(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上位装置は、前記複数のパワーコンディショナのなかで予め定めた順番で前記特定パワーコンディショナを交代させるように構築された請求項1に記載の太陽光発電システム。
前記入出力電気特性は、前記特定パワーコンディショナに入力される入力直流電力と前記入力直流電力に応じた前記特定パワーコンディショナの出力交流電力との比に基づいて定まる変換効率を含み、
前記上位装置は、
入力直流電圧が第一直流電圧であるときの出力電力と変換効率との関係を定めた第一基準変換効率特性を予め記憶しており、
前記第一基準変換効率特性と、前記特定パワーコンディショナにおいて前記入力直流電圧が前記第一直流電圧であるときに取得した前記変換効率と、の乖離が予め定めた所定範囲内にあるか否かを判定する請求項1に記載の太陽光発電システム。
前記上位装置は、前記入力直流電圧が前記第一直流電圧と異なる第二直流電圧であるときの出力電力と変換効率との関係を定めた第二基準変換効率特性を予め記憶しており、
前記上位装置は、前記入力直流電圧が前記第一直流電圧と前記第二直流電圧との間の中間直流電圧であるときの出力電力と変換効率との関係を表す中間変換効率特性を算出するための基準変換効率計算を実行するように構築されており、
前記基準変換効率計算は、
前記第一直流電圧と前記中間直流電圧との差分に応じた第一係数と、前記第二直流電圧と前記中間直流電圧との差分に応じた第二係数と、を取得し、
前記第一係数と前記第一基準変換効率特性とに基づく第一の値と、前記第二係数と前記第二基準変換効率特性とに基づく第二の値と、に基づいて前記中間変換効率特性を算出するものである請求項5に記載の太陽光発電システム。
複数の太陽電池アレイにそれぞれ接続された複数のパワーコンディショナから選択した一部の特定パワーコンディショナの出力電力を予め定めた所定出力電力に調節した状態で前記特定パワーコンディショナの入出力電気特性を測定するステップと、
前記特定パワーコンディショナの出力電力が前記所定出力電力に調節されることによる発電量変化分を前記複数のパワーコンディショナのうち前記特定パワーコンディショナを除いた残りのパワーコンディショナに分担させるように、前記残りのパワーコンディショナの出力電力を調整するステップと、
を備える太陽光発電方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10を示す模式図である。太陽光発電システム10は、複数の太陽電池アレイ1a〜1eと、複数の太陽電池アレイ1a〜1eそれぞれと接続した複数のパワーコンディショナ2a〜2eと、複数のパワーコンディショナ2a〜2eと接続された上位装置であるメインサイトコントローラ3と、を備えている。以下、メインサイトコントローラを、簡略化のため「MSC」とも称す。また、パワーコンディショナを、簡略化のため「PC」とも称す。
【0017】
太陽光発電システム10は系統連系運転を行っている。複数のPC2a〜2eが出力する交流電力は、図示しない受変電設備を介して、電力系統20へと供給される。
図1には、雲30によって太陽電池アレイ1cに日陰31が生じている。
【0018】
複数のPC2a〜2eそれぞれは、直流入力部(図示せず)と、交流出力部(図示せず)と、インバータ制御回路4と、インバータ回路5と、電流計6と、電圧計7と、を備えている。複数のPC2a〜2eそれぞれの直流入力部は、太陽電池アレイ1a〜1eから直流電力を受ける。インバータ回路5は、複数の半導体スイッチング素子で構成されている。インバータ回路5は、直流入力部に入力された直流電力を交流電力に変換する。交流出力部は、インバータ回路5で変換した交流電力を出力する。インバータ制御回路4は、インバータ回路5の半導体スイッチング素子のオンオフを制御する。電流計6は、インバータ回路5の入力直流電流を計測する入力側電流計と、インバータ回路5の出力交流電流を計測する出力側電流計と、を含んでいる。電圧計7は、インバータ回路5の入力直流電圧を計測する入力側電圧計と、インバータ回路5の出力交流電圧を計測する出力側電圧計と、を含んでいる。
【0019】
複数のPC2a〜2eそれぞれは、電流計6および電圧計7によって、入出力電気特性を計測することができる。入出力電気特性とは、複数のPC2a〜2eそれぞれの入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流、力率、および変換効率を含む。入出力電気特性は、太陽電池アレイ1a〜1eそれぞれのIV特性カーブを含んでもよい。
【0020】
MSC3には、予め定められた計測開始信号S1と、太陽光発電システム10に対する総指定発電量P0とが入力される。「総指定発電量P0」は、中央給電指令所などから与えられる発電抑制指示も含まれる。発電抑制指示が、20%出力抑制という指示であった場合、太陽電池アレイ1a〜1eおよびこれと接続されたPC2a〜2eの全体で発電可能な最大発電量から20%を減じた発電量で動作するように、MSC3は複数のPC2a〜2eを制御する。計測開始信号S1は、手動により入力される信号でもよいし、予めスケジューリングされるなどして定期的に生成される信号でもよい。
【0021】
なお、一般的な太陽光発電システムにおいては、PCの最大出力よりも、このPCに接続させる太陽電池アレイの発電容量を大きく設置することが多い。これは「過積載」とも呼ばれている。過積載の場合であっても、発電量はPCの最大出力によって制約を受ける。太陽光発電システム10で仮にこの過積載が適用されると、例えば、PC2aの最大出力と、太陽電池アレイ1aの最大発電容量とのうち、小さいほうの値が、PC2aおよび太陽電池アレイ1aの組み合わせの最大出力となる。PC2b〜2eと太陽電池アレイ1b〜1eとの組み合わせも、同様である。
【0022】
MSC3は、計測開始信号S1を受信しない場合には、「通常出力制御」を実行するように構築されている。通常出力制御は、複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力を可変に調整することで太陽光発電システム10に対する総指定発電量を複数のPC2a〜2eに分担させるものである。「通常出力制御」は、「出力補填」とも呼ばれる。出力補填は、複数のPC2a〜2eのうち出力の少ないPCの発電不足分を余力のあるPCの発電分で補うように、MSC3が複数のPC2a〜2eの出力電力を調整するものである。
【0023】
MSC3は、計測開始信号S1を受信した場合には、後述する「第一出力制御」および「第二出力制御」を実行する。MSC3は、計測開始信号S1に応答して、通常出力制御と、第一出力制御および第二出力制御と、を選択的に実行することができる。本明細書では、便宜上、上述した通常出力制御を「第三出力制御」とも称す。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10における複数のPC2a〜2eおよびMSC3の接続関係を示すブロック図である。なお、
図2では、PCグループ21とPCグループ22とを図示している。しかし、これは例示であり、実施の形態1では説明の便宜上、
図1との整合性を取るため、太陽光発電システム10がPCグループ21のPC2a〜2eのみで構成されるものとする。
【0025】
