特許第6835593号(P6835593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6835593改善されたリチウム金属酸化物カソード材料及びそれらの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835593
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】改善されたリチウム金属酸化物カソード材料及びそれらの作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20210215BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210215BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   C01G53/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-567492(P2016-567492)
(86)(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公表番号】特表2017-517847(P2017-517847A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015030746
(87)【国際公開番号】WO2015183568
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】62/003,174
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ユーフア・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ムラリー・ジー・セイヴァナヤガム
(72)【発明者】
【氏名】ジュイ・チン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジアンシン・マ
(72)【発明者】
【氏名】リアン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】前田 英明
(72)【発明者】
【氏名】イン−フェン・フー
【審査官】 森 透
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0012483(KR,A)
【文献】 特表2013−501317(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108513(WO,A1)
【文献】 特開2014−067694(JP,A)
【文献】 国際公開第01/004975(WO,A1)
【文献】 特開2012−221855(JP,A)
【文献】 特開2013−098047(JP,A)
【文献】 特開2007−119340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池カソードを作製するのに有用な、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成るリチウム金属酸化物粉末を作製する方法であって、
(a)Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、Ni及びCoのないMn微粒子前駆体と、を含む前駆体混合物であって、前記Ni及びCoを含む前駆体微粒子が、0.1〜0.8マイクロメートルのD50、0.05〜0.3マイクロメートルのD10、0.35〜1.5マイクロメートルのD90を有する非凝集一次粒径を有すると共に本質的に3マイクロメートルよりも大きな粒子を有さず、前記Mn微粒子前駆体は、0.35〜1.5マイクロメートルのD50を有する非凝集一次粒径を有する、前駆体混合物を提供することと、
(b)前記前駆体混合物を凝集させて、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、前記Mn微粒子前駆体との一次粒子から成る、二次粒子を形成することと、
(c)前記二次粒子を酸素含有雰囲気下で、前記リチウム金属酸化物を形成する温度に及び時間で加熱することと、を含み、
前記加熱は890℃〜970℃の最高温度へであり、前記時間は前記最高温度において5分〜10時間であり、
前記雰囲気は、雰囲気中に酸素が0.01〜0.3気圧の酸素分圧の量で存在する、酸化雰囲気であり、
前記Mn微粒子前駆体には、Liがない、方法。
【請求項2】
前記加熱が、一定期間にわたって保持される最高温度及び少なくとも1つのより低い中間温度へである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Mn微粒子前駆体は、0.60〜1.5マイクロメートルのD50を有する非凝集一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素分圧が、前記加熱の間に減少し、前記Mn微粒子前駆体は、0.95〜1.5マイクロメートルのD50を有する非凝集一次粒径を有する、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池(LIB)において使用するための改善されたリチウム金属酸化物(LMO)カソード材料を作製する方法及びそれらの作製方法に関する。特に、本発明は、金属がNi、Mn、及びCoから成り、Niが、LMO中の該金属の40モル%以上である、LMOに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、過去数十年にわたって携帯型電子機器において、及びより最近ではハイブリッドまたは電気自動車において使用されている。当初、リチウムイオン電池は、リチウムコバルト酸化物カソードを最初に利用した。費用、毒性問題、及び限定された容量に起因して、他のカソード材料が開発されてきたか、または開発途上にある。
【0003】
開発されている及び商業的に利用されている材料のうちの1つの分類は、ニッケル、マンガン、及びコバルトのうちの2つ以上から成る、特にこれらの金属のうちの3つ全てが存在する場合の、リチウム金属酸化物(LMO)である。これらの材料は、一般に、単独の菱面体相を備える層状構造を呈し、それにおいて、Li/Liに対して約4.2ボルトの電圧充電されるときに最初の高い比充電容量(典型的には、155〜170mAh/g)が達成されている。残念ながら、これらの材料は、短いサイクル寿命、及び一定条件下での酸素発生によりもたらされる発火に関連する安全性の問題に悩まされている。
【0004】
Li/Liは、リチウム参照電極の酸化還元電位を表わし、それは、慣習的に0ボルトとして定義される。その結果、Li金属以外のアノードを使用すると、これらの電圧は低下することになり、この他のアノードとLi金属との電位差の要因となる。例示的には、十分に充電された黒鉛アノードが、Li/Liに対して約0.1Vの電位を有する。したがって、黒鉛アノードを有する電池内のカソードをLi/Liに対して4.25V充電するときに、セル電圧は約4.15Vになる。
【0005】
サイクル寿命は、一般に、最初の比容量の80%である比容量に達する前のサイクル(充電−放電)の数としてみなされる。これらの材料についての各サイクルは、典型的には、4.2ボルト〜2ボルトである。これらの電池はまた、同じ材料から作製されていても、1つの電池またはセルから別の電池またはセルの間で性能の不均一性に悩まされている。
【0006】
これらのLMOは、サイクル寿命などの1つ以上の特性を改善する、ドーパントまたはコーティングを含み得る。これらは、一般に、例えば、米国特許第6,964,828号、同第6,168,887号、同第5,858,324号、同第6,368,749号、同第5,393,622号、ならびに欧州特許公開第EP1295851号、同第EP0918041号、及び同第EP0944125号、ならびに日本特許公開第11−307094号によって記載されたもののように化学量論的または本質的に化学量論的である。
【0007】
これらのリチウム金属酸化物は、微粒子前駆体が、混合またはミリングされ、次いで、LMOを形成するための温度加熱される、固相合成法によって作製されてきた。この方法の例は、米国特許第6,333,128号、同第7,211,237号、及び同第7,592,100号に記載されるが、米国特許第7,592,100号(第7欄、第38行目〜第8欄、第43行目)に記載されるように、固相合成法は、単一相層状材料の作製の困難さ、及び非常に小さなサイズの粒子を使用することの要件が原因で、望ましくない。
【0008】
リチウム金属酸化物はまた、連続撹拌反応器内で複合前駆体を最初に沈殿させ、この複合前駆体化合物をその後、LMOを形成する温度リチウム化合物と共に加熱することによっても形成されてきた。これらの方法の例は、米国特許第7,592,100号及び同第6,964,828号ならびに日本特許公開第11−307094号によって記載される。複合酸化物を形成するための他の方法、例えば熱水法及びゾルゲル法などもまた、記載された。これらの例は、米国特許第7,482,382号及び欧州特許公開第EP0813256号に記載される。
【0009】
その結果、LMOは、連続撹拌反応器から沈殿され、次いでリチウムを含有する化合物と混合され、LMOを形成するために十分に加熱される複合金属化合物、「LMO前駆体」から作製される傾向があった。それらは、一般に、前駆体の単純な乾燥混合で直面する問題、例えば、化学的構造、一次粒度/粒径、及び二次粒径の不均一性などを回避するためにこのように作製されている。
