(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濾過装置が並列して複数系統設けられ、前記水中ポンプによって揚水された濁水を前記複数系統の前記濾過装置のうちの一部に選択的に通水させる切り替え手段を設けた、
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の清水領域形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る清水領域形成装置の一態様を示す全体構成図である。
清水領域形成装置100は、例えば、ダム堤体や堤防などの水中の壁体10の前面に透明度が高い清水領域を形成することで、潜水士20による水中作業の視界を確保するのに用いられる装置である。
【0010】
清水領域形成装置100は、水中の壁体10の前面に配される筐体部200と、壁体10で堰き止められる水(ダム湖水など)に浮かぶ台船30に載せられるなどして水上に配される濾過装置300と、筐体部200の外側の濁水(ダム湖水)中に配される水中ポンプ400と、水中ポンプ400から濾過装置300に濁水を送る第1ホース500aと、濾過装置300での濾過処理で生成された清水を筐体部200に送る第2ホース500bと、を含んで構成される。
【0011】
図2は、筐体部200の構成を詳細に示す図である。
筐体部200は、壁体10に沿って清水を放水する放水部を構成するケース210と、ケース210の上面に固定される囲い部220とで構成され、ケース210及び囲い部220は、例えばポリプロピレンやアクリルなどの樹脂材料や、塩分による錆の発生などが少ないステンレスなどの材料で形成される。
【0012】
ケース210は、中空の箱状に形成され、上面211に清水の放水口となる矩形の開口部212が形成されて上面211が開放面をなす一方、底面213の外側には、第2ホース500bを接続するためのホースフランジ214が固定されている。なお、上面211の形状は矩形に限定されない。
ホースフランジ214に一端が接続される第2ホース500bは、濾過装置300で生成された清水をケース210内にホースフランジ214を介して供給し、ケース210の底面213側からケース210内に注入された清水は、ケース210の上面211側の開口部212を介してケース210の外部に向けて放水される。
なお、第1ホース500a及び第2ホース500bとして、例えば耐圧性を有する所謂サクションホースを用いることができるが、第1ホース500a及び第2ホース500bは、サクションホースに限定されない。
【0013】
ケース210の上面211に形成された開口部212には、ケース210の外部に向けて放水される清水の流れを整流するための整流部材である整流板215が取り付けられる。
整流板215は、例えば複数の孔が全面に穿設された板状部材であり、更に、係る板状部材を上下方向に間隔を空けて複数重ねて設けることもできる。また、開口部212に設ける整流部材として、ルーバーなどを用いることもできる。
【0014】
また、ケース210内には、ホースフランジ214の中空部214aの開放端を囲むように、有底筒状の整流キャップ216を設けてある。
整流キャップ216は、内側の第1整流キャップ216aと、第1整流キャップ216aを覆う外側の第2整流キャップ216bとの2重構造であり、第1整流キャップ216a及び第2整流キャップ216bは、底部(天井壁)には孔が穿設されずに閉塞端をなし、周壁に複数の孔が全面に形成されている。
【0015】
ホースフランジ214の中空部214aを上方に向けて流れる清水は、整流キャップ216の周壁に設けた孔を通過することで周囲に向けて流れが偏向され、整流板215の中央付近に偏って清水が流れることを抑制する。
なお、整流キャップ216a,216bの底部(天井壁)に、周壁に比べて開口率が小さくなるように複数の孔を設けることができ、また、整流キャップ216は、2重構造に限定されない。
【0016】
囲い部220は、ケース210の上面211を底面とし、開口部(放水口)212の上方領域を挟んで左右方向に対向して配置される一対の壁部材(側壁)221a,221bを備えて構成される。
一対の壁部材221a,221bは、ケース210の両側面を上方に延長するようにして設けられ、囲い部220は前面220a、背面220b(壁体10側の面)及び上面220cが開放面をなす。そして、ケース210の整流板215を通過した清水は、壁部材221a,221bで挟まれる領域に向けて放水される。
【0017】
壁部材221a,221bそれぞれの外側の面には、潜水士が筐体部200を手で支えるための取手部222a,222bを設けてあり、潜水士が取手部222a,222bを持って、筐体部200を水中で移動させたり、筐体部200を作業位置に固定したりすることができるようにしてある。
なお、ケース210及び囲い部220からなる筐体部200の大きさは、例えば、全高が0.5m〜1.5m程度で、幅及び奥行が0.5m〜1.5m程度に設定される。
【0018】
台船30に載せられる濾過装置300は、例えば、
図3に示すように構成される。
図3において、サイクロンセパレータ310は、遠心力を利用して固液分離を実施する装置である。
サイクロンセパレータ310の供給口311には、水中ポンプ400で揚水された濁水(ダム湖水)が第1ホース500aを介して供給され、透明度を低下させる要因となる異物(微粒子)が遠心力によって除去された水は、クリーン液出口(オーバーフロー管)312から排出され、異物を含むダーティ液はダーティ液出口(アンダーフロー管)313から排出される。
【0019】