MSC3は、「第一出力制御」と、「第二出力制御」とを実行可能に構築されている。実施の形態1では、複数のPC2a〜2eから選択した一つのPCを「特定PC」とも称す。説明の便宜上、一例として「PC2a」を「特定PC2a」とする。また、実施の形態1では、複数のPC2a〜2eのうち「特定PC」を除くPCを、「残りのPC」とも称す。ここでは、「残りのPC」は、複数のPC2a〜2eのうち特定PC2a以外のPC2b〜2eである。第一出力制御は、特定PC2aが出力する出力電力を予め定めた所定出力電力へと調節する。第二出力制御は、第一出力制御による発電量変化分を、第一出力制御の実行中において、「残りのPC」に分担させるように、「残りのPC」の出力電力を調節する。「発電量変化分」とは、特定PC2aを所定出力電力に調節したことにより特定PC2aの発電量が変化した量のことである。
【0026】
実施の形態1にかかるMSC3は、複数のPC2a〜2eから特定P
Cを一つ選択することができる。実施の形態1にかかるMSC3は、予め定めた順番で、複数のPC2a〜2eのなかで特定P
Cを交代させることもできる。実施の形態1では、第一出力制御が、複数の所定出力電力への調節を含むものとする。実施の形態1では、複数の所定出力電力は、定格出力電力の25%、定格出力電力の50%、定格出力電力の75%、および定格出力電力の100%の4点とする。一例として複数のPC2a〜2eそれぞれが定格出力電力500kW=0.5MWであるものとする。この場合には、定格出力電力の100%は500kWであり、定格出力電力の50%は250kWである。なお、実施の形態1では複数のPC2a〜2eが同じ定格出力電力を持つものとする。
【0027】
「通常出力制御」について詳細に説明する。実施の形態1においては、太陽光発電システム10に「出力制限」が課せられているものとする。出力制限とは、太陽光発電システム10が有する最大発電能力は発揮させずに、一定の制限を課した状態で発電を行わせる仕組みである。出力制限は既に公知の技術であるため、ここでは実施の形態1の説明に関連する項目を説明する。
図1に示す太陽光発電システム10に基づいて、具体的数値を例示して説明する。ただし、以下に述べる数値は、あくまで一例であり、実施される太陽光発電システム10の仕様に応じて様々に変更されうるものである。
【0028】
太陽光発電システム10において、太陽電池アレイ1a〜1eとPC2a〜2eの組み合わせそれぞれの定格出力電力が500kW=0.5MWであるものとする。この場合、太陽光発電システム10のシステム全体では最大で2.5MWの発電が可能である。しかしながら、電力供給過多などの都合があるため、必ずしも常に最大発電量での発電がなされるわけではない。実施の形態1では、一例として、20%の出力制限が実施されているものとする。20%の出力制限が実施されると、仮にシステム全体で現在最大で2.5MWの発電が可能であったとしても、その20%を減じた2.0MWでの発電をするようにメインサイトコントローラ3が複数のPC2a〜2eに出力制限を課す。このとき、複数のPC2a〜2eに対して一律に出力低減が行われてもよく、複数のPC2a〜2eそれぞれが異なる出力電力に調整されてもよい。実施の形態1では、複数のPC2a〜2eそれぞれが異なる出力電力に調整されるものとし、具体的には、下記の表1の状態で通常出力制御が行われているものとする。
【0030】
太陽電池アレイ状態とは、太陽電池アレイ1a〜1eが置かれている個別の状況である。太陽電池アレイ1a、1b、1dは「余力有り」である。「余力有り」とは、発電量を増加させる余地がまだ十分に残されているということである。これに対し、太陽電池アレイ1cは雲30による日陰31に起因して、発電量を増加させる余地が少ない。また、太陽電池アレイ1eは、いくつかの太陽電池モジュールが不調であるため、発電量を増加させる余地が少ない。
【0031】
「PC出力率」とは、PC2a〜2eそれぞれの出力電力の大きさを、定格出力電力を出力100%とした場合の割合で表した値である。太陽電池アレイ1aと接続したPC2aについてみると、定格出力電力の100%が500kW=0.5MWなのに対し、その80%の0.40MWが発電されている。表1において最も右端に示す「システム全体」の欄を見ると、PC出力率の平均が80%である。つまり、20%出力制限が実現されている。
【0032】
次に、実施の形態1において第一出力制御および第二出力制御が行われた場合の運転状態を表2に示す。表2では、一例として、第一出力制御によって特定PC2aの出力電力が30%低減されたときの状態を表している。特定PC2aの発電量低下分(マイナス0.15MW)は、残りのPC2b〜2eの発電量が第二出力制御によってプラス0.15MW追加されることで、補われる。
【0034】
実施の形態1にかかる第一出力制御および第二出力制御と、実施の形態1にかかる通常出力制御とは、少なくとも下記の相違点において互いに相違している。
【0035】
第一の相違点は、総指定発電量と出力制御との関係である。仮に通常出力制御においてシステムに対する総指定発電量が変更された場合には、MSCの指示によって複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力が調整されることもある。この調整は総指定発電量の変更に起因するものであり、実施の形態1における第二出力制御とは異なる。つまり、実施の形態1において、MSC3は、太陽光発電システム10への総指定発電量が変更されたか否かに関わらずつまり総指定発電量が一定の場合であっても、計測開始信号S1に応じて第一出力制御および第二出力制御を実行する。
【0036】
第二の相違点は、出力電力を比較的短時間の間に複数の値に変化させる点である。通常出力制御において、ある一定の時間内に総指定発電量の変更が複数回あった場合には、複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力が何度か調整されることがありうる。しかし、通常出力制御では、総指定発電量が一定とされている時間内に、出力電力が意図的に複数の異なる値に変更されるような特定PC2aが存在することはない。これに対し、実施の形態1にかかる第一出力制御は、総指定発電量が変化しない一定の時間内に、特定PC2aの出力電力を異なる所定出力電力へと次々に積極的に調節していく点で違いがある。
【0037】
第三の相違点は、特定PC2aの「交代」である。通常出力制御において総指定発電量の変更に起因して複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力が調整されることはあっても、その調整は一時的に起きる動作である。これに対し、実施の形態1にかかる第一出力制御は、複数のPC2a〜2eのなかから選択された「特定PC」に対して所定出力電力への調節が行われ、この特定PCが予め定められた順番で交代されていく。一例としては、この特定PCの交代は、PC2a→PC2b→・・・→PC2eという順番で行われてもよい。
【0038】
