特許第6836908号(P6836908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836908
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】有機デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20210222BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210222BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/02
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-1881(P2017-1881)
(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公開番号】特開2018-113128(P2018-113128A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】森島 進一
(72)【発明者】
【氏名】岸川 英司
(72)【発明者】
【氏名】下河原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】赤對 真人
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−123532(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/208597(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/171919(WO,A1)
【文献】 特開2016−189355(JP,A)
【文献】 特開2006−294536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50 − 51/56
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する支持基板の一方の主面上に、第1電極層、単層又は複層の有機機能層及び第2電極層がこの順番で配置された有機デバイスの製造方法であって、
前記支持基板上に、前記第1電極層及び少なくとも一層の前記有機機能層を形成して、有機機能層付き支持基板を製造する第1形成工程と、
前記第1形成工程の後、前記有機機能層上に保護フィルムを配置し、前記有機機能層付き支持基板及び前記保護フィルムを巻き取る巻取工程と、
巻き取られた前記有機機能層付き支持基板及び前記保護フィルムを送り出し、複層の前記有機機能層を構成する層のうちの前記第1形成工程で形成していない有機機能層、及び前記第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する前に前記保護フィルムを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程の後、複層の前記有機機能層を構成する層のうちの前記第1形成工程で形成していない有機機能層、及び前記第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する前に、前記有機機能層付き支持基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記有機機能層付き支持基板上に、複層の前記有機機能層を構成する層のうちの前記第1形成工程で形成していない有機機能層、及び前記第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する第2形成工程と、を含む、有機デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第2形成工程では、前記第2電極層を、真空蒸着法又はスパッタリング法により形成する、請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記有機機能層付き支持基板に赤外線を照射する、請求項1又は2に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、前記有機機能層付き支持基板の前記一方の主面のみを加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で前記有機機能層付き支持基板を加熱する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記保護フィルムは、基材及び当該基材に設けられた粘接着部を有しており、
前記巻取工程では、前記粘接着部が前記有機機能層と重ならないように、前記保護フィルムを前記有機機能層上に配置する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記保護フィルムは、基材及び当該基材に設けられた粘接着部を有しており、
前記巻取工程では、前記粘接着部が前記有機機能層における機能発揮領域と重ならないように、前記保護フィルムを前記有機機能層上に配置する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1形成工程では、前記第1電極層上に有機材料を塗布して乾燥させることにより、前記有機機能層を形成する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程から前記第2形成工程まで、真空、不活性ガス、又はドライエアの雰囲気下で、前記有機機能層付き支持基板を搬送させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機デバイスの製造方法として、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。特許文献1に記載の有機デバイスの製造方法は、可撓性を有する支持基板上に陽極層を形成する工程と、陽極層上に有機機能層を形成する工程と、有機機能層上に陰極層を形成する工程と、含んでいる。特許文献1の有機デバイスの製造方法では、各種層のいずれかを形成した後に支持基板を巻き取る際、当該層上に保護フィルムを配置して、支持基板と保護フィルムとを一緒に巻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、有機デバイスの製造方法では、例えば、有機機能層上に保護フィルムを配置することで、有機機能層が支持基板と接触して損傷したり、有機機能層に塵及び埃等が接触したりすることの抑制を図っている。ここで、保護フィルムには、通常、水分や保護フィルムからブリードアウトしたモノマー、オリゴマー、有機溶媒等の成分(以下、水分等と称する。)が含まれている。