(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1光、及び前記第1光よりもコヒーレント長が長い第2光を用いて、前記第2光の干渉結果に基づいて光路長差を調整しつつ、前記第1光による観察対象物の干渉光像を取得する干渉観察のための観察対象物カバーであって、
前記第1光を透過させると共に前記第2光を反射させる透過反射部と、
前記観察対象物が載置される載置面と前記透過反射部とが所定の間隔を空けて互いに向かい合うように、前記透過反射部を支持する支持部と、を備える、観察対象物カバー。
前記支持部は、第1板部と、前記第1板部と前記透過反射部との間に段差が形成されるように前記第1板部及び前記透過反射部に接続された第2板部と、を有し、前記透過反射部が前記第1光の入射方向において前記第1板部に対して前記載置面側に位置するように、前記透過反射部を支持する、請求項1に記載の観察対象物カバー。
前記第2板部は、前記透過反射部から離れるほど前記第2板部及び前記透過反射部によって画定される空間が拡がるように、前記第1光の前記入射方向に対して傾斜して延在している、請求項2に記載の観察対象物カバー。
前記第2板部及び前記透過反射部によって画定される空間は、前記第1光の入射方向に直交する断面において円形状を呈している、請求項2又は3に記載の観察対象物カバー。
前記透過反射部は、光透過性の基板と、前記基板における前記載置面側に向く表面に設けられ、前記第1光を透過させると共に前記第2光を反射させる光学層と、を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の観察対象物カバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような干渉観察には、利便性の向上の観点から、観察条件の緩和が望まれる。そこで、本発明は、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる観察対象物カバー、干渉観察用容器、干渉観察装置及び干渉観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の観察対象物カバーは、第1光、及び第1光よりもコヒーレント長が長い第2光を用いて、第2光の干渉結果に基づいて光路長差を調整しつつ、第1光による観察対象物の干渉光像を取得する干渉観察のための観察対象物カバーであって、第1光を透過させると共に第2光を反射させる透過反射部と、観察対象物が載置される載置面と透過反射部とが所定の間隔を空けて互いに向かい合うように、透過反射部を支持する支持部と、を備える。
【0006】
この観察対象物カバーでは、観察対象物が載置される載置面と透過反射部とが所定の間隔を空けて互いに向かい合うように、透過反射部が支持される。この観察対象物カバーを用いて干渉観察が行われる際には、載置面上に観察対象物が載置され且つ載置面と透過反射部とが所定の間隔を空けて互いに向かい合った状態において、第1光及び第2光が透過反射部に対して載置面とは反対側から入射する。これらの光のうち、第2光は透過反射部により反射される一方、第1光は、透過反射部を透過して観察対象物により反射された後、透過反射部を再び透過して入射側に戻る。したがって、この観察対象物カバーによれば、第2光を観察対象物に入射させることなく、干渉観察を行うことができる。その結果、第2光が観察対象物に与える影響を考慮する必要がないため、第2光の特性(例えば波長)の選択についての自由度を高めることができる。また、第2光が観察対象物に入射しないため、光透過性を有する観察対象物だけでなく、光透過性を有しない観察対象物をも観察することができる。このように、この観察対象物カバーによれば、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。
【0007】
本発明の観察対象物カバーでは、支持部は、第1板部と、第1板部と透過反射部との間に段差が形成されるように第1板部及び透過反射部に接続された第2板部と、を有し、透過反射部が第1光の入射方向において第1板部に対して載置面側に位置するように、透過反射部を支持してもよい。これによれば、透過反射部を載置面(観察対象物)に近づけることができ、ノイズの発生を抑制することができる。また、例えば透過反射部に対して載置面とは反対側に対物レンズが配置される場合に、第2板部及び透過反射部によって画定される空間内に対物レンズを配置することができる。その結果、対物レンズを透過反射部に近づけることができ、対物レンズと載置面(観察面)との間の距離を対物レンズのワーキングディスタンス内に容易に収めることができる。
【0008】
本発明の観察対象物カバーでは、第2板部は、透過反射部から離れるほど第2板部及び透過反射部によって画定される空間が拡がるように、第1光の入射方向に対して傾斜して延在していてもよい。これによれば、例えば透過反射部に対して載置面とは反対側に対物レンズが配置される場合に、対物レンズを当該空間内に容易に配置することができる。
【0009】
本発明の観察対象物カバーでは、第2板部及び透過反射部によって画定される空間は、第1光の入射方向に直交する断面において円形状を呈していてもよい。これによれば、例えば透過反射部に対して載置面とは反対側に対物レンズが配置される場合に、対物レンズを空間内に一層容易に配置することができる。
