのスクリュー部分とにより一対の面512,513のスリット幅、一対の面522,523のスリット幅を狭くすることができる場合について説明したが、これに限定されず、螺子Bの頭部と取り付け面(壁、壁面、取り付け金具)とにより一対の面512,513のスリット幅、一対の面522,523のスリット幅を狭くするようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態において、第1軸部410は、第1取り付け部材510の貫通孔511の直径と同じであってもよく、または貫通孔511よりも第1軸部410の方が少し大きいものであってもよい。
同様に、第2軸部420は、第2取り付け部材520の貫通孔521の直径と同じであってもよく、または貫通孔521よりも第2軸部420の方が少し大きいものであってもよい。
【0053】
(螺子Bによる締結の動作)
続いて、
図6、
図7および
図8は、第1取り付け部材510および第1軸部410、と、第2取り付け部材520および第2軸部420との構造の一例を示す模式的構造図である。また、
図6は、螺子Bを挿入する前の状態を示す。
図7および
図8は、
図6のA1―A1断面の一例を示す。
【0054】
まず、
図6に示すように、第1軸部410に第1取り付け部材510を挿入した場合、螺子Bを挿入するための孔525が形成される。この場合、第1軸部410の凹部430が、螺子Bと係り止め可能な形状を有する。螺子Bを挿入した場合、螺子Bが第1軸部410の凹部430を通過して係り止めされるため、第1取り付け部材510と第1軸部410とは離間しない。
同様に、第2軸部420に第2取り付け部材520を挿入した場合、螺子Bを挿入するための孔525が形成される。この場合、第2軸部420の凹部430が、螺子Bと係り止め可能な形状を有する。螺子Bを挿入した場合、螺子Bが第2軸部420の凹部430を通過して係り止めされるため、第2取り付け部材520と第2軸部420とは離間しない。
【0055】
次に、
図7に示すように、第1軸部410の外径は、貫通孔511の内径よりもわずかに大きく設定されており、挿入可能に設けられる。その結果、一対の面512,513は、距離L1となる(L1≠0)。
次いで、孔525に螺子Bを挿入する。この場合、螺子Bは、孔525に仮止めされてもよい。
図7の場合、孔525の一部の径は、螺子Bの直径よりもわずかに、狭く設けられている。そのため、螺子Bを仮止めすることができる。
なお、本実施の形態においては、螺子Bを仮止めできることとしているが、これに限定されず、孔525は、螺子Bの直径より大きく貫通するように設計し、螺子Bを挿入する側と逆側にワッシャ等を設けて仮止めしてもよく、他の任意の構造で仮止めしてもよい。
なお、仮止めされることは、例えば、同軸ケーブル分配器100を天井面に設置する場合等においても、螺子Bが同軸ケーブル分配器100から脱落することがないため、取り付け作業性に優れる。
また、この場合、第1軸部410には、凹部430(楕円柱形状)が形成されているため、凹部430内に配置された螺子Bは、第1軸部410と離間した状態が維持される。
【0056】
次いで、
図8に示すように、螺子Bが挿入された場合、一対の面512,513は、距離L2となる(L1>>L2≒0)。この場合、螺子Bが、一対の面513を超えた部分と噛み合い、螺子Bのスクリューにより一対の面513側が、一対の面512側へ引っ張られる。その結果、螺子Bの頭の部分と螺子Bのスクリュー部分で、一対の面512,513が挟み込まれる。
本実施の形態においては、孔525が螺子Bと噛み合うことから一対の面512,513の距離が短くなる場合について説明しているが、これに限定されず、螺子Bが孔525と噛み合わない場合、螺子Bが壁などの取り付け面に挿入されることで、一対の面512,513の距離が短くなる。
【0057】
その結果、貫通孔511の径が縮小され、貫通孔511の内周面により第1軸部410が保持される。
この場合、ケースの第1軸部410は、第1取り付け部材510に仮固定(または固定)される。ケースの第2軸部420は、第2取り付け部材520に仮固定(または固定)される。その結果、ケースの取付け角度を維持することができる。
また、