そのため、保護フィルムが配置された支持基板を巻き取って保管した場合、保護フィルムに含まれる水分等が有機機能層に接触(浸透)することがある。有機機能層に水分等が含まれると、例えば、有機機能層の機能発揮領域(有機エレクトロニクスルミネッセンスの場合は発光領域)において非機能発揮領域が拡大する等の不具合が生じることがある。これにより、有機デバイスの特性が劣化し、有機デバイスの信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の一側面は、有機デバイスの信頼性の向上を図ることができる有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に一側面に係る有機デバイスの製造方法は、可撓性を有する支持基板の一方の主面上に、第1電極層、単層又は複層の有機機能層及び第2電極層がこの順番で配置された有機デバイスの製造方法であって、支持基板上に、第1電極層及び少なくとも一層の有機機能層を形成して、有機機能層付き支持基板を製造する第1形成工程と、第1形成工程の後、有機機能層上に保護フィルムを配置し、有機機能層付き支持基板及び保護フィルムを巻き取る巻取工程と、巻き取られた有機機能層付き支持基板及び保護フィルムを送り出し、複層の有機機能層を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない有機機能層、及び第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する前に保護フィルムを剥離する剥離工程と、剥離工程の後、複層の有機機能層を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない有機機能層、及び第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する前に、有機機能層付き支持基板を加熱する加熱工程と、加熱工程の後、有機機能層付き支持基板上に、複層の有機機能層を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない有機機能層、及び第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する第2形成工程と、を含む。
【0007】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、保護フィルムを剥離した後、複層の有機機能層を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない有機機能層、及び第2電極層から選ばれる少なくとも一層を形成する前に、支持基板を加熱する。これにより、支持基板と同時に巻き取られた保護フィルムに水分等が含まれており、その水分等が有機機能層に接触(浸透)した場合であっても、加熱工程により、有機機能層の水分等が除去される。したがって、有機デバイスの製造方法では、保護フィルムにより有機機能層を保護しつつ、有機機能層の水分等に起因する有機デバイスの特性劣化を抑制できる。その結果、有機デバイスの製造方法では、有機デバイスの信頼性の向上を図ることができる。
【0008】
一実施形態においては、第2形成工程では、第2電極層を、真空蒸着法又はスパッタリング法により形成してもよい。これにより、第2電極層は、大気に曝されない状態で形成される。したがって、第2電極層を形成する第2形成工程において、有機機能層及び第2電極層に水分等が接触することを抑制できる。
【0009】
一実施形態においては、加熱工程では、有機機能層付き支持基板に赤外線を照射してもよい。これにより、有機機能層の水分等を除去することができる。
【0010】
一実施形態においては、加熱工程では、有機機能層付き支持基板の一方の主面のみを加熱してもよい。このように、有機機能層が形成されている有機機能層付き支持基板の一方の主面を加熱するため、有機機能層の水分等をより効果的に除去することができる。
【0011】
一実施形態においては、加熱工程では、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で有機機能層付き支持基板を加熱してもよい。これにより、加熱工程において有機機能層に水分等が接触することを抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、保護フィルムは、基材及び当該基材に設けられた粘接着部を有しており、巻取工程では、粘接着部が有機機能層と重ならないように、保護フィルムを有機機能層上に配置してもよい。これにより、有機機能層付き支持基板と保護フィルムとを一緒に巻き取るときに、粘接着部によって、保護フィルムがずれることを抑制できる。また、粘接着部が有機機能層上に配置されていないため、保護フィルムを剥離するときに、有機機能層の表面が剥離する等して有機機能層が破損することを回避できる。
【0013】
一実施形態においては、保護フィルムは、基材及び当該基材に設けられた粘接着部を有しており、巻取工程では、粘接着部が有機機能層における機能発揮領域と重ならないように、保護フィルムを有機機能層上に配置してもよい。これにより、有機機能層付き支持基板と保護フィルムとを一緒に巻き取るときに、粘接着部によって、保護フィルムがずれることを抑制できる。また、粘接着部が有機機能層における機能発揮領域と重ならいように配置されているため、有機機能層上の一部に粘接着部が配置され、保護フィルムを剥離したときに有機機能層の表面の一部が剥離したとしても、機能発揮の品位に影響を与えない。
【0014】
一実施形態においては、第1形成工程では、第1電極層上に有機材料を塗布して乾燥させることにより、有機機能層を形成してもよい。このように、有機機能層が塗布法より形成される場合には、有機機能層が水分等の影響を特に受け易い。そのため、保護フィルムを剥離した後、有機機能層を構成する複数の層のうちの残りの層又は第2電極層を形成する前に、有機機能層付き支持基板を加熱する上記製造方法は、有機機能層を塗布法により形成する場合に特に有効である。
【0015】
一実施形態においては、加熱工程から第2形成工程まで、真空、不活性ガス、又はドライエアの雰囲気下で、有機機能層付き支持基板を搬送させてもよい。これにより、有機機能層付き支持基板が加熱工程から第2形成工程に搬送される間に有機機能層が大気に曝されない。そのため、有機機能層に水分等が接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、有機デバイスの信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る有機デバイスの製造方法によって製造された有機EL素子の断面図である。
図2】ロールツーロール方式による有機EL素子の製造方法を模式的に示す図である。