第四の相違点は、複数のPC2a〜2eの出力電力を変化させる方向の違いである。通常出力制御において総指定発電量の変更に起因して複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力が調整されるときには、総指定発電量の増減に応じて、複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力の増減が互いに同じ傾向となるのが普通である。これに対し、実施の形態1にかかる第一出力制御および第二出力制御は、特定PC2aの発電量変化分を相殺するように残りのPC2b〜2eの出力電力を調整するので、特定PC2aの出力電力と残りのPC2b〜2eの出力電力とが反対方向に変化する。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10における特性データ取得を説明するためのブロック図である。MSC3は、「特性データ取得」を実行するように構築されている。「特性データ取得」とは、第一出力制御の実行中における、特定PC2aの入出力電気特性を取得する処理である。実施の形態1では、特性データ取得は、定格出力電力の25%、50%、75%、および100%の4点における特定PC2aの入出力電気特性を取得するものである。入出力電気特性は、入力直流電圧、入力直流電流、出力交流電圧、および出力交流電流を含む。ただし、電流計6および電圧計7が有する測定誤差を考慮すると、発電量が小さいときの測定データは評価に好ましくないおそれがある。従って、10%以上の出力電力での入出力電気特性に基づいて評価が行われることが好ましい。
【0040】
特性データ取得は、電流計6および電圧計7で読み取られた入出力電気特性をPC2aからMSC3に送信し、この入出力電気特性をMSC3内の記憶媒体に記憶するものであってもよい。あるいは、変形例として、MSC3ではなく特定PC2aが、特性データ取得を実行するように構築されてもよい。つまり、特性データ取得は、電流計6および電圧計7で読み取られた入出力電気特性を特定PC2a内の記憶媒体に記憶するものであってもよい。MSC3および特定PC2aの両方が、特性データ取得を実行するように構築されてもよい。以上のとおり、MSC3および特定PC2aの少なくとも一方が特性データ取得を実行すればよい。記憶媒体は、フラッシュメモリその他の読み取り可能な記録メディアでもよく、ハードディスクおよびSDDなどの大容量記憶デバイスでもよい。
【0041】
図4および
図5は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10におけるPC2a〜2eの動作を説明するための図である。
図4は日射変動とI−V特性カーブおよびP−V特性カーブの関係を示した図である。
図5は太陽電池モジュール温度とI−V特性カーブおよびP−V特性カーブの関係を示した図である。
【0042】
複数のPC2a〜2eそれぞれの出力電力制御は、複数の太陽電池アレイ1a〜1eそれぞれの動作点を調整することによって実現される。この動作点調整は、複数のPC2a〜2eそれぞれが持つインバータ回路5の制御、具体的にはインバータ回路5の入力インピーダンスを調節することで実現される。なお、動作点調整は、例えば日本特開2000−3224号公報の段落0010などにも開示されているように、公知の技術である。
【0043】
図4には、日射量の異なる複数のI−V特性カーブおよびP−V特性カーブが示されている。
図4において、破線がアレイ電流[A]であり、実線がアレイ電力[kW]である。MPPT(Maximum Power Point Tracker)制御が行われると、MPPラインに示された動作点で複数の太陽電池アレイ1a〜1eそれぞれが発電するように、複数のPC2a〜2eの持つインバータ回路5の入力インピーダンスが制御される。例えば
図4では、日射量0.8kW/m
2でのP−V特性カーブにおける最大発電電力動作点Qmと、出力抑制制御動作点Qrとがある。出力抑制制御動作点Qrでは、アレイ電圧Vrおよびアレイ電流Irにより、アレイ電力Prが得られる。アレイ電圧Vrは入力直流電圧であり、
図4においては約460Vの電圧となっている。インバータ回路5の入力インピーダンスが制御されることで、複数のPC2a〜2eの入力直流電圧であるアレイ電圧Vrと、出力電力であるアレイ電力Prと、が変わる。
図4および
図5には、複数のPC2a〜2eそれぞれの最大定格出力電力Pmも図示されている。動作点が制御されることによって、実施の形態1にかかる第一出力制御では、太陽電池アレイ1aのアレイ電力Prが、特定PC2aの定格出力電力の25%、定格出力電力の50%、定格出力電力の75%、および定格出力電力の100%の4点にそれぞれ調節される。
【0044】
特定PC2aが持つインバータ回路5は、インバータ制御回路4により制御されている。インバータ制御回路4は、制御パラメータの一つである出力電力目標値とインバータ回路5の実出力電力とが一致するように、電圧を制御している。「所定出力電力への調節」は、このインバータ制御回路4が出力電力目標値の大きさを所定出力電力に変更し、さらに出力電力目標値を所定出力電力に維持することにより実現される。出力電力目標値が所定出力電力へと変更されることにより、
図4におけるPVカーブ上の動作点が、動作点Qmから動作点Qrへと移動する。出力電力目標値が所定出力電力において調節されることで、動作点Qrにおいて特定PC2aが駆動する。
【0045】
第一出力制御の最中には、理想的には、出力電力の値つまり動作点は動作点Qrで安定的に固定される。ただし、第一出力制御の最中に、現実のフィードバック制御の応答遅れなどに起因して外乱等の影響により動作点が極微小な範囲でずれてしまうことはありうる。このような場合も、出力電力目標値が所定出力電力に変更された後そのまま変わらない場合には、依然として実施の形態にかかる「所定出力電力への調節」が行われているものとする。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10の概要を比較例と比較するためのブロック図である。
図7は、実施の形態に対する比較例にかかる評価システム100を示すブロック図である。
【0047】
図7に示すように、予め定めた基準計測条件において、太陽電池シミュレータ101と模擬系統102とを用いて特定PC2aの基準変換効率を計測することも考えられる。しかしながら、複数のPC2a〜2bそれぞれの変換効率は、複数のPC2a〜2bそれぞれへの入力直流電圧の大きさに左右される。入力直流電圧の大きさは、太陽電池アレイ1a〜1eに含まれる太陽電池モジュールの受光日射量および太陽電池モジュールの温度などの条件に応じて変わる。自然環境は時々刻々と変化するので、現実の太陽光発電システム10では入力直流電圧が完全に一定とはならない。入力直流電圧などの条件が様々に異なると、シミュレータ等で計測した基準変換効率のみでは、太陽光発電システム10への設置後におけるPC2a〜2eの実変換効率を正しく評価できないという問題がある。
【0048】
一方、太陽光発電システム10への設置後における複数のPC2a〜2bそれぞれの実変換効率を正確に記録するために、理想的には、PC性能評価用の太陽光発電システムを実際に構築することも考えられる。しかしながら、現実の太陽光発電システムを性能評価のためだけに構築すると、大きな手間がかかるという問題がある。複数のPC2a〜2bを設置しようとする太陽光発電システム10の規模が大きい場合があり、性能評価用にそのような大規模システムを実際に構築することは現実的ではない。
【0049】
この点、実施の形態1によれば、
図6に示すように、実際の太陽光発電システム10において、現実の自然環境下で、複数のPC2a〜2bそれぞれの実変換効率を精度よく計測することができる。すなわち、実施の形態1によれば、第一出力制御および特性データ取得によって特定PC2aの入出力電気特性を取得するときに、第二出力制御によって特定PC2aの発電量変化分を残りのPC2b〜2eで補うことができる。従って、太陽光発電システム10の発電機能を妨げることなく、実際の太陽光発電システム10内における特定PC2aの入出力電気特性を取得することができる。その結果、実際の設置環境下での入出力電気特性に基づいて、特定PC2aを精度良く評価することができる。
【0050】
