特許第6834117号(P6834117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834117
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】加水分解性粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20210215BHJP
   C09K 8/035 20060101ALI20210215BHJP
   C09K 8/80 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCFD
   C09K8/035
   C09K8/80
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-25590(P2015-25590)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147971(P2016-147971A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成志
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳喜
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−134090(JP,A)
【文献】 特開2010−138390(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045815(WO,A1)
【文献】 特開2007−146146(JP,A)
【文献】 特開2005−097590(JP,A)
【文献】 特表2008−502463(JP,A)
【文献】 特開2007−291323(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28、99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09K 8/00− 8/94
E21B 1/00− 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性のマトリックス樹脂中に該マトリックス樹脂の加水分解性を調整するための加水分解性ポリマーの微細粒子が分布している分散構造を有している加水分解性粒子であって、平均粒径(D50)が300〜1000μmの範囲にあり、短径/長径比が0.8以上の真円度を有しており、
前記微細粒子には当該マトリックス樹脂よりも加水分解性が高い加水分解性調整用ポリマーが使用され、
前記加水分解性調整用ポリマーが、分岐構造が主エステル単位当たり0.01〜1.0モル%の割合で導入されたポリオキサレート共重合体であることを特徴とする加水分解性粒子。
【請求項2】
前記マトリックス樹脂がポリ乳酸であり、前記加水分解性ポリマーがポリオキサレートである請求項1に記載の加水分解性粒子。
【請求項3】
前記ポリオキサレートが、3官能以上のアルコールもしくは酸から誘導される分枝状共重合体単位を有している共重合体である請求項2に記載の加水分解性粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性粒子に関するものであり、特に、掘削用分散液に添加される添加剤として好適に使用される加水分解性粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキサレートやポリ乳酸に代表される加水分解性樹脂は、生分解性にも優れており、環境改善等の見地から、現在、種々の用途で各種プラスチックの代替え品としての検討がなされ、一部では実用化されている。
また、最近では、地下資源採取の際に使用される掘削液に加える添加剤としての使用も提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
例えば、地下資源の採取のために、水圧破砕法と呼ばれる坑井掘削法が現在広く採用されている。かかる掘削法は、坑井内を満たした掘削液を高圧で加圧することにより、坑井近傍に亀裂(フラクチュア)を生成せしめ、坑井近傍の浸透率(流体の流れ易さ)を改善し、坑井へのオイルやガスなどの資源の有効な流入断面を拡大し、坑井の生産性を拡大するというものである。このような掘削液は、フラクチュアリング流体とも呼ばれ、古くはジェル状のガソリンのような粘性流体が使用されていたが、最近では、比較的浅いところに存在する頁岩層から産出するシェールガスなどの開発に伴い、環境に対する影響を考慮し、水にポリマー粒子を溶解乃至分散させた水性分散液が使用されるようになってきた。このようなポリマーとしては、ポリオキサレートやポリ乳酸などの加水分解性樹脂が提案されているわけである。