【0010】
残念ながら、連続撹拌反応器は、所望される二次粒径を達成するための長い反応耐性時間、それらが連続的に使用されることを妨げる変動する反応条件(例えば、経時的な二次粒径の増大)、及びある生産規模についてLMOを作製するのに必要な大きなタンクに起因する大きな資本投資を要求する。同様に、沈殿プロセスの固有の制約が原因で、形成されるLMOは非常に類似し、それらは、特に高いNi含有量を有する組成について低いカソード密度及び低い安全性に悩まされるLMOを形成する傾向がある。
【0011】
したがって、高電圧、高いエネルギー容量、より大きなサイクル能力、及び改善された安全性を有するLIBを提供するLMO、ならびにそのLMOを作製するための方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0012】
出願人らは、LIBが、改善された安全性、高いサイクル性、高いエネルギー密度、及び高い作動電圧を有することを可能にするLMOを実現する、LMOを作製するための方法を発見した。
【0013】
本発明の第1の態様は、リチウムイオン電池カソードを作製するのに有用なLi、Ni、Mn、Co、及び酸素から成るリチウム金属酸化物粉末を作製する方法であって、
(a)Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、Ni及びCoのないMn微粒子前駆体と、を含む前駆体混合物を提供することであって、Ni及びCoを含む前駆体微粒子が、0.1〜0.8マイクロメートルのD50、0.05〜0.3マイクロメートルのD10、0.35〜1.5マイクロメートルのD90を有する非凝集一次粒径を有すると共に本質的に3マイクロメートルよりも大きな粒子を有しない、前駆体混合物を提供することと、
(b)前駆体混合物を凝集させて、Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、Mn微粒子前駆体との一次粒子から成る、二次粒子を形成することと、
(c)二次粒子を酸素含有雰囲気下で、リチウム金属酸化物を形成する温度及び時間加熱することと、を含む、方法である。
【0014】
第1の態様の方法は、驚くべきことに、Ni含有量が多いときでさえも安全性を改善し、サイクル寿命を増やし、及びLMOから作製されるLIBのエネルギー容量を増大させるLMOを形成することができた。発明を決して限定することなく、最終的な一次粒径がNi及びCo前駆体サイズと相関関係があるという発見が、かなりの量の0.5マイクロメートルよりも大きい粒子を有するという望ましさと共に、従来には達成できなかった特定の一次粒径、一次粒子化学組成(すなわち、より安全な勾配構造を可能にする)、二次粒子の密度、ならびに二次粒径及び分布を有するLMO形成を可能にしたと考えられている。これらの全ては、大部分が、LIBの良好なレート性能を犠牲にすることなく達成される。
【0015】
本発明の第2の態様は、二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、表面Mn/Ni比がバルクMn/Ni比よりも大きいように、リチウム金属酸化物がバルクMn/Ni比を有すると共に一次粒子が表面Mn/Ni比を有する、リチウム金属酸化物である。
【0016】
本発明の第3の態様は、二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、二次粒子が、最大でも約5%の多孔率を有する、リチウム金属酸化物である。
【0017】
本発明の第4の態様は、二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、二次粒子が、10〜35マイクロメートルのD50、6〜10マイクロメートルのD10、20〜45マイクロメートルのD90を有すると共に本質的に100マイクロメートルよりも大きい粒子を有しない、リチウム金属酸化物である。本発明のLMOは、加熱すること及び加熱後に二次粒子を分離するために軽く破砕することのすぐ後にそれらの構造を維持する、例えば噴霧乾燥などによって形成される、球状二次粒子を作製することができることが発見された。好適な実施形態では、本質的に約5マイクロメートルの球相当径よりも小さな二次粒子がないことが好ましい。これは、例えば、サイクル寿命を減らすと考えられている、例えば、破砕された二次粒子の形成及び個別の一次粒子の存在を回避する。
【0018】
本発明の第5の態様は、前の態様のリチウム金属酸化物及び金属箔に付着されたリチウム金属酸化物以外のリチウム金属カソード材料のうちのいずれか1つのリチウム金属酸化物の層を備えるカソードである。驚くべきことに、本発明のLMO、特に本発明の第3及び第4の態様の特徴を表わすものを利用するときに、他の望ましい電池特徴、例えばレート性能などに有害に影響を及ぼさずに、電池容量の大幅な増大を可能にする高密度カソードが作製され得ることが発見された。特定の実施形態では、本発明の第4の態様のLMOが、凝集されない(すなわち、個別の一次粒子である)より少ない量のLMOと混合される。別の実施形態では、LMOが、リチウム金属カソード材料、例えばリチウム金属リン酸塩などと混合され、それは、驚くべきことに、良好な電気化学性能及びなお更に改善された安全性能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のリチウム金属酸化物の二次粒子の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本発明のリチウム金属酸化物の二次粒子の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的に、リチウム金属酸化物バルク化学構造が、式
Li
によって表わされ、ここで、0.8<x<1.15、yは1であり、金属は、Ni、Co、及びMnから成る。望ましくは、xは、0.85<x<1.1または0.9<x<1.05である。驚くべきことに、Liのわずかな欠如が、特に、高いNi濃度が存在しているときに(例えば、Niが0.55以上であるときに)望ましい可能性があることが発見された。Liが電池に使用されたすぐ後(すなわち、充電のすぐ後)に、Liの量は、ちょうど与えられたLiから減少され、充電のすぐ後に、Liは、上記式の量の近く増加されることが理解される。
【0021】
好適な実施形態では、Ni、Mn、及びCoの量は、Ni1−a−bMnCoによって表わされここで、0.1≦a≦0.9及び0≦b≦0.8である。好適な実施形態では、a及びbは、0.1≦a≦0.4及び0.1≦b≦0.4、更により好ましくは0.1≦a≦0.25及び0.1≦b≦0.25である。好適な実施形態では、Ni/(Co+Mn)の比は、0.5〜9、より好ましくは1〜3である。
【0022】
LMOはまた、1つ以上の特性を改善する少量のドーパント、一例として、フッ素または他の金属を含んでもよいことが理解される。例示的なドーパント金属は、限定されるものではないが、Al、Ti、Mg、Ca、In、Ga、Ge、Si、またはそれらの組み合わせを含む。同様に、リチウム金属酸化物はまた、それらが例えば上記ドーパント金属の酸化物などでドープされた後に、1つ以上の特性を改善するために様々なコーティングでコートされてもよい。かかるドーパントは、一般に、LMO中に存在するドーパント金属ならびにNi、Mn、及びCoの10%の分子量で存在する。
【0023】
LMOは、典型的には、0.1のCレートにおいて3〜4.3Vまたは4.5Vボルトで放電されるときに、少なくとも約150〜210mAh/gの典型的な形成方法によって4.3Vまたは4.5Vボルト最初に充電された後の比容量を表わす。1のCレートは、前述のボルト数間の1時間における充電または放電を意味し、C/10は、充電または放電が10時間に匹敵するレートであり、10Cレートは、6分に匹敵する。
【0024】
X線回折によって分析されるLMOのバルク結晶構造は、Delmas,C.et al.,Solid State Ionic 3/4(1981)165−169及びJarvis,K.A.et al.,Chem.Mater.2011,23,3614−3621にそれぞれ記載されるような、単一O3相(すなわち、R−3m空間群)を本質的に表す。
【0025】
繰り返して言うと、出願人らは、高濃度のNiでさえも、優れた容量、サイクル寿命、LMOの安全性を有するLMOを形成するための方法を発見した。特に、Ni、Co、及びMnから成るLMOの一次粒子の形成は、Ni及びCo前駆体の前駆体サイズ及び加熱のすぐ後の最初のNi及びCo含有化合物中へのMnの吸収率によって少なくとも部分的に制御されることが考えられていることが発見された。これは、LMOが例えば沈殿プロセスなどの他のプロセスから作製されるときに一般に見られる、LMO一次粒子の過度の粒成長及び硬い焼結、二次粒子間の硬い焼結、ならびにより大きな二次粒子の破砕の回避を可能にした。これらの発見は、今や、前述の所望特性を有するLMOの形成を可能にした。
【0026】
LMOを形成するように、前駆体微粒子混合物は、LMOを形成するために加熱される。前駆体混合物は、Ni及びCoのないMn微粒子前駆体と、Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、から成る。Mn微粒子前駆体は、少量のNi及びCo、例えば、容積組成に所望される微量のまたは最大でも約5モル%の量のNi及びCoなどを含有し得るが、好ましくは、本質的にNiまたはCoがMn微粒子前駆体内に存在しないことが理解される。同様に、Mn微粒子前駆体には、Liがないこともまた好ましい。Mn微粒子前駆体は、望ましくは、酸素を含有する。
