特許第6827660号(P6827660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827660歯科材料を分注するための適用チップ及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827660
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】歯科材料を分注するための適用チップ及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/62 20170101AFI20210128BHJP
【FI】
   A61C5/62
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-1827(P2020-1827)
(22)【出願日】2020年1月9日
(62)【分割の表示】特願2018-34231(P2018-34231)の分割
【原出願日】2013年5月6日
(65)【公開番号】特開2020-96846(P2020-96846A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】12169474.9
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】マルク ポイカー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヨット.ベーム
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−512137(JP,A)
【文献】 実開平2−37608(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0045732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料を分注するための適用チップであって、第1の直径Do1、及びこの第1の直径Do1よりも大きい第2の直径Do2を有する外側錐体表面と、第1の直径Di1、及びこの第1の直径Di1よりも大きい第2の直径Di2を有する内側錐体表面と、を有する管状の分注端部を有し、前記内側錐体表面が前記適用チップを通る導管をなして分注開口部を形成し、
前記分注端部は、厚さTを有する周壁から形成されるとともに直径Di1の分注開口部を形成し、前記分注端部が、少なくとも13以上の直径/厚さ比Di1:Tを前記開口部において有し、前記周壁の厚さが前記開口部から離れる方向において増加し、 前記周壁は、さらに、
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、及びポリアミド(PA)の中から選択される第1の可塑性材料の第1の壁部分と、
熱可塑性エラストマー、シリコーン、又はゴム材料の中から選択される第2の可塑性材料の第2の壁部分とを有し、前記第1の可塑性材料は、前記第2の可塑性材料よりも弾性が低く、
前記第2の壁部分は前記開口部に隣接して配置され、前記第1の壁部分は、より前記開口部から離れて配置される、適用チップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科材料を分注するための適用チップ、具体的には、好ましくは断面が弾性的に変形可能なように構成される管状の分注端部を有する適用チップに関する。更に、本発明は、歯科材料を分注するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科材料は多くの場合、所望の位置に直接分注され得るパッケージの中に保管される。そのようなパッケージは典型的に、分注される材料、及び適用、例えば意図される歯科治療に関する必要条件によって寸法決めされる分注ノズルを有する。例えば、高粘度の材料を分注するための、又は高流量で材料を分注するためのノズルは、材料をノズルから分注するために必要とされる高すぎる力を回避するために、比較的幅の広い導管を有してよい。一方で、一部の歯科治療は、材料を所望の位置に、例えば歯科修復物上に、又は患者の口腔内に、正確に付着させるために、比較的薄いノズルを必要とする。
【0003】
