(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の装置は、少なくとも細胞培養容器、培養液貯留容器、前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続するための流路管をCO
2インキュベーター内に設置して細胞の培養を行う細胞培養装置であって、前記培養液貯留容器および前記流路管がガス透過性であることを特徴とする。
【0014】
前記培養装置全体の大きさについては、特に制限はないが、好ましくはCO
2インキュベーター内に設置可能な小型のものである。培養装置は小型のため、複数台同時にCO
2インキュベーター内に設置することも可能である。また、培養装置全体の重量については、特に制限はないが、好ましくはCO
2インキュベーター内に設置可能な程度の軽量なものである。
【0015】
(細胞培養容器)
本発明において、細胞培養容器に用いる培養基材の形態は特に限定されないが、好ましくは比表面積の大きい形態である。比表面積の大きい培養基材を用いることにより、市販のCO
2インキュベーター内に設置することが可能な小型培養装置を実現することができる。前記比表面積の大きい形態としては、例えば、中空糸膜、不織布、ナノファイバーなどが挙げられる。
【0016】
本発明において、細胞培養容器の大きさは、必要細胞数に応じて、選択することができる。一般に、必要細胞数が多いほど大きな細胞培養容器を用いることが好ましい。また、細胞の保有量と必要量との差が大きい場合は適宜段階的にスケールアップしても良い。例えば、中空糸膜の内表面において細胞を培養する際は、細胞数は、中空糸膜の内表面積に比例するので、体性幹細胞のように初期の細胞数が少ない場合は、培養初期は比較的小型のモジュールを用い、段階的にモジュールを大きくすることにより、大量の体性幹細胞を得ることができる。
【0017】
本発明において、培養基材として中空糸膜を用いる場合、細胞を中空糸膜表面に保持でき、溶液や低分子の物質を透過させるような構造をとることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、セルロースアセテート、再生セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン等が好適に利用できる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。また、これらの素材に化学的に修飾を加えたものであっても良い。例えば、使用する中空糸膜は、親水化処理されていることが好ましい。中空糸膜を親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。さらに、中空糸膜への細胞の接着性向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等をコートしても良い。
【0018】
本発明において、培養基材として中空糸膜を用いる場合、内径は好ましくは20〜500μm、より好ましくは50〜300μm程度のものが利用される。膜厚は、適度な強度を保ち、かつ物質の透過性が良好な範囲で設定すればよく、10〜100μm程度が好ましい。
【0019】
本発明において、中空糸膜の細孔径は、細胞は通過しないが水、塩類、蛋白質などの培養液成分は通過するものであれば、特に限定されるものでなく、1nm〜100nm程度が好ましく、5nm〜50nm程度がより好ましい。
【0020】
本発明において、細胞培養容器は、例えば
図6に示されるように、4つの開口部(端部導管および側部導管)を有し、培養基材である中空糸膜32の両端においてモジュールケース31に接着固定されている。2つの端部導管33a、33bはそれぞれ中空糸膜の内腔(中空部)と連通しており、例えば前記端部導管33aから導入された流体が中空糸膜の内腔を移動して端部導管33bから導出されるように構成されている。一方、側部導管34a、34bは、前記モジュールケース31の内側かつ前記中空糸膜の外側である空間(以下、単に「外腔側」とも呼ぶ。)と連通しており、例えば前記側部導管34aから導入された流体がモジュール17の外腔側を移動して側部導管34bから導出されるように構成されている。
【0021】
前記モジュールを用いる場合、細胞培養は、中空糸膜の内腔側または外腔側のいずれにおいて行っても良いが、内腔側で培養を行う方が好ましい。例えば、内腔側にて細胞を培養する際は、細胞縣濁液を端部導管より注入して内腔側に充填することにより細胞を中空糸膜内表面に播種した後、細胞懸濁液を培地に切り換えて灌流させ、一定期間培養を行う。この間、同時に、外腔側へも、培地を側部導管より注入し灌流させることが好ましい。培養期間中、ガス交換、細胞への栄養供給および老廃物除去のため、内腔側、外腔側ともに培地を一方向に供給し続けることが好ましい。なお、内腔側および外腔側に灌流させる培地は、並流でも良いし向流でも良い。その際、後述のポンプ等を用いることにより、適切な速度で循環させたり、供給・排出したりする。