【0027】
例示的なMn微粒子前駆体は、前述の水酸化物、酸化物、炭酸塩、水化形態、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む。好ましくは、Mn特定の前駆体が、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(II,III)、炭酸マンガン、またはそれらの組み合わせである。より好ましくは、Mn特定の前駆体が、酸化マンガン(III)、または炭酸マンガンである。
【0028】
前駆体微粒子混合物はまた、Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体を含有する。Liを有する微粒子前駆体には、微量以外に任意の他の金属がないことが望ましい。Ni及びCoを有する前駆体はまた、Mn微粒子前駆体について記載されるような様態で微量のMn及びLiを含有し得る。
【0029】
好適な実施形態では、前駆体微粒子混合物が、Ni微粒子前駆体、Co微粒子前駆体、及びLi微粒子前駆体と、Mn微粒子前駆体と、から成り、これらの微粒子前駆体のそれぞれが、他の微粒子前駆体のうちのいずれにおける金属も含有しない。別の好適な実施形態では、前駆体混合物が、Ni及びCo含有微粒子前駆体と、Li微粒子前駆体と、Mn微粒子前駆体と、から成り、これらの微粒子前駆体のそれぞれが、他の微粒子前駆体のうちのいずれにおける金属も含有しない。
【0030】
Li、Ni、Co、及び酸素から成る前駆体は、前述の水酸化物、酸化物、炭酸塩、水化形態、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。例示的な適切な前駆体は、例えば、炭酸リチウム、水酸化ニッケル、水酸化炭酸ニッケル四水和物、水酸化コバルト、及びニッケルコバルト水酸化物[NiCo(OH)]を含む。
【0031】
Ni及びCoから成る微粒子前駆体は、中間サイズ(D50)、D10、D90、及び最大サイズ限度によって与えられる一次粒径ならびにサイズ分布を有する必要がある。サイズは、顕微鏡写真技法によって測定され得る球体積相当径であるが、好ましくは、少ない固形物含有量における液体内への固形物の分散を使用するレーザー光散乱法によって測定される。D10は、粒子の10%がより小さな体積サイズを有するサイズであり、D50は、粒子の50%がより小さな体積サイズを有するサイズであり、D90は、粒子の90%がより小さな体積サイズを有するサイズである。
【0032】
他の望ましい結果を更に実現すると同時に、密に詰め込まれた二次粒子(低い多孔率を有する凝集された一次粒子)を有するLMOを形成するためにNi及びCoを含有する微粒子前駆体を有することが不可欠であることが分かった。
【0033】
Ni及びCoを有する前駆体微粒子のD50は、一般に、約0.1〜0.8マイクロメートルであり、D10は0.05〜0.3であり、D90は0.35〜1.5マイクロメートルであり、約3、約2.5または約2マイクロメートルよりも大きな粒子(D100とも呼ばれる)が本質的にない。限定するものではないが、例えば、二次粒子の上記の改善された詰め込みを実現すると共に、粒子表面においてより大きなMnを有する勾配構造を実現するように、かなりの量の0.5マイクロメートルよりも大きいサイズの粒子を有することが不可欠であると考えられている。好ましくは、D90が0.45、0.5、または0.55〜1.4、1.2または1マイクロメートルである。しかしながら、約2マイクロメートルよりも大きい粒子が多過ぎる場合、電気化学性能が悪くなることが明らかであり、または処理の容易さが損なわれる。
【0034】
Mn微粒子前駆体は、最終的なLMO一次粒径への実質的な影響を有しないことが明らかであるにもかかわらず、一般に、LMOを形成するために必要とされる加熱温度及び時間が大き過ぎて非実用的であるまたは所望されたLMOを形成することができない大き過ぎるサイズではない必要がある。典型的には、D50が約0.2〜約1.5マイクロメートルであり、D10が約0.05〜約1マイクロメートルであり、D90が約0.4〜約5マイクロメートルであり、D100が約1〜約10マイクロメートルである。好ましくは、D10が0.01〜0.8、0.5、0.2、または0.1であり、D50が0.2〜1.3、1.1、1、0.8、0.5、または0.4であり、D90が0.45、0.5、または0.55〜4、3、または1であり、D100が9、7、5、3、または2である。好適な実施形態では、前駆体混合物の微粒子の全てが、Ni及びCoを有する前駆体微粒子について与えられた前述の一次粒径及びサイズ分布を有する。
【0035】
微粒子前駆体の粒径及びサイズ分布は、任意の適切な方法によって形成され得るが、典型的には、少なくともいくつかの粉砕、例えば既知のミリング技法などを要求する。ミリングは、例えば、乾燥ミリング、湿式ミリング、ジェットミリング、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。ミリングは、各前駆体微粒子について別個に行われてもよく、後で、既知の融合方法によって適切な比率で融合されてもよい。ミリング装置、例えば、ボールミル、水平及び垂直媒体ミル、振動ミル、及びアトライタミルなどが利用されてもよい。ミリングは、所望の粒径及びサイズ分布を実現するために連続的なミリングステップで行われてもよい。好適な実施形態では、前駆体微粒子材料の全てが同時にミリングされる。
【0036】
ミリングは、好ましくは液体中で行われる。液体は、低い(例えば、約100センチポアズよりも小さい)粘度を有してもよく、例えば噴霧乾燥などの技法によって容易に除去されてもよい。液体は、有機液体、例えば、ケトン、アルカン、エーテル、アルコール、エステル、及び同様のものなどであってもよい。好ましくは、液体は、極性溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール、ブタノール、プロパノール、及びメタノール)または水などである。好ましくは、液体は水である。
【0037】
液体中でミリングするとき、Ni及びCoから成る微粒子前駆体は、一般に、液体中に最大でも部分的に溶解できる。好ましくは、溶解度の量は、液体中に最大でも約5重量%、より好ましくは最大でも約2重量%、最も好ましくは最大でも約1重量%溶解できるものである。また、溶解度は、液体中でミリングするときに、任意の他の前駆体材料について同じであることが望ましい。
【0038】
好適な実施形態では、ミリングが、各微粒子前駆体が存在する水中で行われる。この特定の実施形態において、微粒子前駆体の全てが水中で同時にミリングされるときに、複数の酸性基を有する有機分子を使用することが有利であることが分かった。これらの使用は、驚くべきことに、例えば水中で、最大50重量%の固形物含有量を有するスラリーのミリングを可能にする。有機分子または分散剤は、例えば、ポリ酸であってもよい。例示的なポリ酸は、ポリアクリル酸(2000〜100,000の典型的な分子量)、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、及び同様のものを含む。
【0039】
分散剤の量は、典型的には、低い粘度を依然として有すると共にゲルではない(すなわち、約10,000センチポアズよりも小さい、ただし、好ましくは約5000または2000センチポアズよりも小さい)と同時に、高い固形物含有量(例えば、約40重量%または45重量%超の固形物含有量)における小さな粒径のミリングを可能にするのに有用な量である。一般に、分散剤の量は可能な限り少なく、一般に、スラリーの総重量の最大でも約5%、3%、2%、または1%〜少なくとも約0.01%である。
【0040】
ミリングを利用するときの特定のミル、媒体、時間、及び特定のパラメータは、任意の適切な、例えばセラミック分野において容易に既知のものなどであり得る。一般に、媒体は、市販のもののいずれかであり得、例えば、炭化物媒体(SiC、Coを有するもしくは有しないWC、Coを有するもしくは有しない混合された金属炭化物)、ZrO、Al、及びそれらの組み合わせを含む。好適な媒体は、イットリア安定化ジルコニアである。
【0041】
前駆体混合物が一旦提供されると、微粒子は、二次粒子を形成するように凝集される。上記したように、前駆体混合物は、混合物を形成するために融合され得るか、あるいは乾燥ミリングされ得るか、もしくは液体中で別個にミリングされ得、次いで、組み合わされ得るか、または同時にミリングされ得る。前駆体混合物が乾燥して提供される場合、二次粒子への凝集は、例えば、Hosokawa Micron Ltd.から市販されている機器においてメカノフュージョンなどのような方法による乾燥が行われてもよい。好ましくは、微粒子前駆体のそれぞれは、スラリーを形成するために液体の中に分散され、次いで、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、超臨界乾燥、または同様のものなどの技法によって乾燥される。好ましくは、凝集が、前駆体混合物の水性スラリーの噴霧乾燥によって行われる。
【0042】
液体から噴霧乾燥するとき、固形物含有量は、ゲル化なしで達成できる任意の量に対して、または液体が噴霧乾燥器へ容易にポンピングするには粘性があり過ぎる(例えば、500,000センチポアズよりも大きい)場合、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、更により好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%の固形物含有量であることが好ましい。