【0004】
即ち、上記のような加水分解性の粒子を水に分散させた掘削液を坑井中に満たし、これを加圧したとき、この粒子が坑井近傍に浸透し、既に形成されている亀裂(フラクチャ)の目止材(シール材)となって、一時的にガスやオイルなどの資源の流路を効果的に遮断することができる。
一般に、坑井内に亀裂を生成するためには、水平坑井中でパーポレーションと呼ばれる予備爆破が行われる。このような予備爆破により、この坑井の深部に比較的大きな亀裂と共に、多数の小さな亀裂が生成する。この後、この坑井内に、掘削液(フラクチュアリング流体)を圧入することにより、これら亀裂に流体が流入し、これら亀裂に負荷が加えられることにより、資源の採取に好適な大きさ亀裂に成長していくこととなるのであるが、初めに形成された亀裂を、上記の加水分解性樹脂粒子により一時的に閉塞しておくことにより、その後の流体加圧により、さらに亀裂を効果的に形成することが可能となる。このように亀裂を一時的に閉塞するために流体中に添加される添加剤はダイバーティングエイジェントと呼ばれている。
【0005】
上記の加水分解性粒子は、地中の水や酵素により加水分解して消失するため、後工程で加水分解性粒子を取り除く必要がなく、坑井の削井が効率良く進められる。
【0006】
ところで、坑井は深さによって温度が異なり、坑井内温度は、40℃から200℃まで幅広く、資源採取のための亀裂が形成される坑井内温度によって最適な加水分解性樹脂が異なり、特にポリオキサレートはポリ乳酸と比べて、加水分解性が高く、低い温度域(例えば80℃以下)での使用が見込まれ、それ単独でも用いられるが、ポリ乳酸と配合しポリ乳酸の加水分解速度を加速させるという機能も有している。
【0007】
しかしながら、ポリオキサレートに代表される高加水分解性のポリマーは、水に添加して使用する場合には、その作業性に問題が生じるという特有の課題があった。即ち、水に耐水性が低く、その粒子が短時間で加水分解してしまい、このため、地上で分解し融着を生じてしまったり、坑井内でこの粒子に求められる機能を十分に発揮することが困難となってしまっていた。
【0008】
さらに、前述したように、掘削用分散液に加水分解性粒子を添加して用いる場合には、その粒子形状や粒子の大きさが問題となる。即ち、このような加水分解性粒子は、地中に形成された亀裂(フラクチュア)内に導入され、その亀裂を塞いだり、或いは亀裂の崩壊を抑制するなどの機能を発揮させるものであるため、球形に近い粒子形状を有しており且つ粒子径が適度な大きさを有していることが要求されている。例えば、粒子形状が球形とは程遠い不定形の場合(即ち、粒子の真円度が低い)には、亀裂内への圧入が困難であったり、亀裂内へ導入できたとしても、空隙が多く、亀裂内からのガスの流出を有効に抑止することが困難となってしまう。また、粒子が大き過ぎると、亀裂内に浸透させることが困難となってしまい、粒子が小さ過ぎると、亀裂を閉塞するためには、著しく多量の粒子を使用することが必要となってしまう。
しかるに、真球度が高く、しかも、水圧破砕に適した粒径を有している加水分解性粒子は、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−134090
【特許文献2】特開2014−134091
【特許文献3】特開2014−177618
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、水圧破砕に適した加水分解性、真円度及び粒径を有しており、しかも取扱いが容易であり、粒子同士の融着を生じ難い加水分解性粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、加水分解性のマトリックス樹脂中に該マトリックス樹脂の加水分解性を調整するための加水分解性ポリマーの微細粒子が分布している分散構造を有している加水分解性粒子であって、平均粒径(D50)が300〜1000μmの範囲にあり、短径/長径比が0.8以上の真円度を有していることを特徴とする加水分解性粒子が提供される。
【0012】
本発明の加水分解性粒子においては、
(1)70℃の水に168時間浸漬したときの重量減少率で加水分解性度を示したとき、前記加水分解性粒子は50%以下の重量保持率を示すと共に、該加水分解性粒子に含まれるマトリックス樹脂の重量保持率が90%以上であること、
(2)前記マトリックス樹脂がポリ乳酸であり、前記加水分解性ポリマーがポリオキサレートであること、
