(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の画像処理部は、前記特徴画像抽出部により抽出された複数の一次特徴画像の各々に対する畳込み処理およびプーリング処理を、他の画像処理部と非同期に実行する、 請求項1または2に記載の学習装置。
前記複数の画像処理部は、前記特徴画像抽出部により抽出された複数の一次特徴画像の各々に対する畳込み処理およびプーリング処理を、他の画像処理部と非同期に実行する、 請求項4または5に記載の紙葉類判別装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の学習装置、紙葉類判別装置および紙葉類判別方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る紙葉類処理装置1の断面図である。紙葉類処理装置1は、紙葉類Pの振分け処理を行う。以下、紙葉類Pとして紙幣を例に挙げて説明する。
【0010】
図1に示されるように、紙葉類処理装置1は、例えば、供給部11と、ローラ12と、異物回収部13と、搬送路14と、搬送部15と、鑑査装置16(学習装置、紙葉類判別装置)と、ラインセンサ17と、バーコードリーダ18と、リジェクト部19および20と、集積庫21から23とを備える。供給部11には、複数枚の紙幣Pが載置される。ローラ12は、供給部11から紙幣Pを1枚ずつ搬送路14に送り出す。ローラ12によって送り出された紙幣Pは、搬送路14に沿って搬送される。搬送路14には、複数組の図示しない無端状の搬送ベルトが搬送路を挟むように延設されている。ローラ12によって送り出された紙幣Pは、搬送ベルトに挟持されて搬送される。
【0011】
搬送路14は、ローラ12を通過した位置から鑑査装置16に向けて傾斜して延びている。これにより、供給部11から紙幣Pと共に、クリップ、コイン、ピン等の異物が搬送路14に送り出された際、異物は重力により搬送路14の最下部に落下する。これにより、異物が鑑査装置16に入ることを防止し、異物による鑑査装置16の損傷を防止することができる。
【0012】
搬送路14の最下部には、異物回収部13が配置されている。異物回収部13は、例えば、装置本体から引き出し可能な回収箱により構成されている。搬送路14に沿って落下する異物は、異物回収部13に落下して回収される。
【0013】
搬送部15は、紙幣と紙幣の間隔が所定の間隔となるように紙幣Pの搬送速度を調整し、紙幣Pを鑑査装置16へと搬送する。鑑査装置16は、紙幣Pの画像を読み取り、紙幣Pの券種、紙幣Pの表裏の向き、および紙幣Pの異常(破れ、折れ、汚れ等)を検出する。鑑査装置16は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子と、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光電変換素子とを備えるラインセンサ17を内蔵している。ラインセンサ17には、操作員がラインセンサ17によって撮像された画像を確認して、種々の情報を入力するための監視端末(図示しない)が接続されていてもよい。
【0014】
紙幣Pの異常が検出された場合、紙葉類処理装置1は、紙幣Pを搬送路14に沿って搬送し、異常の種類に応じて紙幣Pをリジェクト部19または20に振り分けて集積する。一方、紙幣Pの異常が検出されなかった場合、紙葉類処理装置1は、紙幣Pをバーコードリーダ18に通過させた後、紙幣Pの券種に応じて紙幣Pを集積庫21から23に振り分けて集積する。以上が、紙幣の振分け処理である。
【0015】
図2は、本実施形態に係る鑑査装置16の制御構成を示すブロック図である。
図2においては、鑑査装置16が紙幣Pの券種を判別するための制御構成が示されている。鑑査装置16は、例えば、画像取得部30と、特徴画像抽出部31と、第1特徴画像処理部32と、第2特徴画像処理部33と、第3特徴画像処理部34と、券種判別部35とを備える。
【0016】
画像取得部30は、鑑査装置16を通過する紙幣Pを撮像し、紙幣Pの撮像画像を取得する。画像取得部30は、取得した撮像画像を特徴画像抽出部31に出力する。画像取得部30は、例えば、ラインセンサ17を備える。
【0017】
特徴画像抽出部31は、画像取得部30から入力された撮像画像から、紙幣Pの券種を分類するのに適した、認識対象が異なる複数の小規模な特徴的な画像(一次特徴画像)を抽出する。例えば、特徴画像抽出部31は、撮像画像から背景画像などを除去した紙幣画像に対して、予め指定された座標情報に基づき、複数の小規模な特徴的な画像を抽出する。
【0018】
