特許第6842265号(P6842265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842265
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】加熱装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/20 20170101AFI20210308BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C01B32/20
   H05B3/00 340
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-182950(P2016-182950)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-48036(P2018-48036A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬嶋 一隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏樹
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−078111(JP,A)
【文献】 特開2014−080314(JP,A)
【文献】 特開2003−292376(JP,A)
【文献】 特開2012−199204(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101134678(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とを、炭素系粒子からなる骨材を含有している炭素系接着剤が炭素化して得られた接着層を挟んで一体化する黒鉛構造物を用いた加熱装置の製造方法であって、
前記第1黒鉛部材と前記第2黒鉛部材とを前記炭素系接着剤を用いて接合する接合工程と、
非酸化性ガス雰囲気で前記第1黒鉛部材に備えられた第1の電極と前記第2黒鉛部材に備えられた第2の電極との間に通電することにより前記炭素系接着剤を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程と、
前記黒鉛構造物を前記加熱装置にセットし、前記加熱装置に備えられた熱源を加熱し、前記炭素系接着剤を完全に炭素化させる空焼き工程と、
を含み、
前記炭素化工程は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に、パルス電圧を加え、加熱することを特徴とする加熱装置の製造方法。
【請求項2】
第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とを、炭素系粒子からなる骨材を含有している炭素系接着剤が炭素化して得られた接着層を挟んで一体化する黒鉛構造物を用いた加熱装置の製造方法であって、
前記第1黒鉛部材と前記第2黒鉛部材とを前記炭素系接着剤を用いて接合する接合工程と、
非酸化性ガス雰囲気で前記第1黒鉛部材に備えられた第1の電極と前記第2黒鉛部材に備えられた第2の電極との間に通電することにより前記炭素系接着剤を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程と、
前記黒鉛構造物を前記加熱装置にセットし、前記加熱装置に備えられた熱源を加熱し、前記炭素系接着剤を完全に炭素化させる空焼き工程と、
を含み、
前記炭素化工程は、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記炭素系接着剤を複数の領域に分割するよう配設され、前記炭素系接着剤を部分的に炭素化させることを特徴とする加熱装置の製造方法。
【請求項3】
前記炭素化工程は、前記第1の電極及び/または前記第2の電極の位置を変えて複数回に分けて炭素系接着剤全体を炭素化させることを特徴とする請求項に記載の加熱装置の製造方法。
【請求項4】
第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とを、炭素系粒子からなる骨材を含有している炭素系接着剤が炭素化して得られた接着層を挟んで
一体化する黒鉛構造物を用いた加熱装置の製造方法であって
記第1黒鉛部材と前記第2黒鉛部材とを前記炭素系接着剤を用いて接合する接合工程と、
非酸化性ガス雰囲気で前記第1黒鉛部材に備えられた第1の電極と前記第2黒鉛部材に備えられた第2の電極との間に通電することにより前記炭素系接着剤を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程と
