特許第6834212号(P6834212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6834212活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク、組成物収容容器、2次元または3次元の像形成装置、像形成方法、硬化物及び構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834212
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク、組成物収容容器、2次元または3次元の像形成装置、像形成方法、硬化物及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/20 20060101AFI20210215BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20210215BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210215BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   C08F220/20
   C09D11/30
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
   B41J2/01 109
   !B41M5/00 120
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-142032(P2016-142032)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2017-95676(P2017-95676A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2019年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-221842(P2015-221842)
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 美穂子
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 正行
(72)【発明者】
【氏名】宮明 杏実
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】熊井 未央
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199924(JP,A)
【文献】 特開2015−155530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220
C09D11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線重合性化合物及び光重合開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型組成物であって、
前記光重合開始剤を活性エネルギー線硬化型組成物100質量%に対し、5〜20質量%含有し、
前記活性エネルギー線重合性化合物として、単官能モノマー、二官能モノマー、三官能モノマーを下記(1)及び(2)の条件を満たすように含有し、
前記単官能モノマーが、アダマンチル(メタ)アクリレート及び/又はテトラヒドロフルフリルメタクリレートであり、前記二官能モノマーは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及び/又は1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートであり、前記三官能モノマーは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである、
かつ下記硬化条件で硬化して得られる硬化物の延伸性が100%以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
(1)[単官能モノマー由来官能基数]>[二官能モノマー由来官能基数]>[三官能モノマー由来官能基数]
(2)[N官能モノマー由来官能基数]/([単官能モノマー由来官能基数]+[二官能モノマー由来官能基数]+[三官能モノマー由来官能基数])で表される官能基比率の標準偏差が0.003乃至0.030である。
ただし、N=単、二、三である。
(硬化条件)
厚みが100μmのポリカーボネート基材上に活性エネルギー線硬化型組成物を平均厚みが10μmになるように吐出し、吐出直後に光量1,500mJ/cmで紫外線を照射して硬化する。
【請求項2】
前記標準偏差が0.009乃至0.014であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
六官能モノマーを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記六官能モノマーが、ソルビトールヘキサアクリレートであることを特徴とする請求項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の組成物からなる活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の組成物が収容された組成物収容容器。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の組成物が収容された収容部と、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、を備える2次元または3次元の像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程を有する2次元または3次元の像形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項10】
基材と、請求項1乃至のいずれかに記載の組成物を硬化させてなる硬化物と、を有する構造体。
【請求項11】
ポリロタキサンを1質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク、組成物収容容器、2次元または3次元の像形成装置、像形成方法、硬化物、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水系及び溶剤系のインクジェットインクを比較的揮発性の低い活性エネルギー線硬化型組成物を用いたインクジェットインクに置き換えることが検討されている。
【0003】
最近では、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクには、後に延伸加工や打ち抜き加工などが施される基材にもインクジェット方式で印刷できるようにするという要求も多くなっている。
【0004】