(3)前記ポリオキサレートが、3官能以上のアルコールもしくは酸から誘導される分枝状共重合体単位を有している共重合体であること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加水分解性粒子は、加水分解性のマトリックス樹脂に、該マトリックスの加水分解性を調整するためのポリマーが分散されているという分散構造を有している。即ち、この加水分解性粒子では、加水分解性調整用のポリマー(即ち、易加水分解性ポリマー)がマトリックス樹脂(即ち、海状に存在している難加水分解性ポリマー)により保護されているため、加水分解性調整用ポリマーの加水分解に起因する粒子同士の融着を有効に防止することができ、その取扱い性に優れている。
【0014】
また、この加水分解性粒子は、短径/長径比で表される真円度が0.8以上と極めて高く、しかも、その平均粒径(D50)は300〜1000μmの範囲にあり、小さ過ぎることもなく、大き過ぎることもない。
【0015】
従って、本発明の加水分解性粒子は、掘削用分散液に添加される添加剤、特に水圧破砕に際して亀裂の閉塞に使用される添加剤として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の加水分解性粒子の製造に用いる滴下式粒子製造装置の一例の概略構造を示す図。
図2】本発明の加水分解性粒子の製造に用いる滴下式粒子製造装置の他の例の概略構造を示す図。
図3】本発明の実験例で作製された加水分解性粒子を形成する組成物から形成されたフィルムのSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<加水分解性粒子を形成する材料>
本発明の加水分解性粒子は、マトリックス樹脂中に、該マトリックス樹脂の加水分解性を調整するための加水分解性調整用ポリマーが分布した分散構造を有しており、このようなマトリックス樹脂及び加水分解性調整用ポリマーとしては、何れも、種々の加水分解性を示すポリマーを使用することができるが、特に、水圧破砕に用いるに際しての適度な加水分解性に加え、酵素分解性に優れていることから、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオキサレート、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトンなどの生分解性ポリエステルが好適である。このような生分解性ポリエステルは、それぞれ単独或いは2種以上を組み合わせて使用することもできるし、さらに、加水分解性が損なわれない範囲で、各種の脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが共重合された共重合体の形態で使用することもできる。
即ち、上記の生分解性ポリエステルの中から、難加水分解性のものをマトリックス樹脂として使用し、マトリックス樹脂よりも易加水分解性のものが加水分解性調整用ポリマーとして使用されることとなる。
【0018】
また、上記の生分解性ポリエステルは、その重量平均分子量(Mw)が50000〜500000の範囲にあることが望ましい。マトリックス樹脂及び加水分解性調整用ポリマーの何れに適用した場合においても、重量平均分子量(Mw)が低すぎるものを用いた場合には、粒子強度を適度な範囲に保つことができず、崩壊し易く、粒子形状の維持が困難となってしまうおそれがあり、また、過度に重量平均分子量が大きいものは、その加水分解性が低下してしまうからである。
【0019】
ところで、本発明の加水分解性樹脂は、シェールガスの採掘に使用するという観点から、特に40〜80℃の低温領域で適度な加水分解性を示すことが望ましい。即ち、シェールガスは、比較的浅い地中に存在している頁岩層から採掘されるものであり、その採掘に使用される掘削用分散液は、上記の温度領域の坑井中に投入される場合が多く、加水分解粒子には、この温度領域で適度な加水分解性が要求されるからである。
【0020】
上記のような適度な加水分解性は、70℃の水に168時間浸漬したときの重量減少率で加水分解性度を示したとき、その値(重量保持率)が60%以下であり、特に好ましくは50%以下である。即ち、加水分解性度が低く、重量減少率が過度に小さいと、後述する水圧破砕のための分散液に添加したとき、亀裂中に侵入させ得たとしても、長期間加水分解せずに残存してしまう。また、加水分解性度が高く、重量減少率が過度に大きいと、例えば亀裂内に侵入させる前に粒子が加水分解によって崩壊してしまうおそれがあり、さらには、地上での加水分解により、粒子同士の融着を生じしてしまい、亀裂中への供給が困難となってしまうおそれがある。従って、上記条件下で測定される重量減少率は、上記範囲にあることが好ましいこととなる。
