特許第6839236号(P6839236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839236
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20210222BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
   G01N27/416 331
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-135852(P2019-135852)
(22)【出願日】2019年7月24日
(62)【分割の表示】特願2015-192841(P2015-192841)の分割
【原出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2019-191198(P2019-191198A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 隆生
(72)【発明者】
【氏名】安居 将司
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−002846(JP,A)
【文献】 特開平08−160001(JP,A)
【文献】 特開2003−222606(JP,A)
【文献】 特開2000−321236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0023612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出可能な長尺なセンサ素子と、
前記センサ素子が内部を軸方向に貫通している円柱状のセラミックス部材と、
前記セラミックス部材が内部に軸方向に挿入されている貫通孔を有し、該貫通孔の内周面と前記セラミックス部材との間に隙間を有し、該隙間の径方向の距離W1が20μm以上である筒状のハウジングと、
前記センサ素子の先端側を覆い、内部への前記被測定ガスの流通を許容する保護カバーと、
を備え、
前記セラミックス部材は、円柱状の大径部と、該大径部よりも前記保護カバー側に位置し且つ該大径部よりも外径が小さい円柱状の小径部と、のみで構成されており、
前記ハウジングは、内周面が前記貫通孔の一部を構成し前記小径部が内部に挿入されている第1筒状部と、内周面が前記貫通孔の一部を構成し前記大径部が内部に挿入されており前記第1筒状部よりも内径が大きい第2筒状部と、前記第1筒状部の一部であり該第1筒状部の内周面と前記第2筒状部の内周面とを接続する第1段差面と、を有しており、
前記セラミックス部材は、前記大径部の一部であり該大径部の外周面と前記小径部の外周面とを接続し前記第1段差面と対向する第2段差面を有しており、
前記第1段差面と前記第2段差面との間に配設され、該第1段差面と該第2段差面とに押圧されているリング状の封止部材、を備え、
前記小径部の外径Dc1[mm],前記大径部の外径Dc2[mm],前記封止部材の外径Dp[mm],前記封止部材の内径dp[mm]が下記式(1)を満たし、且つ前記外径Dpが前記外径Dc2以下である、
(dp−Dc1)/2≦(Dc2−Dp)/2 (1)
ガスセンサ。
【請求項2】
前記距離W1が500μm以下である、
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスセンサであって、
前記距離W1は、前記小径部の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間の径方向の距離である、
ガスセンサ。
【請求項4】
前記セラミックス部材は、前記大径部が前記貫通孔の内周面との間に隙間を有し、該隙間の径方向の距離W2が5μm以上である、
請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記距離W2が500μm以下である、
請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記距離W1と前記距離W2との比である比W1/W2が値1以上である、
請求項4又は5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記封止部材は、前記第1段差面と前記第2段差面とに押圧されていない状態で、内径側が外径側に比べて厚い部材である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記第1段差面と前記第2段差面との軸方向の距離が、前記セラミックス部材の中心軸に近づくほど大きくなっている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの特定ガス濃度を検出するガスセンサが知られている。例えば、特許文献1には、センサ素子と、センサ素子を挿通保持する絶縁碍子と、絶縁碍子を挿通保持するハウジングと、ハウジングに固定された素子カバーと、を備えたガスセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−178418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなガスセンサは、使用時には排気ガスなどの被測定ガスによって加熱されるため、絶縁碍子が膨張する。しかし、特許文献1では、このような絶縁碍子の膨張については特に考慮されていなかった。そのため、絶縁碍子の膨張時にハウジングからの応力がかかることにより、絶縁碍子にクラックなどの破損が生じる場合があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、加熱によるセラミックス部材の破損を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のガスセンサは、
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出可能な長尺なセンサ素子と、
