(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物と、側鎖を有する水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールとの反応生成物からなり、触媒としてカルボン酸金属塩を含み、当該反応生成物の25℃における粘度が3100mPa・s〜5300mPa・sであるアロファネート基を含有することを特徴とするポリイソシアネート組成物。
側鎖を有する水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールの側鎖が、炭素数が1〜5のアルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳しく説明する。
【0021】
本発明のポリイソシアネート組成物は、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物と、側鎖を有し、水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールとの反応生成物からなり、当該反応生成物がアロファネート基を含有することを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【0022】
本発明のポリイソシアネート組成物に用いることのできる脂肪族ポリイソシアネートモノマー(以下、単に脂肪族ポリイソシアネートとも言う)とは、その構造中にベンゼン環を含まないポリイソシアネート化合物である。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートは、単独で使用、又は併用してもよく、イソホロンジイソシアネートやノルボルネンジイソシアネートに代表される脂環族ジイソシアネートを併用してもよい。
【0023】
本発明のポリイソシアネート組成物に用いることのできる側鎖を有し、水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールとは、2つの水酸基を結ぶ最少炭素数が2〜3であり、その炭素鎖上に少なくとも1つの側鎖があるものである。なお、ここでいう側鎖とは、炭素数が1以上のアルキル基であり下記、化1、化2で表される。
【0025】
(式中R
1〜R
4は各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R
1〜R
4のうち1つ以上がアルキル基である。)
【0027】
(式中R
1〜R
6は各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、R
1〜R
6のうち1つ以上がアルキル基である。)
【0028】
本発明における水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールとは、分子中に環構造を含まないものであり、例えば1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等、分子中に環構造を含まないものが挙げられる。上記ジオールは単独で使用しても併用しても良い。この中で、イソシアネート含有量を高くする上で、分子量が低い1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールが好ましいが、工業的に入手しやすいという観点から、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールがより好ましい。
【0029】
側鎖を有し、水酸基間炭素数4以上のジオールを変性剤として用いた場合、イソシアネート含有量が低くなり、これを用いたポリイソシアネートを硬化剤としたウレタン塗膜中のウレタン結合の量が減少し、機械物性が低下する。
【0030】
本発明のポリイソシアネート組成物の構成成分の1つであるイソシアヌレート基とは、ジイソシアネートモノマー同士が環化重合したもので、これは3量化または5量化、多量化したイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートとなる。
【0032】
(上記式中、R
1は、ジイソシアネートモノマーのNCO基を除く分子を表し、nは、1以上の整数である。)
また、本発明のポリイソシアネート組成物の必須の構成成分であるアロファネート基とは、上記ジオールのヒドロキシル基と脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基とが反応しウレタン結合を形成した後、ウレタン基にさらに別のイソシアネート基が反応して得られるもので、化2に示される。
【0034】
(上記式中、R
1は、ジイソシアネートモノマーのNCO基を除く分子を表し、R
2は、ジオールの水酸基を除く分子を表す。
【0035】
また、本発明のポリイソシアネート組成物中に含有するアロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、アロファネート基/イソシアヌレート基を90/10〜100/0の範囲で得ることができる。イソシアヌレート基のモル比が上限値を超える場合には、塗膜のフリップフロップ性が低下する恐れがある。
【0036】
次に、本発明のポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。
【0037】
第1工程では、脂肪族ポリイソシアネートとジオールを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下または非存在下、50〜150℃でウレタン化とアロファネート化反応をさせてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。ここでウレタン化とアロファネート化反応の目安としては、中和滴定法によるイソシアネート基含有量と屈折率上昇値により完結の有無を判断する。
【0038】
第2工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIに反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。
【0039】
これら第1工程〜第2工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
【0040】
第3工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIを薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の脂肪族ポリイソシアネートの含有量を1質量%未満になるまで除去する。
【0041】
ここで、第1工程における「イソシアネート基が過剰になる量」とは、原料仕込みの際、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基と水酸基間炭素数が2〜3の非環式脂肪族ジオールの水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で5〜75になるように仕込むことが好ましく、R=5〜50になるように仕込むことがさらに好ましい。下限未満の場合には、目的物よりも分子量の高いポリイソシアネート組成物の生成量が多くなり、粘度の上昇を招く恐れがある。上限を超える場合には、ポリイソシアネート組成物のアロファネート体が少なくなることによる粘度の上昇及び製品収率が下がり、生産性の低下を招く恐れがある。