【0022】
培養容器に中空糸モジュールを用いることにより、細胞へ常に新鮮な培地を供給することができ、培養基材にシャーレや多段フラスコ等を用いる際に必要な交換作業は不要となり、作業者の拘束時間を減らすことができる。
【0023】
(液体培地貯留容器)
本発明において、液体培地貯留容器の素材は、特に限定されないが、成形加工性に優れ、ガンマ線滅菌等に耐えうるものであり、かつ内部の様子を観察することができる透明性の高い材料であることが好ましい。具体的には、液体培地貯留容器のガス透過度は、37℃における酸素透過度が150×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以上、二酸化炭素透過度が700×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以上であることが好ましい。このような材料としては、ポリプロピレン(PP)(酸素透過係数:2.5×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:11.3×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、低密度ポリエチレン(LDPE)(酸素透過係数:3.0×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:12.6×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、ポリスチレン(PSt)(酸素透過係数:3.1×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:14.1×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))などが挙げられる。また、これら複数の材料を使用した積層体であってもよい。前記材料を用いて、酸素透過度および二酸化炭素透過度が所望の値になるように、大きさや厚みを調整して培養液貯留容器を作製すればよいが、強度やガス透過性を両立する上で、容器の厚みは30〜300μmが好ましく、60〜200μmがより好ましい。
【0024】
本発明において、液体培地貯留容器の形態は特に限定されないが、液体培地を外部に供給できる開口部を少なくとも1つ有している必要がある。前記開口部は、培地を前記細胞培養容器に供給できるように、後述の流路網に接続可能に構成されていることが好ましい。また、液体培地の蒸発を防止し、汚染の危険性を低減できるように、前記開口部は、未使用時は密栓でき、使用時は培地が外部と接触できない状態で流路に接続(例えば、無菌コネクターによる相互接続)できるよう構成されていることが好ましい。また、前記開口部以外の部分は、容器内の培地が外部と接触できないよう構成されていることが好ましい。
【0025】
(流路管)
本発明において、細胞培養容器と培養液貯留容器とを接続するための流路管は、37℃における酸素透過度が150×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以上、二酸化炭素透過度が450×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以上であることが好ましい。このような材料としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)(酸素透過係数:4.9×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:15×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)(酸素透過係数:6.3×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:18×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(酸素透過係数:6.7×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:18.3×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、ポリ4メチルペンテン−1(PMP)(酸素透過係数:24.4×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:72.3×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))、シリコーン(酸素透過係数:605×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg)、二酸化炭素透過係数:3000×10