【0010】
本発明の観察対象物カバーでは、支持部は、第2板部と互いに向かい合うように第1板部から延在する第3板部を更に有していてもよい。これによれば、透過反射部を支持部によって好適に支持することができる。
【0011】
本発明の観察対象物カバーでは、透過反射部は、光透過性の基板と、基板における載置面側に向く表面に設けられ、第1光を透過させると共に第2光を反射させる光学層と、を有してもよい。これによれば、光学層を載置面(観察対象物)に近づけることができ、ノイズの発生を一層抑制することができる。
【0012】
本発明の干渉観察用容器は、観察対象物カバーと、載置面が設けられた底壁部、及び、底壁部から載置面と直交する方向に沿って延在する側壁部を有する保持部材と、を備え、観察対象物カバーは、載置面と透過反射部が所定の間隔を空けて互いに向かい合うように、側壁部上に配置される。この干渉観察用容器によれば、上述した理由により、第2光を観察対象物に入射させることなく干渉観察を行うことができ、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。更に、保持部材が側壁部を有しており、観察対象物カバーが側壁部上に配置されるため、干渉観察用容器の取り扱いを容易化することができる。
【0013】
本発明の干渉観察用容器では、観察対象物カバーは、観察対象物カバーと保持部材との間が密閉されるように、保持部材に取り付けられてもよい。これによれば、外気中の異物による観察対象物の汚染を抑制することができる。
【0014】
本発明の干渉観察用容器では、側壁部には、第1螺合部が設けられており、支持部は、第1光の入射方向に沿って延在する第4板部を有し、側壁部には、第1螺合部が設けられており、第4板部には、第1螺合部と螺合する第2螺合部が設けられており、観察対象物カバーは、第1螺合部と第2螺合部とが互いに螺合することにより、保持部材に取り付けられてもよい。これによれば、観察対象物カバーと保持部材とを互いに強固に固定することができる。また、第1螺合部と第2螺合部との間の螺合量を変化させることにより、透過反射部と載置面(観察対象物)との間の距離を調整することができる。
【0015】
本発明の干渉観察装置は、上記観察対象物カバーと、第1光を出力する第1光源と、第2光を出力する第2光源と、第1光の干渉光、及び第2光の干渉光を出力する干渉光学系と、第1光の干渉光を検出する第1光検出部と、第2光の干渉光を検出する第2光検出部と、載置面が設けられた保持部材と、を備える。この干渉観察装置によれば、上述した理由により、第2光を観察対象物に入射させることなく干渉観察を行うことができ、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。
【0016】
本発明の干渉観察方法は、上記干渉観察装置を用いた干渉観察方法であって、載置面に観察対象物を載置する第1ステップと、第1ステップの後に、載置面と透過反射部とが所定の間隔を空けて互いに向かい合うように観察対象物カバーを配置する第2ステップと、第2ステップの後に、第2光の干渉結果に基づいて光路長差を調整しつつ、第1光による観察対象物の干渉光像を取得する第3ステップと、を含む。この干渉観察方法によれば、上述した理由により、第2光を観察対象物に入射させることなく干渉観察を行うことができ、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる観察対象物カバー、干渉観察用容器、干渉観察装置及び干渉観察方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に示される干渉観察装置1は、容器(干渉観察用容器)2内に収容された観察対象物3の表面又は内部を観察するための装置である。観察対象物3の例としては、例えば、細胞等の生体試料、又は電子部品や金属加工片等の工業試料が挙げられる。容器2の詳細については後述する。干渉観察装置1は、容器2に加えて、第1光源11、第2光源12、レンズ21〜25、アパーチャ26、光合波器27、ハーフミラー28、光分波器29、撮像部31、解析部32、受光部33、変位検出部34、ピエゾアクチュエータ35、駆動部36、ミラー37、ステージ38、駆動部39及び制御部40を備えている。容器2は、ステージ38上に載置されている。
【0021】
第1光源11は、インコヒーレントな第1光L1を出力する。第1光源11は、例えば、波長帯域400nm〜1000nmの広帯域光を出力するタングステンランプやハロゲンランプ、波長帯域500nm〜700nmの広帯域光を出力する白色LED、波長帯域610nm〜640nmのインコヒーレント光を出力する単色LED、或いは単色LEDの出射光を波長幅3nm程度に光学的に波長フィルタリングすることによって構成された光源等である。第1光源11としてタングステンランプやハロゲンランプを用いた場合のコヒーレント長(コヒーレンス長)は、例えば1μm〜5μmである。第1光源11としてLEDを用いた場合のコヒーレント長は、例えば2μm〜20μmである。第1光源11として波長フィルタリングしたLEDを用いた場合のコヒーレント長は、例えば50μm〜100μmである。第2光源12は、コヒーレントな第2光L2を出力する。第2光L2のコヒーレント長は、第1光L1のコヒーレント長よりも長く、例えば1000μm以上である。第2光L2は、第1光L1の波長帯域よりも長い波長又は短い波長を有する。第2光源12は、例えば、波長1.31μmのレーザ光を第2光L2として出力する半導体レーザ光源や、波長780μmのレーザ光を第2光L2として出力する半導体レーザ光源である。第2光源12は、コヒーレント長が1m以上のヘリウムネオンレーザ光源、コヒーレント長が10mm以上のDFB型半導体レーザ光源、コヒーレント長が1mm〜2mm程度のファブリペロー型半導体レーザ光源、或いはコヒーレント長が数mm程度の面発光型半導体レーザ光源であってもよい。