【0042】
第1工程におけるアロファネート化反応は、ウレタン化反応と同時に行っても、ウレタン化後に行ってもよい。ウレタン化とアロファネート化とを同時に行う場合、アロファネート化触媒の存在下で反応を行えばよく、ウレタン化後にアロファネート化を行う場合、アロファネート化触媒の非存在下で、所定時間ウレタン化反応を行った後、アロファネート化触媒を添加してアロファネート化反応を行えばよい。
【0043】
また、本発明のウレタン化反応の反応温度は、20〜70℃が好ましく、30〜60℃がさらに好ましい。尚、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0044】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、および温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間で十分である。
【0045】
第1工程におけるアロファネート化触媒としては一般的に使用されるアロファネート化触媒が挙げられる。
【0046】
アロファネート化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、カルボン酸金属塩を用いることができる。カルボン酸金属塩のカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸、飽和単環カルボン酸、飽和複環カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸や、前記モノカルボン酸以外のポリカルボン酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0047】
飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0048】
飽和単環カルボン酸としては、例えばシクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等が挙げられる。
【0049】
飽和複環カルボン酸としては、例えばビシクロ[4.4.0]デカン−2−カルボン酸等が挙げられる。
【0050】
不飽和脂肪族カルボン酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
【0051】
芳香脂肪族カルボン酸としては、ジフェニル酢酸等が挙げられる。
【0052】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸等が挙げられる。
【0053】
ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0054】
また、カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、前記以外の典型金属、遷移金属等が挙げられる。
【0055】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0056】
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
【0057】
前記以外の典型金属としては、スズ、鉛等が挙げられる。
【0058】
遷移金属としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等が挙げられる。
【0059】
これらのカルボン酸金属塩は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、アロファネート化触媒の使用量は、ポリイソシアネートとジオールとの合計質量に対して0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%がより好ましい。
【0060】
有機溶媒の存在下で反応を行う場合、反応に影響を与えない各種有機溶媒を用いることができ、例えば脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、極性非プロトン溶媒等が挙げられる。
【0061】
脂肪族炭化水素類としては、例えばn−ヘキサン、オクタン等が挙げられる。
【0062】
脂環族炭化水素類としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0063】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0064】
エステル類としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
【0065】
グリコールエーテルエステル類としては、例えばエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等が挙げられる。
【0066】
エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0067】
ハロゲン化炭化水素類としては例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0068】
極性非プロトン溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等が挙げられる。
【0069】
これらの溶媒は単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
反応終了後、リン酸やリン酸エステルなどの反応停止剤を反応系内に加え、30〜100℃で1〜2時間停止反応を行い、アロファネート化反応を停止させる。
【0071】
反応停止後は、薄膜蒸留等の公知の手法により未反応成分を除去してアロファネート変性ポリイソシアネートを得ることができる。
【0072】
また、アロファネート化したポリイソシアネートを、さらにイソシアヌレート化して、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比を調整することもできる。
【0073】
イソシアヌレート化反応としては、イソシアヌレート化触媒の存在下、ポリイソシアネートを変性(三量体化)する方法が挙げられる。このような変性方法としては、例えば、特許第3371480号公報、特開2002−241458号公報に記載の方法を用いることができる。
【0074】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば、脂肪族カルボン酸の金属塩、フェノラート、アミン系化合物等を用いることができる。
【0075】
脂肪族カルボン酸の金属塩としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ウンデシル酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチル酸等のカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、スズ塩等が挙げられ、また、市販品として、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・オクチル酸塩(DABCO TMR、三共エアープロダクツ社製)、オクチル酸カリウム(DABCO K−15、三共エアープロダクツ社製)等を挙げることができる。
【0076】
フェノラートとしては、例えばカリウムフェノラート等が挙げられる。