図3は、本実施形態に係る紙幣画像50における第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3を示す図である。
図3に示すように、紙幣画像50には、紙幣Pの券種を分類するのに適した複数の小規模な特徴的な画像として、額面数字が印刷された領域の画像である第1特徴画像F1と、シンボルが印刷された領域の画像である第2特徴画像F2と、肖像画が印刷された領域の画像である第3特徴画像F3とが含まれる。尚、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3以外の領域の画像を特徴画像として利用してもよい。以下においては、特徴画像抽出部31が、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3を抽出する構成を例に挙げて説明する。
【0019】
特徴画像抽出部31は、紙幣画像50から抽出した第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3を、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34にそれぞれ出力する。尚、特徴画像抽出部31は、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3に加えて、他の領域の画像を特徴画像として抽出している場合には、これらの他の領域の画像をさらなる特徴画像処理部(第4特徴画像処理部、第5特徴画像処理部など)に出力してよい。
【0020】
第1特徴画像処理部32は、例えば、第1畳込み処理部40と、第1プーリング処理部41とを備える。第1畳込み処理部40は、第1特徴画像F1に対して畳込み処理を行う。第1プーリング処理部41は、第1畳込み処理部40によって処理された畳込み処理後の画像に対してプーリング処理を行う。第1特徴画像処理部32においては、上記の畳込み処理とプーリング処理とが予め定められた回数繰り返される。第1特徴画像処理部32は、プーリング処理後の画像(二次特徴画像)を券種判別部35に出力する。
【0021】
第2特徴画像処理部33は、例えば、第2畳込み処理部42と、第2プーリング処理部43とを備える。第2畳込み処理部42は、第2特徴画像F2に対して畳込み処理を行う。第2プーリング処理部43は、第2畳込み処理部42によって処理された畳込み処理後の画像に対してプーリング処理を行う。第2特徴画像処理部33においては、上記の畳込み処理とプーリング処理とが予め定められた回数繰り返される。第2特徴画像処理部33は、プーリング処理後の画像(二次特徴画像)を券種判別部35に出力する。
【0022】
第3特徴画像処理部34は、例えば、第3畳込み処理部44と、第3プーリング処理部45とを備える。第3畳込み処理部44は、第3特徴画像F3に対して畳込み処理を行う。第3プーリング処理部45は、第3畳込み処理部44によって処理された畳込み処理後の画像に対してプーリング処理を行う。第3特徴画像処理部34においては、上記の畳込み処理とプーリング処理とが予め定められた回数繰り返される。第3特徴画像処理部34は、プーリング処理後の画像(二次特徴画像)を券種判別部35に出力する。
【0023】
すなわち、上記の複数の画像処理部(第1特徴画像処理部32,第2特徴画像処理部33,第3特徴画像処理部34)は、特徴画像抽出部31により抽出された複数の特徴画像の各々に対して畳込み処理およびプーリング処理を行って認識対象が異なるプーリング画像を各々生成する。
【0024】
券種判別部35は、第1特徴画像処理部32から入力されたプーリング処理後の画像、第2特徴画像処理部33から入力されたプーリング処理後の画像、および第3特徴画像処理部34から入力されたプーリング処理後の画像の各々に対する全結合処理(結合処理)を行い、全結合処理の結果に基づいて、紙幣Pの券種を判別するためのパラメータセットを順次更新して学習する、または紙幣Pの券種を判別する。券種判別部35は、時間に応じて、学習の対象とするまたは全結合処理の対象とするプーリング処理後の画像を変更する。券種判別部35においては、例えば、シグモイド関数やReLu関数などの活性化関数が複数の層で組み合わされたネットワークを形成している。
【0025】
特徴画像抽出部31、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、第3特徴画像処理部34、および券種判別部35の各機能部のうち一部または全部は、CPU等のプロセッサが、プログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することで実現される。なお、これらの各機能部のうち一部または全部は、プロセッサがプログラムを実行するのと同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現されてもよい。