図3】ロールツーロール方式による有機EL素子の製造方法を模式的に示す図である。
図4】有機EL素子の製造方法を示す図である。
図5】第2実施形態に係る有機デバイスの製造方法によって製造された有機EL素子の断面図である。
図6】他の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す図である。
図7】他の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示されるように、本実施形態の有機デバイスの製造方法によって製造される有機EL素子(有機デバイス)1は、支持基板3と、陽極層(第1電極層)5と、有機機能層7と、陰極層(第2電極層)9と、封止部材11と、を備えている。
【0020】
[支持基板]
支持基板3は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する樹脂から構成されている。支持基板3は、フィルム状の基板(フレキシブル基板、可撓性を有する基板)である。支持基板3の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板3が樹脂の場合は、ロールツーロール方式の連続時の基板ヨレ、シワ、及び伸びの観点から45μm以上、可撓性の観点から125μm以下が好ましい。
【0021】
支持基板3は、例えば、プラスチックフィルムである。支持基板3の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等を含む。
【0022】
支持基板3の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートがより好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
支持基板3の一方の主面3a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層が配置されていてもよい。支持基板3の他方の主面3bは、発光面である。なお、支持基板3は、薄膜ガラスであってもよい。支持基板3が薄膜ガラスの場合、その厚さは、強度の観点から30μm以上、可撓性の観点から100μm以下が好ましい。
【0024】
[陽極層]
陽極層5は、支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陽極層5には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
【0025】
陽極層5として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。また、陽極層5として、上記で挙げられた金属又は金属合金等をメッシュ状にパターニングした電極、或いは、銀を含むナノワイヤーがネットワーク状に形成されている電極を用いてもよい。
【0026】
陽極層5の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極層5の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜200nmである。
【0027】
陽極層5の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライ成膜法、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法を挙げることができる。また、陽極層5は、さらにフォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いてパターンを形成することができる。塗布法を用いて支持基板3上に直接塗布することで、フォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いることなくパターンを形成することもできる。
【0028】
[有機機能層]
有機機能層7は、陽極層5の主面(支持基板3に接する面の反対側)上に配置されている。有機機能層7は、発光層を含んでいる。有機機能層7は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料、或いは該発光材料とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。有機機能層7を構成する有機物としては、例えば下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料や、下記の発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0029】
(色素材料)
色素材料としては、例えばシクロペンダミン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリフェニルアミン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、ピラゾロキノリン及びその誘導体、ジスチリルベンゼン及びその誘導体、ジスチリルアリーレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、チオフェン化合物、ピリジン化合物、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0030】
(金属錯体材料)
金属錯体材料としては、例えばTb、Eu、Dy等の希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体等を挙げることができる。金属錯体としては、例えばイリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等を挙げることができる。
【0031】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、上記色素材料、又は金属錯体材料を高分子化した材料等を挙げることができる。
【0032】
(発光層用ドーパント材料)
発光層用ドーパント材料としては、例えばペリレン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、スクアリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、スチリル色素、テトラセン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、デカシクレン及びその誘導体、フェノキサゾン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0033】
有機機能層7の厚さは、通常約2nm〜200nmである。有機機能層7は、例えば、上記のような発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。また、上記のような発光材料は、真空蒸着法によって形成されてもよい。
