(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)繊維性多孔質マトリックスと、b)前記繊維性多孔質マトリックスに捕らえられた複数の濃縮剤粒子と、を含む不織布物品であって、前記繊維性多孔質マトリックスが無機繊維及びポリマー繊維から本質的になりポリアミド繊維を含まない、不織布物品。
前記少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を少なくとも1種の検出試薬と接触させて定置する前記工程の前に、前記少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を洗浄することを更に含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の代表的な不織布物品の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2】実施例2の代表的な不織布物品のSEM画像である。
【
図3】実施例3の代表的な不織布物品のSEM画像である。
【0008】
[詳細な説明]
流体試料の微生物量をモニタリングするための不織布物品及び迅速方法が提供される。当該方法は、少なくとも1種の微生物又は標的細胞検体を濃縮する不織布物品と、微生物又は標的細胞検体の検出とを組み合わせる。不織布物品は、微生物及び/又は標的細胞検体を濃縮するために大量の流体試料と接触させてもよく、更に、検出前に汚染物質を除去するために任意選択の洗浄を行ってもよい。不織布物品は、検出用容器に容易に移される。本開示による方法は、流体試料中の細菌汚染を約15分ですぐに検出することができる。したがって、上記不織布物品及び方法は、流体試料中の微生物及び標的細胞検体のフィールドベースの検出に好適であり得る。
【0009】
以下の定義された用語の用語集に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において提供されない限り、出願全体にこれらの定義が適用されるものとする。
【0010】
用語集
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して特定の用語が使用されており、大部分は周知であるが、いくらか説明を必要とするものもある。本明細書で使用される場合、以下のように理解されるものとする。
【0011】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、「少なくとも1つの」と同義に使用され、記載される要素のうちの1つ以上を意味する。
【0012】
用語「及び/又は(and/or)」は、一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBの双方を意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1〜5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0014】
本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、別途記載のない限り、全ての場合において「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。したがって、逆の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化しうる。最低でも、請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告される有効桁の数に照らして、通常の四捨五入を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0015】
用語「含む/包含する(comprises)」及びその変化形は、それらの用語が記載及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0016】
用語「〜から本質的になる」は、所与の組成物又は生成物の所望の特性に著しく影響しない追加の材料の存在を除外しない。
【0017】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で、他の実施形態がまた好ましくてもよい。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0018】
用語「カニューレを有するデバイス」は、細い可撓管のような管を含むデバイスを意味する。
【0019】
用語「細胞検体」は、細胞起源の検体(すなわち、微生物又はその構成要素(例えば、細胞又は細胞要素、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)若しくはリボ核酸(RNA)、タンパク質、アデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオチド等、及びそれらの組み合わせ))を意味し、本明細書における微生物又は微生物株といった記載は、あらゆる細胞検体に一般的に適用されることが意図されている。
【0020】
用語「濃縮剤」は、流体試料から微生物及び/又は細胞検体を拘束し(好ましくは、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の細胞検体捕捉又は拘束効率を有する)、それによって、微生物及び/又は細胞検体を流体試料中に存在したときよりも少量に濃縮する、材料又は組成物を意味する。
【0021】
用語「検出」は、細胞検体(例えば、それにより標的微生物が存在することを判定する、少なくとも標的微生物の構成要素)の同定を意味する。
【0022】
(繊維性多孔質マトリックス中の粒子に関しての)「捕らえられた(enmeshed)」という用語は、粒子が、単に繊維性多孔質マトリックスの表面上に保持されているのではなく、繊維性多孔質マトリックス中に及び繊維性多孔質マトリックス上に閉じ込められている(好ましくは、その中に分散している)ことを意味する。
【0023】
(繊維又は繊維性材料に関しての)「フィブリル化(された)」という用語は、繊維の本幹に結合しているフィブリル又は枝を形成するように(例えば、叩くことによって)処理されることを意味する。
【0024】
用語「繊維性多孔質マトリックス」は、絡み合った繊維を含む、不織布ウェブ又は媒体(すなわち、織布又は編布ではない)を意味し、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、又はその他のエアレイド法、カーディング法、ウェットレイド法などによって絡み合わされた繊維を含むウェブを含む。典型的には、繊維は、100mm未満の長さを有し、非捲縮である。
【0025】
用語「濾過」は、一般に、サイズ、電荷、及び/又は機能によって物質を分離するプロセスを記述するために使用される。例えば、濾過は、可溶物及び溶媒(例えば、希釈剤)を不溶物から分離する工程を含むことができ、あるいは、可溶物、溶媒、及び相対的に小さな不溶物を、相対的に大きな不溶物から分離する工程を含むことができる。様々な濾過方法が使用でき、液体組成物をフィルタに通すこと、沈殿させてから吸引又はデカントにより移すこと、他の好適な濾過方法、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。「沈殿」は、液体組成物中の不溶物を沈殿させることを指すのに用いられる。沈殿は重力又は遠心によって行うことができる。次いで、不溶物から可溶物及び溶媒を吸引する工程、可溶物及び溶媒をデカントにより移す工程、又はこれらの組み合わせによって、不溶物(又は相対に大きな不溶物)を、可溶物(又は可溶物及び相対的に小さな不溶物)及び溶媒から分離することができる。
【0026】
用語「濾過液」は、一般に、液体組成物から不溶物(又は少なくとも相対的に大きな不溶物)を除去した後に残る液体を記述するために使用される。
【0027】
用語「流体」は、液体、溶液、又は液体中への固体若しくは液体の分散体を意味する。
【0028】
用語「管腔を有するデバイス」(lumened device)は、管状の内部又は外部形状を含むデバイスを意味する。
【0029】
用語「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する任意の細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
【0030】
用語「微生物株」は、検出方法により識別可能な微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる分離株の微生物)の特定のタイプを意味する。
【0031】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、互換可能に用いられ、1つ以上のモノマーを反応させることによって形成された材料を指す。
【0032】
用語「試料」は、(例えば分析のために)採取される物質又は材料を意味する。
【0033】
用語「試料マトリックス」は、微生物及び/又は細胞検体以外の試料の構成成分を意味する。
【0034】
用語「標的細胞検体」は、検出しようとする任意の細胞検体を意味する。
【0035】
用語「標的微生物」は、検出しようとする任意の微生物を意味する。
【0036】
本明細書全体を通し、「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、「実施形態」という用語の前に「例示的(代表的)」という用語が含まれているかどうかに関わらず、その実施形態と共に記載される、ある特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえに、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、「多くの実施形態において」又は「実施形態において」といった句の出現は、必ずしも本開示の特定の代表的実施形態のうちの同一の実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0037】
ここで本開示の様々な実施形態を記載する。本開示の代表的な実施形態は、開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更が可能である。したがって、本開示の実施形態は以下に記述する例示的実施形態に限定されず、請求項及びそれと同等の任意のものに定められた制限によって支配されるものと理解されたい。
【0038】
第1の態様では、不織布物品が提供される。不織布物品は、a)繊維性多孔質マトリックスと、b)繊維性多孔質マトリックスに捕らえられた複数の濃縮剤粒子と、を含む。繊維性多孔質マトリックスは、無機繊維及びポリマー繊維から本質的になる。不織繊維性多孔質マトリックスは、多くの場合、紡織又は編み合わせではなく、交互に置かれた(interlaid)繊維の層の形態である。不織繊維性多孔質マトリックスは、例えば、エアレイド技術、メルトブロー又はスパンボンドのようなスパンレイド技術、カーディング、ウェットレイド、及びこれらの組み合わせのような任意の好適なプロセスによって調製することが可能である。多くの実施形態において、繊維性不織布マトリックスは、ウェットレイド法によって調製される。
【0039】
不織繊維性多孔質マトリックスの調製に使用するのに好適な繊維は、通常、放射線及び/又は種々の溶媒に対して安定な繊維のような、パルプ化可能又は押出可能な繊維である。任意選択的に、ポリマー繊維のうちの少なくとも一部は、ある程度の親水性を呈するように選択され得る。有用な繊維としては、ポリマー繊維、無機繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられる。より具体的には、繊維としては、ポリオレフィン繊維及びファイバーグラス繊維など、複数の異なる種類の繊維が挙げられる。
【0040】
好適なポリマー繊維としては、天然ポリマー(動物又は植物源由来)及び/又は合成ポリマー、例えば熱可塑性及び溶媒分散性ポリマーなどから作製されたものが挙げられる。有用なポリマーとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリ(エチレン)(例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー、例えば、エチレン又はプロピレンと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとのコポリマー、例えば、ポリ(エチレン−co−1−ブテン)、ポリ(エチレン−co−1−ブテン−co−1−ヘキセン)など);ポリ乳酸;ポリ(イソプレン);ポリ(ブタジエン);ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、ポリカプロラクタムなど);ポリイミド(例えば、ポリ(ピロメリットイミド)など);ポリエーテル;ポリ(エーテルスルフォン)(例えば、ポリ(ジフェニルエーテルスルフォン)、ポリ(ジフェニルスルフォン−co−ジフェニレンオキシドスルフォン)など);ポリ(スルフォン);ポリ(ビニルエステル)、例えば、ポリ(酢酸ビニル);酢酸ビニルのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていることでポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)などの種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーなど);ポリ(ホスファゼン);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリアラミド(例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)などのパラアラミド、及びDuPont Co.(Wilmington,DE)より「KEVLAR」の商品名で販売される繊維(そのパルプは、パルプを構成する繊維の長さに基づいて例えば「KEVLAR 1F306」及び「KEVLAR 1F694」などの様々なグレードで市販されており、これらはいずれも少なくとも4mmの長さのアラミド繊維を含んでいる)など);羊毛;絹;セルロース系ポリマー(例えば、セルロース、レーヨンのようなセルロース誘導体など);アクリル系ポリマー(例えば、ポリアクリロニトリル);ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート);フッ素化ポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)など)、クロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)など)など;塩素化ポリマー;ポリ(カーボネート);及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、ポリマー繊維は、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアミド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0041】
