特許第6849866号(P6849866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6849866硬化性樹脂組成物、液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6849866
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20210322BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C09K3/10 B
   C09K3/10 E
   C09K3/10 L
   C08G59/50
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-552926(P2020-552926)
(86)(22)【出願日】2020年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2020031767
【審査請求日】2020年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2019-163156(P2019-163156)
(32)【優先日】2019年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 駿介
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−179622(JP,A)
【文献】 特開昭59−232115(JP,A)
【文献】 特開平06−016721(JP,A)
【文献】 特表2003−510431(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084229(WO,A1)
【文献】 特開2004−238537(JP,A)
【文献】 特開2014−005384(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011189(WO,A1)
【文献】 特開2013−218170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G59/00 −59/72
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記熱硬化剤は、ヒドラジド化合物を含み、
前記ヒドラジド化合物は、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物を含む
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤
【請求項2】
前記少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物は、下記式(1)で表される化合物である請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1)中、Rは、炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Xは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1以上20以下の有機基である。
【請求項3】
更に、熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項記載の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているようなシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせた後にシール剤を硬化させ、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、機器の小型化は最も求められている課題である。機器の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部に光が到達し難く、従来のシール剤では硬化が不充分となる。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出して液晶汚染を発生させやすくなるという問題があった。特に、近年、液晶の高極性化に伴い、シール剤には更なる低液晶汚染性が求められていた。
【0005】
シール剤を光硬化させることが困難となる場合は、加熱によって硬化させることが考えられ、シール剤を加熱によって硬化させるための方法として、シール剤に熱硬化剤を配合することが行われている。しかしながら、シール剤の硬化性や接着性を向上させるために反応性の高い熱硬化剤を用いた場合、得られるシール剤が保存安定性に劣るものとなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、上記熱硬化剤は、ヒドラジド化合物を含み、上記ヒドラジド化合物は、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物を含む硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の構造を有する熱硬化剤を用いることにより、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子用シール剤として用いた場合に低液晶汚染性に優れるものとなる。
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤は、ヒドラジド化合物を含む。
上記ヒドラジド化合物は、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物を含む。以下、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物を「本発明にかかるヒドラジド化合物」ともいう。本発明にかかるヒドラジド化合物を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性の全てに優れるものとなる。
なお、本明細書において「少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有する」とは、ヒドラジド基末端の窒素原子が少なくとも1つのアルキル基と結合していることを意味する。また、本発明にかかるヒドラジド化合物が2以上のヒドラジド基を有する多官能ヒドラジド化合物である場合は、その一部又は全部のヒドラジド基末端の窒素原子が少なくとも1つのアルキル基と結合していることを意味する。
【0011】
本発明にかかるヒドラジド化合物を用いることにより、得られる硬化性樹脂組成物が保存安定性と接着性とを両立できる理由としては、以下のことが考えられる。
即ち、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有することにより、ヒドラジド基末端の窒素原子近傍がかさ高くなり保存安定性を向上させつつ、水素結合性が低下して融点が下がることにより反応性を高めることができていると考えられる。
【0012】
本発明にかかるヒドラジド化合物は、反応性の観点から、2以上のヒドラジド基を有する多官能ヒドラジド化合物であることが好ましい。
特に、本発明にかかるヒドラジド化合物としては、保存安定性と反応性とを両立する効果により優れ、かつ、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合に低液晶汚染性により優れるものとなることから、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
式(1)中、Rは、炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Rは、水素原子、又は、炭素数1以上15以下のアルキル基であり、Xは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1以上20以下の有機基である。
【0015】
上記式(1)中のRは、炭素数1以上15以下のアルキル基であることが好ましい。
