(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829068
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】鉄道車両用電力変換装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20210128BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20210128BHJP
H02M 1/14 20060101ALI20210128BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20210128BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
B60L3/00 C
B60L9/18 A
H02M1/14
H02M7/48 A
H02M3/155 B
H02M3/155 C
H02M7/48 L
H02M7/48 M
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-249875(P2016-249875)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-107862(P2018-107862A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200115
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 元勇
(74)【代理人】
【識別番号】100138601
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 正成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒俊
(72)【発明者】
【氏名】河村 恒毅
【審査官】
笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−233121(JP,A)
【文献】
特開2014−036534(JP,A)
【文献】
特開2016−127749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 9/18
H02M 1/14
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流架線に集電器を介して接続可能であり、前記集電器を介して供給された直流電力の 昇圧を行う昇圧チョッパと、昇圧チョッパの後段に設けられたフィルタコンデンサと、前 記昇圧チョッパで昇圧された直流電力を交流電力変換する共振インバータと、前記共振インバータが一次巻線に接続されたトランスと、前記トランスの二次巻線の接続された整流 器とを有する鉄道車両用電力変換装置であって、
前記集電器と前記昇圧チョッパとの間に、前記昇圧チョッパと前記共振インバータが停止したときに発生するサージ電圧を抑制するリアクトルとコンデンサとを有するフィルタ回路を備え、
前記フィルタ回路の共振周波数は、前記昇圧チョッパを制御するキャリア周波数よりも低い鉄道車両用電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇圧チョッパ回路を有する絶縁型DC/DCコンバータを備えた鉄道車両用電力
変換装置が知られている。
例えば、鉄道車両用電力変換装置において、直流架線(直流き電線)から集電器(例え
ば、パンタグラフ)を介して供給された直流電力の電圧を昇圧チョッパにより安定化され
た一定電圧に昇圧し、インバータにより高周波交流電力(例えば、5kHz以上)に変換
し、高周波変圧器を介して架線と負荷との間の絶縁を確保しつつ、再び直流に変換して負
荷に直流電力を供給するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−233121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成の鉄道車両用電力変換装置においては、昇圧チョッパやインバータ
が停止すると、過電圧が発生し、昇圧チョッパとインバータ間に設けられるフィルタコン
デンサに印加されることがある。
このとき、昇圧チョッパとインバータが同時にオフすると、コンデンサには更に大きな
電圧が印加される。
【0005】
上記課題を達成するために本発明の実施形態は、昇圧チョッパ回路とインバータとを有
する鉄道車両用電力変換装置において、昇圧チョッパ回路とインバータとの間に設けられ
たコンデンサに過電圧が印加されることを抑制することが可能な鉄道車両用電力変換装置
を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の鉄道車両用電力変換装置は、直流架線に集電器を介して接続可能であり、集電器を介して供給された直流電力の昇圧を行う昇圧チョッパと、昇圧チョッパの後段に設けられたフィルタコンデンサと、昇圧チョッパで昇圧された直流電力を交流電力変換する共振インバータと、共振インバータが一次巻線に接続されたトランスと、トランスの二次巻線の接続された整流器とを有する。そして、集電器と昇圧チョッパとの間に、昇圧チョッパと共振インバータが停止したときに発生するサージ電圧を抑制するリアクトルとコンデンサとを有するフィルタ回路を備え
、前記フィルタ回路の共振周波数は、前記昇圧チョッパを制御するキャリア周波数よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の鉄道車両用の電力変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の鉄道車両用の電力変換装置の構成図である。
電力変換装置2は、直流架線(直流き電線)から直流電力が供給されるパンタグラフ1
からの直流電圧を昇圧する昇圧チョッパ3と、昇圧チョッパ3の後段に設けられたフィル
タコンデンサ4と、直流電力を交流電力に変換する共振インバータ5と、高周波絶縁トラ
ンス6と、交流電力を直流電力に変換(全波整流)する整流器7と、整流器7の後段に設
けられたコンデンサ8と、直流電力を交流電力に変換するインバータ9と、フィルタ回路
13とを備え、鉄道車両に搭載された負荷10に電力を供給する。
【0009】
昇圧チョッパ3は、チョッパリアクトルと、スイッチング素子と、逆流防止ダイオード
と、を備えている。スイッチング素子をチョッパ動作させることで、パンタグラフ1から
から供給される直流電力を昇圧する。
【0010】
共振インバータ5は、複数のスイッチング素子を備えており、昇圧チョッパで昇圧され
た直流電力を交流電力に変換する。共振インバータ5は、共振インバータ5自身の出力電
圧を調整することはできないため、昇圧チョッパ3を用いて、昇圧チョッパ3と協働する
ことで、共振インバータ5の出力電圧を調整する。
【0011】
高周波絶縁トランス6は、共振インバータ5から出力される交流電力を、一次巻線及び
二次巻線の巻数比に対応した昇圧比で変換して後段の整流器7へ出力する。ここで、高周
波絶縁トランス18の一次側及び二次側との間は絶縁されているので、電力変換装置2は
入力側と出力側とで絶縁が取られることになる。
【0012】
整流器7は、例えばダイオード整流器であり、高周波絶縁トランス6が出力した交流電
力を全波整流して直流電力に変換する。
【0013】
インバータ9は、複数のスイッチング素子を備え、整流器7が出力した直流電力を三相
交流電力に変換して、負荷10に供給する。
【0014】
次に、電力変換装置2の停止時の動作について説明する。
昇圧チョッパ3や共振インバータ5を停止させると、その停止に伴ってサージ電圧が発
生する。発生するサージ電圧は、定常時の電圧を超える電圧値となる。
また、電力変換装置2では、共振インバータ5は自身の出力電圧を調整することができ
ないため、昇圧チョッパを用いて昇圧チョッパと協働して、共振インバータ5の出力電圧
を調整している。
【0015】
そのため、昇圧チョッパ3と共振インバータ5が停止すると、昇圧チョッパ3と共振イ
ンバータとの間に設けられたフィルタコンデンサ4には、大きなサージ電圧が印加される
ことになる。
そこで、本実施形態では、パンタグラフ1と昇圧チョッパ3との間にリアクトル11と
コンデンサ12から構成されるフィルタ回路13を設けて、フィルタコンデンサ4にかか
るサージ電圧を吸収することでフィルタコンデンサ4に過大なサージ電圧が印加されるこ
とを抑制する。
【0016】
このとき、リアクトル11とコンデンサ12から構成されるフィルタ回路13の共振周
波数は、昇圧チョッパ3のキャリア周波数よりも低い周波数とすることで、効率的にサー
ジ電圧を抑制することが可能となる。
また、フィルタ回路13のコンデンサ12は、フィルタコンデンサ4の容量の2倍以上
に設定することで、サージ電圧の跳ね上がりを吸収することができ、フィルタコンデンサ
4に印加される電圧を抑制することができる。
【0017】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、昇圧チョッパ回路と共振インバータと
を有する鉄道車両用電力変換装置において、フィルタ回路を設けることによって、昇圧チ
ョッパ回路と共振インバータとの間に設けられたコンデンサに過電圧が印加されることを
抑制することできる。
【0018】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示
したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は
、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、
種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
2 電力変換装置
3 昇圧チョッパ
4 フィルタコンデンサ
5 共振インバータ
6 高周波絶縁トランス
7 整流器
8 コンデンサ
9 インバータ
11 リアクトル
12 コンデンサ
13 フィルタ回路