(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防護カバーは、前記主軸の中心軸よりも、乗りかごの昇降方向における上側においては、前記外壁部と前記回転子ブロックとの間の隙間に沿って設けられ、前記主軸の中心軸よりも、乗りかごの昇降方向における下側においては、乗りかごの昇降方向に沿って設けられる
請求項1又は2に記載の巻上機。
さらに、前記防護カバーよりも前記軸方向の他側において前記回転子ブロックの全周に渡って設けられ、前記外壁部と前記回転子ブロックとの間の隙間を前記軸方向の一側から遮蔽すると共に、前記回転子ブロック側の端部が前記回転子ブロックの外周面に設けられた溝部に挿入された遮蔽体を有する
請求項1又は2に記載の巻上機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る巻上機及びエレベーター装置の一例を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態(巻上機の主ロープ取り付け面に防護カバーを有する例)
1−1.エレベーター装置の全体構成
1−2.巻上機の構成
2.第2の実施形態(防護カバー部に凸部が設けられている例)
【0015】
1.第1の実施形態(巻上機の主ロープ取り付け面に防護カバーを有する例)
1−1.エレベーター装置の全体構成
図1は、本実施形態のエレベーター装置1の全体構成を説明するための概略構成図である。また、
図2は、本実施形態のエレベーター装置1の昇降路100を水平面から見たときの断面構成図である。
【0016】
本実施形態のエレベーター装置1は、建物構造物内に形成された昇降路100内に巻上機10を有し、昇降路100上部に機械室が設けられていない、いわゆる機械室レスエレベーターである。
図1に示すように、本実施形態のエレベーター装置1は、昇降路100内を昇降する乗りかご110と、釣合錘120と、主ロープ130と、第1従動プーリ140と、第2従動プーリ150と、巻上機10とを備えている。
【0017】
[昇降路]
昇降路100は、乗りかご110が昇降するための通路となる空間であり、建物内部の各階を上下方向に貫いて設けられている。昇降路100の内壁面には、乗りかご110の昇降を案内するガイドレール112(
図2参照)が取り付けられている。また、昇降路100の壁面における各階に相当する高さ位置には、各階に通じる乗り場ドア(図示を省略する)が設けられている。
【0018】
[乗りかご]
乗りかご110は、人や荷物を載せるためのものであり、昇降路100内においては、主ロープ130に支持された状態で収容されている。乗りかご110の底部には、せり上げプーリ111が設けられており、主ロープ130は、せり上げプーリ111に巻き掛けられることによって乗りかご110を支持している。そして、乗りかご110は、昇降路100の内壁面に設けられたガイドレール112に案内された状態で、昇降路100内の上下方向に昇降する。
【0019】
また、乗りかご110の側面には、乗り場ドアに対応する位置に、かごドア(図示を省略する)が設けられており、各階に停止した際に、かごドア及び乗り場ドアが開くことで、乗りかご110への人や荷物の乗り降りが行われる。
【0020】
[釣合錘]
釣合錘120は、乗りかご110との釣り合いをとるために設けられたものであり、主ロープ130に支持された状態で昇降路100内に収容されている。釣合錘120の上部には、錘側プーリ121が設けられており、主ロープ130は、錘側プーリ121に巻き掛けられることによって釣合錘120を支持している。
【0021】
昇降路100内には、一対の釣合錘用ガイドレール122(
図2参照)が、昇降路100の上下方向に延在するように設けられている。これにより、釣合錘120は、一対の釣合錘用ガイドレール122に案内されて昇降路100内を昇降する。
【0022】
[巻上機]
巻上機10は、昇降路100の最下部に配置されており、主ロープ130を介して乗りかご110及び釣合錘120をつるべ式に昇降させるものである。巻上機10は、図示を省略する制御部によってその駆動が制御される。巻上機10は、筐体12と綱車13とを有して構成されており、
図2に示すように、乗りかご110側に筐体12が位置し、昇降路100の壁面側に綱車13が位置するように配置されている。