【0034】
[陰極層]
陰極層9は、有機機能層7の主面(陽極層5に接する面の反対側)上に配置されている。陰極層9の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層9の材料としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0035】
また、陰極層9としては、例えば、導電性金属酸化物や、導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZO等を挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層9は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、後述の電子注入層が陰極層9として用いられる場合もある。
【0036】
陰極層9の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層9の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0037】
陰極層9の形成方法としては、例えば、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等を挙げることができ、真空蒸着法、又はスパッタリング法が好ましい。
【0038】
[封止部材]
封止部材11は、有機EL素子1において最上部に配置されている。封止部材11は、例えば、図示しない封止基材及び粘接着部を有している。封止基材は、金属箔、透明なプラスチックフィルムの表面若しくは裏面又はその両面にバリア機能層を形成したバリアフィルム、或いはフレキブル性を有する薄膜ガラス、プラスチックフィルム上にバリア性を有する金属積層させたフィルム等からなり、ガスバリア機能、特に水分バリア機能を有する。金属箔としては、バリア性の観点から、銅、アルミニウム、又はステンレスが好ましい。金属箔の厚さは、ピンホール抑制の観点から厚い程好ましいが、フレキシブル性の観点も考慮すると10μm〜50μmが好ましい。粘接着部は、封止基材を陽極層5、有機機能層7及び陰極層9に接着させるために用いられる。また、粘接着部は、有機機能層の機能発揮領域の少なくとも一部を覆うように配置されてもよく、機能発揮領域の少なくても一部を囲うように配置されてもよい。
【0039】
[有機EL素子の製造方法]
続いて、上記構成を有する有機EL素子1の製造方法について説明する。
【0040】
支持基板3が可撓性を有し、長手方向に延在する基板である形態では、図2及び図3に概念的に示されるように、ロールツーロール方式が採用され得る。ロールツーロール方式で有機EL素子1を製造する場合、巻出しロール30Aと巻取りロール30Bとの間、及び、巻出しロール40Aと巻取りロール40Bとの間に張り渡された長尺の可撓性の支持基板3を連続的に搬送ローラ31,41で搬送しながら、各層を支持基板3側から順に形成する。
【0041】
有機EL素子1を製造する場合、最初に、支持基板3を加熱し、乾燥させる(基板乾燥工程S01)。次に、乾燥された支持基板3(一方の主面3a)上に、陽極層5を形成する(陽極層形成工程(第1形成工程)S02)。陽極層5は、陽極層5の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。
【0042】
続いて、陽極層5上に、有機機能層7を形成する(有機機能層形成工程(第1形成工程)S03)。有機機能層7は、有機機能層7の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、有機機能層7は、発光材料(有機材料)を塗布法により塗布し、塗布後に乾燥させることにより形成される。また、発光材料の上にさらに電子輸送層を塗布後、乾燥して形成してもよい。これにより、図4に示されるように、有機機能層が形成された支持基板10(以下、有機機能層付き支持基板10と称する。)が製造される。
【0043】
続いて、図4に示されるように、有機機能層7上に保護フィルム13(図4参照)を配置する(配置工程S04)。保護フィルム13は、基材15と、粘接着部17と、を有している。本実施形態では、保護フィルム13は、有機機能層付き支持基板10の長手方向(図4における奥行き方向)に延在しており、基材15の幅方向(長手方向に直交する方向、図4における左右方向)の両端部に、長手方向に沿って粘接着部17が設けられている。粘接着部17は、基材15と接する面とは反対側の面が接着性及び剥離性を有している。
【0044】
保護フィルム13は、粘接着部17が有機機能層7と重ならないように(有機機能層7上に位置しないように)、有機機能層7上に配置される。具体的には、図4に示されるように、一対の粘接着部17の間に有機機能層7が位置するように、保護フィルム13が配置される。すなわち、保護フィルム13の粘接着部17は、有機機能層付き支持基板10において有機機能層7が形成されてない領域に配置される。これにより、保護フィルム13の基材15が有機機能層7上に配置される。
【0045】
続いて、有機機能層付き支持基板10及び保護フィルム13をロール状に巻き取る(巻取工程S05)。これにより、ロールが形成される。そして、ロールを、次の工程まで、例えば、保管庫に保管する。このとき、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で保管されてもよい。
【0046】
続いて、図3に示されるように、保管していたロールを用意し、有機機能層付き支持基板10及び保護フィルム13を巻出しロール40Aから送り出し、有機機能層付き支持基板10から保護フィルム13を剥離する(剥離工程S06)。剥離された保護フィルム13は、芯材42に巻き取られる。剥離工程S06は、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で行われてもよい。
【0047】
続いて、有機機能層付き支持基板10を加熱する(加熱工程S07)。本実施形態では、赤外線を照射する加熱チャンバーにより、有機機能層付き支持基板10を加熱する。赤外線は、例えば、中赤外線である。加熱チャンバーでは、有機機能層付き支持基板10の一方の主面3a側に赤外線を照射して、有機機能層付き支持基板10(陽極層5及び有機機能層7)を加熱する。加熱チャンバー内は、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下である。つまり、有機機能層付き支持基板10の加熱は、保護フィルム13を剥離する雰囲気と同じ、又は異なる不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で行われてもよい。有機機能層付き支持基板10は、保護フィルム13が剥離されてから加熱チャンバーに搬入されるまで、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で搬送されてもよい。すなわち、有機機能層付き支持基板10は、保護フィルム13が剥離されてから加熱されるまで、大気に曝されない。
