特許第6833495号(P6833495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833495
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20210215BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20210215BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20210215BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61B1/00 680
   A61B1/04 530
   A61B1/045 611
   G02B23/24 B
   A61B1/00 711
   A61B1/00 712
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-243592(P2016-243592)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-94235(P2018-94235A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】田邊 貴博
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 光治
(72)【発明者】
【氏名】大竹 亘
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/136700(WO,A1)
【文献】 特開平07−284472(JP,A)
【文献】 特開平08−211306(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/170701(WO,A1)
【文献】 特開2003−242503(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 −23/26
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号をシリアル信号として出力する撮像素子と、
前記映像信号を内視鏡の外部の信号処理装置まで伝送する伝送線路と、
前記伝送線路を介して伝送される映像信号の減衰の影響を補正するフィルタであって、入力された前記映像信号の周波数帯域において低周波ほど減衰量が大きくなる第1のフィルタと、
前記第1のフィルタよりも前記撮像素子の側に設けられ、前記第1のフィルタの低域遮断周波数よりも低い低域遮断周波数を有し、前記伝送線路を介して伝送される前記映像信号に混入される外乱ノイズの影響を抑制する第2のフィルタと、
を具備する内視鏡。
【請求項2】
前記伝送線路を含み、前記内視鏡と前記信号処理装置とを電気的に接続するコネクタをさらに具備し、
前記コネクタは、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとのうちの少なくとも1つを有している請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記伝送線路を含み、前記内視鏡の挿入部を操作するための操作部をさらに具備し、
前記操作部は、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとのうちの少なくとも1つを有している請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記第1のフィルタから出力される前記映像信号を増幅したうえで一定の振幅で出力する信号制限回路つき増幅器をさらに具備する請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記第1のフィルタ又は前記第2のフィルタは、減衰器を含むパッシブイコライザ回路を構成している請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとは入出力インピーダンスが所定値に整合されている請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の内視鏡においては、スコープ径の細径化の要望がある。一方でスコープ径を細径化すると、内視鏡からの映像信号を伝送するための伝送線路も細径化される。近年の内視鏡においては、このような細径化された伝送線路であっても高速な信号伝送を行うためにLVDS等の差動シリアル伝送方式が用いられることがある。ここで、伝送線路を信号が伝搬するときには伝送線路自体がローパスフィルタ(LPF)として機能し、結果として伝送線路を伝搬する信号の高周波成分が減衰することが知られている。