【0043】
特に噴霧乾燥によって、二次粒子を形成する場合、前駆体粒子が前述のサイズを有するとき、加熱のすぐ後にLMOへ形成されるときに自由な一次粒子を本質的に有しない二次粒子を実現できることが発見された。換言すれば、加熱したときに二次粒子は破砕せず、それ故、小さい表面積を有するLMOの形成、広いサイズ分布を可能にすると同時に、良好な充放電レート性能を依然として維持することが発見された。
【0044】
望ましい二次粒径及びサイズ分布(マイクロメートルにおける球体積相当径)は、二次粒子が10〜35マイクロメートルのD50、6〜10マイクロメートルのD10、20〜45マイクロメートルのD90を有すると共に本質的に約5マイクロメートルよりも小さい粒子を有しないときである。好ましくは、D50は、12または15〜約30マイクロメートルであり、D90は、約25〜約40マイクロメートルである。粒径及びサイズ分布は、既知の技法、例えば、顕微鏡、篩分け、または光散乱技法などによって決定され得る。
【0045】
二次粒子が形成された後、それらは、酸素含有雰囲気において、ある温度加熱される。特定の最終または最高温度は、所望される化学組成(すなわち、Ni、Mn、及びCoの量)に応じて変動し得る。典型的には、最高温度は、約890℃〜約970℃である。好ましくは、温度は930℃〜960℃である。
【0046】
粒子が最高温度に保持される時間は、典型的には、少なくとも約5分〜約10時間であるが、その時間は、15分または30分〜7.5時間または5時間であることが好ましい。非常に長い時間は、より大きな一次粒、場合によっては過度の粒成長を引き起こす傾向がある一方で、より低い温度は、所望の二次粒子マイクロ構造(例えば、低い多孔率の二次粒子)を形成できないことが発見された。
【0047】
加熱は、加熱の間に低温度を保持させ得る(すなわち、低い中間温度の保持)。これらは、例えば、混合物全体にわたる温度の均一性、所望されない成分の除去(例えば、有機材料または酸化物への前駆体の分解)、または最終リチウム金属酸化物を作製するのに有用な望ましい中間相の形成を確実にするために行われ得る。典型的には、かかる中間温度は、約250℃〜850℃にある。中間温度のうちの少なくとも1つは、望ましくは、少なくとも400℃、500℃、または600℃〜最大でも約800℃、750℃、または700℃である。これらの温度における時間は、最高または最終温度について上記したものに類似する。
【0048】
加熱は、実用的であると同時に所望のリチウム金属酸化物を達成する任意の加熱または冷却レートを有し得る。典型的には、加熱レートは、少なくとも0.1℃/分〜250℃/分である。より典型的なレートは、約1℃/分または5℃/分〜50℃/分または20℃/分である。
【0049】
加熱は、酸素含有雰囲気中で行われるが、驚くべきことに、酸素または純酸素から主に成る雰囲気は望ましくなく、所望のものとは言えないリチウム金属酸化物を形成する傾向があることが発見された。酸素含有雰囲気は、好ましくは、少なくとも約0.1〜0.3または0.25気圧(atm)の酸素の分圧を有する。雰囲気は、動的であり得る(例えば、流れ得る)けれども、雰囲気は、望ましくは静的である。好適な実施形態では、雰囲気は、最大でより低い中間温度まで流れ得、次いで、最大で最高温度に静止し得る。同様に、酸素の分圧は、加熱の間に低下され得る。
【0050】
方法は、かなり強化された安全性能を伴う高濃度のNiを含有するリチウム金属酸化物の形成を可能にし、それは、一次粒子が勾配構造を有するかかるリチウム金属酸化物を形成する新たに発見された能力に起因すると考えられている。特に、発明者らは、二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、リチウム金属酸化物がLi、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、表面Mn/Ni比がバルクMn/Ni比よりも大きいように、リチウム金属酸化物がバルクMn/Ni比を有すると共に一次粒子が表面Mn/Ni比を有する、リチウム金属酸化物を発見した。
【0051】
バルクMn/Ni比は、LiMOの所望の組成であり、元素組成を決定するためのバルク分析技法によって決定され得る。一次粒子の表面Mn/Ni比は、X線光電子分光法(XPS)によって決定される。すなわち、表面Mn/Ni比は、粉末のサンプルの表面比の平均であり、後で平均される個別の一次粒子の勾配組成の測定値ではない。XPS技法は、以下に更に記載される。
【0052】
表面Mn/Ni比が、バルクMn/Ni比よりも大きい少なくとも1%、2%、または5%を超えるもの〜最大でも約20%であることが望ましい。上述したように、表面Mn/Ni比は、安全性の驚くべき改善のために、リチウム金属酸化物のNi濃度が大きいときに望ましくは大きい。例えば、Ni/(Mn+Co)モル比が0.5〜3(リチウム金属酸化物を作製するときのバルク化学構造または所望の化学的性質)であるときに、かかるMn/Ni比を有することが望ましい。より望ましくは、かかるNi/(Mn+Co)モル比は0.75〜2である。
【0053】
リチウム金属酸化物の一次粒径は、Ni及びCoを含有する前駆体粒径と相関関係があることが発見された。そのようなものとして、表面Mn/Ni比を表わすかかるリチウム金属酸化物は、加熱の間のいくらかの粒成長を可能にする、これらの前駆体について上記したサイズに類似したサイズを有する。一般に、一次粒径は、上記したNi及びCo前駆体粒径の20%、10%、または5%のサイズ内にある、あるいはそれと本質的に同じである。
【0054】
特に、表面Mn/Ni比と結び付けられるより大きな一次粒子のかかるサイズは、限定することなく、高いNi濃度でさえも、かかるリチウム金属酸化物の改善された安全性に寄与する一方で、他の所望の性能特徴を実質的に低下させないことが考えられている。また、勾配は、限定することなく、Ni及びCo酸化物微粒子相の初期形成に起因するものと考えられ、それは、次いで、勾配に導くより大きな粒子へMnを拡散させる必要がある。
【0055】
また、二次粒子へと凝集される一次粒子を有するリチウム金属酸化物であって、リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、二次粒子が、最大でも約5%の多孔率を有する、リチウム金属酸化物が、本発明の方法によって形成され得ることが発見された。好ましくは、多孔率は、最大でも約4、3、または2%である。
【0056】
本方法は、結果として生じるリチウム金属酸化物サイズがそれらと相関関係があるという発見と結び付けられるNi及びCo微粒子前駆体の前述の粒径を利用するので、かつ上記したように加熱されるときに、過度の粒成長なしに低い多孔率を有する二次粒子が形成され得る。二次粒子は低い多孔率を有するけれども、リチウム金属酸化物は、良好な比容量及び良好なレート性能を依然として表わし得る。
【0057】
低い多孔率の二次粒子を有するリチウム金属酸化物は、ただし、必ずしもではないが、上記した表面Mn/Ni比を有し得る。しかしながら、かかる粒子は、その比及び上記Mn/Ni比を有するリチウム金属酸化物について記載した他の属性のそれぞれを有することが望ましい。
【0058】
好適な実施形態では、リチウム金属酸化物が、上記方法を使用するときに加熱のすぐ後に破砕しない二次粒子へと形成され得ることが発見された。リチウム金属酸化物がかかる二次粒径を有するとき、改善されたサイクル寿命を有するリチウム金属酸化物が形成され得る。かかる二次サイズ及び形状は、上記した噴霧乾燥された二次粒子について与えられたものと本質的に同じである。驚いたことに、本方法は、リチウム金属酸化物の二次粒子自体が、良好な機械的完全性を有するが、実質的に共に焼結せず、それ故、二次粒子自体をそうするときに破砕せずに、容易にばらばらにされる(リチウム金属酸化物の最終的な粉末化)ので、これらの密な相関関係を可能にする。
【0059】
典型的には、上記二次粒径を有するリチウム金属酸化物が、約0.75m/gまたは好ましくは最大でも約0.6、0.5、または0.4m/g〜少なくとも約0.1m/gである表面積を有する。同様に、そのリチウム金属酸化物は、そのリチウム金属酸化物の理論密度の少なくとも約40%のタップ密度を表わし、それは、以下に更に記載される金属箔上にカソード層を形成するときに非常に望ましい。典型的には、タップ密度は、望ましくは少なくとも約1.15である。好ましくは、タップ密度は、少なくとも約1.5、1.75、2、または2.1g/ccである。
【0060】
表面Mn/Ni比を有する前述のリチウム金属酸化物または低い多孔率の二次粒子は、好ましくは、上記と同様な二次粒径を有する。
【0061】
本発明の方法によって作製されたLMOまたは本発明の任意のLMOは、従来の結合剤及びプロセスを使用してLMOを金属箔に付着させることによって、カソードへと形成され得る。
【0062】
例示的には、本発明のリチウム金属酸化物は、単独で、あるいは、例えば当分野に既知のものなどの別の電池カソード材料(例えば、リチウム金属リン酸塩、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、またはニッケル及びマンガンから成る他の酸化物)と共に、使用され得る。特定の実施形態では、本発明のリチウム金属酸化物のうちのいずれか1つ、ただし、特に前述の二次粒径を有するものが、自由一次粒子から本質的に成ると共に二次粒子のないリチウム金属酸化物と混合され、一次粒径及びサイズ分布が、本明細書に記載される一次粒子について記載されるものと本質的に同じである。