前記センサ素子が内部を軸方向に貫通している円柱状のセラミックス部材と、
前記セラミックス部材が内部に軸方向に挿入されている貫通孔を有し、該貫通孔の内周面と前記セラミックス部材との間に隙間を有し、該隙間の径方向の距離W1が20μm以上である筒状のハウジングと、
を備えたものである。
【0008】
このガスセンサでは、ハウジングの貫通孔の内周面とセラミックス部材との間に隙間が形成されており、隙間の径方向の距離W1が20μm以上である。このような隙間が存在することで、セラミックス部材が加熱により膨張した際のハウジングからの径方向の応力が低減される。したがって、加熱によるセラミックス部材の破損を抑制できる。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記距離W1が500μm以下であってもよい。こうすることで、ハウジングとセラミックス部材との間の隙間を気体(例えば被測定ガスや大気)が軸方向に流通するのを抑制でき、隙間で気体が結露しにくくなり、例えばハウジングなどの腐食が生じにくくなる。これにより、センサ素子の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0010】
本発明のガスセンサは、前記センサ素子の先端側を覆い、内部への前記被測定ガスの流通を許容する保護カバー、を備え、前記セラミックス部材は、円柱状の大径部と、該大径部よりも前記保護カバー側に位置し且つ該大径部よりも外径が小さい円柱状の小径部と、を有しており、前記距離W1は、前記小径部の外周面と前記貫通孔の内周面との隙間の径方向の距離であってもよい。すなわち、セラミックス部材の小径部の外周面とハウジングの貫通孔の内周面との間に隙間が存在し、この隙間の径方向の距離W1が20μm以上としてもよい。セラミックス部材が大径部と小径部とを有する場合、保護カバーに近い小径部の方が被測定ガスによって加熱されやすいため破損しやすい。そのため、小径部とハウジングの内周面との間に20μm以上の隙間が存在することで、例えば大径部とハウジングの内周面との間にのみ隙間がある場合と比較して、加熱によるセラミックス部材の破損をより抑制できる。
【0011】
セラミックス部材が大径部と小径部とを備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記セラミックス部材は、前記大径部が前記貫通孔の内周面との間に隙間を有し、該隙間の径方向の距離W2が5μm以上であってもよい。小径部とハウジングの内周面との間だけでなく、大径部とハウジングの内周面との間にも隙間があることで、セラミックス部材が加熱により膨張した際のハウジングからの径方向の応力がより低減される。したがって、加熱によるセラミックス部材の破損をより抑制できる。
【0012】
セラミックス部材が大径部と小径部とを備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記距離W2が500μm以下であってもよい。こうすることで、ハウジングとセラミックス部材との間の隙間を気体が軸方向に流通するのを抑制でき、隙間で気体が結露しにくくなり、例えばハウジングなどの腐食が生じにくくなる。これにより、センサ素子の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0013】
セラミックス部材が大径部と小径部とを備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記距離W1と前記距離W2との比である比W1/W2が値1以上であってもよい。こうすれば、ガスセンサが加熱された場合に、保護カバーから遠いため加熱されにくい大径部の方が、小径部よりも先にハウジングと接触しやすくなる。これにより、加熱されやすいことで熱膨張しやすい小径部は、ハウジングと接触しなくなる、もしくは接触してもハウジングからの径方向の応力が緩和される。したがって、セラミックス部材の破損をより抑制できる。
【0014】
セラミックス部材が大径部と小径部とを備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記ハウジングは、内周面が前記貫通孔の一部を構成し前記小径部が内部に挿入されている第1筒状部と、内周面が前記貫通孔の一部を構成し前記大径部が内部に挿入されており前記第1筒状部よりも内径が大きい第2筒状部と、前記第1筒状部の一部であり該第1筒状部の内周面と前記第2筒状部の内周面とを接続する第1段差面と、を有しており、前記セラミックス部材は、前記大径部の一部であり該大径部の外周面と前記小径部の外周面とを接続し前記第1段差面と対向する第2段差面を有しており、前記第1段差面と前記第2段差面との間に配設され、該第1段差面と該第2段差面とに押圧されているリング状の封止部材、を備えていてもよい。こうすれば、リング状の封止部材が存在することで第1段差面と第2段差面との間を封止できる。そのため、ハウジングとセラミックス部材との間を気体が軸方向に流通するのを抑制でき、センサ素子の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0015】
封止部材を備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記封止部材は、外径Dp[mm]が前記大径部の外径Dc2[mm]以下であってもよい。こうすれば、封止部材は、大径部の外周面よりも外径側にはみ出しにくい。ここで、封止部材が大径部の外周面よりも外径側にはみ出していると、大径部の外周面と第2段差面との間の角部が加熱により膨張する際に、角部の膨張が封止部材に規制されて角部に熱応力が集中する場合がある。封止部材の外径Dpが大径部の外径Dc2以下であることで、角部への熱応力の集中を抑制でき、加熱によるセラミックス部材の破損を抑制できる。
【0016】