【0022】
光合波器27は、第1光源11から出力されてレンズ21及びアパーチャ26を経て到達した第1光L1を反射させると共に、第2光源12から出力されて到達した第2光L2を透過させる。光合波器27は、第1光L1と第2光L2とを合波して合波光をレンズ22へ出力する。
【0023】
ハーフミラー28は、光合波器27から出力されてレンズ22を経て到達した合波光を分岐させて第1分岐光及び第2分岐光とし、第1分岐光をレンズ23へ出力し、第2分岐光をレンズ24へ出力する。ハーフミラー28は、第1分岐光がレンズ23を経てミラー37により反射されて生じる第1反射光を再びレンズ23を経て入力すると共に、第2分岐光がレンズ24を経て観察対象物3の表面又は内部で反射されて生じる第2反射光を再びレンズ24を経て入力する。ハーフミラー28は、第1反射光と第2反射光とを互いに干渉させて干渉光をレンズ25へ出力する。ハーフミラー28は、干渉光学系を構成する。
【0024】
光分波器29は、ハーフミラー28から出力されてレンズ25を経た干渉光を入力し、干渉光に含まれる第1光L1を反射させて撮像部31へ出力し、干渉光に含まれる第2光L2を透過させて受光部33へ出力する。レンズ23〜25は、ハーフミラー28から出力されて光分波器29により分波された第1光L1を撮像部31の撮像面上に結像する結像光学系を構成する。レンズ23は、ミラー37と向かい合うように配置された対物レンズであり、レンズ24は、ステージ38上の容器2と向かい合うように配置された対物レンズである。撮像部31は、第1光L1の干渉光を検出する第1光検出部を構成する。撮像部31は、結像された第1光L1の干渉光像を撮像する。撮像部31は、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等の撮像素子である。受光部33は、第2光L2の干渉光を検出する第2光検出部を構成する。受光部33は、ハーフミラー28から出力されて光分波器29により分波された第2光L2の強度を検出する。受光部33は、例えば、単一のフォトダイオード、1次元フォトダイオードアレイ等の受光素子である。
【0025】
ここで、ハーフミラー28からミラー37により反射されて再びハーフミラー28に至るまでの光路長と、ハーフミラー28から観察対象物3の基準位置により反射されて再びハーフミラー28に至るまでの光路長との光路長差をGとする。すなわち、光路長差Gは、第1反射光と第2反射光との間の光路長差である。上述したように、第2光源12から出力され受光部33に到達する第2光L2のコヒーレント長は比較的長いので、
図2に示されるように、受光部33に到達する第2光L2の強度は、比較的広い光路長差Gの範囲において周期的に変化する。これに対して、第1光源11から出力され撮像部31に到達する第1光L1のコヒーレント長は比較的短いので、
図2に示されるように、撮像部31に到達する第1光L1の強度は、比較的狭い光路長差Gの範囲において周期的に変化する。しかも、第1光L1の場合、光路長差Gが値0に近いほど干渉の振幅が大きい。
【0026】
このことを利用して、解析部32は、光路長差Gが複数の目標値のそれぞれに設定されたときに撮像部31により撮像された第1光L1の干渉光像を取得する。解析部32は、取得した干渉光像に基づいて所定の解析を行う。変位検出部34は、受光部33により検出された第2光L2の強度の変化に基づいて光路長差Gを検出する。すなわち、受光部33及び変位検出部34は、光路長差Gを検出する光路長差検出部を構成する。
【0027】
ピエゾアクチュエータ35、駆動部36、ステージ38及び駆動部39は、光路長差Gを調整する光路長差調整部を構成する。ピエゾアクチュエータ35は、駆動部36により駆動され、ハーフミラー28とミラー37との間の光学系の光軸に平行な方向にミラー37を移動させる。ステージ38は、駆動部39により駆動され、ハーフミラー28と観察対象物3との間の光学系の光軸に平行な方向に容器2(観察対象物3)を移動させる。ピエゾアクチュエータ(第1可動部)35の作動範囲は、ステージ(第2可動部)38の可動範囲よりも狭く、ピエゾアクチュエータ35の位置精度は、ステージ38の位置精度よりも高い。
【0028】
制御部40は、変位検出部34による光路長差Gの検出結果に基づいて、光路長差Gが複数の目標値に順次になるように、ピエゾアクチュエータ35及びステージ38による光路長差調整動作を制御する。制御部40は、例えば、プロセッサを含むコンピュータによって構成されており、プロセッサにより各処理を実行する。
【0029】