好適な無機繊維としては、ガラス、セラミックス、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類の無機材料を含むものが挙げられる。これらの繊維を加えることにより、多くの場合、繊維性多孔質マトリックスを強化することが可能である。例えば、無機繊維を含有する多孔質マトリックス層は、多くの場合、壊れることなく、屈曲、折り畳み、又はプリーツ状にすることが可能である。有用な無機繊維としては、例えば、繊維ガラス(例えば、Eガラス、Sガラスなど)、セラミック繊維(例えば、金属酸化物(アルミナなど)、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素などで製造された繊維)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なセラミック繊維は、少なくとも部分的に結晶性であり得る(認識可能なX線粉末回折図形を示す、又は結晶質相及び非晶質(ガラス)相の両方を含有する)。いくつかの用途において、無機繊維はファイバーグラスを含む。
【0042】
濃縮剤粒子の捕捉を促進する目的で、及び/又は大きい表面積を確保する目的で、不織繊維性多孔質マトリックスの形成に用いられる繊維は、多くの場合、少なくとも1つのフィブリル化繊維を(例えば、主繊維が多くのより小さな結合フィブリルで取り囲まれた形態で)含有する。主繊維は、一般に、0.5mm〜5mmの範囲の長さ、及び1μm〜20μmの範囲の直径を有し得る。フィブリルは、典型的には、マイクロメートル未満の直径を有し得る。多くの実施形態において、フィブリル化繊維は、ポリ(エチレン)又はポリプロピレンのようなポリオレフィンから、又はポリアクリロニトリルのようなアクリル系ポリマーから調製される。
【0043】
好適なポリマー繊維は、2成分繊維を更に含み、これは典型的には2成分繊維内の材料の1つの融点の違いにより、マトリックス繊維の全てを1つに結合する効果がある。2成分繊維は、例えば、コア−シース構造、並列(サイド−バイ−サイド)構造、海島(アイランド−イン−ザ−シー)構造、又は分割パイ(セグメンテッド−パイ)構造などを有し得る。並列2成分繊維の例には、チッソ株式会社(日本、大阪)からCHISSO(例えば、CHISSO ES)という商品名で市販されているポリオレフィン熱融着2成分繊維がある。コア−シース2成分繊維の例には、ユニチカ株式会社(日本、大阪)からメルティ(例えば、メルティ4080)の商品名で市販されているもの、及びMinifibers,Inc.(Johnson City,TN)から市販されている、エチルビニルアセテート(シース)及びポリプロピレン(コア)から作られたもの、又はポリエステルとポリエチレンテレフタレート(PET)のコポリエステル(シース)及びポリエステル(コア)から作られたものがある。
【0044】
不織繊維性多孔質マトリックスは、複数の異なる種類の繊維を含有する。いくつかの実施形態において、多孔質マトリックスは、3、4種類、又は更にはより多くの異なる種類の繊維を使用して形成され得る。例えば、強度及び一体性をもたせるためにファイバーグラス繊維を加えることができる一方、粒子を閉じ込めるためにフィブリル化ポリ(エチレン)を加えることができる。加えて、ナイロン繊維が親水性特性をもたらすのに対して、フィブリル化ポリ(エチレン)繊維は疎水性特性を多孔質マトリックスにもたらす。フィブリル化繊維及び非フィブリル化繊維を組み合わせて使用した場合、フィブリル化繊維と非フィブリル化繊維との重量比は、多くの場合、少なくとも1:2、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、又は更には少なくとも8:1である。いくつかの実施形態では、疎水性及び親水性ポリマー繊維の混合物が使用される。例えば、繊維性多孔質マトリックスは、ポリオレフィンのような疎水性繊維とポリスルフォンのような親水性繊維との混合物を含み得る。いくつかの具体例において、ポリマー繊維は、ポリオレフィン繊維、2成分繊維、及びファイバーグラス繊維を含む。
【0045】
特定の実施形態において、繊維性多孔質マトリックスはポリアミド繊維を含まない。以下の実施例で考察するように、繊維性多孔質マトリックスにナイロン繊維を含むと、生物発光ATP検出法で、ナイロン繊維を含まない繊維性多孔質マトリックスよりも低発光になり得ることが発見された。
【0046】
好ましくは、不織繊維性多孔質マトリックスの形成に使用される繊維は非捲縮である。非捲縮繊維と対照的に、捲縮繊維は、反復する形体を呈する(例えば、波状、ぎざぎざした、正弦波形状等の繊維の外観が顕在化する)、螺旋形の外観(例えば、特に2成分繊維の熱活性化によって得られる捲縮繊維の場合)を有する等で識別することができ、当業者には容易に認識できる。例示的な捲縮繊維は、米国特許第4,118,531号(Hauser)、及び同第5,597,645号(Pike et al.)、及びカナダ特許第2612854号(Sommer et al.)に記載されている。
【0047】
不織繊維性多孔質マトリックスの形成に用いられる繊維は、特定用途(例えば、流体試料をマトリックスに通すこと)に十分な構造的一体性及び十分な多孔性を有する多孔質マトリックスを提供できる長さ及び直径のものであり得る。繊維の長さは、多くの場合、少なくとも約0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも6mm、少なくとも8mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、及び最大50mm、最大40mm、最大30mm、又は最大25mmである。繊維の直径は、例えば、少なくとも10μm、少なくとも20μm、又は少なくとも30μmであり得る。繊維の長さ及び直径は、繊維の性質及び用途の種類などの要因に応じて変動するであろう。
【0048】
不織繊維性多孔質マトリックスは、多くの場合、ポリオレフィン繊維、ガラス繊維、及び2成分繊維の混合物を含む。いくつかの特定の実施形態において、不織繊維性多孔質マトリックスは、フィブリル化ポリエチレン繊維、ガラス繊維、及びシース−コア2成分繊維の混合物を含有する。いくつかの実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、40〜80重量%のフィブリル化ポリエチレン繊維、5〜20重量%のガラス繊維、及び5〜20重量%の2成分繊維を含有する。いくつかの実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、40〜80重量%のフィブリル化ポリエチレン繊維、10〜30重量%のナイロン繊維、5〜20重量%のガラス繊維、及び5〜20重量%の2成分繊維を含有する。その他の実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、50〜70重量%のフィブリル化ポリエチレン繊維、5〜15重量%のガラス繊維、及び5〜20重量%の2成分繊維を含有する。更に他の例では、繊維性多孔質マトリックスは、55〜65重量%のフィブリル化ポリエチレン繊維、0〜20重量%のナイロン繊維、5〜15重量%のガラス繊維、及び10〜20重量%の2成分繊維を含有する。
【0049】
上記のように、繊維性多孔質マトリックスは、無機繊維及びポリマー繊維から本質的になる。したがって、大部分の実施形態において、繊維性多孔質マトリックスは、繊維のみを含有する。例えば、乾燥繊維性多孔質マトリックスの少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%は繊維である。特定の実施形態において、不織布物品は、少なくとも0.1mm、又は少なくとも0.15mm、又は少なくとも0.2mm、又は少なくとも0.3mm、又は少なくとも0.4mm、又は少なくとも0.5mm、又は少なくとも0.6mmの厚さを備える。不織布物品は、通常、最大1mm、又は最大0.9mm、又は最大0.8mm、又は最大0.7mm、又は最大0.55mmの厚さを備える。別の言い方をすれば、不織布物品は、0.15mm〜1mm、又は0.15mm〜0.8mm、又は0.1mm〜0.7mmの厚さを備えてもよい。特定の実施形態において、不織布物品内に試薬が拡散するために必要な時間を短縮する、又は発生した検出信号の阻害を低減するなど、微生物及び/又は細胞検体の検出への干渉を最小限に抑えるために、上記の厚さの範囲の下限に近い厚さを有する不織布物品が選択される。
【0050】
不織布物品は、典型的には、繊維性多孔質マトリックスと、当該繊維性多孔質マトリックス内に分散された濃縮剤粒子との両方を含む。大部分の実施形態において、不織布物品は、不織布物品の総乾燥重量に基づいて少なくとも10重量%の濃縮剤粒子を含有する。濃縮剤粒子の量が約10重量%未満の場合、不織布物品は、微生物又は細胞検体を流体試料から有効に捕捉するのに十分な濃縮剤粒子を含有しない可能性がある。いくつかの実施例では、不織布物品は、不織布物品の総乾燥重量に基づいて少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の濃縮剤粒子を含有する。
【0051】
他方、不織布物品は、通常、不織布物品の総乾燥重量に基づいて55重量%以下の濃縮剤粒子を含有する。濃縮剤粒子の量が約55重量%を超える場合、不織布物品は、十分な量の繊維性多孔質マトリックスを含有しない可能性がある。つまり、不織布物品の強度が、微生物株及び/又は標的細胞検体を捕捉するために使用したときに、一体を保持にするには不十分となる可能性がある。いくつかの実施例において、不織布物品は、不織布物品の総重量に基づいて50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下の濃縮剤粒子を含有する。
【0052】
言い方を変えれば、不織布物品は、多くの場合、10〜55重量%の濃縮剤粒子と45〜90重量%の繊維性多孔質マトリックス、15〜50重量%の濃縮剤粒子と50〜85重量%の繊維性多孔質マトリックス、20〜50重量%の濃縮剤粒子と50〜80重量%の繊維性多孔質マトリックス、20〜45重量%の濃縮剤粒子と55〜80重量%の繊維性多孔質マトリックス、25〜40重量%の濃縮剤粒子と60〜75重量%の繊維性多孔質マトリックス、又は30〜40重量%の濃縮剤粒子と60〜70重量%の繊維性多孔質マトリックスを含有する。この量は、不織布物品の総乾燥重量に基づく。
【0053】
多くの実施形態において、不織布物品(乾燥時)は、濃縮剤粒子及び繊維性多孔質マトリックスのみを含有する。例えば、不織布物品は、乾燥時、濃縮剤粒子と繊維性多孔質マトリックスとを合せて、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%含有する。
【0054】
濃縮剤粒子は、微生物及び/又は細胞検体を含有する流体試料と接触したときに、微生物株、細胞検体、又はこれらの組み合わせを非特異的に捕捉するために使用されてきた非水溶性粒子状物質である。濃縮剤粒子は、典型的には、微粒子を含む。濃縮剤粒子は、典型的には、非晶質金属ケイ酸塩、グアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土、表面改質珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、γ−FeO(OH)、金属炭酸塩、金属リン酸塩、シリカ、パーライト、グアニジン官能化パーライト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子を含む。
【0055】
一実施形態において、濃縮剤粒子は、非晶質金属ケイ酸塩の粒子、例えば、非晶質球状化ケイ酸マグネシウム、非晶質球状化ケイ酸アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む。非晶質で、少なくとも部分的に溶融した粒子形態の金属ケイ酸塩は、比較的小さいフィード粒子(例えば、平均粒径が約25μmまでのもの)を、概ね楕円体又は球状の粒子(すなわち、真に又は実質的に円及び楕円の形状及び任意の他の丸い又は曲がった形状を含む、概ね丸く、鋭利な角又は縁を含まない、拡大された二次元像を有する粒子)を作製するための制御された条件下で融解又は軟化させる既知の任意の方法によっても調製可能である。このような方法には微粒化、ファイアポリッシュ、直接溶融などが挙げられる。好ましい方法は火焔溶融であり、この方法では固体フィード粒子の直接溶融又はファイアポリッシュにより、少なくとも部分的に溶融した、実質的にガラス状の粒子が形成される(例えば、米国特許第6,045,913号(Castle et al.)に述べられている方法のように)。最も好ましくは、このような方法を使用して、不規則形状のフィード粒子のかなりの部分(例えば、約15〜約99体積%、好ましくは、約50〜約99体積%、より好ましくは、約75〜約99体積%、最も好ましくは、約90〜約99体積%)を、概ね楕円体又は球状粒子に変換することによって非晶質の球状化金属ケイ酸塩を製造できる。
【0056】
いくつかの非晶質金属ケイ酸塩は市販されている。例えば、非晶質球状化ケイ酸マグネシウムは、化粧品の処方における使用を目的として市販されている(例えば、3M Company(St.Paul,MN)より販売される「3M COSMETIC MICROSPHERES CM−111」など)。3M COSMETIC MICROSPHERES CM−111は、2.3g/ccの粒子密度、3.3m
2/gの表面積を有し、粒径は:90%が11μm未満(すなわち、D
90=11)、50%が5μm未満、かつ10%が2μm未満である。非晶質球状ケイ酸アルミニウムは、ペンキ、プライマー、粉末コーティング、及び他のコーティングでの使用向けに市販されており、例えば、3M Company(St.Paul,MN)製の「3M CERAMIC MICROSPHERES」などがある。この3M CERAMIC MICROSPHERESは、粒子密度2.4g/ccの中実の球体として成形されたアルカリアルミノシリケート系セラミック微小球であり、W−210、W−410、及びW0610の3つの等級で市販されている。W−210粒子は、表面積が5m
2/ccで、粒径は:95%が約12μm未満(すなわち、D
95=12)、90%が約9μm未満、50%が約3μm未満、10%が約1μm未満である。W−410粒子は、表面積が3m
2/ccで、粒径は:95%が約24μm未満(すなわち、D
95=24)、90%が約15μm未満、50%が約4μm未満、10%が約1μm未満である。W−610粒子は、表面積が3m
2/ccで、粒径は:95%が約40μm未満(すなわち、D
95=40)、90%が約28μm未満、50%が約10μm未満、10%が約1μm未満である。
【0057】
特定の実施形態において、濃縮剤粒子はパーライト粒子を含む。パーライトは、天然の非晶質火山ガラスで、約70〜75%の二酸化ケイ素、12〜15%の酸化アルミニウム、及びそれより少量のその他の金属酸化物、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムを含有する。パーライトは、熱によって膨張すると、軽量の凝集体を形成する。好適なパーライト粒子の例としては、全てDicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)から市販されている4106グレード材料、4156グレード材料、及び476グレード材料が挙げられる。
【0058】
特定の実施形態において、濃縮剤粒子は、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子、グアニジン官能化珪藻土粒子、又はグアニジン官能化パーライト粒子を含む。グアニジン官能化粒子は、例えば、本願と同一譲受人に譲渡された国際出願PCT/US2014/040861号(Kshirsagar et al.)に開示されている方法によって調製できる。グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子、グアニジン官能化珪藻土粒子、又はグアニジン官能化パーライト粒子は、少なくとも1つのグアニジン含有リガンドを含む。このグアニジン含有リガンドは、金属ケイ酸塩又はパーライト粒子を、次の式1に示される構造を有するグアニジン含有シランで改質することによって、形成される。