封止部材を備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記封止部材は、前記第1段差面と前記第2段差面とに押圧されていない状態で、内径側が外径側に比べて厚い部材であってもよい。こうすれば、例えば押圧されていない状態での封止部材の厚さが均一な場合と比較して、封止部材の位置が径方向にずれにくい。そのため、ガスセンサが昇降温を繰り返した場合に、ハウジングとセラミックス部材との位置が径方向にずれるのを抑制できる。したがって、センサ素子の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0017】
封止部材を備える態様の本発明のガスセンサにおいて、前記第1段差面と前記第2段差面との軸方向の距離が、前記セラミックス部材の中心軸に近づくほど大きくなっていてもよい。こうすれば、ハウジングからセラミックス部材への封止部材を介した押圧力が中心軸に向かう成分を有するようになる。そのため、ガスセンサが昇降温を繰り返した場合に、ハウジングとセラミックス部材との位置が径方向にずれるのを抑制できる。したがって、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ガスセンサ10が配管90に取り付けられた様子を示す概略説明図。
図2】ガスセンサ10の縦断面図。
図3図2のハウジング41及びセラミックス部材45周辺の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ10が配管90に取り付けられた様子を示す概略説明図である。図2は、ガスセンサ10の縦断面図であり、図1のA−A断面図である。図3は、図2のハウジング41及びセラミックス部材45周辺の拡大図である。なお、本実施形態において、上下方向,及び左右方向は、図2,3に示した通りとする。
【0020】
図1に示すように、ガスセンサ10は、例えば車両の排ガス管などの配管90に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等の特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を測定するために用いられる。本実施形態では、ガスセンサ10は特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。
【0021】
図2に示すように、ガスセンサ10は、センサ素子20と、センサ素子20の表面の少なくとも一部を被覆する保護層25と、センサ素子20の先端面20aを含む先端側(図2の下端側)を保護する保護カバー30と、センサ素子20を封止固定する素子封止体40と、センサ素子20の基端面20bを含む基端側(図2の上端側)の保護やセンサ素子20からの電気信号の取り出しを行う組立体50と、を備えている。
【0022】
センサ素子20は、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層を複数積層した構造を有している。センサ素子20は、長尺な板状体形状(直方体形状)の素子であり、下端側の先端面20aと、上端側の基端面20bと、先端面20a及び基端面20bに垂直な4つの面と、を備えている。センサ素子20は、被測定ガスを自身の内部に導入する図示しない被測定ガス導入口を先端面20aに有しており、被測定ガス導入口から内部に流入した被測定ガス中の特定ガス濃度を検出可能に構成されている。
【0023】
保護層25は、センサ素子20の表面の少なくとも一部を覆う多孔質体である。保護層25は、センサ素子20の先端面20aを含む、素子室37内に位置する部分のほとんどを覆っている。保護層25は、例えば被測定ガス中の水分やオイル成分等からセンサ素子20を保護する役割を果たす。保護層25は、例えばアルミナなどのセラミックスの多孔質体からなる。
【0024】
保護カバー30は、例えばステンレス鋼などの金属からなり、外部から内部の素子室37への被測定ガスの流入を許容する円筒状の部材である。保護カバー30は、センサ素子20の先端側を覆う有底筒状の内側保護カバー31と、この内側保護カバー31を覆う有底筒状の外側保護カバー32とを備えている。内側保護カバー31は、内側に素子室37を有している。素子室37は、内側保護カバー31の内周面に囲まれた空間である。素子室37内には、センサ素子20の先端面20aを含む先端側が配置されている。内側保護カバー31と外側保護カバー32との間には、両カバーに囲まれた空間であるガス室38が存在する。内側保護カバー31には、側面(外周面)に位置する複数の素子室入口33と、底面に位置する素子室出口34とが配設されている。外側保護カバー32には、側面(外周面)に位置する複数の外側入口35と、底面に位置する外側出口36とが配設されている。
【0025】
素子封止体40は、センサ素子20を固定すると共に、センサ素子の先端側(下側)である保護カバー30内の空間(素子室37及びガス室38)と、基端側(上側)である大気側カバー74内の空間との間を封止するものである。センサ素子20は、長手方向(上下方向)に素子封止体40を貫通している。素子封止体40は、ハウジング41と、セラミックス部材45と、封止部材48と、シール材49と、を備えている。センサ素子20と、ハウジング41と、セラミックス部材45と、封止部材48とは、同軸に配置されており、これらの中心軸はガスセンサ10の中心軸Cと一致している。
【0026】