図3は、光路長差調整動作を説明するための図である。ここで、ハーフミラー28とレンズ23との間の間隔をX1とし、レンズ23とミラー37との間の間隔をX2とする。ハーフミラー28とレンズ24との間の間隔をY1とし、レンズ24と観察対象物3との間の間隔をY2とする。レンズ24と観察対象物3との間の間隔Y2とは、観察対象物3における観察面(スライス面)までの間隔を意味する。間隔X2は、ピエゾアクチュエータ35による移動動作により調整される。間隔Y2は、ステージ38による移動動作により調整される。ピエゾアクチュエータ35又はステージ38により間隔(X1+X2)又は間隔(Y1+Y2)が変更されることで、光路長差Gが調整される。
【0030】
制御部40は、複数の目標値のそれぞれにおいて、ピエゾアクチュエータ35による移動量が作動範囲内の所定範囲内となるように、ステージ38による移動動作を連続的又は断続的に行わせる。また、制御部40は、ステージ38による移動動作の際にも、変位検出部34による光路長差Gの検出結果に基づいて、光路長差Gが各目標値になるようにピエゾアクチュエータ35による移動動作をフィードバック制御する、以下では、2つの動作態様の例を説明する。
【0031】
図4及び
図5に示される第1動作態様では、制御部40は、ステージ38による移動動作を連続的に行わせる。ステップS11では、制御部40は、駆動部39を介してステージ38による移動動作を開始させる。光路長差Gを或る目標値から次の目標値に一定時間間隔Taで移行させるとし、その移行の際の間隔Y2の変化量をYaとしたときに、ステージ38の移動速度は「Ya/Ta」に設定される。これにより、レンズ24と観察対象物3との間の間隔Y2は、時間の経過に従って略リニアに変化する。しかし、ステージ38の位置精度が比較的低いことから、間隔Y2の時間的変動は比較的大きい。
【0032】
そこで、ステップS12では、制御部40は、光路長差Gが目標値になるように、駆動部36を介してピエゾアクチュエータ35による移動動作をフィードバック制御する。このとき、ピエゾアクチュエータ35により間隔X2が調整されて、光路長差G={(Y1+Y2)−(X1+X2)}が高精度に設定される。ステップS13では、制御部40は、光路長差が或る目標値に設定されてから一定時間間隔Taが経過したか否かを判断し、一定時間間隔Taが経過したらステップS14の処理に進む。ステップS14では、制御部40は、次の目標値が有るか否かを判断し、次の目標値が有ればステップS15の処理に進み、次の目標値が無ければステップS18の処理に進む。
【0033】
ステップS15では、制御部40は、光路長差Gが次の目標値に移行される前に、その移行後の目標値においてピエゾアクチュエータ35による移動量が所定範囲から外れるか否かを判断する。制御部40は、移動量が所定範囲から外れると判断した場合にはステップS16を経てステップS17の処理に進む。制御部40は、移動量が所定範囲内にあると判断した場合には直ちにステップS17の処理に進む。ステップS16では、制御部40は、次の目標値に移行した後にピエゾアクチュエータ35による移動量が所定範囲内に入るようにステージ38による移動動作の速さを調整する。
【0034】
ステップS17では、制御部40は、光路長差Gを次の目標値に設定し、駆動部36を介してピエゾアクチュエータ35を所定量だけステップ的に移動させる。その後、制御部40は、ステップS12の処理に戻り、光路長差Gが新たな目標値になるように、駆動部36を介してピエゾアクチュエータ35による移動動作をフィードバック制御する。ステップS18では、制御部40は、駆動部39を介してステージ38による移動動作を終了させる。
【0035】
このような第1動作態様によれば、制御部40がピエゾアクチュエータ35及びステージ38のそれぞれの移動動作を制御することにより、ステージ38の移動動作の広いダイナミックレンジ、及び、ピエゾアクチュエータ35の移動動作の高い位置精度の双方を活かすことができ、高精度且つ広いダイナミックレンジで観察対象物3を観察することができる。なお、光路長差Gの目標値の個数をNとしたときに、N×Taの時間内にステージ38を速度「Ya/Ta」で等速移動させたときの移動距離が十分な精度(例えば誤差が±1μm以下)であれば、ステップS15,16は不要であり、ステップS14の後に直ちにステップS17の処理に進めばよい。
【0036】
図6及び
図7に示される第2動作態様では、制御部40は、ステージ38による移動動作を断続的に行わせる。第2動作態様では、ステップS11が省略されており、直ちにステップS12の処理が実行される。そのためステップS12の実行時においてステージ38は移動していないが、ステージ38の位置精度が比較的低いことから、間隔Y2の時間的変動は比較的大きい。しかし、ステップS12の処理により、ピエゾアクチュエータ35により間隔X2が調整されて、光路長差Gが高精度に設定される。
【0037】
第2動作態様では、ステップS18が省略されている。すなわち、制御部40は、ステップS14において次の目標値が無いと判断した場合、処理を終了する。制御部40は、ステップS14において次の目標値が有ると判断した場合、ステップS16に代えてステップS19の処理に進み、その後にステップS17に進む。ステップS19では、制御部40は、次の目標値に移行した後にピエゾアクチュエータ35による移動量が所定範囲内に入るようにステージ38を移動させ、その後にステージ38を停止させる。また、制御部40は、ステージ38が移動している期間にも、光路長差Gが各目標値になるようにピエゾアクチュエータ35による移動動作を制御する。