特定PC2aの電力低下分又は電力増加分を、残りのPC2b〜2eで十分に相殺できることが好ましい。このため、「残りのPC」の個数は、「特定PC」の個数よりも十分に多いことが好ましい。実施の形態1では、残りのPC2b〜2eの個数は4つであり、特定PC2aの個数よりも十分に多い。
【0051】
図8は本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10におけるPC2a〜2eそれぞれの変換効率を記録したグラフであり、
図9はその部分拡大図である。
【0052】
入出力電気特性は、変換効率を含んでいる。変換効率は、特定PC2aに入力される入力直流電力と入力直流電力に応じた特定PC2aの出力交流電力との比に基づいて定まる。つまり、「変換効率=AC出力電力/DC入力電力」である。
【0053】
MSC3は、複数の基準変換効率を予め記憶している。基準変換効率とは、基準PCの入力直流電圧が特定の直流電圧であるときの、基準PCの出力電力と変換効率との関係を定めたものである。この「基準PC」は、評価の基準とされるPCであり、複数のPC2a〜2eと同一仕様を持っている。
【0054】
MSC3は、
図8に実線で示した第一基準変換効率特性11と、
図8に一点鎖線で示した第二基準変換効率特性12と、
図8に破線で示した第三変換効率特性13と、を記憶している。「基準変換効率特性」とは、出力電力と変換効率との関係を定めた特性カーブである。第一〜第三基準変換効率特性11〜13は、それぞれ、入力直流電圧がDC400V、DC500V、およびDC600Vであるときの基準変換効率特性である。第一〜第三基準変換効率特性11〜13は、複数のPC2a〜2eの設計段階または評価試験段階において「基準PC」の入出力に基づいて作成することができる。
【0055】
図8の点P1〜P5は、入力直流電圧がDC400Vであるときの、出力電力10%、25%、50%、75%、および100%の変換効率の値を示す。なお、以下の説明では、便宜上、入力直流電圧および出力電力の関数という意味で、「η(効率@入力直流電圧、出力電力)」という表現を用いることがある。例えば点P1の変換効率値は、η(効率@400V、10%)として表される。
【0056】
MSC3は、第一基準変換効率特性11と、入力直流電圧が特定の直流電圧であるときに取得した特定PC2aの実変換効率と、の差が予め定めた所定範囲内にあるか否かを判定する。
図9を用いて詳細に説明すると、特定PC2aにおいて入力直流電圧が400Vであるときに取得したデータから、変換効率P21が算出されたとする。この変換効率P21は、DC400Vの第一基準変換効率特性11における変換効率P2と比較される。DC400Vの第一基準変換効率特性11における変換効率P2と実際に測定した変換効率P21との差が、所定範囲内であれば、特定PC2aの変換効率は正常であるという判断が下されてもよい。これにより、変換効率が正常であるかどうかを正確に診断することができる。所定範囲は、一例として0.3%とすることができる。
【0057】
MSC3は、「基準変換効率計算」を実行するように構築されている。入力直流電圧がDC400VとDC500Vとの間の任意の電圧、又はDC500VとDC600Vとの間の任意の電圧であったときには、
図8に示したデータには、入力直流電圧が正確に一致する特性が含まれていない。このような場合に、下記の数式(1)で行われる基準変換効率計算によって、中間の入力直流電圧についての基準変換効率特性を求める。
【0058】
η(効率@420V、70%)=η(効率@400V、70%)×k1+η(効率@500V、70%)×k2 ・・・(1)
ただしk1、k2は下記のとおりである。
k1=0.8
k2=0.2
【0059】
数式(1)は、比例按分によって変換効率の中間値を求める数式である。η(効率@420V、70%)とは、入力直流電圧がDC420Vであり且つ出力電力が70%であるときの変換効率である。η(効率@400V、70%)とは、入力直流電圧がDC400Vすなわち第一基準変換効率特性11上の値であり、且つ出力電力が70%であるときの変換効率である。η(効率@500V、70%)とは、入力直流電圧がDC500Vすなわち第二基準変換効率特性12上の値であり、且つ出力電力が70%であるときの変換効率である。まず、比例按分方法に従って、400Vと420Vとの差分に応じた第一係数k1と、500Vと420Vとの差分に応じた第二係数k2と、を求める。次に、数式(1)の右辺第一項の値を、η(効率@400V、70%)に第一係数(k1=0.8)を乗ずることにより求める。次に、数式(1)の右辺第二項の値を、η(効率@500V、70%)に第二係数(k2=0.2)を乗ずることにより求める。
【0060】
図8の点線Q(DC450V計算値)は、数式(1)の計算によって得られた特性カーブの具体例である。点線Qの特性カーブは、出力電力10%〜100%にわたって求めた、入力直流電圧がDC450Vであるときの変換効率計算値である。入力直流電圧がDC450Vであるときには、比例按分においては第一係数および第二係数を0.5とすればよい。点線Qで例示したように、基準変換効率計算によって中間の変換効率を求めることで、記憶すべき基準変換効率データを抑制しつつ正確な変換効率診断を行うことができる。
【0061】
図10は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システム10で実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図10のルーチンは、MSC3が備えるメモリに予めプログラムの形態で格納されている。
【0062】
図10のルーチンでは、まず、MSC3は、計測を開始すべき指示があったか否かを判定する(ステップS100)。MSC3が計測開始信号S1を受信すると、MSC3のプログラム内における計測モードフラグに1がセットされる。計測モードフラグに1がセットされることで、ステップS100の判定結果はYesとなる。ステップS100で判定結果がNoである限り、MSC3は、通常出力制御すなわち第三出力制御を実行する。
【0063】
ステップS100で判定結果がYesとなると、MSC3は、「特定PCの指定」を実行する(ステップS104)。実施の形態1では、MSC3は、毎回、PC2aを最初の特定PCとして選択するものとする。ただし、特定PCの選択方法はこれに限られるものではない。変形例として、例えば、擬似乱数等を用いて複数のPC2a〜2eのなかからランダム選択を行ってもよい。あるいは、計測開始信号S1を受信した時点で最も出力電力が低いあるいは高いPCを特定PCとして選択してもよい。あるいは、計測開始信号S1を受信した時点で出力電力が平均値に最も近いPCを特定PCとして選択してもよい。
【0064】
次に、MSC3は、ステップS104で選択した特定PC2aに対して第一出力制御を実行する(ステップS106)。第一出力制御における所定出力電力は、前述したように、複数の出力電力値を含んでいる。したがって、第一出力制御は、特定PC2aの出力電力を定格出力電力の25%、50%、75%、100%に予め定めた順番で調節するものである。予め定めた順番は、100%から25%まで順次低下させてもよく、逆に25%から100%まで順次増大させてもよい。実施の形態1では、所定出力電力をはじめに100%に設定し、その後は100%から順次低下させるものとする。すなわち、今回のルーチンにおける初回のステップS106では、所定出力電力が100%とされる。
【0065】
