特許第6847022号(P6847022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6847022ヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847022
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20210315BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   F25B1/00 304F
   F25B1/00 371C
   F25B1/00 304H
   F25B43/00 R
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-224951(P2017-224951)
(22)【出願日】2017年11月22日
(65)【公開番号】特開2019-95127(P2019-95127A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】佐古 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 新吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 良胤
(72)【発明者】
【氏名】片山 智史
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−152194(JP,A)
【文献】 特開2016−121818(JP,A)
【文献】 特開2014−142158(JP,A)
【文献】 特開2004−053150(JP,A)
【文献】 特開2010−101552(JP,A)
【文献】 特開平06−294551(JP,A)
【文献】 特開2007−078348(JP,A)
【文献】 特開平07−110165(JP,A)
【文献】 特開平11−316108(JP,A)
【文献】 特開2010−038469(JP,A)
【文献】 特開2005−257221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0208785(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0089625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、前記膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置の制御方法であって、
前記第1膨張弁の開度もしくは前記第1膨張弁の開度に起因して変化する前記凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差を、前記圧縮機での圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように制御し、
前記ヒートポンプ装置の運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあることを判定する安定判定工程と、
前記安定判定工程において前記安定状態にあると判定した場合に、前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから現状の運転条件に対応する前記開度もしくは前記圧力差を読み出す圧力差読出工程と、
前記開度もしくは前記圧力差を前記圧力差読出工程にて読み出された値に維持した状態で、前記圧縮機での圧縮動力を算出する圧縮動力算出工程と、
前記開度もしくは前記圧力差を、前記圧縮動力算出工程にて算出された圧縮動力が極小値となりCOPが極大値となるように制御する圧力差制御工程とを有するヒートポンプ装置の制御方法。
【請求項2】
前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから、現状の運転条件に対応した前記開度もしくは前記圧力差を読み出し、現状の運転条件に対応した前記圧縮機での圧縮動力を算出し、当該圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように、前記開度もしくは前記圧力差を制御する請求項1に記載のヒートポンプ装置の制御方法。
【請求項3】
前記圧力差制御工程では、前記開度もしくは前記圧力差に対応する圧縮動力と、現状の前記開度もしくは前記圧力差を所定変化量だけ変化させた後の圧縮動力とを比較し、小さい方の圧縮動力に対応する前記開度もしくは前記圧力差を、現状の前記開度もしくは前記圧力差とする処理を連続して実行する局所探索法により、圧縮動力を極小化してCOPを極大化する前記開度もしくは前記圧力差を導出する請求項1又は2に記載のヒートポンプ装置の制御方法。