【0077】
アミン系化合物としては、例えば2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノトリメチルシランフェノール、トリエチルアミン、N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0078】
これらの中でも脂肪族カルボン酸の金属塩が好ましく、反応を制御しやすいという点から、オクチル酸ジルコニールがより好ましい。
【0079】
以上のように、本発明のポリイソシアネートは、アロファネート化とイソシアヌレート化とを同時に行う手法、またはアロファネート化とイソシアヌレート化とを段階的に行う手法により製造することができる。
【0080】
また、本発明のポリイソシアネートはアロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が異なる2種以上を混合して用いることもできる。この際、混合物として上記アロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比を満たす限り、上記アロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比を単独では満たさないポリイソシアネートを用いることもできる。
【0081】
第2工程における反応停止剤としては、触媒の活性を失活させる作用があるものであり、具体的には、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライド等公知の化合物が使用される。これらの反応停止剤は、単独または2種以上を併用することができる。尚、添加時期は、反応終了後、速やかな添加が好ましい。
【0082】
また、反応停止剤の添加量は、反応停止剤や使用した触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5〜10当量となるのが好ましく、0.8〜5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が少ない場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、多すぎる場合はポリイソシアネート組成物が着色する場合がある。
【0083】
第3工程の精製工程では、反応混合物中に存在している遊離の未反応の脂肪族ポリイソシアネートを、例えば、10〜100Paの高真空下、120〜150℃で薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、残留含有率を1.0質量%以下にする。尚、脂肪族ポリイソシアネートの残留含有率が上限値を超える場合は、臭気の発生や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0084】
本発明で得られるポリイソシアネート組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、25℃で8,000mPa・s以下であることが好ましく、7,000mPa・s以下であることがより好ましく、6,000mPa・s以下であることがさらに好ましい。ポリイソシアネートの粘度が、8,000mPa・sを超えると、塗料組成物の粘度が高くなり、取り扱い難くなる場合がある。一方、粘度の下限値は特に制限されないが、取り扱いの観点から、50mPa・s以上であることが好ましい。
【0085】
精製して得られたポリイソシアネート組成物は、ポットライフの延長や塗料組成物の一液化を目的として、公知のブロック剤を用いてブロックイソシアネートとすることも可能である。これにより、ブロック化されたポリイソシアネートは、常温時は不活性であるが、加熱することでブロック剤が解離し、再びイソシアネート基が活性化することで、活性水素基と反応する潜在的な機能を付加することができる。
【0086】
本発明に用いることができる、ブロック剤としては、活性水素基を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。
【0087】
このようにして得られたポリイソシアネート組成物は、GPCの分析から得られた数平均分子量より求められる平均官能基数が3.0〜7.0の範囲である。下限未満の場合には、架橋密度が低下し耐溶剤性や塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合にはポリイソシアネート組成物の粘度の上昇を招く恐れがある。
【0088】
また、本発明の二液型塗料用組成物は、上記した本発明のポリイソシアネート組成物とポリオールを含むものである。
【0089】
ここで、本発明の二液型塗料用組成物に使用されるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、イソシアネート基との反応基として活性水素基を含有する化合物であり、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、2種類以上のポリオールのエステル交換物、及びポリイソシアネートとウレタン化反応した水酸基末端プレポリマー等が好適に用いられ、これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用することもできる。
【0090】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を挙げることができる。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル−アミドポリオールを使用することもできる。
【0091】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0092】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるもの等を挙げることができる。
【0093】
また、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールと低分子ポリオールのエステル交換反応により得られたポリオールも好適に用いることができる。
【0094】
<ポリオレフィンポリオール>
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0095】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル(以下(メタ)アクリル酸エステルという)と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物(以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という)と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
【0096】
<(メタ)アクリル酸エステル>
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば炭素数1〜20のアルキルエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独または2種類以上組み合わせたものを挙げることができる。
【0097】
