【文献】
小林 剛,事例でカンタン! 実践ビジネス分析手法 第5回,企業診断 第59巻 第10号,日本,株式会社同友館,2012年10月 1日,第59巻 第10号,pp.100-103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、コンビニエンスストアが販売促進を行う例である。しかしながら、本発明は、それ以外の商業施設、インターネット上の仮想店舗等にも適用可能である。
【0010】
(用語)
KPI(重要業績評価指標)とは、企業経営者が判断をする基準となる経営指標であり、本実施形態においては、売上、利益、販売数量、LTV(ライフタイムバリュー)、ロイヤリティ向上、コンバージョン率(訪問したうちどれ程が購入するのか)、ROI(リターンオンインベストメント)、クーポン回収率、クーポン発券率、施策反応率、施策対象購買率及び来店客数のうちの何れかである。
事象とは、商品の購買に関連して発生するできごとである。例えば、“顧客Aが商品Bを購買したこと”は、事象となりうる。“20歳の顧客Aが商品Bを購買したこと”及び“雨が降っている日に顧客Aが商品Bを購買したこと”もまた事象となり得る。
因果関係とは、2つの事象の間に認められる原因及び結果の関係である。
【0011】
(各情報の構成及び関連)
図1に沿って、各情報の構成及び関連を説明する。後記する本実施形態の販売促進装置1(
図5参照)は、販売実績情報31を記憶している。販売実績情報31とは、いわゆる“POS(Point of Sales)”情報であり、店舗(実店舗又は仮想店舗)における取引内容の時系列情報である。具体的には、販売実績情報31は、商品が購買された時点、商品を購買した顧客を特定する情報、店舗を特定する情報、商品を特定する情報、購買された商品の数量等が相互に関連付けられた複数のレコード(行)からなる情報である。
【0012】
販売促進装置1は、外部情報32にアクセス可能である。外部情報32とは、官公庁、マスコミ等が運営する外部サーバ2(
図5参照)から通信ネットワーク3(
図5参照)経由で取得することが可能な情報である。具体的には、外部情報32は、ある時点、当該時点の気温、当該時点の天候、当該時点に発生したニュース(イベント等の時事)等が相互に関連付けられた複数のレコードからなる情報である。
【0013】
販売促進装置1は、顧客情報33を記憶している。顧客情報とは、顧客の属性に関する情報である。具体的には、顧客情報33は、顧客を特定する情報、性別、年齢、住所、趣味、購買行動等が相互に関連付けられた複数のレコードからなる情報である。購買行動とは、顧客が購買に至るまでの行動であり、例えば、実店舗におけるクーポンの受け取り、景品の受け取り、仮想店舗のWebサイトにおける閲覧回数等である。
【0014】
販売促進装置1は、KPI情報34を記憶している。KPI情報34とは、複数のコンビニエンスストアを経営する企業の複数種類のKPIの時系列情報である。具体的には、KPI情報34は、時点(日、月又は年単位)、店舗を特定する情報、売上、利益、販売数量、来店客数(Webサイト訪問件数)等が相互に関連付けられた複数のレコードからなる情報である。
【0015】
販売促進装置1は、商品情報35を記憶している。商品情報35とは、商品の属性に関する情報である。具体的には、商品情報35は、商品を特定する情報、メーカー名、販売単価、仕様(内容量等)等が相互に関連付けられた複数のレコードからなる情報である。
【0016】
前記で明らかなように、販売実績情報31が“要(かなめ)”となって、外部情報32、顧客情報33、KPI情報34及び商品情報35を結合している。なお、本実施形態における“項目”とは、各情報の横の並び(レコードの各列)を意味する。例えば、顧客情報33は6種類の項目“顧客”、“性別”、“年齢”、“住所”、“趣味”及び“購買行動”を有する。同様に、販売実績情報31、外部情報32、KPI情報34及び商品情報35は、それぞれ、5種類、4種類、6種類及び4種類の項目を有する。
【0017】
販売促進装置1は、これらの項目から任意の数の項目を選択し、選択した項目を軸(変数)とする多次元空間を生成することができる。多次元空間の次数は、最大で5+3+5+4+3=20次元である。この次元数は、重複分(太線の長方形)を除く項目の数の和に一致する。なお、各項目の具体的な値、例えば商品ID、年齢、店舗ID、気温等を“項目の値”と呼ぶ。
【0018】
(施策)
