(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲート電流注入部は、前記スイッチング素子のエミッタ端子に一端が接続されたインダクタンスと、前記インダクタンスの他端と前記ゲート端子との間に直列に接続した前記ダイオードおよび前記抵抗器と、を備え、
前記ダイオードは、アノード端子が前記インダクタンスの他端に接続し、カソード端子が前記抵抗器の一端に接続されることを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
前記ゲート電流注入部は、前記スイッチング素子の前記主電圧があらかじめ設定された電圧を超えたときに、前記ゲート端子に電流を注入する電圧依存ゲート電流注入部を更に備えることを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1実施形態乃至第3実施形態のゲート駆動回路について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態のゲート駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態のゲート駆動回路1aは、電力用スイッチング素子としてのIGBT3のエミッタ端子(E)の電位を基準電位としたゲート電源4から出力される電源電圧を用いて駆動パルスを発生するパルス発生回路5の出力に基づいて、IGBT3のゲート端子(G)の電圧を制御する回路である。本実施形態のゲート駆動回路1aは、電力用スイッチング素子側と駆動回路側とでグランドを分離するように、絶縁通信部としてフォトカプラ等を設けている。
【0011】
IGBT3は還流ダイオード2と並列に接続している。還流ダイオード2は、IGBT3のエミッタ端子からコレクタ端子(C)に向かう方向を順方向として接続している。IGBT3が電力変換装置に搭載される場合には、一対のIGBT3が直列に接続されて各相アームを構成する。
【0012】
ゲート駆動回路1aは、第1オフ側抵抗器6と、第2オフ側抵抗器7と、第1分圧抵抗器8と、第2分圧抵抗器9と、コンパレータ(比較器)10と、参照電圧入力電源11と、切替スイッチ12と、オン側抵抗器13と、オン用ドライバ回路14と、第1オフ用ドライバ回路15と、第2オフ用ドライバ回路16と、オン側駆動スイッチ17と、第1オフ側駆動スイッチ18と、第2オフ側駆動スイッチ19と、を備えている。
【0013】
ゲート電源4は、IGBT3のエミッタ端子の電位を基準電位とした電源である。
パルス発生回路5は、ゲート電源4から供給される電源電圧を用いて、パルスを生成して切替スイッチ12へ出力する。パルス発生回路5がパルスを生成するタイミングは、例えば図示しない上位制御装置により制御される。
【0014】
切替スイッチ12は、外部に設けられたパルス発生回路5からパルスが入力される入力端子と第1オフ用ドライバ回路15とを接続する経路(第1経路)と、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子と第2オフ用ドライバ回路16とを接続する経路(第2経路)とを切替える。切替スイッチ12の動作は、後述するコンパレータ10からの信号により制御される。
【0015】
オン用ドライバ回路14は、パルス発生回路5から出力される信号を受信する。オン用ドライバ回路14は、入力側と出力側とが絶縁された回路であり、例えばフォトカプラなどである。オン用ドライバ回路14は、パルス発生回路5から供給された信号を、後述するオン側駆動スイッチ17を駆動可能な電圧レベルの信号に変換して出力する。
【0016】
オン側駆動スイッチ17は、オン用ドライバ回路14から出力された信号によりその導通状態を制御される。オン側駆動スイッチ17は、例えばN型のMOSFETであって、ドレインは電圧源Vccと電気的に接続し、ソースはオン側抵抗器13を介してIGBT3のゲート端子と電気的に接続している。オン側駆動スイッチ17は、ソースを基準としたときに正の電圧がゲート端子に印加されると、ドレインからソースへ向かう電流が流れる。
オン側抵抗器13は、オン側駆動スイッチ17のソースとIGBT3のゲート端子とに直列に接続している。
【0017】
第1オフ用ドライバ回路15は、切替スイッチ12を介してパルス発生回路5から出力される信号を受信する。第1オフ用ドライバ回路15は、入力側と出力側とが絶縁された回路であり、例えばフォトカプラなどである。第1オフ用ドライバ回路15は、パルス発生回路5から供給された信号を、後述する第1オフ側駆動スイッチ18を駆動可能な電圧レベルの信号に変換して出力する。
【0018】
第1オフ側駆動スイッチ18は、第1オフ用ドライバ回路15から出力された信号によりその導通状態を制御される。第1オフ側駆動スイッチ18は、例えばP型のMOSFETであって、ドレインは接地され、ソースは第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子と電気的に接続している。第1オフ側駆動スイッチ18は、ソースを基準としたときに負の電圧がゲート端子に印加されると、ソースからドレインへ向かう電流が流れる。
第1オフ側抵抗器6は、第1オフ側駆動スイッチ18のソースとIGBT3のゲート端子とに直列に接続している。
【0019】
第2オフ用ドライバ回路16は、切替スイッチ12を介してパルス発生回路5から出力される信号を受信する。第2オフ用ドライバ回路16は、入力側と出力側とが絶縁された回路であり、例えばフォトカプラなどである。第2オフ用ドライバ回路16は、パルス発生回路5から供給された信号を、後述する第2オフ側駆動スイッチ19を駆動可能な電圧レベルの信号に変換して出力する。
【0020】