【0026】
次に、本実施形態の鑑査装置16の動作について説明する。鑑査装置16の動作は、紙幣の券種判別を行うための前準備を行う学習段階と、紙幣の券種判別を行う運用段階とに大別される。まず、学習段階における処理について説明する。
図4は、本実施形態の鑑査装置16の学習段階における処理の流れの一例を示すフローチャートである。尚、学習段階における鑑査装置16を「学習装置」と呼び、運用段階における鑑査装置16を「紙葉類判別装置」と呼ぶ。
【0027】
まず、画像取得部30は、鑑査装置16(学習装置)を通過する紙幣Pを撮像し、撮像画像(紙葉類画像)を取得する(ステップS101)。画像取得部30は、取得した撮像画像を特徴画像抽出部31に出力する。
【0028】
次に、特徴画像抽出部31は、画像取得部30から入力された撮像画像全体から、紙幣Pが撮像されている領域(紙幣画像)を抽出し、紙幣画像の向きを所定の方向に調整する(ステップS103)。例えば、特徴画像抽出部31は、上記の撮像処理において撮像される背景の色を黒や白の単色とし、輝度が背景色と異なる領域を紙幣Pが撮像されている領域として抽出してもよい。また、特徴画像抽出部31は、撮像画像から紙幣Pのエッジ成分を検出して紙幣Pが撮像されている領域を抽出してもよい。本実施形態における背景除去処理には任意の手法を用いてよい。
【0029】
また、例えば、特徴画像抽出部31は、上記の背景除去処理により得られた紙幣画像の頂点に対して、アフィン変換などを行い、各頂点の位置を所望の位置に合わせることで(例えば、紙幣Pの長辺を水平方向に合わせる場合、長辺を挟む頂点の短辺方向の座標を同じにすることで)、紙幣画像の向きを所定の方向に調整してよい。本実施形態において向き調整には任意の手法を用いてよい。
【0030】
次に、特徴画像抽出部31は、所定の方向に向きが調整された紙幣画像から、予め指定された座標情報に基づき、紙幣Pの券種を分類するのに適した複数の小規模な特徴的な画像を抽出する(ステップS105)。例えば、特徴画像抽出部31は、
図3に示すように、紙幣画像50から、額面数字が印刷された領域の画像である第1特徴画像F1と、シンボルが印刷された領域の画像である第2特徴画像F2と、肖像画が印刷された領域の画像である第3特徴画像F3とを抽出する。特徴画像抽出部31は、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3を、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34にそれぞれ出力する。
【0031】
次に、第1特徴画像処理部32の第1畳込み処理部40は、特徴画像抽出部31から入力された第1特徴画像F1に対して畳込み処理を行い、第2特徴画像処理部33の第2畳込み処理部42は、第2特徴画像F2に対して畳込み処理を行い、第3特徴画像処理部34の第3畳込み処理部44は、第3特徴画像F3に対して畳込み処理を行う(ステップS107)。第1畳込み処理部40、第2畳込み処理部42、および第3畳込み処理部44における畳込み処理は、処理対象となる画像が異なる点を除いて同様である。以下においては、第1畳込み処理部40における畳込み処理を例に挙げて説明する。
【0032】
第1畳込み処理部40は、畳込みを行うための任意の大きさの係数行列を利用した畳込み計算を行う。例えば、第1畳込み処理部40は、第1特徴画像F1から係数行列と同じ大きさの小画像を取り出し、小画像と係数行列とを用いて畳込み計算することで1つの画素を取得する。第1畳込み処理部40は、第1特徴画像F1から取り出す小画像を変えながら(スライドさせながら)この畳込み計算を繰り返し行うことで、複数の画像を取得する。この複数の画像の集合が畳込み画像となる。
【0033】
図5は、本実施形態に係る第1畳込み処理部40における畳込み処理を説明する図である。
図5に示すように、第1畳込み処理部40は、第1特徴画像F1の中で、例えば、
図5に示す点0(第1特徴画像F1の左上の隅)に位置する3×3ピクセルの第1小画像G1を抽出し、この第1小画像G1と3×3係数行列J1とを用いて畳込み計算(2×5+4×2+5×1+1×4+5×2+1×3+3×3+5×4+2×1=71)を行い、第1計算値K1を得る。この第1計算値K1が、畳込み画像L1の1ピクセルの画像(1行1列目の画像)を構成する。
【0034】