施策とは、商品の販売促進のための具体的な手段であり、「“誰”に“何”を推奨する”」という型式を有する。例えば、施策は、次のようなものであり得る。
〈例1〉商品○○を購買した顧客に、商品◎◎を推奨する。
〈例2〉○○市に住む顧客に、商品◎◎を推奨する。
〈例3〉○○店で購買した顧客に、商品◎◎を推奨する。
〈例4〉○○歳以上の顧客に、商品◎◎を推奨する。
〈例5〉気温が○以上である日に購買した顧客に、商品◎◎を推奨する。
販売促進装置1は、多次元空間を解析し、事象を抽出し、因果関係を生成することによって、施策を決定する。
【0019】
(因果関係)
図2に沿って、因果関係36を説明する。本実施形態の因果関係36は、ベイジアンネットワークで表現される。よって、本実施形態では、因果関係及びベイジアンネットワークの両者に同じ符号“36”が付される。
図2(a)のベイジアンネットワーク36は、ノードA、ノードB及びノードCを有する。販売促進装置1は、
図1の各情報を参照し、複数のノードを生成する。ノードAは、ある顧客が“屋外テントを購買する”という事象を示す。ノードBは、当該顧客が“バーベキューセットを購買する”という事象を示す。ノードCは、当該顧客が“虫よけスプレーを購買する”という事象を示す。
【0020】
販売促進装置1は、2つの事象間に互いに方向が異なる2本のリンクを定義する。例えば、販売促進装置1は、ノードA及びノードCの間に、ノードAを起点としノードCを終点とするリンクACと、ノードCを起点としノードAを終点とするリンクCAとを定義する。あるリンクに注目したとき、その起点となるノードは、“原因”を示し、その終点となるノードは、“結果”を示している。それぞれのリンクは、太さを有し、その太さは、起点の事象が発生したときに終点の事象が発生する条件付確率を示している。条件付確率が大きいほどリンクは太い。
【0021】
販売促進装置1は、
図1の各情報を参照した結果、次の情報を取得したとする。
・所定の期間に、100人の来店客があった。
・そのうち、屋外テントを買った人は10人であった。
・屋外テントと虫よけスプレーを同時に買った人は3人であった。なお、“同時”とは、2つの購買実績の発生時点が、所定の基準を満たす程度(例えば、24時間以内)に近接していることを示す。
【0022】
すると、販売促進装置1は、“P(C|A)”の値を算出する。“P(C|A)”は、ある顧客が屋外テントを購買したとき当該顧客が虫よけスプレーも購買する条件付確率である。なお、周知のようにベイズの定理として、“P(C|A)=P(C∩A)/P(A)”が成立する。よって、販売促進装置1は、“P(C|A)=(3/100)/(10/100)=0.3”を算出することができる。 この“0.3”は、リンクACの太さに対応している。同様にして、販売促進装置1は、反対方向のリンクCAの太さを算出することができる。さらに、販売促進装置1は、リンクAB、リンクBA、リンクBC及びリンクCBの太さを算出することができる。リンクABは、条件付確率P(B|A)に対応しており、その太さは、条件付確率P(B|A)そのものである。他のリンクについても同様である。
【0023】
販売促進装置1は、太さが所定の閾値を超えるリンクを残し他のリンクを削除する。すると、例えば、
図2(b)のように、リンクAC及びリンクBCが残る。なお、リンクACは、リンクBCよりも太い。つまり、P(C|A)>P(C|B)が成立している。このようにして販売促進装置1が作成した
図2(b)のベイジアンネットワーク36は、複数の事象及び1又は複数の因果関係を表現している。因みに、
図2(b)の場合、販売促進装置1は、次の施策を決定する。なお、例11の方が、例12よりも優先順位が高い。
〈例11〉屋外テントを購買した顧客に、虫よけスプレーを推奨する。
〈例12〉バーベキューセットを購買した顧客に、虫よけスプレーを推奨する。
【0024】
販売促進装置1は、因果関係を決定するに際し、条件付確率以外の他の統計的手法を用いてもよい。他の統計的手法の例としては、決定木等が挙げられる。なお、
図2(a)及び
図2(b)のベイジアンネットワーク36は、3個のノードしか持たない。これは、あくまでも説明の簡略化のためである。実際のベイジアンネットワークは、数百〜数千のノードを有することも珍しくない。
【0025】
販売促進装置1は、ある1つのノードを“原因”とした場合、他のノードが“結果”となる条件付確率を、他のすべてのノードについて算出する。