【0038】
このような第2動作態様によっても、ステージ38の移動動作の広いダイナミックレンジ、及び、ピエゾアクチュエータ35の移動動作の高い位置精度の双方を活かすことができ、高精度且つ広いダイナミックレンジで観察対象物3を観察することができる。
【0039】
続いて、
図8及び
図9を参照しつつ、容器2の詳細を説明する。容器2は、保持部材50と、観察対象物カバー60と、を備えている。保持部材50は、例えばガラス又はプラスチック等によって構成されており、底壁部51及び側壁部52を有している。底壁部51は、例えば円板状に形成されており、観察対象物3が載置される載置面51aを有している。側壁部52は、例えば、底壁部51の縁部から載置面51aと直交する方向に沿って延在しており、円筒状を呈している。本実施形態では、側壁部52の高さは、底壁部51の直径よりも小さい。観察対象物3が細胞である場合、保持部材50は、汎用の細胞培養ディッシュであってもよい。底壁部51の中央部に凹部が設けられていてもよい。
【0040】
観察対象物カバー60は、第1光L1を透過させると共に第2光L2を反射させる透過反射部61と、透過反射部61を支持する支持部62と、を備えている。透過反射部61は、基板63及び光学層64を有している。基板63は、例えば、光透過性を有する材料によって円板状に形成されている。光学層64は、基板63の表面63a上にわたって設けられた光学コーティング(ビームスプリッタ面)であり、第1光L1を透過させると共に第2光L2を反射させる。基板63の表面63aは、観察対象物カバー60が側壁部52上に配置された状態(
図8に示される状態)において底壁部51の載置面51a側に向く表面である。透過反射部61の両面には、第1光L1の波長帯域に対する低反射層が設けられていてもよい。
【0041】
支持部62は、第1板部65、第2板部66及び第3板部67を有している。第1板部65、第2板部66及び第3板部67は、例えば互いに一体に形成されている。支持部62は、プラスチックやガラス等の透明材料によって構成されてもよいし、金属等の非透明材料によって構成されてもよい。支持部62が透明であると、容器2内の観察対象物3を外部から目視により確認することができる。
【0042】
第1板部65は、例えば、透過反射部61に対する第1光L1の入射方向Dから見た場合に円環状を呈する平板状の部材である。第2板部66は、第1板部65と透過反射部61との間に段差Wが形成されるように、第1板部65及び透過反射部61(基板63)に接続されている。また、第2板部66は、第1板部65と透過反射部61とが互いに平行に配置されるように、第1板部65及び透過反射部61に接続されている。本実施形態では、第2板部66は、第1板部65の内縁と透過反射部61の外縁との間に全周にわたって延在する筒状の部材である。透過反射部61は、例えば接着によって第2板部66に固定されている。
【0043】
第2板部66は、透過反射部61と共に空間Sを画定している。第2板部66は、透過反射部61から離れるほど空間Sが拡がるように、入射方向Dに対して傾斜して延在している。すなわち、第2板部66はテーパ形状に形成されている。本実施形態では、空間Sは、円錐台形状であり、入射方向Dに直交する各断面において円形状を呈している。透過反射部61は、空間Sの底部(入射方向Dにおける第1板部65とは反対側の端部)に配置されている。第3板部67は、第2板部66と互いに向かい合うように第1板部65から延在している。本実施形態では、第3板部67は、第1板部65の外縁(第1板部65における第2板部66とは反対側の縁)から入射方向Dに沿って延在しており、偏平な円筒状を呈している。
【0044】
支持部62は、載置面51aと透過反射部61とが所定の間隔Aを空けて互いに平行に向かい合うように、透過反射部61を支持する。本実施形態では、
図8に示されるように、第3板部67が側壁部52の外側に位置するように観察対象物カバー60が保持部材50に被せられ、第1板部65が側壁部52上に載置される。これにより、観察対象物カバー60が側壁部52上に配置され、載置面51aと透過反射部61とが間隔Aを空けて互いに向かい合う。この状態においては、透過反射部61が入射方向Dにおいて第1板部65に対して載置面51a側に位置する。また、第2板部66と側壁部52とが互いに向かい合い、第2板部66と側壁部52との間に空隙が形成される。間隔Aは、レンズ24と載置面51a(観察面)との間の距離がレンズ24のワーキングディスタンス内となるように、設定される。間隔Aは、例えば0.4mm程度である。
【0045】
容器2は、載置面51a上に観察対象物3が載置された後に、観察対象物カバー60が側壁部52上に配置されることにより、観察対象物3を収容する。容器2は、観察対象物3を収容した状態で、ステージ38上に載置される。容器2は、透過反射部61及び載置面51aが第2分岐光の光路(ハーフミラー28と観察対象物3との間の光路)上に位置するように、ステージ38上に載置される。これにより、ハーフミラー28(レンズ24)から出力される第2分岐光が透過反射部61に入射可能な状態となる。
【0046】