第2オフ側駆動スイッチ19は、第2オフ用ドライバ回路16から出力された信号によりその導通状態を制御される。第2オフ側駆動スイッチ19は、例えばP型のMOSFETであって、ドレインは接地され、ソースは第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子と電気的に接続している。第2オフ側駆動スイッチ19は、ソースを基準としたときに負の電圧がゲート端子に印加されると、ソースからドレインへ向かう電流が流れる。
【0021】
第2オフ側抵抗器7は、第2オフ側駆動スイッチ19のソースとIGBT3のゲート端子とに直列に接続している。第1オフ側抵抗器6の抵抗値は、第2オフ側抵抗器7の抵抗値よりも小さい。
【0022】
第1分圧抵抗器8は、IGBT3のコレクタ端子とコンパレータ10の負側の入力端子とに直列に接続している。第1分圧抵抗器8とコンパレータ10の負側の入力端子との間は、第2分圧抵抗器9を介して接地されている。すなわち、IGBT3のコレクタ電圧は、第1分圧抵抗器8の抵抗値と第2分圧抵抗器9の抵抗値との比により分圧されて、コンパレータ10の負側の入力端子へ印加される。第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9とは、IGBT3のコレクタ端子から印加される電圧(主電圧)を分圧する分圧回路に含まれる。
【0023】
第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9との抵抗値は、IGBT3の仕様や個々の特性、ゲート駆動回路1aの構成などに応じて、適切な値とすることができる。本実施形態では、第2分圧抵抗器9の抵抗値は第1分圧抵抗器8の抵抗器に比べて十分小さく、コンパレータ10の負側の入力端子へ印加される電圧は、IGBT3のコレクタ電圧よりも低くなる。
【0024】
コンパレータ10の正側の入力端子には、予め設定された閾値として、参照電圧入力電源11から参照電圧Vref(Vcc)が印加される。コンパレータ10は、負側の入力端子に印加されたIGBT3のコレクタ電圧に基づく値(分圧回路により分圧されたコレクタ電圧)と、参照電圧Vrefの値とを比較し、比較結果に応じた信号を出力する。本実施形態では、コンパレータ10は、IGBT3のコレクタ電圧に基づく値が参照電圧Vrefの値以上のときにハイレベルの値を出力し、IGBT3のコレクタ電圧に基づく値が参照電圧Vrefの値未満のときにローレベルの値を出力する。
なお、参照電圧入力電源11は、オン側駆動スイッチ17のドレインと電気的に接続する電圧源Vccと共通であってもよい。
【0025】
切替スイッチ12は、コンパレータ10から出力される信号の値により、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子との間を接続する経路を、第1抵抗器6を介して接続する第1経路と、第2抵抗器7を介して接続する第2経路とで切替える。
【0026】
例えば、切替スイッチ12は、コンパレータ10から出力された信号の値がローレベルのときに、第1オフ側抵抗器6を介する第1経路によりパルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続し、コンパレータ10から出力された信号の値がハイレベルのときに、第2オフ側抵抗器7を介する第2経路によりパルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続する。
【0027】
次に、上記ゲート駆動回路1aの動作の一例について説明する。
IGBT3のゲート‐エミッタ間電圧をVge、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧をVce、IGBT3のコレクタ電流をIc、IGBT3のゲート抵抗に流れる電流をIgとする。また、IGBT3をオフする際のエネルギー損失(ターンオフ損失)の瞬時値は、コレクタ電流Icとコレクタ‐エミッタ間電圧Vceとの積(=Ic*Vce)となる。なお、電流Igは、IGBT3へ流れる方向を正とし、第1オフ側抵抗器6に流れる電流と第2オフ側抵抗器7に流れる電流との和である。
【0028】
IGBT3がオンしている状態では、IGBT3のゲート‐エミッタ間電圧Vgeはハイレベルであって、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceはゼロである。したがって、コンパレータ10に入力される電圧は参照電圧Vrefよりも低く、コンパレータ10の出力はローレベルである。
【0029】
このとき、切替スイッチ12は、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続している。パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオンする出力信号は、オン側抵抗器13を介してIGBT3のゲート端子に印加される。
【0030】
パルス発生回路5から出力される信号が立下りIGBT3がオンからオフとなる動作が開始すると、第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが小さくなり、IGBT3のゲート‐エミッタ間電圧Vgeが低下し始める。
【0031】
ゲート‐エミッタ間電圧Vgeが所定の閾値未満となると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始め、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが大きくなるに従って、コレクタ電流Icが徐々に小さくなる。
【0032】
コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始めると、第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9によって分圧されてコンパレータ10に入力される。コンパレータ10の入力が参照電圧Vrefよりも小さい間は、コンパレータ10の出力はローレベルである。