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物の具体例としては、ポリイソシアネートとの反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等のメタクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独または2種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0098】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールの具体例としては、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを重合したビニル基含有シリコーン化合物、及び分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンを挙げることができる。
【0099】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油等も使用することができる。
【0100】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールの具体例としては、含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状または分岐状のポリオールを挙げることができる。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレン等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル又はアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0101】
また、ポリオールは、1分子中の活性水素基数(平均官能基数)が1.9〜30.0であることが好ましい。活性水素基数が下限値未満の場合には、塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には、密着性が低下する恐れがある。
【0102】
また、ポリオールの数平均分子量は、750〜50000の範囲にあることが好ましい。下限値未満の場合には、下限未満の場合には密着性低下の恐れがあり、上限値を超えると低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性低下を招く恐れがある。
【0103】
また、二液型塗料組成物のポリイソシアネート組成物と、ポリオールの配合割合は、特に限定するものではないが、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール中の水酸基のモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で0.5〜2.5となるように配合することが好ましい。下限値未満の場合には水酸基が過剰になり、密着性の低下を招く恐れがある。また、架橋密度が低下し耐久性の低下や塗膜の機械的強度が低下する恐れがある。上限値を超える場合にはイソシアネート基が過剰になり、空気中の水分と反応し、塗膜の膨れやこれに伴う密着性の低下を生じる恐れがある。
【0104】
また、希釈溶剤として使用する有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類などからなる群から、目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
また、二液型塗料組成物は、ポットライフ、硬化条件、及び作業条件等を考慮し、適宜に公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0106】
また、二液型塗料組成物の硬化条件としては、触媒等により変化するため、特に限定されるものではないが、硬化温度が−5〜120℃、湿度が10〜95%RH、養生時間が0.5〜168時間であることが好ましい。
【0107】
本発明の二液型塗料組成物には、必要に応じて、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、溶剤、難燃剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、可塑剤、充填材、帯電防止剤、分散剤、触媒、貯蔵安定剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0108】
また、本発明によって得られた二液型塗料組成物は、スプレー、刷毛、浸漬、コーターなどの公知の方法により被着体の表面上に塗布され、塗膜を形成する。
【0109】
ここで被着体は特に限定されるものではなく、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、スレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂、6−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂などの素材で成形された被着体、コロナ放電処理やその他表面処理を施されたポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、または前記被着体表面に中間形成となりうる塗膜層が形成された被着体を用いることができる。
【0110】
以上のように、本発明のポリイソシアネート組成物、及び二液型塗料組成物は自動車塗料用途へ好適に用いることができる。
【0111】
本発明のポリイソシアネート組成物を用いた塗膜は、下記式1で求められるフリップフロップ値が8.00以上となるため、意匠性に優れる。
フリップフロップ値=
2.69×(L*15°−L*110°)
1.11/(L*45°)
0.86 (式1)
*上記式1におけるL*15°、L*45°、L*110°はそれぞれ、多角度測色機による15°、45°、110°の各角度におけるL*の測定値を表す。
【実施例】
【0112】
以下に示す、合成例、実施例および比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
【0114】
【表1】
【0115】
<合成例1>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(東ソー社製、NCO含量:49.9質量%)955g、および2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール45gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し,この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.15gを添加し、110℃にて所定の屈折率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP−508、城北化学工業社製)0.17gを添加し、50℃で1時間停止反応を行った。この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量19.6質量%、粘度(25℃)5300mPa・s、遊離のHDI含量0.2質量%の変性ポリイソシアネートP−1を310g得た。変性ポリイソシアネートP−1をNMR測定したところ,アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比率は99/1であった。
【0116】