パッケージを異なる適用に対して適合するために、異なる形状及び構成の交換可能な適用チップと組み合わせて使用され得るパッケージがある。例えば、薄いチップは材料を正確に付着させるために使用されてよいのに対し、より幅の広いチップはより高い流量で材料を分注するために使用されてよい。
【0004】
更に、FR 2 826 862は、ノズルが患者の歯肉溝に挿入されることを可能にするために、最前端部での直径が0.90mmより低く、好ましくは約0.68〜0.70mmであるノズルを有する、歯科材料のための注射器上の、適合性のある端部を開示する。ノズルは、例えば歯肉溝に挿入されると、材料がノズルを通して付勢される際に幅が広がるように構成される。
【0005】
歯科材料のための既存のパッケージは一定の利益を提供するが、製造が容易で比較的安価な、異なる適用に使用されることができる適用チップに対する需要はそれでもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、歯科材料を分注するための適用チップに関する。適用チップは、可塑性材料から作製される管状の分注端部を有する。更に、分注端部は、厚さTを有する周壁から形成されるとともに、直径Di1の分注開口部を形成する。分注端部は、少なくとも13以上の開口部での直径/厚さ比Di1:Tを有する。更に、周壁の厚さは開口部から離れる方向において増加する。
【0007】
本発明は、適用チップが好ましくは狭い空間に自己適合する点で有利である。具体的には、本発明は、開口部に隣接する適用チップが、好ましくは、例えば歯科充填材料を受容するために歯科医師によって作られる歯の窩洞に示される例のような角部にぴったり一致するように構成される点で、有利であってよい。更に、本発明は、好ましくは歯科材料の適用を促進し、特に、歯科材料のための異なる適用チップを使用するどのような必要性も最小限にしてよい。更に、本発明の適用チップ及びシステムは、好ましくは製造に対して比較的安価である。
【0008】
一実施形態では、分注端部は、13〜30の範囲内、具体的には13〜25の範囲内である開口部での直径/厚さ比Di1:Tを有する。
【0009】
一実施例では、直径Di1は1mm〜2.5mmの範囲内、具体的に、1.2mm〜2.5mmの範囲内、又は1.5mm〜2.5mmの範囲内である。更に、厚さTは好ましくは0.05mm〜0.19mmの範囲内である。分注端部は、外側錐体形状及び内側錐体形状を有してよい。内側錘体は、内側錐体の第1の直径Di1が開口部の直径Di1に対応する、第1のより小さい直径Di1と第2のより大きい直径Di2との間に画定される。更に、外側錐体は、外側錐体の第1の直径Do1が式Do1=Di1+2によって決定される、第1のより小さい直径Do1と第2のより大きい直径Do2との間に画定される。更に、外側錐体及び内側錐体は、それらのより小さい直径とより大きい直径との間に長さLを有する。長さLは、分注端部の長さに対応してよい。好ましい実施形態では、長さLは、約4mm〜約25mmの範囲内、好ましくは約8mm〜約15mmの範囲内である。
【0010】
長さLに基づき、相互に対する内側錐体の第1の直径と第2の直径との比Di1:Di2は、約0.4〜約1の範囲内、好ましくは約0.7である。更に、また長さLに基づき、相互に対する外側錐体の第1の直径と第2の直径との比Do1:Do2は、約0.3〜約0.9の範囲内、好ましくは約0.6である。加えて、長さLで(又は内側及び外側の第2の直径Di2、Do2で)、分注端部は、開口部で周壁の厚さTを超える第2の周壁の厚さTを有する。好ましくは、第2の周壁の厚さは、約0.075mm〜約0.5mmの範囲内、好ましくは約0.3mmである。
【0011】
一実施形態では、相互に対する内側錐体の第1の直径と第2の直径との比Di1:Di2は、1を超える、例えば約1.1である。上の教示にもかかわらず、当業者は、2つの直径のこの場合において、Di1はより大きい直径であり、直径Di2はより小さい直径であることを認識するであろう。
【0012】
更に、また長さLに基づき、相互に対する外側錐体の第1の直径と第2の直径との比Do1:Do2は、約0.3〜約0.9の範囲内、好ましくは約0.6である。加えて、長さLで(又は内側及び外側の第2の直径Di2、Do2で)、分注端部は、開口部で周壁の厚さTを超える第2の周壁の厚さTを有する。好ましくは、第2の周壁の厚さは、約0.075mm〜約0.5mmの範囲内、好ましくは約0.3mmである。
【0013】