図8に示すように、螺子Bは、破線で形成された状態まで回転させることができる。
【0058】
次に、
図9、
図10、および
図11は、同軸ケーブル分配器100を取り付け面に取り付けた一例を示す模式図である。
【0059】
図9に示すように、壁などの取り付け面に同軸ケーブル分配器100を取り付けた場合、螺子Bにより第1取り付け部材510および第2取り付け部材520が平面(取り付け面)に固定される。
この場合、第1取り付け部材510の一対の面512,513は、
図7に示した状態となり、第1軸部410を摺動可能に保持する。また、第2取り付け部材520の一対の面522,523も同様に、第2軸部420を摺動可能に保持する。
【0060】
次に、
図10に示すように、同軸ケーブル分配器100を第1軸部410および第2軸部420を軸450として回転させる。本実施の形態においては、当該軸450が同軸ケーブル分配器100の外周の外側へオフセット(
図10参照 D)されている。
その結果、回転時に同軸ケーブル分配器100の外周面が、壁などの平面に接触することがないため、容易に回転させることができる。
【0061】
すなわち、本実施の形態においては、螺子Bを締め付けた後であっても、同軸ケーブル分配器100を回転させることができる。また、同軸ケーブル分配器100の回転角度を自由自在に調整し、複数の姿勢の状態を設定することができる。
なお、同軸ケーブル分配器100を取り付け対象に仮固定した後のみ、同軸ケーブル分配器100の取り付け角度を任意の角度に調整することができるようにし、螺子Bを締め付けた後には、同軸ケーブル分配器100が1の姿勢の状態のみ設定できるようにしてもよい。
【0062】
最後に、
図11に示すように、同軸ケーブル分配器100をさらに回転させることができる。
図9から
図11までに示すように、本実施の形態においては、同軸ケーブル分配器100の取り付け角度を最大90度の範囲内で任意に調整することができる。
【0063】
同軸ケーブル分配器100の回転角度が規制されるように、第1取り付け部材510(第2取り付け部材520)と第1軸部410(第2軸部420)との間に、両者の相対角度を規制する構造または部材を設けてもよい。
例えば、第1取り付け部材510(第2取り付け部材520)の貫通孔511(521)の内面に突起または凹形状の嵌合部を設け、突起または凹形状に嵌合可能な被嵌合部を対向する第1軸部410(第2軸部420)の外周面に設けてもよい。嵌合部および被嵌合部は円周方向に複数設けることができる。この場合、同軸ケーブル分配器100を第1取り付け部材510(第2取り付け部材520)に対し所定角度で回転させて、取り付け面に対する分配器の設定角度とすることができる。
【0064】
また、第1軸部410(第2軸部420)の断面形状を真円形ではなく楕円形または矩形に形成し、第1取り付け部材510(第2取り付け部材520)の貫通孔511(521)の形状を真円形ではなく楕円形または矩形に形成してもよい。この場合、第1取り付け部材510(第2取り付け部材520)に対する第1軸部410(第2軸部420)の回転抵抗が回転角度によって変わるため、回転抵抗が大きくなる両者間の相対回転角度を、取り付け面に対する分配器の設定角度とすることができる。
なお、本実施の形態においては、螺子Bを締め付けた後に同軸ケーブル分配器100を摺動回転できることとしているが、これに限定されず、螺子Bを仮止めした場合に同軸ケーブル分配器100を摺動回転することができることとし、螺子Bを完全に締め付けた場合に、同軸ケーブル分配器100を摺動回転できず、完全に姿勢が固定されてもよい。
【0065】
(他の例)
続いて、
図12、13、14は、第1取り付け部材510および第2取り付け部材520と第1軸部410および第2軸部420との構造の他の例を示す模式的構造図である。また、
図12は、螺子Bを挿入する前の状態を示す。
図13および
図14は、
図12のA2―A2断面の一例を示す。
【0066】
まず、
図12に示すように、第1軸部410に第1取り付け部材510を挿入した場合、
図5と同様に、螺子Bを挿入するための孔525が形成される。この場合、第1軸部410の凹部440が、螺子Bと係り止め可能な形状を有するため、螺子Bを挿入した場合、第1取り付け部材510が第1軸部410と離間することを防止することができる。