【化1】
【0059】
式1において、Siは、ケイ素原子であり、Gは、式−NH−C(=NH)−NH
2で表されるグアニジン基を示す。Yは、一端においてケイ素原子と共有結合し、他端においてG基と共有結合する2価の基である。各R
a基は、存在する場合には、独立してアルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、ケイ素原子と結合している。各Xは、ケイ素原子と共有結合した脱離基であり、かつ独立してアルコキシ又はアシルオキシであり、nは、0、1、又は2である。典型的なアルキレンは、2価の基の末端原子を含めて、最大20個、最大16、12、10、8、7、6、5、4個、又は最大3個の炭素原子、又は2個の炭素原子を有していてよい。いくつかの実施形態において、Yは、3〜6個の炭素原子を有するアルキレンを含む2価の基である。好ましい一実施形態において、Yは、3個の炭素原子を有する2価の基(すなわち、プロピル)である。
【0060】
式1において、各脱離基Xは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、若しくは最大10個の炭素原子を有するアルコキシ基である、又は2個の炭素原子、若しくは3、4、5、6、7、8、9個、若しくは最大10個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、アルコキシ基、又はアシルオキシ基は、酸素原子を介してケイ素原子と結合している。
【0061】
いくつかの実施形態において、nは0である。nが0のとき、R
a基は存在しないため、式1は、式2に示すように、より単純化することができる(ここで、Si、G、Y、及びXは、式1で定義したとおりである)。
【化2】
式1(又は式2)で表されるシランが金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上の−OH基と反応するとき、少なくとも1つの脱離基Xが、ケイ素原子と金属ケイ酸塩又はパーライト粒子の表面上の酸素原子との間の共有結合によって置き換えられる。式1で表される一般形態のうち、n=0(すなわち、式2におけるように)の場合の、特定の例示的なグアニジン含有リガンドを含むグアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土又はパーライト粒子の実施形態を、式3に示す(式3の円は金属ケイ酸塩又はパーライト粒子を表す)。
【化3】
【0062】
式3は、nが3であり、かつYが3個の炭素原子を有するアルキレンである2価の基である場合の特定の実施形態を表すものであることが理解されるであろう。各式1〜3では、グアニジン基のイオン化状態は省略されているが、様々な環境により、例えば、グアニジン基が存在する液状媒体のpHに応じて、このようなグアニジン基は、荷電していてもよいし、荷電していなくてもよい(例えば、プロトン化していてもよいし、脱プロトン化していてもよい)ことが理解されるであろう。
【0063】
例えば、グアニジン含有前駆体のSiに結合した加水分解性基を粒子のヒドロキシル基と反応させることにより、リガンドの1個又は複数の酸素と粒子との間に、1つ又は複数の共有結合を簡便に得ることができる。式3の例示的な構造では、結合したこのような酸素原子が3個示されている(すなわち、式1においてn=3)が、様々な実施形態において、結合したこのような酸素原子は1個であっても、2個であっても、又は3個であってもよいことが理解されるであろう。ケイ素原子に結合するこのような酸素原子が3個未満の場合、ケイ素原子には他の置換基が存在し得る(例えば、粒子と結合しない置換基など、この置換基は式1に示されていない)。例えば、グアニジン含有リガンドは、2つ以上のグアニジン含有リガンド前駆体の間で形成されるSi−O結合に起因する、Si−O−Si(すなわち、シロキサン)基の形成を含むポリマー構造を含み得る。理論に束縛されるものではないが、添加した水、又は他の水性溶媒、又はSi−O−R基の結合を加水分解できる他の作用剤の存在下では、Si−O−Si基が形成され、粒子に結合した、より複雑なグアニジン含有リガンド構造を生じる可能性があると考えられる。
【0064】
重合したグアニジン含有リガンドのネットワークは、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上にコーティングを形成し得る。いくつかの実施形態において、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上への、窒素含有グアニジン基の付与を増加させる手段として、重合したグアニジン含有リガンドで官能化された粒子(例えば、重合したグアニジン含有リガンド内に少なくとも1つのSi−O−Si基を有するもの)を得ることが望ましい場合がある。少なくともこれらの種類の重合では、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上への窒素含有グアニジン基の付与により、表面窒素含有量は、例えば、X線光電子分光法により測定可能な場合に、1〜10原子%の水準に達し得る。
【0065】
本開示のグアニジン官能化粒子は、金属ケイ酸塩粒子、珪藻土粒子、及びパーライト粒子を含む。有用な金属ケイ酸塩としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタンなど(好ましくは、マグネシウム及びアルミニウム)、及びこれらの組み合わせなどの金属のケイ酸塩が挙げられる。好ましいのは、少なくとも部分的に溶融した粒子の形態の非晶質金属ケイ酸塩である。特定の実施形態においては、非晶質の球状化金属ケイ酸塩がより好ましく、更には非晶質の球状化ケイ酸マグネシウムがより好ましい。特定の実施形態においては、非晶質ケイ酸アルミニウムがより好ましい。金属ケイ酸塩は既知であり、公知の方法によって化学的に合成する、又は天然に生じる未加工鉱石の採鉱及び処理によって入手することができる。金属ケイ酸塩粒子、例えば、ケイ酸マグネシウム粒子は、表面に十分なヒドロキシル基(典型的には、Si−OH基)を有しており、所望の数のグアニジン含有リガンドを粒子に共有結合することが可能である。有用なパーライトとしては、Dicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)の4106、4156、及び476グレード材料が挙げられる。有用な珪藻土粒子は、天然源から得ることができ、Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA))又はDicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)から市販されている。
【0066】
本開示の不織布物品に使用されるグアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子は、繊維とブレンドして本開示の不織布物品を形成することができる、本質的に任意の微粒子形態(好ましくは、比較的乾燥している、又は揮発性成分を含まない形態)で使用することができる。好ましくは、グアニジン官能化粒子は、粉末形態で使用される。有用な粉末としては、微小粒子(好ましくは、約1μm(より好ましくは約2μm、更により好ましくは約3μm、最も好ましくは約4μm)〜約100μm(より好ましくは約50μm、更により好ましくは約25μm、最も好ましくは約15又は20μm、上記に述べた範囲の任意の下限値を任意の上限値と組み合わせることができる)の範囲の粒径を有する微粒子)を含む粉末が挙げられる。
【0067】
XPSは、固体表面上に存在する元素濃度及び化学(酸化状態及び/又は官能基)濃度に関する情報を提供することが可能な技術である。XPSは、典型的には、試験片表面の最も外側の3〜10ナノメートル(nm)の分析を提供する。XPSは、水素及びヘリウムを除く周期表の全ての元素に対して感受性があり、ほとんどの種について0.1〜1原子%の濃度範囲の検出限界を有する。一部の場合、例えばCM−111粒子の場合、XPSの好ましい表面組成評価条件には、受光立体角±10度で試料表面に対して測定される取り出し角度90度が含まれ得る。当業者であれば、本開示の粒子の分析のために好適な機器のセッティングを選択できる。
【0068】
本開示の実施形態において、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子は、XPSで測定した際の、表面窒素含有量が1原子%〜20原子%の範囲である。いくつかの実施形態において、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子は、XPSで測定した際の表面窒素含有量が、少なくとも1原子%、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は更には少なくとも5原子%である。いくつかの実施形態において、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子は、XPSで測定した際の表面窒素含有量が、最大20原子%、最大15、最大10、最大9、最大8、最大7、又は更には最大6原子%である。グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子の表面窒素含有量は、XPSによって測定したときに、上記の下方値と上方値との任意の組み合わせ(これらの値を含む)であってもよい。当業者であれば、いくつかの実施形態においては、所望の用途に応じて、これらの範囲内にてより高い又はより低い表面窒素含有量を選択することが好ましい場合があることを理解するであろう。本開示による使用に好適なグアニジン官能化パーライト粒子としては、パーライトを含み、XPSによって測定したときの表面窒素含有量が2を超え約12以下のものが挙げられる。本開示による使用に好適なグアニジン官能化珪藻土粒子としては、珪藻土を含み、表面窒素含有量が2を超え約12以下の表面組成を有するものが挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態においては、グアニジン官能化ケイ酸マグネシウム粒子が特に好ましい。本開示による使用に好適なグアニジン官能化ケイ酸マグネシウム粒子としては、非晶質ケイ酸マグネシウムを含み、かつ、X線光電子分光法(「XPS」、化学分析用電子分光法(「ESCA」)としても知られる)によって測定したときに、金属原子対ケイ素原子の比が0.01を超え約0.5以下(好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、最も好ましくは約0.2以下)の表面組成を有するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、グアニジン官能化ケイ酸アルミニウム粒子が特に好ましい。本開示による使用に好適なグアニジン官能化ケイ酸アルミニウム粒子としては、非晶質ケイ酸アルミニウムを含み、かつ、XPS(ESCAとしても知られる)によって測定したときに、金属原子対ケイ素原子の比が6.7を超え約17.3以下の表面組成を有するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、グアニジン官能化パーライト粒子が特に好ましい。
【0070】
一実施形態において、濃縮剤粒子は、珪藻土の粒子、例えば、表面改質珪藻土の粒子を含む。珪藻土(別名キーゼルグール)は、海生微生物綱である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ物質である。つまり、珪藻土は天然資源から取得することができ、市販もされている(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA)より)。珪藻土粒子は一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形などの形態の小さな開放網状構造のシリカを含む。これらの粒子の細孔構造は、概ね、非常に均一であり得る。
【0071】
珪藻土は、原材料として、粉砕した材料として、又は精製して所望により粉砕した粒子として、本発明のプロセスの実施に使用することができる。好ましくは、珪藻土は、直径約1μm〜約50μm(より好ましくは約3μm〜約10μm)の範囲のサイズの粉砕粒子の形態である。珪藻土は、所望により、使用前に加熱処理を行って有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率で生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0072】
表面改質珪藻土は、二酸化チタン、酸化第二鉄、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む。有用な表面改質剤としては、微細ナノスケール金;微細ナノスケール白金;微細ナノスケール金と少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは二酸化チタン、酸化第二鉄、又はこれらの組み合わせ)との組み合わせ;二酸化チタン;二酸化チタンと少なくとも1つの他の(つまり、二酸化チタン以外の)金属酸化物との組み合わせ;及びこれらに類するもの:並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金;微細ナノスケール白金;微細ナノスケール金と少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンとの組み合わせ;二酸化チタン;二酸化チタンと少なくとも酸化第二鉄との組み合わせ;及びこれらの組み合わせが挙げられる。表面改質珪藻土は、例えば、本願と同一譲受人に譲渡された国際公開第2009/046191号(Kshirsagar et al.)に開示されている方法によって調製できる。
【0073】
一実施形態において、濃縮剤粒子は、γ−FeO(OH)(鱗鉄鉱としても知られる)の粒子を含む。このような濃縮剤粒子の具体例は、本願と同一譲受人に譲渡された国際公開第2009/046183号(Kshirsagar et al.)に開示されている。γ−FeO(OH)粒子は、ヒトの細菌感染において重大な問題となり得るグラム陰性菌の捕捉において、他の鉄含有濃縮剤粒子よりも驚くほど効果的であることが見出されている。
【0074】
γ−FeO(OH)は既知の物質であり、公知の方法によって化学的に合成することができる(例えば、米国特許第4,729,846号(Matsui et al.)(この記載内容を参照により本明細書に援用する)に磁気テープ製造を目的として述べられているように、中性又は弱酸性pHで水酸化第一鉄の酸化によって)。γ−FeO(OH)は市販もされている(例えば、Johnson Matthey Company(Ward Hill,Mass)グループの一企業であるAlfa Aesar及びSigma−Aldrich Corporation(St.Louis,Mo)より)。
【0075】
一実施形態において、濃縮剤粒子はシリカの粒子を含む。濃縮剤シリカ粒子の具体例は、PolySciences,Inc.(Warrington,PA)から市販されている、平均直径が約2.5μmの二酸化ケイ素微小球である。
【0076】
一実施形態において、濃縮剤粒子は、金属炭酸塩の粒子を含む。濃縮剤の金属炭酸塩粒子の具体例は、炭酸カルシウム、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から市販されている、直径が2.5〜10μmの範囲の炭酸カルシウム粒子である。
【0077】
