特許第6836890号(P6836890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6836890-空調システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836890
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/33 20180101AFI20210222BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20210222BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20210222BHJP
   F24F 11/81 20180101ALI20210222BHJP
   F24F 11/83 20180101ALI20210222BHJP
   F24F 3/147 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   F24F11/33
   F24F11/46
   F24F11/72
   F24F11/81
   F24F11/83
   F24F3/147
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-240529(P2016-240529)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-96594(P2018-96594A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】山形 光生
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−162411(JP,A)
【文献】 特開平05−141721(JP,A)
【文献】 特開平10−300172(JP,A)
【文献】 特開2015−059692(JP,A)
【文献】 特開2011−058676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
F24F 3/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される冷水と外気との熱交換により外気を冷却除湿して室内に供給する外調機と、
供給される冷水と室内空気との熱交換により室内空気を冷却する室内空調機と、
前記外調機及び前記室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給自在な冷水循環供給部と、が備えられている空調システムであって、
前記冷水循環供給部には、前記冷熱源にて生成した往き冷水を前記外調機及び前記室内空調機に供給する往路と、前記外調機及び前記室内空調機からの還り冷水を前記冷熱源に還す還路と、が備えられ、
前記往路には、前記冷熱源に接続された主往路と、前記主往路の下流側から分岐して前記外調機に往き冷水を供給する外調機用往路と、前記主往路の下流側から分岐して前記室内空調機に往き冷水を供給する室内空調機用往路と、が備えられ、
前記還路には、前記外調機からの還り冷水が通流する外調機用還路と、前記室内空調機からの還り冷水が通流する室内空調機用還路と、前記外調機用還路と前記室内空調機用還路と前記冷熱源とに接続されて前記外調機用還路を通流する還り冷水と前記室内空調機用還路を通流する還り冷水とを合流させて前記冷熱源に還す主還路と、が備えられ、
前記冷水循環供給部は、前記冷熱源にて生成した冷水を前記主往路、前記外調機用往路、前記外調機用還路、前記主還路を通じて前記外調機に循環供給しながら、前記冷熱源にて生成した冷水を前記主往路、前記室内空調機用往路、前記室内空調機用還路、前記主還路を通じて前記室内空調機にも循環供給するように構成され、
前記冷熱源にて生成した冷水を前記冷水循環供給部にて前記外調機と前記室内空調機の両方に循環供給している状態で前記外調機用還路を通流する前記外調機からの還り冷水の一部を前記室内空調機用往路を通流する前記室内空調機への往き冷水に混合して当該往き冷水を昇温させる混合部と、前記混合部による冷水の混合割合を調整自在な混合割合調整部と、前記室内空調機への往き冷水の温度が設定温度範囲内になるように前記混合割合調整部を制御する制御部と、が備えられている空調システム。
【請求項2】
前記室内空調機が複数備えられ、
前記冷水循環供給部が、複数の前記室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給自在に構成され、
前記混合部が、複数の前記室内空調機への往き冷水に対して、前記外調機からの還り冷水の一部を混合するように構成されている請求項記載の空調システム。
【請求項3】