ハウジング41は、例えばステンレス鋼などからなる円筒状の金属部材である。図3に示すように、ハウジング41は、セラミックス部材45が内部に軸方向(上下方向)に挿入されている貫通孔41aと、円筒状の第1筒状部42と、第1筒状部42の上側に第1筒状部42と同軸に接続された円筒状の第2筒状部43と、を備えている。第1筒状部42は、内周面42aと、内周面42aの上端と第2筒状部43の内周面43aの下端との間を接続する第1段差面42bと、を備えている。第1段差面42bは、上面視でリング状の面であり、中心軸Cに垂直な方向(左右方向)すなわちハウジング41の径方向で中心軸Cに近づくほど保護カバー30側(下側)に向かうように傾斜している。換言すると、第1段差面42bは、内径側ほど下側に向かうように傾斜している。第2筒状部43は、内周面42aよりも内径が大きい内周面43aを備えている。第1筒状部42の内径(内周面42aの直径)を内径dm1[mm]と称する。第2筒状部43の内径(内周面43aの直径)を内径dm2[mm]と称する。内径dm1は、例えば9mm〜12mmである。内径dm2は、例えば12mm〜16mmである。内周面42a,内周面43a,及び第1段差面42bは、貫通孔41aの一部を構成している。第1筒状部42の内部には、セラミックス部材45の小径部46が挿入されている。第2筒状部43の内部には、セラミックス部材45の大径部47が挿入されている。第1筒状部42の下端には保護カバー30の上端が取り付けられている。第1筒状部42は、外周面に雄ネジ部が設けられており、配管90に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材91内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子20の先端側や保護カバー30が配管90内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管90に固定されている。
【0027】
セラミックス部材45は、ハウジング41の貫通孔41aの内部に挿入された円柱状の部材である。セラミックス部材45は、中心軸Cと同軸の貫通孔を有し、センサ素子20が内部を軸方向に貫通している。セラミックス部材45は、例えばアルミナ、ステアタイト、ジルコニアなどの絶縁性のセラミックスからなる。このセラミックス部材45は、円柱状の小径部46と、小径部46に小径部46と同軸に接続された円柱状の大径部47と、を備えている。小径部46は、大径部47よりも保護カバー30側(下側)に位置している。小径部46は、大径部47の外周面47aよりも外径が小さい外周面46aを備えている。外周面46aは、第1筒状部42の内周面42aと径方向に対向している。大径部47は、外周面47aと、外周面47aの下端と小径部46の外周面46aの上端との間を接続する第2段差面47bと、を備えている。外周面47aは、第2筒状部43の内周面43aと径方向に対向している。第2段差面47bは、中心軸Cに垂直な面であり、ハウジング41の第1段差面42bと上下に対向している。大径部47の内径側には、シール材49が充填されている。小径部46の外径(外周面46aの直径)を外径Dc1[mm]と称する。大径部47の外径(外周面47aの直径)を外径Dc2[mm]と称する。外径Dc1は、例えば8.96mm〜11.96mmである。外径Dc2は、例えば12mm〜16mmである。
【0028】
封止部材48は、例えばステンレス,ニッケル,又は銅などの金属からなるリング状の部材である。封止部材48は、ハウジング41の第1段差面42bとセラミックス部材45の第2段差面47bとの間に配設され、第1段差面42b及び第2段差面47bに上下から押圧されている。これにより、封止部材48はハウジング41とセラミックス部材45との隙間を気密に封止している。封止部材48の外径を外径Dp[mm]と称する。封止部材48の内径を内径dp[mm]と称する。なお、外径Dp及び内径dpは、図3のように素子封止体40に封止部材48が組み込まれた状態における径、すなわち第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧された状態での径とする。また、封止部材48は、第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧されていない状態で、内径側が外径側に比べて厚い部材であることが好ましい。すなわち、封止部材48は、外部からの圧力が加えられていない状態での形状が、内径側が外径側に比べて厚くなっていることが好ましい。なお、封止部材48は、図3のように素子封止体40に組み込まれた状態では、第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧されて変形していてもよい。その場合、変形した状態では必ずしも内径側が外径側に比べて厚い必要はない。シール材49は、タルクやアルミナ粉末、ボロンナイトライドなどのセラミックス粉末の成型体である。シール材49は、大径部47の内周面とセンサ素子20との間に充填されて、セラミックス部材45とセンサ素子20との間を気密に封止している。
【0029】
ここで、素子封止体40のハウジング41,セラミックス部材45,及び封止部材48の位置関係について詳細に説明する。ハウジング41の内周面とセラミックス部材45の外周面との間には、図3に示すように隙間が存在する。より具体的には、第1筒状部42の内周面42aと小径部46の外周面46aとの間に隙間が存在する。この隙間の径方向の距離W1は、20μm以上である。詳細は後述するが、距離W1が20μm以上であることで、ガスセンサ10の使用時の加熱によるセラミックス部材45の破損を抑制できる。なお、距離W1は、内周面42aと外周面46aとの全周に亘る隙間(径方向の距離)の平均値とする。そのため、ハウジング41とセラミックス部材45との中心軸が一致しているか否かに関わらず、距離W1は、基本的には「内周面42aの内径dm1と外周面46aの外径Dc1との差」の半分の値となる。すなわち、W1=(dm1−Dc1)/2となる。
【0030】
また、第2筒状部43の内周面43aと大径部47の外周面47aとの間にも隙間が存在することが好ましい。すなわち、この隙間の径方向の距離W2は0μm(隙間が存在しない)でもよいが、0μm超過であることが好ましい。なお、距離W2も、距離W1と同様に全周に亘る隙間(径方向の距離)の平均値とする。そのため、ハウジング41とセラミックス部材45との中心軸が一致しているか否かに関わらず、距離W2は、基本的には「内周面43aの内径dm2と外周面47aの外径Dc2との差」の半分の値となる。すなわち、W2=(dm2−Dc2)/2となる。また、距離W2が0μm超過である場合において、距離W2は距離W1以下であることが好ましい。すなわち、距離W1と距離W2との比である比W1/W2が値1以上であることが好ましい。なお、比W1/W2は値1超過としてもよい。比W1/W2は、値100以下としてもよいし、値10以下としてもよい。