サイクロンセパレータ310のクリーン液出口312に接続される配管320は、下流側で2つに分岐し、一方の配管320aは、第1フィルタユニット330aの入口に接続され、他方の配管320bは、第2フィルタユニット330bの入口に接続される。
第1フィルタユニット330a及び第2フィルタユニット330bは、圧力容器内にフィルタカートリッジを着脱可能(交換可能)に収容したものであり、フィルタカートリッジは、例えば、ポリプロピレンやポリエステルなどの樹脂材料で形成されるフェルト濾材で構成される。
【0020】
フィルタユニット330a,330bの上流側の配管320a,320bには、それぞれバルブ340a,340bを設けてあり、バルブ340a,340bの開度を個別に設定することで、フィルタユニット330a,330bに流入する水の流量が個別に調整される。
各フィルタユニット330a,330bの出口には、配管350a,350bの一端がそれぞれ接続され、配管350a,350bの他端は下流側で1つの配管350に接続され、配管350の端部には第2ホース500bの一端が接続される。
【0021】
サイクロンセパレータ310、フィルタユニット330a,330b、及び、バルブ340a,340bで構成される濾過装置300においては、バルブ340a,340bのうちの一方を閉じ他方を開くことで、サイクロンセパレータ310で異物が除去された水を、フィルタユニット330a,330bのいずれか一方に通水させて、サイクロンセパレータ310で除去できなかった異物を更に除去する。
図3に示した濾過装置300は、フィルタユニットを並列して2系統備えるが、フィルタユニットを3系統以上並列して設けることができる。
【0022】
水中ポンプ400は、濾過装置300が搭載される台船30から吊り下げられて水中に配され、揚水した濁水(ダム湖水)を吐出口に接続されたホース500aを介して濾過装置300に供給する。
以上のように、清水領域形成装置100は、筐体部200と、濾過装置300と、水中ポンプ400と、これらを接続するホース500a,500bとを含んで構成される。
【0023】
そして、潜水士20が水中の壁体10について補修・改修などの水中作業を行うときに、作業領域周辺の水(ダム湖水)が濁水であるために透明度が低く十分な視界を確保できない場合は、清水領域形成装置100を用いて壁体10の作業領域の前面に、良好な視界を確保できる透明度の高い清水領域を形成する。
詳細には、
図1、
図4に示すように、壁体10の作業領域に囲い部220の開放面である背面220bが重なるように、壁部材221a,221bの背面側の端縁を水中の壁体10に付けた状態に筐体部200を支持する。
これにより、左右の壁部材221a,221bと壁体10とが連接し、ケース210の上面211の開口部212から放水される清水の流れが、左右の壁部材221a,221b及び壁体10によって3方から囲まれることになる。
【0024】
囲い部220の背面220bが壁体10に付くように筐体部200を水中に配する場合、壁体10に設けたアンカーに筐体部200を係合させて固定したり、筐体部200にブイ(浮き)を取り付けて作業領域の水深に浮かせたり、また、
図1に示すように壁体10の地上部などに設置したクレーン600によって筐体部200を壁体10前面の水中に吊り下げたり、台船30に載せたクレーンで筐体部200を壁体10前面の水中に吊り下げたりすることができる。
また、潜水士20が取手部222a,222bを持って筐体部200を壁体40の所定位置に押し付けた状態で、水中作業を行うことも可能である。
【0025】
一方、濾過装置300は、台船30などに載せることで水上に配され、水上の濾過装置300から水中の筐体部200に向けて清水をホース500bで供給する。なお、濾過装置300を壁体10の地上部に設置することもできる。
また、水中ポンプ400は、ホース500aで吊り下げるようにして水中に配することができる他、筐体部200に水中ポンプ400の固定部を設け、筐体部200に水中ポンプ400を固定することもできる。
【0026】
なお、壁部材221a,221bと壁体10とで囲まれる領域内の濁水の温度と、ケース210の上面211の開口部212から放水される清水の温度との差(換言すれば、比重の差)が小さい方が、清水領域を安定して形成できる。
そこで、水中ポンプ400を筐体部200と同程度の水中深度に配して、水中ポンプ400で取水される濁水の温度と、壁部材221a,221bと壁体10とで囲まれる領域内の濁水の温度とを同程度にする。
なお、台船30上に水温を調節する水温調節装置を設け、水中ポンプ400で揚水された濁水の温度又は濾過装置300を通過した後の清水の温度を前記水温調節装置によって調節し、壁部材221a,221bと壁体10とで囲まれる領域内の濁水の温度と同程度に保つよう構成することができる。
【0027】
上記のように、筐体部200を水中の壁体10の作業領域に設置し、濾過装置300を地上(台船30上)に配し、水中ポンプ400を筐体部200と同程度の水中深度に配した状態で、水中ポンプ400を稼働させると、水中ポンプ17は周囲の濁水を吸い込み、水中ポンプ17の吐出口から吐出された濁水は第1ホース500aを介して濾過装置300に圧送される。
そして、濾過装置300は、水中ポンプ400から送られた濁水をサイクロンセパレータ310及びフィルタユニット330a、330bで濾過して透明度が高い清水を生成する。
【0028】
濾過装置300への通水で得られた清水は、第2ホース500bを介してケース210内に供給され、ケース210内に供給された清水は、ケース210の上面211の開口部212に固定された整流板215で整流されて、左右の壁部材221a,221b及び壁体10によって3方が囲まれる囲み領域250に放水され、ケース210から放水された清水は壁体10に沿って囲み領域250内を下方から上方に向けて流れる。