なお、日射量が少なかったり太陽電池モジュール温度が高かったりするなどの影響により、MPPT制御を行ったとしても太陽光発電システム10が定格出力電力と同じ出力を発電できないことがある。このような場合には、出力電力を100%に調節することはできないので、MSC3は、100%への調節をスキップして75%以下の所定出力電力への調整を実行してもよい。あるいは、MSC3は、現時点で実現可能な定格出力電力に最も近い出力電力への調整を実行しつつ、調整中の出力電力値を記憶しておいてもよい。
【0066】
次に、MSC3は、第二出力制御を実行する(ステップS108)。ステップS108では、MSC3は、ステップS106で特定PC2aの出力電力を所定出力電力まで増大させたことによる発電量増加分を算出する。今回は、100%まで増大させたことによる増加分が算出されるものとする。MSC3は、この発電量増加分を残りのPC2b〜2eに相殺させるように、残りのPC2b〜2eの出力電力を低下させる。
【0067】
ステップS108の第二出力制御における発電量変化分の分担方法は、特定PC2aの出力電力を増加する場合と低減する場合とで異なる。つまり、「分担」には、「プラス発電量の分担」と「マイナス発電量の分担」と、がある。「プラス発電量の分担」は、特定PC2aの発電量低下分を補うために、残りのPC2b〜2eの出力電力を増大させるものである。「マイナス発電量の分担」は、特定PC2aの発電量増加分を相殺するために、残りのPC2b〜2eの出力電力を低減するものである。第一出力制御が特定PC2aの出力電力を増加するものであったときは、次のようにしてもよい。一例としては、特定PC2aの発電量増加分を相殺するように残りのPC2b〜2e全ての出力電力が少しずつ低減されてもよく、平均的に低減されてもよい。他の例としては、特定PC2aの発電量増加分を相殺するように残りのPC2b〜2eの一部については出力電力を低減し、残りのPC2b〜2eの他の一部については出力電力を維持してもよい。特定PC2aの出力電力を低減するときもこれらの例と同様にすることができる。
【0068】
次に、MSC3は、特性データ取得を実行する(ステップS110)。このステップでは、
図3を用いて説明したとおり、MSC3が、ステップS106の第一出力制御が実行されている最中の特定PC2aの入出力電気特性を取得する。取得された入出力電気特性の値は、取得時における特定PC2aの出力電力値および入力直流電圧値と対応付けられた状態でMSC3のメモリに記憶される。
【0069】
次に、MSC3は、予め定められた複数の所定出力電力の全てについて特性データ取得が完了したか否かを判定する(ステップS112)。MSC3は、今回のルーチンの初回のステップS106では、所定出力電力=100%であるときの特性データ取得しか実行していない。従って、この時点ではステップS112はNoとなる。
【0070】
ステップS112がNoとなると、MSC3は、予め定めた所定順番で、所定出力電力の値を変更する(ステップS114)。実施の形態1では、所定出力電力を100%から順次低下させるので、所定出力電力に75%がセットされる。これにより所定出力電力の値が更新される。
【0071】
続いて、処理はステップS106に戻る。ステップS114から戻った再度のステップS106において、MSC3は、上記更新された所定出力電力=75%への調節を行うように第一出力制御を実行する。これに応じてMSC3はステップS108で第二出力制御を実行する。その結果、所定出力電力=75%への調節による発電量低下分を相殺するように、残りのPC2b〜2eの出力電力が増加方向へと調節される。続いて、MSC3は、ステップS110において、所定出力電力=75%での第一出力制御の実行中における特性データ取得を実行する。その後、ステップS112およびS114を経て処理がループすることにより、同様の処理が所定出力電力=50%および25%についても行われる。出力電力25%での最後の特性データ取得が終わった後は、その後のステップS112の処理において判定結果がYesとなる。
【0072】
次に、MSC3は、全てのPC2a〜2eについて計測が完了したか否かを判定する(ステップS116)。今回のルーチンにおける初回のステップS116では、特定PCとして選択されたのはPC2aのみである。従ってステップS116の判定結果はNoとなり、処理はステップS118に進む。
【0073】
ステップS118では、MSC3は、予め定めた所定順番で特定PCを交代させる。実施の形態1では、MSC3は、一例としてPC2a→2b→2c→2d→2eの順番で特定PCの選択を行うものとする。このため、今回のルーチンにおける初回のステップS118では、MSC3は、PC2bを特定PCとして選択する。その後、処理はステップS106に戻る。
【0074】
ステップS118からステップS106へと処理が戻ると、MSC3は、交代後の特定PC2bおよび交代後の残りのPC2a、2c〜2eに対して、交代前の特定PC2aのときと同様にステップS106〜S114の処理を実行する。その結果、MSC3は、特定PC2bについても、所定出力電力=100%、75%、50%および25%への第一出力制御と、これらの所定出力電力ごとの特性データ取得と、を実行することができる。また、MSC3は、特定PC2b以外の残りのPC2a、2c〜2eに対する第二出力制御も実行することができる。その後、MSC3は、同様に特定PC2c→2d→2eの順番で特定PCを交代させていくことで、全てのPC2a〜2eに対して、複数の所定出力電力の全てについて、ステップS106〜S114の一連の処理を実行することができる。最後の特定PC2eに対する最後の特性データ取得を終えた後、ステップS112およびステップS116の両方の処理において判定結果がYesとなる。ステップS116で判定結果がYesとなった場合には、MSC3は、計測モードフラグに0をセットした後に次のステップへ進む(ステップS119)。これにより、ステップS100において要求された今回の計測が完了する。
【0075】
次に、MSC3は、効率テーブルを参照する(ステップS120)。効率テーブルとは、
図8および
図9で示した第一〜第三基準変換効率特性11〜13を記憶したテーブルである。MSC3は、このテーブルを内蔵メモリに記憶しており、ステップS120において読み出す。
【0076】
次に、MSC3は、「基準変換効率計算プログラム」を実行する(ステップS122)。ステップS122では、MSC3が、特性データ取得によって取得した多数の入出力電気特性の値を記憶している。下記の表3は、PC2a〜2eそれぞれについてMSC3が取得するデータと、ステップS122およびステップS124で算出されるデータとをまとめたものである。「実変換効率」は、上記のステップS110によって実際に取得された入出力電気特性値を「変換効率=AC出力電力/DC入力電力」という計算式に代入して得られた値である。ステップS122の時点で、MSC3は、PC2a〜2eのデータとして、出力電力25%〜100%に応じた入力直流電圧V
DCa25〜V
DCe100(V)および実変換効率η
ma25〜η
me100を記憶している。基準変換効率(計算値)と、効率差と、正常/異常フラグとは、ステップS122およびステップS124で算出されるデータである。
【0078】
ステップS122では、MSC3が、ステップS120で参照した
図8の効率テーブルと上述した数式(1)とを用いて、基準変換効率η
refa1〜η
refe4を計算する。例えば、実変換効率η
ma75を取得したときの入力直流電圧V