−10cm
3(STP)・cm/(cm
2・sec・cmHg))などが挙げられる。また、これらを使用した積層体であってもよいが、これらに限定されるものではない。これらの材料を用いて、酸素透過度および二酸化炭素透過度が所望の値になるように、大きさや厚みを調整して流路管(チューブ)を作製すればよいが、強度やガス透過性を両立する上で、チューブの厚みは0.5mm〜5mmが好ましい。なお、ガス透過性が高すぎる場合は、チューブ内に気泡が発生し、培養液(培地)の流れを阻害することがあるので、培養液を適度に加圧するなどして気泡の発生を抑制することが好ましい。しかし、培養液を加圧しすぎると、培地流速をコントロールできなくなるので、チューブは、37℃における酸素透過度が1000×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以下、二酸化炭素透過度が5000×10
−10cm
3/(cm
2・sec・cmHg)以下であることが好ましい。
【0026】
(CO
2インキュベーター)
本発明において、少なくとも細胞培養容器、培養液貯留容器、前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続するための流路管をCO
2インキュベーター内に設置して細胞の培養を行うのが好ましい。CO
2インキュベーターは、CO
2の濃度を一定に維持する機能だけでなく、恒温機としての役割も有しており、少なくとも細胞培養容器、培養液貯留容器、および前記流路管をCO
2インキュベーター内に設置することにより、必要な培養環境を整えることができる。CO
2の濃度や温度は培養する細胞に合わせて適宜設定すればよい。このようなCO
2インキュベーターとしては、例えば、Panasonic株式会社、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、ヤマト科学株式会社などより入手可能である。
【0027】
(液体の供給、排出などを制御する手段)
細胞懸濁液や培地などの液体の供給方法の形態は、特に限定されるものではないが、流路内に設置したポンプを用いて送液する方法や、液体培地貯留容器が培養バッグなど軟質のものである場合には前記容器をローラー間に挟んで培地を絞り出す方法等を採用できる。ポンプの設置場所は特に限定されないが、液体がポンプ部分を通過する際にゴミが混入する等のリスクを避けるため、排出側に設置することが好ましい。
【0028】
(培養の対象となる細胞)
本発明において、対象となる細胞は、接着性の動物細胞が好適である。細胞の由来も特に限定されず、ヒト、マウス、ラット等のいずれの動物由来のものも使用できる。また、初代培養細胞及び株化細胞の双方を対象とすることができる。例えば、NIH3T3細胞、Hela細胞、COS細胞、HEK細胞、L929細胞、Daudi細胞、Jurkat細胞、KG−1a細胞などの株化細胞あるいは、各種ハイブリドーマ細胞株などが挙げられる。また、神経細胞、角質化細胞、繊維芽細胞、肺上皮細胞、肝細胞、血液細胞などのプライマリー細胞などが挙げられる。さらに、ES細胞、造血幹細胞、肝幹細胞、間葉系幹細胞などの幹細胞、前駆細胞でもよい。また、これらの細胞は、培養前に外来遺伝子を導入した細胞であってもよいし、抗体やリガンドなどの刺激因子などで予め刺激、加工されている細胞であっても良い。
【0029】
(細胞の播種)
本発明において、細胞培養容器に細胞を播種する手段は、特に限定されない。一例として、前記液体培地貯留容器を利用する方法が挙げられる。この方法は、液体培地貯留容器に播種したい細胞を懸濁した溶液を入れ、細胞培養容器に流し込み灌流させる方法である。播種終了後、液体培地貯留容器を細胞を含まない培地が入ったものに切り換えて灌流させ培養を行えばよい。この方法は、播種したい細胞を含む溶液の液量が多いときに用いるのが好適である。液量(細胞数)が少ない場合は、前記液体培地貯留容器と細胞培養容器を接続する流路の途中にシリンジ等を用いて細胞懸濁液を注入できる手段を設けても良い。
【0030】
(細胞の培養)