干渉観察の際には、まず、載置面51aに観察対象物3が載置される(第1ステップ)。続いて、載置面51aと透過反射部61とが間隔Aを空けて互いに向かい合うように、観察対象物カバー60が配置される(第2ステップ)。続いて、容器2が、透過反射部61及び載置面51aが第2分岐光の光路上に位置するように、ステージ38上に載置される。これらの作業は、例えば作業機械又は作業者等により行なわれる。続いて、上述したように、第2光L2の干渉結果に基づいて光路長差Gが調整されつつ、第1光L1による観察対象物3の干渉光像が取得される(第3ステップ)。
【0047】
続いて、観察対象物カバー60の作用効果を説明する。上述したように、観察対象物カバー60では、載置面51aと透過反射部61とが間隔Aを空けて互いに向かい合うように、透過反射部61が支持される。観察対象物カバー60を用いて干渉観察が行われる際には、載置面51a上に観察対象物3が載置され且つ載置面51aと透過反射部61とが間隔Aを空けて互いに向かい合った状態において、第1光L1及び第2光L2が透過反射部61に対して載置面51aとは反対側から入射する。これらの光のうち、第2光L2は透過反射部61により反射される一方、第1光L1は、透過反射部61を透過して観察対象物3により反射された後、透過反射部61を再び透過して入射側に戻る。したがって、観察対象物カバー60によれば、第2光L2を観察対象物3に入射させることなく、干渉観察を行うことができる。その結果、第2光L2が観察対象物3に与える影響を考慮する必要がないため、第2光L2の特性(例えば波長)の選択についての自由度を高めることができる。例えば、観察対象物3が紫外光に対する耐性を有しない場合でも、第2光L2として紫外光を使用することができる。また、第2光L2が観察対象物3に入射しないため、光透過性を有する観察対象物3だけでなく、光透過性を有しない観察対象物3をも観察することができる。光透過性を有しない観察対象物3の例としては、例えば不透明な工業試料が挙げられる。このように、観察対象物カバー60によれば、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。
【0048】
更に、仮に、本実施形態とは異なり、第1光L1及び第2光L2を反射させる光反射層が載置面51a上に形成された構成を採用した場合、当該光反射層上に観察対象物3を載置する必要がある。この場合、観察対象物3の種類によっては、光反射層上に観察対象物3を載置したことが観察結果に影響を及ぼす可能性がある。例えば、観察対象物3が細胞であり、細胞を光反射層上に播種する場合、汎用の細胞培養ディッシュ上ではなく光反射層上に細胞を培養したことが観察結果の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。また、生理学的アセスメントにおける他の手法とのトレーサビリティを確保することが困難となる可能性もある。これに対し、本実施形態の観察対象物カバー60によれば、透過反射部61が載置面51aとは別に設けられており、載置面51aを任意に構成することができるため、そのような事態の発生を抑制することができる。
【0049】
更に、仮に、本実施形態とは異なり、第1光L1及び第2光L2を反射させる光反射層が載置面51a上に形成された構成を採用した場合、当該光反射層上に観察対象物3を載置する必要があり、観察対象物3が光反射層に接触する。これに対し、本実施形態の観察対象物カバー60によれば、載置面51aと透過反射部61とが間隔Aを空けて互いに向かい合うため、観察対象物3が透過反射部61に接触し難い。そのため、観察対象物3に破損や汚染が生じるのを抑制することができる。例えば、観察対象物3が生体試料である場合、生体試料が菌やウィルスにより汚染されるのを抑制することができる。また、観察対象物3が工業試料である場合、工業試料に傷が付いたり汚れが付着したりするのを抑制することができる。
【0050】
また、観察対象物カバー60では、第2板部66が、第1板部65と透過反射部61との間に段差Wが形成されるように第1板部65及び透過反射部61に接続されており、支持部62は、透過反射部61が入射方向Dにおいて第1板部65に対して載置面51a側に位置するように、透過反射部61を支持する。これにより、透過反射部61を載置面51a(観察対象物3)に近づけることができ、ノイズの発生を抑制することができる。また、第2板部66及び透過反射部61によって画定される空間S内にレンズ24を配置することができる。その結果、レンズ24を透過反射部61に近づけることができ、レンズ24と載置面51a(観察面)との間の距離をレンズ24のワーキングディスタンス内に容易に収めることができる。
【0051】
また、観察対象物カバー60では、第2板部66が、透過反射部61から離れるほど空間Sが拡がるように、入射方向Dに対して傾斜して延在している。これにより、レンズ24を空間S内に容易に配置することができる。
【0052】
また、観察対象物カバー60では、空間Sが、入射方向Dに直交する断面において円形状を呈している。これにより、レンズ24を空間S内に一層容易に配置することができる。このことは、レンズ24が略円柱状の対物レンズである場合に特に顕著となる。
【0053】
また、観察対象物カバー60では、支持部62が、第2板部66と互いに向かい合うように第1板部65から延在する第3板部67を有している。これにより、透過反射部61を支持部62によって好適に支持することができる。
【0054】