上記式(1)中のRがアルキル基である場合、炭素数1以上15以下のアルキル基であることが好ましい。
【0016】
本発明にかかるヒドラジド化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、まず、全てのヒドラジド基の末端が−NH基であるヒドラジド化合物とケトン化合物又はホルムアルデヒドとをメタノール等の溶媒に溶解させる。次いで、得られた溶液に、酢酸ナトリウム、酢酸、及び、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを加えて反応させる。反応終了後、分液操作を行うことにより、本発明にかかるヒドラジド化合物を得ることができる。
【0017】
上記全てのヒドラジド基の末端が−NH基であるヒドラジド化合物としては、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、2,2−ジメチルグルタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、3−ヒドロキシグルタル酸ジヒドラジド、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)のヒドラジン誘導体等が挙げられる。
【0018】
上記ケトン化合物又は上記ホルムアルデヒドは、ヒドラジド基末端に置換するアルキル基の種類によって適宜決定される。例えば、ヒドラジド基末端にメチル基を有するものとする場合は、ホルムアルデヒドが用いられ、ヒドラジド基末端にイソプロピル基を有するものとする場合は、アセトンが用いられる。
【0019】
本発明にかかるヒドラジド化合物の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が20重量部である。本発明にかかるヒドラジド化合物の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性や接着性や液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性により優れるものとなる。本発明にかかるヒドラジド化合物の含有量が20重量部以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が保存安定性により優れるものとなる。本発明にかかるヒドラジド化合物の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0020】
本発明にかかるヒドラジド化合物中の、アルキル基が導入されたヒドラジド基の割合(変性率)は、30モル%以上であることが好ましい。上記変性率が30%モル以上であることにより、液晶汚染性をより低減することができる。上記変性率は、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。
なお、上記変性率は、NMRにて、ヒドラジド基末端のNHのピークと、アルキル基が導入された後のNHのピークの比率から求めることができる。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、本発明にかかるヒドラジド化合物に加えて、その他の熱硬化剤を含有してもよい。
上記その他の熱硬化剤としては、例えば、上述した有機酸ヒドラジドや、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0023】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON850(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA−830CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エポミックR710(三井化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA−1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA−7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX−4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP−4032、EPICLON EXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP−7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0024】
上記エポキシ化合物としては、部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂も好適に用いられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0025】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561、KRM8287(いずれもダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0026】
また、上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物を含んでいてもよい。
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0031】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、本発明の硬化性樹脂組成物の含有する硬化性樹脂として上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
【0032】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911等が挙げられる。
【0033】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0036】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T等が挙げられる。
【0038】
上記硬化性樹脂として上記エポキシ化合物に加えて上記(メタ)アクリル化合物を含有する場合、又は、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を含有する場合、上記硬化性樹脂中のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との合計中における(メタ)アクリロイル基の比率を30モル%以上95モル%以下になるようにすることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基の比率がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、得られる硬化性樹脂組成物が接着性により優れるものとなる。
【0039】
上記硬化性樹脂は、液晶汚染をより抑制する観点から、−OH基、−NH−基、−NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、速硬化性等の観点から、更に、熱ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
【0041】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
上記熱ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0042】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0043】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ開始剤としては、例えば、V−65、V−501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0044】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0045】