本発明において、細胞培養容器として中空糸膜を内挿したモジュールを用いる場合、細胞培養容器への培地の供給は、内腔側および外腔側の2ルートが必要である。その際、培地の供給にあたり、液体培地貯留容器は内腔側および外腔側で別々のものを用いても良いし、1つの容器から内腔側および外腔側の両方に培地を供給しても良い。この場合、内腔側の培地組成と外腔側の培地組成は同一であっても異なっていても良い。また、内腔側の流速と外腔側の流速は同一であっても異なっていても良いが、外腔側の流速を早めるのが好ましい。細胞が播種された側(内腔側)に通液する培地の好ましい平均流速は、0.1〜1mm/minである。一方、細胞が播種されていない側(外腔側)に通液する培地の好ましい平均流速は、2〜5mm/minである。なお、培養に用いられる培地は、培養細胞の種類に応じて決定され、当該細胞の培地として通常用いられるものであればよい。
【0031】
細胞の播種および/または培養中は、細胞培養容器の振とうやローリング等を行っても良い。このような操作を行うことは、細胞培養容器内に均一に細胞を播種することができる、気泡が発生した場合に取り除くことができる、培養細胞に満遍なく培地の栄養が行き渡る、などの点で好ましい。
【0032】
(モニタリング装置等)
本発明の細胞培養装置は、pH、グルコース、乳酸塩、酸素等といった細胞代謝物質の成分や濃度等を経時的にモニタリングする手段や分析手段を含んでも良い。例えば、検知のためのセンサーを含むことができる。センサーは、中空糸膜内側の出入り口または中空糸膜外側の出入り口のチューブの任意の位置に取り付けることができる。また、中空糸内側や中空糸外側の出口に、フラクションコレクターを取り付けることにより、定期的に培地を採取することもできる。
【0033】
(作業コントローラー(作業パネル))
本発明において、細胞培養装置は、上記の操作や工程を行うため、またモニタリングを行うために、それらをコントロールするための作業コントローラー(作業パネル)を備えていても良い。
【0034】
(細胞の回収)
本発明において、培養した細胞を回収するための手段は、特に限定されない。例えば、培養容器として中空糸膜モジュールを用いる場合、培地の灌流を停止し、中空糸膜内側および外側に存在する培地を除去するため、二価陽イオンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等を一定時間灌流させ、培地がPBSに置換されたら、さらにPBSを一定時間灌流した後、PBSを除去し、トリプシン等のプロテアーゼを中空糸内側と外側へ充填する。トリプシン処理により、培養細胞を中空糸膜表面から剥離させた後、培地等を用いて中空糸膜モジュールから押出し、回収する。
【0035】
(その他の構成)
本発明において、細胞培養装置は、必要により細胞回収容器、廃液回収容器を有していてもよい。細胞回収容器や廃液回収容器の形態は、特に限定されない。例えば、ガラス製ボトル、プラスチック製ボトル、培養バッグなどが挙げられる。
【0036】
本発明の細胞培養装置及びその使用方法について、図面を参照しながら以下に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0037】
図1は本発明の細胞培養装置の構成例の一つを示す。
図1において、1および2はそれぞれ、ガス透過性を有する液体培地貯留容器(培養バッグなど)である。液体培地貯留容器1からは、無菌接続コネクター13およびバルブ4を経由して、細胞培養容器17(中空糸モジュール。
図6にその構成例を示す。)の端部導管33aに、流路が接続され、液体培地貯留容器1に入っている培地が細胞培養容器17の内腔側に移送できるようになっている。他方、液体培地貯留容器2からは、無菌接続コネクター14およびバルブ5を経由して、細胞培養容器(中空糸モジュール)17の側部導管34aに、流路が接続され、液体培地貯留容器2に入っている培地が細胞培養容器17の外腔側に移送できるようになっている。
【0038】
細胞培養容器17の内腔側からは、バルブ7、バルブ11、送液ポンプ20、バルブ12、無菌接続コネクター16を経由して、廃液回収容器18まで流路が接続され、細胞培養容器17を通過した培地が廃棄できるようになっている。なお、前記流路に設けられた送液ポンプ20により、液体培地貯留容器1から細胞培養容器17への液体(培地など)の供給、前記細胞培養容器からの前記液体の排出、および前記液体の廃棄などにおける流速等を制御することができる。他方、細胞培養容器17の外腔側からは、バルブ6、バルブ9、送液ポンプ19、バルブ10、無菌接続コネクター16を経由して、廃液回収容器18まで流路が接続され、細胞培養容器17を通過した培地が廃棄できるようになっている。なお、前記流路に設けられた送液ポンプ19により、液体培地貯留容器2から細胞培養容器17への液体(培地など)の供給、前記細胞培養容器からの前記液体の排出、および前記液体の廃棄などにおける流速等を制御することができる。