【0023】
[第1従動プーリ、第2従動プーリ]
第1従動プーリ140と、第2従動プーリ150は、昇降路100の最上部に固定されている。主ロープ130の一端と他端は、昇降路100の最上部に固定されている。主ロープ130は、釣合錘120に設けられた錘側プーリ121から第1従動プーリ140に装架され、そして、巻上機10、第2従動プーリ150、乗りかご110のせり上げプーリ111の順に巻き掛けられている。
【0024】
1−2.巻上機の構成
次に、本実施形態における巻上機10について説明する。
図3は、本実施形態の巻上機10の正面図である。また、
図4は、
図3のS
1−S
1線上に沿う断面を見たときの断面構成図である。
【0025】
巻上機10は、筐体12と、主軸11と、綱車13と、回転子ブロック35と、モータ固定子26と、モータ回転子36とを有する。また、巻上機10は、遮蔽体17と、防護カバー16とを有する。なお、本実施形態の巻上機10は、モータ固定子26の半径方向の外側にモータ回転子36が配置されるアウターローター式の巻上機10である。
【0026】
下記の説明においては、主軸11の軸方向をX方向とする。また、主軸11の軸方向に対して鉛直方向であって、乗りかご110の昇降方向をY方向とする。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。また、下記の説明においては、X方向において、筐体12が設けられる側を他側とし、綱車13が設けられる側を一側とする。さらに、Y方向においては、昇降路100の上方側を上側、下方側を下側とする。
【0027】
[筐体]
筐体12は、主軸11が取り付けられるボス部21と、モータ固定子26が固定される取付部23と、ボス部21と取付部23とを連結する第1連結部22とを有している。また、筐体12は、後述する回転子ブロック35の外周面を覆う外壁部25と、取付部23と外壁部25とを連結する第2連結部24とを有している。
【0028】
ボス部21は、筐体12のYZ平面上におけるほぼ中央部に設けられ、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されている。ボス部21の内周面側にはX方向を軸方向とする主軸11の端部が嵌合され、主軸11を片持ち支持する。
【0029】
取付部23は、ボス部21の外径よりも大きい内径を有し、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されており、ボス部21の半径方向の外側に配置されている。そして、取付部23の半径方向の外側における外周面にはモータ固定子26が固定されている。第1連結部22は、ボス部21及び取付部23の、X方向における他側の端部に設けられており、ボス部21と取付部23とを連結する板状部材で構成されている。
【0030】
外壁部25は、取付部23の外径よりも大きい内径を有すると共に、内周面がYZ平面において円状に形成されたX方向を軸方向とする筒状部材で構成されており、取付部23の半径方向の外側に配置されている。また、外壁部25は、取付部23の外周面と、外壁部25の内周面との間に、モータ固定子26と、後述するモータ回転子36が取り付けられた回転子ブロック35とを配置することが可能な空間を介して、取付部23の半径方向の外側に設けられている。
【0031】
第2連結部24は、取付部23及び外壁部25の、X方向における他側の端部に設けられており、取付部23及び外壁部25を連結する板状部材で構成されている。また、外壁部25の、X方向における一側の端面は、後述する遮蔽体17及び防護カバー16の取付面となる。
【0032】
また、外壁部25のY方向における上側及び下側には開口部25aが設けられている。外壁部25のY方向における上側及び下側には、それぞれ、ブレーキ機構18、19が設けられている。それぞれのブレーキ機構18、19のブレーキライニング18a、19aが、対応する開口部25a内において、後述する回転子ブロック35の外周面に対向するように配置される。
【0033】
[主軸]
主軸11は、X方向を軸方向とする円柱状部材で構成されている。主軸11のX方向における一側の端部の外周面には軸受け14が設けられ、X方向における他側が筐体12のボス部21に嵌合することにより、ボス部21に片持ち支持されている。