同様に、第2軸部420に第2取り付け部材520を挿入した場合、螺子Bを挿入するための孔525が形成される。この場合、第2軸部420の凹部440が、螺子Bと係り止め可能な形状を有するため、螺子Bを挿入した場合、第2取り付け部材520が第2軸部420と離間することを防止することができる。
【0067】
また、
図13に示すように、凹部440は、一対の扇柱形状を形成する。第1軸部410の外径は、貫通孔511の内径よりもわずかに小さく設定されており、挿入可能に設けられる。その結果、一対の面512,513の距離L1となる(L1≠0)。
次いで、孔525に螺子Bを挿入する。
図14に示すように、螺子Bを壁に挿入することで、一対の面512,513の距離L2となる(L1>>L2≒0)。
本実施の形態においては、壁等の取り付け面が螺子Bと噛み合うことから一対の面512,513の距離が短くなる場合について説明しているが、これに限定されず、螺子Bが孔525と噛み合わせる構造等を採用してもよい。
【0068】
その結果、貫通孔511の径が縮小され、貫通孔511の内周面により第1軸部410が保持される。
この場合、ケースの第1軸部410は、第1取り付け部材510に仮固定(または固定)される。ケースの第2軸部420は、第2取り付け部材520に仮固定(または固定)される。その結果、ケースの取付け角度を維持することができる。
また、
図14に示すように、螺子Bは、破線で形成された状態まで回転させることができる。
【0069】
以上のように、本実施の形態において、同軸ケーブル分配器100の同軸ケーブル用の入力接栓座200、複数の出力接栓座300に同軸ケーブルを取り付けた後でも、端子または接栓座200,300の方向およびケースの姿勢を容易に変更することができる。
さらに、
図9、
図10、
図11に示すように、同軸ケーブル分配器100の姿勢を、多段階、自由自在な状態で設定することができる。
また、壁、板、金属、等の対象物の平面上に取り付けた場合であっても、略直方体形状からなる同軸ケーブル分配器100の角部分が当該平面上に接触し、回転困難な状態を避けることができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、螺子Bを、所定の程度、締めて同軸ケーブル分配器100を取り付け対象(壁、柱、取付金具等)に仮固定し、さらに取り付け対象に対する同軸ケーブル分配器100の角度を任意に調整したうえで、螺子Bを強く締める場合について説明した。このようにすることによって、同軸ケーブル分配器100が取り付け対象に確実に固定されるとともに、同軸ケーブル分配器100の第1取り付け部材510が第1軸部410に固定され、第2取り付け部材520が第2軸部420に固定されるため同軸ケーブル分配器100の姿勢も所定の角度で固定される。同軸ケーブル分配器100を仮固定させて、入力接栓座200に配線を接続しつつ、同軸ケーブル分配器100の姿勢の角度調節を実施してもよく、同軸ケーブル分配器100の姿勢の角度調節を固定した後に配線を接続してもよい。
【0071】
本発明においては、第1面120、側面130,140、天面150、裏面160、および底面170からなる略直方体形状が「ケース」に相当し、第1軸部410が「第1軸部」に相当し、第2軸部420が「第2軸部」に相当し、第1取り付け部材510が「第1取り付け部材」に相当し、孔525が「円柱部」に相当し、第2取り付け部材520が「第2取り付け部材」に相当し、軸450が「同一軸」に相当し、凹部430,440が「螺子用凹部」に相当し、同軸ケーブル分配器100が「電子機器」に相当し、貫通孔511,521が「軸孔」に相当し、一対の面512,513、一対の面522,523が「スリット」に相当し、オフセットDが「オフセット」に相当する。
【0072】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神の範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
さらに、本実施形態では電子機器の一例として同軸ケーブル分配器100を取り上げたが、分波器、または混合器等、任意の電子機器においても適用可能である。