特許文献1には、基材への密着性、硬度、及び延伸性を兼ね備えた硬化物を形成する活性エネルギー線硬化型インクが提案されている。この活性エネルギー線硬化型インクは、単独重合体のガラス転移温度が90℃以上の単官能重合性モノマーを含み、ポリカーボネート基材上に平均厚み10μmの塗膜を形成し、15秒間後に、該塗膜に光量1,500mJ/cmの活性エネルギー線照射を行い硬化させた時に、1)引張り試験機を用いて、引張り速度20mm/min、温度180℃で延伸した場合の前記硬化物の延伸性=(引張試験後の長さ)/(引張試験前の長さ)が2以上であり、2)JIS K5400の碁盤目試験に準じて測定した、前記ポリカーボネート基材と前記硬化物の密着性が70以上である硬化物を与えるものである。
【0005】
特許文献2には、インク化が容易で、低粘度で、安全性が高く、かつ硬化性、基材への密着性に優れ、その硬化物が、皮膜強度と寸法安定性のバランスに優れた活性エネルギー線硬化性インクジェットインク組成物が提案されている。この活性エネルギー線硬化性インクジェットインク組成物は、活性エネルギー線により硬化可能な液状の重合性モノマーを含み、25℃における粘度が、3〜70mPa・sであり、前記重合性モノマーは、(a)分子内に6個以上のエチレン性二重結合基を有する六官能以上の多官能性モノマーと、(b)前記(a)の多官能性モノマー100質量部に対して、分子内に2個のエチレン性二重結合基を有する二官能性モノマーを60〜500質量部と、(c)前記(a)の多官能性モノマー100質量部に対して、分子内に1個のエチレン性二重結合基を有する単官能性モノマーを0〜15質量部とを含むものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の単官能の活性エネルギー線重合性化合物と多官能の活性エネルギー線重合性化合物とを用いた活性エネルギー線硬化型組成物による硬化膜は、塗膜硬度が高い。このため、印刷後に延伸加工が行われると、硬化膜が基材の変形に追従できずに、印刷物の延伸加工性が低くなるという問題がある。 また、従来の活性エネルギー線硬化型組成物は従来の溶剤型インクに比べて延伸加工性大きく劣ってしまう結果、特に成形加工を要求される高品質用途においては、代替を期待されながらも大幅な切り替えが進まないのが現状である。
本発明は、優れた延伸性及び耐溶剤性を兼ね備えた硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、活性エネルギー線重合性化合物を少なくとも含有してなり、前記活性エネルギー線重合性化合物として、単官能モノマー、二官能モノマー、三官能モノマーを下記(1)及び(2)の条件を満たすように含有し、かつ硬化物の延伸性が100%以上であることを特徴とする。
(1)[単官能モノマー由来官能基数]>[二官能モノマー由来官能基数]>[三官能モノマー由来官能基数]
(2)[N官能モノマー由来官能基数]/([単官能モノマー由来官能基数]+[二官能モノマー由来官能基数]+[三官能モノマー由来官能基数])で表される官能基比率の標準偏差が0.003乃至0.030である。
ただし、N=単、二、三である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、優れた延伸性、及び耐溶剤性を兼ね備えた硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
図3図3は本発明におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を構成するモノマーについて説明する。
<単官能モノマー>
単官能モノマーとしては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなどが挙げられる。 これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
<二官能モノマー>
二官能モノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。 これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
<三官能モノマー>
三官能モノマーとしては、例えば、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、リアリルトリメリテートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
<六官能モノマー>
インクに六官能モノマーを配合することにより硬化物の耐溶剤性を向上させることができる。
六官能のモノマーの全モノマー中の含有量は1〜5質量%であることが好ましい。
六官能モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。良好な架橋となることからソルビトールヘキサアクリレートが最も望ましい。
【0014】
<官能基比率>
本発明における「官能基比率」は下記式で定義されるものである。
[N官能モノマー由来官能基数]/([単官能モノマー由来官能基数]+[二官能モノマー由来官能基数]+[三官能モノマー由来官能基数])
但し、N=単、二、三である。
単官能モノマー由来官能基比率、二官能モノマー由来官能基比率、三官能モノマー由来官能基比率の和は常に1であり、これらの標準偏差は0.003乃至0.030であり、0.009乃至0.014が好ましい。この標準偏差の値は延伸性と耐溶剤性が両立できる範囲になっている。
【0015】
<モノマー分析方法>
モノマー組成分析方法としては、例えばガスクロマトグラフ分析法がある。定性分析を行い、内容物からモノマーを特定し、検量線を引くことで定量分析できる。
【0016】
<活性エネルギー線>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0017】
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0018】
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1〜20質量%であることが好ましい。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。 分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<ポリロタキサン系樹脂>
ポリロタキサン系樹脂はスライドリングマテリアルとも呼ばれ、シクロデキストリンなどの大環状化合物の穴を直鎖高分子の棒状の分子が貫通した構造であり、直鎖高分子の両末端にアダマン基のような嵩高い部位が結合しており、この嵩高い部位がストッパーとなって大環状化合物が抜けないようになっている樹脂である。商品としてアドバンスドソフトマテリアル株式会社製、スーパーポリマーシリーズがある。従来の高分子に比べ、大環状化合物が自由にスライドできるため、延展性があり、破断しにくいという性質がある。中心高分子としてはポリエチレングリコール、ポリアルカン、ポリエステル、直鎖シリコーンなどがあり、大環状化合物としては、シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロシロキサンなどがある。樹脂同士の分子間力や耐久性から、ポリエチレングリコールとシクロデキストリンの組み合わせによるポリロタキサンが望ましい。
【0020】