【0034】
[綱車]
綱車13は、外周面に主ロープ130を巻き掛けることができるX方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されており、主軸11の半径方向の外側に配置されると共に、主軸11のX方向の一側に配置されている。また、綱車13の内周面側には、第3連結部32を介して、軸受けハウジング31が配置されている。軸受けハウジング31も、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成されており、その内周面はX方向の一側に設けられた軸受け14に支持されている。これにより、軸受けハウジング31は、主軸11に対して回転可能に支持されている。さらに、軸受けハウジング31の、X方向における一側の端面は、軸受けカバー15によって覆われている。
【0035】
第3連結部32は、綱車13の内周面と軸受けハウジング31の外周面とを連結する板状部材である。第3連結部32によって綱車13と軸受けハウジング31とが連結されることで、綱車13は主軸11に回転可能に支持されると共に、軸受けハウジング31の主軸11に対する回転に伴い、綱車13も回転する。
【0036】
[回転子ブロック]
回転子ブロック35は、取付部23の外径よりも大きい内径を有すると共に、外壁部25の内径よりも小さい外径を有し、X方向を軸方向とする円筒形状の部材で構成され、第4連結部34を介して綱車13の半径方向の外側に配置されている。また、回転子ブロック35の内周面にはモータ回転子36が取り付けられている。
【0037】
また、回転子ブロック35の半径方向の外側においては、Y方向における上側及び下側に、回転子ブロック35の外周面に接して回転子ブロック35の回転を制動するブレーキ機構18,19が配置されている。ブレーキ機構18,19は、そのブレーキライニング18a,19aを回転子ブロック35の外周面に押し当てることにより、回転子ブロック35及び綱車13の回転を制動する。
【0038】
回転子ブロック35は、その外周面の周方向に沿って形成された溝部35aを有している。溝部35aは、回転子ブロック35の外周面において、ブレーキライニング18aが圧接する点よりも綱車13側に形成されており、回転子ブロック35の円周方向に沿ってその外周面から半径方向の内側に向けて一定の深さを有するように形成されている。この溝部35aには、後述する遮蔽体17の端部が挿入されている。
【0039】
第4連結部34は、綱車13のX方向における他側の端部と、回転子ブロック35のX方向における一側の端部35bとを連結する板状部材である。この第4連結部34によって、モータ固定子26及びモータ回転子36は綱車13側に露出されない構成になっている。また、第4連結部34によって、綱車13と回転子ブロック35とが連結されることで、回転子ブロック35は主軸11に回転可能に支持され、回転子ブロック35、綱車13及び軸受けハウジング31は主軸11を中心として一体に回転する。
【0040】
本実施形態では、綱車13、軸受けハウジング31、第3連結部32、回転子ブロック35及び第4連結部34は一体に形成されているが、それぞれ別々に成型し、焼きばめなどで連結してもよい。
【0041】
[モータ固定子]
モータ固定子26は、鉄芯及び鉄芯に巻き回されたコイルで構成されている。複数のモータ固定子26が取付部23の外周面に取り付けられている。
【0042】
[モータ回転子]
モータ回転子36は、磁性体からなる部材で構成されており、回転子ブロック35の内周面に固定されている。また、モータ回転子36は、取付部23の外周面に取り付けられたモータ固定子26とエアギャップを挟んで径方向に対向するように、回転子ブロック35の内周面に固定されている。
【0043】
本実施形態では、モータ固定子26に交流電流を流すと、回転子ブロック35の周方向に回転する磁界が発生するため、モータ回転子36に電磁力が作用する。これにより、回転子ブロック35及び綱車13は主軸11を回転軸として一体に回転する。そして、綱車13が回転することで、主ロープ130が綱車13に巻き取られる。
【0044】