一実施形態において、濃縮剤粒子は金属リン酸塩の粒子を含む。濃縮剤の金属リン酸塩粒子の具体例は、ヒドロキシアパタイト、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)及びBioRad(Hercules,CA)から市販されている、粒径が2〜8μmの1型ヒドロキシアパタイト粒子である。
【0078】
1つの特定の方法では、不織布物品は、湿式積層又は「ウェットレイド」プロセスを使用して調製される。このプロセスでは、(a)複数の繊維、(b)複数の濃縮剤粒子、(c)ポリマーバインダー繊維(例えば、2成分繊維)、及び(d)水、水混和性有機溶剤、又はこれらの混合物などの分散液を含有する分散体が形成される。繊維及び濃縮剤粒子は、共に分散液中に分散され得る。いくつかの実施形態において、繊維(例えば、疎水性繊維)は、分散液中での繊維の分散を容易にする添加剤、表面処理剤、又は化学基を有する。例えば、ポリオレフィン系繊維は、無水マレイン酸若しくは無水コハク酸官能基を有することができ、又はポリオレフィン系繊維を調製するための溶解プロセス中に、好適な界面活性剤を添加することができる。
【0079】
ウェットレイドプロセスは、更に脱水を含み、その後脱水を終了するため及び任意に繊維の一部を結合するための加熱を含む。
【0080】
1種類以上の補助剤又は添加剤がこの種の不織布物品を調製する際に任意選択的に使用される。有用な補助剤としては、加工助剤、界面活性剤、溶媒、分散剤、凝集助剤、歩留まり向上剤、又は得られる不織布物品の全体的性能を増強し得るその他の材料が挙げられる。そのような補助剤(使用した場合)の存在し得る量は、例えば、不織布物品(例えば、繊維及び濃縮剤粒子)の総乾燥重量に基づいて5重量%、最大4重量%、最大3重量%、最大1重量%、又は最大0.5重量%の量であり得る。不織布物品中に含まれ得る濃縮剤粒子の量を最大限にするように、補助剤の総量は、典型的には、可能な限り少量に抑えられるように選択される。
【0081】
もう1つの特定のウェットレイドプロセスでは、繊維(例えば、短繊維)を、分散液(例えば、水、アルコールなどの水混和性有機溶剤、又はこれらの混合物)の存在下で容器内でブレンドして、スラリーを形成することができる。スラリーが形成された後、濃縮剤粒子及び任意の沈降剤(例えば、ミョウバンのようなpH調整剤)をスラリーに添加してもよい。
【0082】
ウェットレイドプロセスが当該技術分野において既知のハンドシート法(hand−sheet method)を用いて実行されるとき、構成成分(すなわち、繊維及び濃縮剤粒子)を分散体に添加する順序が濃縮デバイスの最終的な性能に重大な影響を及ぼすことは見出されなかった。形成後、分散混合物は、型に注がれてもよく、この型の底部はスクリーンで被覆されてもよい。分散液は、(湿潤シートの形態の)混合物からスクリーンを通して排出させることができる。十分な量の液体を排出させた後、通常、この湿潤シートを金型から取り外して、加圧、加熱、又はこの2つの組み合わせによって乾燥させることができる。一般的に、圧力は、約300〜約600kPaの範囲である。90℃〜200℃の範囲、100℃〜175℃の範囲、100℃〜150℃の範囲、又は90℃〜120℃の範囲の温度を、湿潤シートの乾燥に用いることができる。乾燥によって、多くの場合、全て又は大部分の分散液(例えば、分散体を形成するために加えられた分散液の量に基づいて最大85重量%、最大90重量%、最大95重量%、最大98重量%、又は最大99重量%の分散液)が除去される。
【0083】
結果として得られる不織布物品は、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.8mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも4mm、又は少なくとも5mmの平均厚さを有する乾燥シートである。平均厚さは、多くの場合、最大20mm、最大15mm、最大12mm、又は最大10mmである。所望される場合、カレンダ加工を用いることにより、乾燥シートの加圧又は溶着を更に行うことが可能である。不織布物品(シート材料の形態)の坪量は、約100〜約350グラム毎平方メートル(g/m
2)の範囲、好ましくは約200〜約300g/m
2の範囲、例えば、約250g/m
2であり得る。
【0084】
不織布物品において、濃縮剤粒子は、利用される繊維の性質に応じて、化学的相互作用(例えば、化学結合)又は物理的相互作用(例えば、吸着若しくは機械的捕捉)のいずれかにより、繊維性多孔質マトリックス内に捕捉することができる。濃縮剤粒子は、多くの場合、不織布物品内の繊維性多孔質マトリックス全体に本質的に均一に分散されることが好ましい。
【0085】
一般に、乾燥不織布物品の平均細孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)で測定したときに、0.1〜10μmの範囲であり得る。20〜80体積%の範囲又は40〜60体積%の範囲のボイド体積が有用となり得る。乾燥不織布物品の多孔性は、直径又は剛性がより大きい繊維を繊維混合物に使用することによって変更する(増大させる)ことができる。
【0086】
有利には、本開示の少なくとも特定の態様による不織布物品は、不織布物品への損傷が極小で又は損傷なく、滅菌プロセスで処理することができる。好適な滅菌方法は当業者に既知であり、例えば、限定するものではないが、不織布物品の121℃の温度で少なくとも15分間の蒸気処理、エチレンオキシド曝露、及びγ線照射が挙げられる。
【0087】
本開示の不織布物品及び方法を使用することによって、種々の微生物を濃縮及び検出することができ、当該微生物としては、例えば、細菌、真菌、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、真菌胞子、細菌内生胞子(例えば、バチルス属(炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、及び枯草菌(Bacillus subtilis)など)及びクロストリジウム属(ボツリヌス菌(Clostridiumbotulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、及びウェルシュ菌(Clostridium perfringens)など))など、及びこれらの組み合わせ、例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、真菌、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本開示の方法を用いて濃縮及び検出できる標的細胞検体としては、核酸、タンパク質、アデノシン三リン酸(ATP)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
微生物、細胞検体、又はこれらの組み合わせの捕捉又は拘束は、流体試料を不織布物品と接触させることによって達成される。特定の実施形態において、接触させる工程は、流体試料を不織布物品に通す濾過を含む。選択された実施形態において、接触させる工程は、例えば、濾過液を不織布物品に2回送ることによって又は不織布物品をある量の流体試料内に定置し、試料が不織布物品を複数回通過するように流体試料を撹拌することによって、流体試料を不織布物品に少なくとも2回通すことを含む。当該方法は、任意に、流体試料を不織布物品に接触させる前に、流体試料を粗フィルタに通すことを更に含む。かかるフィルタの使用は、除去しなければ不織布物品を閉塞する可能性のある粒子状物質を流体試料から除去し得る。好適な粗フィルタとしては、例えば、限定するものではないが、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも25μm、又は少なくとも50μmの孔径を備えるフィルタが挙げられる。
【0089】
有利な点として、本開示の不織布物品は、流体試料を不織布物品に効果的に通過させるうえで不織布物品の前後に極めて低い差圧しか必要としない。この特徴は、環境、例えば、フィールド環境において、及び/又は流体試料の移送に使用できるポンプがないか低出力である場合に、特に有益である。本開示の一実施形態では、接触させる工程は、流体試料を14.7ポンド/平方インチ(psi)(101.3キロパスカル(kPa))以下、又は4.0ポンド/平方インチ(psi)(27.58キロパスカル(kPa))以下、又は3.0psi(20.68kPa)、又は2.0psi(13.79kPa)、又は1.0psi(6.9kPa)、又は0.9psi(6.21kPa)、又は0.8psi(5.52kPa)、又は0.7psi(4.83kPa)、又は0.6psi(4.14kPa)、又は更には0.5psi(3.45kPa)以下の圧力、及び少なくとも0.4psi(2.76kPa)、又は少なくとも0.5psi(3.45kPa)の圧力で不織布物品に通過させることを含む。
【0090】
特定の実施形態において、少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を少なくとも1種の検出試薬と接触させて定置する前に、少なくとも1種の微生物株又は細胞検体を拘束した不織布物品を洗浄することを更に含む。残留試料マトリックスのような汚染物質を、拘束又は捕捉された微生物及び/又は細胞検体の大きな損失なく不織布物品から除去できることが発見された。特定の実施形態において、洗浄は、例えば、限定するものではないが、滅菌脱イオン水又はボトル入り飲料水ですすぐこと、又は塩若しくは緩衝剤水溶液ですすぐことを含む。不織布物品の洗浄は、使用する具体的な検出方法に応じて、除去しなければ拘束された微生物及び/又は細胞検体の存在の検出に干渉する可能性のある構成成分を除去する傾向がある。
【0091】
特定の実施形態において、微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を試薬と接触させて定置する工程は、検出信号を検出できる材料を含む受け部内に不織布物品を定置することを含み、この受け部は少なくとも1種の試薬を収容している。例えば、微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を試薬と接触させて定置する工程は、任意に、ルミノメータと動作可能に接続するように構成された受け部内に不織布物品を定置することを含み、この受け部は少なくとも1種の試薬を収容している。したがって、このような実施形態において、検出は、拘束された微生物株及び/又は標的細胞検体と少なくとも1種の試薬との反応から発生する光を測定するためのルミノメータ内に受け部を配置することによって容易になる。同様に、受け部は、具体的な検出方法に応じて、他の種類の装置と連携接続されてもよい。特定の実施形態において、微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を試薬と接触させて定置する工程は、不織布物品を、少なくとも1種の試薬を収容した受け部に押し込むことを含む。微生物株及び/又は標的細胞検体は、不織布物品によって捕捉されている状態からの除去を必要とすることなく検出できることが発見された。不織布物品に付着した微生物株及び/又は標的細胞検体を検出できることは、検出前に微生物株及び/又は標的細胞検体を不織布物品から溶出する必要がある方法と比較して、必要な方法工程の数が減ることから、有利である。更に、不織布物品は、微生物株及び/又は標的細胞検体を物品の体積まで濃縮し、当該体積は、一般的に、不織布物品と接触する流体試料の体積よりもかなり小さい。本開示の不織布物品との使用に好適なデバイス及び/又は方法は、米国同時係属出願第62/208,316号に開示されている。
【0092】
不織布物品によって捕捉又は拘束された(例えば、吸着、吸収、又は篩い分けによって)微生物及び/又は細胞検体は、現在知られている又は今後開発される本質的に任意の所望の方法によって検出可能である。このような方法には、例えば、培養による方法、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又はエピ蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するために使用できる))及びその他の撮像方法、免疫学的検出方法、並びに遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物及び/又は細胞検体の捕捉の後に続く検出プロセスは、任意に、試料マトリックス構成成分を除去するための洗浄、染色、煮沸又は細胞検体を濃縮デバイスから放出させるための溶出緩衝液若しくは溶解剤の使用などを含み得る。
【0093】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は、典型的には、抗体、ファージディスプレイなどの方法から選択されるポリペプチド、又はスクリーニング方法から得られたアプタマーによるものであり得る。
【0094】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば、免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、様々な方法で(例えば一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料で、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成し得る酵素で標識し、かつプレートリーダー又はラテラルフローデバイスのいずれかを使用することによって)検出され得る。
【0095】
検出は、遺伝子学的アッセイによって(例えば核酸ハイブリッド形成又はプライマーを用いた増幅によって)実行することもできる。捕捉又は拘束された微生物を溶解して、それらの遺伝子学的物質(例えば、細胞検体)をアッセイに利用可能なものにできる。溶解方法は周知であり、例えば、超音波処理、浸透圧ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0096】
多くの一般的に使用されている遺伝子学的検出アッセイは、DNA及び/又はRNAを含む、特定の微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の非常に厳密な条件は、検出を標的の正確な核酸配列に限定することができる。このように、標的核酸配列において小さな変異を有する微生物株は、非常に厳密な遺伝子学的アッセイを使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化してプローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われ得る。当業者であれば、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識に精通している。
【0097】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマー指向型核酸増幅に基づくものである。プライマー指向型核酸増幅方法としては、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出するための方法としては、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が挙げられるが、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0098】