図2(c)は、より現実に近いベイジアンネットワーク36の例である。1つのノードが複数のリンクの起点となる場合もある(ノードA等)。1つのノードが他のノードの原因となると同時に、別の他のノードの結果となる場合もある(ノードE)。1つのノードが他のノードの原因となると同時に、当該他のノードの結果となることもある(ノードF及びノードG)。因果関係を有さないノードもある(ノードB)。
図2(c)において、1本のリンクが1つの施策に対応している。
【0026】
販売促進装置1は、処理負担を軽減するために公知の“K2アルゴリズム”を用いることができる。K2アルゴリズムは、例えば時間的に先に発生した事象のノードを、時間的に後に発生した事象のノードの結果とすることはない。
【0027】
図2(a)〜(c)の因果関係36に基づく施策は、それのみである程度の販促効果を生じさせる。しかしながら、販売促進装置1は、このような施策を決定するに際し、KPIを特に考慮していないし、カニバリゼーションも考慮していない。そこで、“影響度”という概念を導入する必要が生じる。
【0028】
(影響度)
図3に沿って、影響度を説明する。前記した項目のうちには、その項目の値の変化がKPI(例えば売上)に対し決定的な影響を及ぼすものが存在する。また、その項目の値の変化がKPIに対し殆ど影響を及ぼさないものも存在する。いま、各項目の値を入力とし、KPIを出力とする関数Fを想定する。
KPI=F(x
1,x
2,x
3,・・・)
【0029】
関数Fは、多種類の変数x
1,x
2,x
3,・・・を入力変数とする関数であり、x
1,x
2,x
3,・・・は、年齢、商品、店舗等の項目に相当する。例えば年齢“x
1”の値が変化するとき、出力変数としてのKPIも充分大きく変化すれば、“x
1”がKPIに及ぼす影響度は大きいといえる。販売促進装置1は、このような影響度の定義を任意に決定することができる。具体的な影響度の例としては、次の5種類の統計値が挙げられる。なお、“| |”は、絶対値を示す。
【0030】
・|δF/δx
i| すなわち、回帰直線の傾きの絶対値
・|KPIとx
iとの相関係数|
・KPIの分散
・KPI最大値−KPIの最小値
・KPIの確率分布 すなわち、項目がある範囲の値を取る確率
ここでは、KPIに対する影響度が項目ごとに定義される。なお、後記するように、KPIに対する影響度が、項目の値ごとに定義されることも可能である。
【0031】
前記5種類の例は、何れも本質的には類似している。
図3は、KPIと項目“x
i”との関係を図示したものであるが、これら5種類の例に共通する特徴を図示している。
図3のケース1では、当該項目“x
i”は、無視される。ケース2及びケース3では、当該項目“x
i”は、施策を決定するために用いられる。いま、販売促進装置1は、KPIに対する影響度が大きい項目として、例えば“年齢”を抽出したとする。すると、販売促進装置1は、
図1の各情報から“年齢”に関する情報を抽出したうえで“年齢”に関する因果関係36を作成し、前記した“〈例4〉○○歳以上の顧客に、商品◎◎を推奨する”という施策を作成することもできる。
【0032】
そこで、次に販売促進装置1は、“○○歳以上の顧客に、商品◎◎を推奨する”の“○○”の部分及び“◎◎”の部分を具体的に決定することになる。つまり、販売促進装置1は、クラスタリングを行うことによって、施策を絞り込む(販売促進の対象となる項目の値を限定する)ことになる。
【0033】
(クラスタリング)
図4に沿って、クラスタリングを説明する。販売促進装置1は、任意の項目を軸に有する多次元空間において、販売実績を示す点“●”を描画することができる。個々の●は、複数の項目の値を有しており、各項目の値が、多次元空間の軸の目盛に相当する。説明の簡略化のために、以降では3次元空間の例を採用する。なお、
図4(a)及び
図4(b)に記載された破線の直方体は、その図が3次元空間であることを明らかにするためのものであり、それ以上の意味を有しない。
【0034】
図4(a)及び
図4(b)の3次元空間の軸は、“KPI(例えば売上)”、“影響度”、及び、それ以外の“注目項目”である。いま、多くの項目のうち、KPIに対する影響度は、“商品”が最も大きく、その次に“年齢”が大きいとする。そこで、販売促進装置1は、まず、“商品”を“注目項目”とする(
図4(a))。例えば、すべての商品に商品ID(4桁の数字)が付されているとすると、販売促進装置1は、商品ID“0001”を“商品”軸の原点の最も近い位置に置き、商品ID“9999”を“商品”軸の原点から最も離れた位置におく。