一実施形態では、可塑性材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、及びポリアミド(PA)の中から選択される第1の可塑性材料である。更に、可塑性材料は、熱可塑性エラストマー、シリコーン、又はゴム材料の中から選択される第2の可塑性材料であってよい。
【0014】
一実施形態では、分注端部を形成する周壁は、第1及び第2の可塑性材料のうちの一方から作製される第1の壁部分、並びに第1及び第2の可塑性材料のうちのもう一方から作製される第2の壁部分とを備える。したがって、分注端部の1つの部分は第1の可塑性材料で作られてよく、分注端部の残りの部分は第2の可塑性材料で作られてよい。第1の壁部分及び前記第2の壁部分は、周方向おいて交互に配置される。例えば、分注端部の1つの円周断片は、第1の可塑性材料で作られてよく、かつ分注端部の長さ全体に沿って延在してよく、別の円周断片は第2の可塑性材料で作られてよい。故に、第1及び第2の可塑性材料は、分注端部の長さにそって縞模様に延在してよい。
【0015】
別の実施形態では、分注端部を形成する周壁は、第1の可塑性材料から形成される第1の壁部分と、第2の可塑性材料から形成される第2の壁部分とを備える。この実施形態では、第2の壁部分は、好ましくは開口部に隣接して配置され、第1の壁部分は、より開口部から離間して配置される。これは、座屈に対する比較的高い抵抗を、かつ更に、分注端部の最前端部の比較的低い力での弾性変形性を、分注端部に提供してよい。
【0016】
更なる実施形態では、適用チップは、分注端部を形成する周壁の第1の壁部分と第2の壁部分との間の遷移部に所定の破断連結を有する。故に、使用者は、第2の壁部分を除去し、残りの第1の壁部分のみをもって分注端部を使用してよい。この第1の壁部分は、第2の壁部分内に形成される開口部より大きい第2の開口部を形成してよい。したがって、例えば歯科治療において、歯科医師は、歯の窩洞の角部の中に歯科材料を正確に付着させるために本発明の分注端部を使用し、第2の壁部分を除去し、そして窩洞のバルク充填のために第1の壁部分のみをもって分注端部を使用してよい。それにより、第2の開口部のより大きい直径は、より高い流量での歯科材料の押し出しを促進してよい。
【0017】
一実施形態では、第1及び第2の壁部分は、ポジティブ嵌合又は摩擦嵌合によって連結される。故に、使用者、例えば歯科医師は、第1及び第2の壁部分を容易に相互から分離してよい。
【0018】
別の実施形態では、分注端部を形成する周壁は、開口部から離れる方向に開口部から延在する少なくとも1つのスリットを有する。したがって、周壁は、壁部分が重複する配置にあってよい。故に、変形は、重複の変動と組み合わせた弾性変形によって可能となる。
【0019】
更なる態様では、本発明は、歯科材料を分注するためのシステムに関する。システムは、本発明による適用チップを備える。更に、システムは、歯科材料を収容するためのチャンバと、チャンバ内に移動可能に配置された、歯科材料を押し出すためのピストンとを有するカートリッジを備える。
【0020】
一実施形態では、適用チップ及びカートリッジは一体的に形成される。例えば、適用チップ及びカートリッジは、単一の成形工程内で一体型の可塑性材料から全て成形されてよく、故に、一体となって形成されてよい。
【0021】
別の実施形態では、適用チップ及びカートリッジは、少なくとも2つの別個の部品として形成され、相互に接続するように構成される。カートリッジは歯科材料のための出口ノズルを備え、かつ適用チップ及び出口ノズルは相互に保持するように構成されてよい。この実施形態での適用チップは、カートリッジの出口ノズルを保持するための継手を有してよい。そのような継手は、例えば、スレッド、バヨネット錠、自己保持型錐体接続、及びLuer錠(商標)の中から選択されてよい。カートリッジの出口ノズルは、適用チップの継手と噛み合うための対応する継手を更に有してよい。
【0022】
更なる実施形態では、カートリッジは、カートリッジから歯科材料を分注するための分注ガンの中にカートリッジを保持するための保持具を有してよい。そのような保持具は、例えば、カートリッジの外側表面の周縁によって形成されてよい。
【0023】