また、観察対象物カバー60では、透過反射部61が、光透過性の基板63と、基板63における載置面51a側に向く表面63aに設けられ、第1光L1を透過させると共に第2光L2を反射させる光学層64と、を有している。これにより、光学層64を載置面51a(観察対象物3)に近づけることができ、ノイズの発生を一層抑制することができる。
【0055】
また、容器2では、保持部材50が側壁部52を有しており、観察対象物カバー60が側壁部52上に配置されるため、容器2の取り扱いを容易化することができる。また、容器2では、第2板部66と側壁部52とが互いに向かい合い、第2板部66と側壁部52との間に空隙が形成される。これにより、例えば観察対象物3が液体を含む場合に、当該空隙に当該液体を逃がすことができる。このことは、観察対象物3が細胞であり、液体が培養液であるときに、特に有用である。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、
図10に示される第1変形例、又は、
図11に示される第2変形例ように容器2が構成されてもよい。第1変形例では、側壁部52における底壁部51とは反対側の端部の外面に第1螺合部52aが設けられている。支持部62は、第1板部65及び第4板部68を有している。透過反射部61は、第1板部65によって画定される開口部を覆うように第1板部65上に配置され、第1板部65に接続されている。第4板部68は、第1板部65の外縁から入射方向Dに沿って延在している。第4板部68には、第1螺合部52aと螺合する第2螺合部68aが設けられている。第2螺合部68aは、第4板部68において、第1板部65とは反対側の端部を含む領域に配置されている。第1変形例では、観察対象物カバー60は、第1螺合部52aと第2螺合部68aとが互いに螺合することにより、保持部材50に取り付けられる。この取付状態においては、第1螺合部52aと第2螺合部68aとが互いに螺合することにより、観察対象物カバー60と保持部材50との間が密閉される。
【0057】
第2変形例では、支持部62は、第1板部65、第2板部66及び第4板部68を有している。透過反射部61は、第2板部66に接続されている。第4板部68は、第2板部66と互いに向かい合うように、第1板部65の外縁から入射方向Dに沿って延在している。これらの点以外は第1変形例と同様である。
【0058】
このような第1変形例及び第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。また、第1変形例及び第2変形例では、観察対象物カバー60と保持部材50との間が密閉されるため、外気中の異物による観察対象物3の汚染を抑制することができる。このことは、観察対象物3が工業試料である場合に特に効果的である。また、第1螺合部52aと第2螺合部68aとが互いに螺合することにより、観察対象物カバー60が保持部材50に取り付けられるため、観察対象物カバー60と保持部材50とを互いに強固に固定することができる。また、第1螺合部52aと第2螺合部68aとの間の螺合量を変化させることにより、透過反射部61と載置面51a(観察対象物3)との間の距離を調整することができる。なお、第1変形例及び第2変形例では、取付状態において第4板部68が側壁部52の外側に位置していたが、第4板部68が側壁部52の内側に位置するように構成されてもよい。この場合、側壁部52の内面に第1螺合部52aが設けられ、第4板部68の外面に第2螺合部68aが設けられてもよい。
【0059】
図12及び
図13に示される第3変形例のように容器2が構成されてもよい。第3変形例では、容器2は、保持部材50A、観察対象物カバー60A及びヒータ71を備えている。保持部材50Aは、上記実施形態の保持部材50に相当するディッシュ部53と、チャンバ部54と、を有している。チャンバ部54は、例えばガラス又はプラスチック等によって構成されており、底壁部55及び側壁部56を有している。底壁部55は、例えば矩形板状に形成されている。底壁部55には、ディッシュ部53及びヒータ71が配置される凹部55aが設けられている。側壁部56は、底壁部55の縁部から底壁部55と直交する方向に沿って延在している。側壁部56には、通気用の開口56aが複数設けられている。
【0060】
観察対象物カバー60Aでは、支持部62は、第1板部65、第2板部66及び蓋部69を有している。蓋部69は、例えば、底壁部55の形状に対応した矩形板状に形成されている。蓋部69の中央部には、第1板部65の形状に対応した断面円形状の開口69aが設けられている。第1板部65は、開口69aの縁を覆うように蓋部69上に配置され、蓋部69に接続されている。第2板部66は、開口69aから第1板部65とは反対側に突出している。
【0061】
第3変形例では、蓋部69が側壁部56上に載置され、蓋部69と側壁部56とが互いに固定されることにより、観察対象物カバー60A(支持部62)が保持部材50に取り付けられる。より詳細には、側壁部56の先端面に複数のねじ穴56bが設けられる共に、蓋部69において側壁部56と重なる位置に複数の貫通孔69bが設けられている。貫通孔69bに通されたネジ(図示省略)がねじ穴56bに締結されることにより、蓋部69と側壁部56とが互いに固定される。ヒータ71は、観察対象物3の周囲の温度を所定の温度範囲に保つために備えられている。ヒータ71は、略円筒状に形成されており、ディッシュ部53を包囲するように配置される。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、観察条件が緩和された干渉観察を実現することができる。