【請求項4】
前記安定判定工程と前記圧力差読出工程と前記圧縮動力算出工程と前記圧力差制御工程とを、前記ヒートポンプ装置の運転時にリアルタイムに実行する形態で、前記開度もしくは前記圧力差を制御する請求項1から3の何れか一項に記載のヒートポンプ装置の制御方法。
【請求項5】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、前記膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置であって、
前記第1膨張弁の開度もしくは前記第1膨張弁の開度に起因して変化する前記凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差を、前記圧縮機での圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように制御する圧力差制御部と、
前記ヒートポンプ装置の運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあることを判定する安定判定部と、
前記安定判定部において前記安定状態にあると判定した場合に、前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから現状の運転条件に対応する前記開度もしくは前記圧力差を読み出す圧力差読出部と、
前記開度もしくは前記圧力差を前記圧力差読出部にて読み出された値に維持した状態で、前記圧縮機での圧縮動力を算出する圧縮動力算出部とを有し、
前記圧力差制御部が、前記開度もしくは前記圧力差を、前記圧縮動力算出部にて算出された圧縮動力が極小値となりCOPが極大値となるように制御するヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、前記膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ヒートポンプ装置として、圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、圧縮機と凝縮器と第1膨張弁とレシーバと第2膨張弁と蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置が知られている(特許文献1を参照)。
特許文献1に開示の技術にあっては、圧縮機の運転台数及び回転数を定格運転時よりも小さくする部分負荷運転を実行しているときで、冷媒循環路を循環する冷媒流量が少なくなったときに、第1膨張弁の開度を全開にしていると、凝縮器での凝縮圧力が保てず、凝縮不足となるという課題に着目している。
そして、当該課題を解決するべく、第1膨張弁の開度を全開から閉じ側へ調整する制御を実行することで、凝縮器での凝縮圧力を保ち、凝縮不足となることを防止している。
また、当該特許文献1には、「運転条件により凝縮器の過冷却度の調整が可能となり、ヒートポンプ装置の冷房効率を向上する」という開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−173200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術では、第1膨張弁の開度を調整することが開示されているものの、その目的は、凝縮器での凝縮圧力を保ち、凝縮不足となることを防止するものである。
また、特許文献1には、「運転条件により凝縮器の過冷却度の調整が可能となり、ヒートポンプ装置の冷房効率を向上する」という開示があるものの、運転条件としてどのような指標を採用し、当該指標がどのような条件にあるときに、何をどのように調整することで、ヒートポンプ装置の冷房効率を向上するのかについて、何の開示も示唆もなく、その検討等も一切なされていない。
即ち、特許文献1に開示の技術は、第1膨張弁の開度を制御することについては、開示があるものの、その制御が、どのように実行されることにより、ヒートポンプ装置のCOPにどのように寄与するのかについて、検討されたものではなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1膨張弁の開度もしくは第1膨張弁の開度に起因して変化する凝縮器とレシーバの間に生じる圧力差の具体的な制御による、圧縮動力を極小化してCOPを極大化し得るヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのヒートポンプ装置の制御方法は、