【0029】
なお、水中ポンプ400を配する水中深度は、筐体部200と同程度の水中深度に限定されず、例えば、水中ポンプ400の吸込口を囲み領域250の上方開放端付近に配置し、囲み領域250内を下方から上方に向けて流れた清水が濁水に混じってしまう前に、換言すれば、ダム湖水の透明度よりも高いうちに、再度水中ポンプ400に吸い込まれて循環するように構成することができる。
係る構成では、水中ポンプ400が吸い込む水の透明度が高くなって濾過装置300に捕集される異物(不純物粒子)の量が減り、濾過装置300の濾過能力をより長い期間に亘って維持させることが可能となり、濾過装置300を構成するフィルタユニット330a,330bのフィルタカートリッジの交換頻度が減って経済的に清水領域形成装置100を使用できる。
【0030】
左右の壁部材221a,221bと壁体10とによって3方が囲まれる囲み領域250の底面を放水口として下方から上方に向けて清水が放水されることで、囲み領域250(囲い部220内)に清水領域、換言すれば、透明度が高い水域が形成される。
つまり、壁体10の作業領域に筐体部200を付けるように設置することで、筐体部200の壁部材221a,221b(囲い部220)が壁体10と連接し、ケース210(放水部)から放水される清水の流れを囲む囲みを形成し、係る囲み内に清水を放水することで、囲み内に清水領域が形成される。
【0031】
ここで、ケース210(放水部)からは、壁体10に沿って清水が放水されるが、放水された清水は、コアンダ効果により壁部材221a,221bと壁体10とで囲まれた囲み領域250に寄せられる。
これにより、清水領域は壁体10の直前に形成され、清水領域と壁体10との間に濁水域が生じることが抑制される。
【0032】
潜水士20は、壁体10の作業領域の前に形成された清水領域によって、壁体10の作業領域を観察するための視界を確保でき、更に、壁体10に直接触れて補修・改修作業などを行うことが可能である。
従って、例えば壁体10がダムの堤体である場合は、ダム湖水が濁っていても高い作業効率で堤体の補修・改修作業などを行え、作業工程の遅延や作業コストの増大を抑制できる。
【0033】
また、濾過装置300は水上(台船30上)に配されるから、フィルタユニット330a,330bのフィルタカートリッジを交換する作業などのメンテナンス作業を地上で容易に行え、また、比較的サイズの大きなフィルタカートリッジを用いることが可能となり、フィルタユニット330a,330bで濾過できる時間が長くなり、フィルタカートリッジの交換頻度を抑えることができる。
濾過装置300を水中に配した場合は、フィルタカートリッジなどの部品交換が潜水作業となり、部品交換に時間を要する。
【0034】
また、例えばケース210内に濾過装置を内蔵させる場合には、フィルタカートリッジの大きさが制限され、ケース210を大型化してサイズの大きなフィルタカートリッジを収容させると、筐体部200が大型化し、潜水士20による筐体部200の取り扱いが困難になる。
これに対し、濾過装置300は水上(台船30上)に配されるから、フィルタカートリッジの交換が潜水作業にはならず、比較的短い時間で交換を行え、また、フィルタカートリッジのサイズを筐体部200の大きさとは無関係に設定できるから、十分に長い濾過時間を確保できる大きなサイズのフィルタカートリッジの採用が可能であり、更に、筐体部200を、壁体10の補修・改修に必要な最小限の大きさに設定できる。
【0035】
また、濾過装置300は、2系統のフィルタユニット330a,330bを備えるとともに、2系統のうちの1つに選択的に通水させる切り替え手段としてのバルブ340a,340bを備える。
このため、例えばバルブ340aを開きバルブ340bを閉じてフィルタユニット330aにのみ通水させている状態でフィルタユニット330aのフィルタカートリッジの交換が必要になった場合、バルブ340aを閉じバルブ340bを開くことで、フィルタユニット330aに通水される状態から新品のフィルタカートリッジが装着されたフィルタユニット330bに通水させる状態に切り替えることができる。つまり、フィルタカートリッジの交換が必要になっても清水を連続して筐体部200に供給でき、フィルタカートリッジの交換に伴って清水領域が無くなってしまうことがない。
【0036】
そして、フィルタユニット330bのフィルタカートリッジの交換が必要となるまでの期間内で、通水が停止されているフィルタユニット330aのフィルタカートリッジを交換しておけば、フィルタユニット330bのフィルタカートリッジの交換が必要になったときに、フィルタユニット330aに通水される状態に切り替えることができる。
また、濾過装置300では、フィルタユニット330a,330bに通水させる前に、サイクロンセパレータ310による異物の除去が行われるから、フィルタユニット330a,330bの濾過能力を維持できる時間が長くなる。
また、サイクロンセパレータ310は、目詰まりの発生がなくメンテナンスフリーであるため、フィルタユニット330a,330bに共通のプレ処理フィルタとして用いることができ、濾過装置300での連続濾過及びフィルタカートリッジの交換頻度の抑制を実現しつつ濾過装置300の構成を簡略化できる。
【0037】
なお、
図1−
図4に示した例では、壁体10の作業域近傍の濁水を濾過装置300で濾過してケース210に注水し、左右の壁部材221a,221bと壁体10とによって3方が囲まれる囲み領域250に清水領域を形成するが、例えば、壁体10の作業域から離れた清水域の清水や清水タンクに予め貯留されている清水をポンプでケース210に送水し、囲み領域250に清水領域を形成させることも可能である。