生物発光検出法は周知であり、例えば米国特許第7,422,868号(Fan et al.)に記述されているものを含むアデノシン三リン酸(ATP)検出法が挙げられる。ATPの生物発光検出法は、多くの場合、ルシフェラーゼ酵素がATP及び2価のカチオン(例えば、マグネシウム又はカルシウム)の存在下でルシフェリンの酸化を触媒する、既知のルシフェリン−ルシフェラーゼ系を含む。他の発光に基づく検出方法も利用され得る。
【0099】
多くの実施形態において、検出は、培養による検出方法、撮像検出手法、蛍光による検出方法、比色検出方法、免疫学的検出方法、遺伝子学的検出方法、生物発光による検出方法、又はこれらの組み合わせを含む。
【0100】
特定の実施形態において、接触させる工程は、試料送達システムを使用して流体試料を不織布物品に通すことを含む。好適な試料送達システムの1つは、第1の収容容器を含む自立容器と、自立容器の第1の収容容器に収容されるように寸法決定され、第2の収容容器を備える変形可能な自己支持型受け部と、を含む。自立容器は、変形可能な自己支持型受け部よりも剛直であり、自立容器は、その中に形成された開口を備えるベース部を含み、それを通じて変形可能な自己支持型受け部にアクセスできる。したがって、自立容器内の開口を介して変形可能な自己支持型受け部に外圧をかけて流体試料を不織布物品に通すことによって、流体試料は不織布物品を通過する。
【0101】
第2の態様において、流体試料中の微生物及び/又は細胞検体を検出する方法が提供される。当該方法は、a)第1の態様による不織布物品を提供する工程と、b)少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を含有すると疑われる流体試料を提供する工程と、を含む。方法は、c)少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体の少なくとも一部が不織布物品に拘束されるように流体試料を不織布物品に接触させる工程と、d)拘束された少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程と、を更に含む。
【0102】
特定の実施形態において、流体試料を不織布物品と接触させるのに好適なデバイスは、米国特許同時係属仮出願第62/135,266号(整理番号第76252US002号)に記載のとおりである。デバイスは、試料容器、フィルタホルダ、不織布物品、及びフィルタホルダと受け部を連携接続するように構成された第1のアダプタを含む。不織布物品は、繊維性多孔質マトリックスと、繊維性多孔質マトリックスに捕らえられた複数の濃縮剤粒子と、を含む。多くの実施形態において、第1のアダプタは、不織布物品がその上に載置される出っ張りを有する中空形状(例えば、中空シリンダ)を備える。
【0103】
好適な受け部、例えば少なくとも1種の試薬を収容する受け部の非限定的な例としては、3M Company(St.Paul,Minn.)より入手可能な3M CLEAN−TRACE Surface ATP Swab、Hygiena(Camarillo,Calif.)より入手可能なAQUASNAP ATP Water Test、Neogen Corporation(Lansing,Mich.)より入手可能なACCUPOINT 2 ATP Sanitation Monitoring System、及びHygienaより入手可能なPRO−CLEAN Rapid Protein Residue Testが挙げられる。
【0104】
有利には、比較的大量の流体試料が、標的微生物及び/又は標的細胞検体を濃縮するために任意に不織布物品に通される。容器は、少なくとも50mL、又は少なくとも100mL、又は少なくとも150mL、又は少なくとも300mL、又は少なくとも500mL、又は最大1Lの容積を備える。
【0105】
流体試料を不織布物品と接触させた後、不織布物品は、そのまま少なくとも1種の検出試薬と接触して定置される。特定の実施形態において、不織布物品をピンセットを用いて移動することができるが、他の実施形態では、不織布物品を受け部に押し込み、それによって受け部に収容された1種以上の検出試薬と接触させることができる。
【0106】
内視鏡手技は、複雑で再利用可能な可撓性装置を使用して実施され、これは身体に挿入されると、患者の生体材料及び微生物(病原体を含む)で重度に汚染される可能性がある。交差感染のリスク及び病原体の伝播の可能性を低減するため、患者と次の患者との間に可撓性内視鏡を慎重に再処理することが極めて重要である。これらのデバイスの清浄化は、典型的には、目に見える汚れ(例えば、有機物質及び無機物質)の物体及び表面からの除去として定義され、水を洗剤又は酵素製品と共に使用して手作業で又は機械的に実施される。適切な清浄化が実施できないと、消毒プロセスに干渉する可能性のある有機残渣及び無機残渣が残り、再処理不良及び患者感染のリスクが増大する。したがって、清浄化及び消毒の効率を評価する必要性は、可撓性内視鏡再処理の重要部分として認識されている。しかし、目視による検証方法は、可撓性内視鏡に適用した場合、デバイスの複雑で狭い管腔を直接目視検査できないことから、大きな制限がある。本開示による方法は、リアルタイムで実施してもよく、清浄化後に装置のすすぎ液を試験するために使用すると、再清浄化及び再処理などの必要な是正措置を講じる機会をもたらす。
【0107】
本開示の方法の特定の実施形態において、流体試料は、管腔又はカニューレを有するデバイスからのすすぎ液を含み、接触させる工程は、管腔又はカニューレを有するデバイスが不織布物品と流体連通して配置された一体型アセンブリ内で起こる。例えば、一体型アセンブリは、任意に、管腔又はカニューレを有するデバイスを不織布物品と流体連通して定置する管を含む。一実施形態において、一体型アセンブリ内で、管腔又はカニューレを有するデバイスは不織布物品と接続される。このような実施形態において、すすぎ液は、デバイスから管を通って不織布物品へと流れてもよい。好適な管腔又はカニューレを有するデバイスとしては、例えば、限定するものではないが、可撓性内視鏡、半剛性内視鏡、剛性内視鏡、腹腔鏡手術器具、又はカニューレを有するロボット手術器具が挙げられる。
【0108】
不織布物品及び方法を含む様々な実施形態が提供される。
【0109】
実施形態1は、a)繊維性多孔質マトリックスと、b)繊維性多孔質マトリックスに捕らえられた複数の濃縮剤粒子と、を含む不織布物品である。繊維性多孔質マトリックスは、無機繊維及びポリマー繊維から本質的になる。
【0110】
実施形態2は、ポリマー繊維がポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアミド、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1に記載の不織布物品である。
【0111】
実施形態3は、ポリマー繊維が2成分繊維を含む、実施形態1又は2に記載の不織布物品である。
【0112】
実施形態4は、ポリマー繊維がフィブリル化ポリオレフィン繊維を含む、実施形態1〜3のいずれかに記載の不織布物品である。
【0113】
実施形態5は、無機繊維がガラス繊維、セラミック繊維、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1〜4のいずれかに記載の不織布物品である。
【0114】
実施形態6は、無機繊維がガラス繊維を含む、実施形態5に記載の不織布物品である。
【0115】
実施形態7は、無機繊維及びポリマー繊維が50mm未満の平均長さを有する、実施形態1〜6のいずれかに記載の不織布物品である。
【0116】
実施形態8は、不織布物品が、不織布物品の総乾燥重量に基づいて5〜60重量%の濃縮剤粒子と、不織布物品の総乾燥重量に基づいて40〜95重量%の繊維性多孔質マトリックスと、を含む、実施形態1〜7のいずれかに記載の不織布物品である。
【0117】
実施形態9は、不織布物品が、不織布物品の総乾燥重量に基づいて20〜50重量%の濃縮剤粒子と、不織布物品の総乾燥重量に基づいて50〜80重量%の繊維性多孔質マトリックスと、を含む、実施形態1〜8のいずれかに記載の不織布物品である。
【0118】
実施形態10は、繊維性多孔質マトリックスが、非捲縮ポリマー繊維を含む不織繊維層である、実施形態1〜9のいずれかに記載の不織布物品である。
【0119】
実施形態11は、繊維性多孔質マトリックスが不織繊維層であり、濃縮剤粒子が不織繊維層内全体に分散されている、実施形態1〜10のいずれかに記載の不織布物品である。
【0120】
実施形態12は、不織繊維層がポリオレフィン繊維及びガラス繊維を含む、実施形態11に記載の不織布物品である。
【0121】
実施形態13は、繊維性多孔質マトリックスがポリアミド繊維を含まない、実施形態1〜12のいずれかに記載の不織布物品である。
【0122】
実施形態14は、濃縮剤粒子が、非晶質金属ケイ酸塩、グアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土、表面改質珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、γ−FeO(OH)、金属炭酸塩、金属リン酸塩、シリカ、パーライト、グアニジン官能化パーライト、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1〜13のいずれかに記載の不織布物品である。
【0123】
実施形態15は、濃縮剤粒子が、非晶質球状化金属ケイ酸塩の粒子を含む、実施形態1〜14のいずれかに記載の不織布物品である。
【0124】
実施形態16は、濃縮剤粒子が、非晶質球状化ケイ酸マグネシウムの粒子を含む、実施形態14又は15に記載の不織布物品である。
【0125】
実施形態17は、濃縮剤粒子が非晶質球状ケイ酸アルミニウムの粒子を含む、実施形態14〜16のいずれかに記載の不織布物品である。
【0126】
実施形態18は、濃縮剤粒子がグアニジン官能化金属ケイ酸塩の粒子を含む、実施形態14〜17のいずれかに記載の不織布物品である。
【0127】
実施形態19は、濃縮剤粒子がグアニジン官能化ケイ酸マグネシウムの粒子を含む、実施形態18に記載の不織布物品である。
【0128】
実施形態20は、濃縮剤粒子がグアニジン官能化ケイ酸アルミニウムの粒子を含む、実施形態18に記載の不織布物品である。
【0129】
実施形態21は、濃縮剤粒子が珪藻土の粒子を含む、実施形態1〜20のいずれかに記載の不織布物品である。
【0130】
実施形態22は、濃縮剤粒子が、表面改質珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、又はこれらの組み合わせの粒子を含む、実施形態1〜21のいずれかに記載の不織布物品である。
【0131】
実施形態23は、表面改質珪藻土が、二酸化チタン、酸化第二鉄、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む、実施形態22に記載の不織布物品である。
【0132】
実施形態24は、濃縮剤粒子がγ−FeO(OH)の粒子を含む、実施形態1〜23のいずれかに記載の不織布物品である。
【0133】
実施形態25は、濃縮剤粒子がパーライトの粒子を含む、実施形態1〜24のいずれかに記載の不織布物品である。
【0134】
実施形態26は、濃縮剤粒子がグアニジン官能化パーライトの粒子を含む、実施形態1〜25のいずれかに記載の不織布物品である。
【0135】
実施形態27は、濃縮剤粒子がヒドロキシアパタイトの粒子を含む、実施形態1〜26のいずれかに記載の不織布物品である。
【0136】
実施形態28は、粒子が微小粒子である、実施形態1〜27のいずれかに記載の不織布物品である。
【0137】
実施形態29は、繊維性多孔質マトリックスが0.15mm〜1mmの厚さを有する、実施形態1〜28のいずれかに記載の不織布物品である。
【0138】
実施形態30は、ポリマー繊維がフィブリル化ポリエチレン繊維と2成分繊維とを含み、無機繊維がガラス繊維を含む、実施形態1〜29のいずれかに記載の不織布物品である。更に、濃縮剤粒子は、非晶質金属ケイ酸塩、グアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土、表面改質珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、γ−FeO(OH)、金属炭酸塩、金属リン酸塩、シリカ、パーライト、グアニジン官能化パーライト、又はこれらの組み合わせを含む。
【0139】
実施形態31は、2成分繊維がエチレンビニルアセテートとポリプロピレンとを含む、実施形態30に記載の不織布物品である。
【0140】
実施形態32は、流体試料中の微生物又は標的細胞検体を検出する方法である。該方法は、a)実施形態1〜31のいずれかによる不織布物品を提供する工程と、b)少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を含有すると疑われる流体試料を提供する工程と、を含む。方法は、c)少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体の少なくとも一部が不織布物品に拘束されるように流体試料を不織布物品に接触させる工程と、d)拘束された少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程と、を更に含む。
【0141】
実施形態33は、拘束された少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程の前に、少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を少なくとも1種の検出試薬と接触させて定置することを更に含む、実施形態32に記載の方法である。
【0142】
実施形態34は、検出する工程が、培養による検出方法、撮像方法、免疫学的検出方法、遺伝子学的検出方法、生物発光法、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態32又は33に記載の方法である。
【0143】
実施形態35は、検出する工程が生物発光法を含む、実施形態32〜34のいずれかに記載の方法である。
【0144】
実施形態36は、拘束された少なくとも1種の微生物株を溶解剤と接触させることを更に含む、実施形態32〜35のいずれかに記載の方法である。
【0145】
実施形態37は、拘束された標的細胞検体が、核酸、タンパク質、細胞壁構成成分、ATP、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態32〜36のいずれかに記載の方法である。
【0146】
実施形態38は、拘束された標的細胞検体がATPを含む、実施形態32〜37のいずれかに記載の方法である。
【0147】
実施形態39は、接触させる工程が、流体試料を不織布物品に少なくとも1回通過させることを含む、実施形態32〜38のいずれかに記載の方法である。
【0148】
実施形態40は、接触させる工程が、流体試料を、4.0ポンド/平方インチ(psi)(27.58キロパスカル(kPa))以下の圧力で不織布物品に通すことを含む、実施形態32〜39のいずれかに記載の方法である。
【0149】
実施形態41は、接触させる工程が、流体試料を、0.5psi(3.4kPa)以下の圧力で不織布物品に通すことを含む、実施形態32〜40のいずれかに記載の方法である。
【0150】
実施形態42は、試薬がルシフェラーゼを含む、実施形態33に記載の方法である。
【0151】
実施形態43は、接触させる工程が、流体試料を不織布物品に通す濾過を含む、実施形態32〜42のいずれかに記載の方法である。
【0152】
実施形態44は、少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を少なくとも1種の検出試薬と接触させて定置する前に、少なくとも1種の微生物株又は細胞検体を拘束した不織布物品を洗浄することを更に含む、実施形態32〜43のいずれかに記載の方法である。