【0063】
別の実施形態では、本発明のLMOが、別のリチウム金属カソード材料、例えば、当分野において既知のもの及び特にリチウムアルミニウムコバルト酸化物またはリチウム金属リン酸塩などと混合される。驚くべきことに、高いNi含有量を伴う(例えば、ここで、Niが、リチウム以外のLMO中の金属の50モル%の量で存在する)LMOを有するリチウムイオン電池は、安全性のなお更なる改善を伴って電気化学性能の著しい低下なしでリチウム金属リン酸塩と混合され得ることが分かった。リチウム金属リン酸塩は、望ましくは、金属が遷移金属から成るものであり、アルカリ金属から更に成ってもよい。望ましくは、金属は、Mn、Co、Feであり得、これらは、少量のアルカリ金属、例えばMgなどでドープされる。望ましくは、遷移金属は、主にMnである(例えば、Li以外の金属の50モル%超)。これらの好適なリチウム金属リン酸塩の実施例は、発明者がShrikant Khotである同時係属出願、PCT/US13/029597によって記載され、その出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
LMOは、均一な混合物が形成されることを可能にするように溶媒内で混合される。溶媒は、任意の適切な溶媒、例えば当分野において既知のものなどであり得、典型的には、低い水含有量(例えば、500ppm以下、好ましくは100、50、10、または1ppm未満)を有する極性及び無極性有機溶媒である。有用な溶媒の実施例は、有機溶媒、例えばn−メチルピロリドン(NMP)及びアセトンなどと、極性溶媒、例えば水及びJin Chong,et al.,Journal of Power Sources 196(2011)pp.7707−7714によって記載されたものなどと、を含む。
【0065】
固形物(例えば、リチウム金属酸化物)の量は、任意の有用な量であり得る。典型的には、その量は、溶媒の体積の10%〜90%であり、少なくとも20%または30%〜最大でも80%または70%であり得る。
【0066】
典型的には、混合は、任意の剪断機、例えば、バッフルを使用するまたは使用しない単純なパドルミキサなどによるものであるか、あるいは高剪断ミキサ(例えば、コロイドミル)が使用されてもよい。一般に、剪断レートは、最大でも約5000秒−1であり、一般に、約1秒−1〜約1000秒−1である。箔の上にスラリーをキャストするのに有用な他の既知の添加剤、例えば、適切な分散剤、潤滑剤、結合剤、及び水捕集剤などが、利用されてもよい。
【0067】
混合は、所望の結果が達成されるように、リチウム金属酸化物及びリチウム金属リン酸塩を十分に分散させる時間にわたって行われる。典型的には、時間は、数分から実用的である任意の時間、例えば数日または数時間までなどであり得る。
【0068】
混合物は、次いで、電池における電極を作製するのに有用な金属箔、例えば、アルミニウム、炭素コーティングアルミニウム、エッチングされたアルミニウム、ニッケル、銅、金、銀、白金、及び前述の合金、またはそれらの組み合わせなどの上にコートされ、Hsien−Chang Wu et.al.,Journal of Power Sources 197(2012)pp.301−304に記載されるものを含む。
【0069】
スラリーのコーティングは、任意の有用な技法、例えば、当分野において既知のものなどによって行われてもよい。典型的には、利用される方法は、所望の間隙におけるドクターブレードキャスティングである。
【0070】
溶媒は、次いで、カソードを形成するために除去される。除去は、静的な空気下または流れる空気下、あるいは例えば、乾燥空気、不活性雰囲気(窒素もしくは不活性ガス、例えば希ガスなど)または真空などの他の適切な雰囲気下の適切な方法、例えば、加熱を伴うもしくは伴わない蒸発などであり得る。加熱が利用される場合、温度は、利用される特定の溶媒に有用なものであり、30℃〜500℃であり得るが、好ましくは50〜150℃である。時間は、任意の適切な時間、例えば、数分〜数日または数時間などであり得る。加熱は、任意の有用な加熱、例えば、抵抗、対流、マイクロ波、誘導、または任意の既知の加熱方法などであり得る。
【0071】
ある実施形態では、溶媒が除去された後、カソードが更に圧縮を受ける。多くの場合においてこの圧縮は、金属箔上のカソードコーティングの密度を更に増やすための当技術分野におけるカレンダ加工(calendaring)のことを指す。典型的には、カレンダ加工は、カソードを、均一の厚さを有するカソードを実現するための設定間隙を用いるロールプレスを通過させることによって行われる。カソードは、コーティングの挙動に応じて、変化する間隙または同じ間隙を用いるロールプレスを複数回通過されてもよい。一般に、圧力は、最大でも約250MPaであり、望ましくは最大でも約180、170、または160MPaから、少なくとも約10MPaであり得る、ある低い圧力までである。
【0072】
本発明のリチウム金属酸化物(上記したような方法によって達成できる二次粒径及び任意の他の属性)を利用する好適な実施形態では、金属箔上のコーティングが、約3または3.5g/cc〜約4g/ccの密度を有する。
【0073】
本発明のLMOのうちのいずれか1つを有するカソードから成るLIBは、任意の適切な設計を有し得る。かかる電池は、典型的には、カソードに加えて、アノード、アノードとカソードとの間に配置された多孔性セパレータ、ならびにアノード及びカソードと接触する電解質溶液を備える。電解質溶液は、溶媒及びリチウム塩を含む。
【0074】
適切なアノード材料は、例えば、炭素質材料、例えば自然または人工黒鉛、炭化ピッチ、炭素繊維、黒鉛化中間相微小球、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及び様々な他の黒鉛化材料などを含む。適切な炭素質アノード及びそれらの作製方法は、例えば、米国特許第7,169,511号に記載される。他の適切なアノード材料は、リチウム金属、リチウム合金、他のリチウム化合物、例えば、チタン酸リチウムなど、及び金属水酸化物、例えば、TiO、SnO、及びSiOなど、ならびに例えば、Si、Sn、またはSbなどの材料を含む。アノードは、1つ以上の適切なアノード材料を使用して作製され得る。
【0075】
セパレータは、一般に非伝導性材料である。それは、動作条件下で電解質溶液もしくは電解質溶液の成分のいずれかと反応性であるまたはそれに溶けるべきではないが、アノードとカソードとの間のリチウムイオン輸送を可能にする必要がある。ポリマー性セパレータが、一般に適している。セパレータを形成するのに適したポリマーの実施例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、及び同様のものを含む。
【0076】
電池電解質溶液は、少なくとも0.1モル/リットル(0.1M)、好ましくは少なくとも0.5モル/リットル(0.5M)、より好ましくは少なくとも0.75モル/リットル(0.75M)、好ましくは最大3モル/リットル(3.0M)、及びより好ましくは最大1.5モル/リットル(1.5M)のリチウム塩濃度を有する。リチウム塩は、電池の使用に適した任意のものであり得、例えば、LiAsF、LiPF、LiPF(C)、LiPF(C、LiBF、LiB(C、LiBF(C)、LiClO、LiBrO、LiIO、LiB(C、LiCHSO、LiN(SO、及びLiCFSOなどのリチウム塩を含む。電池電解質溶液における溶媒は、例えば、炭酸エチレンのような環状炭酸アルキレン、炭酸ジアルキル、例えば炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、または炭酸メチルエチルなど、様々なアルキルエーテル、様々な環状エステル、様々なモノニトリル、ニジトリル、例えばグルタロニトリルなど、対称または非対称スルホンのみならずそれらの誘導体、様々なスルホラン、最大12炭素原子を有する様々な有機エステル及びエーテルエステル、ならびに同様のものであり得るか、それらを含み得る。
【0077】
分析技法
LMOのタップ密度は、約20グラムのLMOをメスシリンダーの中に置いて、Logan Instruments Corporation,Somerset,NJから利用可能なTAP−2sタップ密度テスタを使用して2000回叩くことよって決定した。
【0078】
粒径及びサイズ分布(球体積相当径)は、一次粒子のCoulter粒径分析器(Coulter LS230,Beckman Coulter Inc.,Brea,CA)を使用して測定し、決定した。試験を行うために、ミリングされた後の微粒子前駆体の水性スラリーを2滴10mlの脱イオン水に追加し、30秒間超音波処理した。次いで、粒径を粒径分析器によって分析した。
【0079】
Mn/Ni比は、14kV及び10mAにおいて動作する単色性Al Kα X線源を用いる「Kratos AXIS 165、S/N 315−91898/2」を使用するXPSによって決定した。Mn/Ni比を決定するために、少なくとも2つのサンプルを試験した。試験した各サンプルは、直径が7mm及び深さが3mmであったサンプル空洞を有するアルミニウムサンプルホルダ内に置いた。分析領域は、550(x)×180(y)マイクロメートルであった。Mn/Ni比は、Mn及びNi 2pピークの積分によって決定した。Ni LMMオージェ線とCo 2p 3/2及びMn2p 3/2ピークとの間に潜在的な干渉が存在するが、それは、測定の標準偏差よりもはるかに低かったので関連性がなかった。
【0080】