上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.2重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や熱硬化性により優れるものとなる。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を含有してもよい。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
上記光ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や光硬化性により優れるものとなる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は7重量部である。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有してもよい。
【0049】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主に硬化性樹脂組成物と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0052】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0055】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0056】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の硬化性樹脂組成物に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、上記光ラジカル重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の硬化性樹脂組成物の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の硬化性樹脂組成物に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、1μmあたりの光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、通常は5以下となる。
【0057】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを配合した本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0058】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、14M−C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0059】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0060】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の接着性、硬化後の強度、及び、描画性を大きく低下させることなく、より優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、熱硬化剤と、必要に応じて添加される熱ラジカル重合開始剤等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子用シール剤として好適に用いられる。本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤もまた、本発明の1つである。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の硬化性樹脂組成物と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0066】
上記導電性微粒子としては、例えば、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0067】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0068】
本発明の液晶表示素子としては、狭額縁設計の液晶表示素子が好ましい。具体的には、液晶表示部の周囲の枠部分の幅が2mm以下であることが好ましい。
また、本発明の液晶表示素子を製造する際の本発明の硬化性樹脂組成物の塗布幅は1mm以下であることが好ましい。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。
液晶滴下工法によって本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
まず、基板に本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シール剤を加熱して硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。また、シール剤を加熱して硬化させる工程の前にシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0072】
(化合物Aの合成)
温度計及び撹拌機を備えた3つ口フラスコ中でマロン酸ジヒドラジド132g(1モル)及びアセトン145g(2.5モル)をメタノール500mLに溶解させた。得られた溶液に酢酸ナトリウム164g(2モル)、酢酸240g(2モル)、及び、シアノ水素化ホウ素ナトリウム46.1g(0.7モル)を加え、窒素置換しながら25℃で2時間撹拌して反応させた。反応終了後、分液操作を行うことにより、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Aを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Aは、下記式(2)で表される化合物であることを確認した。
【0073】
【化2】
【0074】
(化合物Bの合成)
シアノ水素化ホウ素ナトリウムの添加量を23.1g(0.35モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Bを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Bは、ヒドラジド基が50モル%アルキル化されたことを確認し、下記式(3)で表される化合物を含むことを確認した。
【0075】
【化3】
【0076】
(化合物Cの合成)
アセトン145gを、ホルムアルデヒド75g(2.5モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Cを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Cは、下記式(4)で表される化合物であることを確認した。
【0077】
【化4】
【0078】
(化合物Dの合成)
マロン酸ジヒドラジド132gを、セバシン酸ジヒドラジド230g(1モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Dを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Dは、下記式(5)で表される化合物であることを確認した。
【0079】
【化5】
【0080】
(化合物Eの合成)
マロン酸ジヒドラジド132gを、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン314g(1モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Eを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Eは、下記式(6)で表される化合物であることを確認した。
【0081】
【化6】
【0082】
(2,2−ジメチルグルタル酸ジヒドラジドの合成)