【0153】
実施形態45は、少なくとも1種の微生物株又は標的細胞検体を拘束した不織布物品を、検出信号を検出できる材料を含む受け部内に定置することを更に含み、受け部が少なくとも1種の試薬を収容する、実施形態32〜44のいずれかに記載の方法である。
【0154】
実施形態46は、微生物株が、細菌、真菌、原生動物、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせの株から選択される、実施形態32〜45のいずれかに記載の方法である。
【0155】
実施形態47は、流体試料が管腔又はカニューレを有するデバイスからのすすぎ液であり、接触させる工程が管腔又はカニューレを有するデバイスが不織布物品と流体連通している一体型アセンブリ内で起こる、実施形態32〜46のいずれかに記載の方法である。
【0156】
実施形態48は、管腔又はカニューレを有するデバイスが、可撓性内視鏡、半剛性内視鏡、剛性内視鏡、腹腔鏡手術器具、又はカニューレを有するロボット手術器具である、実施形態47に記載の方法である。
【0157】
実施形態49は、一体型アセンブリが、管腔又はカニューレを有するデバイスを不織布物品と流体連通して定置する管を含む、実施形態47又は48に記載の方法である。
【0158】
実施形態50は、実施形態1〜31のいずれかによる不織布物品と、検出信号を検出できる材料を含む受け部と、を含むシステムである。
【0159】
実施形態51は、受け部が少なくとも1種の試薬を収容する、実施形態50に記載のシステムである。
【0160】
実施形態52は、試薬が溶解試薬を含む、実施形態50又は51に記載のシステムである。
【0161】
実施形態53は、ルミノメータを更に含み、受け部が任意選択的にルミノメータに接続するように構成されている、実施形態50〜52のいずれかに記載のシステムである。
【0162】
実施形態54は、不織布物品が、約150〜約350グラム毎平方メートル(g/m
2)の範囲の坪量を有する、実施形態50〜53のいずれかに記載のシステムである。
【0163】
実施形態55は、不織布物品が、約150〜約350グラム毎平方メートル(g/m
2)の範囲の坪量を有する、実施形態1〜31のいずれかに記載のデバイスである。
【0164】
実施形態56は、不織布物品が、約150〜約350グラム毎平方メートル(g/m
2)の範囲の坪量を有する、実施形態32〜49のいずれかに記載の方法である。
【実施例】
【0165】
特に指示がない限り、実施例において使用される全ての化学物質はSigma−Aldrich Corp.(Saint Louis,MO)から得ることができる。別途記載のない限り、全ての微生物学的な補給品及び試薬は、Sigma−Aldrich又はVWRのいずれかから標準製品として購入されたものである。
【表1】
【0166】
焼成ケイ酸マグネシウムを含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例1、2及び3:下の表1に示すように、様々な量の繊維1、繊維2、繊維3、及び繊維4を混合することによって3種類の繊維プレミックスを調製した。4Lのブレンダ(VWR(Radnor,PA)より「WARING COMMERCIAL HEAVY DUTY BLENDER、モデル37BL84」の商品名で入手可能)中で、3Lの冷脱イオン水に繊維を加え、低速で30秒間ブレンドした。この混合物を塊(nit)又は凝集(clump)のない均一な繊維分散体となっているかどうかについて検査した。添加剤粒子CM−111を、更に1Lの脱イオン水と共に加え、低速で15秒間混合した。
【0167】
底部に細かいメッシュスクリーンとドレーンバルブを備えた、約30cm(12インチ)四方、高さ30cm(約12インチ)の箱を有するパッド作製装置(Williams Apparatus(Watertown,NY)より「TAPPI」の商品名で入手)を使用して、不織繊維性多孔質フェルトを調製した。このスクリーン上に、約14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド片(Fiberweb(Cincinnati,OH)より入手したPET Lutradur7240)をスクリーン上のスクリムとして堆積させた。この箱のスクリーンの上方約1cmの高さにまで水道水を満たした。各繊維及び粒子混合物を箱に注ぎ入れ、バルブを開くと直ちに真空が形成され、これにより箱から水が引き出された。
【0168】
この繊維性不織布フェルトを、それぞれ装置から20cm四方の吸取紙のシート(Anchor Paper(St.Paul,MN)より入手した96ポンド白色紙)上に移した。各フェルトを2〜4層の吸取紙の間に挟み、余分な水を吸い取らせた。続いて、プレスしたフェルトを新たな吸取紙の上に移し、110℃に設定したオーブン(SPX Thermal Product Solutions(White Deer,PA)から商品名「BLUE M STABIL−THERM OVEN,MODEL OV−560A2」で入手)内に約3時間置いて残留水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。得られた実施例1及び2の繊維性多孔質マトリックスは、およそ0.8〜1mmの厚さであった。実施例3の繊維性多孔質マトリックスは、およそ0.8〜0.9mmの厚さであった。
【0169】
図1〜
図3は、それぞれ、実施例1〜3の例示的不織布物品の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【表2】
【0170】
グアニル化ケイ酸マグネシウムを含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例4、5、6、7及び8:実施例4、5、6、7及び8の不織繊維性多孔質マトリックスを、上記の手順を用いて調製した。配合を、下の表2に示す。
【表3】
【0171】
実施例4の繊維性多孔質マトリックスの厚さは、およそ0.8〜0.9mmであり、実施例5はおよそ0.6〜0.8mmの厚さであり、実施例6〜8はそれぞれおよそ0.8〜1.0mmの厚さであった。
【0172】
実施例9:実施例に使用した細菌
実施例で使用した様々な細菌(下の表3参照)は、ATCC(Manassas,VA)から入手した。
【表4】
【0173】
細菌株の純粋培養物をトリプチックソイブロス(TSB、Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ))に接種し、37℃で一晩増殖させた。この培養物をバターフィールドリン酸緩衝液(3M Co.(St.Paul,MN))で連続希釈し、水試料にスパイクするための所望量のコロニー形成単位(cfu)/mLを得た。大腸菌(E.coli)及びE.エロゲネス(E. aerogenes)は、製造業者の指示に従って適切な希釈液を3MペトリフィルムE.coli/大腸菌群測定用プレート(3M Company)に接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって定量した。黄色ブドウ球菌(S. aureus)及び緑膿菌(P. aeruginosa)は、適切な希釈液を3Mペトリフィルム生菌数測定用プレート(3M Company)に接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって定量した。プレートは、3Mペトリフィルムプレートリーダー(3M Co.)を使用して読み取り、コロニー形成単位(cfu)を決定した。
【0174】
実施例10:不織繊維性多孔質マトリックスの細菌捕捉効率
中和した水道水又は18MΩ二重脱イオン水のいずれか100mLに、種々の細菌をスパイクして、100cfu/mL(合計で100mL中に10,000cfu)とした。14mmのディスクを上記の種々の不織繊維性多孔質マトリックスから切り取り、ディスクをSWINNEX 13フィルタホルダ(カタログ番号SX0001300、EMD Millipore(Billerica,MA))に定置した。フィルタホルダを閉じて、BDルアーロックチップを備えた60mLのBDシリンジ(製品番号309653、Becton,Dickinson and Company)に取り付けた。フィルタホルダを取り付ける前に、シリンジからプランジャを外した。シリンジを、12ポートWaters Millipore SEP−PAK真空マニホールド(Waters Corporation(Milford,MA))に接続した。シリンジのそれぞれから濾過液を回収するために、回収管を試料ラックに定置した。真空マニホールドを、Air Cadet Vacuum/Pressure Station(型番420−3901、Barnant Company(Barrington,IL))に取り付け、溶液を、繊維性多孔質マトリックス材料に約15インチ水銀の減圧で通して濾過した。濾過に要した時間は1分未満であった。手作業での濾過の場合、シリンジのプランジャをバレル内に押すことによっても試料を濾過した。
【0175】
濾過のそれぞれで得られた濾過液を滅菌管に回収し、溶液中に残った細菌の量を計数するために、それぞれ1mLをペトリフィルムプレートに接種した。プレートを37℃で一晩インキュベートし、プレート上で増殖したコロニーを計数した。試料中の細菌の量を測定するために、入力試料を、濾過の前にも接種した。試料は、最低3枚のプレートに接種し、実験を数回繰り返した。入力溶液中の細菌の数と、濾過液中に残った細菌の数を用いて、次式により捕捉効率(%)を計算した:
捕捉効率(%)=(試験不織繊維性多孔質ディスクからのRLU/100%対照からのRLU)×100
【0176】
細菌捕捉率は、材料に応じて、32〜95%の範囲(下の表4、5、6及び7参照)であった。ファイバーグラス(繊維4)なしの不織繊維性多孔質マトリックスは、32〜70%の範囲であった。ナイロンなしの不織繊維性多孔質マトリックスの捕捉率は90〜95%の範囲であった。下の表4及び表6にも示すように、E.エロゲネス(E. aerogenes)と緑膿菌(P. aeruginosa)とで、同様の結果が認められた。
【0177】
繊維2(ナイロン)なしの不織繊維性多孔質マトリックスの細菌捕捉率は、この繊維が細菌捕捉に不可欠ではないことを示した。しかし、繊維4(ファイバーグラス)は、繊維4を除去したときに捕捉率が32〜70%に低下したことから、より重要であった。これは、いずれかの種類の粒子(焼成ケイ酸マグネシウム又はグアニル化ケイ酸マグネシウム)を含有する不織繊維性多孔質マトリックスの場合である。
【0178】
実施例11:ATP生物発光による不織繊維性多孔質マトリックス中の細菌の検出
拘束された細菌を含有する各不織繊維性多孔質マトリックスを、SWINNEXフィルタホルダから外し、1.5mL微量遠心管(Plastibrandマイクロチューブ、Brand GmbH&Co.KG(Wertheim,Germany))に無菌的に移した。細菌溶解試薬を含有するクリーントレース溶解試薬200μLを遠心管に加え、1分間ボルテックスし、室温で更に1分間静置した。クリーントレース・ルシフェリン−ルシフェラーゼ酵素試薬250μLを遠心管に加え、混合した。遠心管を直ちに卓上ルミノメータ(20/20nシングルチューブルミノメータ、Turner Biosystems(Sunnyvale,CA))に定置し、RLUの測定値を記録した。発光量の測定値は、ルミノメータと共に提供されたスプレッドシートインターフェースPCソフトウェアを使用して、ルミノメータから得た。10,000cfuの細菌を含有する緩衝液100μLを、1.5mL微量遠心管(Plastibrandマイクロチューブ)にピペットで移し、溶解剤混合物(200μL)及びATP試薬(250μL)を添加すると同時に発光を測定した。10,000cfuから得た相対発光単位を使用して、不織繊維性多孔質マトリックス中のATPの回収率を計算した(下の表4及び表5参照)。ATP回収率は、未切断材料の場合に30〜68%で変動し、繊維2を含まないマトリックスで最も高い回収率(60〜68%)が得られた。
【表5】
【表6】
【0179】
別の実験では、不織繊維性多孔質マトリックスを無菌的に小片に切断した後、1.5mL微量遠心管(Plastibrandマイクロチューブ)に移した。細菌溶解試薬を含有する溶解混合物200μLを遠心管に加え、1分間ボルテックスし、室温で更に1分間静置した。ルシフェリン及びルシフェラーゼを含有するATP試薬250μLを遠心管に加え、混合した。発光を上記のとおり測定した。不織繊維性多孔質マトリックスにおけるATP回収率を、下の表6及び表7に示す。ATP回収率は、未切断材料の場合55〜77%で変動し、繊維2を含まないウェットレイドで最も高い回収率(70〜77%)が得られた。
【表7】
【表8】
【0180】
実施例13:種々の配合の繊維性多孔質マトリックスの濾過による水試料からの大腸菌(E.coli)除去に関する試験
TSA上の大腸菌(E coli)(ATCC 11229)の画線培養物を37℃で一晩インキュベートした。このプレートから、単離コロニーを取り出し、標準的な微生物学用ループを使用して5mLのTSB中に接種し、振盪培養器(INNOVA 44、New Brunswick Scientificより)内で37℃で20〜22時間インキュベートした。約2〜3×10
9cfu/mLを含有する一晩培養物を、バターフィールド緩衝液で連続希釈して、およそ1×10
6cfu/mLを有する接種材料を得た。
【0181】
200mLの脱イオン水(MilliQ Gradient system,Millipore,Ma)に10
6cfu/mLの接種材料の1:100希釈物を接種することによって試験試料を調製し、およそ10
4cfu/mL(約4 Log cfu/mL)を含有する水試験試料を得た。
【0182】
実施例1に記載の不織繊維性多孔質マトリックスから直径47mmのディスクをダイパンチして、ポリカーボネート製特注デバイスである試料ホルダ内に定置した。このデバイスは3つの部分を有し、直径約60cm、高さ約45cmの円筒状であった。下部には、フィルタディスク用の支持スクリーン及び試料出口が含まれていた。頂部は、PVCチューブを介してCole Parmer製蠕動ポンプに接続された試料入口を除いて取り囲まれており、空気を抜くことができるように上流側に通気孔を有していた。上流側及び下流側の両方で、漏れを防ぐためにOリング型のシールを使用した。雌ねじによって閉鎖圧を与えた。上記の47mmディスクを支持スクリーンの上に置き、Oリングを上に加えて、ホルダを閉じた。
【0183】
繊維性多孔質マトリックスは、反復なしで個別に試験した。壁厚1/8インチ(0.32cm)のPVCチューブ(VWRカタログ番号60985−522)を用いたCole Parmer製蠕動ポンプ(型番7553−70)を使用して、濾過前試料を不織布マトリックスディスクの入った試料ホルダに通して圧送した。スパイクした水を、繊維性多孔質マトリックスを通して12mL/分の流速で圧送した。濾過液を250mLの滅菌ガラスビンに回収した。1回目の100mLの濾過液は、回収して廃棄した。2回目の100mLの濾過液は、更なる処理のために回収した。各濾過試験の後、ホルダを分解し、滅菌済ピンセットを使用して、繊維性多孔質マトリックスを取り出した。マトリックスの試験と試験との間に、濾過器具を500mLの濾過滅菌済脱イオン水ですすいだ。
【0184】
2回目の100mLの濾過液のうち体積10mLを、バターフィールド緩衝液の入った100mLのフリップトップボトルに加えて、1:10希釈液を得た。ボトルに蓋をして、10秒間振ることによって手作業で混合した。体積10mLを取り出し、他のフリップトップボトルに加えて、1:100希釈液を得た。同様にして、濾過液を1:1000及び1:10000に更に希釈した。これらの100mLの希釈濾過液を0.45μmフィルタに通して真空濾過した。毎回の濾過後に、真空装置を500mLの濾過滅菌脱イオン水ですすぎ、キムワイプで吸い取って乾燥した。