【0021】
1.マトリックス樹脂;
従って、本発明では、上記のような加水分解度が実現できる程度の加水分解性を有する樹脂をマトリックス樹脂として使用することが望まれるが、このためには、上述した生分解性ポリエステルの中でも、上記の重量保持率が90%以上の難加水分解性のもの、例えばポリ乳酸をマトリックス樹脂として使用することが最適である。
即ち、マトリックス樹脂として、上記の加水分解度が高いものを使用すると、目的とする加水分解性粒子の加水分解度を上記範囲に調整することが困難となってしまうからである。また、このような加水分解度の高い樹脂をマトリックス樹脂として使用することは、加水分解調整用ポリマーとして使用される易加水分解性のポリマーの加水分解を抑制するという点で、特に有効である。
【0022】
マトリックス樹脂として好適に使用されるポリ乳酸は、その加水分解度が上記範囲内にあるように分子量が前述した範囲に調整されていればよく、例えば、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸のホモポリマー、或いはD−乳酸とL−乳酸との共重合体であってもよいし、場合によっては、他の共重合成分が共重合された共重合体であってもよい。
【0023】
2.加水分解性調整用ポリマー;
さらに上記のような難加水分解性の生分解性ポリマーをマトリックス樹脂として使用した場合、このマトリックス樹脂中に分散させる加水分解性調整用ポリマーとしては、易加水分解性であり、少量の配合で、粒子の重量保持率を前述した範囲(例えば50%以下)に調整できるという点で、ポリオキサレート及びポリグリコール酸が好適である。
この中でも、上記のポリオキサレートは、加水分解によりシュウ酸を放出するため、ポリ乳酸などの加水分解性の低いものとブレンドして使用されたとき、ポリ乳酸の加水分解を大きく促進するという性質を有しており、特に少量での使用により、加水分解度を前述した範囲に調整できるという点で好適である。
また、加水分解性調整用ポリマーは、微細に分布していることが好ましく、例えば、その分散粒子の平均粒径は、5〜0.01μm、好ましくは、3〜0.1μm、さらに好ましくは3〜0.5μmの範囲であることがよい。
【0024】
例えば、ポリオキサレートは、前述したポリ乳酸100質量部当り、5〜95質量部、特に30〜80質量部程度の使用で、加水分解度を前述した範囲に調整できる。即ち、少量で加水分解度を調整できるということは、このポリオキサレートが、比較的厚いポリ乳酸の層で被覆されていることを意味し、従って、ポリオキサレートが極めて加水分解し易いものでありながら、ポリ乳酸の厚い層で保護されているため、室温付近での環境下での加水分解を有効に抑制することができ、水圧破砕用の分散液に用いたとき、地上での加水分解による粒子の融着を防止する上で極めて有利となる。
【0025】
また、本発明においては、上記のポリオキサレートの中でも、特に、分子中に分岐構造が導入されたポリオキサレート共重合体が好適に使用される。即ち、かかるポリオキサレート共重合体は、分岐構造が分子中に導入されているため、緻密な分子構造を有しており、例えば、このような分岐構造が導入されていないポリオキサレート(未変性ポリオキサレート)と比較して、水中投下持から12時間経過時での加水分解速度が極めて低く、また、水中投下時から24時間経過時での加水分解速度は、未変性ポリオキサレートと同等である。即ち、かかるポリオキサレート共重合体は、未変性ポリオキサレート同等の加水分解性を示すものであるが、初期加水分解性に関して言えば、未変性ポリオキサレートに比して著しく低い。恐らく、緻密な分子構造により、水分の浸透速度が著しく抑制されており、これが初期加水分解性の低下をもたらしているものと思われる。
【0026】
しかも、初期加水分解性の低下は、地上での使用に際して、水分との接触等による唐突な加水分解を有効に回避することができ、このような加水分解による粒子相互の融着をより確実に防止できるという利点をもたらす。
即ち、未変性ポリオキサレートを加水分解性調整用のポリマーとして用いた場合には、上記でも述べたように、少量の使用で目的を達成でき、ポリ乳酸の厚い被覆層で保護されるため、地上での使用に際しての加水分解(初期加水分解)を有効に抑制できるという利点があるものの、その一部は粒子表面に露出してしまうため、地上での加水分解を完全に防止できるというわけではない。しかるに、上記のようなポリオキサレート共重合体の使用は、その一部が粒子表面に露出していたとしても、その加水分解を有効に抑制でき、地上での使用に際しての粒子の融着をより一層効果的に防止することができ、その操作性を大きく向上させることが可能となるわけである。