DCa75が、ちょうど400V、500V、あるいは600Vの値をとらなかったとする。この場合、η
ma75を、
図8の効率テーブルに記憶した基準変換効率特性とそのまま比較することはできない。そこで、MSC3は、η
ma75と比較すべき基準変換効率η
refa3を次のようにして求めるための基準変換効率計算プログラムを実行する。
【0079】
基準変換効率計算プログラムは、入力直流電圧の値に基づいて場合分けされている。もし400(V)<V
DCa75(V)<500(V)であるときには、下記の数式(2)に従って計算が行われる。ここでは一例として、V
DCa75=421Vである場合を説明する。
η
refa3=η(効率@V
DCa75、75%)=η(効率@400V、75%)×k1+η(効率@500V、75%)×k2 ・・・(2)
ただしk1、k2は下記のとおりである。
k1=(500−V
DCa75)/(500−400)=(500−421)/100=0.79
k2=(V
DCa75−400)/(500−400)=(421−400)/100=0.21
【0080】
もし500(V)<V
DCa75(V)<600(V)であるときには、下記の数式(3)に従って計算が行われる。
η
refa3=η(効率@V
DCa75、75%)=η(効率@500V、75%)×k1+η(効率@600V、75%)×k2 ・・・(3)
ただしk1、k2は下記のとおりである。
k1=(600−V
DCa75)/(600−500)
k2=(V
DCa75−500)/(600−500)
【0081】
ステップS122の計算内容については、既に
図8および
図9を用いて説明しているので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0082】
次に、MSC3は、測定値が正常であるか否かの判定を行う(ステップS124)。ステップS124では、実変換効率η
ma25〜η
me100それぞれと基準変換効率η
refa1〜η
refe4それぞれとの差が計算される。実施の形態1では、変換効率が正常か異常かの判定基準として用いる所定範囲を、0.3%としている。よって、0.3%ダウン範囲以内の誤差は全て正常と判定され、正常フラグが立てられる。上記の表3では、PC2bにおける出力電力50%のときの効率差が0.3%を超えているので、複数の変換効率のなかで唯一の異常フラグが立てられている。なお、実変換効率が基準変換効率に対して0.3%を超えて大きくなっている場合にも、異常フラグを立てても良い。また、異常判定基準として用いる所定範囲は、基準変換効率の0.3%に限定されない。例えば0.1%などの0.3%より小さな値としてもよく、例えば0.5%などの0.3%より大きな値としても良く、任意の値に設定することができることが好ましい。固定値としなくともよく、太陽光発電システムの設置後に必要に応じて調節できるようにしてもよい。
【0083】
ステップS124で少なくとも一つの異常フラグが立った場合には、ステップS124の判定結果はNoとなる。その後、処理はステップS128に進み、MSC3は、太陽光発電システム10に運転異常があるとの判定履歴を残し(ステップS128)、異常の発生を記録および報知する(ステップS130)。その後、処理はステップS100に戻る。
【0084】
仮にステップS124で全く異常が見つからなかった場合、つまり表3において全て正常フラグが立てられたときには、ステップS124の判定結果はYesとなる。この場合には、MSC3は、今回の測定結果は異常なしであったことを記録する(ステップS126)。その後、処理はステップS100に戻る。
【0085】
処理がステップS100に戻った後、MSC3が計測開始信号S1を再び受信した場合には、上記の一連の処理が再度実行される。
【0086】
以上説明した具体的処理によれば、MSC3は、ステップS106およびS114で特定PC2aの出力電力を異ならしめつつ、複数回の特性データ取得(ステップS110)を行うことができる。一つの特定PC2aを対象にして複数の入出力特性を連続的に取得することができる。複数の所定出力電力それぞれにおいて、予め定めた単位計測時間ずつ、出力電力値を維持してもよい。これにより、個々の入出力特性を確実に計測することができる。
【0087】
上記の具体的処理におけるステップS116およびS118によれば、MSC3は、複数のPC2a〜2eのなかで予め定めた順番で「特定PC」を交代させるように構築されている。特定PC2aを残りのPC2b〜2eのうち一つへと交代させ、続いて二番目の特定PCを更に次のPCへと順番で交代させていくことで、複数のPC2a〜2eの特性データ取得を円滑に進めることができる。
【0088】
図10のルーチンにおけるステップS112およびS114によって、MSC3は、一つの入出力電気特性を取得するための特性データ取得(ステップS110)の後に、特定PC2aの選択を維持したままで特定PC2aの出力電力を次の所定出力電力に調節するように構築されている。具体的には、まず、所定出力電力は、予め定められた複数の所定出力電力(25%〜100%)を含んでいる。第一出力制御(ステップS106)は、ステップS112およびS114の処理ループを介して、特定PC2aを複数の所定出力電力それぞれに調節する。これに応じて、ステップS110の特性データ取得は、複数の所定出力電力それぞれについて特定PC2aの入出力電気特性を取得する。MSC3は、複数の所定出力電力それぞれについての特定PC2aへの特性データ取得が終わった後に、所定順番に従って特定PC2aを他のPCへと交代させる。このような一連の動作によれば、一つの特定PC2aを対象にして複数の入出力特性を連続的に取得し終えるごとに、特定PC2aを二番目の特定PCへと交代させることができる。
【0089】
MSC3は、ステップS108において、分担発電量を算出してもよい。分担発電量とは、特定PC2aが調整されるべき所定出力電力を総指定発電量P0から減じた残りの発電量である。第二出力制御は、この分担発電量を、第一出力制御の実行中に残りのPC2b〜2eに分担させる。これにより、残りのPC2b〜2eで分担すべき分担発電量を正確に特定して第二出力制御を施すことができるので、太陽光発電システム10に要求される発電量を確実に補うことができる。
【0090】
上記の具体的処理によれば、MSC3は、ステップS100において計測開始信号S1に応答して第一出力制御および第二出力制御を実行する。MSC3は、ステップS104〜S118の処理をループさせることで、複数のPC2a〜2eそれぞれに第一出力制御が実施されるように特定PC2aを予め定めた順番で二番目以降のPCへと交代させつつ、交代と並行して「特定PC以外の残りのPC」に対する第二出力制御を実行する。MSC3は、ステップS116において複数のPC2a〜2eそれぞれの特性データ取得を終えたら、ステップS120〜S130の処理の実行後に、ステップS102で通常出力制御を再開する。その後、次回の計測開始信号S1が受信されるまでは、通常出力制御が継続される。これにより、太陽光発電システム10の通常発電を可能な限り妨げることなく、速やかに複数のPC2a〜2eに対する特性データ取得を行うことができる。
【0091】
ステップS106の第一出力制御、ステップS106の第二出力制御、およびステップS110の特性データ取得からなる一連の処理は、比較的短時間で行われることが好ましい。第一出力制御および第二出力制御は、予め定めた所定調節時間だけ出力電力調節を行うものであってもよい。所定調節時間は、数十秒〜一分未満程度でもよく、一分以上〜十分未満でもよい。このような短時間とする理由は次のとおりである。特性データ取得時の自然環境条件がばらつくことを抑える観点からは、