このような信号における高周波成分の減衰は、信号の周波数が高いほど、また、伝送線路が長くなるほどに大きくなる。つまり、内視鏡では一般的な機器と比べて伝送線路が長くなる傾向があるため、このような信号の高周波成分の減衰は大きくなる傾向にある。このような伝送線路を伝搬する信号の高周波成分の減衰による信号品質の劣化を抑制するための技術として、例えば特許文献2のようなイコライザを用いる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−033347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般的な機器と比べて内視鏡の伝送線路は長くなりやすく、後述するように伝送線路が処置具と併走するために、伝送線路を伝搬する映像信号に処置具からの外乱ノイズが混入しやすい。このような外乱ノイズは、特許文献1のようなイコライザで抑制することが困難である。
【0005】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、撮像素子からの映像信号の品質を落とさずに伝送することができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の内視鏡は、映像信号をシリアル信号として出力する撮像素子と、前記映像信号を内視鏡の外部の信号処理装置まで伝送する伝送線路と、前記伝送線路を介して伝送される映像信号の減衰の影響を補正するフィルタであって、入力された前記映像信号の周波数帯域において低周波ほど減衰量が大きくなる第1のフィルタと、前記第1のフィルタよりも前記撮像素子の側に設けられ、前記第1のフィルタの低域遮断周波数よりも低い低域遮断周波数を有し、前記伝送線路を介して伝送される前記映像信号に混入される外乱ノイズの影響を抑制する第2のフィルタとを具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像素子からの映像信号の品質を落とさずに伝送することができる内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を含む内視鏡システムの概略の構成を示す図である。
図2図2は、撮像素子及び伝送線路の詳細について説明するための図である。
図3図3は、第1のフィルタ及び第2のフィルタの周波数特性を示す図である。
図4A図4Aは、伝送線路と第1のフィルタとの合成の周波数特性を示す図である。
図4B図4Bは、伝送線路と、第2のフィルタと、第1のフィルタとの合成の周波数特性を示す図である。
図5A図5Aは、HPFに減衰器を追加したフィルタ回路の一例の構成を示す図である。
図5B図5Bは、BPFに減衰器を追加したフィルタ回路の一例の構成を示す図である。
図6図6は、第2のフィルタ、第1のフィルタ、リミッティングアンプをコネクタに配置した例を示す図である。
図7図7は、第2のフィルタを操作部に配置し、第1のフィルタ、リミッティングアンプをコネクタに配置した例を示す図である。
図8図8は、第2のフィルタ及び第1のフィルタを操作部に配置し、リミッティングアンプをコネクタに配置した例を示す図である。
図9図9は、第2のフィルタ、第1のフィルタ、リミッティングアンプを操作部に配置した例を示す図である。
図10A図10Aは、第1のフィルタの減衰器をFPGAの出力端に配置した例を示す図である。
図10B図10Bは、第1のフィルタをFPGAの出力端に配置した例を示す図である。
図11図11は、その他の変形例のFPGAの構成を示す図である。
図12A図12Aは、映像信号のFIFOメモリへの書き込みの仕方を示す図である。
図12B図12Bは、映像信号のFIFOメモリからの読み出しの仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を含む内視鏡システムの概略の構成を示す図である。図1に示す内視鏡システム1は、スコープ10と、コントローラ20と、モニタ30とを有している。スコープ10は、被検体の体内の映像信号をコントローラ20の画像プロセッサ22に伝送する。画像プロセッサ22は、スコープ10から伝送された映像信号を処理する。モニタ30は、コントローラ20で処理された映像信号に基づいて映像を表示する。
【0010】
本実施形態における内視鏡として機能するスコープ10は、挿入部11と、操作部14と、ケーブル15と、コネクタ16と、コネクタ17とを有している。
【0011】
挿入部11は、被検体の体内に挿入される部分である。挿入部11の先端の内部には、撮像素子12が設けられている。撮像素子12は、CMOSセンサ又はCCDセンサであり、被検体の体内を撮像して被検体に係る映像信号を生成する。撮像素子12については後で詳しく説明する。また、挿入部11は、先端から照明光を射出可能に構成されている。
【0012】
また、挿入部11は、医師等の操作者による操作部14の操作ノブの操作を受けて湾曲するように構成された部分と、操作部14の操作によらずに外力によって受動的に湾曲するような部分とを有するように構成されている。