つまり、清水領域を形成するための清水をリアルタイムで濾過装置300によって生成する構成に限定されない。
【0038】
但し、濾過装置300を備えれば、ダム堤体付近のダム湖水が濁水であっても、ダム堤体近傍に水中ポンプ400を設置できると共に長い配管や清水タンクが不要で清水領域形成装置100を低廉かつ簡易に構成でき、更に、適当な清水域が付近に無い場合や、清水タンクの設置が困難な環境でも、清水領域を形成させることができるという汎用性を有する。
また、筐体部200において、囲い部220とケース210とを分離可能に構成することができる。
【0039】
また、一対の壁部材221a,221b(囲い部220)を備えずにケース210(放水部)のみで筐体部200を構成し、清水領域を形成させたい壁体10の前の領域を壁部材で囲まずに、ケース210から壁体10に沿って清水を放水させることによっても、清水領域を形成することは可能である。
しかし、
図1−
図4に示した清水領域形成装置100のように、壁部材221a,221bと壁体10とによって清水の放水領域(清水の流れ)を囲んでコアンダ効果を利用できるようにすれば、壁体10の直前のより広い範囲に清水領域を安定的に形成することができる。
【0040】
図5は、清水の放水領域を壁部材221a,221bで左右から囲むことなく壁体10の前面に清水を放出させた場合(
図5(A))、及び、左右の壁部材221a,221bと壁体10とによって3方が囲まれる囲み領域に清水を放出させた場合(
図5(B))について、それぞれ清水領域の形成範囲(濁度比分布)をシミュレーションした結果を示す。
なお、
図5は、正方形状に形成される放水口(ケース210の開口部212)の1辺の長さを1mとし、
図5(B)では放水口を挟んで壁部材221a,221bが対向するように配置し、更に、清水の放水流量を800リットル/分、濁水及び清水の温度を共に18℃、濁水の濁度を100mg/リットルとしたときに、放水開始から10分が経過した時点での放水口から0.5mの高さにおける濁度比の分布を示す。
【0041】
図5(A)に示す放水領域を左右の壁部材で囲まない場合では、壁体10の直前における清水領域の左右方向の幅が放水口の幅よりも狭く、清水領域が壁体10表面に直交する方向に細長い形状になっている。
これに対し、
図5(B)に示す放水領域を左右の壁部材221a,221bで囲んだ場合では、壁体10の直前における清水領域の左右方向の幅が放水口の幅(壁部材221a,221bの間隔)と略同等であり、
図5(A)の場合とは逆に、清水領域が壁体10の左右方向に細長い形状になっていて、左右の壁部材221a,221bで挟まれる領域の略全域で視界を確保できることになる。
【0042】
上記の
図5(A)、(B)における清水領域の大きさ、形状の違いは、コアンダ効果によるものである。
つまり、
図5(B)のように、左右の壁部材221a,221b及び壁体10によって3方が囲まれる囲み領域内に清水を放水する場合、清水の流れが左右の壁部材221a,221b及び壁体10に引き寄せられるコアンダ効果により、清水領域が左右方向に広がりかつ壁体10側に寄って形成される。
【0043】
一方、
図5(A)のように、清水の放水領域を左右方向から囲む壁部材を設けない場合は、コアンダ効果によって清水の流れが引き寄せられる壁が左右方向に存在しないため、形成される清水領域の左右方向の幅が左右の壁部材で囲んだ場合よりも狭くなり、潜水士の視界を確保できる領域の左右方向の幅も狭くなる。
換言すれば、筐体部200が、壁体10と連接する左右の壁部材221a,221bを備え、清水の流れがコアンダ効果により左右の壁部材221a,221b及び壁体10に引き寄せられるように清水を壁体10に沿って放水させることで、清水領域の形成能力を高めることができる。
【0044】
ところで、筐体部200の背面を水中の壁体10に付けたときに、筐体部200と壁体10との間に大きな隙間があると、係る隙間を介して囲み領域250内に濁水が浸入したり、隙間を介して囲み領域250内の清水が外部に漏れ出すことで、清水領域の透明度の低下や透明度のばらつきを生じさせたり、清水領域を縮小させたりする可能性がある。
ここで、壁体10の表面が平らであれば筐体部200と壁体10との間の隙間は十分に小さくなり、外部から囲み領域250内への濁水の浸入や囲み領域250内から外部への清水の漏れ出しは少なくなって、清水領域形成装置100は安定的に清水領域を形成できる。
【0045】
これに対し、壁体10の表面に凹凸(不陸)があると、係る凹凸の部分で筐体部200との間に大きな隙間が生じ、この隙間を介して外部から囲み領域250内に濁水が浸入したり清水が囲み領域250内から外部に漏れ出したりして、清水領域形成装置100による清水領域の形成能力を低下させる。
そこで、筐体部200の背面と壁体10との隙間を埋める手段(シール手段)を備え、壁体10の凹凸による清水領域の形成能力の低下を抑制できるようにした、筐体部200の第2の実施形態を、
図6に従って説明する。
【0046】
図6に示す筐体部200は、
図2に示した筐体部200に対し、弾性を有する枠部材(シール部材、シール手段)260を囲い部220と壁体10との接触面に設け、囲い部220が枠部材260を介して壁体10に付けられる構成とした点が異なる。
枠部材260は、左右の壁部材221a,221bの壁体10側(背面側)の端縁に沿って上下方向に延びる縦部260a,260bと、ケース210の壁体10側の面(背面)の上端(換言すれば、壁部材221a,221bで挟まれる囲み領域250の底側)に左右方向に沿って延びる横部260cとが一体となってU字状に形成される。