【0027】
本発明において、上述した分岐構造が導入されたポリオキサレート共重合体は、直鎖状に連なるオキサレート主エステル単位と、3官能以上のアルコール若しくは酸から誘導される分岐状エステル共重合単位を含んでおり、その重量平均分子量(Mw)は、前述した範囲内にあり、特に、5000〜200000の範囲にある。
【0028】
かかるポリオキサレート共重合体において、直鎖状に連なるオキサレート主エステル単位は、下記式(1):
【化1】
式中、
nは、正の数である、
Aは、2価の有機基である、
で表される。
【0029】
かかる主エステル単位において、2価の有機基Aは、シュウ酸とエステル形成可能なジアルコールの有機残基である。
上記主エステル単位の導入に使用されるシュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジアルキルが好ましく、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸プロピル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。最も好ましくは、エステル交換性等の観点から、シュウ酸ジメチル及びシュウ酸ジエチルである。
また、主エステル単位の導入に使用されるジアルコールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノールなどを例示することができる。これらの中では、長期加水分解性に優れ、環境に対する影響が少ないことなどから脂肪ジアルコール、特に直鎖の2価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオールである。特に、分岐状エステル共重合単位の導入による初期加水分解性抑制効果が高いという観点から、ブタンジオールが最適である。
さらに、主エステル単位中には、目的とする加水分解性が損なわれない範囲の、例えばシュウ酸当り20モル%以下、特に5モル%以下の量で、脂肪族環や芳香族環を有するジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸やフタル酸など)が共重合されていてもよい。
【0030】
また、分岐状エステル共重合単位は、例えば、下記式(2)或いは(3):
P−(O−CO−CO)−r (2)
Q−(O−A−O)−r (3)
上記式中、
Pは、分岐状エステル共重合単位の導入に使用される3官能以上のアルコールの残
基であり、
Qは、分岐状エステル共重合単位の導入に使用される3官能以上の酸の残基であり

Aは、前記式(1)と同様、2価の有機基を示し、
rは、3官能以上のアルコールまたは酸の価数である、
で表される。
即ち、このような分岐状共重合単位が直鎖状主エステル単位中に導入されて分岐構造が形成されているため、このポリオキサレート共重合体は、初期加水分解性が抑制されながら、長期加水分解性が高いレベルに維持されるのである。
【0031】
上記の分枝状エステル共重合単位(以下、単に分岐状単位と飛ぶことがある)において、3官能以上のアルコールの残基(式(2)中のP)及び3官能以上の酸の残基(式(3)中のQ)の炭素数は何れも18以下であることが望ましい。これら残基P,Qが長鎖であると、分岐構造による初期加水分解性低下効果が希薄となるからである。
【0032】
上記のような炭素数を有する残基を備えた3官能以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)等のテトラオールなどに代表される多官能脂肪族アルコールを例示することができ、3官能以上の酸としては、プロパントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、トリメリット酸などの芳香族トリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの酸無水物等を挙げることができる。
【0033】
本発明においては、特に長期の加水分解性を損なわないという観点から、3官能以上のアルコールにより分岐状エステル共重合単位が導入されていることが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールにより直鎖状エステル共重合単位が導入されていることが好ましい。
【0034】