【0013】
操作部14は、挿入部11とケーブル15とを接続している。操作部14は、挿入部11を右左方向に湾曲させる操作を行うためのRLノブと、挿入部11を上下方向に湾曲させる操作を行うためのUDノブとを操作ノブとして有している。また、操作部14は、各種のスイッチを有している。
【0014】
挿入部11、操作部14及びケーブル15の内部には、ライトガイドが形成されている。このライトガイドは、ケーブル15の基端に設けられたコネクタ16を介してコントローラ20の光源装置21に接続されている。また、挿入部11、操作部14及びケーブル15の内部には、映像信号を伝送するための伝送線路としての映像信号線等の各種の信号線が形成されている。この信号線は、コネクタ16に接続されるコネクタ17を介してコントローラ20の画像プロセッサ22に接続されている。さらに、操作部14から挿入部11を通るように、チャンネルが設けられている。チャンネルは、超音波メス等の超音波凝固切開装置や電気メス等の高周波電流発生装置といった各種の処置具を挿入部11の先端まで通すために設けられている。このようなチャネルが設けられていることにより、内視鏡を用いた観察と処置具による処置とが一体的に行われ得る。
【0015】
光源装置21は、白色LED等の光源を有しており、照明光を射出する。光源装置21から射出された照明光は、ライトガイドを介して挿入部11の先端まで伝達され、挿入部11の先端から射出される。これにより、被検体内は照明される。
【0016】
撮像素子12の外部の信号処理装置としての画像プロセッサ22は、挿入部11の撮像素子12で得られた映像信号を処理する。この処理は、階調補正処理等の映像信号をモニタ30で表示可能な形式に変換する処理を含む。
【0017】
図1では、コントローラ20に画像プロセッサ22と光源装置21がそれぞれ独立して存在するものとして説明したが、1つの筐体として構成されていてもよい。
【0018】
モニタ30は、例えば液晶モニタである。モニタ30は、画像プロセッサ22で処理された映像信号に基づく映像や各種の情報を表示する。
【0019】
図2は、撮像素子及び伝送線路の詳細について説明するための図である。ここで、本実施形態における伝送線路100は、撮像素子12から画像プロセッサ22までの映像信号を伝送するための信号線を含む。この信号線は、挿入部11の内部の撮像素子12から引き出され、操作部14、ケーブル15、コネクタ16、コネクタ17を通って画像プロセッサ22に接続される。
【0020】
本実施形態における撮像素子12は、画素と、駆動部と、信号処理部と、信号トランスミッタとを有している。画素は、2次元状に配置されたフォトダイオード等の光電変換素子によって構成され、被検体からの光を電気信号(映像信号)に変換する。駆動部は、各画素を駆動する。ここで、駆動部は、同期信号(垂直同期信号及び水平同期信号)に同期して各画素の撮像(露光)動作及び信号読み出し動作を制御する。信号処理部は、同期信号に同期して画素から出力される映像信号に対し、ゲイン調整等のアナログ処理を行う。また、信号処理部は、アナログ処理した映像信号をデジタル信号に変換する処理も行う。信号トランスミッタは、信号処理部で得られたデジタルの映像信号と同期信号とに基づいて差動形式のシリアル信号(例えばLVDS信号)を生成し、このシリアル信号を伝送線路100に出力する。ここで、LVDS信号は、例えば所定量(1ライン)分の映像信号の先頭にヘッダが付加されたシリアル信号として構成されている。
【0021】
本実施形態における伝送線路100は、第2のフィルタ(FIL−2)101と、第1のフィルタ(FIL−1)102と、リミッティングアンプ(LA)103とを有している。図2の例において、第2のフィルタ101と、第1のフィルタ102と、リミッティングアンプ103とは撮像素子12から近い側から見てこの順で接続されている。また、第1のフィルタ102はイコライザとして機能する。
【0022】
第2のフィルタ101は、入力された信号のうちの外乱ノイズの周波数帯域に含まれる成分を減衰させるように構成されたフィルタである。第1のフィルタ102は、第2のフィルタ101から入力された信号のうちの映像信号に相当する周波数帯域において低周波ほど減衰量を大きくすることで、ケーブル等の伝送線路による減衰を相殺するように構成されたフィルタである。リミッティングアンプ103は、第1のフィルタ102から入力された信号を増幅した上で、出力振幅を一定範囲に制限する。
【0023】