また、巻上機10の制動時においては、ブレーキ機構18、19が駆動することで、ブレーキライニング18a、19aが回転子ブロック35の外周面に押し付けられる。これにより、回転子ブロック35及び綱車13の回転が制動される。
【0045】
次に、本実施形態の巻上機10の遮蔽体17及び防護カバー16について説明する。
図5は、本実施形態の巻上機10の遮蔽体17及び防護カバー16の分解斜視図である。
【0046】
[遮蔽体]
遮蔽体17は、円形状の開口部を有するほぼリング状の平板で構成されており、筐体12の外壁部25のX方向における綱車13側の端面にネジ40で、後述する防護カバー16と共に固定されている。この遮蔽体17は、4つの遮蔽片17a、17b、17c、17dで構成されている。4つの遮蔽片17a、17b、17c、17dは、周方向に等角度間隔で分割された円弧状の平板であり、それぞれの遮蔽片17a、17b、17c、17dをつなぎ合わせることにより、ほぼリング状の平板に形成される。
【0047】
遮蔽体17の内径は、回転子ブロック35の外径よりもやや小さく形成されており、遮蔽体17を筐体12に固定した際に、遮蔽体17の半径方向における内側の端部が回転子ブロック35に設けられた溝部35aに入り込む径に設定されている。
【0048】
図6は、
図4の領域A1の拡大図であり、
図7は、
図4の領域A2の拡大図である。
図6及び
図7に示すように、回転子ブロック35の溝部35aに入り込んだ遮蔽体17の端部と回転子ブロック35の溝部35aの底面との距離D1は、回転子ブロック35の回転時に遮蔽体17と回転子ブロック35とが干渉しないように設定されている。これにより、遮蔽体17が回転子ブロック35の回転を妨げることはない。
【0049】
また、溝部35aの側壁と、遮蔽体17の側面との間隔D2は、例えば0.5〜1mmとなるように設定されている。また、遮蔽体17のX方向の厚みは、溝部35aの大きさを考慮して、適宜設定されるものである。
【0050】
ところで、巻上機10の回転時においては、回転子ブロック35及び綱車13の遠心力によって、主軸11の軸方向の一側が、主軸11の軸方向の他側に対して高圧側となる。そのため、巻上機10の内部と外部の圧力差によって、回転子ブロック35の外周面と外壁部25の内周面との隙間には、巻上機10の上面や側面等に飛散した油が浸入してくる場合がある。
【0051】
本実施形態では、遮蔽体17によって回転子ブロック35の外周面と外壁部25の内周面との間を綱車13が設けられる側から遮蔽している。さらに、本実施形態では、回転子ブロック35の溝部35aと、溝部35aに挿入された遮蔽体17とにより、ラビリンス構造(ラビリンスシール)からなる非接触式シール機構50が構成される。
【0052】
非接触式シール機構50は、油の浸入を防ぐ抵抗となる。この非接触式シール機構50により、綱車13側から、外壁部25の内周面と回転子ブロック35の外周面との間の隙間に油が流れ込むのを防ぐことができる。これにより、回転子ブロック35の外周面のブレーキライニング18a、19aが圧接する接触面への油の浸入を抑制することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、遮蔽体17は、ほぼリング状として説明したが、間隔D1を一定に保つことができれば、これに限られない。遮蔽体17の形状としては、例えば、平板状の部材の円形の開口が形成されていればよい。すなわち、遮蔽体17としては、例えば四角形状の平板に円形の開口が形成された形状であってもよい。
【0054】
[防護カバー]
防護カバー16は、遮蔽体17と同様、回転子ブロック35と外壁部25との間の隙間を綱車13側に露出させないように設けられるものであり、遮蔽体17よりもX方向における綱車13側に設けられている。遮蔽体17が、回転子ブロック35側の先端が回転子ブロック35の外周面に設けられた溝部35aに入り込むように設けられる構成であるのに対し、防護カバー16は、
図4に示すように、後述する庇部62が回転子ブロック35のX方向における一側の先端35bよりも綱車13側に張り出すように構成されている点で異なる。また、遮蔽体17は、回転子ブロック35の全周に渡って設けられているのに対し、防護カバー16は、回転子ブロック35のY方向における上半分を含む所定の範囲内に設けられている点で異なる。
【0055】
防護カバー16は、遮蔽体17を介して外壁部25のX方向における一側の端面に固定される固定部61と、回転子ブロック35の外周面を綱車13側から遮蔽する庇部62とで構成されている。また、
図3及び
図5に示すように、庇部62の、綱車13に巻き掛けられた主ロープ130に対向する面には凹部63が設けられている。
【0056】
ここで、
図3に示すように、主軸11の中心位置を通るZ方向の線を線Laとし、線LaよりもY方向における上部側を上部領域B1、線LaよりもY方向における下部側を下部領域B2とする。
【0057】
上部領域B1における防護カバー16は、回転子ブロック35の外周に沿って円弧状に設けられている。一方、下部領域B2における防護カバー16は、線Laの位置における回転子ブロック35の外周面のY方向における接線に沿って設けられている。また、下部領域B2における防護カバー16のY方向の端部の位置は、本実施形態では、綱車13のY方向の下側における端部を通るZ方向の線を線Lbとすると、線Laと線Lbとの間に設定されている。
【0058】
しかしながら、下部領域B2における防護カバー16のY方向の端部の位置は、特に規定されるものではない。防護カバー16のY方向に沿って伸びる領域が、筐体12のY方向の長さの範囲内に収まればよく、外壁部25と回転子ブロック35との間の隙間を遮蔽できる範囲に配置されるように設計されていればよい。
【0059】
固定部61は、遮蔽体17のX方向の一側の面に平行な面を有する板状部材で構成されている。また、
図5に示すように、固定部61の、遮蔽体17に設けられたネジ孔70に対向する位置にはネジ孔65が設けられている。そして、防護カバー16は、遮蔽体17のネジ孔70に固定部61のネジ孔65が合わさるように外壁部25のX方向における一側の端面に配置され、ネジ40を固定部61のネジ孔65及び遮蔽体17のネジ孔70に螺合することで、固定される。また、固定部61は、外壁部25の内周面よりも半径方向の内側に突出しないように構成されている。
【0060】
なお、上部領域B1における固定部61は、遮蔽体17と同様の曲率を有する円弧状に形成されているため、固定部61のネジ孔65と遮蔽体17のネジ孔70をX方向における同一位置に設けることができる。しかしながら、下部領域B2においては、防護カバー16は、回転子ブロック35の外周面の接線に沿ってY方向の下側に延在するように設けられているため、遮蔽体17とX方向に重ならない領域がある。防護カバー16を遮蔽体17と重ならない領域で固定する場合には、固定部61は、外壁部25のX方向における一側の端面に直接ネジ止めしてもよい。
【0061】
庇部62は、固定部61からX方向の一側であって、綱車13に近づく方向に斜めに張り出すように設けられている。また、庇部62の綱車13側における先端部の位置は、
図4に示すように、回転子ブロック35の外周面よりも、綱車13側となるように設定されると共に、綱車13のX方向における端面13aよりも筐体12側に位置するように設定される。
【0062】
また、上部領域B1における庇部62は、遮蔽体17と同様の曲率を有する円弧状に形成されており、X方向の一側の面が、主軸11の中心軸に向かって斜めになるように形成されている。一方、下部領域B2における庇部62は、Y方向に延在する板状部材で構成され、X方向の一側の面が、Y方向における主軸11の中心を通る中心線に向かって斜めになるように形成されている。
【0063】
図8Aは、
図3におけるS
2−S
2線上に沿う防護カバー16の断面構成図である。
図8Aに示すように、本実施形態の防護カバー16は、その庇部62が、YZ平面に対してX方向の一側に角度α1だけ傾くように形成されている。このとき、角度α1は、0<α1<90度の範囲内であり、かつ、庇部62が外壁部25と回転子ブロック35との間の隙間をX方向の一側から遮蔽できる角度に設定される。
【0064】
一方、
図8Bは、
図3におけるS
3−S
3線上に沿う防護カバー16の断面構成図であり、凹部63が設けられた領域における断面構成図である。凹部63は、綱車13に巻き掛けられた主ロープ130に対向する位置に設けられ、庇部62が主ロープ130に干渉しないように設けられるものである。凹部63は、YZ平面に対してX方向の一側に角度α2だけ傾くように形成されている。このとき、角度α2は、0≦α2<α1の範囲内に設定される。なお、
