特許第6848599号(P6848599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848599
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20210315BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20210315BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20210315BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20210315BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20210315BHJP
【FI】
   F16H25/22 L
   F16D65/18
   B60T13/74 G
   F16D121:24
   F16D125:40
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-66087(P2017-66087)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168926(P2018-168926A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 明義
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0162935(US,A1)
【文献】 特開昭54−120366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/00
B60T 13/00
F16D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に第一螺旋溝が形成されているねじ軸と、当該ねじ軸の外周側に設けられ内周に第二螺旋溝が形成されているナットと、前記第一螺旋溝と前記第二螺旋溝との間に設けられている複数の主ボールにより構成されているボール列と、コイルばね又は前記主ボールよりも直径が小さいボールにより構成され前記ボール列中に設けられている複数のスペーサ部材と、を備え、前記ねじ軸の回転により前記ナットに軸方向力が作用した状態で当該ナットが軸方向一方側から軸方向他方側へ移動するボールねじ装置であって、
複数の前記スペーサ部材は、前記ボール列の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている、ボールねじ装置。
【請求項2】
螺旋状となる前記ボール列に沿って隣り合う前記スペーサ部材間の前記主ボールの数は、軸方向他方側から軸方向一方側に向かうにしたがって減少している、請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、コイルばねにより構成されている、請求項1又は2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記第二螺旋溝の軸方向一方側に、前記ボール列の脱落を阻止するための第一ストッパと、前記ボール列に含まれる最も軸方向一方側の前記主ボールと当該第一ストッパとの間に位置する第一端部ばねと、が設けられており、
前記第二螺旋溝の軸方向他方側に、前記ボール列の脱落を阻止するための第二ストッパと、前記ボール列に含まれる最も軸方向他方側の前記主ボールと当該第二ストッパとの間に位置する第二端部ばねと、が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ装置は、回転運動を直線運動に変換することができ、様々な分野で広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。図7は、自動車のブレーキ装置が有するボールねじ装置の断面図である。このボールねじ装置90は、ねじ軸91と、このねじ軸91の外周側に設けられているナット92と、ねじ軸91の螺旋溝91aとナット92の螺旋溝92aとの間に設けられている複数の主ボール93とを備えている。ナット92は、有底筒形状のハウジング94に取り付けられており、ハウジング94は、ブレーキ装置が有する筒部(シリンダ)98内において、軸方向に移動可能でありかつ周方向に回転不能となって設けられている。これにより、図外のモータによってねじ軸91が回転すると、ナット92及びハウジング94が前進(又は後退)する。ブレーキ装置の場合、ハウジング94にバックアッププレート95を介してパッド96が取り付けられており、ハウジング94が前進することで、自動車の車輪と一体回転するディスク100に対してパッド96が接触し、制動力を生じさせることができる。