【0031】
第1段差面42bは、上述したように、ハウジング41の径方向で中心軸Cに近づくほど保護カバー30側(下側)に向かうように傾斜している。また、第2段差面47bは、上述したように中心軸Cに垂直な面である。これらにより、第1段差面42b及び第2段差面47bは、軸方向(上下方向)の互いの距離が、セラミックス部材45の中心軸Cに近づくほど大きくなっている。第1段差面42bと第2段差面47bとのなす角θg(図3の部分拡大図参照)は、例えば0°超過30°以下である。なす角θgは、5°以上としてもよい。なす角θgは、15°以下としてもよい。
【0032】
組立体50は、絶縁碍子55と、複数の接触金具60と、複数の接続端子71と、複数のリード線72と、ゴム栓73と、大気側カバー74と、外側カバー75と、皿バネ77とを備えている。絶縁碍子55は、有底筒状の部材であり、セラミックス部材45と同様に絶縁性のセラミックスからなる。絶縁碍子55は、下面がセラミックス部材45の上面と接触しており、セラミックス部材45と同軸に位置している。接触金具60は、複数箇所で屈曲した金属板であり、内側に折り曲げられた状態の板バネ部を備えている。接触金具60は、センサ素子20の左右に複数本ずつ(例えば2本ずつ、3本ずつなど)配設されており、各々がセンサ素子20の表面に配設された図示しない導通電極と接触し導通している。複数の接触金具60の各々の端部は、絶縁碍子55の上側の底部の孔を貫通して引き出され、接続端子71を介してリード線72と導通している。リード線72は、大気側カバー74及び外側カバー75の上端を塞ぐゴム栓73を上下に貫通して外部(配管90の外部であり、大気中)に引き出されている。大気側カバー74は、第2筒状部43の外周面のうちセンサ素子20の基端側(上側)の部分を覆っている。また、大気側カバー74は、絶縁碍子55及びゴム栓73を覆っている。外側カバー75は、大気側カバー74の上側の外周面を覆っている。大気側カバー74及び外側カバー75には、それぞれ複数の大気導入孔76が形成されている。この大気導入孔76を介して、センサ素子20の基端面20bに配設された図示しない基準ガス導入口内に、特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガス(大気)が導入される。大気側カバー74及び外側カバー75は、上端付近に、縮径状に加締められた加締め部を有しており、この加締め部により、ゴム栓73が固定されている。皿バネ77は、上下で大気側カバー74と絶縁碍子55とに挟まれており、絶縁碍子55を下方に押圧することで絶縁碍子55及びセラミックス部材45を固定している。
【0033】
次に、こうして構成されたガスセンサ10の使用例を以下に説明する。ガスセンサ10が図1図2のように配管90に取り付けられた状態で、配管90内を被測定ガスが流れると、被測定ガスは保護カバー30内を流通する。具体的には、配管90内の被測定ガスは、外側入口35からガス室38に流入し、ガス室38から素子室入口33を経て素子室37に流入する。そして、被測定ガスは素子室37内を素子室入口33から素子室出口34に向かって流れ、素子室出口34から外側出口36を経て外部(配管90内)に流出する。そして、被測定ガスが、素子室37内を流通する際に被測定ガス導入口からセンサ素子20内に流入すると、この被測定ガス中の特定ガス濃度(例えばNOx濃度)に応じた電気信号(電圧又は電流)をセンサ素子20が発生させる。なお、センサ素子20は、大気側カバー74内に位置する基準ガス導入口から内部に導入された基準ガスに基づいて、被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電気信号を発生させる。この電気信号を接触金具60,接続端子71,及びリード線72を介して取り出すことで、電気信号に基づき特定ガス濃度が検出される。
【0034】
このように、ガスセンサ10は、使用時に保護カバー30側が被測定ガスにさらされるため、被測定ガスによって加熱されて高温になる。そのため、使用時と不使用時とで、ガスセンサ10は昇降温が繰り返される。そして、使用時にガスセンサ10が高温になることでセラミックス部材45は膨張する。ここで、本実施形態では、ハウジング41の内周面42aとセラミックス部材45の外周面46aとの間に隙間があり、上述したようにこの隙間の距離W1が20μm以上になっている。このような隙間が存在すると、セラミックス部材45が加熱された際に膨張を許容する空間が存在することになるから、ハウジング41の内周面42aとセラミックス部材45の外周面46aとが接触しなくなるか、もしくは接触したとしても内周面42aから外周面46aへの径方向の応力が低減される。したがって、加熱によりセラミックス部材45にクラックなどの破損が生じるのを抑制できる。なお、距離W1が大きいほど、加熱によるセラミックス部材45の破損を抑制する効果は高まる傾向にある。例えば、距離W1は、50μm以上としてもよい。また、距離W1は、500μm以下であることが好ましい。距離W1が500μm以下であることで、ハウジング41とセラミックス部材45との間の隙間を気体(被測定ガスや基準ガス)が軸方向に流通するのを抑制できる。その結果、内周面42aと外周面46aとの隙間で気体が結露しにくくなり、例えばハウジング41や封止部材48などの気密性に関連する部材の腐食が生じにくくなる。そのため、素子封止体40を境界としたセンサ素子20の一端側(先端面20a側)と他端側(基端面20b側)との間の気密性が低下することを抑制できる。上述したように、センサ素子20は、大気側カバー74内の基準ガスに基づいて保護カバー30内の被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するから、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下すると、検出の精度が低下する。そのため、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性の低下を抑制することで、ガスセンサ10の特定ガス濃度の検出精度の低下を抑制できる。なお、距離W1が小さいほど、気密性の低下を抑制する効果は高まる傾向にある。例えば、距離W1は、300μm以下としてもよいし、100μm以下としてもよい。