LMOのバルク化学構造を誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)によって決定した。LMOは、最初に、50mLのポリプロピレン試験管内に0.10g分を計量することによって溶解した。4mLの50%(v/v)塩酸及び100μLの濃フッ化水素酸を追加し、加熱ブロック上で約85℃において30分間加熱した。次いで、2.0mLの濃硝酸を追加して更に5分間加熱した。次いで、試験管を加熱ブロックから取り除き、脱イオン水で希釈した。
【0081】
準備した溶液は、5μg/mLのEu内部標準を使用するPerkin Elmer 7300DV誘導結合プラズマ光学発光分光計上でICP−AESを使用して分析した。
【0082】
20Ah積み重ねセルに釘刺し試験を受けさせ、それらの安全性を評価した。セルに初期形成サイクルを受けさせた後、対象の特定のLMOを含有する試験したセルを1Cレート(20A)においてカットオフ電圧(例えば、4.2V、4.15V、4.1V、4.05V、4V等)充電し、次いで、電圧を、室温において電流が0.05Cの下へ降下するまで一定に保持した。次いで、20Ahセルを80mm/秒の刺し速度において釘で刺し、セル燃焼に注意した。
【0083】
充電したカソードの酸素発生を、リチウム金属に対してコインハーフセルにおいてカソードを4.3V充電することによって測定し、次いで、アルゴン充填グルーブボックス内でセルを分解した。電極は、電解質を除去するように炭酸ジメチル溶媒で洗浄し、25℃における真空下で12時間乾燥させた。乾燥した電極を、酸素の量が市販のLMOに正規化された発生ガス分析(酸素)を用いる質量分析において10℃/分におけるアルゴン下で加熱した(表2、比較例5「100%」を参照)。酸素発生は、釘刺し結果によって示されるように、LMOで作製した電池の安全性の良好な指標であることが考えられている。
【0084】
比表面積は、Brunauer−Emmett−Teller理論に従う窒素吸収によって決定した。
【0085】
二次粒子の多孔率は、走査型電子顕微鏡において二次粒子をイオン(Ga)断面化すること及びその断面を画像化することによって決定した。孔の面積及びLMOの面積は、画像解析ソフトウェア(ImageJ)を使用して決定し、多孔率を決定した。
【0086】
電気化学性能は、以下のように本質的に同じ手法で製造したコインセル及び20Ahセルについて決定した。別のリチウム金属カソード材料がまた、LMOと混合されるにせよ混合されないにせよ、カソードを作製するために使用された場合、それはまた、以下に記載されるのと同じ様態で電気化学性能を決定するためにセルへと作製した。
【0087】
各実施例及び比較例のLMOまたはリチウム金属カソード材料は、SUPER P(商標)カーボンブラック(Timcal Americas Inc.Westlake,OH)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)(Arkema inc.,King of Prussia,PA)結合剤と、94:2.5:3.5のLRMO:SuperP:PVdFの重量比で、混合した。スラリーは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒内にカソード材料、伝導性材料、及び結合剤を懸濁させることによって準備し、その後、真空スピードミキサ(Thinky USA,Laguna Hills,CA)内で均質化を続けた。固形物に対するNMPの比は、軽度な真空下で脱泡する前に約1.6:1であった。スラリーは、約50マイクロメートルの厚さドクターブレードを使用して電池グレードアルミニウム箔の上にコートし、乾燥対流式オーブン内で30分間130℃において乾燥した。アルミニウム箔は、15マイクロメートルの厚さであった。セルは、乾燥環境(−40℃以下の露点)において作製した。
【0088】
電極は、約30マイクロメートルローラプレス上で圧縮し、示されるような活性材料密度を結果としてもたらした。セルは、約10mg/cmの測定された負荷レベルを有した。電解質は、1.0MのLiPFを有する炭酸エチレン/炭酸ジエチル(体積で1:3のEC:EMC)であった コインセル用のアノードは、Chemetall Foote Corporation,New Providence,NJから利用可能な、200マイクロメートル厚さの高純度リチウム箔あった。セパレータは、市販のコーティングセパレータであった。20Ahセル用のアノードは、市販の黒鉛(BTR New Energy Materials Inc.,Shenzhen,Chinaから得られるAGP−2粉末)であった。アノード/カソード容量比は、20Ahセルについて1.1〜1.2であった。
【0089】
セルは、MACCOR Series 4000電池試験ステーション(MACCOR,Tulsa,OK)上で繰り返した。セルは、C/10において4.3V(LiNi0.5Mn0.3Co0.2を用いる実施例)または4.5V(LiNi0.6Mn0.2Co0.2充電することによって作動させて、その後、電流がC/20へ降下するまで一定電圧の保持を続けた。電池の初期容量は、0.1のCレートにおいて決定し、次いで、レート性能をまた、その後順番に、0.1、0.5、1、2、5、10のCレートにおいて決定した。
【実施例】
【0090】
LMOを作製するために使用される生材料を表1に示す。使用した水は、脱イオン水であった。
【0091】
実施例1〜8及び比較例1〜5
実施例1〜8及び比較例1〜5のLMOは、LiNi0.5Mn0.3Co0.2のバルク化学構造へと作製した。これらの実施例のそれぞれは、Liの超過分を1.1の量で使用したことを除いて、このNMCを作製するのに必要な同じ比率における同じ生材料を使用した。使用した微粒子前駆体は、LiCO、Ni(OH)、Mn、及びCoであった。特定のNi(OH)及びCoが、表1に示されており、交換可能に使用される。
【0092】
微粒子前駆体の全てを、約50重量%の固形物含有量において水中で同時に混合した。水に加えて、2重量%のポリアクリル酸をまた、全ての前駆体を混合するために使用した。混合物は、0.2〜0.3mmの直径のイットリウム安定化ジルコニア媒体(Sigmund Lindner、Germany.SiLibeads(登録商標)Type ZY premium quality)を入れたMicromedia Bead Mill(MM−P1,Buhler Inc.Mahwah,NJ)においてミリングした。ミルは、4KW/時の電力で動かし、表2に示されるような一次粒径を実現するのに十分な時間にわたってミリングした。スラリーは、22℃において#3 RV Spindle(Brookfield,Massachusetts,USA)を使用するBrookfield Viscometer(モデル DV−II+)を使用して測定された約1600〜2000センチポアズの粘度を有した。
【0093】
スラリーは、MOBILE MINOR(商標)2000 Model H噴霧乾燥器(GEA Niro,Denmark)における噴霧乾燥によって、20%の2 SCFMの窒素流及び噴霧器に対して1バールの圧力を使用する約2.4〜2.8Kg/時の供給レートで、凝集した。入口温度は約140℃であり、出口温度は約60〜65℃であった。噴霧乾燥され凝集された前駆体は、13.4マイクロメートルのD50二次粒径を有した。
【0094】
噴霧乾燥され凝集された前駆体(50g)を0.19立体フィートのBlue M炉において静的空気雰囲気中で加熱した。噴霧乾燥され凝集された前駆体を約5時間にわたって浸漬し、次いで、表2に示される温度及び時間保持した。しかしながら、実施例6は、温度を保持するための10時間ランプを除く同じプロトコルを使用して、10立体フィートのUnitherm(登録商標)U2炉において焼成した。最終温度の保持後、形成したLMOを室温約10時間冷却した。
【0095】
比較例5は、実施例1〜8及び比較例1〜4と本質的に同じ化学構造を有する、Daejung Energy Materials Co.Ltd.,Jeonbuk,Koreaから商品名L4L−3D12の下で市販されているLMOである。比較例5は、Ni、Co、及びMnを含有する前駆体化合物を形成するための沈殿プロセスによって形成し、その前駆体化合物は、次いで、リチウム前駆体と混合され、LMOを形成するために加熱される。
【0096】
表2から、比較例2〜4におけるように大きな前駆体微粒子粒が多過ぎる(D90が大き過ぎる)場合、有用なLMOを作製する能力が問題となることが分かり得る。すなわち、電気化学(EC)性能は、高タップ密度によって与えられるような高密カソードへと商業的に実行できるように処理され得るLMOの作製を試みるときに損なわれる。
【0097】
対称的に、実施例7及び8は、D100がほぼ同じであるけれども、D90が比較例2〜4よりかなり小さいときに、実行できる及び改善されたLMOを作製する能力が、高いタップ密度及びEC性能によって示されることを示す。同様に、D100が1マイクロメートルに近づくにつれて、かつD90が0.5マイクロメートルよりも更に大きくなるにつれて、処理するのが容易である優良なEC性能を有するLMOが形成される。
【0098】
また、実施例1及び8を比較すると、前駆体の粒径が、一次粒子の高Mn/Ni表面組成を実現する能力に影響を及ぼすことが明らかであり、それは、以下に更に記載されるように改善された安全性と相関関係があることが分かった。Mn/Ni比への時間の影響もまた、実施例1〜3を比較すると分かり得る。温度の影響もまた、比較例1を実施例4と比較すると分かり得る。比較例1は、二次粒子が、二次粒子自体を実質的に破砕せずに分離され得ない程度まで、二次粒子が共に焼結される高温度加熱した。実施例5及び6は、前駆体が特定のサイズのNi及びCoを含有するときに、本発明のLMOの作製の整合性を示す更なる代表的な実施例である。