【0048】
続いて、有機機能層7上に陰極層9を形成する(陰極層形成工程(第2形成工程)S08)。陰極層9は、陰極層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。また、陰極層9は、電子注入層と電極層を含む2層以上で構成されていてもよい。例えば、有機機能層7上に後ほど例示する電子注入層を形成し、その上に、陰極層9の説明の際に例示した陰極層9の材料を用いて、層を形成してもよい。本実施形態では、陰極層9は、真空蒸着法により形成される。より具体的には、陰極層9は、全圧が1×10−3Pa以下であり、且つ、水分圧が1×10−4Pa以下である成膜チャンバー内で形成される。有機機能層付き支持基板10は、加熱チャンバーで加熱されてから成膜チャンバーに搬入されるまで、不活性ガスの雰囲気下、真空の雰囲気下、又はドライエアの雰囲気下で搬送(移動)される。すなわち、有機機能層付き支持基板10は、加熱されてから陰極層9が形成されるまで、大気に曝されない。そして、陰極層9上に、封止部材11を配置して有機機能層7及び陰極層9を封止する(封止工程S09)。以上により、有機EL素子1が製造される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態にかかる有機EL素子1の製造方法では、保護フィルム13を剥離した後、陰極層9を形成する前に、有機機能層付き支持基板10を加熱する。これにより、有機機能層付き支持基板10と同時に巻き取られた保護フィルム13に水分等が含まれており、その水分等が有機機能層7に接触(浸透)した場合であっても、加熱工程S07により、有機機能層7の水分等が除去される。したがって、有機EL素子1の製造方法では、保護フィルム13により有機機能層7を保護しつつ、有機機能層7の水分等に起因する有機EL素子1の特性劣化を抑制できる。その結果、有機EL素子1の製造方法では、有機EL素子1の信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の有機EL素子1の製造方法では、加熱工程S07によって有機機能層7の水分等が除去されるため、保護フィルム13に乾燥剤又は吸湿剤等を設ける必要がない。そのため、保護フィルム13に乾燥剤等を設けることによるコストの増大を抑制できる。また、保護フィルム13をあらかじめ、脱水等の処理を行う必要もないため、保護フィルムを脱水等するための設備、工程も不要になりコストの増大を抑制できる。
【0051】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、加熱工程S07において有機機能層付き支持基板10に赤外線を照射する。詳細には、加熱工程S07において、有機機能層7が形成された有機機能層付き支持基板10における支持基板3の一方の主面3a側に赤外線を照射する。これにより、有機機能層7の水分等を効果的に除去することができる。
【0052】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、加熱工程S07において、不活性ガス、真空、又はドライエアの雰囲気下で有機機能層付き支持基板10を加熱する。これにより、加熱工程S07において有機機能層7に水分等が接触することを抑制できる。
【0053】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、保護フィルム13は、基材15及び当該基材15に設けられた粘接着部17を有している。巻取工程では、粘接着部17が有機機能層7と重ならないように、保護フィルム13を有機機能層7上に配置する。これにより、有機機能層付き支持基板10と保護フィルム13とを一緒に巻き取るときに、粘接着部17によって、保護フィルム13がずれることを抑制できる。また、保護フィルム13を剥離する剥離工程S06において、例えば、有機機能層7の表面が粘接着部17によって剥がれて破損することを回避できる。
【0054】
本実施形態に係る有機EL素子1では、陽極層5上に有機材料を塗布して乾燥させることにより、有機機能層7を形成する。このように、有機機能層7が塗布法より形成される場合には、有機機能層7が水分等の影響を特に受け易い。そのため、保護フィルム13を剥離した後、陰極層9を形成する前に、有機機能層付き支持基板10(有機機能層7)を加熱する本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法は、有機機能層7を塗布法により形成する場合に特に有効である。
【0055】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態について説明する。図5に示されるように、本実施形態の有機デバイスの製造方法によって製造される有機EL素子1Aは、支持基板3と、陽極層5と、正孔注入層20と、正孔輸送層22と、発光層24と、電子輸送層26と、陰極層9と、封止部材11と、を備えている。正孔注入層20、正孔輸送層22、発光層24及び電子輸送層26は、有機機能層を構成している。発光層24は、上述の有機機能層7に含まれる発光層と同様の構成を有している。
【0056】
[正孔注入層]
正孔注入層20は、陽極層5から発光層24への正孔注入効率を向上させる機能を有する層である。正孔注入層20の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。正孔注入層20の材料は公知の正孔注入材料が用いられ得る。正孔注入材料の例としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び、酸化アルミニウム等の酸化物、フェニルアミン化合物、スターバースト型アミン化合物、フタロシアニン化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及び、ポリチオフェン誘導体等を挙げることができる。
【0057】
正孔注入層20は、例えば、インクジェット法、スピンコート法等の塗布法により形成される。
【0058】
[正孔輸送層]