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、前記膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置の制御方法であって、その特徴構成は、
前記第1膨張弁の開度もしくは前記第1膨張弁の開度に起因して変化する前記凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差を、前記圧縮機での圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように制御し、
前記ヒートポンプ装置の運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあることを判定する安定判定工程と、
前記安定判定工程において前記安定状態にあると判定した場合に、前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから現状の運転条件に対応する前記開度もしくは前記圧力差を読み出す圧力差読出工程と、
前記開度もしくは前記圧力差を前記圧力差読出工程にて読み出された値に維持した状態で、前記圧縮機での圧縮動力を算出する圧縮動力算出工程と、
前記開度もしくは前記圧力差を、前記圧縮動力算出工程にて算出された圧縮動力が極小値となりCOPが極大値となるように制御する圧力差制御工程とを有する点にある。
【0007】
上記目的を達成するためのヒートポンプ装置は、
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバと、前記膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路とを備えるヒートポンプ装置であって、その特徴構成は、
前記第1膨張弁の開度もしくは前記第1膨張弁の開度に起因して変化する前記凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差を、前記圧縮機での圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように制御する圧力差制御部
前記ヒートポンプ装置の運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあることを判定する安定判定部と、
前記安定判定部において前記安定状態にあると判定した場合に、前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから現状の運転条件に対応する前記開度もしくは前記圧力差を読み出す圧力差読出部と、
前記開度もしくは前記圧力差を前記圧力差読出部にて読み出された値に維持した状態で、前記圧縮機での圧縮動力を算出する圧縮動力算出部とを有し、
前記圧力差制御部が、前記開度もしくは前記圧力差を、前記圧縮動力算出部にて算出された圧縮動力が極小値となりCOPが極大値となるように制御する点にある。
【0008】
本発明の発明者らは、膨張弁として第1膨張弁と第2膨張弁とを備えると共にレシーバを有するヒートポンプ装置において、「第1膨張弁における開度もしくはその開度に起因して生じる凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差(以下、「第1膨張弁前後の圧力差」と記載する場合がある)の制御」により、ヒートポンプ装置の圧縮動力が極小値を取りCOPが極大値を取り得る形で変化するという知見を見出し、発明を完成するに至ったものである。
以下、図2に基づいて、説明を追加する。尚、図2では、「第1膨張弁前後の圧力差」が小さい場合(図2のPh線図で鎖線)から大きい場合(図2のPh線図で実線)へ変化する状況について説明する。因みに、以下では、蒸発器での冷却能力(例えば、冷房運転における冷房能力)のCOPを極大化できる理由について説明する。尚、説明の簡略化のため、配管や熱交換器で生じる圧力損失は、ここでは考慮しないこととする。
図1に示すレシーバを有するヒートポンプ装置においては、想定される種々の運転条件において、レシーバに液位が存在するように冷媒が充填される。このようにレシーバに液位が存在する場合は、図2に示すように、レシーバには飽和液状態の冷媒が出入りするため、レシーバでの冷媒はPh線図上で常に飽和液線上に位置する。そのため、凝縮器とレシーバとの間の「第1膨張弁前後の圧力差(図2のdP)」を大きくした場合、凝縮器出口の冷媒温度、即ちレシーバでの冷媒温度となる飽和液温度(レシーバでの冷媒の飽和液の圧力)が低下しその比エンタルピが減少する現象と、凝縮器出口の冷媒圧力が増加する現象の2つが生じる可能性があると考えられる。
【0009】
前者では、蒸発器に導入される比エンタルピが減少(図2のΔh)するため、蒸発器での冷却能力(比エンタルピ差)は、「第1膨張弁前後の圧力差」を増加前の冷却能力をdhとし、「第1膨張弁前後の圧力差」を増加後の冷却能力をdhとすると、以下の(式1)で表される。