一実施形態では、システムは、カートリッジを取り外し可能に受容するための分注ガンを更に備える。そのような分注ガンは、歯科材料を分注するためにカートリッジ内でピストンを前方に付勢するためのプランジャを備えてよい。本発明で使用されてよい分注ガンは、例えば、3M Deutschland GmbH製の3M(商標)ESPE(商標)Restorative Dispenser for Capsulesの名義の元で利用可能である。
【0024】
更なる実施形態では、システムは、複合物、ビスアクリル複合物、及びグラスアイオノマーの中から選択される歯科修復材料を含む。システムは、歯肉圧排材料又は予防材料を更に含む。
【0025】
更なる態様では、本発明は歯科材料を分注する方法に関し、方法は、
−可塑性材料から作製される管状の分注端部を有し、分注端部は、厚さTを有する周壁から形成されるとともに、直径Di1の分注開口部を形成し、分注端部は、少なくとも13以上、好ましくは13〜25の範囲内の開口部での直径/厚さ比Di1:Tを有し、かつ周壁の厚さが開口部から離れる方向において増加する、適用チップを提供する工程と、
−分注端部を表面によって形成される湾曲又は屈曲へと押しつけ、それにより分注端部を横方向に変形させる工程と、を含む。
【0026】
変形は、好ましくは一時的であり、好ましくは弾性変形である。変形は、好ましくは分注端部が横方向に平坦化するような変形である。好ましくは、変形は、分注端部が1つの方向に寸法的に減少し、一方で別の寸法に寸法的に増大するような変形である。例えば、分注端部は、略円形横断面から楕円横断面へと変形してよい。その際、用語横方向(lateral)は、適用チップの長手方向軸に垂直な次元を指す。
【0027】
本方法は、変形した適用チップを通して歯科材料を分注する工程を更に含んでよい。更に、本方法は、分注を維持し、分注端部を変形したままにしながら、表面に沿って適用チップを移動する工程を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態による適用チップの断面図である。
図2図1に示される適用チップの側面図である。
図3図1に示される適用チップの正面図である。
図4】本発明の更なる実施形態による適用チップの断面図である。
図5】本発明の実施形態による、歯科材料を分注するためのシステムの側面図である。
図6】本発明の別の実施形態による、歯科材料を分注するためのシステムの断面図である。
図7】本発明のまた更なる実施形態による、以下を含む適用チップの断面図である。
図7a】示される適用チップの詳細を例示する。
図7b】示される適用チップの詳細を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、歯科材料を分注するための適用チップ10の一部分を示す。具体的には、図は、長手方向軸Aに沿って延在する分注端部11を示す。示される実施例では長手方向軸Aは真っ直ぐであるが、当業者は、別の実施例では、長手方向軸は本発明から逸脱することなく湾曲してよいことを認識するであろう。分注端部11は、周壁12から形成され、かつ分注開口部13を形成する。分注端部11は、略円環形状断面を有する。実施例では、分注端部は、外側錐体表面及び内側錐体表面を有する。内側錐体表面は、適用チップ10を通る導管の少なくとも一部を形成し、かつ一方の端部で開口部13を形成する。分注開口部13で、周壁12は、弾性の最前端部を形成するために漸減する。具体的には、分注開口部13で、周壁12は厚みTを有し、かつ開口部は直径Di1を有する。開口部13の直径Di1、及び周壁の厚さTは、開口部13で、所定の直径/厚さ比Di1:Tを形成する。直径/厚さ比は、図2に例示されるように、長手方向軸に対して横方向の次元における1次元力に応えて、分注端部の変形を許すために決定される。実施例では、分注端部11は、13〜25の範囲内の直径/厚さ比(Di1:T)を有する。更に、周壁の厚さは開口部13から離れる方向において増加する。例えば、開口部13からの距離Lで、周壁の厚さTは、開口部での周壁の厚さTを超える。これは、好ましくは、分注端部11を長手方向軸Aの方向における押す力に晒す際に、分注端部11に十分な座屈抵抗を提供する。
【0030】
図2は、適用チップ、2つの垂直に配置された表面101、102によって形成される角部へと付勢される状況における分注端部11の機能及び特性を説明する目的で例示される。力Uは、分注端部11が角部へと押される力を表す。弾性特性により、分注端部11は概して角部にぴったり一致する。具体的には、分注端部11は、横方向の力Fに応えて、1次元において長手方向軸Aに対して横方向に平坦化する。横方向の力Fは、表面101、102との相互作用において押す力Uから生じる。平坦化により、分注端部11は、平坦化なしで可能にされる場合よりも深く角部へと入ることを可能にされる。