以下、第1のフィルタ102及び第2のフィルタ101についてさらに説明する。図3(a)は、第1のフィルタ102の周波数特性を示す。第1のフィルタ102は、図3(a)に示すように、映像信号の周波数帯域の高周波側の周波数を遮断周波数として有するフィルタである。第1のフィルタ102は、例えばハイパスフィルタ(HPF)によって構成することができる。HPFの構成としては、例えばLCフィルタのようなパッシブ素子を用いた構成が採用され得る。ここで、HPFにおいて信号の減衰が生じる周波数帯域である減衰域における利得をa[dB]とすると、映像信号の周波数帯域よりも低い周波数を有する信号は、第1のフィルタ102を通過するときにa[dB]だけ減衰することになる。利得aは、HPFを構成する素子のパラメータによって設定されるものである。また、利得aは、後で説明する伝送線路100を伝送する信号の減衰量に応じて設定されることが望ましい。さらに、第1のフィルタ102を通過する信号の反射を防止するために第1のフィルタ102の入出力インピーダンスは所定の値に整合されていることがより望ましい。
【0024】
ここで、第1のフィルタ102は、図3(a)の破線で示すように、映像信号の周波数帯域よりも低い周波数だけでなく、映像信号の周波数帯域よりも高い周波数においても利得aの減衰域を有するバンドパスフィルタ(BPF)として構成されていてもよい。BPFであれば、入力された映像信号に含まれる高周波ノイズも除去される。
【0025】
図3(b)は第2のフィルタ101の周波数特性を示している。第2のフィルタ101は、図3(b)に示すように、外乱ノイズの周波数帯域よりも高い所定の周波数を遮断周波数として有するフィルタである。第2のフィルタ101も、例えばハイパスフィルタ(HPF)によって構成することができる。HPFの構成としては、例えばLCフィルタのようなパッシブ素子を用いた構成が採用され得る。なお、第1のフィルタ102と同様に、第2のフィルタ101の入出力インピーダンスは所定の値に整合されていることが望ましい。
【0026】
内視鏡における外乱ノイズとしては、主に、超音波メス等の超音波凝固切開装置や電気メス等の高周波電流発生装置といった処置具(高周波処置具)を駆動する際の高周波信号の漏れが映像信号に混入することによるノイズが想定される。通常、このような高周波処置具の動作周波数は10MHz以下である。一方、映像信号(LVDS信号)の周波数は100MHz以上になる。このように、映像信号の伝送周波数帯域は、処置具の動作周波数帯域に比べて十分に高い。したがって、LCフィルタ等のフィルタを用いて映像信号から高精度に外乱ノイズを除去することができる。ここで、HPFの減衰域における利得をb[dB]とすると、外乱ノイズは、第2のフィルタ101を通過するときにb[dB]だけ減衰する。利得bは、HPFを構成する素子のパラメータによって設定されるものである。
【0027】
ここで、第2のフィルタ101は、図3(b)の破線で示すように、外乱ノイズの周波数だけでなく、映像信号の周波数帯域よりも高い周波数においても利得bの減衰域を有するバンドパスフィルタ(BPF)として構成されていてもよい。BPFであれば、入力された映像信号に含まれる高周波ノイズも除去される。
【0028】
図3(c)は、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の合成の周波数特性を示している。図3(c)の実線は、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の両方がHPFで構成されている場合の周波数特性である。また、図3(c)の破線は、第1のフィルタ102がBPFで構成されている場合の周波数特性である。また、図3(c)の一点鎖線は、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の両方がBPFで構成されている場合の周波数特性である。
【0029】
図3(c)に示すように、第2のフィルタ101の周波数特性と第1のフィルタ102の周波数特性とが合成されることにより、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102とは、外乱ノイズの周波数帯域よりも高い所定の周波数の2つの低域遮断周波数を有する1つの合成フィルタと考えることができる。このとき、映像信号の周波数帯域よりも低周波の周波数帯域における利得はaであり、外乱ノイズの周波数帯域における利得は(a+b)である。
【0030】
このような合成フィルタに信号が入力されると、まずは、入力された信号における外乱ノイズに相当する成分が第2のフィルタ101において減衰される。このときの外乱ノイズに相当する成分の減衰量はbである。続いて、入力された映像信号の低周波成分及び外乱ノイズに相当する成分が第1のフィルタ102において減衰される。このときの外乱ノイズに相当する成分の減衰量は(a+b)である。また、外乱ノイズの周波数帯域よりも高周波であって映像信号の周波数帯域よりも低周波の成分の減衰量はaである。
【0031】