記黒鉛構造物を前記加熱装置にセットし、前記加熱装置に備えられた熱源を加熱し、前記炭素系接着剤を完全に炭素化させる空焼き工程を有することを特徴とする加熱装置の製造方法。
【請求項5】
前記炭素化工程は、前記炭素系接着剤が囲まれるようカバーで覆い前記非酸化性ガス雰囲気を局所的に形成することを特徴とする請求項4に記載の加熱装置の製造方法。
【請求項6】
前記炭素系接着剤は、COPNA樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂、ポ
リイミド、ピッチのうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
1項に記載の加熱装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛構造物の製造方法及びそれを用いた加熱装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛材料は、耐熱性が高く、化学的に安定な材料である。このため、様々な工業炉、半導体製造装置などで治具、坩堝、装置用部品などとして広く使用されている。近年、製品の大型化、大量生産のため、大型の装置が求められるようになりこれに伴って、大型の黒鉛材料が求められるようになった。
【0003】
黒鉛材料は、一般にコークス、バインダピッチを混練し、粉砕し、CIP成形機でプレス成形したのち、焼成、黒鉛化を経て製造される。CIP成形機は、加圧液中に原料の入ったバックを沈め、加圧液に高い圧力を加える装置であり、それ故、圧力容器は高い圧力に耐えるため、CIP成形機は巨大な設備となる。このためCIP成形機は黒鉛材料の大型化を制約する大きな要因になっていた。
【0004】
また、黒鉛材料は高温の空気によって酸化するため、焼成炉、黒鉛化炉では、素材が酸化しないように外気を遮断する工夫がなされている。例えば、焼成炉では焼成缶に詰めた上でパッキングコークスに埋める、不活性ガス中で加熱する、黒鉛化炉では、パッキングコークスに埋める、不活性ガス中で加熱する、などの方法により黒鉛材料が酸化しないように処理が行われている。このため、酸素を遮断しながら処理のできる焼成炉、焼成缶、黒鉛化炉のサイズが、黒鉛材料の大型化を制約する。また、焼成、黒鉛化ではサイズが大きくなるほど中心部と外表面の温度差が大きくなり、温度差による割れが生じやすいことが黒鉛材料の大型化を制約する要因になっていた。
【0005】
特許文献1には、縮合多環芳香族化合物、芳香族架橋剤、酸触媒が反応してなる熱硬化性組成物から成る接着剤と、被着材とが、前記被着材と前記接着剤の界面において、前記芳香族架橋剤を主体とする表面処理剤若しくは添加剤を有する結合を有し、かつ前記接着剤が導電性化促進触媒によって実質的に導電性を示す共役形系を形成して成ることを特徴とする導電性接着構造物が記載されている。さらに、特にピッチ系COPNA樹脂組成物接着剤は著しく高い炭化収率を有するため、炭素、黒鉛、炭素前駆体を上記方法に従って接着した後、これを焼成、黒鉛化することにより接着部は完全に炭化、黒鉛化し、従来の炭素、黒鉛材の機械加工を大幅に簡略化し、コストを下げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−135580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明は、黒鉛材を接着したのち、焼成、黒鉛化するプロセスを利用して製造している。しかしながら、それぞれ個別に製造された黒鉛材料を接着し、焼成、黒鉛化することにより、大きなサイズの黒鉛構造物が得られているので、CIP成形機のサイズの制約、焼成、黒鉛化段階での割れの問題は解消されているものの、黒鉛化炉、焼成炉によるサイズの制約は解消されていない。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑み、黒鉛化炉、焼成炉を用いることなく、黒鉛部品を接着し黒鉛構造物を得る、黒鉛構造物の製造方法及びそれを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の黒鉛構造物の製造方法は、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とを、炭素系接着剤が炭素化して得られた接着層を挟んで一体化する黒鉛構造物の製造方法であって、前記黒鉛構造物の製造方法は、前記第1黒鉛部材と前記第2黒鉛部材とを前記炭素系接着剤を用いて接合する接合工程と、非酸化性ガス雰囲気で前記第1黒鉛部材に備えられた第1の電極と前記第2黒鉛部材に備えられた第2の電極との間に通電することにより前記炭素系接着剤を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の黒鉛構造物の製造方法によれば、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材に挟まれた炭素系接着剤を第1の電極と第2の電極間に通電することより抵抗加熱して炭素化しているので、発熱は抵抗の高い炭素系接着剤に集中し、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材全体を暖めることなく炭素系接着剤を炭素化させることができる。このため、全体を加熱炉に入れることができなくても、炭素系接着剤層を炭素化し接合することができる。したがってサイズの制約を受けることがなく、大型の黒鉛構造物であっても容易に得ることができる。