前記混合部が、複数の前記室内空調機よりも前記外調機に近い部位に配置されている請求項記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調対象域の空調を行う空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空調システムとして、特許文献1に示すように、供給される冷水と外気との熱交換により外気を冷却除湿して室内に供給する外調機(文献中の副空調機3)と、供給される冷水と室内空気との熱交換により室内空気を冷却する室内空調機(文献中の主空調機2)と、外調機及び室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給自在な冷水循環供給部とが備えられた空調システムが知られている(特許文献1の図1等参照)。
この空調システムは、外調機と室内空調機の各々に冷熱源からの設定温度の低温の冷水を供給するので、外調機による潜熱負荷の処理と、室内空調機での顕熱負荷の処理を十分に行うことができ、潜熱・顕熱分離空調を適切に実現することができる。
【0003】
また、特許文献2に示すように、外調機(文献中の第1コイル31を有する空調機部分)と、室内空調機(文献中の第2コイル32を有する空調機部分)と、外調機及び室内空調機に対して冷熱源から冷水を直列に循環供給自在な冷水循環供給部とが備えられた空調システムも知られている(特許文献2の図2図4、段落[0009]、[0015]等参照)。
この空調システムは、冷熱源から低温の冷水を外調機に供給し、外調機から排出される中温の冷水の全量を室内空調機に供給するので、外調機による潜熱負荷の処理を十分に行えながら、外調機から排出される中温の冷水を利用して室内空調機による顕熱負荷の処理を行うことができる。
【0004】
更に、この特許文献2に記載の空調システムでは、外調機から排出されて室内空調機に供給される中温の冷水に対して、冷熱源からの低温の冷水を混合する配管及び弁(文献中の中間配管313及び第2二方弁62)が設けられ、低温の冷水の混合により中温の冷水の温度を低下させる形態で室内空調機の負荷処理度合いを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−058676号公報
【特許文献2】特開2015−059692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外調機を大容量化し、潜熱負荷に加えて一部の顕熱負荷をも外調機にて処理することが検討されている。このようにすれば、室内空調機が処理すべき顕熱負荷が小さくなり、室内空調機に対する冷水量の低減や配管のサイズタウン等を図ることが可能となる。
【0007】
この点、特許文献1記載の空調システムは、外調機と室内空調機の各々に冷熱源からの設定温度の低温の冷水を供給するので、上述のように、外調機を大容量化し、潜熱負荷に加えて一部の顕熱負荷をも外調機で処理する場合に、処理すべき顕熱負荷が低減された処理負荷の小さな室内空調機に対して供給する冷水の温度が無用に低過ぎることになり、室内空調機への冷水送水による熱損失が大きいという問題がある。
【0008】
また、特許文献2記載の空調システムは、冷熱源から低温の冷水を外調機に供給し、外調機から排出される中温の冷水の室内空調機に供給するので、上述のように、外調機を大容量化し、潜熱負荷に加えて一部の顕熱負荷をも外調機で処理する場合に、外調機から排出される中温の冷水の温度がかなり高くなる。しかも、外調機と室内空調機とに冷水を直列に供給するが故に、外調機から排出される中温の冷水の全量を室内空調機に供給するので、高温化した多量の中温の冷水に対して低温の冷水を混合して低温化を図るにしても、低温化できる範囲に限度がある。よって、室内空調機に供給する中温の冷水を適温まで低温化できず、室内空調機による顕熱負荷の処理が適切に行えなくなる虞がある。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、外調機と室内空調機の各々に冷熱源から冷水を供給して、外調機による潜熱負荷の処理と室内空調機による顕熱負荷の処理の両方を適切に行うことができるとともに、室内空調機への冷水送水による熱損失を効率的に抑制することができる空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、供給される冷水と外気との熱交換により外気を冷却除湿して室内に供給する外調機と、
供給される冷水と室内空気との熱交換により室内空気を冷却する室内空調機と、
前記外調機及び前記室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給自在な冷水循環供給部と、が備えられている空調システムであって、
前記冷水循環供給部には、前記冷熱源にて生成した往き冷水を前記外調機及び前記室内空調機に供給する往路と、前記外調機及び前記室内空調機からの還り冷水を前記冷熱源に還す還路と、が備えられ、
前記往路には、前記冷熱源に接続された主往路と、前記主往路の下流側から分岐して前記外調機に往き冷水を供給する外調機用往路と、前記主往路の下流側から分岐して前記室内空調機に往き冷水を供給する室内空調機用往路と、が備えられ、
前記還路には、前記外調機からの還り冷水が通流する外調機用還路と、前記室内空調機からの還り冷水が通流する室内空調機用還路と、前記外調機用還路と前記室内空調機用還路と前記冷熱源とに接続されて前記外調機用還路を通流する還り冷水と前記室内空調機用還路を通流する還り冷水とを合流させて前記冷熱源に還す主還路と、が備えられ、