次に、第1畳込み処理部40は、第1特徴画像F1からの小画像の抽出位置をX方向に1ピクセル分スライドさせて同様の畳込み処理を行う。第1畳込み処理部40は、X方向における小画像の取出しが完了した後、小画像の抽出位置をY方向に1ピクセル分スライドさせて同様の畳込み処理を行う。このように、小画像の抽出位置をX方向およびY方向に移動させつつ、第1特徴画像F1における最終位置(例えば、第1特徴画像F1の右下の隅)に到達するまで畳込み処理を繰り返す。尚、本実施形態においては、第1特徴画像F1の左上の隅から右下の隅まで抽出位置を移動させることとしたが、第1特徴画像F1の全面を移動できるような順序であれば、移動順序はこれに限られない。この畳込み処理により、畳込み画像L1を取得する。
【0035】
次に、第1プーリング処理部41は、第1畳込み処理部40から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行い、第2プーリング処理部43は、第2畳込み処理部42から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行い、第3プーリング処理部45は、第3畳込み処理部44から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行う(ステップS109)。第1プーリング処理部41、第2プーリング処理部43、および第3プーリング処理部45におけるプーリング処理は、処理対象となる画像が異なる点を除いて同様である。以下においては、第1プーリング処理部41におけるプーリング処理を例に挙げて説明する。
【0036】
図6は、本実施形態に係る第1プーリング処理部41におけるプーリング処理を説明する図である。第1プーリング処理部41は、例えば、畳込み画像L1から、例えば、3×3ピクセルの画像を抽出し、この画像の最大輝度や平均輝度を算出する。
図6では、最大輝度を算出する例を示している。例えば、第1プーリング処理部41は、畳込み画像L1から、3×3ピクセルの画像M1(第1から3行×第1から第3列)を抽出し、この中の最大輝度「210」を示す1ピクセルの画素N1を算出する。この画素N1が、プーリング画像P1の1ピクセルの画像(1行1列目の画像)を構成する。
【0037】
次に、第1プーリング処理部41は、畳込み画像L1からの抽出位置を列方向に3ピクセル分スライドさせて同様のプーリング処理を行う。第1プーリング処理部41は、列方向におけるプーリング処理が完了した後、抽出位置を行方向に3ピクセル分スライドさせて同様のプーリング処理を行う。このように、小画像の抽出位置をX方向およびY方向に移動させつつ、畳込み画像L1における最終位置(例えば、畳込み画像L1の右下の隅)に到達するまでプーリング処理を繰り返す。尚、本実施形態においては、畳込み画像L1の左上の隅から右下の隅まで抽出位置を移動させることとしたが、畳込み画像L1の全面を移動できるような順序であれば、移動順序はこれに限られない。このプーリング処理により、プーリング画像P1を取得する。
【0038】
第1特徴画像処理部32は、1つの第1特徴画像F1に対して、異なるパラメータ(例えば、係数行列のサイズ、係数値、スライド幅などを変更させたパラメータ)を用いた畳込み処理、およびプーリング処理を行って複数のプーリング画像を生成し、券種判別部35に出力する。尚、この場合、プーリング処理における各種パラメータを調整してもよい。
【0039】
第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34における上記の畳込み処理およびプーリング処理は、並列して実行される。すなわち、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34は、特徴画像抽出部31により抽出された複数の特徴画像の各々に対する畳込み処理およびプーリング処理を、他の画像処理部と非同期に実行する(特徴画像毎に並列して)実行する。
【0040】
次に、券種判別部35は、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から入力されたプーリング画像の内、いずれか一つの画像処理部から入力されたプーリング画像(単一の特徴画像から得られたプーリング画像)に対する全結合処理を行って、券種判別の学習処理を行う(ステップS111)。例えば、券種判別部35は、まず、第1特徴画像処理部32から入力された第1特徴画像F1から得られたプーリング画像に対する全結合処理を行う。
【0041】