【0011】
また、本発明の黒鉛材料の製造方法は次の態様であることが好ましい。
【0012】
前記炭素系接着剤は、炭素系粒子からなる骨材を含有している。
【0013】
本発明の黒鉛構造物は、炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を有しているので、炭素系接着剤の固有抵抗を低下させるよう機能する。黒鉛構造物の電極間の抵抗値は、炭素系接着剤の抵抗値が支配的である。電極間の抵抗は炭素系接着剤の炭素化に伴って大きく変化する。炭素化が進行した箇所は電流が流れ発熱しやすく、進行していない箇所では電流が流れにくく発熱しにくくなるため、発熱に偏りが生じやすくなり、炭素化しにくい箇所が生じやすくなる。本発明の黒鉛構造物は、炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を有しているので、炭素化工程の最初の段階で電流の偏りが生じにくくなるため第1の電極と第2の電極に挟まれた部分では、全体をムラ無く炭化させ接合することができる。
【0014】
また、炭素系接着剤の炭素化の初期段階と最終段階では、必要となる電源の特性が大きく異なり炭素化工程の初期段階では電力エネルギーが炭素系接着剤に加わりにくい。炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を含有することによって、炭素系接着剤の初期の抵抗を低下させ、炭素化工程における抵抗の変動幅を小さくし、炭素化工程の初期段階で発熱しやすくすることができる。
【0015】
前記炭素系接着剤は、COPNA樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂、ポリイミド、ピッチのうち少なくとも一つである。
【0016】
本発明の黒鉛構造物によれば、COPNA樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂、ポリイミド、ピッチ等からなる炭素系接着剤を用いているので効率よく炭素化し、良好な接着層を形成することができる。
【0017】
前記炭素化工程は、前記炭素系接着剤が囲まれるようカバーで覆い前記非酸化性ガス雰囲気を局所的に形成する。
【0018】
本発明の炭素化工程は、前記炭素系接着剤が囲まれるようカバーで覆い非酸化性ガス雰囲気を局所的に形成し、第1の電極と第2の電極との間で局所的に発熱させているので黒鉛構造物全体を非酸化性雰囲気にしなくても黒鉛構造物の酸化を防止することができる。このため、大きな黒鉛構造物を容易に得ることができる。
【0019】
前記炭素化工程は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に、パルス電圧を加え、加熱する。
【0020】
本発明によれば、第1の電極と第2の電極との間にパルス電圧を加えているので、高い電圧が電極間に加わり炭素系接着剤に絶縁破壊の作用で電流のパスができ、より多くの電流が流れるようできる。このため、単に炭素系接着剤の抵抗の場合より多くの発熱が可能となり、より効率的に炭素化させることができる。
【0021】
前記炭素化工程は、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記炭素系接着剤を複数の領域に分割するよう配設され、前記炭素系接着剤を部分的に炭素化させる。
【0022】
本発明によれば、炭素系接着剤を部分的に炭素化させる。このため、抵抗加熱によって高温になっている部位は周囲と比較し熱膨張によって強い圧縮応力が加わっている。このため、炭素化時に圧力を加えながら処理することができるので、良好な接着層を形成することができる。
【0023】
前記炭素化工程は、前記第1の電極及び/または前記第2の電極の位置を変えて複数回に分けて炭素系接着剤全体を炭素化させる。
【0024】
本発明の黒鉛構造物の炭素化工程は、第1の電極及び/または第2の電極の位置を変えて複数回に分けて炭素系接着剤全体を炭素化させているので、炭素系接着剤に生じる熱歪みを抑えながら接着層を形成することができる。
【0025】