前記冷水循環供給部は、前記冷熱源にて生成した冷水を前記主往路、前記外調機用往路、前記外調機用還路、前記主還路を通じて前記外調機に循環供給しながら、前記冷熱源にて生成した冷水を前記主往路、前記室内空調機用往路、前記室内空調機用還路、前記主還路を通じて前記室内空調機にも循環供給するように構成され、
前記冷熱源にて生成した冷水を前記冷水循環供給部にて前記外調機と前記室内空調機の両方に循環供給している状態で前記外調機用還路を通流する前記外調機からの還り冷水の一部を前記室内空調機用往路を通流する前記室内空調機への往き冷水に混合して当該往き冷水を昇温させる混合部と、前記混合部による冷水の混合割合を調整自在な混合割合調整部と、前記室内空調機への往き冷水の温度が設定温度範囲内になるように前記混合割合調整部を制御する制御部と、が備えられている点にある。
【0011】
本構成によれば、外気を冷却除湿して室内に供給する外調機と、室内空気を冷却して室内に供給する室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給することにより、外調機による潜熱負荷の処理と室内空調機による顕熱負荷の処理の両方を適切に行うことができる。
更に、外調機にて潜熱負荷に加えて一部の顕熱負荷をも処理することが可能となり、その場合、室内空調機が処理すべき顕熱負荷が小さくなり、室内空調機に対する冷水量の低減や配管のサイズタウン等を図ることができる。
しかも、混合部での冷水の混合により外調機からの還り冷水を活用して室内空調機への往き冷水を昇温するので、上述のように外調機にて潜熱負荷に加えて一部の顕熱負荷をも処理する場合でも、処理負荷の小さな室内空調機への冷水送水による熱損失を効率的に抑制することができる。
これらのことから、システム全体としての省エネルギ化を効果的に実現することができる。
しかも、本構成によれば、混合割合調整部により混合部での冷水の混合割合を調整することにより、室内空調機への往き冷水の温度を調整することができる。そして、制御部により混合割合調整部を制御することにより、室内空調機への往き冷水の温度を設定温度範囲内に維持することができる。
よって、混合部での冷水の混合による室内空調機への往き冷水の昇温により、室内空調機への冷水送水による熱損失を抑制しながら、室内空調機への往き冷水の温度のバラツキによって室内空調機の空調温度が不安定になるのを回避することができる。
【0014】
本発明の第特徴構成は、前記室内空調機が複数備えられ、
前記冷水循環供給部が、複数の前記室内空調機に対して冷熱源から冷水を並列に循環供給自在に構成され、
前記混合部が、複数の前記室内空調機への往き冷水に対して、前記外調機からの還り冷水の一部を混合するように構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、複数の室内空調機により室内の顕熱負荷を適切に処理することができる。そして、複数の室内空調機への往き冷水に対して外調機からの還り冷水の一部を混合するので、外調機からの還り冷水を更に活用して複数の室内空調機への往き冷水を昇温することができる。
よって、外調機にて潜熱負荷に加えて顕熱負荷の一部も処理する場合に、複数の室内空調機への冷水送水による熱損失を効率的に抑制することができ、更なる省エネルギ化を実現することができる。
【0016】
本発明の第特徴構成は、前記混合部が、複数の前記室内空調機よりも前記外調機に近い部位に配置されている点にある。
【0017】
冷水循環供給部において、外調機側の配管は複数の室内空調機側の配管よりも配管サイズが大きくなる傾向にある。本構成によれば、外調機に近い部位にて冷水の混合処理を行うので、配管サイズの大きい外調機側の配管径路を短く構成し易くなり、冷水循環供給部を効率的に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】空調システムの概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る空調システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る空調システムの構成を概念的に示したものである。同図1に示すように、この空調システムには、外気を冷却除湿して室内に供給する外調機1と、室内空気を冷却する複数の室内空調機2と、これらの冷熱源としての冷凍機(熱源機)3と、外調機1及び室内空調機2に対して冷凍機3から冷水Rを並列に循環供給自在な冷水循環供給部4と、空調システムを制御する制御装置10(制御部の一例)とが備えられている。当該空調システムは、外調機1にて潜熱負荷と一部の顕熱負荷の処理とを行い、複数の室内空調機2にて残りの顕熱負荷の処理を行うように構成されている。
【0020】
前記外調機1は、例えば、熱交換器や送風機やエアフィルター等を備えたエアハンドリングユニット等から構成され、冷水循環供給部4により供給される冷水Rと外気とを熱交換させることで、外気を露点温度以下に冷却して所望の湿度に除湿し、低温の除湿外気を室内に供給する。外調機1は、このように低温の除湿外気を室内に供給することで、潜熱負荷の処理と一部の顕熱負荷の処理とを行う。