dh=dh+Δh・・・(式1)
【0010】
一方、後者では、凝縮圧力が増加(図2のΔP)し、それに応じて圧縮機での圧縮仕事(比エンタルピ差)が増加(図2のΔw)するため、圧縮機での圧縮仕事(比エンタルピ差)は、「第1膨張弁前後の圧力差」を増加前の圧縮仕事をdwとし、「第1膨張弁前後の圧力差」を増加後の圧縮仕事をdwとすると、以下の(式2)で表される。
dw=dw+Δw・・・(式2)
【0011】
ここで、冷却能力(冷房運転時)のCOPは、以下の式で表される。
COP=dh/dw・・・(式3)
【0012】
当該COPは、「第1膨張弁前後の圧力差」が大きくなると、COPの増加に繋がるdhとしてのΔhが増大する一方、COPの減少に繋がるdwとしてのΔwが増大するため、両者はトレードオフの関係にあり、COPに極大値が存在すると推定できる。凝縮器出口の冷媒温度は外気温度までが理論的な下限となるため、Δhには上限が存在する。一方、ヒートポンプ装置の耐圧の制限がないとすればΔPには上限の制約はない。そのため、ΔPに相関して大きくなるΔwが、Δh×dw/dh以上に増加すると、COPの向上効果はなくなると考えられる。
尚、加熱能力(例えば、暖房運転における暖房能力)のCOPについては、説明を省略するが、冷房運転時のCOPと同様の理由にて、「第1膨張弁前後の圧力差」を変化させた場合に極大値が発生する。
【0013】
前記の補足であるが、「第1膨張弁前後の圧力差」を増加させると、同じ空調(冷房)能力の場合であれば、蒸発器での比エンタルピ差が増加するため、冷媒循環量は減少する。そのため、COPに極大値が発生する条件では、圧縮仕事(比エンタルピ差)と冷媒循環量の積である圧縮動力自体は極小値となる。
また、冷媒循環量が減少すると、蒸発器や凝縮器の熱交換面積が相対的に増えることになるため、蒸発圧力は増加し、凝縮圧力は低下する特性がある。ただし、蒸発ではより液に近く比エンタルピが小さい(乾き度が小さい)状態から蒸発させる必要があり、また凝縮ではより過冷却度がついた比エンタルピが小さい状態まで凝縮させる必要があるため、各々の圧力については逆の影響となる。実際には蒸発器や凝縮器での伝熱現象を考慮した蒸発圧力および凝縮圧力で運転されることとなる。
因みに、冷媒循環量が減少すると、室内機と室外機を連結する配管等(特にガス管)で生じる圧力損失が減少するため、実際にはCOPが更に向上する効果も期待できる。
【0014】
詳細については後述するが、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すように、熱交換器での伝熱特性等を考慮した計算では、負荷や外気温度に関わらず、「第1膨張弁前後の圧力差」を変化させた場合に、COPに極大値が発生することが確かめられた。
以上より、第1膨張弁前後の圧力差の具体的な制御による、圧縮動力を極小化してCOPを極大化し得るヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置を実現できる。
【0015】
ヒートポンプ装置の制御方法の更なる特徴構成は、
前記ヒートポンプ装置の運転条件毎に、当該運転条件と前記開度もしくは前記圧力差との関係であるマップデータから、現状の運転条件に対応した前記開度もしくは前記圧力差を読み出し、現状の運転条件に対応した前記圧縮機での圧縮動力を算出し、当該圧縮動力を極小化してCOPを極大化するように、前記開度もしくは前記圧力差を制御する点にある。
【0016】
さて、第1膨張弁における開度もしくはその開度に起因して生じる凝縮器とレシーバの間に生じる圧力差は、圧縮機の回転数、外気温度、室内温度(室内機吸い込み空気温度)、室内機運転負荷率(室外機定格容量に対する運転している室内機の合計容量の比率)、凝縮圧力、蒸発圧力、過冷却度(凝縮器出口)、過熱度(圧縮機入口)、室外機ファン回転数等の運転条件に基づいて決定されるものである。
そこで、本発明にあっては、これらの運転条件と、第1膨張弁前後の圧力差(第1膨張弁における開度、及びその開度に起因して生じる凝縮器と前記レシーバの間に生じる圧力差を意味する概念)との関係を記憶するマップデータから、現状の運転条件に対応した第1膨張弁前後の圧力差を読み出し、更に、取得した運転条件に対応した圧縮動力を算出し、第1膨張弁前後の圧力差を、算出した圧縮動力が極小となりCOPが極大となるように制御するのである。
尚、記憶されるマップデータの運転条件は、離散的に記憶することができ、現状の運転条件が、離散的に記憶された条件の間の条件である場合、両者の間の値が補間計算され、現状の運転条件に対応した第1膨張弁前後の圧力差が算出され読み出される。
【0018】
ヒートポンプ装置の制御方法の更なる特徴構成は、
前記圧力差制御工程では、前記開度もしくは前記圧力差に対応する圧縮動力と、現状の前記開度もしくは前記圧力差を所定変化量だけ変化させた後の圧縮動力とを比較し、小さい方の圧縮動力に対応する前記開度もしくは前記圧力差を、現状の前記開度もしくは前記圧力差とする処理を連続して実行する局所探索法により、圧縮動力を極小化してCOPを極大化する前記開度もしくは前記圧力差を導出する点にある。
【0019】
本発明の発明者らは、これまで説明してきたように、膨張弁として第1膨張弁と第2膨張弁とを備えると共にレシーバを備えたヒートポンプ装置が、第1膨張弁前後の圧力差の最適化により、圧縮動力が極小値を有し、COPが極大値を有することを、新たに見出した。
そこで、圧力差制御工程において上述したような局所探索法を実行することにより、圧縮動力を極小化してCOPを極大化する圧力差を良好に導出することができる。
尚、この場合、学習制御を合わせて適用することも可能である。
【0020】
ヒートポンプ装置の制御方法の更なる特徴構成は、
前記安定判定工程と前記圧力差読出工程と前記圧縮動力算出工程と前記圧力差制御工程とを、前記ヒートポンプ装置の運転時にリアルタイムに実行する形態で、前記開度もしくは前記圧力差を制御する点にある。
【0021】
第1膨張弁前後の圧力差を制御する場合、前記の運転条件が経時的に変化すると、制御された圧力差においてCOPが適切に極大値にならない可能性がある。
そこで、上記特徴構成にあっては、安定判定工程と圧力差読出工程と前記圧縮動力算出工程と圧力差制御工程とを、ヒートポンプ装置の運転時にリアルタイムに実行することで、圧縮動力が適切に極小値を維持(COPが適切に極大値を維持)するように、第1膨張弁前後の圧力差を制御することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るヒートポンプ装置の概略構成図
図2】実施形態に係るヒートポンプ装置において、第1膨張弁前後の圧力差の調整前後のph線図を示すグラフ図
図3】実施形態に係るヒートポンプ装置の制御フロー
図4】定格負荷運転で外気温度35℃の場合におけるCOPの第1膨張弁前後の圧力差依存性等を示すグラフ図
図5】部分負荷運転で外気温度35℃の場合におけるCOPの第1膨張弁前後の圧力差依存性等を示すグラフ図
図6】部分負荷運転で外気温度29℃の場合におけるCOPの第1膨張弁前後の圧力差依存性等を示すグラフ図
図7】別実施形態に係るヒートポンプ装置の概略構成図
図8】別実施形態に係るヒートポンプ装置において、第1膨張弁第1膨張弁前後の圧力差の調整前後のph線図を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るヒートポンプ装置100の制御方法、及びヒートポンプ装置100は、第1膨張弁前後の圧力差の具体的な制御により、圧縮動力を極小化してCOPを極大化し得るものに関する。
尚、当該実施形態に係るヒートポンプ装置100の制御方法、及びヒートポンプ装置100では、第1膨張弁前後の圧力差を変化させているときには、空調能力は変化させないものとする。
【0024】
実施形態に係るヒートポンプ装置100は、図1に示すように、エンジン14にて回転駆動され冷媒を圧縮する圧縮機11と、圧縮機11にて圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器にて凝縮した冷媒を膨張させる膨張弁としての第1膨張弁及び第2膨張弁と、冷媒を貯留するレシーバ17と、膨張弁にて膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、圧縮機11と凝縮器と第1膨張弁とレシーバ17と第2膨張弁と蒸発器とに記載の順に冷媒を循環する冷媒循環路C1とを備える。当該冷媒循環路C1には、冷房運転(冷却能力を発揮するときの運転の一例)と暖房運転(加熱能力を発揮するときの運転の一例)とで冷媒の循環状態を切り替える四方弁20が設けられている。
また、圧縮機11の入口には冷媒を貯留するアキュムレータ15が設けられ、液相状態の冷媒が圧縮機11へ導かれることを防止している。
更に、圧縮機11の出口には圧縮機11から冷媒配管内へ混入したオイルを冷媒から分離するオイルセパレータ16が設けられると共に、当該オイルセパレータ16と圧縮機11の入口とを連通接続するオイル流路Lo及びオイル流路Loを開閉するオイル弁V3が設けられており、オイルセパレータ16に貯留されたオイルは、定期的に、オイル弁V3を閉止状態から開放状態へ移行する形態で、圧縮機11の入口へ導かれる。
【0025】
冷房運転時には、図1に示すように、冷媒循環路C1を通流する冷媒は、圧縮機11、オイルセパレータ16、ファン(図示せず)により送風される室外空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器12(凝縮器に相当)、暖房用膨張弁Vh(第1膨張弁に相当)、レシーバ17、冷房用膨張弁Vc(第2膨張弁に相当)、ファン(図示せず)により送風される室内空気と冷媒とを熱交換する室内熱交換器13(蒸発器に相当)とに記載の順に循環するように、四方弁20が切り換えられる。
一方、暖房運転時には、図示は省略するが、冷媒循環路C1を通流する冷媒は、圧縮機11、オイルセパレータ16、ファン(図示せず)により送風される室内空気と冷媒とを熱交換する室内熱交換器13(凝縮器に相当)、冷房用膨張弁Vc(第1膨張弁に相当)、レシーバ17、暖房用膨張弁Vh(第2膨張弁に相当)、ファン(図示せず)により送風される室外空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器12(蒸発器に相当)とに記載の順に循環するように、四方弁20が切り換えられる。なお、エンジン14の排熱を用いて冷媒の一部を蒸発させる熱交換器も設置されている場合が多いが、図示は省略する。
【0026】
さて、当該実施形態に係るヒートポンプ装置100にあっては、圧縮動力を極小化するべく(COPを極大化するべく)、運転を制御する制御装置50は、圧縮機11の回転数、外気温度、室内温度(室内機吸い込み空気温度)、室内機運転負荷率(室外機定格容量に対する運転している室内機の合計容量の比率)、凝縮圧力、蒸発圧力、過冷却度(凝縮器出口)、過熱度(圧縮機入口)、室外機ファン回転数等の運転条件毎に、当該運転条件と当該運転条件から決定される第1膨張弁前後の圧力差(第1膨張弁における開度、もしくはその開度に起因して生じる凝縮器とレシーバの間に生じる圧力差)との関係であるマップデータを記憶する記憶部51を備えると共に、以下の各種制御を実行する制御部52をソフトウェアとハードウェアとが協働する形態で備えている。
説明を追加すると、制御部52は、前記の運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間(例えば、5分間)に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあることを安定判定部と、安定判定部において安定状態にあると判定した場合に、マップデータから現状の運転条件に対応する第1膨張弁前後の圧力差を読み出す圧力差読出部と、第1膨張弁前後の圧力差を圧力差読出部にて読み出された値に維持した状態で、圧縮機11での圧縮動力を算出する圧縮動力算出部と、圧縮動力算出部にて算出された圧縮動力が極小値となりCOPが極大値となるように、第1膨張弁前後の圧力差を制御する圧力差制御部とを有する。
【0027】
ここで、安定判定部において安定判定割合に収まっている安定状態とは、例えば、安定判定時間における値の平均値に対する最大値の割合、及び安定判定時間における値の平均値に対する最小値の割合の双方が、所定の割合以内であることを意味するものとする。
具体的には上記の割合は、例えば、圧縮機や室外ファン等の回転数は2%以内(定格運転での値を基準)、外気温度、室内温度(室内機吸い込み空気温度)、過熱度、過冷却度は1K以内、凝縮圧力や蒸発圧力は2%以内(定格運転での値を基準)、室内機運転負荷率は変化無しとなる状態を、安定状態と規定する。
【0028】
記憶部51に記憶されるマップデータとしては、例えば、図1にその一部を示すように、圧縮機11の回転数が大きいほど第1膨張弁前後の圧力差が大きくなる関係等を、外気温度等の他の運転条件毎に記憶したものとなっている。
尚、当該マップデータは、第1膨張弁前後の圧力差は、冷媒循環路C1の配管長にも依存する値である。このため、マップデータは、ヒートポンプ装置を設置するビル等の設備毎の冷媒循環路C1の配管長、具体的には室外機と室内機の連絡配管の長さ毎に、記憶されることが望ましい。
【0029】
当該実施形態に係るヒートポンプ装置100にあっては、図示は省略するが、冷媒圧力及び冷媒温度を計測するセンサが適宜設けられている。圧縮動力算出部では、上記センサの出力に基づいて、圧縮機11の入口と出口でのエンタルピを算出し、圧縮機11の出口のエンタルピから圧縮機11の入口のエンタルピを減算した値に、圧縮機11の回転数と体積効率と排除容積と圧縮機入口の冷媒密度の積として算出される冷媒循環量を積算する形態で、圧縮動力Wを算出する。
尚、圧縮動力算出部による演算は、すべて、第1膨張弁前後の圧力差を圧力差読出部にて読み出された値に維持した状態で実行される。
【0030】
次に、当該実施形態に係るヒートポンプ装置100において圧縮動力を極小化(COPを極大化)する制御を、図3の制御フローに基づいて説明する。