【0031】
図3は、図2に示される状況においてだが、長手方向軸Aの方向(図2を参照のこと)の視点から、分注チップ11の最前端部を模式的に例示する。示される状況における分注端部11は、非円形、具体的には略楕円、環形状断面を有する。これは、測定値d1及びd2によって示される。測定値d1及びd2は、開口部の平面、及び2つの垂直に配置された次元において画定される。測定値d2は、測定値d1より小さい。更に、測定値d2は開口部の元の直径より小さく、測定値d1は開口部の元の直径を超える。したがって、図1に例示される円形断面に対して、非円形断面は、更に、その開口領域において減少される開口部13’ということになる。そのため、分注端部11は、増大するチップ11の変形(平坦化)につれて増大するように、歯科材料に流動抵抗を引き起こす。故に、例えば修復される歯に存在する可能性があるような角部への歯科材料の流量の制御が促進され得ることが分かっている。更に、分注端部11の平坦化及び一致特性により、歯科材料は、角部に正確に置くことが可能であってよい。
【0032】
一実施例では、開口部の直径は約1mmであり、開口部での周壁の厚さは約0.05mmであるのに対して、別の実施例では、開口部は約2.5mmであり、開口部での周壁の厚さは約0.1mm〜0.19mmの範囲である。開口部で13〜25の範囲内の直径/厚さ比を有する分注端部は、分注端部がその中で手動で押される角部に分注端部がぴったり一致することを許す、分注端部の弾性を提供することが分かっている。
【0033】
図4は、第1の壁部分21a及び第2の壁部分21bを備える分注端部21を有する適用チップ20を示す。第1の壁部分21aは第1の可塑性材料から作製され、かつ第2の壁部分21bは異なる第2の可塑性材料から作製される。第1の可塑性材料は、好ましくは第2の可塑性材料よりも弾性が低い。更に、第1の可塑性材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、及びポリアミド(PA)の中から選択されてよい。第2の可塑性材料は、熱可塑性エラストマー、シリコーン、又はゴム材料の中から選択されてよい。示されるように、第2の壁部分21bは、開口部23を形成し、かつ好ましくは第2の可塑性材料から形成されるのに対し、開口部23から更に離れた第1の壁部分21aは、第1の可塑性材料から形成される。
【0034】
実施例では、適用チップ20は、第1の壁部分21aと第2の壁部分21bとの間の遷移部分に所定の破断連結24を有する。具体的には、第1の壁部分及び第2の壁部分は、ポジティブ嵌合又は摩擦嵌合によって連結される。故に、第2の壁部分21bは、第1の壁部分から取り外し可能であってよい。故に、適用チップの開口部は、例えば使用者によって手動で、増大されてよい。
【0035】
図5は歯科材料を分注するためのシステム39を示す。システム39は、カートリッジ35の分注ノズルと取り外し可能に繋がるように構成される、適用チップ30を有する。適用チップ30は、図1〜4に示される実施例に記載されるように概して構成されてよい。更に、実施例における適用チップ30は、カートリッジ35を保持するための保持機構36を有する。当業者は、例えばスレッド又はLuer錠(商標)接続のような、更なる保持機構を認識するであろう。
【0036】
図6は歯科材料を分注するためのシステム49を示す。システム49はカートリッジ45及び適用チップ40を有する。実施例では、カートリッジ45及び適用チップ40は、一体的に作製される。カートリッジ45及びチップ40は、例えば、同じ材料から一体となって形成されるか、又は2つの異なる材料から二段階射出成形によって形成されてもよい。カートリッジ45は、歯科材料を収容するためのチャンバ45aを形成する。更に、歯科材料を押し出すためのピストン48は、チャンバ45a内に、移動可能に、かつ密閉するように配置される。実施例におけるカートリッジ45は、歯科材料を分注するための分注ガン(図示なし)の中に保持されることができる継手47を有する。
【0037】