上述した分岐状単位は、直鎖状に連なる主エステル単位当たり0.01〜1.0モル%の量で導入されていることが好ましい。即ち、この分岐状エステル共重合単位の量が少ないと、初期加水分解性特性の低減効果が小さくなってしまい、分岐状単位が、必要以上に多量に導入されると、この分岐状単位に連なる直鎖状主エステル単位の分子量が小さくなり、この結果、分岐構造による初期加水分解特性低減効果が低くなってしまい、さらには粒子に含まれる溶媒不溶解分量(ゲル分率)が多くなり、成形性が大きく低下し、例えば粒状への成形が困難となるおそれがある。
【0035】
上記のような分岐構造が導入されているポリオキサレート共重合体は、直鎖状の主エステル単位形成用のシュウ酸源(シュウ酸もしくはシュウ酸エステル)と2価アルコール成分、分岐状単位形成用の多価アルコール成分もしくは多塩基酸成分、及び触媒を用い、前述した割合で分枝状単位が形成されるように、公知の方法で重縮合反応を行うことにより製造される。
ここで、触媒としては、P,Ti、Ge、Zn、Fe,Sn、Mn,Co,Zr,V,Ir、La,Ce,Li,Ca、Hfなどの化合物が代表的であり、特に有機チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく、例えばチタンアルコキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレートなどが高活性で好適である。
なお、重縮合反応においては、熱劣化防止のため、必要であれば耐熱剤を添加してもよい。また重合を止める際に触媒活性失活剤を添加してもよい。
【0036】
前述した直鎖状の主エステル単位からなるポリオキサレートを合成した後、後工程で、分岐状単位用の多官能アルコールや多塩基酸成分を加え、重縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより、目的とする本発明のポリオキサレート共重合体を製造することもできる。
この後工程では、押出機を用いて、直鎖状のポリオキサレートを溶融中に、3官能以上の多官能成分を加えて溶融混合することにより、多官能成分を導入することもできる。
【0037】
上記のようにして得られるポリオキサレート共重合体は、共重合エステル単位として前述した分岐状単位が導入されているが、その導入量の調整により、23℃のジクロロメタンで測定した溶媒不溶分(ゲル分率)が1質量%以上70質量%以下の範囲であることが初期加水分解特性を低減する上で有利である。好ましくは10%以上70%以下がよく、より好ましくは30%以上70%以下である。先にも述べたように、分岐状単位の導入量が少なく、この溶媒不溶分が上記範囲よりも小さい場合、及び分岐状単位の導入量が多く、この溶媒不溶分が上記範囲よりも大きい場合の何れにおいても、初期加水分解特性の低減効果は小さくなってしまう。
【0038】
3.その他の配合剤;
本発明の加水分解性粒子には、上記のようなマトリックス樹脂及び加水分解性調整用のポリマーに加えて、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0039】
<加水分解性粒子の形態>
本発明の加水分解性粒子は、上述したように、例えばポリ乳酸等の難加水分解性樹脂をマトリックスとし、このマトリックス樹脂中に、ポリオキサレートなどの加水分解性調整用ポリマーが分散された分散構造を有するものであるが、高い真球度を有しており、例えば、短径/長径比で表される真円度が0.8以上、特に極めて1に近い。
また、この粒子は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準での平均粒径(D50)が300〜1000μmの範囲にある。
【0040】
即ち、本発明の加水分解性粒子は、上記のように高い真球度を有していると同時に、粒子の大きさが、水圧破砕に際して坑井中に形成される亀裂内に導入するに適した大きさを有している。このため、水圧破砕に際して、坑井中に形成される亀裂内に導入され、亀裂を一時的に閉塞するダイバーティングエイジェントなどと呼ばれる剤として、優れた機能を示す。
例えば、真球度が上記範囲よりも低いと、亀裂内に導入できたとしても、亀裂を閉塞する機能が乏しく、亀裂内からのガスの流出を有効に抑制できず、流体圧によってさらに亀裂を形成する作業に支障を来してしまう。また、粒子径が上記範囲よりも大きいと、亀裂内への粒子の導入が困難となり、さらに、粒子径が上記範囲よりも小さいと、亀裂を効果的に閉塞することが困難となってしまうし、さらに、その取扱いに際して、粉塵飛散などの問題を生じ易くなってしまう。
【0041】
このように、本発明の加水分解性粒子は、水圧破砕に際して、水圧破砕のための掘削用分散液に添加して使用する用途に適した形態を有しているが、このような粒子形態に比して、その安息角は50度以下と極めて小さい(測定法は、後述する実施例参照)。