【0039】
図1において、細胞回収容器3は、バルブ7、8および無菌接続コネクター15を介して細胞培養容器17の内腔側と連通している。必要により、この流路にさらにポンプ等を設けて、細胞を回収してもよい。なお、細胞の回収は、細胞培養容器17を細胞培養装置から取り外して行ってもよく、その場合は、内腔側の廃棄系の流路の分岐から細胞回収容器3までの構成は無くてもよい。
【0040】
図1において、CO
2インキュベーター41は、前記の構成のほとんどをカバーしているが、ガス透過性を有する液体培地貯留容器1、2および細胞培養容器17がカバーされていれば、その他の部分についてはCO
2インキュベーター41の外側に配置されていても構わない。
【0041】
図1において、作業コントローラー21(作業パネル)は、上記の操作や工程を行うため、またモニタリングを行うため等の便宜のために設定してもよい。
【実施例】
【0042】
(中空糸膜の作製)
ポリエーテルスルホン(4800P、住友化学社製)20質量%、ポリビニルピロリドン(K−90、BASF社製)0.2質量%、N−メチルピロリドン35.91質量%、トリエチレングリコール43.89質量%を混合溶解し、脱泡したものを製膜溶液として、N−メチルピロリドン13.5質量%、トリエチレングリコール16.5質量%、水70質量%水溶液を芯液として使用し、これを70℃に加温した2重管オリフィスの外側、内側より同時に吐出し、30cmの空走部を経て、75℃の水中(凝固浴中)に導き中空糸膜を形成し、水洗後巻き取った。糸束は切断後、60℃にて通風乾燥させた。中空糸膜は、概ね内径200μm、外径300μm、膜厚50μmとなるように吐出量を調整した。
【0043】
(中空糸膜モジュールの作製)
本発明において、細胞培養容器である中空糸膜モジュールは以下のように作製した。直径1cm、長さ10cmの円筒状のポリカーボネート製モジュールケース内に中空糸膜を100本充填した後、中空糸膜の中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、
図6に示すような形状のモジュールを作製した。
【0044】
(実施例1)
図2に、本実施例で用いた細胞培養装置の構成を簡略化して示す。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み70μmのポリエチレン製の培養バッグを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み1.5mmのPMP製の流路管を使用した。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様構成の細胞培養装置を用いた。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み150μmのPE製の培養バッグを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み1mmのPMP製の流路管を使用した。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様構成の細胞培養装置を用いた。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み150μmのPSt製の培養バッグを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれも実施例2と同様の流路管を使用した。
【0047】
(実施例4)
実施例1と同様構成の細胞培養装置を用いた。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれも実施例1と同様の培養バッグを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれも平均厚み3mmのシリコーン製の流路管を使用した。
【0048】
(比較例1)
実施例1と同様構成の細胞培養装置を用いた。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれもガス不透過性のガラス製ボトルを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれも実施例1と同様の流路管を使用した。
【0049】
(比較例2)