【0003】
このようなボールねじ装置90では、ねじ軸91の螺旋溝91aとナット92の螺旋溝92aとの間に、複数の主ボール93により構成されているボール列が設けられており、例えば、特許文献2の図2に示すように、このボール列中の所々にコイルばねが設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−35322号公報
【特許文献2】米国特許第20110162935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、従来のボールねじ装置において、ねじ軸91の螺旋溝91a及びナット92の螺旋溝92aを平面に展開した状態を示す説明図である。このボールねじ装置では、ボール列97中に複数のコイルばね99が等間隔で設けられている。各コイルばね99は、ボールねじ装置の動作中において、主ボール93の進み遅れを吸収することができる。
【0006】
図7に示すブレーキ装置の場合、パッド96をディスク100に接触させて制動力を生じさせるためには、ボールねじ装置90において、ねじ軸91を回転させてナット92及びハウジング94を軸方向一方側から軸方向他方側へ(図7では、右側から左側へ)移動させ、パッド96をディスク100に押し付ける。この際、ハウジング94は反力を受け、ナット92には比較的大きな軸方向力が作用する。図8において、前記のとおり、ナット92に比較的大きな軸方向力が作用した状態で、ナット92が軸方向一方側から他方側へ移動すると、主ボール93はナット92の螺旋溝92aに沿って転がりながら軸方向一方側へ向かおうとする。すると、ボール列97において、軸方向一方側で連続している複数(図8の場合では六つ)の主ボール93a〜93fは相互で競り合い、これが抵抗となってボールねじ装置の効率(ボールねじ効率)が低下する原因となる。つまり、図9に示すように、主ボール93a〜93fそれぞれの転がり方向は同じ方向(図9では反時計回り方向)であるため、これら主ボール93a〜93fが特に停滞気味になると、連続する主ボール93a〜93fの内の一部のボール、例として中央に位置している隣り合う主ボール93bと主ボール93c、及び、この主ボール93cと主ボール93dとは密接した状態で相互間に滑りが生じて回転を阻害し合う。つまり、相互で競り合いが生じ、抵抗となる。
【0007】
ボールねじ効率は、リード角と摩擦係数の影響を大きく受ける。つまり、リード角を大きくすればボールねじ効率は向上し、また、摩擦係数を小さくすればボールねじ効率は向上する。したがって、これらリード角及び摩擦係数を適宜調整すればボールねじ効率を改善することが可能となるが、本発明は、他の技術的手段を用いてボールねじ効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外周に第一螺旋溝が形成されているねじ軸と、当該ねじ軸の外周側に設けられ内周に第二螺旋溝が形成されているナットと、前記第一螺旋溝と前記第二螺旋溝との間に設けられている複数の主ボールにより構成されているボール列と、コイルばね又は前記主ボールよりも直径が小さいボールにより構成され前記ボール列中に設けられている複数のスペーサ部材と、を備え、前記ねじ軸の回転により前記ナットに軸方向力が作用した状態で当該ナットが軸方向一方側から軸方向他方側へ移動するボールねじ装置であって、
複数の前記スペーサ部材は、前記ボール列の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている。
【0009】
ねじ軸の回転によりナットに軸方向力が作用した状態でそのナットが軸方向一方側から軸方向他方側へ移動する際、螺旋状を成すボール列は第二螺旋溝に沿って転がりながら軸方向一方側へ向かおうとし、このボール列の内の軸方向一方側に存在する複数の主ボールが停滞気味となって相互密接すると、これら主ボール同士は相互で競り合いやすくなる。しかし、前記ボールねじ装置によれば、ボール列の軸方向一方側においてスペーサ部材が密に配置されていることで、主ボール間の競り合いが緩和され、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。なお、螺旋状を成すボール列のうち、軸方向他方側に存在する複数の主ボールは、比較的、競り合いが生じにくく、スペーサ部材が密に配置されていなくても、ボールねじ効率を低下させる原因となりにくい。
【0010】
また、螺旋状となる前記ボール列に沿って隣り合う前記スペーサ部材間の前記主ボールの数は、軸方向他方側から軸方向一方側に向かうにしたがって減少しているのが好ましい。この構成により、ボール列の軸方向他方側よりも軸方向一方側において、スペーサ部材は密に配置された構成となる。
【0011】
また、前記スペーサ部材は、コイルばねにより構成されているのが好ましい。この構成により、ボール列の軸方向一方側において、主ボールの進み遅れの抑制機能が高まり、また、主ボールが停滞気味となるのを抑え、主ボール間の競り合いが緩和され、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、前記第二螺旋溝の軸方向一方側に、前記ボール列の脱落を阻止するための第一ストッパと、前記ボール列に含まれる最も軸方向一方側の前記主ボールと当該第一ストッパとの間に位置する第一端部ばねと、が設けられており、前記第二螺旋溝の軸方向他方側に、前記ボール列の脱落を阻止するための第二ストッパと、前記ボール列に含まれる最も軸方向他方側の前記主ボールと当該第二ストッパとの間に位置する第二端部ばねと、が設けられているのが好ましい。これにより、ねじ軸の回転(逆回転)により、ナットに軸方向力がほとんど作用しない状態でナットが軸方向他方側から軸方向一方側へ移動する際、ボール列をほぼ中立位置として、ボール列の主ボールとナット(第二螺旋溝)とをほとんど相対移動させず、ボール列の主ボールとねじ軸(第一螺旋溝)との間で滑りを生じさせながら、ナットを軸方向一方側へ向かって移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ねじ軸の回転によりナットに軸方向力が作用した状態でこのナットが軸方向一方側から軸方向他方側へ移動するボールねじ装置において、スペーサ部材が軸方向一方側において密に配置されていることで、従来では生じやすかった軸方向一方側における主ボールの競り合いが緩和され、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ブレーキ装置の一例を示す断面図である。
図2】ボールねじ装置の分解斜視図である。
図3】ボールねじ装置の断面図である。
図4】第一螺旋溝及び第二螺旋溝を平面に展開した状態を示す説明図である。
図5】主ボールと中間ばねとの配置の変形例を示す図である。
図6】ボールねじ装置の変形例を示す説明図である。
図7】自動車のブレーキ装置が有する従来のボールねじ装置の断面図である。
図8】従来のボールねじ装置において、ねじ軸の螺旋溝及びナットの螺旋溝を平面に展開した状態を示す説明図である。
図9】従来のボール列の軸方向一方側に位置する主ボールを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のボールねじ装置は、例えば、車両(自動車)のブレーキ装置に用いられる。図1はブレーキ装置5の一例を示す断面図である。ブレーキ装置5は、自動車の車輪と一体回転するディスク6に対して摩擦による制動力を付与する。この制動力を発生させるために、ブレーキ装置5はボールねじ装置17を備えている。なお、図1では、ブレーキ装置5は非制動状態にある。
【0016】
ブレーキ装置5は、図外のナックル等に支持されたフローティングタイプのキャリパ7と、ディスク6を挟む一対のパッド8とを備えている。キャリパ7は、第一ボディ9と、この第一ボディ9と一体となっている第二ボディ10と、第一ボディ9に取り付けられているカバー11とを備えている。一方(図1では右側)のパッド8は、ボールねじ装置17が有する後述のハウジング21に取り付けられている第一バックアッププレート12に支持されており、他方(図1では左側)のパッド8は、第二ボディ10に取り付けられている第二バックアッププレート13に支持されている。
【0017】
第一ボディ9は、筒本体部14と底板部15とを含む筒形状(有底筒形状)を有しており、ディスク6側に向かって開口している。筒本体部14の内側にボールねじ装置17が設けられており、ボールねじ装置17は、ねじ軸18と、ナット19と、複数の主ボール20と、ハウジング21とを備えている。ねじ軸18の中心線Cがボールねじ装置17の中心線となり、この中心線Cに平行な方向を軸方向と呼ぶ。
【0018】
第一ボディ9の底板部15に貫通孔16が形成されている。この貫通孔16に転がり軸受22が取り付けられており、ねじ軸18は、転がり軸受22を介して、第一ボディ9により、中心線C回りの周方向に回転可能でかつ軸方向について移動不能として支持されている。ハウジング21と筒本体部14との間にはキー24が設けられており、ハウジング21は筒本体部14に対して軸方向に往復移動可能であるが、中心線C回りの周方向に回転不能となっている。
【0019】
ナット19とハウジング21とは後にも説明するが一体となっており、ねじ軸18が一方向に回転(正回転)すると、ナット19とハウジング21とはねじ軸18に沿って軸方向一方側(図1では右側)から軸方向他方側(図1では左側)へ移動する。これに対して、ねじ軸18が他方向に回転(逆回転)すると、ナット19とハウジング21とはねじ軸18に沿って軸方向他方側から軸方向一方側へ移動する。図1に示すブレーキ装置5では、移動するハウジング21がピストンとして機能し、第一ボディ9(筒本体部14)がハウジング21を収容してガイドするシリンダとして機能する。
【0020】
筒本体部14の外側に、モータ(電動モータ)51と、減速装置23とが設けられている。モータ51にはコントロールユニット52から指令信号が入力され、この指令信号に基づいてモータ51は正回転、逆回転、停止する。減速装置23は、モータ51の出力軸に固定されている第一のギヤ25と、ねじ軸18の軸方向一方側の端部に固定されている第二のギヤ26と、これらギヤ25,26の間に設けられている中間ギヤ27とを有している。なお、減速装置23は他の構成であってもよい。
【0021】
以上の構成により、モータ51が回転するとナット19及びハウジング21が、軸方向に移動する。つまり、モータ51から減速装置23を介して伝達されるねじ軸18の回転運動が、ボールねじ装置17によって、ナット19(及びハウジング21)の軸方向の直線運動に変換される。これにより、一対のパッド8がディスク6を挟み制動力を発生させる。
【0022】
図2は、ボールねじ装置17の分解斜視図である。図3は、ボールねじ装置17の断面図である。図2及び図3に示すように、ボールねじ装置17は、入力部材としてのねじ軸18と、ねじ軸18の外周側に設けられている出力部材としてのナット19とを備えている。そして、本実施形態のボールねじ装置17は、ハウジング21を更に備えている。ハウジング21は、筒部31と底部32とを含む有底筒形状であって、軸方向他方側である底部32側においてねじ軸18の軸方向他方側の端部33を収容可能としており、かつ、軸方向一方側となる開口側においてナット19が取り付けられている。ナット19をハウジング21に取り付ける(固定する)ために、ボールねじ装置17は、ナット19の軸方向他方の端面38と接触するC形の止め輪28を備えている。
【0023】
図3において、ハウジング21の筒部31は、ナット19の外周面34が嵌合する内周面35と、ナット19の軸方向他方側の端面36と接触する環状面37と、止め輪28を取り付けるための凹溝39とを有している。ハウジング21の内周面35にナット19を嵌め入れ、凹溝39に止め輪28を取り付けることで、ナット19は、ハウジング21の環状面37と止め輪28とによって軸方向に挟まれた状態となり、ナット19はハウジング21の軸方向一方側から脱落不能となる。ハウジング21の内周側に形成される空間は、環状面37を含みこの環状面37から軸方向一方側(開口側)に位置する大径の穴部48と、環状面37(の内周縁)から軸方向他方側に位置する小径の穴部49とによって構成されており、大径の穴部48にナット19が取り付けられている。
【0024】
また、図2に示すように、ナット19の軸方向他方側の端部40における外周形状は多角形となっており、ハウジング21の内周面35の軸方向一方側が、ナット19の前記端部40の形状に対応する多角形となっている。以上より、ナット19とハウジング21とは一体となっており、また、ナット19とハウジング21とは相対的に回転不能となる。
【0025】
図2及び図3において、ねじ軸18の外周に第一螺旋溝29が形成されており、ナット19の内周に第二螺旋溝30が形成されている。ねじ軸18は、ナット19よりも軸方向に長く、ナット19(第二螺旋溝30)よりも軸方向に広い範囲で第一螺旋溝29が形成されている。複数の主ボール20により構成されているボール列63は、第一螺旋溝29と第二螺旋溝30との間に設けられている。更に、本実施形態では、ボール列63中において、主ボール20,20間に設けられるスペーサ部材として(図2参照)コイルばね53が設けられている。以下において、各コイルばね53を中間ばね53と呼ぶ。後に具体例を説明するが、中間ばね53は、ボール列63中の所々に設けられている。
【0026】
図4は、ねじ軸18の第一螺旋溝29及びナット19の第二螺旋溝30を平面に展開した状態を示す説明図である。複数(図4では四つ)の中間ばね53は、ボール列63の軸方向他方側(図4では左側)よりも軸方向一方側(図4では右側)において密に配置されている。なお、中間ばね53の数は四つに限らず変更可能である。
【0027】
全ての主ボール20(ボール列63)は、ナット19の内周側に収容された状態にある。そして、ナット19の内周側(第二螺旋溝30)であって軸方向両端部に、ストッパ61,62が設けられている。軸方向一方側の第一ストッパ61は、主ボール20よりも直径の大きいボールにより構成されており、ナット19に移動不能となって設けられている。軸方向他方側の第二ストッパ62は、ナット19の穴に固定されているピン部材により構成されており、移動不能となっている。これら第一ストッパ61及び第二ストッパ62それぞれは、第二螺旋溝30から脱落しないように設けられており、中間ばね53を含むボール列63の脱落を阻止するための部材となる。なお、第一ストッパ61及び第二ストッパ62それぞれは別の形態であってもよい。
【0028】
更に、ナット19の内周側において、ボール列63に含まれる最も軸方向一方側の主ボール20と第一ストッパ61との間には、第一端部ばね64が設けられている。また、ボール列63に含まれる最も軸方向他方側の主ボール20と第二ストッパ62との間には、第二端部ばね65が設けられている。第一端部ばね64及び第二端部ばね65はそれぞれコイルばねにより構成されている。このように、本実施形態では、ナット19の第二螺旋溝30の軸方向一方側に、第一ストッパ61及び第一端部ばね64が設けられており、第二螺旋溝30の軸方向他方側に、第二ストッパ62及び第二端部ばね65が設けられている。そして、第一端部ばね64と第二端部ばね65との間に、中間ばね53を含むボール列63が設けられている。ボールねじ装置17が回転していない状態では、全ての中間ばね53及び端部ばね64,65は僅かに圧縮した状態にある。
【0029】
以上より、本実施形態のボールねじ装置17は、主ボール20が循環しない非循環方式である。このようなボールねじ装置17では、ナット19が軸方向に移動する際、主ボール20の進み遅れが発生することが知られている。進み遅れの発生は、例えばボールねじ装置17に作用するモーメント荷重(曲げ荷重)等の偏荷重や、螺旋溝29,30の歪み等による。そこで、ボール列63に中間ばね53が設けられており、中間ばね53が弾性変形することで、ボールねじ装置17の動作中において主ボール20の進み遅れを吸収することができ、主ボール20間の摩擦を低減している。
【0030】
図1に示すブレーキ装置5おいて、前記のとおり、パッド8をディスク6に接触させて制動力を生じさせるためには、ボールねじ装置17において、ねじ軸18を回転させてナット19及びハウジング21を軸方向一方側から軸方向他方側へ(図1では、右側から左側へ)移動させ、パッド8をディスク6に押し付ける。この際、ハウジング21は反力を受け、ナット19には比較的大きな軸方向力が作用する。このように、ナット19に比較的大きな軸方向力が作用した状態で、ナット19が軸方向一方側から他方側へ移動すると、図4において、各主ボール20は第二螺旋溝30に沿って転がりながら軸方向一方側へ向かおうとする。
【0031】
この場合、従来では、図8及び図9により説明したように、主ボール93a〜93fは、軸方向一方側において渋滞気味となり、相互で競り合い、これが抵抗となってボールねじ効率が低下する原因となっていた。
これに対して、本実施形態では(図4参照)、ボール列63において、軸方向他方側と比較して、軸方向一方側で中間ばね53が密に配置されている。このため、軸方向一方側で主ボール20が停滞気味となるのをより一層効果的に抑えることができ、隣り合う主ボール20,20間の競り合いが緩和され、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。なお、ボール列63のうち、軸方向他方側に存在する複数の主ボール20についても転がりながら軸方向一方側へ向かおうとするが、軸方向一方側に存在する主ボール20よりも遅れることから、比較的、停滞気味と成りにくい。このため、ボール列63の軸方向他方側では、比較的競り合いが生じにくく、中間ばね53が密に配置されていなくても、ボールねじ効率を低下させる原因となりにくい。
【0032】
主ボール20及び中間ばね53の配置の具体例について説明する。ボール列63において、最も軸方向一方側(図4において最も右側)に位置する主ボール20を「第一の主ボール20」と呼び、この第一の主ボール20の軸方向他方側(図4では左側)に隣りの主ボール20を「第二の主ボール20」と呼び、以下、同様に、軸方向他方側に向かって「第三の主ボール20」「第四の主ボール20」「第五の主ボール20」・・・と呼ぶ。また、ボール列63に含まれる複数の中間ばね53に関して、最も軸方向一方側(図4において最も右側)に位置する中間ばね53を「第一の中間ばね53」と呼び、この第一の中間ばね53から一つ軸方向他方側に位置する隣りの中間ばね53を「第二の中間ばね53」と呼び、以下、同様に、軸方向他方側に向かって「第三の中間ばね53」「第四の中間ばね53」「第五の中間ばね53」・・・と呼ぶ。
【0033】
ボール列63の軸方向一方側において渋滞気味になると、第一の主ボール20は(従来では)大きな負荷を受ける可能性があったが、図4に示す本実施形態では、この第一の主ボール20は第一端部ばね64と第一の中間ばね53とにより挟まれている。このため、第一端部ばね64と第一の中間ばね53とが弾性変形することで、前記のような負荷を逃がすことができ、第一の主ボール20はスムーズに転がることができる。
そして、第一の中間ばね53の軸方向他方側には、二つの主ボール20が連続して設けられており、その隣りに第二の中間ばね53が設けられている。この第二の中間ばね53の軸方向他方側には、三つの主ボール20が連続して設けられており、その隣りに第三の中間ばね53が設けられている。以下、同様に、軸方向他方側に向かって、一つの中間ばね53とその軸方向他方側に位置する中間ばね53との間に連続して設けられている主ボール20の数は増加している。そして、ボール列63の軸方向他方側では、軸方向一方側よりも多くの主ボール20が連続して設けられている。以上より、中間ばね53が、ボール列63の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている構成となる。なお、図4に示す主ボール20の数、及び中間ばね53の数は例示であり、例えばボールねじ装置17の型番(サイズ)に応じて変更可能である。
【0034】
図5(A)は、主ボール20と中間ばね53との配置の変形例を示す図である。図5(A)では、第一端部ばね64と第一の中間ばね53との間に設けられている主ボール20の数は(図4に示す形態と同様に)一つであり、第一の中間ばね53と第二の中間ばね53との間に設けられている主ボール20の数も一つである。このように、一つの中間ばね53(第一の中間ばね53)を挟んで両側の主ボール20の数は、同じであってもよい。
また、図5(B)は、更に別の変形例を示す図である。図5(B)では、第一の主ボール20と第二の主ボール20とが連続して並んで設けられており、その軸方向他方側の隣りに第一の中間ばね53が設けられている。このように、第一端部ばね64と第一の中間ばね53との間に設けられている主ボール20は、一つのみでなくてもよい。
【0035】
図4及び図5(A)(B)それぞれに示す各形態では、螺旋状となるボール列63に沿って隣り合う中間ばね53,53間の主ボール20の数は、軸方向他方側から軸方向一方側(各図では、左側から右側)に向かうにしたがって減少している。この構成により、ボール列63の軸方向他方側よりも軸方向一方側において、中間ばね53は密に配置された構成となる。
【0036】
以上のように、前記各実施形態のボールねじ装置17では、ねじ軸18の回転によりナット19に軸方向力が作用した状態で、ナット19が軸方向一方側から軸方向他方側(各図では、右側から左側)へ移動する。この際、螺旋状を成すボール列63は第二螺旋溝30に沿って転がりながら軸方向一方側へ向かおうとする。仮に、このボール列63の軸方向一方側に存在する複数の主ボール20が停滞気味となって相互密接すると、これら主ボール20同士は相互で競り合いやすくなる。しかし、前記のとおり、中間ばね53は、ボール列63の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている。このため、各中間ばね53が弾性変形することによって主ボール20が停滞気味となるのを抑えることができ、主ボール20,20間の競り合いが緩和される。この結果、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。なお、螺旋状を成すボール列63のうち、軸方向他方側に存在する複数の主ボール20は、前記のとおり、比較的、停滞気味と成りにくいため、競り合いが生じにくく、中間ばね53が密に配置されていなくても、ボールねじ効率を低下させる原因となりにくい。
【0037】
前記のように、ねじ軸18の回転(正回転)によりナット19に軸方向力が作用した状態で、このナット19が軸方向一方側から軸方向他方側へ移動するタイミングは、図1に示すブレーキ装置5において、制動力を生じさせる場合である。
これに対して、ブレーキ装置5において制動力を解除する際、ねじ軸18を逆回転させればよく、この場合、ナット19は軸方向他方側から軸方向一方側(各図では、左側から右側)へ移動するが、その移動の初期においてナット19に作用していた前記軸方向力は消失し、その後、ナット19には軸方向力がほとんど作用しない。
【0038】
図4及び図5(A)(B)それぞれに示すように、ボール列63の軸方向一方側に第一端部ばね64が設けられており、軸方向他方側に第二端部ばね65が設けられていることから、前記のように、ナット19に軸方向力がほとんど作用していない状態では、ボール列63をほぼ中立位置として、このボール列63の主ボール20とナット19(第二螺旋溝30)とはほとんど相対移動せず、ボール列63の主ボール20とねじ軸18(第一螺旋溝30)との間で滑りを生じさせながら、ナット19を軸方向一方側へ向かって移動させることができる。前記中立位置とは、ボールねじ装置17が回転していない状態でのボール列63の位置である。
【0039】
前記各形態では、ボール列63中の所々に、スペーサ部材として、コイルばねにより構成されている中間ばね53が設けられている場合について説明したが、中間ばね(コイルばね)53の代わりに、図6に示すように、スペーサ部材として、主ボール20よりも直径が小さいボール(スペーサボール)66が設けられていてもよい。そして、複数のスペーサボール66は、ボール列63の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている。なお、スペーサボール66の配置は、図5に示す中間ばね53の場合と同様に、ボール列63の軸方向一方側において密に配置されていれば、ボールねじ装置17の型式に応じて変更可能である。
【0040】
以上のように、ねじ軸18の回転によりナット19に軸方向力が作用した状態で、このナット19が軸方向一方側から軸方向他方側へ移動するボールねじ装置において、ボール列63中の所々にスペーサ部材が設けられており、このスペーサ部材は、コイルばね(中間ばね53)又は主ボール20よりも直径が小さいボール(スペーサボール66)により構成されている。そして、これら複数のスペーサ部材(中間ばね53又はスペーサボール66)は、ボール列63の軸方向他方側よりも軸方向一方側において密に配置されている。これにより、従来では生じやすかった軸方向一方側における主ボール20の競り合いが緩和され、ボールねじ効率を向上させることが可能となる。
【0041】
前記各形態のボールねじ装置17では、ボール列63中の軸方向他方側の領域において、中間ばね53(スペーサボール66)の配置が、軸方向一方側の領域よりも粗くなっている。これは、ボールねじ装置17の負荷容量が小さくなるのを防ぐためである。つまり、軸方向他方側の領域において、主ボール20の代わりに中間ばね53(スペーサボール66)を設け、軸方向他方側においても中間ばね53(スペーサボール66)を密に配置すると、主ボール20の数が減ってしまい、この結果、ボールねじ装置17の負荷容量が小さくなる。また、ボールねじ装置17の負荷容量が小さくならないように、主ボール20の数を減らさないで、軸方向他方側においても中間ばね53の数を増やすと、ボール列63が長くなってしまう。この場合、ボールねじ装置17が大型化してしまう。そこで、前記各形態では、負荷容量を維持するために、また、大型化を防ぐために、主ボール20及び中間ばね53(スペーサボール66)の数を変更しないで、中間ばね53(スペーサボール66)を軸方向一方側に偏らせて設けている。
【0042】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明のボールねじ装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。前記実施形態のボールねじ装置17は、主ボール20が循環しない非循環方式であるが、循環方式であってもよい。ただし、循環方式の場合、ナット19の移動ストロークが小さいことが必要であり、ボール列63の軸方向一方側に位置する主ボール20は、動作の前後を通じて、軸方向一方側に位置している必要がある。また、ボールねじ装置17が、ブレーキ装置に用いられる場合を説明したが、その他の機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
17:ボールねじ装置 18:ねじ軸 19:ナット
20:主ボール 29:第一螺旋溝 30:第二螺旋溝
53:中間ばね(コイルばね、スペーサ部材) 61:第一ストッパ
62:第二ストッパ 63:ボール列 64:第一端部ばね
65:第二端部ばね 66:スペーサボール(スペーサ部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9