次に、券種判別部35は、全ての特徴画像に対する全結合処理が完了したか否かを判定する(ステップS113)。例えば、券種判別部35は、第2特徴画像F2および第3特徴画像F3に対する全結合処理が完了していないと判定した場合、次に、第2特徴画像F2に対する全結合処理を行って、券種判別の学習処理を行う。一方、券種判別部35は、全ての特徴画像に対する全結合処理が完了したと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0042】
すなわち、券種判別部35は、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から出力されたプーリング画像に対して順次(時間的に異なるタイミングで)全結合処理を行う。例えば、券種判別部35は、ある時刻tでは、第1特徴画像処理部32から入力されたプーリング画像に対して全結合処理を行い、時刻t+1では、第2特徴画像処理部33から入力されたプーリング画像に対して全結合処理を行い、時刻t+2では、第3特徴画像処理部34から入力されたプーリング画像に対して全結合処理を行う。尚、券種判別部35は、上記の第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から出力されたプーリング画像に対する全結合処理を繰り返し行ってよい。
【0043】
図7は、本実施形態に係る券種判別部35における第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3に基づく券種判別処理を説明する図である。
図7に示すように、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から出力された複数のプーリング画像が、券種判別部35に集められて上記の全結合処理が施される。これにより、全結合処理において使用される各種パラメータ(重みパラメータ)の学習処理が行われる。学習の結果として得られるパラメータセットは、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3の全てに適用可能な(全てに共通する)ものとなる。
【0044】
次に、運用段階における処理について説明する。
図8は、本実施形態の鑑査装置16の運用段階における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、画像取得部30は、鑑査装置16(紙葉類判別装置)を通過する紙幣Pを撮像し、撮像画像を取得する(ステップS201)。画像取得部30は、取得した撮像画像を特徴画像抽出部31に出力する。
【0046】
次に、特徴画像抽出部31は、画像取得部30から入力された撮像画像全体から、紙幣Pが撮像されている領域(紙幣画像)を抽出し、紙幣画像の向きを所定の方向に調整する(ステップS203)。
【0047】
次に、特徴画像抽出部31は、所定の方向に向きが調整された紙幣画像から、予め指定された座標情報に基づき、紙幣Pの券種を分類するのに適した複数の小規模な特徴的な画像を抽出する(ステップS205)。例えば、特徴画像抽出部31は、
図3に示すような紙幣画像50から、額面数字が印刷された領域の画像である第1特徴画像F1と、シンボルが印刷された領域の画像である第2特徴画像F2と、肖像画が印刷された領域の画像である第3特徴画像F3とを抽出する。特徴画像抽出部31は、第1特徴画像F1、第2特徴画像F2、および第3特徴画像F3を、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34にそれぞれ出力する。
【0048】
次に、第1特徴画像処理部32の第1畳込み処理部40は、特徴画像抽出部31から入力された第1特徴画像F1に対して畳込み処理を行い、第2特徴画像処理部33の第2畳込み処理部42は、第2特徴画像F2に対して畳込み処理を行い、第3特徴画像処理部34の第3畳込み処理部44は、第3特徴画像F3に対して畳込み処理を行う(ステップS207)。
【0049】
次に、第1プーリング処理部41は、第1畳込み処理部40から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行い、第2プーリング処理部43は、第2畳込み処理部42から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行い、第3プーリング処理部45は、第3畳込み処理部44から入力された畳込み画像に対してプーリング処理を行う(ステップS209)。
【0050】