【0185】
滅菌済ピンセットプレートを用いて、装置からマトリックスを取り出し、格子側を上に向けて遠藤寒天プレート上に定置した。プレートを37℃で18〜20時間インキュベートした。手作業で計数することによって、プレートのコロニー数を得た。濾過前試料も、上記の手順により希釈及び濾過した。cfu/mLでのコロニー数をLog cfu/mL値に変換した。対数減少値(LRV)は、接種した濾過液及び濾過前試料から得られたコロニー数に基づき、次式を用いて計算した。
LRV=(濾過前試料中のcfu/mLの対数)−(濾過液試料中のcfu/mLの対数)
【0186】
濾過試験を、実施例4、5、7、及び8のマトリックスの47mmディスクで実施した。結果を下の表8に示す。
【表9】
【0187】
金属リン酸塩を含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例14、15、及び16:下の表9に示すように、様々な量の繊維1、繊維2、繊維3、繊維4、及び金属リン酸塩濃縮剤としてのヒドロキシアパタイト(HA、BioRadより)を使用することによって、3種類の繊維プレミックスを調製した。不織繊維性多孔質マトリックスは、上記実施例1〜3の手順に従って調製した。得られた実施例14の不織繊維性多孔質マトリックスは、およそ0.8〜1mmの厚さであった。実施例15及び16の不織繊維性多孔質マトリックスは、それぞれ0.6〜0.9mm及び0.5〜0.8mmの厚さであった。
【表10】
【0188】
実施例17:ヒドロキシアパタイトを有する不織繊維性多孔質マトリックスの細菌捕捉率及びATP検出に関する試験
大腸菌(E. coli)(ATCC 51813、グラム陰性菌)画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックをDI水で連続希釈して、1×10
4cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0189】
実施例14の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。上記の作業用ストック1mLを、1ccのシリンジを用いて、ディスクに通して濾過した。濾過液を廃棄した。ディスクをホルダから取り出し、キュベット内に定置した。100μLの体積のクリーントレース溶解試薬をディスクに加え、10秒間ボルテックスした。300μLの体積のクリーントレース・ルシフェリン−ルシフェラーゼ酵素試薬をキュベットに加え、10秒間ボルテックスした。キュベットをアダプタ(3M machine shopで特注生産、長さ12cm、直径1cm、DELRIN材(DuPont Co.(Wilmington,DE)製)に接続し、NGルミノメータで読み取った。バックグラウンドATP信号用に、1mLの非スパイクDI水の濾過に使用したディスクも試験した。ディスクの別の組を、1×10
5cfu/mL希釈液から体積100μLをディスクにスパイクすることによって、バックグラウンド対照と同じように調製した。このスパイクしたディスクを、ATP信号(RLU単位)について試験した。これを「100%対照」試料とした。捕捉効率を、上記の実施例10の式を使用して計算した。実施例15及び16のマトリックスからの14mmディスクを、上記実施例14のように試験した。実施例14〜16の結果を下の表10に示す。
【表11】
【0190】
実施例15は、最も大きいばらつきを示し、生物発光による細菌検出におけるファイバーグラスの重要な役割を示唆する。実施例15の不織繊維性多孔質マトリックスは、生物発光よりも、培養による検出又は免疫学的検出の実施形態に好適となり得る。
【0191】
実施例18:ヒドロキシアパタイトを有する不織繊維性多孔質マトリックスの随伴水試料の迅速微生物モニタリングに関する試験
随伴水試料は、カナダの油井から得た。試料は、BBLで連続希釈し、1mLずつPACプレートに接種した。プレートを製造業者の指示に従って37℃で48時間インキュベートした。プレートを、3Mペトリフィルムプレートリーダーを使用して、細菌数について分析した。試料のそれぞれから体積100μLをキュベットに加え、145μLのクリーントレース溶解試薬と混合し、10秒間ボルテックスした。450μLの体積のクリーントレース・ルシフェリン−ルシフェラーゼ酵素試薬を加えた後、10秒間混合した。アダプタ(上の実施例17に記載)を使用して、キュベットをNGルミノメータに挿入して、ATP信号を測定した。
【0192】
コロニー数及びATP値に基づき、実施例1〜3のマトリックスを試験するために2つの試料を更に選択した。試料D(比較例1)は、およそ6.2×10
4cfu/mLで、ATP信号は1148RLUであったが、試料G(比較例2)は1.2×10
5cfu/mLで、ATP信号は243RLUであった。
【0193】
実施例14の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。10mLの随伴水試料D(比較例1)を、10ccのシリンジを用いてディスクに通して濾過した。この濾過液は、廃棄した。1枚のディスクをホルダから取り出してキュベット内に定置し、145μLのクリーントレース溶解試薬と混合した。キュベットを10秒間ボルテックスした。450μLの体積のクリーントレース・ルシフェリン−ルシフェラーゼ酵素試薬を加えた後、10秒間混合した。キュベットをアダプタに接続し、NGルミノメータで読み取った。これを、実施例18aとした。2枚目のディスクを5mLのDI水で洗浄し、1枚目のディスクと同様に、ATP信号を分析した。これを、実施例8bとした。バックグラウンドATP信号用に、1mLの非スパイクDI水の濾過に使用したディスクを試験した。バックグラウンド信号は50RLU未満であり、試験読取値から減算しなかった。捕捉細菌からのATP信号のクリーントレース試験(不織繊維性多孔質マトリックス中の細菌の濃縮なし)に対する改善度を、次式を用いて計算した。同じ手順を、実施例14〜16の不織繊維性多孔質マトリックスを使用した実施例19a〜23b及び随伴水試料D(比較例1)又は随伴水試料G(比較例2)のいずれかに使用した。データを下の表11に示す。
クリーントレース試験に対するATP信号の倍率=(濾過後の不織布マトリックスディスクからのRLU/未濾過試料100μLからのRLU)
【表12】
【0194】
洗浄後にATP信号が改善していることは、阻害物質の持越しの低減を示し、これにより、ATPアッセイを工業サンプルの迅速モニタリングに使用できる。
【0195】
実施例24、25、26、27、及び28:下の表12に示すように、様々な量の繊維1、繊維2、繊維3、繊維4、及び金属リン酸塩濃縮剤としてのヒドロキシアパタイト(HA、Sigma Aldrichより)を使用することによって、5種類の繊維プレミックスを調製した。不織繊維性多孔質マトリックスは、上記実施例1〜3の手順に従って調製した。
【表13】
【0196】
実施例27及び28の不織繊維性多孔質マトリックスは、シートが数個の孔を含むことから一体性が損なわれており、そのため、測定は形の良い部分で実施した。ヒドロキシアパタイトを有する不織繊維性多孔質マトリックスの随伴水試料の迅速微生物モニタリングに関する試験
【0197】
随伴水試料は、カナダの油井から得た。試料Gは、BBLで連続希釈し、1mLずつPACプレートに接種した。プレートを製造業者の指示に従って37℃で48時間インキュベートした。プレートを、3Mペトリフィルムプレートリーダーを使用して、細菌数について分析した。各試料から体積100μLをキュベットに加え、145μLのクリーントレース水中ATP測定用試薬プラス(Water−Plus Total ATP)抽出剤と混合し、10秒間ボルテックスした。体積450μLのクリーントレース水中ATP測定用試薬プラスの酵素を添加し、10秒間混合した。アダプタ(上の実施例14に記載)を使用して、キュベットを3Mクリーントレース NGルミノメータに挿入して、ATP信号を測定した。試料G(比較例3)は、1.2×10
5cfu/mLを含有した。
【0198】
実施例14の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。ディスクを、上記の実施例18の手順に従って試験した。不織繊維性多孔質マトリックスは2連で試験した。各マトリックスの平均バックグラウンド信号を、試験読取値から減算した。同じ手順を、実施例24〜28の不織繊維性多孔質マトリックスを使用した実施例30a〜34b及び随伴水試料D(比較例3)又は随伴水試料G(比較例4)のいずれかに使用した。捕捉細菌からのATP信号のクリーントレース試験(不織繊維性多孔質マトリックスによる細菌濃縮なし)に対する改善度を、上記実施例18の式を用いて計算した。データを下の表13に示す。
【表14】
【0199】
不織繊維性多孔質マトリックスは、別々の日に試験し、オリジナルの試料からのATP信号は日によって異なっていた。この試験のばらつきは、マトリックスの干渉を示す。洗浄後にATP信号が改善していることは、阻害物質の持越しの低減を示し、これにより、ATPアッセイを随伴水試料の迅速モニタリングに使用できる。
【0200】
ヒドロキシアパタイトを有する不織繊維性多孔質マトリックスの大腸菌(E. coli)及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)の迅速微生物モニタリングに関する試験
実施例35:大腸菌(E. coli)(ATCC 51813、グラム陰性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックをDI水で連続希釈して、1×10
5cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0201】
実施例24の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。上記の作業用ストック1mLを、1ccのシリンジを用いて、ディスクに通して濾過した。この濾過液は、廃棄した。ディスクをホルダから取り出し、キュベット内に定置した。体積145μLのクリーントレース水中ATP測定用試薬プラスの抽出剤。キュベットを10秒間ボルテックスした。体積450μLのクリーントレース水中ATP測定用試薬プラスの酵素を添加し、10秒間混合した。キュベットをアダプタに接続し、NGルミノメータで読み取った。バックグラウンドATP信号用に、1mLの非スパイクDI水の濾過に使用したディスクも試験した。このバックグラウンド信号を試験結果から減算した。1×10
6cfu/mLのストックから100μLの体積を、ATP信号について試験した。これを「100%対照」とした。捕捉効率を、上記の実施例10の式を使用して計算した。実施例27及び28のマトリックスを実施例24と同様に試験した。実施例24、27及び28の結果を下の表14に示す。
【表15】
【0202】
黄色ブドウ球菌(S aureus)(ATCC 6538、グラム陽性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックをDI水で連続希釈して、1×10
5cfu/mLの作業用ストックを調製した。実施例24、27及び28の不織繊維性多孔質マトリックスからの14mmディスクを上記のように試験した。結果を下の表15に示す。
【表16】
【0203】
金属ケイ酸塩を含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例36のマトリックス:下の表16に示すように、異なる量の繊維1、繊維2、繊維3、及び繊維4を混合することによって繊維プレミックスを調製した。不織繊維性多孔質マトリックスは、上記実施例1〜3の手順に従って調製した。得られた不織繊維性多孔質マトリックスの厚さは、0.8〜1.0mmであった。
【表17】
【0204】
焼成金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスのビールの迅速微生物モニタリングに関する試験
ATP生物発光試験は、ビールのライン洗浄確認方法として使用されており、洗浄完了後の最終すすぎ水の試験に基づく。すすぎ水の試料をラインの分注側から採取し、次いで、ATP生物発光試験を用いて試験する。この試験は洗浄確認に関しては有用であるが、ビールライン内のビール又は製品試料を直接試験できることも有利と考えられる。
【0205】
ビール自体の品質を評価できるだけでなく、ビール製品の直接試験は、ビールラインの衛生状態を間接的に示し、ビールラインの洗浄が必要か否かを示す可能性がある。ライン洗浄にはビールの排出が必要であり、大量の製品損失を招くことから、必要なときだけ洗浄できることは、必要なときだけ洗浄が実施される場合に金銭的損失が削減される可能性がある。更に、ATP生物発光試験はマイクロリットル量のすすぎ水の試料を使用するのに対し、濾過試験は50〜100mL又はそれ以上の最終製品をサンプリングすることができ、試験の感度が増大する可能性がある。
【0206】
実施例37:ビール製造ライン出口から2種のビール試料を得た。各試料から体積50mLを0.45μmメンブレン(VWRから入手した、Corningの50mLチューブトップフィルタ)で濾過して内在する微生物汚染を除去した。各試料から体積100μLを1.5mL微量遠心管に加え、110μLのクリーントレース表面ATP測定用試薬(CLEAN−TRACE Surface ATP)抽出剤と混合し、10秒間ボルテックスした。体積250μLのクリーントレース表面ATP測定用試薬の酵素を添加し、10秒間混合した。内容物を、ボルテックスミキサ(VWR Fixed Speedボルテックスミキサ;VWR(West Chester,PA))上で約3200rpmで5秒間ボルテックスすることによって混合した。卓上ルミノメータ(Turner Biosystems(Sunnyvale,CA)の20/20nシングルチューブルミノメータ)を使用して相対光単位(RLU)を10秒おきに1分間測定することにより、ATP信号を測定した。発光量の値は、ルミノメータと共に提供される20/20n SISソフトウェアを使用してルミノメータから得た。これを「非スパイクビール対照」とした。
【0207】
30℃でインキュベートしたYPD寒天プレートからのS.セレビジアエ(S.cerevisiae)(ATCC201390)の画線培養物を使用して、bioMerieux,Inc.(Durham NC)のDENSICHEK密度計を用いて、3mLの脱イオン水中で0.5マクファーランド標準を調製した。得られた酵母ストックはおよそ10
8cfu/mLを含有し、これを濾過したビールで連続希釈して、10
5cfu/mLを含有する酵母懸濁液を得た。懸濁液の1:10希釈物を50mLのビールに接種して、10
4cfu/mLを得た(合計で5mL中におよそ5×10
4CFU)。スパイクしたビールを、実施例36からダイパンチした14mmの不織繊維性多孔質マトリックスを収容したSWINNEXフィルタホルダに、10ccのシリンジを使用して送達した。5mLの試料全てがマトリックスを通過した後、フィルタホルダを分解し、表面滅菌ピンセットを使用して、ディスクを空の滅菌1.5mL微量遠心管に移した。ディスク上のATP信号を上記のように読み取った。これが「濃縮試料」の信号である。
【0208】
5×10
5cfu/mLのストックから100μLを使用して「100%対照」を調製した。5mLの濾過ビールの処理に使用したディスクを、同様にしてバックグラウンドATP信号(ディスクバックグラウンド)について試験した。スパイクしたビールストックから体積100μLを使用して、「スパイクビール対照」を調製した。不織繊維性多孔質マトリックスは2連で試験した。ATP信号の%を次式を使用して計算した。