図5に示すように、凹部63と凹部63が設けられていない庇部62との間には、段差を塞ぐ側壁部66が設けられている。これにより、凹部63と庇部62との間から水滴が漏れることはない。
【0065】
本実施形態では、防護カバー16を設けることにより、昇降路100の上部側から落ちてくる水滴や塵が、回転子ブロック35と外壁部25との間に浸入することを防ぐことができる。
【0066】
昇降路100上部から水滴が落ちてきた場合において、巻上機10のY方向における上側の防護カバー16に落ちてくる水滴の流れる経路を
図6の矢印F1で示す。一方、昇降路100上部から水滴が落ちてきた場合において、巻上機10のY方向の下側に付着した水滴の流れる経路を
図7の矢印F2で示す。
【0067】
昇降路100上部から巻上機10に水滴が落ちてきた場合には、
図6のF1に示すように、防護カバー16の庇部62を伝ってY方向に下側に流れる。このとき、庇部62はX方向の一側の面に斜面を有しており、その斜面を水滴が伝って流れるため、回転子ブロック35のX方向における一側の先端35bからより離れた位置に水滴が流れ落ちる。したがって、回転子ブロック35と外壁部25との間の隙間に水滴が入り込み、モータ固定子26やモータ回転子36が配置される筐体12内部に水滴が入り込むのを防ぐことができる。
【0068】
一方、昇降路100上部から巻上機10のY方向における下部に水滴が付着した場合には、
図7の矢印F2に示すように、綱車13や回転子ブロック35のX方向の一側の面を伝った後、遮蔽体17を伝ってY方向に下側に流れ落ちる。このため、巻上機10の防護カバー16が設けられていないY方向における下側においては、水滴や塵は重力方向に沿って流れ落ちるため、防護カバー16が設けられていなくても、水滴や塵が回転子ブロック35と外壁部25との間に入り込むことはない。
【0069】
また、本実施形態では、庇部62をYZ面に対して斜めに設けることにより、昇降路100の上部側から落ちてくる水滴を回転子ブロック35から離れた側に流すことができる。これにより、回転子ブロック35内への水滴や塵の浸入をより確実に防ぐことができる。
【0070】
本実施形態では、庇部62のYZ平面に対する角度α1を0<α1<90℃とし、凹部63のYZ平面に対する角度α2を0≦α2<α1の範囲としたが、角度α1を角度α2に合わせてもよい。すなわち、庇部62全体を凹部63の角度に合わせてもよい。しかしながら、庇部62の全体の角度α1を凹部63の角度α2に合わせると、YZ平面に対する角度が小さくなるため、回転子ブロック35の近くに水滴や塵が落ちてしまう。これに対し、本実施形態のように、主ロープ130に対向する位置に凹部63を設け、その他の庇部62は、水滴や塵がより回転子ブロック35から離れる方向に流れ易い角度に構成することで、回転子ブロック35内への防滴性能及び防塵性能を高めることができる。
【0071】
なお、万が一、跳ね返りなどにより、水滴や油が回転子ブロック35の外周面に設けられた溝部35aに落ちたとしても、回転子ブロック35の遠心力によって、溝部35aに入った水滴や油はX方向の一側に飛ばされる。これにより、水滴や油が筐体12の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態では、防護カバー16を主軸11の中心位置よりもY方向の下側にまで延在させることにより、昇降路100上部から落ちてくる水滴や塵が回転子ブロック35と外壁部25との間に浸入するのをより確実に防ぐことができる。
【0073】
ところで、主軸11の中心位置よりもY方向の下側(
図3の下部領域B2)に設けた防護カバー16を、回転子ブロック35の外周面に沿って設けた場合には、防護カバー16と遮蔽体17との間に水滴が溜まってしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、主軸11の中心位置よりもY方向の下側に設けた防護カバー16は、Y方向に沿うように設けられている。これにより、防護カバー16と遮蔽体17との間に付着する水滴も常にY方向の下側に流れるため、防護カバー16と遮蔽体17との間に水滴が溜まることはない。
【0074】