<有機溶媒>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0021】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0022】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調整手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調整することができる。
【0023】
<粘度>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3〜40mPa・sが好ましく、5〜15mPa・sがより好ましく、6〜12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE−22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃〜65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM−150IIIを用いることができる。
【0024】
<用途>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、図2図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、図2は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、図3は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0025】
<組成物収容容器>
本発明の組成物収容容器は、活性エネルギー線硬化型組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0026】
<像の形成方法、形成装置>
本発明の像の形成方法は、少なくとも、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。さらに、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の活性エネルギー線硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の活性エネルギー線硬化型組成物とは組成が異なる第二の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の活性エネルギー線硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の活性エネルギー線硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下では、活性エネルギー線硬化型組成物を活性エネルギー線硬化型インクとして使用する場合について述べる。
【0028】
(実施例1〜14及び比較例1〜5)
−活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの作製−
下記表1に記載の原料を順次攪拌しながら添加した。1時間の攪拌の後、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、ヘッド詰まりの原因となる粗大粒子を除去し、実施例1〜14及び比較例1〜5の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを作製した。
なお、表1中における、活性エネルギー線重合性化合物の「投入量」の数値は「質量部」を示す。
また、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−5−ホスフィンオキシド及び1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパンを全モノマー量100部に対してそれぞれ5部ずつ添加した。ポリロタキサンはアドバンスドソフトマテリアル株式会社製、スーパーポリマーSH1310Pである。
【0029】
次に、作製した各活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用い、以下のようにして、各硬化物を作製した。
各活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをGEN4ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置により、平均厚みが10μmになるようにポリカーボネート基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)上に吐出した。 吐出の直後、フュージョンシステムズジャパン社製UV照射機LH6により光量1,500mJ/cmで紫外線を照射し、各硬化物を得た。
得られた各硬化物について、以下のようにして、延伸性、耐溶剤性を評価した。 結果を表2に示した。
【0030】
<延伸性評価>
本発明における延伸性は180℃破断伸び(引張り試験)で評価するものとする。
ダンベル状の硬化物について、引張り試験機(オートグラフ AGS−5kNX、株式会社島津製作所製)を用い、引張り速度:20mm/min、温度180℃、サンプル:JIS K6251 ダンベル状(6号)の条件で測定し、下記計算式に基づいて延伸性を評価した。
[(引張試験後の長さ−引張試験前の長さ)/引張試験前の長さ]×100
【0031】
<耐溶剤性>
スライドガラス(26×76mm、厚さ0.9〜1.2mm)を450℃/3分熱洗浄し、スライドガラスの質量を測定する。
このスライドガラスにインクをインクジェット印刷してベタ塗膜を作製し、0.3J/cmの積算光量(硬化により多くの光量が必要な場合は必要最低限の光量)で光硬化させる。
この硬化物を形成したスライドガラスの質量を測定して、計算式[(スライドガラス+硬化物)質量−スライドガラス質量]に基づいて試験前の硬化物の質量(W1)を算出する。
次いで、硬化物を形成したスライドガラス全体を約200mLの溶剤に浸し、5℃で18時間放置する。硬化物を形成したスライドガラスを取り出し、剤で十分に洗浄後、乾燥させてその質量を測定し、計算式[(スライドガラス+硬化物)質量−スライドガラス質量]に基づいて試験後の硬化物の質量(W2)を算出する。
次いで、以下の計算式に基づいて硬化物の質量変化率を算出する。質量変化率が小さいほど耐溶剤性が良好であることを示している。
質量変化率(%)=[(W1−W2)/W1]×100
溶剤としてはアセトンとトルエンを用い、各溶剤について試験を行った。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【符号の説明】
【0034】
1 貯留プール(収容部)
3 可動ステージ
4 活性エネルギー線
5 活性エネルギー線硬化型組成物
6 硬化層
21 供給ロール
22 被記録媒体
23a、23b、23c、23d 印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
38 ステージ
39 像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2015−83656号公報
【特許文献2】特開2011−252053号公報
図1
図2
図3