【0035】
また、第2筒状部43の内周面43aと大径部47の外周面47aとの間にも隙間が存在すれば、ハウジング41の内周面43aからセラミックス部材45の外周面47aへの径方向の応力も低減される。そのため、距離W2が0μm超過であれば、加熱によりセラミックス部材45にクラックなどの破損が生じるのをより抑制できる。距離W2が大きいほど、ガスセンサ10の使用時の加熱によるセラミックス部材45の破損をより抑制できる傾向にある。例えば、距離W2は5μm以上であることが好ましい。距離W2は20μm以上としてもよい。また、距離W2は、500μm以下であることが好ましい。距離W2が500μm以下であることで、距離W1を500μm以下とする場合と同様に、内周面43aと外周面47aとの隙間で気体が結露しにくくなり、例えばハウジング41や封止部材48などの気密性に関連する部材の腐食が生じにくくなる。そのため、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することをより抑制できる。なお、距離W2が小さいほど、気密性の低下を抑制する効果は高まる傾向にある。距離W2は、300μm以下としてもよいし、100μm以下としてもよいし、50μm以下としてもよい。
【0036】
さらに、封止部材48は、外径Dpが大径部47の外径Dc2以下であることが好ましい。こうすれば、封止部材48は、大径部47の外周面47aよりも外径側にはみ出しにくい。ここで、封止部材48が大径部47の外周面47aよりも外径側にはみ出していると、大径部47の外周面47aと第2段差面47bとの間の角部47c(図3の部分拡大図参照)が加熱により膨張する際に、膨張が封止部材48に規制される場合がある。これにより、角部47cに熱応力が集中する場合がある。封止部材48の外径Dpが大径部47の外径Dc2以下であることで、角部47cへの熱応力の集中を抑制でき、加熱によるセラミックス部材45の破損(特に角部47cやその周辺の破損)を抑制できる。外径Dpが外径Dc2未満であってもよい。また、封止部材48とセラミックス部材45とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。なお、式(1)の左辺は、封止部材48とセラミックス部材45とが同軸の状態から封止部材48が径方向に最大限ずれた状態になるまでの封止部材48の径方向の移動距離に相当する。また、式(1)の右辺は、封止部材48とセラミックス部材45とが同軸の状態から封止部材48が径方向にずれても外周面47aより外径側にはみ出す部分が生じない移動距離の最大値に相当する。この式(1)を満たすことで、セラミックス部材45に対する封止部材48の位置が径方向にずれた場合でも、封止部材48が大径部47の外周面47aよりも外径側にはみ出しにくい。なお、封止部材48の内径dpと小径部46の外径Dc1との差は、5μm〜500μmとしてもよいし、20μm〜500μmとしてもよい。大径部47の外径Dc2と封止部材48の外径Dpとの差は、5μm〜500μmとしてもよい。
【0037】
(dp−Dc1)/2≦(Dc2−Dp)/2 (1)
【0038】
以上詳述した本実施形態のガスセンサ10によれば、貫通孔41aの内周面42aとセラミックス部材45との間に隙間を有し、隙間の径方向の距離W1が20μm以上であるため、加熱によるセラミックス部材45の破損を抑制できる。また、距離W1が500μm以下であるため、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0039】
また、セラミックス部材45は、円柱状の大径部47と、大径部47よりも保護カバー30側に位置し且つ大径部47よりも外径が小さい円柱状の小径部46と、を有している。そして、距離W1は、小径部46の外周面46aと貫通孔41aの内周面42aとの隙間の径方向の距離である。ここで、セラミックス部材45が大径部47と小径部46とを有する場合、保護カバー30に近い小径部46の方が被測定ガスによって加熱されやすいため破損しやすい。そのため、小径部46とハウジング41の内周面42aとの間に20μm以上の隙間が存在することで、例えば大径部47とハウジング41の内周面43aとの間にのみ隙間がある場合と比較して、加熱によるセラミックス部材45の破損をより抑制できる。
【0040】
さらに、大径部47が貫通孔41aの内周面43aとの間に隙間を有し、この隙間の径方向の距離W2が5μm以上である。このように、小径部46とハウジング41の内周面42aとの間だけでなく、大径部47とハウジング41の内周面43aとの間にも隙間があることで、加熱によるセラミックス部材45の破損をより抑制できる。また、距離W2が500μm以下であるため、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0041】
さらにまた、比W1/W2が値1以上であることで、すなわち距離W2が距離W1以下であることで、ガスセンサ10が加熱された場合に、保護カバー30から遠いため加熱されにくい大径部47の方が、小径部46よりも先にハウジング41と接触しやすくなる。これにより、加熱されやすいことで熱膨張しやすい小径部46は、ハウジング41と接触しなくなる、もしくは接触してもハウジング41からの径方向の応力が緩和される。したがって、セラミックス部材45の破損をより抑制できる。
【0042】