【0035】
販売促進装置1は、次の処理を順に実行する。
〈処理1〉販売促進装置1は、
図1の各情報から“商品ID,売上”の組合せを任意の数だけ取得する。
図4(a)では、その数は“4”であるとする。ここでの4つの商品IDが、“商品a”、“商品b”、“商品c”及び“商品d”に相当する。
【0036】
〈処理2〉販売促進装置1は、4つの商品がKPIに及ぼす影響度を取得する。ここでの影響度は、項目(商品)の値ごとに定義される。販売促進装置1は、ある特定の商品が購買された時点の売上を時系列で取得することによって、例えば直近の1年間の売上の変化を知ることができる。販売促進装置1は、この売上の時系列変化に基づいて、前記した影響度を商品の値ごとに定義することが可能である。
【0037】
〈処理3〉販売促進装置1は、“商品ID,売上,影響度”の組合せを示す4つの●を、3次元空間内に描画する。
〈処理4〉販売促進装置1は、“KPI”の値が最も大きく、かつ、“影響度”の値が所定の閾値以上である●を特定する。いま、販売促進装置1は、このような条件を満たす●として、“●c”(商品cに対応)を特定したとする。
以上の処理によって、販売促進装置1は、商品cが販売促進の対象として相応しいことを明らかにした。次に、販売促進装置1は、どのような年齢層に商品cを推奨するかを決定する。なお、ここで、販売促進装置1は、KPIの値が最も大きい●以外にも、所定の基準を満たす程度に大きい●を特定してもよい。
【0038】
販売促進装置1は、次に、“年齢”を“注目項目”とする(
図4(b))。“年齢”軸の目盛は、顧客の年齢そのものである。販売促進装置1は、次の処理を順に実行する。
〈処理11〉販売促進装置1は、
図1の各情報から“年齢,売上”の組合せを任意の数だけ取得する。このとき、販売促進装置1は、商品cを購買した顧客の年齢を取得している。
図4(b)では、その数は“4”であるとする。ここでの4つの年齢が、“商品cを購買した年齢a”、“商品cを購買した年齢b”、“商品cを購買した年齢c”及び“商品cを購買した年齢d”に相当する。
【0039】
〈処理12〉販売促進装置1は、4つの年齢がKPIに及ぼす影響度を取得する。ここでの影響度は、項目(年齢)の値ごとに定義される。販売促進装置1は、ある特定の年齢の顧客が商品cを購買した時点の売上を時系列で取得することによって、例えば直近の1年間の売上の変化を知ることができる。販売促進装置1は、この売上の時系列変化に基づいて、前記した影響度を年齢の値ごとに定義することが可能である。
【0040】
〈処理13〉販売促進装置1は、“年齢,売上,影響度”の組合せを示す4つの●を、3次元空間内に描画する。
〈処理14〉販売促進装置1は、“KPI”の値が最も大きく、かつ、“影響度”軸の値が所定の閾値以上である●を特定する。いま、販売促進装置1は、このような条件を満たす●として、“●a”(年齢aに対応)を特定したとする。なお、ここで、販売促進装置1は、KPIの値が最も大きい●以外にも、所定の基準を満たす程度に大きい●を特定してもよい。
【0041】
その後、販売促進装置1は、最終的な施策として“年齢aの顧客に対し商品cを推奨する”を決定する。
【0042】
(販売促進装置の構成)
図5に沿って、販売促進装置1の構成を説明する。販売促進装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、入力装置12、出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。補助記憶装置15は、販売実績情報31、顧客情報33、KPI情報34及び商品情報35を格納している。これらは、
図1における同名の各情報と同じものである。
【0043】
補助記憶装置15は、前記した因果関係(ベイジアンネットワーク)36及び施策38を記憶している。補助記憶装置15は、影響度情報37を格納しているが、これについては後記する。主記憶装置14における、データ準備装置21、項目抽出部22、因果関決定部23、クラスタリング部24及び施策決定部25は、プログラムである。以降において、“○○部は”と動作主体を記した場合、それは、中央制御部11が補助記憶装置15から“○○部”を読み出して主記憶装置14にロードしたうえで、後記する処理を実行することを意味する。なお、