正孔輸送層22は、陽極層5、正孔注入層20又は陽極層5により近い正孔輸送層22から発光層24への正孔注入を向上させる機能を有する層である。正孔輸送層22の厚さは、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。正孔輸送層22の材料には、公知の正孔輸送材料が用いられ得る。正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン若しくはその誘導体、ピラゾリン若しくはその誘導体、アリールアミン若しくはその誘導体、スチルベン若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン若しくはその誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等を挙げることができる。また、正孔輸送層22は、正孔輸送性を有する架橋性高分子化合物、及び、該高分子化合物の架橋体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、該架橋性高分子化合物としては、国際公開第2013/114976号、国際公開第2013/146806号、国際公開第2015/163174号、国際公開第2016/052337号、特開2016−111355号公報、国際公開第2016/005749号、国際公開第2016/005750号等に記載若しくは例示される高分子化合物も挙げることができる。
【0059】
正孔輸送層22は、例えば、インクジェット法、スピンコート法等の塗布法により形成される。
【0060】
[電子輸送層]
電子輸送層26には、公知の電子輸送材料が使用できる。電子輸送材料としては、例えば、トリアゾール及びその誘導体、オキサゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン及びその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン及びその誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、アントロン及びその誘導体、チオピランジオキシド及びその誘導体、カルボジイミド及びその誘導体、フルオレニリデンメタン及びその誘導体、ジスチリルピラジン及びその誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物等の芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環式化合物;メタルフタロシアニンやベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体、フタロシアニン及びその誘導体、8−キノリノール及びその誘導体、有機シラン化合物、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等が挙げられる。電子輸送材料は、上記の化合物のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物塩、炭酸塩等の塩であってもよい。
【0061】
電子輸送材料は、好ましくは芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環式化合物、或いは、これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。電子輸送材料は、フッ化水素量を所定の範囲内とすることによる発光素子の長寿命化が顕著であるので、好ましくはカルボン酸イオンとアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとから構成される塩を含むものである。
【0062】
電子輸送材料は、高分子化合物であっても、低分子化合物であってもよい。電子輸送材料が高分子化合物である場合、該高分子化合物は、例えば、特開2009−239279号公報、特開2012−033845号公報、特開2012−216821号公報、特開2012−216822号公報、特開2012−216815号公報に記載の方法に従って合成することができる。電子輸送材料が低分子化合物である場合、該低分子化合物は、例えば、国際公開WO10/090077号公報、特開2012−89777号公報、特開2012−104536号公報、特開2013−16717号公報、特開2013−100239号公報、国際公開WO/004639号公報、特開2013−38432号公報、特開2013−258416号公報、特開2014−131079号公報、特開2015−167236号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0063】
電子輸送層は、例えば、インクジェット法、スピンコート法等の塗布法により形成される。
【0064】
[有機EL素子の製造方法]
続いて、上記構成を有する有機EL素子1Aの製造方法について説明する。
有機EL素子1Aの製造方法は、有機EL素子1と同様、ロールツーロール方式が採用される。最初に、支持基板3を加熱し、乾燥させる。次に、支持基板3(一方の主面3a上)に、陽極層5を形成する。これらの工程は、前述の基板乾燥工程S01及び前述の陽極層形成工程(第1形成工程)S02と同様である。
【0065】
続いて、陽極層5上に、正孔注入層20と、正孔輸送層22と、発光層24を順に形成する(有機機能層形成工程(第1形成工程))。正孔注入層20、正孔輸送層22、発光層24は、それぞれ各層の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、正孔注入層20、正孔輸送層22、発光層24は、それぞれ塗布法により塗布し、塗布後に乾燥されることにより形成される。これにより、正孔注入層20、正孔輸送層22、及び発光層24が形成された支持基板が製造される。
【0066】
正孔注入層20、正孔輸送層22、及び発光層24が形成された支持基板に対して、有機EL素子1の製造方法における有機機能層付き支持基板と同様に、前述の配置工程S04、巻取工程S05、剥離工程S06、加熱工程S07を行う。
【0067】
続いて、発光層14上に電子輸送層26を形成する。電子輸送層26は、電子輸送層26の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、電子輸送層26は、塗布法により塗布し、塗布後に乾燥されることにより形成される。
【0068】
続いて、電子輸送層26上に陰極層9を形成する。そして、陰極層9上に、封止部材11を配置して、正孔注入層20、正孔輸送層22、発光層24、電子輸送層26、及び陰極層9を封止する。これらは、前述の陰極層形成工程(第2形成工程)S08及び封止工程S09と同様である。以上により、有機EL素子1Aが製造される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、陽極層5と陰極層9との間に発光層を含む有機機能層7が配置された有機EL素子1を例示した。しかし、有機機能層7の構成はこれに限定されない。有機機能層7は、以下の構成を有していてもよい。
(a)(陽極層)/発光層/(陰極層)
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層/(陰極層)