尚、当該実施形態に係るヒートポンプ装置100では、図3に示す制御フローを、ヒートポンプ装置100の運転時にリアルタイムに実行するものであり、これにより、運転条件の変化に追従する形態で、第1膨張弁前後の圧力差が制御されることとなる。
【0031】
第1膨張弁前後の圧力差による圧縮動力の極小化による制御は、前の制御から所定の時間(例えば、5分間)が経過したタイミングや、運転条件が大きく変化するタイミングで、リアルタイムに実行される。
制御部52は、運転条件を取得する(#01)。
制御部52は、安定判定工程として、#01のステップにて取得した各運転条件としてのパラメータの夫々の変化率が、安定判定時間に亘って所定の安定判定割合に収まっている安定状態にあるか否かを判定する安定判定工程を実行し(#02)、安定状態にない場合には所定時間(例えば、2分間)待機した後(#03)、再度、安定判定工程を実行する(#02)。
安定判定工程にて安定していると判定された場合、制御部52は、記憶部51にて記憶されるマップデータに基づいて、現状の第1膨張弁前後の圧力差を読み出す圧力差読出工程を実行する(#04)。
制御部52は、第1膨張弁前後の圧力差を圧力差読出工程にて読み出した値に維持した状態で、各運転条件の安定判定(#06)や所定時間の待機(#07)を実施した後に、圧縮機11での圧縮動力を算出する圧縮動力算出工程を実行する(#08)。
【0032】
制御部52は、以下の#09〜#16のステップを実行することで、第1膨張弁前後の圧力差を、圧縮動力算出工程にて算出された圧縮動力を極小値となるように制御する圧力差損制御工程を実行する。
換言すると、制御部52は、当該圧力差制御工程において、現状の第1膨張弁前後の圧力差に対応する圧縮動力と、現状の第1膨張弁前後の圧力差を所定変化量だけ変化させた後の圧力差に対応する圧縮動力とを比較し、小さい方の圧縮動力に対応する第1膨張弁前後の圧力差を現状の第1膨張弁前後の圧力差とする処理を連続して実行する局所探索法により、圧縮動力を極小とする第1膨張弁前後の圧力差を導出する。
尚、詳細な説明は省略するが、制御部52は、学習制御を合わせて適用して、圧縮動力を極小とする第1膨張弁前後の圧力差を導出する制御を実行しても構わない。
【0033】
具体的には、制御部52は、n=1とし(#09)、n=1において、現状の第1膨張弁前後の圧力差dPに対応する圧縮動力Wと、圧力差を所定変化量だけ変化させた後の第1膨張弁前後の圧力差dPn+1に対応するWn+1とを算出し(#10)、Wn+1とWとの差の絶対値(|Wn+1−W|)が規定値αより小さいか否かを判定する(#11)。
制御部52は、Wn+1とWとの差の絶対値(|Wn+1−W|)が規定値αより小さい場合(#11でYes)、現状の第1膨張弁前後の圧力差dPが、Wを極小とする値の近傍にあると判断し、現状の圧力差dPで制御を継続する(#16)。
一方、制御部52は、Wn+1とWとの差の絶対値(|Wn+1−W|)が規定値α以上である場合(#11でNo)、圧力差変化後のWn+1が圧力差変化前のWよりも小さいか否かを判断し(#12)、小さい場合は(#12でYes)、第1膨張弁前後の圧力差の変化方向を維持したままとし(#13)、圧力差変化後のWn+1が圧力差変化前のW以上の場合(#12でNo)は、第1膨張弁前後の圧力差の変化方向を逆転させる(#14、15)。
制御部52は、上記#12〜#15の制御を、Wn+1とWとの差の絶対値(|Wn+1−W|)が規定値αより小さくなるまで継続する。
【0034】
次に、当該実施形態に係るヒートポンプ装置100の制御において、第1膨張弁前後の圧力差を制御した場合の圧縮動力Wの変化に相当するCOPの変化を計算により求めた結果であるグラフを示す。
図4は、冷房運転を定格負荷で実行している場合であって、冷房能力:50kW、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機11の入口での過熱度SH:5K、外気温度:35℃、室外ファン空気流量:1.6m/s、室内温度:27℃(WB19℃)、室内ファン空気流量:0.8m/s、冷媒:R410Aとした。また、室外機出口から室内機までの冷媒循環路C1(液管)および室内機から室外機までの冷媒循環路C1(ガス管)の長さは、それぞれ20mとした。
尚、当該グラフでは、図7(後述)に示す過冷却流路を設けた本発明の別実施形態に対応する構成での計算結果も併せて示してあり、過冷却(SC)有の場合、過冷却で受熱した後の冷媒の過熱度SH:10Kであるとした。
【0035】
図4(b)に示すように、第1膨張弁前後の圧力差が増加するに従って、レシーバ17と第2膨張弁との間の液管の温度は低下(COPが増加)し、図4(c)に示すように、第1膨張弁前後の圧力差が増加するに従って、凝縮器12の出口圧力、即ち圧縮機11の出口の圧力が増加(COPが低下)する。両者は、トレードオフの関係にあるため、図4(a)に示すように、COPは、第1膨張弁前後の圧力差が増加するに従って、所定の値で極大値が存在することが確認できた。