図5において補助記憶装置15内に記憶されている販売実績情報31等は、販売促進装置1以外の外部の装置に記憶されていてもよい。
【0044】
販売促進装置1は、通信ネットワーク3を介して、前記した外部サーバ2と通信可能である。外部サーバ2は、外部情報32を格納している。ここでの外部情報32は、
図1における外部情報32と同じものである。なお、販売実績情報31、外部情報32、顧客情報33、KPI情報34及び商品情報35を含む概念を、広義の“販売実績情報”と呼ぶ。請求項の“販売実績情報”は、広義の販売実績情報である。
【0045】
(処理手順)
図6に沿って、処理手順を説明する。説明の途中で、適宜
図7及び
図8を参照する。
ステップS201において、販売促進装置1のデータ準備部21は、販売実績情報31を取得する。具体的には、第1に、データ準備部21は、補助記憶装置1に記憶されている販売実績情報31のうち、項目“店舗”を除いたうえで、所定の期間に係る部分を取得する。所定の期間とは、例えば、現在日を含む暦年の1月1日から、現在日までの期間である。
【0046】
第2に、データ準備部21は、ステップS201の“第1”において取得した販売実績情報31に対して新たに購買金額欄105を設け、購買金額欄105に、販売単価(商品情報35の項目である)に対して数量を乗算した結果を記憶する。この段階で、販売実績情報31は、
図7(a)に示す状態になっている。
図7(a)の時点欄101、顧客欄102、商品欄103及び数量欄104は、
図1における同名の各欄に対応している。
【0047】
ステップS202において、データ準備部21は、顧客ごとに集計する。具体的には、データ準備部21は、販売実績情報31(
図7(a))のレコードを顧客ごとに集計する。この段階で、販売実績情報31は、
図7(b)に示す状態になっている。
図7(b)において、データ準備部21は、時点欄101に2017年1月1日から現在日までに経過した週の数を記憶する。データ準備部21は、商品欄103にすべての商品IDを記憶してもよいが、商品IDの数が多い場合、当該欄を省略してもよい。
【0048】
ステップS203において、データ準備部21は、顧客を並び替える。具体的には、データ準備部21は、購買金額の大きい順に、
図7(b)のレコードを並び替える。
【0049】
ステップS204において、データ準備部21は、顧客層を分割する。具体的には、第1に、データ準備部21は、販売実績情報31のレコードを上から順(購買金額が多い順)に所定の本数ごとに分割する。
第2に、データ準備部21は、販売実績情報31に対して新たに分割番号欄106を設け、分割番号欄106に分割番号を記憶する。分割番号は、分割された顧客層の上から順に、“1”、“2”、“3”、・・・である。この段階で、販売実績情報31は、
図7(c)に示す状態になっている。
図7(c)では、レコードが4本ごとに分割されている。ここでは説明の簡略化のために4本ごとに分割しているが、実際には、データ準備部21は、例えば数百本ごとに分割する場合もある。
【0050】
その後、販売促進装置1は、繰り返し処理に入る。具体的には、販売促進装置1は、ステップS205〜S208の処理を分割番号(
図7(c)の欄106)ごとに繰り返す。
【0051】
ステップS205において、販売促進装置1の項目抽出部22は、項目を抽出する。具体的には、第1に、項目抽出部22は、出力装置13にKPIの候補(売上、利益、販売数量及び来店客数等)を表示し、ユーザが入力装置12を介して候補のうちの1つを選択するのを受け付ける。
第2に、項目抽出部22は、前記した方法で
図1の各情報のすべての項目について、KPIに対する影響度を算出する。
第3に、項目抽出部22は、影響度情報37(
図8(a))を作成し、その分割番号欄111、影響度欄112、及び、項目欄113に、それぞれ、処理中の分割番号、ステップS205の“第2”において算出した影響度、及び、項目名を記憶する。項目抽出部22は、繰り返し処理におけるステップS205を経由する都度、処理中の分割番号のレコードを、項目の数だけ作成して行くことになる。そして、項目抽出部22は、影響度情報37(
図8(a))を最新の状態で補助記憶装置15に記憶する。
【0052】
第4に、項目抽出部22は、影響度情報37から、影響度が所定の基準を満たす程度に大きい項目を抽出する。ここでは、影響度情報37は、影響度が最大である項目を抽出したとする。項目抽出部22は、所定の基準に従っておれば、必ずしも影響度が最大である項目を抽出しなければならないわけではない。