【0099】
実施例9、9A、9B、及び10〜13と比較例5A及び5B
実施例9のLMOは、LMOを形成するための加熱が以下のようであったことを除いて、実施例1と同じ態様で作製した。LMOは、静的空気雰囲気中で600℃6時間加熱し、600℃において4時間にわたって保持し、920℃3時間加熱し、次いで、950℃2時間加熱し、950℃において5時間にわたって保持し、次いで、室温10時間冷却した。このLMOは、20Ahセル(「実施例9A」)において処理し、上記したように釘刺し試験によって試験した。前駆体の粒径、タップ密度、発生した酸素、及びEC性能を表3に示す。
【0100】
同様に、同じLMOを、7/3のLMO/LMFPの重量比でリチウムマンガン鉄リン酸塩(LMFP)と混合し、20Ahセルを上記したもの(「実施例9B)と同じ手法で作製した。LMFPは、以下のように作製した。
【0101】
シュウ酸鉄二水和物及び炭酸マンガンを、混合物流体を十分に流出及び噴出させるのに十分な量で水と混合した。使用したドーパント金属前駆体は、酢酸マグネシウム及び酢酸コバルトであった。水中において85重量%のリン酸をゆっくりと混合物に追加した。酸の追加が終了した後、水酸化リチウムを追加し、混合物を約30分以上にわたって混合した。
【0102】
混合物は、粒子の直径が約50nm減らされるまで、ジルコニア媒体を使用してミリングした。ミリングの間に、酢酸セルロースまたは他の炭素源、すなわち、グルコース、ラクトース等を追加し、表4に示されるような炭素含有量を実現した。
【0103】
ミリングした混合物を170℃において噴霧乾燥し、小さな粒子を、最大約20ミクロンの直径を有する本質的に球状の二次粒子へと凝集した。噴霧乾燥した粒子を、<100ppmの酸素を含有する雰囲気下で加熱した。粒子を室温から400℃3時間加熱し、400℃において1時間にわたって保持した。次いで、温度を2時間以内に650℃上げて、650℃において3時間にわたって保持した。加熱した粒子を60℃より低く冷却し、44ミクロンの篩を通して篩にかけた。LMFPの特徴を表4に示す。
【0104】
比較例5AのLMOは、上記と同じ様態で、ただし比較例5のLMOを使用して、20Ahセルへと作製した。比較例5Bは、20Ahセルを比較例5のLMOの混合物及び上記した7/3のLMO/LMFPの比にあるLMFPを使用して作製したことを除いて、比較例5Aと同じであった。
【0105】
比較例5Aは、釘刺し試験を受けさせたときに、4.05ボルトのカットオフ電圧において発火を結果としてもたらした。比較例5Bは、4.2のカットオフ電圧において発火を結果としてもたらした。実施例9A及び9Bの両方は、発火を結果としてもたらさなかった(すなわち、試験に合格した)。本発明のLMOの改善された安全性能は、一次粒子のMn/Ni比と少なくとも部分的に起因するものと考えられ、それはまた、比較例5のLMOと比較して酸素発生と相関関係があることが考えられている。
【0106】
実施例10〜13は、異なる前駆体微粒子を表3に示されるように使用すると共にLMOを形成するための加熱が3時間にわたる950℃であったことを除いて、実施例1と同じ態様で作製した。
【0107】
表3から、微粒子前駆体は、Ni及びCoを含有する前駆体微粒子の粒径である限り、変動され得ることが明らかである。
【0108】
実施例14〜17
これらの実施例では、LMOは、Mnを含有する前駆体(すなわち、Mn)を他の前駆体微粒子とは別個にミリングし、その後、混合してスラリーを形成し、前駆体微粒子の全てが約45%の固形物含有量を有したことを除いて、実施例1と同じ態様で作製した。
【0109】
Mn前駆体スラリーは、45%の固形物含有量を有し、表5に示される粒径を実現するための時間にわたってミリングした。これらの実施例はまた、950℃3時間にわたって加熱し、最終温度8時間のランプレートで上げ下げした。ミリング及び他の手順は、実施例1と本質的に同じであった。
【0110】
表5から、Mn前駆体のサイズが、Ni及びCoを含有する前駆体よりも大きい可能性があり、良好なEC性能を有するLMO及び処理の容易さを依然として達成すると同時に、また、Mn/Ni表面比ならびに発生した酸素によって示されるように良好な安全性を可能にすることが容易に認められる。この驚くべき結果は、改善された安全性ならびに優良なサイクル寿命及び良好なEC性能を有するLMOのより頑強な商業的製造を可能にする。
【0111】
実施例18〜21
実施例18〜21のLMOは、実施例1と同じ手法で以下のように作製した。LMOのバルク化学構造は、LiNi0.6Mn0.2Co0.2であった。これらの実施例のそれぞれは、超過分のないLi(すなわち、約1に等しいLi)を使用したことを除いて、このLMOを作製するのに必要な同じ比率で同じ生材料を使用した。使用した微粒子前駆体は、LiCO、Ni(OH)、Mn、及びCoであった。
【0112】
LMOを形成するための加熱スケジュールは、6時間以内の600℃の加熱、4時間から600℃における保持、5時間以内の930℃の加熱、5時間にわたる930℃における保持、次いで、約10時間以内の室温の冷却であった。LMOの前駆体粒径及び特徴を表6に示す。
【0113】
表6はまた、比較例6についてのデータを示し、それは、実施例18〜21と本質的に同じ化学構造を有する商品名NCM080−10A(NMC622)の下でEcopro Co.Ltd,Cheongwon−gun,Chingcheongbuk−do,Koreaから市販されているLMOである。比較例6は、Ni、Co、及びMnを含有する前駆体化合物を形成するために沈殿プロセスによって形成し、次いで、前駆体化合物を、リチウム前駆体と混合し、加熱してLMOを形成した。
【0114】
表6は、高いニッケル含有量を有するLMOが、0.5マイクロメートルを超えるかなりの量の微粒子で再び形成され得ることを示す。LMOは、更に小さな粒子(すなわち、本質的に全て0.5マイクロメートルよりも小さい)で形成され得るけれども、データから、粒成長を制御することがより困難になり、そのことは、それを商業規模で作製するときに有害であることが明らかであるので(より小さな狭く分布された粒子で開始するけれども、より低いBET表面積を参照)、それは望ましくない。
【0115】
図示されないけれども、実施例18〜21のLMOが、金属箔上にカソード層を形成する際に圧縮されるとき、これらの実施例のLMOの密度は、比較例6のLMOの密度よりも約10〜15%大きい。これは、同じ電池体積において極めて高い容量を可能にする。
【0116】
また、本発明の方法によって生産したLMOは、優良なEC性能を依然として有する高密な二次粒子を有するLMOを結果としてもたらし得ることも観測された。これは、おそらくNi及びCo前駆体の一次粒径分布、ならびに全ての前駆体化合物を用いるスラリーの高い固形物含有量を実現する能力に部分的に起因することが考えられている。図1は、実施例1の断面であり、沈殿によって形成された典型的なLMO(図2、比較例6のLMOの断面を参照)と比較した本発明のLMOの二次粒子の多孔率におけるかなりの違いを示す。
【0117】
実施例22〜27
実施例22〜27のLMOは、実施例18〜21と同じ態様で作製したが、噴霧乾燥器条件は、図示されるような異なる二次粒径分布を達成するように変動させた。データから、噴霧乾燥をして粉末を凝集するときに、二次粒子の破砕がLMOを形成するための加熱のすぐ後に観測されたので、D10が5マイクロメートルより小さくないことが好ましい。使用可能な電池がかかるLMOから作製され得るけれども、サイクル寿命は、一般に、二次粒子が実質的にそのままであるLMOから作製された電池のサイクル寿命と比較してかなり悪くなる。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【表7】
(態様)
(態様1)
リチウムイオン電池カソードを作製するのに有用な、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成るリチウム金属酸化物粉末を作製する方法であって、
(d)Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、Ni及びCoのないMn微粒子前駆体と、を含む前駆体混合物であって、前記Ni及びCoを含む前駆体微粒子が、0.1〜0.8マイクロメートルのD50、0.05〜0.3マイクロメートルのD10、0.35〜1.5マイクロメートルのD90を有する非凝集一次粒径を有すると共に本質的に3マイクロメートルよりも大きな粒子を有しない、前駆体混合物を提供することと、
(e)前記前駆体混合物を凝集させて、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体と、前記Mn微粒子前駆体との一次粒子から成る、二次粒子を形成することと、
(f)前記二次粒子を酸素含有雰囲気下で、前記リチウム金属酸化物を形成する温度及び時間加熱することと、を含む、方法。
(態様2)
各微粒子前駆体が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、またはそれらの組み合わせである、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記Mn微粒子前駆体には、Liがない、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記前駆体微粒子材料が、Ni微粒子前駆体、Co微粒子前駆体、及びLi微粒子前駆体、及び前記Mn微粒子前駆体から成り、これらの微粒子前駆体のそれぞれが、他の微粒子前駆体のうちのいずれにおける金属も含有しない、態様3に記載の方法。