なお、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の両方がHPFで構成されている場合には、図3(a)に示すように、入力された映像信号よりも高周波の成分の減衰はない。一方、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の少なくとも一方がBPFで構成されている場合には、入力された映像信号よりも高周波の成分の減衰が生じる。高周波の成分の減衰量は、第1のフィルタ102のみがBPFで構成されている場合には利得aであり、第2のフィルタ101と第1のフィルタ102の両方がBPFで構成されている場合には利得(a+b)である。
【0032】
図4Aは、伝送線路100と第1のフィルタ102との合成の周波数特性を示している。一般に、高周波信号が伝送線路を伝搬するとき、伝送線路が伝搬する高周波信号に対してローパスフィルタ(LPF)として作用することが知られている。このため、伝送線路を伝送する信号の高周波成分は減衰する。この減衰量は、信号の周波数が高いほど、伝送線路が長くなるほどに大きくなる。このような高周波成分の減衰が発生すると、後段の画像プロセッサ22において映像信号が正しく受信されない可能性がある。
【0033】
前述したように、第1のフィルタ102は、入力された信号における映像信号の周波数帯域において低周波ほど減衰量が大きくるフィルタである。したがって、伝送線路100における映像信号の周波数帯域における高周波側での利得と同じになるように第1のフィルタ102における映像信号の周波数帯域における低周波側での利得が設定されていれば、伝送線路100と第1のフィルタ102とは、映像信号の低周波成分から高周波成分までの間で一定の利得を有する合成フィルタとして見ることができる。このような合成フィルタを通した信号をリミッティングアンプ103において増幅することにより、映像信号の高周波成分を補償することができる。しかしながら、映像信号の低周波成分から高周波成分までの各成分が減衰されているため、映像信号への外乱ノイズの混入によってS/Nが劣化する。
【0034】
図4Bは、伝送線路100と、第2のフィルタ101と、第1のフィルタ102との合成の周波数特性を示している。図4Aの周波数特性を有するフィルタにさらに第2のフィルタ101が追加されることにより、映像信号の減衰に比べて外乱ノイズがさらに減衰されることになる。結果として、信号のS/Nは改善される。
【0035】
以上説明したように本実施形態によれば、撮像素子12から出力されて伝送線路100を介して伝送される映像信号の減衰の影響を補正する第1のフィルタ102に加えて、伝送線路100を介して伝送される映像信号に混入される外乱ノイズの影響を抑制する第2のフィルタ101を設けることにより、撮像素子からの映像信号の品質を落とさずに伝送することができる内視鏡を提供することができる。
【0036】
[変形例1]
以下、本実施形態の変形例を説明する。前述した実施形態では、第2のフィルタ101及び第1のフィルタ102をHPF又はBPFで構成する例を説明している。これに対し、HPF又はBPFに対して減衰器を追加した構成も採用され得る。
【0037】
図5Aは、HPFに減衰器を追加したフィルタ回路の一例の構成を示す図である。一例のHPFは、図5Aに示すように、コンデンサCと、一端がコンデンサCに対して並列に接続されて他端が接地されたコイルLとによって構成されるLCフィルタである。図5AのLCフィルタにおいて、コンデンサCの静電容量の設定によって、HPFの遷移域(信号を通過させる周波数帯域である通過域と信号を減衰させる減衰域との間の利得変動の起こる周波数帯域)における利得の傾きが設定される。また、コイルLのインダクタンスの設定によって、HPFの入出力インピーダンスの値が設定される。
【0038】
そして、減衰器ATTは、コンデンサCに対して並列に接続されるとともに、コイルLを介して接地されている。減衰器ATTは、例えばL型、π型、T型の何れかの形に結線された抵抗によって構成される。このような減衰器ATTにより、HPFの減衰域における利得を所定値に調整することができる。
【0039】
図5Bは、BPFに減衰器を追加したフィルタ回路の一例の構成を示す図である。一例のBPFは、図5Bに示すように、入出力端に対して直列に接続されたコンデンサC1及びコイルL1と、一端がコンデンサC1及びコイルL1に対して並列に接続されて他端が接地されたコンデンサC2及びコイルL2とによって構成されている。コンデンサC1及びC2の静電容量の設定によって、BPFの遷移域(高周波側と低周波側)における利得の傾きが設定される。また、コイルL1及びL2のインダクタンスの設定によって、HPFの入出力インピーダンスの値が設定される。
【0040】
そして、減衰器ATTは、コンデンサC1及びL1に対して並列に接続されるとともに、互いに並列に接続されたコンデンサC2及びコイルL2を介して接地されている。減衰器ATTは、例えばL型、π型、T型の何れかの形に結線された抵抗によって構成される。このような減衰器ATTにより、BPFの減衰域における利得を所定値に調整することができる。