【0033】
このとき、切替スイッチ12は、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続している。パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子に印加される。
【0034】
コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが更に上昇し、コンパレータ10の入力が参照電圧Vref以上となると、コンパレータ10の出力がハイレベルとなる。
【0035】
このとき、切替スイッチ12は、第2オフ側抵抗器7を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続するように切り替わる。したがって、パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に印加される。このことにより、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となるとIGBT3のゲート抵抗が大きくなり、IGBT3のスイッチング速度が遅くなり、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceのサージ電圧を抑制することができる。
【0036】
第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが上昇し始めると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが小さくなる。コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが低下するにしたがって、第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9によって分圧された電圧が小さくなり、コンパレータ10の入力が小さくなる。コンパレータ10の入力が参照電圧Vref未満となると、コンパレータ10の出力がローレベルとなる。
【0037】
コンパレータ10の出力がローレベルとなると、切替スイッチ12が切り替わり、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とが接続する。したがって、IGBT3のゲート抵抗が小さくなり、IGBT3のスイッチング速度が速くなる。
【0038】
上記のように、本実施形態のゲート駆動回路1aでは、IGBT3をオフするタイミングにおいて、IGBT3のコレクタ電圧が所定値以上となったとき、IGBT3のゲート端子に電気的に接続する抵抗器が第1オフ側抵抗器6から第2オフ側抵抗器7へと切り替わり、IGBT3のゲート抵抗が大きくなる。このことにより、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となったときのみIGBT3がターンオフする速度を遅くして、IGBT3がターンオフするときにサージ電圧が発生することを抑制し、IGBT3を保護することができる。また、IGBT3をターンオフする際に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値未満であるときには、IGBT3がターンオフする速度を速くして、IGBT3がターンオフするときのエネルギー損失を小さくすることができる。
【0039】
ここで、IGBT3やゲート駆動回路1aの構成要素は、同じ様に設計された場合であっても製造ばらつき等により特性に差が生じる。このようなIGBT3およびゲート駆動回路1aの特性の差により、IGBT3のターンオフ速度を低速に切替えるタイミングもばらつくため、IGBT3を保護することができない可能性があった。
【0040】
そこで、本実施形態のゲート駆動回路1aでは、コンパレータ10の負側の入力端子への入力値を、第1分圧抵抗器8の抵抗値と第2分圧抵抗器9の抵抗値との比により調整可能としている。このことにより、本実施形態のゲート駆動回路1aでは、IGBT3やゲート駆動回路1aの個々の特性に応じて、IGBT3のターンオフ速度を低速に切替えるタイミングを調整することが可能となる。その結果、本実施形態のゲート駆動回路1aによれば、より効果的にIGBT3を保護することが可能となる。
【0041】
すなわち、本実施形態のゲート駆動回路1aによれば、スイッチング素子を保護するとともに、スイッチング素子のターンオフ損失を抑制可能なゲート駆動回路を提供することができる。
【0042】
次に、第2実施形態のゲート駆動回路について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図2は、第2実施形態のゲート駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態のゲート駆動回路1bは、第1経路と第2経路とは異なる経路よりIGBT3のゲート端子に電流を注入するゲート電流注入部として、インダクタンス21と、ダイオード22と、抵抗器23と、を更に備えている。
【0044】
インダクタンス21は、一端がIGBT3のエミッタ端子に接続している。IGBT3に電流が流れると、電流の時間変化とインダクタンス21の大きさLに応じた電圧がインダクタンス21の両端に生じる。
【0045】
ダイオード22は、アノード端子がインダクタンス21の他端に接続し、カソード端子が抵抗器23の一端に接続している。抵抗器23の他端はIGBT3のゲート端子に接続している。すなわち、ダイオード22は、IGBT3のエミッタ端子側からIGBT3のゲート端子へ向かう方向に電流を流すように接続している。