図7は、分注端部51を有する適用チップ50を示す。分注端部51は、第1の壁部分51a及び第2の壁部分51bを備える。第1の壁部分51a及び第2の壁部分51bは、周方向おいて交互に配置される。第1の壁部分51aは第1の可塑性材料から作製され、かつ第2の壁部分51bは異なる第2の可塑性材料から作製される。第1の可塑性材料は、好ましくは第2の可塑性材料よりも弾性が低い。更に、第1の可塑性材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、及びポリアミド(PA)の中から選択されてよい。第2の可塑性材料は、熱可塑性エラストマー、シリコーン、又はゴム材料の中から選択されてよい。
【0038】
図7aは、初期段階の分注端部51についての正面図である。図7bに示される段階では、第2の壁部分51bは、例えば分注端部51の外側での半径方向の力に応えて、圧縮される。故に、分注端部は、狭い窩洞、例えば歯の中の窩洞に入り込むように構成されてよい。 以下、本発明の好ましい態様について説明する。
〔態様1〕
歯科材料を分注するための適用チップであって、可塑性材料から作製される管状の分注端部を有し、前記分注端部が、厚さTを有する周壁から形成されるとともに直径Di1の分注開口部を形成し、前記分注端部が、少なくとも13以上の直径/厚さ比Di1:Tを前記開口部において有し、前記周壁の厚さが前記開口部から離れる方向において増加する、適用チップ。
〔態様2〕
前記直径Di1が1mm〜2.5mmの範囲内であり、前記厚さTが0.05mm〜0.19mmの範囲内である、態様1に記載の適用チップ。
〔態様3〕
前記可塑性材料が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、及びポリアミド(PA)の中から選択される第1の可塑性材料である、態様1又は2に記載の適用チップ。
〔態様4〕
前記可塑性材料が、熱可塑性エラストマー、シリコーン、又はゴム材料の中から選択される第2の可塑性材料である、態様1又は2に記載の適用チップ。
〔態様5〕
前記周壁が、前記第1及び第2の可塑性材料のうちの一方から作製される第1の壁部分と、前記第1及び第2の可塑性材料のうちのもう一方から作製される第2の壁部分とを備え、前記第1の壁部分及び前記第2の壁部分が周方向において交互に配置される、態様3及び4に記載の適用チップ。
〔態様6〕
前記周壁が、前記第1の可塑性材料から形成される第1の壁部分と、前記第2の可塑性材料から形成される第2の壁部分とを備え、前記第2の壁部分は前記開口部に隣接して配置され、前記第1の壁部分は、より前記開口部から離間して配置される、態様3及び4に記載の適用チップ。
〔態様7〕
前記第1の壁部分と第2の壁部分との間の遷移部に所定の破断連結部を有する、態様6に記載の適用チップ。
〔態様8〕
前記第1及び第2の壁部分が、ポジティブ嵌合又は摩擦嵌合によって連結される、態様6に記載の適用チップ。
〔態様9〕
前記周壁が、前記開口部から離れる方向に前記開口部から延在する少なくとも1つのスリットを有する、態様1〜8のいずれか一項に記載の適用チップ。
〔態様10〕
歯科材料を分注するためのシステムであって、態様1〜9のいずれか一項に記載の適用チップを備え、前記歯科材料を収容するためのチャンバと、前記チャンバ内に移動可能に配置された、前記歯科材料を押し出すためのピストンとを有するカートリッジを更に備える、システム。
〔態様11〕
前記適用チップ及び前記カートリッジが一体的に形成される、態様10に記載のシステム。
〔態様12〕
前記適用チップ及び前記カートリッジが、少なくとも2つの別個の部品において形成され、相互に接続するように構成される、態様10に記載のシステム。
〔態様13〕
前記カートリッジが前記歯科材料のための出口ノズルを備え、前記適用チップ及び前記出口ノズルが相互に保持するように構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様14〕
前記カートリッジを取り外し可能に受容するとともに、前記歯科材料を分注するためにピストンを前方に付勢するためのプランジャを備える分注ガンを更に備える、態様10〜13のいずれか一項に記載のシステム。
〔態様15〕
複合物、ビスアクリル複合物、及びグラスアイオノマーの中から選択される歯科修復材料を含む、態様10〜14のいずれか一項に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7a
図7b