ATP信号(%)=(濃縮試料のRLU/100%対照ビールのRLU)×100
【0209】
両方のビール試料で、S.セレビジアエ(S. cerevisiae)について同じ手順を実施した。結果を下の表17に示す。
【表18】
【0210】
実施例36のマトリックスを通過した試料では、スパイクビール対照の10倍大きい信号が観察され、これは非スパイクビール試料の信号に非常に近かった。
【0211】
実施例38〜40:焼成ケイ酸マグネシウムを有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
下の表18に示すように、様々な量の繊維1、繊維2、繊維4、繊維5及び繊維6を混合することによって3種類の繊維プレミックスを調製した。
【0212】
実施例38については、4Lのブレンダ(VWR(Radnor,PA)より「WARING COMMERCIAL HEAVY DUTY BLENDER,MODEL37BL84」の商品名で入手可能)中で、繊維を3Lの冷脱イオン水に加え、低速で30秒間ブレンドした。この混合物を塊(nit)又は凝集(clump)のない均一な繊維分散体となっているかどうかについて検査した。添加剤粒子CM−111を、更に1Lの脱イオン水と共に加え、低速で15秒間混合した。
【0213】
実施例39及び40については、繊維5を、3Lの冷脱イオン水中で中速で30秒間ブレンドした。他の繊維を全て加え、低速で30秒間ブレンドした。添加剤粒子CM−111を、更に1Lの脱イオン水と共に加え、低速で15秒間混合した。
【0214】
底部に細かいメッシュスクリーンとドレーンバルブを備えた、約30cm(12インチ)四方、高さ30cm(12インチ)の箱を有するパッド作製装置(Williams Apparatus(Watertown,NY)より「TAPPI」の商品名で入手)を使用して、不織繊維性多孔質フェルトを調製した。このスクリーン上に、約14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド片(Fiberweb(Cincinnati,OH)より入手したPET Lutradur7240)をスクリーン上のスクリムとして堆積させた。この箱のスクリーンの上方約1cmの高さにまで水道水を満たした。各繊維及び添加剤混合物を箱に注ぎ入れ、バルブを開くと直ちに真空が形成され、これにより箱から水が引き出された。
【0215】
この繊維性不織布フェルトを、装置から20cm四方の吸取紙のシート(Anchor Paper(St.Paul,MN)より入手した96ポンド白色紙)上に移した。各フェルトを2〜4層の吸取紙の間に挟み、余分な水を吸い取らせた。続いて、プレスした実施例38のフェルトを、新しい吸取紙の上に移し、130℃に設定したオーブン(Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から入手したHERATHERMオーブンシリーズOMS100)内に約3時間置いて残留水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。実施例39及び40のフェルトを125℃で約3時間乾燥して、残留水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。得られた実施例38及び40の繊維性多孔質マトリックスは、およそ1.30〜1.40mmの厚さであった。実施例39の繊維性多孔質マトリックスは、1.45〜1.55mmの厚さであった。
【表19】
【0216】
金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスの大腸菌(E. coli)の細菌捕捉の試験
大腸菌(E. coli)(ATCC11229、グラム陰性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックを脱イオン水で連続希釈して、1×10
2cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0217】
実施例41〜43:実施例38〜40の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、それぞれダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)に挿入した。上記の作業用ストック10mLを、10ccのシリンジを用いて、ディスクに通して濾過した。濾過後、ディスクを廃棄した。濾過液を、滅菌15mLポリプロピレンチューブに回収した。各濾過液の1mL体積を、PACプレートに接種し、大腸菌(E coli)捕捉について試験した。
【0218】
ストック溶液もPACに接種した。これを「100%対照」とした。ペトリフィルムプレートリーダーを使用し、製造業者の指示に従ってプレートを計数した。捕捉効率を次式を用いて計算した。結果を表19に示す。
対照%=(接種した濾過液のCFU)×100/100%対照のCFU
捕捉効率%=100−対照%
【表20】
【0219】
金属ケイ酸塩を有する不織布繊維性多孔質マトリックスの黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細菌捕捉の試験
黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538、グラム陽性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックを脱イオン水で連続希釈して、1×10
2cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0220】
実施例44〜46:実施例38〜40のそれぞれの不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、それぞれダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)に挿入した。上記の作業用ストック10mLを、10ccのシリンジを用いて、ディスクに通して濾過した。濾過後、ディスクを廃棄した。濾過液を、滅菌15mLポリプロピレンチューブに回収した。各濾過液の1mL体積を、PACプレートに接種した。各ディスクを、黄色ブドウ球菌(S aureus)捕捉について試験した。
【0221】
ストック溶液もPACに接種した。これを「100%対照」とした。ペトリフィルムプレートリーダーを使用し、製造業者の指示に従ってプレートを計数した。捕捉効率を、次式を用いて計算した。結果を表20に示す。
対照%=(接種した濾過液のCFU)×100/100%対照のCFU
捕捉効率%=100−対照%
【表21】
【0222】
実施例47及び48:焼成ケイ酸マグネシウムを含有する薄い不織繊維性多孔質マトリックスの調製
下の表21に示すように、様々な量の繊維1、繊維4、繊維5及び繊維6を混合することによって2種類の繊維プレミックスを調製した。
【0223】
実施例47については、4Lのブレンダ(VWR(Radnor,PA)より「WARING COMMERCIAL HEAVY DUTY BLENDER,MODEL37BL84」の商品名で入手可能)中で、繊維6を3Lの冷脱イオン水に加え、中速で30秒間ブレンドした。他の繊維を全て加え、低速で更に1分間ブレンドした。この混合物を塊(nit)又は凝集(clump)のない均一な繊維分散体となっているかどうかについて検査した。粒子添加剤CM−111を、更に1Lの脱イオン水と共に加え、低速で15秒間混合した。
【0224】
底部に細かいメッシュスクリーンとドレーンバルブを備えた、約30cm(12インチ)四方、高さ30cm(12インチ)の箱を有するパッド作製装置(Williams Apparatus(Watertown,NY)より「TAPPI」の商品名で入手)を使用して、不織繊維性多孔質フェルトを調製した。このスクリーン上に、約14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド片(Fiberweb(Cincinnati,OH)より入手したPET Lutradur7240)をスクリーン上のスクリムとして堆積させた。この箱のスクリーンの上方約1cmの高さにまで水道水を満たした。繊維及び粒子添加剤混合物を箱に注ぎ入れ、バルブを開くと直ちに真空が形成され、これにより箱から水が引き出された。
【0225】
この繊維性不織布フェルトを、装置から20cm四方の吸取紙のシート(Anchor Paper(St.Paul,MN)より入手した96ポンド白色紙)上に移した。このフェルトを2〜4層の吸取紙の間に挟み、余分な水を吸い取らせた。続いて、プレスした実施例29のフェルトを、新しい吸取紙の上に移し、125℃に設定したオーブン(Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から入手したHERATHERMオーブンシリーズOMS100)内に約3時間置いて残留水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。得られた実施例47の繊維性多孔質マトリックスは、およそ0.8〜0.90mmの厚さであった。
【0226】
実施例48では、繊維混合物を、下の表16に示す量を使用したことを除き、実施例29に記載のように調製した。パッド作製装置に更に4Lの冷脱イオン水を充填した。装置のスクリーンにはスパンボンドスクリムを使用しなかった。バルブを開放し、水を排出しながら、繊維及び粒子添加剤混合物を装置に注いだ。約14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド片を濡れたフェルト上に押し当て、スクリムを持ち上げることによって、繊維性不織布フェルトをスクリーンから外した。得られた乾燥不織繊維性多孔質マトリックスは、およそ0.8〜0.90mmの厚さであった。
【表22】
【0227】
金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスの大腸菌(E. coli)の細菌捕捉に関する試験
大腸菌(E. coli)(ATCC 11229、グラム陰性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックを脱イオン水で連続希釈して、10cfu/mL、1×10
2cfu/mL、及び1×10
3cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0228】
実施例49:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。10cfu/mLの作業用ストック10mLを、10ccのシリンジを用いて、各ディスクに通して濾過した。濾過後、ディスクを廃棄した。濾過液を、滅菌15mLポリプロピレンチューブに回収した。濾過液の1mL体積を、PACプレートに接種した。
【0229】
実施例50:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入し、10mLの1×10
2cfu/mL作業ストックを使用して、実施例49と同じ手順により、大腸菌(E. coli)捕捉について試験した。
【0230】
実施例51:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入し、10mLの1×10
3cfu/mL作業ストックを使用して、実施例49と同じ手順により、大腸菌(E. coli)捕捉について試験した。
【0231】
実施例52〜54:実施例48の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、実施例49、50、及び51と同じ手順に従って試験し、それぞれ実施例52、53及び54を調製した。
【0232】
大腸菌(E. coli)ストック溶液もPACに接種した。これらを「100%対照」試料とした。ペトリフィルムプレートリーダーを使用し、製造業者の指示に従ってプレートを計数した。捕捉効率を、次式を用いて計算した。結果を表22に示す。
対照%=(接種した濾過液のCFU)×100/100%対照のCFU
捕捉効率%=100−対照%
【表23】
【0233】
金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスの黄色ブドウ球菌(S. aureus)の細菌捕捉に関する試験
黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC6538、グラム陽性菌)の画線培養物から、1つのコロニーを10mLのTSB(トリプチックソイブロス、3重量%、Difcoより)に接種し、37℃で一晩(約20時間)インキュベートした。得られた細菌ストックは約1×10
9cfu/mLを含有した。このストックを脱イオン水で連続希釈して、10cfu/mL、1×10
2cfu/mL、及び1×10
3cfu/mLの作業用ストックを調製した。
【0234】
実施例55:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSWINNEXホルダ)に挿入した。10cfu/mLの作業用ストック10mLを、10ccのシリンジを用いて、各ディスクに通して濾過した。濾過後、ディスクを廃棄した。濾過液を、滅菌15mLポリプロピレンチューブに回収した。濾過液の1mL体積を、PACプレートに接種した。
【0235】
実施例56:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)に挿入し、10mLの1×10
2cfu/mL作業ストックを使用して、実施例55と同じ手順により、黄色ブドウ球菌(S. aureus)捕捉について試験した。
【0236】
実施例57:実施例47の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、ダイパンチし、13mmフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)に挿入し、10mLの1×10
3cfu/mL作業ストックを使用して、実施例55と同じ手順により、黄色ブドウ球菌(S. aureus)捕捉について試験した。
【0237】
実施例58〜60:実施例48の不織繊維性多孔質マトリックスの14mmディスクを、実施例55、56、及び57と同じ手順に従って試験し、それぞれ実施例58、59及び60を調製した。
【0238】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)ストック溶液もPACに接種した。これらを「100%対照」試料とした。ペトリフィルムプレートリーダーを使用し、製造業者の指示に従ってプレートを計数した。捕捉効率を、次式を用いて計算した。結果を表23に示す。
対照%=(接種した濾過液のCFU)×100/100%対照のCFU
捕捉効率%=100−対照%
【表24】
【0239】
本明細書では、特定の例示的実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者には、上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び等価物を容易に想起することができる点が、理解されるであろう。更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが、詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度で、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものである。