特許第6827656号(P6827656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6827656-装飾シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827656
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】装飾シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/04 20060101AFI20210128BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20210128BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B32B17/04 Z
   E04B1/94 L
   E04B1/94 V
   E04F13/07 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-50954(P2015-50954)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-168778(P2016-168778A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月31日
【審判番号】不服2019-17408(P2019-17408/J1)
【審判請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】武田 良彦
(72)【発明者】
【氏名】深沢 祐二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宣彦
【合議体】
【審判長】 石井 孝明
【審判官】 間中 耕治
【審判官】 久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−117850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷模様が付与された装飾フィルム層と、
ガラスクロス層と、
前記装飾フィルム層と前記ガラスクロス層とを接着する接着剤層と、を備え、
前記ガラスクロス層のガラスヤーンの密度が50本/25mm以上であり、
前記ガラスヤーンの太さが200tex以下であり、
前記ガラスクロス層の表面が有する凹凸が、前記装飾フィルム層と前記ガラスクロス層とを接着する前の前記装飾フィルム層自体の表面粗さを基準とした場合の、前記装飾フィルム層と前記ガラスクロス層とを接着することにより前記装飾フィルム層の表面に生じる表面粗さの変化が5μm以下となるように緻密化されており、
前記装飾フィルム層が、0.05mm〜0.40mmの範囲にある厚さを有するとともに、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル、アクリル、セルロース、及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含み、
前記接着剤層が、0.01mm〜0.20mmの範囲にある厚さを有し、−60℃〜−20℃の範囲にあるガラス転移温度(Tg)を有する、装飾シート。
【請求項2】
前記ガラスクロス層の厚さが0.02mm〜0.4mmの範囲にある、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記装飾フィルム層が、厚さ0.1mm以下のポリ塩化ビニル製フィルムである、請求項1又は2に記載の装飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面、天井面、床面等に木目等の装飾を施すために、装飾シートが使用されている。これらの装飾シートは、建築材であるため、低燃焼性、難燃性、不燃性等(以下、あわせて不燃性という)を備えることが求められている。
【0003】
不燃性を付与した装飾シート材として、装飾フィルムに不燃性の高い材料等を貼り合わせた装飾材が提案されている。例えば特許文献1には、「表面層と芯材層とが積層された構造を有する不燃化粧板であって、前記表面層は、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートまたは壁紙からなる表面層材料で構成され、表面層材料の坪量は、40〜400g/mであり、前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成される不燃化粧板。」が記載されている。また、特許文献2には、「フィルム層と接着剤層とが積層され、直径20〜500μmで数密度が2〜700個/cm2の微小な穴を有する装飾フィルム層、及びガラスクロス層を含む装飾シート」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−183780号公報
【特許文献2】特開2013−44983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築材として使用されるこれらの装飾シートは、不燃性を備える場合においても、装飾材という観点から、良好な表面外観を有することが要求される。しかしながら、本発明者らの検討によれば、不燃性の高い材料等を貼り合わせた従来の装飾シートにおいて、貼り合わせる材料によっては、その不燃材の表面の凹凸が装飾フィルムの表面外観にうつりこみ、装飾フィルムの表面外観不良を発生させることがわかった。
【0006】
特に、施工性や低燃焼性の観点から、比較的薄いフィルムとガラスクロスを組み合わせて使用する場合において、表面外観の劣化が生じやすい。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高い不燃性と良好なフィルム表面の美的外観を備えた装飾シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様として、装飾フィルム層と、接着剤層と、ガラスクロス層とをこの順に備え、ガラスクロス層を構成するガラスヤーンの密度が23本/25mm以上であり、ガラスヤーンの太さが200tex以下である、装飾シートを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い不燃性と良好なフィルム表面の美的外観を備えた装飾シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】装飾シートの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の装飾シートは、装飾フィルム層と、接着剤層と、ガラスクロス層とを少なくとも備えた積層体であり、ガラスクロス層を構成するガラスヤーンの密度が23本/25mm以上であり、ガラスヤーンの太さが200tex以下であることを主な特徴とする。
【0012】
柔軟性があるガラスクロスを不燃性の下地材として使用するため、良好な施工性を維持しながら、装飾シートに不燃性を付与することができる。また、ガラスクロス層のガラスヤーンの密度と太さを調整することで、ガラスクロス層自体の持つ織布特有の凹凸パターンをより緻密化するとともに、凹凸高さを抑制し、装飾フィルム層が薄くなった場合にも、フィルム表面へのガラスクロス表面のパターンのうつりこみを抑制し、装飾フィルム層の良好な表面外観を維持することが可能になる。なお、ここで「パターンのうつりこみ」とは、ガラスクロス表面の凹凸パターンと略同じピッチのパターンが装飾フィルム表面にあらわれることである。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る装飾シートの実施形態について更に詳細に説明する。
【0014】
図1は、装飾シートの一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、装飾シート1は、ガラスクロス層2と、ガラスクロス層2上に積層された接着剤層3と、接着剤層3のガラスクロス層2と反対側に積層された装飾フィルム層4とを備えている。
【0015】
ガラスクロス層2には、公知のガラスクロスを使用することができる。ガラスクロスとは、ガラスヤーンを用いて織った織布である。このため、柔軟性があり、変形が容易であるため、装飾フィルムに貼り合わせた装飾シートとして用いる場合も、装飾シートとしての良好な施工性を維持することができる。クロスの織り方は、特に限定されないが、不燃性を更に向上させるため、開孔部の少ない緻密な織り目を形成することが容易な、平織、綾織、朱子織であることが好ましい。
【0016】
ガラスヤーンを構成するガラスとしては、特に限定はなく、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が使用できる。
【0017】
ガラスクロス層2のガラスヤーンの密度は、装飾シートの美的外観に優れる観点から、好ましくは23本/25mm以上、より好ましくは30本/25mm以上、更に好ましくは50本/25mm以上である。なお、ガラスヤーンの密度は、たて糸とよこ糸とで異なる場合があるが、ガラスクロス層2においては、たて糸及びよこ糸のいずれもが上記値を満たすものとする。
【0018】
ガラスクロス層2は、織布であるため、たて糸、よこ糸の織が重なる部分と重ならない部分とを有している。このため、ガラスクロス層2には必然的に凹凸があり、平滑な面を得ることが困難である。しかし、後述するガラスヤーンの太さの条件とあわせて、ガラスクロス層2の密度を23本/25mm以上として緻密化することで、厚みの薄い装飾フィルム層4を用いた場合であっても、ガラスクロス層2表面の凹凸パターンの装飾フィルム層4表面へのうつりこみを抑制し、良好な美的外観を持つ装飾フィルム層4表面を得ることができる。ガラスヤーンの密度を30本/25mm以上、あるいは50本/25mm以上として、さらにガラスクロス層2の緻密性を向上させれば、より効果的に装飾フィルム層4表面の美的外観を維持することができる。
【0019】
ガラスヤーンの密度は、例えば120本/25mm以下とすることが好ましい。ガラスヤーンの密度が大きすぎると、ガラスクロス層2の柔軟性の低下が生じ、施工性が悪化するおそれがある。なお、本発明におけるガラスクロス層の密度は、JIS R3420:2013に準拠して測定される密度(織り密度)を意味する。
【0020】
ガラスクロス層2を構成するガラスヤーンの太さは、装飾シートの美的外観に優れる観点から、好ましくは200tex以下、より好ましくは150tex以下、更に好ましくは100tex以下、特に好ましくは50tex以下である。ガラスヤーンの太さを200tex以下とすることで、ガラスクロス層2表面の織り目により生じる凹凸の高さを抑制することができるとともに、よりガラスヤーンの密度が高い、緻密なガラスクロス層2を形成することが可能になる。その結果、ガラスクロス層2表面の凹凸パターンが装飾フィルム層4表面にうつりこむのを抑制することができる。一方、ガラスクロス層2を構成するガラスヤーンの太さが細すぎると、剛性が不十分になるおそれがあるため、ガラスヤーンの太さは5tex以上であることが好ましい。
【0021】
ガラスクロス層2の厚さは、施工性及び取扱性に優れる観点から、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下、更に好ましくは0.1mm以下である。また、ガラスクロス層2の厚さは、十分な剛性を得るため、例えば0.02mm以上であることが好ましい。
【0022】
接着剤層3は、ガラスクロス層2と装飾フィルム層4とを接着する層である。接着剤層3には、これら二層を接着することができる従来公知の感圧接着剤や感熱接着剤を用いることができる。
【0023】