そしてまた、ガスセンサ10は、第1段差面42bと第2段差面47bとの間に配設され、第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧されているリング状の封止部材48を備えている。リング状の封止部材48が存在することで第1段差面42bと第2段差面47bとの間を封止できる。そのため、ハウジング41とセラミックス部材45との間を気体が軸方向に流通するのを抑制でき、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。また、封止部材48の外径Dpが大径部47の外径Dc2以下であるため、封止部材48は、大径部47の外周面47aよりも外径側にはみ出しにくい。これにより、大径部47の角部47cへの熱応力の集中を抑制でき、加熱によるセラミックス部材45の破損を抑制できる。
【0043】
そしてまた、封止部材48は、第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧されていない状態で、内径側が外径側に比べて厚い部材である。そのため、例えば押圧されていない状態での封止部材48の厚さが均一な場合と比較して、封止部材48の位置が径方向にずれにくい。これにより、ガスセンサ10が昇降温を繰り返した場合に、ハウジング41とセラミックス部材45との位置が径方向にずれるのを抑制できる。その結果、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0044】
そしてまた、第1段差面42bと前記第2段差面47bとの軸方向の距離が、セラミックス部材45の中心軸Cに近づくほど大きくなっている。換言すると、図3のなす角θgが0°超過である。これにより、ハウジング41からセラミックス部材45への封止部材48を介した押圧力が中心軸Cに向かう成分を有するようになる。例えば、第1段差面42bと第2段差面47bとが平行(なす角θgが0°)であると、ハウジング41からセラミックス部材45への封止部材48を介した押圧力は軸方向に平行(上向き)に作用する。一方、なす角θgが0°超過であれば、押圧力は図3の部分拡大図で右上方向に作用するため、中心軸Cに向かう成分(図3の部分拡大図では右向きの成分)を有するようになる。これにより、ハウジング41は封止部材48の全周に亘って外径側から内径側に押圧されることになる。そのため、ガスセンサ10が昇降温を繰り返した場合に、ハウジング41とセラミックス部材45との位置が径方向にずれるのを抑制できる。その結果、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、第1段差面42bは、内径側ほど下側に向かうように傾斜していたが、これに限られない。第1段差面42bと前記第2段差面47bとの軸方向の距離が、セラミックス部材45の中心軸に近づくほど大きくなっていれば、上述した実施形態と同様にセラミックス部材45の径方向の位置ずれを抑制する効果が得られる。例えば、第1段差面42bの傾斜に加えて又は代えて、第2段差面47bも傾斜していてもよい。具体的には、第2段差面47bが、ハウジング41の径方向で中心軸Cに近づくほど保護カバー30側とは反対側(上側)に向かうように傾斜していてもよい。また、第1段差面42bと前記第2段差面47bとの軸方向の距離が、セラミックス部材45の中心軸Cに近づくほど小さくなっていてもよい。あるいは、第1段差面42bと前記第2段差面47bとが平行であってもよい。
【0047】
上述した実施形態では、ガスセンサ10は、第1段差面42bと第2段差面47bとの間に封止部材48を備えていたが、封止部材48を備えなくてもよい。この場合、センサ素子20の一端側と他端側との間の気密性が低下することを抑制できるよう、距離W2を0μmとすることが好ましい。
【0048】
上述した実施形態では、セラミックス部材45は小径部46と大径部47とを備えていたが、セラミックス部材45の形状はこれに限られない。例えば、セラミックス部材45が、第2段差面47bを有さない円柱状の形状、すなわち図3の外径Dc1と外径Dc2とが等しいような形状であってもよい。この場合も、ハウジングの内周面とセラミックス部材の外周面との間に隙間が存在し、この隙間の距離W1が20μm以上であれば、上述した実施形態と同様に加熱によるセラミックス部材の破損を抑制する効果が得られる。また、セラミックス部材45が、小径部46及び大径部47に加えて、これらと同軸に接続された円柱状の部材を有していてもよい。同様に、ハウジング41の形状も、上述した実施形態に限られない。
【0049】
上述した実施形態では、第1筒状部42の内周面42aと小径部46の外周面46aとの間に20μm以上の隙間が存在したが、内周面42aと外周面46aとが接していてもよい。この場合でも、第2筒状部43の内周面43aと大径部47の外周面47aとの間に20μm以上の距離の隙間が存在すれば、加熱によるセラミックス部材の破損を抑制する効果が得られる。このような場合は、内周面43aと外周面47aとの間の隙間の径方向の距離が、本発明の「距離W1」に相当する。このように、セラミックス部材とハウジングとの間のどこかに、径方向の距離が20μm以上である隙間が存在すれば、加熱によるセラミックス部材の破損を抑制する効果は得られる。ただし、小径部46の方が保護カバー30に近い分だけ被測定ガスによって加熱されやすく破損しやすいため、第1筒状部42の内周面42aと小径部46の外周面46aとの間に20μm以上の距離の隙間が存在することが好ましい。
【0050】
上述した実施形態では、被測定ガス導入口はセンサ素子20の先端面20aに配設されていたが、被測定ガス導入口は素子室37内に位置すればよく、被測定ガス導入口がセンサ素子20の他の面に配設されていてもよい。同様に、基準ガス導入口は、大気側カバー74内に位置すればよく、センサ素子20の基端面20bに限らずセンサ素子20の他の面に配設されていてもよい。また、センサ素子20が被測定ガス導入口を備えていなくてもよい。この場合、例えばセンサ素子20の表面に測定電極などを含む検出部が配設されていてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、センサ素子20は長尺な板状体形状としたが、長尺であればよい。例えば、センサ素子20が円柱状であってもよい。