【0021】
前記室内空調機2は、例えば、熱交換器や送風機等を備えたファンコイルユニット等から構成され、冷水循環供給部4により供給される冷水Rと室内空気とを熱交換させることで、室内空気を所望の温度まで冷却し、その冷却空気を室内に供給する。室内空調機2は、このように室内空気を冷却して室内に供給することで、残りの顕熱負荷の処理を行う。
【0022】
前記冷凍機3は、例えば、インバータ制御等により能力調整が可能なターボ冷凍機や吸収冷凍機等から構成され、差圧制御等により還り冷水Rを設定温度に冷却し、設定温度の往き冷水Rを生成する。また、制御装置10は、例えば、通信部や演算部を備えたコンピュータ等から構成され、空調システムの各部との通信により空調システムの作動状態を制御する。
【0023】
前記冷水循環供給部4は、冷凍機3にて生成した往き冷水Rを外調機1及び複数の室内空調機2に供給する往路5と、外調機1及び複数の室内空調機2からの還り冷水Rを冷凍機3に還す還路6と、ポンプPとが備えられ、ポンプPの吐出圧により、外調機1と室内空調機2に対して冷凍機3から冷水Rを並列に循環供給するとともに、複数の室内空調機2の各々に対しても冷凍機3から冷水Rを並列に循環供給するように構成されている。
【0024】
冷水循環供給部4の往路5には、例えば、冷凍機3に接続された主往路5Aと、主往路5Aの下流側から分岐して外調機1に接続された外調機用往路5Bと、主往路5Aの下流側から分岐して室内空調機2側に向かう室内空調機用往路5Cと、室内空調機用往路5Cの下流側から分岐して複数の室内空調機2の各々に接続された複数の室内空調機用個別往路5Dとが備えられている。
【0025】
冷水循環供給部4の還路6には、例えば、外調機1に接続された外調機用還路6Aと、複数の室内空調機2の各々に接続された複数の室内空調機用個別還路6Bと、複数の室内空調機用個別還路6Bが合流した室内空調機用還路6Cと、外調機用還路6Aと室内空調機用還路6Cとが合流した主還路6Dとが備えられており、主還路6Dが冷凍機3に接続されている。
【0026】
冷水循環供給部4は、冷凍機3、主往路5A、外調機用往路5B、外調機1、外調機用還路6A、主還路6Dの順に冷水Rを通流させることで、外調機1に対して冷凍機3から冷水Rを循環供給する。
また、冷水循環供給部4は、冷凍機3、主往路5A、室内空調機用往路5C、各々の室内空調機用個別往路5D、各々の室内空調機2、各々の室内空調機用個別還路6B、室内空調機用還路6C、主還路6Dの順に冷水Rを通流させることで、冷凍機3から冷水Rを複数の室内空調機2に循環供給する。
このようにして、冷水循環供給部4は、外調機1と室内空調機2に対して冷凍機3から冷水Rを並列に循環供給するとともに、複数の室内空調機2の各々に対して冷凍機3から冷水Rを並列に循環供給する。
【0027】
なお、冷水循環供給部4の外調機用還路6Aには、外調機1の処理負荷に応じて外調機1に通流させる冷水Rの流量を制御する流量制御弁V1が介装されている。また、冷水循環供給部4の室内空調機用個別還路6Bの各々にも、当該還路6Bに設けられた室内空調機2の処理負荷に応じて室内空調機2に通流させる冷水Rの流量を制御する流量制御弁V2が介装されている。
【0028】
そして、この空調システムには、外調機1からの還り冷水Rの一部を複数の室内空調機2への往き冷水Rに混合して当該往き冷水Rを昇温させる混合部7が備えられている。
本実施形態では、冷水循環供給部4に、外調機1からの還り冷水Rが通流する外調機用往路5Bと、複数の室内空調機2への往き冷水Rが通流する室内空調機用往路5Cとを接続する混合路8が備えられており、この混合路8と室内空調機用往路5Cとの接続部位にて混合部7が構成されている。
【0029】
例えば、冷凍機3にて5℃の冷水Rを生成する場合、外調機1に対する循環経路での冷水Rの温度変化(以下、括弧内に温度を示す。)は、主往路5A(5℃)→外調機用往路5B(5℃)→外調機1→外調機用還路6A(15℃)→主還路6D(17℃)となる。
これに対して、複数の室内空調機2に対する循環経路での冷水Rの温度変化は、混合部7による冷水Rの混合により複数の室内空調機2への往き冷水Rが昇温することで、主往路5A(5℃)→室内空調機用往路5Cにおける混合部7の上流側(5℃)→室内空調機用往路5Cにおける混合部7の下流側(10℃)→室内空調機用個別往路5D(10℃)→複数の室内空調機2→室内空調機用個別還路6B(20℃)→室内空調機用還路6C(20℃)→主還路6D(17℃)となる。
つまり、複数の室内空調機2への往き冷水R、換言すれば、室内空調機用往路5Cにおける混合部7の下流側、及び、室内空調機用個別往路5Dを通流する冷水Rは、冷凍機3で生成されて主往路5Aを通流する冷水Rの温度(5℃)よりも高い温度(10℃)となる。なお、勿論、冷水Rの具体的な温度は適宜に変更可能である。
【0030】
このように、外調機1からの還り冷水Rを活用して複数の室内空調機2への往き冷水Rを昇温することで、処理負荷の小さな室内空調機2への冷水送水による熱損失を効率的に抑制することができる。