【0047】
枠部材260は、壁部材221a,221b及びケース210よりも背面側(壁体10側)に突出し、筐体部200の背面を水中の壁体10に押し付けるようにすると、壁部材221a,221b及びケース210は壁体10に直接当たらずに、枠部材260が壁体10に突き当たる。
そして、
図7に示すように、壁体10の凹凸に応じて枠部材260が弾性変形して、壁部材221a,221b及びケース210と壁体10との隙間を埋め、壁体10と筐体部200との隙間から囲み領域250内に濁水が浸入することや、囲み領域250内の清水が壁体10と筐体部200との隙間から外部に漏れ出すことが抑制される。
【0048】
これにより、筐体部200を設置する壁体10の表面(壁体10の作業領域)に凹凸があっても、清水領域形成装置100による清水領域の形成能力を高く維持できる。
枠部材260は、ゴムなどの弾性材料で形成することができる。
また、枠部材260として、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料やゴムなどで形成される可撓性を有する袋体に、流動体(水などの液体やジェル体)を入れたものを使用できる。
【0049】
図8は、袋体と内容物(流動体)とで構成される枠部材260の一例を示す。
図8において、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料やゴムなどで形成され可撓性を有する袋体261は、壁部材221a,221bの長さ及び間隔に合わせたU字状に形成され、この袋体261内に液体(水)やジェル体などの流動体262を入れて密閉される。
【0050】
ここで、
図8に示すように、U字状をなす袋体261の内部容積部のうちの両上端部に、流動体262で充たされない空洞部263が形成され、筐体部200を壁体10に押し付けたときに、壁体10の凹凸に応じて袋体261が変形すると共に袋体261内での流動体262の液面が上下し得るように構成されている。
但し、袋体261と流動体262とで構成される枠部材260として、袋体261の内部が全て流動体262で満たされた枠部材260を用い、袋体261が弾性変形して袋体261の容積が変化することで凹凸を吸収する構成とすることができる。また、空気などの気体を入れた袋体261を枠部材260として用いることができるが、空気の浮力による筐体部200の浮きを抑制する対策が必要になる。
【0051】
ところで、上記実施形態における清水領域形成装置100の筐体部200は、囲み領域250の開放面である前面220aから潜水士20が壁体10にアクセスできるように構成された小型の装置であるが、囲み領域内に潜水士20が入って水中作業を行える大型の筐体部を含んで清水領域形成装置100を構成することができる。
図9は、筐体部700の囲み領域750の大きさを潜水士20が中に入って水中作業を行える大きさとした第3の実施形態における清水領域形成装置100における作業状態を例示する。
また、
図10は、
図9に示した大型の筐体部700の構造を示す三面図である。
【0052】
図9及び
図10に示す筐体部700は、
図1,
図2に示した小型の筐体部200と同様に、放水部を構成するケース710と、ケース710から清水が放水される囲い部720とを備えて構成される。
なお、囲い部720内の囲み領域750の大きさは、例えば、高さ10m程度、奥行き5m程度とすることができる。
【0053】
囲い部720は、直方体状の囲み領域750を形成する筐体構造をなし、両側面は壁体10の左右方向に対向する一対の壁部材771a,771bで形成され、正面は壁体10に対向する仕切り壁771cで仕切られ、底面は床部材771dで構成され、囲み領域750の上面750a及び壁体10側となる背面750bが開放面になっている。
床部材771dには、整流板782が取り付けられる開口部(放水口)781が開口され、
図11に示すように、開口部781の下側には整流板782と共に放水部を構成するケース710が取り付けられる。
【0054】
ケース710は、開口部781を囲む中空の箱状に形成され、
図2に示したケース210と同様に、底面713の外側には、第2ホース500bを接続するためのホースフランジ714が固定されている。
更に、ケース710内には、ホースフランジ714の中空部714aの開放端を囲むように、有底筒状の整流キャップ716を設けてある。
【0055】
整流キャップ716は、内側の第1整流キャップ716aと、第1整流キャップ716aを覆う外側の第2整流キャップ716bとの2重構造であり、第1整流キャップ716a及び第2整流キャップ716bは、底部(天井壁)には孔が穿設されずに閉塞端をなし、周壁に複数の孔が全面に形成されている。
そして、ホースフランジ714に一端が接続される第2ホース500bは、濾過装置300で生成された清水をケース710内に供給し、ケース710の底面713側からケース710内に注入された清水は、整流キャップ716によって周辺に向けて偏向され、更に整流板782によって整流され、囲み領域750内に放水される。
【0056】
図10に示す例では、床部材771dの左右方向の略中央で壁体10(背面775b)寄りの位置に開口部(放水口)781を設けてあり、壁部材771a,771bが壁体10と連接するように筐体部700を壁体10に付けたときに、開口部(放水口)781から壁体10に沿って清水が放水されるよう構成してある。
なお、床部材771dの左右方向に間隔を空けて複数の放水部(開口部781、ケース710)を配することができる。
【0057】
図9及び
図10に示した筐体部700の囲い部720は、開放面である背面側が壁体10に付けられることで周囲の4面及び底面が閉塞され上面だけが開放面となる清水溜りを形成するから、ケース710及び開口部781を介して囲い部720内に放水される清水によって囲い部720内の濁水を清水に置き換え、囲い部720内に清水を溜めることができる。
例えば、囲い部720内の濁水よりも温度の低い(比重の重い)清水を囲い部720内に放水させることで、囲い部720内の濁水を上面から追い出して清水を溜めることができる。
【0058】
ここで、水中ポンプ400を囲い部720よりも水中深度のより深い位置に配し、水中ポンプ400が囲い部720内の濁水よりも温度の低い濁水を濾過装置300に向けて揚水するようにすれば、囲い部720内の濁水よりも温度の低い(比重の重い)清水を囲い部720内に放水させることができる。
大型の筐体部700を、ダム堤体などの水中の壁体10の前に設置するには、クレーンで筐体部700を壁体10の前の水中に吊り下げる方法や、クレーンで筐体部700を水中にまで降ろし、壁体10に設けたアンカーに固定する方法などを用いることができる。
【0059】
そして、
図9に示したように、壁体10の作業領域を囲むように筐体部700を壁体10に付け、囲い部720内に清水領域を形成させてから、潜水士20が上部開放面から囲い部720内に入って壁体10の補修・改修作業などを行うようにする。
大型の筐体部700の場合も、囲い部720内に清水領域が形成されることで、囲い部720内で作業する潜水士20の視界が確保され、潜水士20による壁体10の補修・改修作業を効率良くかつ安全に行わせることができる。
【0060】
また、潜水士20が内部に入って作業を行うような大型の囲い部720を有する筐体部700においても、ダム堤体などの壁体10に筐体部700を付けたときの囲い部720と壁体10との隙間を埋めるために、弾性を有する枠部材を備えるようにし、この枠部材を介して筐体部700が壁体10に接触する構成とすることができる。
【0061】
図12は、枠部材790を備えた大型の筐体部700の一例を示す。
図12において、枠部材790は、壁部材771a,771bそれぞれの背面775b側(壁体10側)の端縁に沿って上下方向に延びる縦部790a,790bと、床部材771dの背面775b側(壁体10側)の端縁に沿って左右方向に延びる横部790cとが一体となってU字状に形成される。
【0062】
そして、枠部材790は、壁部材771a,771b及び床部材771dよりも背面775b側に突出し、筐体部700の背面を水中の壁体10に押し付けるようにすると、枠部材790が壁体10に突き当たり、壁体10の凹凸に応じて枠部材790が弾性変形して、壁部材771a,771b及び床部材771dと壁体10との隙間を埋める。
従って、筐体部700を付ける壁体10に凹凸があっても、壁部材771a,771b及び床部材771dと壁体10との接触面における隙間を十分に小さくでき、隙間を介して濁水が内部に入ったり逆に隙間を介して清水が外部に漏れ出すことを抑制でき、壁体10の凹凸によって清水領域の形成性能が低下することを抑制できる。
【0063】
なお、枠部材790は、
図5に示した小型の筐体部200に設けられる枠部材260と同様に、ゴムなどの弾性材料で形成することができ、また、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料やゴムなどで形成される可撓性を有する袋体に水などの液体やジェル体を入れて形成することができる(
図8参照)。
【0064】
また、潜水士20が内部に入って水中作業を行う大型の筐体部700で構成される清水領域形成装置100では、地上のクレーン600によって筐体部700を水中の壁体10前に吊り下げるようにした場合に(
図9参照)、筐体部700を壁体10に押し付ける力が不十分となって、枠部材790を壁体10の凹凸に沿って十分に弾性変形させることができず、筐体部700と壁体10との間に隙間が残ってしまう可能性がある。
このような押し付け力不足の対策として、壁体10が勾配をもつ場合には、
図12に示すように、壁部材771a,771b及び床部材771dと枠部材790との間に、押し付け力を発生する重量枠791を挟む構成とすることができる。
【0065】
重量枠791は、枠部材790(袋体の内容物)よりも比重が大きい金属などの材料で、枠部材790の形に沿うU字型に形成される。
つまり、重量枠791は、枠部材790の上下方向に延びる縦部790a,790bに沿って設けられる縦部791a,791bと、枠部材790の左右方向に延びる横部790cに沿って設けられる横部791cとが一体となってU字状に形成される。
【0066】
重量枠791を枠部材790と筐体部700との間に挟んだ場合、
図13に示すように、壁体10が勾配θをもつと、重量枠791の重力質量の分力として筐体部700を壁体10に押し付ける力(壁体10の表面に直交する方向の力)が発生し、重量枠791を備えない場合に比べて筐体部700を壁体10に押し付ける力が増し、枠部材790を壁体10の凹凸に沿って十分に弾性変形させることができるようになる。
【0067】
これにより、壁体10の凹凸部分で筐体部700と壁体10との間に隙間が生じることを抑制でき、隙間を介した濁水又は清水の漏洩を小さくして、清水領域の形成性能を改善できる。
なお、
図6に示した、枠部材260を備える小型の筐体部200においても、枠部材260と筐体部200との間に重量枠を挟むことができ、重量枠を設けることで、大型の筐体部700の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