【0041】
ここで、図5A及び図5Bの例では、フィルタはパッシブ素子を用いて構成されている。これに対し、フィルタはアクティブ素子によって構成されるものであってもよい。ただし、パッシブフィルタであれば、フィルタを駆動するための電源が不要である。
【0042】
以上説明したように変形例1によれば、減衰器を用いることによって、より高精度に入力された信号の利得調整をすることができるイコライザを構成することができる。
【0043】
[変形例2]
次に、変形例2を説明する。前述した実施形態において、第2のフィルタ101及び第1のフィルタ102は、伝送線路100の中に設けられているとして説明している。変形例2は、第2のフィルタ101及び第1のフィルタ102の具体的な配置についての変形例である。
【0044】
図6は、第2のフィルタ101、第1のフィルタ102、リミッティングアンプ103をコネクタ16に配置した例である。この場合、第2のフィルタ101の入力は、ケーブル15を通る信号線に接続される。そして、第2のフィルタ101の出力は、第1のフィルタ102の入力に接続される。そして、第1のフィルタ102の出力は、リミッティングアンプ103の入力に接続される。リミッティングアンプ103の出力は、FPGA104に接続される。FPGA104は、信号レシーバ、ヘッダ取得処理部、変換部、メモリを含む。これらは、ロジック回路によって構成される。信号レシーバは、LVDS信号等の差動シリアル信号からもとの映像信号とヘッダを復元する受信部である。ヘッダ取得処理部は、ヘッダを取得して映像信号の先頭同期コードを認識する。変換部は、ヘッダから続く所定データ量の映像信号を1画素分の映像信号に変換する。メモリは、画素毎に映像信号を記憶する。FPGA104のメモリに記憶された映像信号は、コネクタ17を介して画像プロセッサ22に伝送される。
【0045】
このようにして第2のフィルタ101、第1のフィルタ102、リミッティングアンプ103をコネクタ16に配置することで、高周波処置具200からの外乱ノイズによる映像信号への影響が抑制される。
【0046】
図7は、第2のフィルタ101を操作部14に配置し、第1のフィルタ102、リミッティングアンプ103をコネクタ16に配置した例である。この場合、第2のフィルタ101の入力は、操作部14内の信号線に接続される。そして、第2のフィルタ101の出力は、ケーブル15を介して第1のフィルタ102の入力に接続される。そして、第1のフィルタ102の出力は、リミッティングアンプ103の入力に接続される。リミッティングアンプ103の出力は、FPGA104に接続される。
【0047】
図8は、第2のフィルタ101及び第1のフィルタ102を操作部14に配置し、リミッティングアンプ103をコネクタ16に配置した例である。この場合、第2のフィルタ101の入力は、操作部14内の信号線に接続される。そして、第2のフィルタ101の出力は、第1のフィルタ102の入力に接続される。そして、第1のフィルタ102の出力は、ケーブル15を介してリミッティングアンプ103の入力に接続される。リミッティングアンプ103の出力は、FPGA104に接続される。
【0048】
図9は、第2のフィルタ101、第1のフィルタ102、リミッティングアンプ103を操作部14に配置した例である。この場合、第2のフィルタ101の入力は、操作部14内の信号線に接続される。そして、第2のフィルタ101の出力は、第1のフィルタ102の入力に接続される。そして、第1のフィルタ102の出力は、リミッティングアンプ103の入力に接続される。リミッティングアンプ103の出力は、ケーブル15を介してFPGA104に接続される。
【0049】
通常、高周波処置具200は、操作部14から撮像素子12の近傍にかけて形成されるチャネル14aを通すことで使用される。したがって、外乱ノイズは、撮像素子12から操作部14にかけて特に混入しやすい。第2のフィルタ101を操作部14に配置しておくことにより、外乱ノイズが発生する場所の近くで外乱ノイズを除去することができる。
【0050】
図10Aは、減衰器ATTをFPGA104の出力端に配置した例である。前述したように、高周波処置具の使用時においては映像信号には外乱ノイズとして高周波処置具を駆動するための高周波信号の漏れ信号が混入され得る。一方で、高周波処置具が使用されていないときであっても、スコープ10と画像プロセッサ22とを接続するコネクタ17からの静電気(ESD)によりFPGA104を破壊する虞がある。このため、特に、第1のフィルタ102の図5A又は図5Bで示したような減衰器ATTを図10Aのように、FPGA104の出力端に配置することにより、コネクタ部からの静電気はFPGA104に入力される前に抑制される。また、減衰した映像信号は画像プロセッサ22に配置されるリミッティングアンプ106により増幅することができる。このリミッティングアンプ106で増幅された映像信号は、画像プロセッサ22に設けられたFPGA107において処理される。