図10のルーチンにおける計測開始後からステップS112の全特性計測特性データ取得を全て終えるまでの間に、日射量の変動が少ないことが好ましく、気温の変動も少ないことが好ましい。さらに、計測開始してから全てのPC2a〜2eに対する全ての特性データ取得を終えるまでの間に、日射量の変動が少ないことが好ましく、気温の変動も少ないことがさらに好ましい。
【0092】
なお、実施の形態1では、MSC3が、上記発明の概要(Summary)における「上位装置」に相当している。
【0093】
図17は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる太陽光発電システム10を示すブロック図である。実施の形態1では、MSC3が制御およびデータ取得の両方を行っている。一方、変形例として、
図17に示すように、上位装置63が、MSC3と、データロガー等のデータ記憶装置64とから構成されてもよい。この場合にはMSC3が制御を担当しデータ記憶装置64がデータ取得を担当する。
図17の変形例では、上位装置
63が、上記発明の概要(Summary)における「上位装置」に相当している。
【0094】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる太陽光発電システム110は、システム構成などの点で実施の形態1と共通している部分がある。一方、実施の形態1と実施の形態2との間の相違点は、MSC3あるいは上位装置63が省略されていること、および、PC2dが「マスタパワーコンディショナ」として用いられて第一出力制御および第二出力制御が実行されることなどである。以下の説明では実施の形態1と同一または相当する構成については同一の符号を付して説明を行うとともに、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通事項は説明を簡略化ないしは省略する。
【0095】
図11は、本発明の実施の形態2にかかる太陽光発電システム110を示す模式図である。
図12は、本発明の実施の形態2にかかる太陽光発電システム110におけるPC2a〜2eの接続関係を示すブロック図である。実施の形態1、2を比較するうえでは、
図11は
図1と対応し、
図12は
図2と対応している。実施の形態1と異なり、実施の形態2ではMSC3が設けられていない。その代わりに、ネットワークシステム40を介して複数のPC2a〜2eが互いに通信可能に接続されている。ネットワークシステム40は、有線ネットワークで構成されてもよく、無線ネットワークで構成されてもよい。実施の形態2では、複数のPC2a〜2eが、「マスタPC」と「スレーブPC」とを含んでいる。以下では、一例としてPC2dがマスタPCであるものとし、PC2a〜2c、2eがスレーブPCであるものとして説明を行う。
【0096】
実施の形態2にかかる太陽光発電システム110では、マスタPC2dが持つ制御マイコン104が、実施の形態1で説明した第一出力制御、第二出力制御、および特性データ取得を実行するように構築されている。
【0097】
また、実施の形態2では、好ましい形態として、複数のPC2a〜2eが「冗長化制御」を実行するように太陽光発電システム110が構築されている。複数のPC2a〜2eが備える制御マイコンには、冗長化制御が実行できるように、冗長化制御プログラムとともに、第一出力制御、第二出力制御および特性データ取得のためのプログラム群が実行可能に記憶されている。
【0098】
図13は、本発明の実施の形態2にかかる太陽光発電システム110の特性データ取得を説明するためのブロック図である。実施の形態2では、マスタPC2dが、スレーブPC2a〜2c、2eに対して、実施の形態1のMSC3と同様に特性データ取得を行うことができる。なお、実施の形態1およびその変形例において、MSC3と特定PC2aの少なくとも一方が特性データ取得を実行可能に構築されることを説明している。実施の形態2においても、マスタPC2dおよび複数のスレーブPC2a〜2c、2eの少なくとも一方が、特性データ取得を実行するように構築されてもよい。
【0099】
実施の形態2では、マスタPC2dがMSC3および上位装置63の代わりを務めるので、MSC3および上位装置63を省略することができる。なお、マスタPC2dおよびスレーブPC2a〜2c、2eの両方が、「特定PC」として選択されうる。つまり、マスタPC2d自身も第一出力制御および第二出力制御の対象になってもよい。マスタPC2dは、必要に応じて、自己に対して第一出力制御および特性データ取得を実行することもでき、さらに自己に対して第二出力制御を実行することもできる。
【0100】
図14は、本発明の実施の形態2にかかる太陽光発電システム110におけるPC2a〜2eのネットワークを示すブロック図である。複数のPC2a〜2eは、冗長化制御を実行可能に構築されている。冗長化制御とは、現在のマスタPCに故障などがあった場合に、複数のスレーブPCから新たなマスタPCを選択するための制御である。複数のPC2a〜2eには、固有のネットワークアドレスNo.001〜005が割り振られている。冗長化制御を実行する制御主体は、複数のPC2a〜2eが備える制御マイコン104である。制御マイコン104には、冗長化制御の内容がプログラミングされている。コンピュータネットワーク等の様々な分野において、冗長化制御技術は公知である。この冗長化制御技術をPC2a〜2eに適用することで、マスタPCに不具合があっても他のスレーブPCを新たなマスタPCとして用いて太陽光発電システム110を維持することができる。
【0101】
図15および
図16は、本発明の実施の形態2にかかる太陽光発電システム110で実行されるルーチンを示すフローチャートである。実施の形態2にかかる冗長化制御は、
図15のフローチャートにおけるステップS200〜S214にかかる処理を実行するものであってもよい。
図15では、一例として、PC2dの制御マイコン104が実行する冗長化制御を説明する。
【0102】
実施の形態2では、具体例として、故障前のPC2aがマスタPCとして選択されていた状態において、PC2a〜2cに故障が発生したときの動作を説明する。説明の便宜上、PC2dを「自機」とも称し、PC2d以外のPC2a〜2c、2eを「他機」とも称す。
図15のルーチンでは、まず、制御マイコン104が、アドレスNo.001のPCつまりPC2aから応答要求を受信したか否かを判定する(ステップS200)。ステップS200では、予め定めた所定判定時間の間に応答要求が受信されなかった場合には判定結果はNoとされる。ステップS202、S204も、アドレスNo.002のPC2bおよびNo.003のPC2cからの応答要求について、ステップS200と同様の処理が実行される。ステップS200〜S204において、制御マイコン104が、ネットワークシステム40を介して自機PC2dが他機PC2a〜2c、2eから応答要求を受信したか否かを判定する。ステップS200〜S204のいずれかで他機PC2a〜2c、2eのいずれかから応答要求が受信された場合には、制御マイコン104は、PC2dをスレーブPCに設定し(ステップS206)、返答信号を発し(ステップS207)、その後通常運転させる(ステップS208)。これにより、他機PC2a〜2c、2eのうち応答要求を発した送信元のPCがマスタPCとして作動する。PC2dは、実施の形態1でMSC3から制御されたのと同様にマスタPCから制御される。
【0103】