【0031】
混合部7は、複数の室内空調機2よりも外調機1に近い部位に配置されている。このようにすることで、配管サイズが大きくなる傾向にある外調機1に近い部位にて冷水Rの混合処理を行うことができる。よって、配管サイズの大きい外調機1側の配管径路を短く構成し易くなり、冷水循環供給部4を効率的に構成することが可能となる。
【0032】
図示は省略するが、例えば、混合路8と、混合路8と室内空調機用往路5Cとの接続部位である混合部7と、混合路8と外調機用還路6Aとの接続部位とを、外調機1の隣接部位に集合配置することにより、複数の室内空調機2よりも外調機1に近い部位の一例として、外調機1の隣接部位に混合部7を配置することができる。
【0033】
また、この空調システムには、混合部7による冷水Rの混合割合を調整自在な混合割合調整部9が備えられている。この混合割合調整部9により混合部7での冷水Rの混合割合を調整することにより、複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度を調整することができる。
【0034】
この混合割合調整部9は、外調機用還路6Aから混合路8に流入させる冷水Rの流量を調整することで、混合部7による冷水Rの混合割合を調整するように構成されている。混合割合調整部9は、例えば、外調機用還路6Aと混合路8との接続部位に三方弁9aを介装して構成することができる。この場合、三方弁9aにて、混合路8に流入させる冷水Rと外調機用還路6Aの下流側に流入させる冷水Rとに分流する割合を調整することで、外調機用往路5Bから混合路8に流入させる冷水Rの流量を調整し、混合部7による冷水Rの混合割合を調整することができる。
この他、混合割合調整部9は、混合路8、及び、外調機用還路6Aにおける混合路8との接続部位よりも下流側の部位の各々に流量制御弁を介装して構成することもできる。
【0035】
制御装置10は、複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度が設定温度範囲内になるように混合割合調整部9を制御するように構成されている。例えば、制御装置10は、室内空調機用往路5Cの上流側を通流する冷水Rの温度が5℃、外調機1での熱交換で昇温した外調機1からの還り冷水Rの温度が15℃であるとき、室内空調機用往路5Cの下流側を通流する複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度が10℃以内になるように混合割合調整部9を制御する。
【0036】
この制御装置10は、室内空調機用往路5Cの混合部7よりも下流側に備えられた温度センサ11による検出温度が設定温度範囲内になるように混合割合調整部9を制御することで、複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度を設定温度範囲内に調整する。具体的には、制御装置10は、温度センサ11の検出温度を取得し、取得した検出冷水温度と設定温度範囲とに基づいて冷水Rの混合割合を演算する。そして、制御装置10は、その演算した混合割合となるように混合割合調整部9を制御する制御信号を混合割合調整部9に出力し、混合割合調整部9を制御する。
【0037】
このように、制御装置10により混合割合調整部9を制御することにより、複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度を設定温度範囲内に維持することができる。よって、混合部7での冷水Rの混合による複数の室内空調機2への往き冷水Rの昇温により、複数の室内空調機2への冷水送水による熱損失を抑制しながら、複数の室内空調機2への往き冷水Rの温度のバラツキによって複数の室内空調機2の空調温度が不安定になるのを回避することができる。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、外調機1が1つである場合を例に示したが、複数備えられていてもよい。その場合、冷水循環供給部4が、複数の外調機1に対して冷熱源から冷水Rを並列に循環供給自在に構成されていてもよい。なお、室内空調機2も、複数に限らず1つであってもよい。
【0039】
(2)前述の実施形態では、混合部7が、複数の室内空調機2への往き冷水Rに対して、外調機1からの還り冷水Rの一部を混合するように構成されている場合を例に示したが、例えば、複数の室内空調機2のうちの一部の室内空調機2への往き冷水Rに対して、外調機1からの還り冷水Rの一部を混合するように構成されていてもよい。
【0040】
(3)前述の実施形態では、制御装置10にて室内空調機2への往き冷水Rの温度が設定温度範囲内になるように混合割合調整部9を制御する場合を例に示したが、このような制御を省き、外調機1からの還り冷水Rの一定量を室内空調機2への往き冷水Rに混合するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 外調機
2 室内空調機
3 冷凍機(冷熱源)
4 冷水循環供給部
7 混合部
9 混合割合調整部
10 制御装置(制御部)
R 冷水
図1