前記課題を解決するための本発明の加熱装置の製造方法は、前記黒鉛構造物を前記加熱装置にセットし、前記加熱装置に備えられた熱源を加熱し、前記炭素系接着剤を完全に炭素化させる空焼き工程を有する。
【0026】
本発明の加熱装置の製造方法は、上記黒鉛構造物の製造方法に加え、さらに空焼き工程を有しているので、上記炭素化工程で充分に熱が加わらなかったとしても実際の加熱装置を用いた空焼き工程で上記黒鉛構造物を完全に炭素化させ、加熱装置の使用中に黒鉛構造物からのガスの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の黒鉛構造物の製造方法によれば、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材に挟まれた炭素系接着剤を第1の電極と第2の電極間に通電することより抵抗加熱して炭素化しているので、発熱は抵抗の高い炭素系接着剤に集中し、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材全体を暖めることなく炭素系接着剤を炭素化させることができる。このため、全体を加熱炉に入れることができなくても、炭素系接着剤層を炭素化し接合することができる。したがってサイズの制約を受けることがなく、大型の黒鉛構造物であっても容易に得ることができる。
【0028】
本発明の加熱装置の製造方法は、上記黒鉛構造物の製造方法に加え、さらに空焼き工程を有しているので、上記炭素化工程で充分に熱が加わらなかったとしても実際の加熱装置を用いた空焼き工程で上記黒鉛構造物を完全に炭素化させ、加熱装置の使用中に黒鉛構造物からのガスの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の黒鉛構造物の製造方法を示す工程フロー図である。
図2】本発明の加熱装置の製造方法を示す工程フロー図である。
図3図3の黒鉛構造物の内部の電流の流れの一例を示す説明図である。
図4】本発明の黒鉛構造物の製造方法の炭素化工程において、炭素系接着剤を複数の領域に分割して電流を流す場合の一例を示す説明図である。
図5】本発明の黒鉛構造物の製造方法の炭素化工程の一例を示す説明図であり、カバーを用いて非酸化ガス雰囲気を形成している。
図6】本発明の加熱装置の製造方法の空焼き工程を示す説明図であり、黒鉛構造物が熱源とともに加熱装置内に備えられている一例を示す。
【0030】
(発明の詳細な説明)
前記課題を解決するための本発明の黒鉛構造物の製造方法は、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とを、炭素系接着剤が炭素化して得られた接着層を挟んで一体化する黒鉛構造物の製造方法であって、前記黒鉛構造物の製造方法は、前記第1黒鉛部材と前記第2黒鉛部材とを前記炭素系接着剤を用いて接合する接合工程と、非酸化性ガス雰囲気で前記第1黒鉛部材に備えられた第1の電極と前記第2黒鉛部材に備えられた第2の電極との間に通電することにより前記炭素系接着剤を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程と、を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明の黒鉛構造物の製造方法によれば、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材に挟まれた炭素系接着剤を第1の電極と第2の電極間に通電することより抵抗加熱して炭素化しているので、発熱は抵抗の高い炭素系接着剤に集中し、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材全体を暖めることなく炭素系接着剤を炭素化させることができる。このため、全体を加熱炉に入れることができなくても、炭素系接着剤層を炭素化し接合することができる。したがってサイズの制約を受けることがなく、大型の黒鉛構造物であっても容易に得ることができる。
【0032】
また、本発明の黒鉛材料の製造方法は次の態様であることが好ましい。
【0033】
前記炭素系接着剤は、炭素系粒子からなる骨材を含有している。
【0034】
本発明の黒鉛構造物は、炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を有しているので、炭素系接着剤の固有抵抗を低下させるよう機能する。黒鉛構造物の電極間の抵抗値は、炭素系接着剤の抵抗値が支配的である。電極間の抵抗は炭素系接着剤の炭素化に伴って大きく変化する。炭素化が進行した箇所は電流が流れ発熱しやすく、進行していない箇所では電流が流れにくく発熱しにくくなるため、発熱に偏りが生じやすくなり、炭素化しにくい箇所が生じやすくなる。本発明の黒鉛構造物は、炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を有しているので、炭素化工程の最初の段階で電流の偏りが生じにくくなるため第1の電極と第2の電極に挟まれた部分では、全体をムラ無く炭化させ接合することができる。