【0046】
次に、上記ゲート駆動回路1bの動作の一例について説明する。
なお、抵抗器23を介してIGBT3のゲート端子に印加される電圧をVRdとし、電圧VRdはIGBT3のゲート端子へ電流を流す方向を正とする。また、電流IgはIGBT3のゲート端子に流れる電流であり、オン側抵抗器13を介して流れる電流と、第1オフ側抵抗器6を介して流れる電流と、第2オフ側抵抗器7を介して流れる電流と、抵抗器23を介して流れる電流との和である。
【0047】
本実施形態のゲート駆動回路1bでは、IGBT3がオンからオフとなる(ターンオフする)動作が開始すると、オン側抵抗器13を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが小さくなり、IGBT3のゲート‐エミッタ間電圧Vgeが低下し始める。
【0048】
ゲート‐エミッタ間電圧Vgeが所定の閾値未満となると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始め、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが大きくなるに従って、コレクタ電流Icが徐々に小さくなる。
【0049】
コレクタ電流Icが下降し始めると、インダクタンス21の両端に電圧が生じ、ダイオード22および抵抗器23を介してIGBT3のゲート端子に電圧VRdとして印加され、電流が注入される。第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子へ流れる電流と、第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子へ流れる電流とは、IGBT3のゲート端子から電荷が排出される方向である。一方、抵抗器23を介してIGBT3へ流れる電流は、IGBT3へ電荷を注入する方向である。したがって、抵抗器23を介してIGBT3のゲート端子へ電流が注入されることにより、ゲート‐エミッタ間電圧Vgeが下降することが抑制される。つまり、ゲート‐エミッタ間電圧Vgeは、ターンオンするように変化することとなり、IGBT3がターンオフするスイッチング速度が低下し、サージ電圧が抑えられる。
【0050】
また、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始めると、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが第1分圧抵抗器8および第2分圧抵抗器9により分圧されてコンパレータ10の負側の入力端子へ入力される。
【0051】
コンパレータ10の入力が参照電圧Vrefよりも小さい間は、コンパレータ10の出力はローレベルである。このとき、切替スイッチ12は、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続している。パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子に印加される。
【0052】
コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが更に上昇し、コンパレータ10の入力が参照電圧Vref以上となると、コンパレータ10の出力がハイレベルとなる。
このとき、切替スイッチ12は、第2オフ側抵抗器7を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続するように切り替わる。したがって、パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に印加される。このことにより、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となるとIGBT3のゲート抵抗が大きくなり、IGBT3のスイッチング速度が遅くなり、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceのサージ電圧を抑制することができる。
【0053】
第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが上昇し始めると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが小さくなる。コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが低下するにしたがって、第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9によって分圧された電圧が小さくなり、コンパレータ10の入力が小さくなる。コンパレータ10の入力が参照電圧Vref未満となると、コンパレータ10の出力がローレベルとなる。
【0054】
コンパレータ10の出力がローレベルとなると、切替スイッチ12が切り替わり、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とが接続する。したがって、IGBT3のゲート抵抗が小さくなり、IGBT3のスイッチング速度が速くなる。
【0055】
上記のように、本実施形態のゲート駆動回路1bでは、上述の第1実施形態と同様に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となったときのみIGBT3がターンオフする速度を遅くして、IGBT3がターンオフするときにサージ電圧が発生することを抑制し、IGBT3を保護することができる。さらに、本実施形態のゲート駆動回路1bでは、IGBT3がターンオフする際に、ダイオード22および抵抗器23を介してIGBT3のゲート端子へ電流を流すことによりゲート‐エミッタ間電圧Vgeが下降することが抑制されるため、IGBT3がターンオフする速度を遅くして、より効果的にIGBT3を保護することができる。