さらに、図10Bのように、第1のフィルタ102をFPGA104の出力端子に配置し、減衰器ATTを含むフィルタ回路として構成し、コネクタからの静電気が抑制されるだけではなく、映像信号の高周波成分を補償するイコライザとしても機能させることができる。
【0051】
[その他の変形例]
その他の変形例として、FPGA104の変形例を説明する。撮像素子には複数の出力チャンネルを有するものがある。一方で、1チャンネルの映像信号と多チャンネルの映像信号とではFPGA104の処理するためのロジック回路の構成は異なっている。これは、1チャンネルの処理回路がシリアル信号用の処理回路であるのに対し、多チャンネルの処理回路がパラレル信号用の処理回路であるためである。本変形例は、1チャンネルの撮像信号を多チャンネルの処理回路で処理できるようにする例である。
【0052】
図11の変形例のFPGA104は、信号レシーバ301と、2チャンネル化部302と、セレクタ303と、ヘッダ取得処理部304と、変換部305と、メモリ306とを有する。ここで、図11の例は、撮像素子12のチャンネル数が2の場合の例である。チャンネル数が増えた場合には2チャンネル化部302によるチャンネル化数を変えればよい。
【0053】
信号レシーバ301は、LVDS信号等の差動シリアル信号からもとの映像信号とヘッダを復元して出力する。信号レシーバ301は、1チャンネル及び2チャンネル用の受信端子と2チャンネル用の受信端子の2つの受信端子を有している。また、信号レシーバ301は、1チャンネル及び2チャンネル用の送信端子と、2チャンネル用の送信端子の2つの送信端子を有している。1チャンネル及び2チャンネル用の送信端子は、2チャンネル化部302と、セレクタ303とに接続されている。2チャンネル用の送信端子は、セレクタ303に接続されている。
【0054】
2チャンネル化部302は、複数のFIFOメモリを有し、この複数のFIFOメモリを用いて信号レシーバ301から送られてくる映像信号を2チャンネル化する。図12A及び図12Bは、1チャンネルの映像信号を2チャンネルの映像信号に変換するための変換手法の例を示す図である。信号レシーバ301から出力される映像信号は、図12Aに示すようなシリアル信号である。2チャンネル化部302は、シリアル信号として入力される映像信号のうちの奇数番目の映像信号を1つ目のFIFOメモリに書き込み、偶数番目の映像信号を2つ目のFIFOメモリに書き込む。図12Bに示すように、2つのFIFOメモリから同時に映像信号を読み出すことで映像信号は2チャンネル化される。
【0055】
セレクタ303は、2チャンネル化部302からの映像信号と、信号レシーバ301から映像信号との何れかを例えば画像プロセッサ22から入力されるセレクト信号に応じて選択し、選択した映像信号をパラレル出力する。すなわち、セレクタ303は、1チャンネルの映像信号が撮像素子12から送られた旨のセレクト信号が入力されたときには2チャンネル化部302からの映像信号を選択する。また、セレクタ303は、2チャンネルの映像信号が撮像素子12から送られた旨のセレクト信号が入力されたときには、信号レシーバ301からの映像信号を選択する。
【0056】
ヘッダ取得処理部304は、セレクタ303からパラレル信号として出力されるそれぞれの映像信号の先頭に付加されているヘッダを取得して映像信号の先頭を認識する。変換部305は、ヘッダ取得処理部304で取得されたヘッダから続く所定データ量の映像信号を1画素分の映像信号に変換する。メモリ306は、画素毎に映像信号を記憶する。FPGA104のメモリに記憶された映像信号は、コネクタ17を介して画像プロセッサ22に伝送される。
【0057】
このように、1チャンネルの映像信号を2チャンネル化することにより、2チャンネル用の処理回路で1チャンネルの映像信号についても処理することができる。これにより、ロジック回路を約50%に削減することができる。また、配置や配線の制約も緩和されるため、より安価なFPGAを採用できる。
【0058】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 内視鏡システム、10 スコープ、11 挿入部、12 撮像素子、14 操作部、15 ケーブル、16 コネクタ、17 コネクタ、20 コントローラ、21 光源装置、22 画像プロセッサ、30 モニタ、100 伝送線路、101 第2のフィルタ、102 第1のフィルタ、103 リミッティングアンプ、104 FPGA、105 減衰器、106 リミッティングアンプ、107 FPGA、200 高周波処置具、301 信号レシーバ、302 2チャンネル化部、303 セレクタ、304 ヘッダ取得処理部、305 変換部、306 メモリ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B