【0035】
また、炭素系接着剤の炭素化の初期段階と最終段階では、必要となる電源の特性が大きく異なり炭素化工程の初期段階では電力エネルギーが炭素系接着剤に加わりにくい。炭素系接着剤に炭素系粒子からなる骨材を含有することによって、炭素系接着剤の初期の抵抗を低下させ、炭素化工程における抵抗の変動幅を小さくし、炭素化工程の初期段階で発熱しやすくすることができる。
【0036】
炭素系粒子としては、特に限定されないが、例えば黒鉛、コークス、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また炭素系粒子の大きさは、時に限定されないが粒子径が50μm以下であることが好ましい。粒子径が50μm以下であると接着層の厚さを薄くすることができるので、形状精度を高くすることができる。
【0037】
前記炭素系接着剤は、COPNA樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂、ポリイミド、ピッチ等である。
【0038】
本発明の黒鉛構造物によれば、COPNA樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂、ポリイミド、ピッチ等からなる炭素系接着剤を用いているので効率よく炭素化し、良好な接着層を形成することができる。
【0039】
前記炭素化工程は、前記炭素系接着剤が囲まれるようカバーで覆い前記非酸化性ガス雰囲気を局所的に形成する。
【0040】
本発明の炭素化工程は、前記炭素系接着剤が囲まれるようカバーで覆い非酸化性ガス雰囲気を局所的に形成し、第1の電極と第2の電極との間で局所的に発熱させているので黒鉛構造物全体を非酸化性雰囲気にしなくても黒鉛構造物の酸化を防止することができる。このため、大きな黒鉛構造物を容易に得ることができる。
【0041】
前記炭素化工程は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に、パルス電圧を加え、加熱する。
【0042】
本発明によれば、第1の電極と第2の電極との間にパルス電圧を加えているので、高い電圧が電極間に加わり炭素系接着剤に絶縁破壊の作用で電流のパスができ、より多くの電流が流れるようできる。このため、単に炭素系接着剤の抵抗の場合より多くの発熱が可能となり、より効率的に炭素化させることができる。
【0043】
前記炭素化工程は、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記炭素系接着剤を複数の領域に分割するよう配設され、前記炭素系接着剤を部分的に炭素化させる。
【0044】
本発明によれば、炭素系接着剤を部分的に炭素化させる。このため、抵抗加熱によって高温になっている部位は周囲と比較し熱膨張によって強い圧縮応力が加わっている。このため、炭素化時に圧力を加えながら処理することができるので、良好な接着層を形成することができる。
【0045】
前記炭素化工程は、前記第1の電極及び/または前記第2の電極の位置を変えて複数回に分けて炭素系接着剤全体を炭素化させる。
【0046】
本発明の黒鉛構造物の炭素化工程は、第1の電極及び/または第2の電極の位置を変えて複数回に分けて炭素系接着剤全体を炭素化させているので、炭素系接着剤に生じる熱歪みを抑えながら接着層を形成することができる。
【0047】
前記課題を解決するための本発明の加熱装置の製造方法は、前記黒鉛構造物を前記加熱装置にセットし、前記加熱装置に備えられた熱源を加熱し、前記炭素系接着剤を完全に炭素化させる空焼き工程を有する。
【0048】
本発明の加熱装置の製造方法は、上記黒鉛構造物の製造方法に加え、さらに空焼き工程を有しているので、上記炭素化工程で充分に熱が加わらなかったとしても実際の加熱装置を用いて空焼き工程で上記黒鉛構造物を完全に炭素化させ、加熱装置の使用中に黒鉛構造物からのガスの発生を防止することができる。
本発明の加熱装置としては、黒鉛構造物を備え、黒鉛構造物を加熱する熱源を有していればどのようなものでもよく、特に限定されない。加熱装置としては例えば蒸着装置、熱処理炉、加熱炉、焼成炉、半導体製造装置などが挙げられる。
【0049】
(発明を実施するための形態)
まずは、本発明の黒鉛構造物と、本発明の加熱装置との関係を説明する。
【0050】
本発明の黒鉛構造物1は、接合工程、炭素化工程とからなる。得られた黒鉛構造物1はそのまま黒鉛構造物1を用いた加熱装置に組み込んで使用することができる。さらに本発明の黒鉛構造物1は、加熱装置に備えられた加熱手段を用いて空焼きし、より炭素系接着剤の炭素化を促進することもできる。加熱装置に組み込まれた黒鉛構造物1を空焼きすることにより、後述する炭素系接着剤13を完全に炭素化させることができ、炭素系接着剤13から発生する分解ガスの発生を抑制した加熱装置を提供することができる。
【0051】
図1に示す黒鉛構造物1の工程フローは、接合工程S1と炭素化工程S2とを含む黒鉛構造物1の製造方法を示している。接合工程S1では後述する第1黒鉛部材11及び第2黒鉛部材12を炭素系接着剤13を用いて接着する。さらに非酸化性ガス雰囲気で第1黒鉛部材11に備えられた第1の電極21と第2黒鉛部材12に備えられた第2の電極22との間に通電することにより炭素系接着剤13を抵抗加熱し炭素化させる炭素化工程S2を有している。
【0052】
図2に示す加熱装置の工程フローは、図1に示す黒鉛構造物1の製造工程に加えてさらに空焼き工程S3を有している。空焼き工程S3では、黒鉛構造物1を使用する加熱装置に黒鉛構造物1をセットし、加熱装置に備えられた熱源を加熱することにより炭素系接着剤13を完全に炭素化させる。実際に黒鉛構造物1を使用する加熱装置で加熱するので、黒鉛構造物1に加わる熱を使用前に加えることができ、炭素系接着剤13から放出される熱分解ガスをあらかじめ除去することができる。
【0053】
本発明の黒鉛構造物1の炭素化工程S2は、どのように通電してもかまわない。通電する場所は、炭素系接着剤13全体を発熱させるように均等に電流を流してもよく、エリアを分けて発熱させるよう電流を流してもよい。電流は、時間変動のない直流の電流であっても、交流の電流であってもよい。また、瞬間的に高いパルス電圧を繰り返し加える流し方であってもよい。
【0054】
図3は、本発明の黒鉛構造物1の製造方法の炭素化工程S2の一例を示す説明図である。黒鉛構造物1は、第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12と炭素系接着剤13とを備えている。第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12とは炭素系接着剤13で接合されている。炭素系接着剤13は、例えばCOPNA樹脂であり内部に炭素粒子である骨材14を含有している。骨材14は炭素系接着剤13のフィラーとしても機能する。炭素系接着剤13は、第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12を通じて均等に電流を流すことにより発熱して、第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12とを接合一体化する。本例では、単一の第1の電極21と単一の第2の電極22との間で通電がされている。
【0055】
図4は、本発明の黒鉛構造物1の製造方法の炭素化工程S2の別の一例を示す説明図である。第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12とは炭素系接着剤13で接合されている。炭素系接着剤13は、例えばCOPNA樹脂であり内部に炭素粒子である骨材14を含有している。
【0056】
炭素系接着剤13は、第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12を通じて電流を流すことにより、発熱する。なお、第1黒鉛部材11には、複数、本例では三つの第1の電極21(211、212、213)が設けられ、第2黒鉛部材12には、単一の第2の電極22が設けられている。そして、時間を区切って電流を流すよう第1の電極21(211、212、213)が切り替えられる。例えば図4の上段に示すように第1の電極21(211)から通電がされた後、中段に示すように第1の電極21(212)から通電がされ、その後、下段に示すように第1の電極21(213)から通電がされ、このサイクルが繰り返される。すなわち、炭素系接着剤13を複数の領域に分割し、第1の電極21の位置を変えて電流を流す方式になっている。このため、電流を流す第1の電極21の近傍を選択的に発熱させることができるので、電流を流す部位を適宜切り替えることにより炭素系接着剤13の炭化の進行を偏ることなく進行させることができる。
【0057】
炭素系接着剤13はあらかじめ加熱され硬化させられていることが好ましい。硬化の温度は特に限定されないが、たとえば80〜250℃である。80℃以上であれば炭素系接着剤の硬化を十分に促進させることができ、後の炭素化工程S2で第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とが分離することなく全体の形状を維持することができる。250℃以下であれば、炭素系接着剤13部分にひずみが生じないように黒鉛構造物全体を加熱しても、第1黒鉛部材11及び第2黒鉛部材12の酸化が進行しない。このため第1黒鉛部材及び第2黒鉛部材を劣化させることなく容易に熱硬化させることができる。