【0042】
<加水分解性粒子の製造>
ところで、上記のような高い真球度と適度な大きさの粒子径を有する加水分解性粒子は、単管構造または多重管構造の滴下ノズルを用いての滴下方式によって製造され、これ以外の方法では、製造が困難である。
例えば、加水分解性粒子を形成する樹脂組成物(マトリックス樹脂、加水分解性調整用ポリマー及び適宜配合される配合剤を含む混合物)を用いての機械的粉砕では、当然のことながら、粒子の真球度が低くなってしまう。
また、真球状の粒子を製造する方法として、貧溶媒を用いるような方式やスプレー噴霧などの方式では、粒径が微細になりすぎてしまい、さらに、樹脂の押し出しによるストランドカットでも、粒子径が著しく粗大になってしまう。
このように、従来から一般的に採用されている方式では、粒子径を真球状に成形できたとしても、粒径を前述した範囲(300〜1000μm)に調整することができない。
【0043】
本発明の加水分解性粒子は、滴下ノズルを用いての滴下方式を用いて製造されるが、このような滴下方式に用いる滴下式粒子製造装置は、図1に示されているような単管構造のものと、図2に示されているような多重管構造のものとがある。
【0044】
図1の単管構造のものでは、この5で示される単管のノズルにA液が供給され、その先端からA液の液滴7が滴下され、液滴状態を維持したまま、受け槽9に滴下される。
【0045】
上記のA液として、前述した加水分解性粒子を形成する樹脂組成物(マトリックス樹脂、加水分解性調整用ポリマー及び適宜配合される配合剤を含む混合物)の液体が使用される。このような加水分解性粒子の液(A液)として、各成分を溶融混合することにより調製された溶融物を直接単管ノズル5に供給することも可能であるが、粘度が高いため、所定の粒径に調整された液滴7を滴下するための流量調整などが困難となるため、所定の有機溶媒を用いて粘度が10〜10000mPa・sec(25℃)程度に調整し、この加水分解性粒子の有機溶媒溶液をA液として供給することが好ましい。
ここで使用される有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、トルエン、酢酸エチル等を挙げることができる。濃度は10%から70%の範囲にあるのが好ましい。
【0046】
上記のようにして単管ノズル5の先端から滴下された液滴は、受け槽9中に滴下される。受け槽9には、水、メタノール等の加水分解性粒子の貧溶媒が張られており、この場で析出し固化し、目的とする粒径を有する加水分解性粒子11を得ることができる。
【0047】
また、図2の多重管構造のものは、その滴下ノズル5が芯管1と外管3とから形成されており、上記と同様、該ノズル5から滴下された液滴7は、受け槽9に滴下される。
【0048】
即ち、この装置では、滴下ノズル5の芯管1にA液が供給され、外管3にはB液が供給され、従って、このノズル5から滴下される液滴7は、A液をコアとし、B液をシェルとするカプセル構造を有している。
【0049】
本発明では、液滴7のコアを形成するA液として、図1の場合と同様、前述した加水分解性粒子を形成する樹脂組成物の液が使用され、液滴7のシェルを形成するB液としては、アルギン酸ナトリウムの水溶液が使用される。即ち、このB液が、加水分解性粒子を形成する樹脂組成物の融着を防止し、一定の粒径保持する粒径調整剤として機能するわけである。
【0050】
上記のA液(加水分解性粒子形成用樹脂組成物の液)は、各成分を溶融混合することにより調製され、この溶融物を直接A液として供給することも可能であるが、粘度が高いため、所定の粒径に調整された液滴7が形成されるように、滴下するための流量調整などが困難となるため、前記と同様の揮発性有機溶媒を用いて粘度が10〜1000mPa・sec(25℃)程度に調整し、この溶液をA液として供給することが好ましい。
【0051】
このようなA液を芯管1に供給し、上記のアルギン酸ナトリウム水溶液をB液として供給して滴下することにより、A液をコアとし、B液をシェルとしてカプセル化された液滴7が形成されるわけであるが、この場合、カプセル化を有効に行うため、B液として使用するアルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は、10〜1000mPa・sec(25℃)程度となるよう調整されていることが望ましく、例えば、その水溶液濃度が1〜5質量%程度の範囲にあるのがよい。
また、上記のようなノズル5の先端の内径(芯管1及び外管3の内径)は、最終的に得られる粒子の径が前述した範囲となる程度の範囲に設定され、且つA液及びB液の供給速度も適宜の範囲となるように設定されるが、通常、A液の流量とB液との流量比は、適宜設定されていることが望ましい。