接着剤層3に使用される感圧接着剤としては、例えば、アクリル系感圧接着剤が挙げられる。アクリル系感圧接着剤を用いることにより、装飾シート1に優れた耐久性及び耐変色性を付与することができる。アクリル系感圧接着剤は変性が容易であることから用途に合わせて接着特性を調節することができる。アクリル系感圧接着剤は、粘着性アクリル系ホモポリマー及びコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の粘着性アクリル系ポリマーを含む。例えば、アクリル系感圧接着剤は、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、及びエタクリロニトリルからなる群より選択されるモノマーの粘着性ホモポリマー又は2種以上のこれらモノマーの粘着性コポリマーを含む。
【0024】
粘着性ホモポリマー及びコポリマーは、上記モノマー、又は上記モノマーの混合物を、通常のラジカル重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などを用いて重合することにより得ることができる。重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。
【0025】
一実施態様では、粘着性ホモポリマー又はコポリマーの重量平均分子量は約20万以上、又は約40万以上、約100万以下、又は約70万以下である。粘着性ホモポリマー又はコポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により標準ポリスチレンを用いて決定される。
【0026】
粘着性アクリル系ポリマーは、架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)などの二塩基酸のビスアジリジン誘導体などが使用できる。架橋剤としては、イソシアネート化合物、特にヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。架橋剤の添加量は、架橋剤の種類にもよるが、アクリル系感圧接着剤100質量部に対して、通常約0.1質量部以上、約10質量部以下である。
【0027】
アクリル系感圧接着剤のガラス転移温度(Tg)は、約−60℃以上、約−20℃以下であることが有利であり、約−50℃以上、約−30℃以下であることが好ましい。アクリル系感圧接着剤のガラス転移温度を上記範囲とすることにより、接着に必要な凝集力を確保しつつタックを得ることができる。
【0028】
接着剤層3は、粘着付与剤、弾性微小球、粘着性ポリマー微小球、結晶性ポリマー、無機粉末、紫外線吸収剤などの添加剤を含有してもよい。
【0029】
一実施態様では、接着剤層3は、発泡剤により形成された独立気泡又は連続気泡を有するフォームの形態であってよい。別の実施態様では、接着剤層3は、ガラス又はポリマーの中空微小球を含んでもよい。
【0030】
接着剤層3の厚さは、薄いほど不燃性に有利であるが、接着力を高めるためには厚いことが望ましい。不燃性と接着力のバランスをとる観点から、接着剤層3の厚さは、例えば、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、又は約100μm以下である。
【0031】
装飾フィルム層4に含まれるポリマーとして、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル、アクリル、セルロース、及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。フィルム層は単層であってもよく、複数の層の積層体であってもよい。
【0032】
装飾フィルム層4の表面には、印刷模様が付与される。印刷模様はフィルム層の上にトナー、インクなどの着色剤を用いて形成することができる。印刷模様は、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷技術を用いることにより形成することができる。印刷模様が付与される装飾フィルム層4の表面は、装飾フィルム層4の下面、すなわち接着剤層3が接着される面(このとき印刷模様は装飾フィルム層4と接着剤層3の間に配置される)であってもよく、装飾フィルム層4の上面(接着剤層3と反対側の面)であってもよい。
【0033】
装飾フィルム層4は、光輝層を有していてもよい。光輝層は、装飾フィルム層4の上に真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成されたアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどの金属、これらの合金又は化合物を含む金属薄膜であってよい。
【0034】
装飾フィルム層4は、上面(接着剤層3と反対側の面)に表面保護層を有していてもよい。表面保護層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの樹脂のフィルムをフィルム層の上に直接又は接合層を介して積層することによって、あるいは樹脂組成物をフィルム層表面に塗布して乾燥することによって形成することができる。表面保護層の表面には、目的とする用途に応じて光沢仕上げ又は艶消し仕上げを施すことができる。
【0035】
装飾フィルム層4は、エンボス加工により凹凸形状表面を有してもよい。凹凸形状表面のパターン又は模様は、規則的でも不規則であってもよく、特に限定されないが、例えば、万線状、木目、砂目、石目、布目、梨地、皮絞、マット、ヘアライン、スピン、文字、記号、幾何学図形などとすることができる。
【0036】
装飾フィルム層4は、可塑剤、充填材、ガラス繊維などの強化剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
【0037】