【0053】
ステップS206において、販売促進装置1の因果関係決定部23は、因果関係を決定する。具体的には、第1に、因果関係決定部23は、ステップS205の“第4”において抽出された影響度が最も大きい項目を取得する。ここでは、項目“商品”が取得されたとする。
【0054】
第2に、因果関係決定部23は、前記した方法で因果関係(ベイジアンネットワーク)36を決定する。このとき、因果関係決定部23は、ステップS206の“第1”において取得した項目を検索キーとして、
図1の各情報のうち“商品”に関する情報を取得し、商品についての因果関係36(
図2(b))を決定する。すると施策決定部25は、例えば、“屋外テントを購買した顧客に、虫よけスプレーを推奨する”のような施策38を決定する。
【0055】
ステップS207において、販売促進装置1のクラスタリング部24は、クラスタリングを行う。具体的には、第1に、クラスタリング部24は、ステップS205の“第3”において記憶した影響度情報37のレコードから、影響度が最も大きい項目を特定する。項目“商品”が特定されたとする。すると、クラスタリング部24は、“注目項目”を“商品”としたうえで、前記した
図4(a)の処理を行う。このとき、商品IDごとにKPI(売上)が取得される。
【0056】
第2に、クラスタリング部24は、ステップS205の“第3”において記憶した影響度情報37のレコードから、影響度が2番目に大きい項目を特定する。項目“年齢”が特定されたとする。すると、クラスタリング部24は、“注目項目”を“年齢”としたうえで、前記した
図4(b)の処理を行う。このとき、年齢ごとにKPI(売上)が取得される。
第3に、クラスタリング部24は、ステップS207の“第1”及び“第2”において取得されたKPIが大きい順に、項目に対して順番を付す。
【0057】
第4に、クラスタリング部24は、影響度情報37(
図8(a))に対して新たにクラスタ番号欄114を設け、クラスタ番号欄114に、ステップS207の“第3”において付した順番を記憶する。前記の例では、項目“商品”のレコードに“1”が記憶され、項目“年齢”のレコードに“2”が記憶されることになる。クラスタリング部24は、
図4(b)の処理を2回以上繰り返すことも可能である。この場合、クラスタ番号欄114に、“3”、“4”、・・・が記憶されることになる。この段階で、影響度情報37は、
図8(b)の状態になっている。
【0058】
第5に、クラスタリング部24は、ステップS207の“第1”及び“第2”の結果を施策決定部25に渡す。すると、施策決定部25は、当該結果に基づき、例えば、“年齢aの顧客に商品cを推奨する”という施策を決定することになる。
【0059】
ステップS208において、施策決定部25は、施策を決定する。具体的には、第1に、施策決定部25は、年齢aの顧客に商品cを推奨するという施策を決定する。
第2に、施策決定部25は、次の情報を出力装置13又は他の任意の装置に表示する。
・ステップS205の“第3”において作成された影響度情報37
・ステップS206の“第2”で決定された因果関係36及び施策38
・ステップS207の“第1”及び“第2”においてクラスタリングが行われた際の3次元図形(
図4(a)及び
図4(b))
・ステップS208の“第1”において決定された施策38
なお、施策決定部25は、施策38を文字又は音声で出力してもよい。
その後、繰り返し処理が終了した段階で、処理手順を終了する。
【0060】
(本実施形態の効果)
本実施形態の販売促進装置1の効果は以下の通りである。
(1)ユーザは、属人的ノウハウを有さなくても、過去の販売実績情報から、販売促進のための具体的な施策を決定することができる。そして、その施策は、因果関係及び影響度から導出されるので、客観的かつ経営的に裏付けられている。
(2)ユーザは、優先的に注目すべき項目を知ることができる。
(3)ユーザは、具体的なターゲット顧客に対し具体的な商品を推奨することができる。
(4)ユーザは、因果関係の決定及び影響度の算出に際し、条件付確率、回帰分析等を行うための既存のアプリケーションを活用できる。
(5)ユーザは、例えば購買力等の顧客層ごとに施策を決定することができる。
(6)ユーザは、施策に反映させるべき経営指標を選択することができる。
【0061】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。