第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々は、1つの第1特徴画像F1に対して、異なるパラメータ(例えば、係数行列のサイズ、係数値、スライド幅など)を用いた畳込み処理、およびプーリング処理を行って複数のプーリング画像を生成し、券種判別部35に出力する。尚、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34における上記の畳込み処理およびプーリング処理は、並列して実行される。
【0051】
次に、券種判別部35は、第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から入力されたプーリング画像の内、いずれか一つの画像処理部から入力されたプーリング画像(単一の特徴画像から得られたプーリング画像)に対する全結合処理を行う(ステップS211)。例えば、券種判別部35は、まず、第1特徴画像処理部32から入力された第1特徴画像F1から得られたプーリング画像に対する全結合処理を行う。
【0052】
次に、券種判別部35は、全ての特徴画像に対する全結合処理が完了したか否かを判定する(ステップS213)。例えば、券種判別部35は、第2特徴画像F2および第3特徴画像F3に対する全結合処理が完了していないと判定した場合、第2特徴画像F2に対する全結合処理を行う。尚、券種判別部35は、上記の第1特徴画像処理部32、第2特徴画像処理部33、および第3特徴画像処理部34の各々から出力されたプーリング画像に対する全結合処理を繰り返し行ってよい。
【0053】
一方、券種判別部35は、全ての特徴画像に対する全結合処理が完了したと判定した場合、第1特徴画像処理部32から入力されたプーリング画像に対する全結合処理の結果、第2特徴画像処理部33から入力されたプーリング画像に対する全結合処理の結果、および第3特徴画像処理部34から入力されたプーリング画像に対する全結合処理の結果に基づいて、紙幣Pの券種判別処理を行い(ステップS215)、判別結果を表示装置(図示しない)などに表示する。以上により、本フローチャートの処理を終了する。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、高精度かつ短時間で紙葉類の券種を判別することを可能にする学習装置、紙葉類判別装置および紙葉類判別方法を提供することができる。また、本実施形態では、紙葉類におけるデザインの差異が表れる複数の特徴画像を抽出し、この複数の特徴画像に基づく券種判別を行うことで、券種判別の精度を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、券種判別部35は、時間に応じて、全結合処理の対象とするプーリング画像を変更する。このため、処理時間を増加させることなく、複数の画像に対してDeep Learning技術であるCNNを適用することができる。また、複数の特徴画像に対して共通する全結合処理を行うため、複数の特徴画像を個別にCNNで検知して総合的に判定する場合と比較して、総合判定も不要となり、全結合処理も増加しないため、計算時間の増加を抑えることができる。また、畳み込み処理とプーリング処理により代表的な券種の画像が最も精度よく検知出来るような変換式をBack-Propagation法などの学習手法により行うことで高精度の券種判別が可能となる。
【0056】
尚、本実施形態において、紙葉類Pは紙幣に限られず、印刷模様のある紙葉類であればよい。例えば、紙葉類Pは、郵便物の料額印、小切手、各種帳票などにも適用できる。また、紙葉類Pの代表的な画像は、額面数字、シンボル、肖像画に限られず、例えば、スタンプ、紙幣裏面の模様などであってもよい。
【0057】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、学習装置16は、画像取得部30と、特徴画像抽出部31と、複数の画像処理部32から34と、券種判別部35とを持つ。画像取得部30は、紙葉類を撮像した画像である紙葉類画像を取得する。特徴画像抽出部31は、画像取得部30によって取得された紙葉類画像から認識対象が異なる複数の一次特徴画像を抽出する。複数の画像処理部32から34は、特徴画像抽出部31により抽出された複数の一次特徴画像の各々に対して畳込み処理およびプーリング処理を行って認識対象が異なる二次特徴画像を各々生成する。券種判別部35は、複数の画像処理部32から34により生成された複数の二次特徴画像の各々に対する結合処理の結果に基づいて、紙葉類の券種を判別するためのパラメータセットを順次更新して学習する。これによって、実施形態の学習装置は、高精度かつ短時間で紙幣Pの券種の判別を可能にすることができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。