(態様5)
前記混合物が、Ni及びCoから成る前駆体から成る、態様1に記載の方法。
(態様6)
前記Ni及びCoを含む前駆体微粒子が、ミリングによって提供される、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記ミリングが、液体内で行われる、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記液体が、水である、態様7に記載の方法。
(態様9)
前記ミリングが、分散剤の存在下にある、態様8に記載の方法。
(態様10)
前駆体混合物が、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る前駆体微粒子と前記Mn微粒子前駆体との同時ミリングによって提供される、態様1に記載の方法。
(態様11)
前記ミリングが液体中で行われ、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る前駆体微粒子ならびに前記Mn微粒子前駆体が、少なくとも40重量%の固形物含有量を有するスラリーを形成する、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記Mn微粒子前駆体の前記ミリングが、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る微粒子前駆体とは別個に行われ、次いで、Li、Ni、及びCoから成る微粒子前駆体と混合されて、前記ミリングされた前駆体粉末を形成する、態様6に記載の方法。
(態様13)
前記Mn微粒子前駆体が、前記Li、Ni、Co、及び酸素から成る前駆体微粒子の非凝集一次粒径D50よりも大きな前記D50を有する、態様1に記載の方法。
(態様14)
前記Mn微粒子前駆体が、0.2〜約1.5のもの、約0.01〜約1マイクロメートルのD10、約0.4〜約3マイクロメートルのD90を有する非凝集一次粒径を有すると共に本質的に5マイクロメートルよりも大きな粒子を有しない、態様13に記載の方法。
(態様15)
前記前駆体混合物は、Niが0.5〜9のモル比Ni/(Co+Mn)で存在するような量のLi、Ni、Co、Mn、及びOを有する、態様1に記載の方法。
(態様16)
前記モル比Ni/(Co+Mn)が1〜3である、態様15に記載の方法。
(態様17)
前記二次粒子が、直径約5マイクロメートル以上のD10を有する、態様1に記載の方法。
(態様18)
前記二次粒子を形成するための前記凝集が、乾燥によるものである、態様11に記載の方法。
(態様19)
前記乾燥が、噴霧乾燥である、態様18に記載の方法。
(態様20)
前記二次粒子が、10〜35のD50、6〜10のD10、20〜45のD90を有すると共に本質的に100マイクロメートルよりも大きな粒子を有しない、態様17に記載の方法。
(態様21)
前記加熱が、890℃〜970℃の最高温度である、態様1に記載の方法。
(態様22)
前記加熱が、930℃〜960℃の最高温度である、態様21に記載の方法。
(態様23)
前記加熱が、一定期間にわたって保持される最高温度及び少なくとも1つのより低い中間温度である、態様1に記載の方法。
(態様24)
前記より低い中間温度が、500℃〜800℃であり、前記最高温度が、930℃〜960℃である、態様23に記載の方法。
(態様25)
前記時間が、前記最高温度において30分〜5時間である、態様21に記載の方法。
(態様26)
前記最高温度または任意の中間温度のいずれかにおける前記時間が、30分〜5時間である、態様23に記載の方法。
(態様27)
前記雰囲気は、雰囲気中に酸素が少なくとも0.01〜0.3の酸素分圧の量で存在する、酸化雰囲気である、態様1に記載の方法。
(態様28)
前記酸素分圧が、少なくとも0.1〜最大でも0.25気圧である、態様27に記載の方法。
(態様29)
前記酸素分圧が、前記加熱の間に減少する、態様27に記載の方法。
(態様30)
前記雰囲気が、前記最高温度において静的である、態様27に記載の方法。
(態様31)
態様1〜30のいずれか一項によって作製されたリチウム金属酸化物。
(態様32)
金属箔に付着された態様31に記載のリチウム金属酸化物を含むカソード。
(態様33)
態様32の前記カソードを含む電池。
(態様34)
二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、前記リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、表面Mn/Ni比がバルクMn/Ni比よりも大きいように、前記リチウム金属酸化物が前記バルクMn/Ni比を有すると共に前記一次粒子が前記表面Mn/Ni比を有する、リチウム金属酸化物。
(態様35)
前記表面Mn/Ni比が、前記バルクMn/Ni比よりも少なくとも5%大きい、態様34に記載のリチウム金属酸化物。
(態様36)
前記リチウム金属酸化物が、0.5〜9のNi/(Mn+Co)モル比を有する、態様34に記載のリチウム金属酸化物。
(態様37)
前記リチウム金属酸化物が、0.5〜3のNi/(Mn+Co)モル比を有する、態様36に記載のリチウム金属酸化物。
(態様38)
前記Ni/(Mn+Co)モル比が、0.75〜2である、前記リチウム金属酸化物。
(態様39)
金属箔に付着された態様34〜38のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物から成る層を備えるカソード。
(態様40)
態様39に記載のリチウム金属酸化物から成る電池。
(態様41)
二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、前記リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、前記二次粒子が、最大でも約5%の多孔率を有する、リチウム金属酸化物。
(態様42)
前記多孔率が、最大でも4%である、態様41に記載のリチウム金属酸化物。
(態様43)
前記二次粒子が、10〜35マイクロメートルのD50、6〜10マイクロメートルのD10、20〜45マイクロメートルのD90を有すると共に本質的に5マイクロメートルより小さい粒子を有しない、態様42に記載のリチウム金属酸化物。
(態様44)
前記多孔率が、最大でも約2%である、態様41に記載のリチウム金属酸化物。
(態様45)
前記リチウム金属酸化物が、前記リチウム金属酸化物の理論密度の少なくとも約40%のタップ密度を有する、態様41に記載のリチウム金属酸化物。
(態様46)
金属箔に付着された態様41〜45のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物から成る層を備えるカソード。
(態様47)
前記層が、3.5g/cc〜4g/ccの密度を有する、態様46に記載のカソード。
(態様48)
態様47に記載のカソードから成る電池。
(態様49)
二次粒子へと凝集される一次粒子から成るリチウム金属酸化物であって、前記リチウム金属酸化物が、Li、Ni、Mn、Co、及び酸素から成り、前記二次粒子が、10〜35マイクロメートルのD50、6〜10マイクロメートルのD10、20〜45マイクロメートルのD90を有すると共に本質的に100マイクロメートルよりも大きな粒子を有しない、リチウム金属酸化物。
(態様50)
前記二次粒子が、最大でも約5%の多孔率を有する、態様49に記載のリチウム金属酸化物。
(態様51)
前記二次粒子が、本質的に約5マイクロメートルよりも小さな粒子を有しない、態様50に記載のリチウム金属酸化物。
(態様52)
前記表面積が、最大でも約0.5m/gである、態様49に記載のリチウム金属酸化物。
(態様53)
前記リチウム金属酸化物が、前記リチウム金属酸化物の理論密度の少なくとも約40%のタップ密度を有する、態様49に記載のリチウム金属酸化物。
(態様54)
金属箔に付着された態様41〜45のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物の層を備えるカソード。
(態様55)
前記カソードが、前記カソード層内に一次粒子として存在するリチウム金属酸化物から更に成る、態様54に記載のカソード。
(態様56)
前記リチウム金属酸化物以外のリチウム金属カソード材料を更に含む、態様54に記載のカソード。
(態様57)
前記リチウム金属カソード材料が、リチウム金属リン酸塩、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、またはそれらの組み合わせである、態様56に記載のカソード。
(態様58)
前記リチウム金属カソード材料が、リチウム金属リン酸塩であり、前記リチウム金属リン酸塩の前記金属が、遷移金属から成る、態様57に記載のカソード。
(態様59)
前記金属が、アルカリ土類金属から更に成る、態様58に記載のカソード。
(態様60)
前記リチウム金属リン酸塩の前記金属が、Fe、Mn、Co、Mg、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される金属である、態様59に記載のカソード。
(態様61)
前記リチウム金属リン酸塩の前記金属が、少なくとも50モル%のMnである、態様60に記載のカソード。
(態様62)
態様54〜61のいずれか一項に記載のカソードから成る電池。
図1
図2