【0036】
更に、冷房運転を部分負荷(定格負荷の半分程度の中間負荷)で行い外気温度が35℃である場合(図5に図示)、及び冷房運転を部分負荷(定格負荷の半分程度の中間負荷)で行い外気温度が29℃である場合(図6に図示)から明らかなように、運転負荷が変化した場合、外気温度が変化した場合も、第1膨張弁前後の圧力差を変化させることによりCOPが極大値をとることが確認できた。
【0037】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態の計算結果は、冷房運転の場合を例として説明したが、暖房運転であっても、圧縮動力を極小化してCOPを極大化する第1膨張弁前後の圧力差dPが存在する。
この場合、圧力差の制御に使用される第1膨張弁は、冷房用膨張弁Vcで実施可能ではあるが、ビルマルタイプの場合は複数の室内機があり、それぞれに冷房用膨張弁がついているため、圧力差の制御が複雑になる恐れがある。そのため、例えば、レシーバ直前に別途の第1膨張弁としての膨張弁を設けることが望ましい。
【0038】
(2)上記実施形態では、エンジン駆動式ヒートポンプ装置を例として説明したが、電気駆動式ヒートポンプ装置であっても、本発明の目的は、良好に達成される。
【0039】
(3)上記実施形態では、1台の圧縮機11を備える構成例を示したが、複数台の圧縮機を備える構成を採用しても構わない。
当該構成においては、上記実施形態に係る「圧縮機の回転数」として、複数台の圧縮機の夫々の回転数を含む運転パターンが、採用されることになる。
【0040】
(4)ビル等の空調設備の如く、冷媒循環路C1の配管長が長くなる場合、冷媒循環路C1の配管長が、第1膨張弁前後の圧力差の値に影響を与えるパラメータとなると考えられる。
このため、上記特徴構成の如く、冷媒循環路(液管やガス管)の配管長さをも、第1膨張弁前後の圧力差に影響する値として、マップデータとして記憶しておいても構わない。
【0041】
(5)本発明に係るヒートポンプ装置100、及びその制御方法は、図7に示すように、過冷却流路C2を備える構成であっても良好にその機能を発揮する。
図7には、冷房運転時における過冷却流路C2の回路構成の一例を示す。
尚、以下では、上記実施形態と異なる構成である過冷却流路C2に関連する構成についてのみ説明し、説明のない構成については、上記実施形態と同一であるとする。
図7に示すように、過冷却流路C2の上流端は、レシーバ17と冷房用膨張弁Vc(第2膨張弁の一例)との間の冷媒循環路C1に接続されると共に、下流端は、アキュムレータ15と圧縮機11との間の冷媒循環路C1(より詳細には、オイル流路Loの下流端とアキュムレータ15との間の冷媒循環路C1)に接続されている。
当該過冷却流路C2は、膨張弁V4にて膨張された冷媒が通流する流路部位が、レシーバ17の内部の液冷媒貯留部位を通過する形態で配設され、これにより、レシーバ17内の冷媒を冷却して過冷却度を調整するものである。
当該構成を採用した場合に、第1膨張弁前後の圧力差dPを変化させた場合のPh線図は、図8に示すようになる。第1膨張弁前後の圧力差dPを大きくした場合、レシーバ17入口の冷媒温度が低下するため、過冷却時の温度差が小さくなり、過冷却度がやや小さくなる傾向があるものの、上述した実施形態と同様の理由により、圧縮動力を極小化してCOPを極大化する圧力差dPが存在することになる。
なお、図7は過冷却回路がある一例であり、過冷却熱交がレシーバに内蔵されておらず、外付になっている仕様や、過冷却のために分岐する箇所が、過冷却後ではなく過冷却前になっている仕様もある。
【0042】
(6)圧縮動力は、圧縮機11による圧縮動力そのものや、圧縮機11をエンジンにて駆動する場合にはエンジンに供給される燃料量を意味するものとする。
【0043】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置は、第1膨張弁前後の圧力差の具体的な制御による、圧縮動力を極小化してCOPを極大化し得るヒートポンプ装置の制御方法、及びヒートポンプ装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
11 :圧縮機
12 :室外熱交換器
13 :室内熱交換器
14 :エンジン
17 :レシーバ
50 :制御装置
51 :記憶部
100 :ヒートポンプ装置
C1 :冷媒循環路
Vc :冷房用膨張弁
Vh :暖房用膨張弁
W :圧縮動力
dP :圧力差
dh :冷却等の空調能力(比エンタルピ差)
α :規定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8