【0056】
また、IGBT3をターンオフする際に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値未満であるときには、IGBT3がターンオフする速度を速くして、IGBT3がターンオフするときのエネルギー損失を小さくすることができる。
【0057】
また、本実施形態のゲート駆動回路1bでは、第1分圧抵抗器8の抵抗値と第2分圧抵抗器9の抵抗値とを調整することにより、IGBT3のターンオフ速度を低速に切替えるタイミングを調整することが可能である。
【0058】
上記のように、本実施形態のゲート駆動回路1bによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、更に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceの上昇(あるいはコレクタ電流Icの下降)を検出することによりIGBT3のゲート端子に電流を注入してサージ電圧を抑制し、かつ、ターンオフ損失を低減することができる。
すなわち、本実施形態のゲート駆動回路1bによれば、スイッチング素子を保護するとともに、スイッチング素子のターンオフ損失を抑制可能なゲート駆動回路を提供することができる。
【0059】
次に、第3実施形態のゲート駆動回路について図面を参照して詳細に説明する。
図3は、第3実施形態のゲート駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【0060】
本実施形態のゲート駆動回路1cは、第1経路と第2経路とは異なる経路よりIGBT3のゲート端子に電流を注入するゲート電流注入部として、定電圧ダイオード31と、抵抗器32と、を更に備えている。上記の構成以外は、上述の第1実施形態のゲート駆動回路1aと同様の構成である。
【0061】
定電圧ダイオード31は、IGBT3のゲート端子からコレクタに向かう方向を順方向とする方向に接続している。定電圧ダイオード31のアノード端子は、抵抗器32を介してIGBT3のゲート端子と接続し、定電圧ダイオード31のカソード端子は、IGBT3のコレクタと接続している。
【0062】
定電圧ダイオード31は、カソード端子にブレークダウン電圧を超える電圧が印加されるときにアバランシェを開始し電流を流す。つまり、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧がブレークダウン電圧を超えると、IGBT3のコレクタからゲート端子に向かう方向(カソード端子からアノード端子に向かう方向)にアバランシェ電流を流す。
抵抗器32は、定電圧ダイオード31を介してIGBT3のゲート端子へ流れる電流を抑制する。
【0063】
すなわち、本実施形態のゲート駆動回路1cは、ゲート電流流入部として、IGBT3の主電圧(コレクタ端子の電圧)があらかじめ設定された電圧(ブレークダウン電圧)を超えたときに、IGBT3のゲート端子に電流を注入する電圧依存ゲート電流注入部を備えている。
【0064】
次に、上記ゲート駆動回路1cの動作の一例について説明する。
定電圧ダイオード31および抵抗器32を介してIGBT3のゲート端子に印加される電圧をVRzdとし、電圧VRzdは、IGBT3のゲート端子へ電流を流す方向を正とする。また、電流IgはIGBT3のゲート端子に流れる電流であり、オン側抵抗器13を介して流れる電流と、第1オフ側抵抗器6を介して流れる電流と、第2オフ側抵抗器7を介して流れる電流と、定電圧ダイオード31および抵抗器32を介して流れるアバランシェ電流との和である。
【0065】
本実施形態のゲート駆動回路1cでは、IGBT3がオンからオフとなる動作が開始すると、オン側抵抗器13を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが小さくなり、IGBT3のゲート‐エミッタ間電圧Vgeが低下し始める。
【0066】
ゲート‐エミッタ間電圧Vgeが所定の閾値未満となると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始め、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが大きくなるに従って、コレクタ電流Icが徐々に小さくなる。
【0067】
IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが定電圧ダイオード31のブレークダウン電圧を超えると、定電圧ダイオード31がアバランシェし、アバランシェ電流がIGBT3のゲート端子へ流れる。なお、第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子へ流れる電流と、第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子へ流れる電流とは、IGBT3のゲート端子から電荷が排出される方向である。一方、定電圧ダイオード31を介してIGBT3へ流れる電流は、IGBT3へ電荷を注入する方向である。したがって、定電圧ダイオード31を介してIGBT3のゲート端子へ電流が注入されることにより、ゲート‐エミッタ間電圧Vgeが下降することが抑制される。つまり、ゲート‐エミッタ間電圧Vgeがターンオンする方向に変化することによって、IGBT3がターンオフするスイッチング速度が低下し、サージ電圧が抑えられる。その後、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが定電圧ダイオード31のブレークダウン電圧よりも下回ると、IGBT3のゲート端子へ流れるアバランシェ電流がゼロとなる。