【0052】
上記のようにしてノズル5の先端から滴下された液滴7は、受け槽9中に滴下される。
受け槽9には、塩化カルシウム水溶液が張られており、これにより、アルギン酸カルシウムで覆われた加水分解性粒子の液滴10が析出する。このように析出した液滴10を、受け槽9’に張られているクエン酸ナトリウム水溶液に浸すことで液滴10からB液のシェルが除かれた粒子11が得られる。
【0053】
図1及び図2の滴下ノズルを用いて得られるポリオキサレート粒子11は、何れも、受け槽9或いは9’から直ちに回収され、溶媒を含む場合には、適宜、水に投入して溶媒を除去する。この操作は、図2の装置を用いてカプセル化を行っている場合には、被覆しているアルギン酸ナトリウムを除去する前に行ってもよい。
また、一般的には、得られた粒子は、適宜、篩にかけて所定粒径のものを捕集し、さらに、適宜、熱風乾燥することにより、目的とする加水分解性粒子として使用に供される。
【0054】
尚、上述した説明では、シェルを形成するB液として、アルギン酸ナトリウム水溶液を用いた例を示したが、勿論、これに限定されるものではなく、A液の液滴の周囲を安定に被覆し、A液同士の融着を防止得る適当な粘度を有する塩類等の水溶液であれば、B液として使用することができる。また、B液の種類に応じて、受け槽9に張る水溶液の種類も適宜のものを選択することができる。
【0055】
<用途>
本発明の加水分解性粒子は、粉塵飛散などの不都合を有効に回避でき、地上での融着等が有効に防止されているため、その取扱いが容易であり、しかも、水圧破砕に際して形成される亀裂内に導入し且つ亀裂を一時的に閉塞する機能を有しており、一定期間経過後は加水分解して消失する。
従って、地下資源の採掘現場で用いられるフラクチュアリング流体などの掘削用分散液の調製に好適に使用され、特にシェールガスの採掘のため、砂粒などのプロパントと共に、水を媒体とする水性液に添加され、フラクチュアリング流体として、好適に使用される。
【実施例】
【0056】
<融点測定>
装置:セイコーインスツルメント株式会社製DSC6220(示差走査熱量測定)
試料調整:試料量5〜10mg
測定条件:窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で0℃〜250℃の範囲で測定
融点はピークトップで求めた。
【0057】
<分子量の測定>
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC
検出器:示差屈折率検出器RI
カラム:Shodex HFIP-LG(1本)、HFIP-806M(2本)(昭和電工)
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
試料調製:
試料約1.5mgに溶媒5mLを加え、室温で緩やかに攪拌した(試料濃度0.03%)。目視で溶解していることを確認した後、0.45μmフィルターにて濾過した。全ての試料について、調製開始から約1時間以内に測定を行った。スタンダードはポリメチルメタクリレートを用いた。
【0058】
<PEOxの重合>
マントルヒーター、液温の温度計、攪拌装置、窒素導入管、留出カラムを取り付けた1Lのセパラブルフラスコに、
シュウ酸ジメチル 472g(4mol)
エチレングリコール 297g(4.8mol)
テトラブチルチタネート 0.40g
を入れ、窒素気流下でフラスコ内の液温を120℃に加温し、常圧重合を行った。
メタノールの留去が開始後、少しずつ液温を200℃まで昇温し常圧重合させ、最終的に260mlの留去液を得た。
その後、フラスコ内の液温を200℃、0.1kPa〜0.8kPaの減圧度で減圧重合させた。得られたポリマーを取り出し、クラッシャーで造粒し、120℃で2時間真空加熱処理し結晶化させた。
得られたポリマー(PEOx)の融点は180℃、重量平均分子量は70000であった。
【0059】
<実施例1>
PEOxの含有量が5wt%になるように、ポリ乳酸0.95g、PEOx0.05g、HFIP溶媒15mlを20mlのバイアル瓶に加え、溶解させた。溶解後、テフロンシャーレにキャストし、フィルムを作製した。
得られたフィルムを37℃の水中に2日間浸漬させ、表面のPEOxを加水分解させた。そのフィルムをSEM観察した(図1)。
図1の黒い箇所はPEOxが抜けてできた空間で、ポリ乳酸のマトリックス樹脂中に、平均粒径2μmのPEOx粒子が分布していたことを確認した。
【符号の説明】
【0060】
1:芯管
3:外管
5:滴下ノズル
7:液滴
9:受け槽
図1
図2
図3