実施例1と同様構成の細胞培養装置を用いた。培養液貯留容器は、中空糸内腔側および外腔側いずれもガス不透過性のガラス製ボトルを使用した。また、培養液貯留容器と細胞培養容器とを接続する流路管は、中空糸内腔側および外腔側いずれもガス不透過性の流路管(ポリウレタン製、厚み1.5mm)を使用した。
【0050】
(細胞培養実験1:一般培養液使用)
図2に、細胞培養実験に用いた細胞培養装置の構成の概略を示す。培養液貯留容器と流路管は、実施例1から5および比較例1から3に記載の組合せを使用した。
細胞は、タカラバイオ株式会社より購入したプライマリーのヒト間葉系幹細胞を用いた。細胞播種密度は、1900cells/cm
2とした。培養液の流速は、中空糸内腔側は0.33mm/min、中空糸外腔側は3.46mm/minとした。培養液はウシ胎児血清を10%(v/v)添加したダルベッコ改変イーグル培地を用いた。培養液灌流用ポンプとして、中空糸内腔側灌流用と外腔側灌流用に計2台のペリスタ・バイオミニポンプ(アトー社製)(
図2の20(内腔側)および19(外腔側))を用い、CO
2インキュベーター内で37℃、7日間培養した。培養液供給方法は、中空糸内腔側、中空糸外腔側ともに一方向とした。中空糸内腔側に間葉系幹細胞を播種し、2日間静置した後に中空糸内腔側の灌流を開始した。7日間培養後、培養液灌流を停止し、細胞培養容器内にて増殖した細胞を回収した。細胞回収時は、細胞解離試薬である0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。
【0051】
(細胞培養実験2:低血清培養液使用)
細胞培養実験1と同様の細胞培養装置を用い、細胞培養実験2を行った。細胞は、タカラバイオ株式会社より購入したプライマリーのヒト間葉系幹細胞を用いた。この実験では、培養液として、ウシ胎児血清を1%(v/v)添加したMF−medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡社製)を用いた。細胞播種密度は、1900cells/cm
2とした。培養液の流速は、中空糸内腔側は0.33mm/min、中空糸外腔側は3.46mm/minとした。培養液灌流用ポンプに、中空糸内腔側灌流用と外腔側灌流用に計2台のペリスタ・バイオミニポンプ(アトー社製)(
図2の20(内腔側)および19(外腔側))を使用した。CO
2インキュベーター内で37℃、7日間培養した。培養液供給方法は、中空糸内腔側、中空糸外腔側ともに一方向とした。中空糸内腔側に間葉系幹細胞を播種し、2日間静置した後に中空糸内腔側の灌流を開始した。7日間培養後、培養液灌流を停止し、細胞培養容器内にて増殖した細胞を回収した。細胞回収時は、細胞解離試薬である0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。
【0052】
(細胞培養実験3:無血清培養液使用)
細胞培養実験1と同様の細胞培養装置を用い、細胞培養実験3を行った。細胞は、タカラバイオ株式会社より購入したプライマリーのヒト間葉系幹細胞を用いた。この実験では、培養液として、血清無添加のMF-medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡社製)を用いた。細胞播種密度は、1900cells/cm
2とした。培養液の流速は、中空糸内腔側は0.33mm/min、中空糸外腔側は3.46mm/minとした。培養液灌流用ポンプに、中空糸内腔側灌流用と外腔側灌流用に計2台のペリスタ・バイオミニポンプ(アトー社製)(
図2の20(内腔側)および19(外腔側))を使用した。CO
2インキュベーター内で37℃、7日間培養した。培養液供給方法は、中空糸内腔側、中空糸外腔側ともに一方向とした。中空糸内腔側に間葉系幹細胞を播種し、2日間静置した後に中空糸内腔側の灌流を開始した。培養7日後、培養液灌流を停止し、細胞培養容器内にて増殖した細胞を回収した。細胞回収時は、細胞解離試薬である0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。
【0053】
細胞培養実験の結果を表1にまとめて示す。実施例の結果から明らかなように、特定の範囲のガス透過性を有する培養液貯留容器および流路管(チューブ)を用いたものでは、比較例に比較して細胞増殖率(性)が明らかに高い結果となった。ただし、実施例4においては、チューブのガス透過性が高いためか、培養中、チューブ内に少量の気泡が確認された。
一方、ガス不透過性の培養液貯留容器とガス透過性チューブを用いた場合(比較例1)には、細胞増殖率が低い結果となった。また、ガス不透過性の培養液貯留容器とガス不透過性の流路管を用いた比較例2では、細胞培養装置内への酸素および炭酸ガスの供給ができないため、さらに細胞増殖率が低い結果となった。
【0054】
【表1】