温度計及び撹拌機を備えた3つ口フラスコ中で2,2−ジメチルグルタル酸28.0g(0.175モル)をメタノール150mLに溶解させ、そこに濃硫酸を1.8g加え、24時間還流した後、メタノールを減圧濃縮し、結晶を析出させた。得られた結晶をエタノールで再結晶化させ、2,2−ジメチルグルタル酸エステル中間体を得た。
次いで、還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた3つ口フラスコ中でヒドラジン水和物75.1g(1.5モル)をメタノール50mL及び水10mLに溶解させ、2,2−ジメチルグルタル酸エステル中間体18.8g(0.1モル)を滴下した。滴下終了後、還流下で3時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却することで析出した固形物を分離した。分離した固形物をメタノールに溶解させ、冷却して再度析出させる操作を行うことにより、2,2−ジメチルグルタル酸ジヒドラジドを得た。
なお、得られた2,2−ジメチルグルタル酸ジヒドラジドの構造はH−NMR、MS、及び、FT−IRにより確認した。
【0083】
(化合物Fの合成)
マロン酸ジヒドラジド132gを、2,2−ジメチルグルタル酸ジヒドラジド188g(1モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Fを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Fは、下記式(7)で表される化合物であることを確認した。
【0084】
【化7】
【0085】
(化合物Gの合成)
シアノ水素化ホウ素ナトリウムの添加量を13.9g(0.21モル)に変更したこと以外は上記「(化合物Aの合成)」と同様にして、本発明にかかるヒドラジド化合物として化合物Gを得た。
なお、H−NMR、MS、及び、FT−IRにより、得られた化合物Gは、ヒドラジド基が30モル%アルキル化されたことを確認し、上記式(3)で表される化合物を含むことを確認した。
【0086】
(実施例1〜9、比較例1〜5)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜9、比較例1〜5の各硬化性樹脂組成物を調製した。
【0087】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について、製造直後の初期粘度と、製造後に25℃で1週間保管した後の粘度とを測定した。(保管後の粘度)/(初期粘度)を増粘率とし、増粘率が1.1未満であったものを「◎」、1.1以上1.5未満であったものを「○」、1.5以上2.0未満であったものを「△」、2.0以上であったものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV−III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0089】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行った。脱泡処理後の硬化性樹脂組成物をディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてガラス基板(150mm×150mm)の端から30mm内側四方にディスペンスし、別のガラス基板(110mm×110mm)を真空下で重ねて貼り合わせた。高圧水銀ランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒間照射して硬化性樹脂組成物を仮硬化させ、次いで、120℃で1時間加熱して硬化性樹脂組成物を熱硬化させ、接着試験片を得た。得られた接着試験片の基板の端部を半径5mmの金属棒を使って5mm/minの速度で押し込んだときに、パネル剥がれが起こる際の強度(kgf)を測定し、接着力(kg/cm)を算出した。
接着力が3.5kg/cm以上であった場合を「◎」、接着力が3.0kg/cm以上3.5kg/cm未満であった場合を「○」、接着力が2.0kg/cm以上3.0kg/cm未満であった場合を「△」、接着力が2.0kg/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0090】
(低液晶汚染性(NI点))
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物0.1gと液晶(東京化成工業社製、「4−ペンチル−4−ビフェニルカルボニトリル」)1gとをサンプル瓶に加えた。このサンプル瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後静置して25℃に戻ってから液晶部分を取り出し、0.2μmフィルターによりろ過して評価用液晶サンプルとした。得られた評価用液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、示差走査型熱量計(TA instrument社製、「DSC−Q100」)を使用し、昇温速度5℃/分の条件でNI点の測定を行った。なお、硬化性樹脂組成物と未接触の上記液晶10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件でNI点の測定を行った結果をブランクとした。
評価用液晶サンプルで測定されたNI点とブランクのNI点との差が−2℃以上であった場合を「◎」、−3℃以上−2℃未満であった場合を「○」、−5℃以上−3℃未満であった場合を「△」、−5℃未満であった場合を「×」として低液晶汚染性を評価した。
【0091】
(液晶表示素子の表示性能)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物100重量部に平均粒子径5μmのスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI−H050」)1重量部を分散させ、シリンジに充填し、遠心脱泡機(アワトロンAW−1)にて脱泡した。脱泡処理後の硬化性樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて、ノズル径0.4mmφ、ノズルギャップ42μm、シリンジの吐出圧100〜400kPa、塗布速度60mm/secの条件で2枚の配向膜及びITO付き基板の一方に枠状に塗布した。このとき、硬化性樹脂組成物の線幅が約1.5mmとなるように吐出圧を調整した。続いて液晶(東京化成工業社製、「4−ペンチル−4−ビフェニルカルボニトリル」)の微小滴を、硬化性樹脂組成物を塗布した基板の硬化性樹脂組成物の枠内全面に滴下塗布し、真空下でもう一方の基板を貼り合わせた。貼り合わせ後すぐに硬化性樹脂組成物部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射して硬化性樹脂組成物を仮硬化させた。次いで、120℃で1時間加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製した。
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について3つの液晶表示素子を作製し、得られたそれぞれの液晶表示素子について、液晶表示素子作製直後における硬化性樹脂組成物付近の液晶配向乱れを目視によって確認した。配向乱れは表示部の色むらより判断し、液晶表示素子の周辺部に表示むらが全く見られなかった場合を「◎」、少し薄い表示むらが見えた場合を「○」、はっきりとした濃い表示むらがあった場合を「△」、はっきりとした濃い表示むらが周辺部のみではなく、中央部まで広がっていた場合を「×」として液晶表示素子の表示性能を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は実用に全く問題のないレベルである。
【0092】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子を提供することができる。
【要約】
本発明は、保存安定性、接着性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化剤は、ヒドラジド化合物を含み、前記ヒドラジド化合物は、少なくとも1つのヒドラジド基末端にアルキル基を有するヒドラジド化合物を含む硬化性樹脂組成物である。