このように、本実施形態では、外壁部25から回転子ブロック35側に張り出すように設けられた防護カバー16は、Y方向における下側が常に開放されるように設計されている。これにより、昇降路100の上部から落ちてくる水滴や塵を巻上機10のY方向の下側(重力方向)に流すことができる。
【0075】
また、本実施形態では、防護カバー16のX方向の一側の端部は、綱車13のX方向の一側の端部13aよりも筐体12側となるように設計されている。このため、防護カバー16を取り付けることにより、巻上機10のX方向の厚みは、防護カバー16を取り付けていない状態に比較して増大することはない。これにより、通常の巻上機(すなわち、防護カバー16が取り付けられていない巻上機)を取り付ける場合と同様の床面積の昇降路内に、本実施形態の巻上機10を取り付けることができる。
【0076】
2.第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態に係るエレベーター装置の巻上機200について説明する。
図9は、本実施形態の巻上機200の正面図である。また、
図10は、
図9のS
4−S
4線上に沿う断面構成図である。本実施形態は、防護カバー160の構成が第1の実施形態と異なる例である。
図9及び
図10において、
図3及び
図4に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0077】
図9、
図10に示すように、本実施形態における防護カバー160は、庇部62のX方向における他側の面において、回転子ブロック35側に突出するように設けられた凸部161を有する。凸部161は、庇部62において、回転子ブロック35のX方向の一側における先端35bよりも、綱車13に近い側に設けられており、
図9に示すように、防護カバー160の上部領域B1及び下部領域B2における庇部62の全周に渡って設けられている。また、凸部161は、凸部161近傍に配置される回転子ブロック35のX方向の一側における端面や第4連結部34等に当接しない程度の大きさに形成されている。
【0078】
図11Aは、
図9におけるS
5−S
5線上に沿う防護カバー160の断面構成図である。
図11Aに示すように、本実施形態の防護カバー160は、その庇部62が、YZ平面に対してX方向の一側に角度α1だけ傾くように形成されている。このとき、角度α1は、0<α1<90度の範囲内であり、かつ、庇部62が外壁部25と回転子ブロック35との間の隙間をX方向の一側から遮蔽できる角度に設定される。
【0079】
一方、
図11Bは、
図9におけるS
6−S
6線上に沿う防護カバー160の断面構成図であり、凹部63が設けられた領域における断面構成図である。凹部63は、綱車13に巻き掛けられた主ロープ130に対向する位置に設けられ、庇部62が主ロープ130に干渉しないように設けられるものである。凹部63は、YZ平面に対してX方向の一側に角度α2だけ傾くように形成されている。このとき、角度α2は、0≦α2<α1の範囲内に設定される。さらに、庇部62の凹部63と固定部61との間の庇部62において、X方向における他側の面には凸部161が設けられている。
【0080】
本実施形態では、防護カバー160に凸部161が設けられている。これにより、防護カバー160の庇部62の端面に付着した水滴や油が、巻上機10内部の温度上昇、或いは、温度降下によって巻上機10内部の圧力が下がり、巻上機10内部に引き込まれるのを防ぐことができる。したがって、第1の実施形態に係る巻上機に比較し、より防滴性能及び防塵性能の向上を図ることができる。
【0081】
その他、本実施形態の巻上機200においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
本実施形態では、防護カバー160の凸部161は、回転子ブロック35のX方向の一側の先端35bよりも綱車13側に設ける例とした。しかしながら、本実施形態は、これに限られるものではなく、凸部161は、回転子ブロック35や第4連結部34等の回転体に当接しない位置であれば、庇部62のX方向の他側の面(すなわち、裏側の面)のどこに設けられてもよい。
【0083】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。