装飾フィルム層4の厚さは、不燃性を上げるためには薄いほうが望ましく、例えば、0.4mm以下、より好ましくは0.35mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。一方、装飾フィルム層4の厚さは、あまり薄いと取り扱いが困難になるおそれがあるため、例えば0.05mm以上であることが好ましい。
【0038】
接着剤層3及び装飾フィルム層4は、それぞれ不燃性添加剤を含有していてもよい。不燃性添加剤としては、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物、アンチモン化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物、および窒素化合物等が使用できる。臭素化合物としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE、DBDPO)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ヘキサブロモベンゼン等が使用できる。リン化合物としては、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステル等が使用できる。塩素化合物としては塩素化パラフィン等が使用できる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が使用できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が使用できる。窒素化合物等としては、メラミンシアヌレート等が使用できる。
【0039】
装飾シートは、接着剤層の装飾フィルム層と反対側の面に剥離ライナーを有していてもよい。代表的な剥離ライナーとしては、紙(例えばクラフト紙)又はポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど)から調製されるものが挙げられる。剥離ライナーは、必要に応じてシリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層でコーティングされていてもよい。剥離ライナーの厚さは、一般に、約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下である。
【0040】
装飾シートは、ガラスクロス層、接着剤層、及び装飾フィルム層に加えて、プライマー層等の機能を有する層を更に備えていてもよい。
【0041】
装飾シートは、一般家屋、集合住宅、ビル又はその他の建築物の壁面、天井面、床面又はパーティションなどに貼付することにより好適に使用される。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態の装飾シート1は、ガラスクロス層2を備えながら、ガラスクロス層2を構成するガラスヤーンの密度と太さを一定値にすることで、装飾フィルム層4の表面には、ガラスクロスの織り目に相当するパターンが形成されない。すなわち、装飾シート1の装飾フィルム層4表面は、ガラスクロス層2と貼り合わされる前の装飾フィルム層4自体の表面粗さをほぼ維持したものにできる。つまり、装飾フィルム層4自体の表面が平坦である場合は平坦に、装飾フィルム層4自体の表面にエンボス処理がなされている場合は、エンボスパターンのみがほぼ装飾フィルム層4表面に維持される。具体的には、例えば、ガラスクロス層2と貼り合わせたことで装飾フィルム層4表面に生じる表面粗さの変化を好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下とすることができる。
【0043】
また、ガラスクロス層を構成するガラスヤーンの密度と太さを一定値とすることで、緻密なガラスクロス層が形成されるため、貫通部の少ない、建築材としての不燃性要件を満たす装飾シートを提供できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
[装飾シートサンプルの作成]
ポリ塩化ビニル製フィルム(厚さ0.1mm)と、アクリル系粘着剤(厚さ0.03mm)とが積層されたフィルム(スリーエムジャパン社製ダイノックTMフィルム、厚さ約0.13mm)からライナーを剥がし、各種ガラスクロスシート(ユニチカ社製)に55℃で貼り付けて装飾シートを作製した。ガラスクロスシートを構成するガラスヤーンの密度(本/25mm)及び太さ(tex)、並びに、ガラスクロスシートの厚さ(mm)及び織り方をそれぞれ表1に示す。
【0046】
[表面粗さ(Ra)の測定]
キーエンス製ダブルスキャン高精度レーザ測定機(LT−900シリーズ)、キーエンス製高精度形状測定システム(KS−1100シリーズ)を用い、得られた装飾シートのポリ塩化ビニル製フィルム側の表面の表面粗さ(Ra)を測定した。各サンプルについて場所の異なる5点で測定し、上限、下限から算術平均をとった。結果を表1に示す。また、ガラスクロスシートを貼り付ける前のエンボス付きフィルム(スリーエムジャパン社製ダイノックTMフィルム)のポリ塩化ビニル製フィルム側の表面の表面粗さ(Ra)は、7.39μmであった。
【0047】
[外観観察試験]
各装飾シートをポリ塩化ビニル製フィルム側が表面に露出するように壁に貼り、壁から直線距離で50cm離れた位置で目視により観察した。装飾シートのポリ塩化ビニル製フィルム側の表面にガラスクロスシートの形状が見られない場合を「○」、見られる場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0048】
[発熱性試験]
財団法人日本建築総合試験所作成の防耐火性能試験・評価業務方法書(平成26年1月31日変更版)4.10.2に基づき試験を実施し、総発熱量及び発熱速度(200kW/m超過時間)を測定した。結果を表1に示す。なお、総発熱量が8MJ/m下、200kW/m超過時間が10秒未満であれば、発熱性試験の判定基準を満たす。
【0049】
【表1】
【符号の説明】
【0050】
1…装飾シート、2…ガラスクロス層、3…接着剤層、4…装飾フィルム層。
図1