【0068】
また、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが上昇し始めると、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが第1分圧抵抗器8および第2分圧抵抗器9により分圧されてコンパレータ10の負側の入力端子へ入力される。
【0069】
コンパレータ10の入力が参照電圧Vrefよりも小さい間は、コンパレータ10の出力はローレベルである。このとき、切替スイッチ12は、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続している。パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第1オフ側抵抗器6を介してIGBT3のゲート端子に印加される。
【0070】
コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが更に上昇し、コンパレータ10の入力が参照電圧Vref以上となると、コンパレータ10の出力がハイレベルとなる。
このとき、切替スイッチ12は、第2オフ側抵抗器7を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とを接続するように切り替わる。したがって、パルス発生回路5から出力されるIGBT3をオフする出力信号は、第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に印加される。このことにより、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となるとIGBT3のゲート抵抗が大きくなり、IGBT3のスイッチング速度が遅くなり、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceのサージ電圧を抑制することができる。
【0071】
第2オフ側抵抗器7を介してIGBT3のゲート端子に流れる電流Igが上昇し始めると、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが小さくなる。コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが低下するにしたがって、第1分圧抵抗器8と第2分圧抵抗器9によって分圧された電圧が小さくなり、コンパレータ10の入力が小さくなる。コンパレータ10の入力が参照電圧Vref未満となると、コンパレータ10の出力がローレベルとなる。
【0072】
コンパレータ10の出力がローレベルとなると、切替スイッチ12が切り替わり、第1オフ側抵抗器6を介して、パルス発生回路5からパルスが入力される入力端子とIGBT3のゲート端子とが接続する。したがって、IGBT3のゲート抵抗が小さくなり、IGBT3のスイッチング速度が速くなる。
【0073】
上記のように、本実施形態のゲート駆動回路1cでは、上述の第1実施形態と同様に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値以上となったときのみIGBT3がターンオフする速度を遅くして、IGBT3がターンオフするときにサージ電圧が発生することを抑制し、IGBT3を保護することができる。さらに、本実施形態のゲート駆動回路1cでは、IGBT3がターンオフする際に、定電圧ダイオード31および抵抗器32を介してIGBT3のゲート端子へ電流を流すことによりゲート‐エミッタ間電圧Vgeが下降することが抑制されるため、IGBT3がターンオフする速度を遅くして、より効果的にIGBT3を保護することができる。
【0074】
また、IGBT3をターンオフする際に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値未満であるときには、IGBT3がターンオフする速度を速くして、IGBT3がターンオフするときのエネルギー損失を小さくすることができる。
【0075】
また、本実施形態のゲート駆動回路1cでは、第1分圧抵抗器8の抵抗値と第2分圧抵抗器9の抵抗値とを調整することにより、IGBT3のターンオフ速度を低速に切替えるタイミングを調整することが可能である。
【0076】
上記のように、本実施形態のゲート駆動回路1cによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、更に、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceの過電圧判別を行い、IGBT3のゲート端子に電流を注入することによってサージ電圧を抑制し、かつ、ターンオフ損失を低減することができる。
【0077】
また、定電圧ダイオード31では、IGBT3のコレクタ‐エミッタ間電圧Vceが所定の閾値を超えたか否かにより過電圧の判別を行っている。例えば、IGBT3が接続する主回路の直流電圧が低いときはサージ電圧も低いため、定電圧ダイオード31からIGBT3のゲート端子へ電流を注入せず、ゲート抵抗を切り替えることのみによって過剰なサージ電圧保護によるターンオフ損失の増加を防ぐことができる。IGBT3が接続する主回路の直流電圧が高いときはサージ電圧も高いため、定電圧ダイオード31からIGBT3のゲート端子へ電流を注入し、かつゲート抵抗を切り替えることによって、サージ電圧の抑制とターンオフ損失の低減とを両立することができる。
【0078】
すなわち、本実施形態によれば、スイッチング素子の保護を図るとともに、スイッチング素子のターンオフ損失を抑制するゲート駆動回路を提供することができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。