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(d)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極層)
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(g)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(h)(陽極層)/発光層/電子注入層/(陰極層)
(i)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
【0071】
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。上記(a)に示す構成は、上記実施形態における有機EL素子1の構成を示している。
【0072】
電子注入層は、有機機能層を構成する一つであってもよく、無機物のみで構成されていてもよい。電子注入層には、公知の電子注入材料を用いることができる。電子注入材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、又はこれらの物質の混合物等を挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、及び炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等を挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。この他に従来知られた電子輸送性の有機材料と、アルカリ金属の有機金属錯体を混合した層も電子注入層として用いることができる。
【0073】
電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、塗布法(例えば、インクジェット法、スピンコート法)などの所定の公知の方法によって形成することができる。電子注入層25の厚さは、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0074】
有機EL素子1は、単層の有機機能層7を有していてもよいし、2層以上の有機機能層7を有していてもよい。上記(a)〜(i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層5と陰極層9との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、下記(j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
(j)陽極層/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極層
【0075】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデン等からなる薄膜を挙げることができる。
【0076】
また、「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、以下の(k)に示す層構成を挙げることができる。
(k)陽極層/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極層
【0077】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0078】
電荷発生層を設けずに、複数の有機機能層7を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0079】
上述のように、有機機能層7が複層である場合には、保護フィルム13は、第1形成工程において、複層の有機機能層7のうちの少なくとも1層が形成された後に、当該層上に配置されればよい。この場合、保護フィルム13を剥離した後に、支持基板3を加熱し、複層の有機機能層7を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない層、及び、陰極層9を形成する。上記実施形態では、発光層24を形成した後に保護フィルム13を配置して巻き取り、保護フィルム13を剥離して加熱工程を経た後に電子輸送層26を形成する形態を説明した。しかし、正孔輸送層22を形成した後に保護フィルム13を配置して巻き取り、保護フィルム13を剥離して加熱工程を経た後に発光層24及び電子輸送層26を順に形成してもよい。また、第2形成工程において、複層の有機機能層7を構成する層のうちの第1形成工程で形成していない有機機能層を一層形成した後に保護フィルム13を配置して巻き取り、保護フィルム13を剥離して加熱工程を経た後、残りの有機機能層7や陰極層9を形成してもよい。
【0080】
上記実施形態では、保護フィルム13の粘接着部17が有機機能層7と重ならないように、保護フィルム13を有機機能層7上に配置する形態を一例に説明した。しかし、保護フィルムの配置形態はこれに限定されない。
【0081】
例えば、図6に示されるように、保護フィルム13Aは、粘接着部17の一部が有機機能層7上に配置されてもよい。具体的には、粘接着部17は、有機機能層7上において、有機機能層7の発光領域(機能発揮領域)Aを含まない位置に配置される。これにより、支持基板3と保護フィルム13Aとを一緒に巻き取るときに、粘接着部17によって、保護フィルム13Aがずれることを抑制できる。また、粘接着部17が有機機能層7における発光領域Aと重ならいように配置されているため、有機機能層7上の一部に粘接着部17が配置され、保護フィルム13を剥離したときに有機機能層7の表面の一部が剥離したとしても、発光品位に影響を与えない。
【0082】
上記実施形態では、保護フィルム13,13Aが基材15及び粘接着部17を有する形態を一例に説明した。しかし、図7に示されるように、保護フィルム13Bは、基材のみで構成されていてもよい。
【0083】
保護フィルム13Bが基材のみで構成している場合、保護フィルム13Bは支持基板3に固定されないが、保護フィルム13Bと支持基板3を同時に巻取り部に搬送し、巻き取ることで、保護フィルム13Bを有機機能層7が形成された支持基板3の有機機能層7上に配置することができる。このとき、配置工程S04及び巻取工程S05は同時に行われる。
【0084】
上記実施形態に加えて、封止工程S09において封止部材11を陰極層9上に貼付した後に、支持基板3の他方の主面3bに光取り出しフィルムを貼付してもよいし、封止部材11上に保護フィルムを貼付してもよい。また、保護フィルムは、封止部材11に予め設けられていてもよい。
【0085】
上記実施形態では、第1電極層が陽極層、第2電極層が陰極層の形態を一例に説明した。しかし、第1電極層が陰極層、第2電極層が陽極層であってもよい。