【0058】
本発明の黒鉛構造物1は、炭素系接着剤13で形成される接着層の数、形状は特に限定されない。
【0059】
複数の接着層が連続的に並んで構成されている場合には、直線状に長い黒鉛構造物1を得ることができる。たとえば、パイプ、棒、板状などさまざまな形状の黒鉛構造物1を得ることができる。ここで板状の黒鉛構造物1とは、単に一方向につながった細長い板を示す。
【0060】
複数の黒鉛部材が格子状に配列している場合には、たとえば面方向の広がりを持った板状などの黒鉛構造物を得ることができる。ここで板状の黒鉛構造物とは二方向につながった幅の広い板を示す。
【0061】
本発明の黒鉛構造物1は、直線状(一方向)、面状(二方向)に限定されず、三方向につながった立体的な黒鉛構造物であってもよい。
【実施例】
【0062】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
図5は、本発明の黒鉛構造物1の製造方法の炭素化工程S2の別の一例を示す説明図である。第1黒鉛部材11の一部と第2黒鉛部材12の一部と、炭素系接着剤13とをカバー30で覆い、カバー30の内部に窒素ガスをフローさせ非酸化性ガス雰囲気を形成している。炭素系接着剤13を挟んで第1黒鉛部材11と第2黒鉛部材12にそれぞれ複数、本例では三つの第1の電極21(211、212、213)、第2の電極22(221、222、223)が備えられ、第1の電極21(211、212、213)、第2の電極22(221、222、223)からカバー30の外に導線25が引き出されている。
【0064】
炭素化工程S2では、3対の電極に順次電流を流し、1対の電極21、22(第1の電極および第2の電極)にはさまれた炭素系接着剤13を部分的に発熱させる。すなわち、炭素系接着剤13を複数の領域に分割し、第1の電極21及び/または第2の電極22の位置を変えて電流を流す方式になっている。局部的に発熱しているので、それ以外の部分は加熱されにくいので、炭素系接着剤13が軟化することがなく、全体の形状を保持したまま、炭素化を進行させることができる。また、加熱している部分は、第1黒鉛部材11及び第2黒鉛部材12が膨張して炭素系接着剤13には強い圧縮応力が加わっている。圧縮応力が加わりながら炭素化が進行しているので、強固な接着層を形成することができる。
【0065】
次に場所を変えて、すなわち第1の電極21(211、212、213)及び/または第2の電極22(221、222、223)各々について、通電対象として選択すべき電極を変えて電極に通電する。2回目以降の通電では、すでに炭素系接着剤13が炭素化した接着層が形成されている。炭素化が進行した接着層は熱による軟化がないので、炭素化前の熱硬化した炭素系接着剤13が熱で軟化しても全体の形状が変形しないよう保持することができる。
【0066】
図6は、本発明の加熱装置50の製造方法の空焼き工程S3を示す説明図であり、黒鉛構造物1が熱源40とともに加熱装置50内に備えられている一例を示す。本実施例の黒鉛構造物1は、ガラス板などの被処理体を加熱する際に使用する黒鉛プレートである。黒鉛プレートは、熱源40と被処理体との間に備えられ、熱源40からの熱を均熱化する役割を有している。実際の加熱装置に使用する際には、黒鉛プレートの上にガラス板などの被処理体が載置される。
【0067】
黒鉛プレートである黒鉛構造物1は、複数の黒鉛板が接着層で接合されて構成されている。すなわち、第1黒鉛部材11及び第2黒鉛部材12が接着層を介して接合され1つの黒鉛構造物1が構成されている。
【0068】
黒鉛プレート(黒鉛構造物1)の接着層となる部分には、炭素系接着剤13によって接合されている。炭素系接着剤13はCOPNA樹脂が用いられ、あらかじめ塗布したあとに熱を加えられ熱硬化している。COPNA樹脂には、平均粒子径3μmのコークス粉末からなる炭素系粒子を骨材14として含有している。このような炭素系接着剤を炭素化工程によって炭素化させ、接着層によって接合された黒鉛構造物が得られている。
【0069】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の黒鉛構造物の製造方法及びそれを用いた加熱装置は、などの分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 黒鉛構造物
11 第1黒鉛部材
12 第2黒鉛部材
13 炭素系接着剤
14 骨材
21 第1の電極
22 第2の電極
30 カバー
40 熱源
50 加熱装置
S1 接合工程
S2 炭素化工程
S3 空焼き工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6