【実施例】
【0052】
以下には、ガスセンサを具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例3〜26が本発明の実施例に相当し、実験例1,2が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実験例1〜10]
距離W2を0μmとし、距離W1を表1に示すように0μm〜600μmの間で種々
変更した点以外は、図2,3に示したガスセンサ10と同様の構成のガスセンサを作製し、実験例1〜10とした。なお、実験例1〜10において、ハウジング41の第2筒状部43の内径dm2及びセラミックス部材45の大径部47の外径Dc2はいずれも14.5mmとした。また、距離W1の調整は、ハウジング41の第1筒状部42の内径dm1を10.5mmで一定とし、セラミックス部材45の小径部46の外径Dc1を変更することで行った。なお、封止部材48の外径Dpは14mmとし、内径dpは10mmとした。封止部材48は、第1段差面42bと第2段差面47bとに押圧されていない状態で、外径側と内径側の厚さが同じとした。第1段差面42bと第2段差面47bとのなす角θgは、3°とした。
【0054】
[実験例11〜18]
距離W1を50μmで一定とし、距離W2を表1に示すように5μm〜150μmの間で種々変更した点以外は、実験例1〜10と同様の構成のガスセンサを作製し、実験例11〜18とした。なお、内径dm1及び外径Dc1は、実験例5と同じとした。また、距離W2の調整は、ハウジング41の第2筒状部43の内径dm2を14.5mmで一定とし、セラミックス部材45の大径部47の外径Dc2を変更することで行った。
【0055】
[実験例19〜26]
距離W1を100μmで一定とし、距離W2を表1に示すように10μm〜300μmの間で種々変更した点以外は、実験例11〜18と同様の構成のガスセンサを作製し、実験例19〜26とした。なお、内径dm1及び外径Dc1は、実験例6と同じとした。距離W2の調整は、実験例11〜18と同様にハウジング41の第2筒状部43の内径dm2を14.5mmで一定とし、セラミックス部材45の大径部47の外径Dc2を変更することで行った。
【0056】
[熱耐久試験]
実験例1〜26のガスセンサについて、熱耐久試験を行ってセラミックス部材45のクラックの有無及び位置ずれの有無を調べた。具体的には以下のように試験を行った。ハウジング41を600℃まで加熱した後にガスセンサを水没させる冷熱ストレスを与え、これを1回の昇降温サイクルとした。そして、昇降温サイクルを3000回繰り返した後、及び6000回繰り返した後に、セラミックス部材45のクラックの有無及びセラミックス部材45の径方向の位置ずれの有無を調べた。クラックの有無については、昇降温サイクルを6000回繰り返した後にクラックが見られなかった場合を「A(優)」とし、3000回繰り返した後にクラックが見られなかった場合を「B(良)」とし、3000回繰り返した後にクラックが見られた場合を「C(不可)」として評価した。位置ずれについては、昇降温サイクルを6000回繰り返した後に、目視でハウジング41に対するセラミックス部材45の位置が径方向にずれていた場合(ハウジング41とセラミックス部材45とが同軸ではなくなっていた場合)に「有り」とした。セラミックス部材45の位置が径方向にずれていなかった場合には「無し」として評価した。実験例1〜26の距離W1,距離W2,比W1/W2,及び熱耐久試験の結果を表1にまとめて示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、距離W1が20μm以上である実験例3〜26は、いずれもクラックに関する評価が「A(優)」又は「B(良)」であり、距離W1が20μm未満である実験例1,2と比べて加熱によるセラミックス部材45の破損を抑制できていた。また、距離W2が0μm超過である実験例11〜26は、いずれもクラックに関する評価が「A(優)」であり、距離W2が0μmである実験例3〜10と比べて加熱によるセラミックス部材45の破損をより抑制できていた。また、比W1/W2が値1以上である実験例11〜15,19〜23は、距離W1及び距離W2が共に0μm超過であっても、いずれもセラミックス部材45の位置ずれが生じていなかった。一方、比W1/W2が値1未満である実験例16〜18,24〜26では、位置ずれが生じていた。ここで、位置ずれが生じると、ハウジング41からセラミックス部材45への径方向の応力に偏りが生じるため、応力が大きい部分でセラミックス部材45が破損しやすくなる可能性がある。そのため、実験例11〜26はいずれもクラックに関する評価が「A(優)」であったが、比W1/W2が値1以上である実験例11〜15,19〜23は、比W1/W2が値1未満である実験例16〜18,24〜26と比べてさらに破損が生じにくいと考えられる。例えば、昇降温サイクルを6000回を超えてさらに繰り返した場合、実験例11〜15,19〜23は実験例16〜18,24〜26と比べて破損が生じにくいと考えられる。
【符号の説明】
【0059】
10 ガスセンサ、20 センサ素子、20a 先端面、20b 基端面、25 保護層、30 保護カバー、31 内側保護カバー、32 外側保護カバー、33 素子室入口、34 素子室出口、35 外側入口、36 外側出口、37 素子室、38 ガス室、40 素子封止体、41 ハウジング、41a 貫通孔、42 第1筒状部、42a 内周面、42b 第1段差面、43 第2筒状部、43a 内周面、45 セラミックス部材、46 小径部、46a 外周面、47 大径部、47a 外周面、47b 第2段差面、47c 角部、48 封止部材、49 シール材、50 組立体、55 絶縁碍子、60 接触金具、71 接続端子、72 リード線、73 ゴム栓、74 大気側カバー、75 外側カバー、76 大気導入孔、77 皿バネ、90 配管、91 固定用部材、C 中心軸。
図1
図2
図3