【0086】
上記実施形態では、有機デバイスとして、有機EL素子を一例に説明した。有機デバイスは、有機薄膜トランジスタ、有機フォトディテクタ、有機薄膜太陽電池等であってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
(実施例1)
下記の構成を有する有機EL素子を作製した。
ガラス基板/ITO層(厚さ45nm)/正孔注入層(厚さ35nm)/正孔輸送層(厚さ20nm)/発光層(厚さ75nm)/電子輸送層(厚さ10nm)/NaF層(厚さ4nm)/Al層(厚さ100nm)
【0089】
スパッタリング法により厚さ45nmのITO膜(陽極)を形成し、フォトリソ法にてパターニングしたガラス基板を、UVオゾン洗浄機にてドライクリーニングを行った。その後、正孔注入層として、日産化学工業株式会社製の正孔注入材料ND-3202(固形分濃度:2.0重量%)を、スピンコート法にて膜厚35nmに成膜した。前記正孔注入材料が成膜された基板を、オゾンが除去された大気雰囲気下でホットプレートにて80℃で4分間加熱して溶媒を揮発させ、続けてホットプレートにて230℃で15分間熱処理を施した。
【0090】
次に、上記に例示した正孔輸送層材料1をキシレンに溶解させたキシレン溶液を用意した。このキシレン溶液における正孔輸送材料1の濃度を0.7重量%とした。次に、大気雰囲気中において、得られたキシレン溶液をスピンコート法によりガラス基板に塗布し、厚さが20nmの正孔輸送層の塗布膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度がそれぞれ体積比で10ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気中において、180℃で60分間保持して塗布膜を乾燥、焼成した。このことにより、正孔輸送層材料1が架橋し、発光層材料1を溶解させる溶媒に対して不溶化している、正孔輸送層を得た。
【0091】
次に、トルエンに上記に例示した発光層の材料である発光層材料1を溶解させたトルエン溶液を用意した。このトルエン溶液における発光層材料1の濃度は3.0重量%とした。大気雰囲気中において、得られたトルエン溶液をスピンコート法によりガラス基板に塗布し、厚さが75nmの発光層用の塗布膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度がそれぞれ体積比で10ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気中において、130℃で10分間保持して塗布膜を乾燥させることで、発光層を得た。
【0092】
次に、上記に例示した電子輸送層の材料である電子輸送層材料1を溶解させた溶液を用意した。溶媒は、下層が溶解しないものを選ぶことができ、極性溶媒を用いた。この極性溶媒溶液における電子輸送材料1の濃度は0.3重量%とした。大気雰囲気中において、得られた極性溶媒溶液をスピンコート法によりガラス基板に塗布し、厚さが10nmの電子輸送層用の塗布膜を成膜した。さらに、酸素濃度及び水分濃度がそれぞれ体積比で10ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気中において、130℃で10分間保持して塗布膜を乾燥させることで、電子輸送層を得た。
【0093】
次に、電子輸送層まで形成されたガラス基板上に発光エリアをすべて覆う大きさで、東レ株式会社製の二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム(製品名:ルミラー)を電子輸送層に接するように保護フィルムとして配置した。さらに、保護フィルムの上から1/21kgfの加圧し電子輸送層と保護フィルムとを密着させた。
【0094】
次に、上記のように電子輸送層と保護フィルムとを密着させてから16時間後に保護フィルムを取り去り、酸素濃度及び水分濃度がそれぞれ体積比で10ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気中において、ホットプレートにて130℃で10分間加熱保持した。
【0095】
次に、真空チャンバーに基板を移送し9×10−5Pa以下の真空中で、フッ化ナトリウム(NaF)を約0.03nm/秒の蒸着速度で、厚さ約4nmで蒸着することにより電子注入層を形成した。さらに、アルミニウム(Al)を約0.4nm/秒の蒸着速度で、厚さ約200nmで蒸着して陰極を形成した。その後、封止基板であるガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0096】
(比較例1)
比較例1では、上記のように電子輸送層と保護フィルムとを密着させてから16時間後に保護フィルムを取り去り、その後、ホットプレートにて加熱保持を行わないこと以外は、実施例と同様に有機EL素子を作製した。
【0097】
(参考例)
参考例では、上記のように電子輸送層に保護フィルムを配置せず、酸素濃度及び水分濃度がそれぞれ体積比で10ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気中において16時間保管後、ホットプレートにて130℃で10分間加熱保持した以外は、実施例1と同様に有機EL素子を作製した。
【0098】
(デバイスの駆動寿命の測定)
作製した各有機EL素子に各有機EL素子の輝度が同じになるように適切な電圧をそれぞれ印加することで、初期輝度とした。次に、各有機EL素子からのフォトン量(光の強度)をフォトディテクタで測定し、その光の強度が初期よりも70%に低下するまでの時間を測定した。結果、実施例1では約254時間、比較例1では21時間、比較例2では256時間であった。
【0099】
実施例1と比較例1とを比較すると、陰極に保護フィルムを密着後、加熱を行わない比較例1は、駆動寿命が短時間になっており、加熱したものは約12倍と大幅に寿命が延びていることがわかる。一方、保護フィルムを用いない参考例と実施例1は同等の駆動寿命であることから、実施例1は保護フィルムを用いて悪化した駆動寿命特性をほぼ改善できていることが分かった。よって、有機デバイスの特性劣化や、有機デバイスの信頼性低下を抑制することができた。
【符号の説明】
【0100】
1,1A…有機EL素子(有機デバイス)、3…支持基板、3a…一方の主面、5…陽極層(第1電極層)、7…有機機能層、9…陰極層(第2電極層)、10…有機機能層付き支持基板、13,13A,13B…保護フィルム、S02…陽極層形成工程(第1形成工程)、S03…有機機能層形成工程(第2形成工程)、S04…配置工程(巻取工程)、S05…巻取工程、S06…剥離工程、S07…加熱工程、S08…陰極層形成工程(第2形成工程)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7