ステップS200〜S204のいずれにおいても応答要求が受信されなかった場合には、制御マイコン104は、自機PC2dを新たなマスタPC2dに設定する(ステップS210)。自機PC2dをマスタPC2dに設定した場合には、制御マイコン104は、ネットワークに対して応答要求を送信する(ステップS212)。制御マイコン104は、複数のPC2a〜2eのうち自機PC2dが送信した応答要求に対して返答信号があった応答他機PCを、今回のスレーブPCに設定する(ステップS214)。ネットワーク上での故障レベルは様々であり、動作が全く不能な重度の場合もあれば、一部の動作のみが不能な軽度の場合もある。実施の形態2の具体的処理では、説明の便宜上、一例として、PC2a〜2cはマスタPCとしての処理に異常があったものの、PC2a〜2cは返答信号を出力しスレーブPCとしては作動できるものとする。この場合、PC2dは、PC2a〜2c、2eをスレーブPCとして設定する。
【0104】
なお、
図15では一例としてPC2dの制御マイコン104の制御内容について説明したが、他のPC2a〜2c、2eが持つ制御マイコン104についても同様の処理を実行させる。すなわち、制御マイコン104は、まず、ステップS200〜S204と同様に「自機PCよりもアドレス番号が若いPC」からの応答要求を待つ。「自機PCよりもアドレス番号が若いPC」からの応答要求を受信すれば自機PCをスレーブPCに設定し、「自機PCよりもアドレス番号が若いPC」からの応答要求を受信できなかった場合には自機PCをマスタPCに設定すればよい。これにより複数のPC2a〜2eが自動的にマスタおよびスレーブの割り当てを実行することができる。
【0105】
スレーブPC2a〜2c、2eの設定が終わると、次に、PC2dの制御マイコン104は、計測モードフラグに1が設定されているか否かを判定する(ステップS216)。ステップS216は、実施の形態1においてMSC3がステップS100で実行した処理と同様の処理とすることができる。
【0106】
ステップS216の判定結果がNoである場合には、PC2dの制御マイコン104は、通常出力制御を実行する(ステップS218)。ステップS218は、実施の形態1においてMSC3がステップS102で実行した処理と同様の処理とすることができる。
【0107】
ステップS216の判定結果がYesである場合には、PC2dの制御マイコン104は、計測運転を開始する(ステップS220)。
図16は、ステップS220の計測運転処理を示すフローチャートである。
図16は、
図15におけるステップS220の内容をサブルーチン化したものである。
図16のフローチャートの内容は、実施の形態1における
図10のフローチャートと同様である。つまり、制御マイコン104には、実施の形態1における
図10のフローチャートを実行するためのプログラムデータと同等のプログラムデータが記憶されている。
【0108】
実施の形態1でMSC3に施した変形と同様に、実施の形態2における制御マイコン104の制御内容に変形を施してもよい。
【0109】
図18は、本発明の実施の形態1にかかるMSC3のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0110】
MSC3の機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用ハードウェア50であってもよい。処理回路は、プロセッサ51及びメモリ52を備えていてもよい。処理回路は、一部が専用ハードウェア50として形成され、更にプロセッサ51及びメモリ52を備えていてもよい。
図18は、処理回路が、その一部が専用ハードウェア50として形成され、プロセッサ51及びメモリ52を備えている場合の例を示している。
【0111】
処理回路の少なくとも一部が、少なくとも1つの専用ハードウェア50である場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0112】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ51及び少なくとも1つのメモリ52を備える場合、MSC3の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。プロセッサ51は、メモリ52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、およびDSPとも呼ばれる。メモリ52は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、およびEEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ等が該当する。
【0113】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、MSC3の各機能を実現することができる。
【0114】
なお、実施の形態2にかかるPC2a〜2eが持つ制御マイコン104の各機能も、
図18に示す処理回路と同様の処理回路により実現されてもよい。
【0115】
実施の形態1では、MSC3が、第一出力制御を実行開始した後に第二出力制御を実行開始している。また、実施の形態2では、マスタPC2dが、第一出力制御を実行開始した後に第二出力制御を実行開始している。しかしながら、実施の形態1、2において、第一出力制御と第二出力制御のどちらが先に実行開始されるかは問われない。第一出力制御と第二出力制御とが時間的に重複して実行されることで、「特定PCの発電量変化分が残りのPCに分担させられている状態」を作り出せばよい。これにより、特定PC2aの発電量変化分について太陽光発電システム10、100の全体でバランスを取ることができるからである。従って、変形例として、実施の形態1にかかるMSC3または実施の形態2にかかるマスタPC2dが、特定PC2aの選択が行われた後に第二出力制御を第一出力制御よりも先に実行開始してもよい。他の変形例として、MSC3またはマスタPC2dが、第一出力制御と第二出力制御の実行を同時に開始してもよい。いずれの場合にも、総指定発電量P0を超えない範囲内で第一出力制御と第二出力制御とが実行されることが好ましい。
【0116】
実施の形態1および実施の形態2にかかる太陽光発電システム10、110の制御手順は、実施の形態にかかる太陽光発電方法として提供されてもよい。既設の太陽光発電システムに対して事後的に制御プログラム等を追加することによっても、実施の形態にかかる太陽光発電方法を実施することができる。実施の形態にかかる太陽光発電方法は、第一ステップと第二ステップとを備える。第一ステップは、第一出力制御によって特定PC2aの出力電力を所定出力電力に調節した状態で特定PC2aの入出力電気特性を測定するステップである。第二ステップは、特定PC2aを所定出力電力に調節したことによる発電量変化分を入出力電気特性の測定中に特定PC2a以外の残りのPC2b〜2eに分担させるように、残りのPC2b〜2eの出力電力を調整するステップである。これらの第一ステップおよび第二ステップは、互いに時間的に重複して実行されればよい。第一ステップおよび第二ステップは、どちらか一方を先に実行開始してもよく、あるいは同時に実行開始してもよい。
【0117】
なお、実施の形態2における「冗長化制御」のみを、複数のPC2a〜2eの入出力電気特性を計測する目的とは切り離して、単独で実施しても良い。この冗長化制御は、マスタPCおよびスレーブPCを持つ太陽光発電システムに適用することができる。