また、筐体部200,700に対して重量枠を着脱可能とし、筐体部200,700をクレーンで壁体10の前面に吊り下げる場合に重量枠を筐体部200,700に取り付け、筐体部200,700をアンカーで壁体10に固定する場合や小型の筐体部200を潜水士20が支持する場合などにおいては、予め重量枠を取り外した上で壁体10の前面に設置させることができる。
【0069】
また、清水領域形成装置100において、枠部材260、790を、
図8に例示したような袋体と袋体に充填される水とで構成する場合、水中作業が終了して筐体部200,700を水上に揚重するときに、袋体から水を抜いて空気に置換することで袋体が浮力を発生するようにして、揚重の負荷を軽減することができる。
また、袋体から水を抜いた状態で陸上での移送を行わせ、筐体部200,700を水中に降ろすときに袋体に水を入れるようにすれば、筐体部200,700の陸上での移送作業の負荷を軽減できる。
【0070】
また、清水を貯留するタンクを台船30上や壁体10の地上部分などに設け、当該タンク内の清水をケース210,710(放水部)にポンプで供給し、ケース210,710から囲い部220,720内に放水する構成とすることができる。
また、
図9,
図10に示した大型の囲い部720を用いる清水領域形成装置100において、ケース710及び開口部781を備えずに筐体部700を囲い部720だけで構成し、囲い部720を壁体10の前面に付けた状態で、囲い部720の開放面である上面から囲み領域750内に清水を放水させるためのホースを差し入れて付近の濁水よりも低温でかつ透明度の高い清水を囲み領域750内に放水したり、開放面である上面から溜り部内に凝集剤を投入して不純物粒子を凝集沈殿させたりして、囲み領域750内に清水を溜め、囲み領域750内に清水領域を形成することができる。
【0071】
また、
図1又は
図9に示した清水領域形成装置100では、筐体部200,700(ケース210,710)付近の水中深度から水中ポンプ400によって揚水された濁水を水上の濾過装置300で濾過させるが、水中ポンプ400によって揚水された濁水が水上の濾過装置300を経由するときに温度上昇して、囲い部220,720内の濁水と囲い部220,720内に放水される清水との間における温度差が拡大し、清水領域の安定形成に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0072】
そこで、濾過装置300の冷却手段を設け、濾過装置300での水温上昇を抑制するよう構成することができる。
例えば、
図14に示すように、台船30の上に冷却用プール30aを設置し、この冷却用プール30aに貯留される水の中に濾過装置300の少なくとも一部を沈めて、濾過装置300の温度上昇を抑制することができる。
【0073】
なお、サイクロンセパレータ310とフィルタユニット330a,330bとで構成される濾過装置300において、フィルタユニット330a,330bの圧力容器の少なくとも一部や、サイクロンセパレータ310の少なくとも一部が冷却用プール30aの水の中に没するよう構成することができる他、サイクロンセパレータ310及びフィルタユニット330a,330bを一体的に内蔵する容器の少なくとも一部が冷却用プール30aの水の中に没するよう構成することもできる。
【0074】
また、例えば水中ポンプ400で揚水された濁水の一部を冷却用プール30a内に放水させることで、冷却用プール30a内の水の入れ替えがなされ、冷却用プール30a内の水温上昇が抑制される構成とすることができる。
また、
図15に示すように、ダム湖水などの壁体10で堰き止められる水の水面近くに濾過装置300の少なくとも一部が没するように濾過装置300を支持する橋型クレーンなどの支持装置30bを、台船30に設けることができる。
【0075】
なお、
図15に示した、濾過装置300の少なくとも一部をダム湖水などの壁体10で堰き止められる水に没するように構成する場合も、濾過装置300を構成する複数のユニット単位で水中に没するように支持することができ、また、複数ユニットを一体的に内蔵する容器をその少なくとも一部が水中に没するように支持することもできる。
なお、
図14及び
図15は、小型の筐体部200を用いる清水領域形成装置100を例示するが、大型の筐体部700を用いる清水領域形成装置100においても、
図14,
図15に示した台船30を適用することができる。
【0076】
図14及び
図15に示す清水領域形成装置100では、夏季などの台船30上の気温が高くなるときでも、ケース210,710に送水される清水の温度が高くなることを抑制でき、清水領域を安定的に形成することができる。
また、濾過装置300が配される水中深度が浅いから、フィルタユニット330a,330bのフィルタカードリッジの交換作業を水上(台船30上)で実施することが可能で、交換作業に要する時間を短く抑制できる。
【0077】
なお、
図14又は
図15に示す清水領域形成装置100において、フィルタユニット330a,330bのフィルタカードリッジの交換作業をより簡易とするために、フィルタユニット330a,330bの圧力容器に設けられるフィルタカートリッジの着脱口が水上に露出し圧力容器の他の部分が水中に没するようにしたり、濾過装置300(フィルタユニット330a,330b)を冷却用プール30aなどから一時的に水上に持ち上げるリフト機構を台船30に備えたり、冷却用プール30aの水位をフィルタカートリッジの交換に適した水位まで低下させる水抜き孔を設けたりすることができる。
【0078】
また、
図15に示した、濾過装置300を支持する橋型クレーンなどの支持装置30bを台船30に設ける場合は、橋型クレーンによって濾過装置300を支持する高さ(水面との相対位置)を冷却要求に応じて任意に調整でき、また、フィルタカートリッジを交換するときに、交換作業が容易な高さにまで濾過装置300をリフトさせることができる。