<NMR:アロファネート基・ヌレート基・ウレタン基含有量の測定>
(1)測定装置:ECX400M(日本電子社製、1H−NMR)
(2)測定温度:23℃
(3)試料濃度:0.1g/1ml
(4)積算回数:16
(5)緩和時間:5秒
(6)溶剤:重水素ジメチルスルホキシド
(7)化学シフト基準:重水素ジメチルスルホキシド中のメチル基の水素原子シグナル(2.5ppm)
(8)評価方法:8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子に結合した水素原子のシグナルと、3.7ppm付近のヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基の水素原子のシグナルの面積比から結合基の含有量を測定
<合成例2>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(東ソー社製、NCO含量:49.9質量%)933g、および2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール67gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し,この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.15gを添加し、110℃にて所定の屈折率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP−508、城北化学工業社製)0.17gを添加し、50℃で1時間停止反応を行った。この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量18.8質量%、粘度(25℃)3100mPa・s、遊離のHDI含量0.2質量%の変性ポリイソシアネートP−2を320g得た。変性ポリイソシアネートP−2をNMR測定したところ、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比率は99/1であった。
【0117】
<合成例3>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI973g、およびエチレングリコール27gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し,この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.15gを添加し、110℃にて所定の屈折率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP−508、城北化学工業社製)0.17gを添加し、50℃で1時間停止反応を行った。この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量20.2質量%、粘度(25℃)4000mPa・s、遊離のHDI含量0.2質量%の変性ポリイソシアネートH−1を290g得た。変性ポリイソシアネートH−1をNMR測定したところ,アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比率は99/1であった。
【0118】
<合成例4〜8>
表1に示す条件で合成を行い,合成例1と同様な手順にて各変性ポリイソシアネートP−3、P−4、H−2、H−3、H−4を得た。
【0119】
<比較用ポリイソシアネート>
一般的な塗料用ポリイソシアネートであるHDIイソシアヌレート系ポリイソシアネート(製品名:コロネートHXR、NCO含量21.8質量%、粘度(25℃)2600mPa・s、遊離のHDI含量0.2質量%、東ソー社製)を性能比較の基準とするために使用した。
【0120】
<機械物性評価用二液塗料組成物の調製>
配合量は表2に示すように、ポリオール(C)と、得られたポリイソシアネート組成物とをR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1.0になるように配合し、及び有機溶剤(F)で固形分が30%になるように配合し、二液塗料組成物を調製した。ここで、ポリオール(C)には、アクリルポリオール(商品名:アクリディックA−829、水酸基価:43mgKOH/g、固形分:30%、DIC社製)を使用し、有機溶剤(F)には、酢酸ブチルを使用した。
【0121】
【表2】
【0122】
<フリップフロップ性評価用水性メタリックベースコート組成物の調製>
配合量は表3に示すように、ポリオール(D)と、アルミフレーク(商品名:STAPA IL Hydrolan 2154、BYK社製)、沈降防止剤(商品名:BYK−425、BYK社製)、消泡剤(商品名:BYK−012、BYK社製)、湿潤分散剤(商品名:DISPERBYK−192、BYK社製)、及び有機溶剤(G)を配合し、一液塗料組成物を調製した。ここで、ポリオール(D)には、水性アクリルポリオール(商品名:バーノックWE−303、水酸基価:84mgKOH/g、固形分:45%、DIC社製)を使用し、有機溶剤(G)には、メタノールを使用した。
【0123】
【表3】
【0124】
<フリップフロップ性評価用クリアトップ塗料組成物の調製>
配合量は表4に示すように、ポリオール(E)と、得られたポリイソシアネート組成物とをR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1.2になるように配合し、及び有機溶剤(F)で固形分が30%になるように配合し、二液塗料組成物を調製した。ここで、ポリオール(E)には、アクリルポリオール(商品名:アクリディックA−801、水酸基価:50mgKOH/g、固形分:50%、DIC社製)を使用し、有機溶剤(F)には、酢酸ブチルを使用した。
【0125】
【表4】
【0126】
<引張物性用試験片の作製方法と高温時引張強度の測定>
表2に示す各配合液を離型紙とガイドを貼り付けたガラス板に塗布し、温度80℃の乾燥器で10時間強制乾燥を行い、乾燥膜厚100μmの塗膜を形成させた。得られた塗膜からダンベルカッターを用いて試験片を作製し、塗膜の高温時引張強度を評価するために60℃の恒温槽内で引張測定を実施した。測定はJIS K6251に準じて行った。
【0127】
試験片:4号ダンベル型
引張速度:20mm/min
測定結果を表5に示す。
【0128】
<フリップフロップ性評価用2層塗膜の作製方法>
表3で調製した一液塗料組成物を、それぞれメチルエチルケトンで脱脂した鋼板(JIS G3141、商品名:SPCC−SB、PF−1077処理、日本テストパネル工業社製)にスプレーで塗布し、その後、室温で10分間静置した後、温度60℃の乾燥機中で30分間強制乾燥を行い、乾燥膜厚30μmのメタリックベース層を形成させた。続いて室温で10分間静置した後に、表4で調製した二液塗料組成物をアプリケーターを用いて塗布し、室温で10分間静置した後に、温度90℃の乾燥器で30分間強制乾燥を行い、さらに80℃の乾燥器で10時間強制乾燥させ、フリップフロップ性評価用2層塗膜を得た。
【0129】
<フリップフロップ評価方法>
作製した2層塗膜のフリップフロップ性評価は、多角度測色機BYK−mac(BYK製)を用いて15°、45°、110°の各角度におけるL*を測定し、下式にて計算した値をフリップフロップ値とした。
・フリップフロップ計算式
2.69×(L*15°−L*110°)
1.11/(L*45°)
0.86。
【0130】
測定結果を表5に示す。
【0131】
【表5】