【0079】
また、壁体10表面の凹凸(不陸)によって囲い部220と壁体10との間に隙間が生じることを抑制するための手段としては、
図16に示すように、壁部材221a,221bの壁体10側の端部を、可撓性を有したシート状部材226a,226bで構成することができる。
図16に示す例では、壁部材221a,221bの壁体10側の端縁221eが、ケース210の背面210cよりも所定長さだけ正面側に後退するように形成され、壁部材221a,221bの外側面の壁体10寄りの位置には、シート状部材226a,226bを固定するためのプレート状の固定部225a,225bを、壁部材221a,221bの高さ方向に沿って設けてある。
【0080】
そして、固定部225a,225bには、壁部材221a,221bの高さと略同等の高さに形成されたシート状部材226a,226bの一端が固定される。
シート状部材226a,226bは、例えば塩化ビニル樹脂やゴムなどでシート状に形成されて可撓性を有する部材(シールリップ部材)である。
【0081】
シート状部材226a,226bは、その端面が壁部材221a,221bと略平行になるように固定部225a,225bから壁体10側に向けて延設された後、筐体部200から離れる方向にそれぞれ延設方向を変え、シート状部材226aとシート状部材226bとの間隔は壁体10側の端部で最も広くなり、かつ、荷重を加わっていない状態で、シート状部材226a,226bの先端部は、ケース210の背面210cよりも壁体10側に突出するように成形されている。
つまり、シート状部材226a,226bは、壁部材221a,221bが壁体10から後退する部分を埋めるように延設され、更に、ケース210の背面210cが壁体10に当接するように筐体部200を設置したときに、壁体10に押されて弾性変形するよう構成される。
【0082】
上記のシート状部材226a,226bを設けた筐体部200を、壁体10の前面に設置すると、
図17に示すように、シート状部材226a,226bは、壁体10に押されて弾性変形しつつ、シート状部材226a,226bの先端部が壁体10に密着する状態を保持する。
これにより、壁体10の表面に凹凸(不陸)があっても、シート状部材226a,226bの弾性変形によって囲い部220と壁体10との間に隙間が生じることを抑制でき、囲い部220と壁体10との間の隙間を介した囲い部220内への濁水の流入や囲い部220内からの清水の流出を抑止でき、囲い部220内に安定して清水領域を形成することができる。
【0083】
なお、上記シート状部材226a,226bのようなシート状部材(シールリップ部材)を多重に設けることができ、また、可撓性を有する部材は、シート状部材(リップ状部材)に限定されない。
例えば、蛇腹状部材の一端を、壁体10に対する離接方向に伸縮するように壁部材221a,221bに固定し、筐体部200を壁体10の前面に設置したときに蛇腹状部材の他端が壁体10に当接し、蛇腹状部材が縮むよう構成することができる。
上記の蛇腹状部材を、シート状部材226a,226bに代えて壁部材221a,221bに設けることができ、また、シート状部材226a,226bと蛇腹状部材とを組み合わせて設けることができる。
【0084】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば種々の変形態様を採り得ることは自明である。
上記実施形態において、清水領域形成装置100の筐体部200は、壁体10に連接する壁部材として、壁体10の左右方向に対向する一対の壁部材221a,221bを備えるが、左右の壁部材のいずれか一方のみを備えるようにし、清水の流れがコアンダ効果によって壁部材と壁体とが交差する角部に寄せられるように構成することができる。
【0085】
また、
図1−
図2に示した筐体部200を含む清水領域形成装置100は、
図2(A)の上下方向を天地方向として使用する形態に限定されず、例えば、清水の流れ方向が略水平方向になるように筐体部200を横向きに設置して、清水領域を形成させることができる。
また、壁体10の左右方向に対向する一対の壁部材221a,221bと、この一対の壁部材221a,221bで挟まれる囲み領域内に放水するケース210(放水部)とを備える筐体部200を、壁体10の左右方向に複数並べて清水領域形成装置100を構成することができる。
【0086】
また、壁体10の左右方向に対向する一対の壁部材221a,221bは、相互に平行配置される構成に限定されず、例えば、ケース210から離れるほど、換言すれば、ケース210から放水される清水の流れ方向の下流側ほど、壁部材221a,221b相互の間隔が広がるように設けることができる。
【0087】
また、ケース210,710内に、整流キャップ216に代えてフィルタを設け、当該フィルタによって、清水の流れを分散させ、また、濾過装置300で濾過できなかった異物を除去させる構成とすることができる。
係る構成の場合、ケース210,710の上流側で濾過装置300による濾過が行われるから、ケース210,710に設けるフィルタのみで濾過を行わせる場合に比べて、ケース210,710内のフィルタの交換頻度を大幅に減らすことができる。
【0088】
また、ケース210,710内への清水の注水口は底側に限定されず、例えば、ケース210,710の側壁から清水をケース210,710内へ注水する構成とすることができ、また、開口部(放水口)が設けられるケース210,710の上面から清水をケース210,710内に注水させ、清水がケース210,710内でUターンして上面の開口部から放水される構成とすることができる。