【0062】
他の変形として、上記実施形態では、透過反射部61が波長の違いにより第1光L1と第2光L2とを分離したが、透過反射部61は、偏光成分の違いにより第1光L1と第2光L2とを分離するように構成されてもよい。すなわち、透過反射部61は、偏光ビームスプリッタであってもよい。上記実施形態において、観察対象物カバー60は、観察対象物カバー60と保持部材50との間に通気口が形成されるように、側壁部52上に配置されてもよい。例えば、側壁部52の先端面に少なくとも3つの突起が設けられ、当該突起によって第1板部65が支持されることにより、観察対象物カバー60と保持部材50との間に通気口が形成されてもよい。上記実施形態において、保持部材50が省略され、観察対象物カバー60がステージ38に直接に配置されてもよい。
【0063】
上記実施形態では第2板部66がテーパ形状に形成されていたが、第2板部66は、入射方向Dに沿って延在してもよい。空間Sは、入射方向Dに直交する断面において円形状以外の形状、例えば矩形状等を呈してもよい。光学層64は、基板63における表面63aとは反対側の表面に設けられていてもよい。この場合、観察対象物3が光学層64に一層接触し難くなる。上記実施形態において、ピエゾアクチュエータ35及びステージ38の少なくとも一方がフィードバック制御されればよく、例えばピエゾアクチュエータ35のみがフィードバック制御されてもよい。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0064】
続いて、
図14〜
図17を参照しつつ、第1実施例及び第2実施例について説明する。第1実施例では、観察対象物3としてレンズクリーニング用ペーパを用いた。第1光源11として、波長帯域500nm〜700nmでスペクトルのピーク波長が580nmの白色LEDを用いた。第2光源12として、波長780nmのレーザダイオードを用いた。レンズ23として、補正環の無い20倍対物レンズを用いた。レンズ24として、補正環付きの20倍対物レンズを用いた。これは、レンズ24と観察対象物3との間に透過反射部61が配置されるためである。透過反射部61として、カットオフ波長が720nmであり、直径25mm程度、厚さ1.1mm程度のサイズを有するダイクロイックミラーを用いた。補正環付きのレンズ24における補正環の値は1.1mmに設定した。
【0065】
第1実施例では、第1光源11のピーク波長580nmの1/4に相当する145nmの間隔で光路長差Gを順次目標値に設定しながら、148ステップにわたってステージ38をスキャンして、第1光L1の干渉光像を取得した。なお、光路長差Gのスキャン距離は、145nm×148ステップ=21.46μmであるが、光路長差Gは往復での値であるから、実際にステージ38が動いた距離は10.73μmとなる。
図14は、148枚の干渉光画像から抜き出した画像の一例を示す図である。
図14から、レンズクリーニング用ペーパの各繊維が可視化されていることが分かる。また、
図14では、各繊維の表面からの反射光による干渉縞が繊維の表面に見えている。第1光L1の1/4波長ずつ光路長差Gが異なる4枚の連続する干渉縞画像、I1,I2,I3,I4から、P=(I1−I3)
2+(I2−I4)
2により反射光強度Pを画像として得ることができる。ステージ38の各位置において、この反射光強度Pを計算することにより、スタック画像を得ることができる。
図15は3つのスライス位置における反射光強度画像の例である。このスタック画像から、3Dレンダリングされた3次元ボリューム画像を得ることもできる。また、各繊維の表面からの反射光による干渉縞の1周期は、第1光源11のピーク波長580nmの半分である290nmの高さの違いに相当することから、干渉縞画像に基づいて、各スライス位置における繊維の三次元的分布を波長未満の精度で測定することもできる。
【0066】
第2実施例では、観察対象物3としてアルマイト加工されたアルミニウム製の金属片を用い、当該金属片の表面画像を取得した。この点以外は実施例1と同様とした。ただし、位相シフトのステップ数は、148ステップではなく5ステップのみとし、ステージ38の動作は行わずにピエゾアクチュエータ35の動作のみによって位相シフトを行った。
図16(a)は、第2実施例において取得された干渉光画像を示す図である。第1光L1の1/4波長ずつ光路長差Gが異なる5枚の連続する干渉縞画像、I1,I2,I3,I4,I5から、P=(I1−2×I3+I5)
2+(2×I2−2×I4)
2の計算により反射光強度Pを画像として得ることができる。また、反射光の位相φについては、φ=arg((I1−2×I3+I5)+i×(2×I2−2×I4))の計算によって得ることができる。ここで、argは複素数の偏角を計算する操作であり、iは虚数単位である。
【0067】
図17(a)は、これにより得られた
図16(a)及び
図16(b)の位相画像を示す図であり、
図17(b)は、
図17(a)の位相画像についての位相アンラップ後の位相画像を示す図である。1波長に対応する位相が2π=6.28であることから、
図17(a)及び
図17(b)の画像には、波長の約16倍程度の凹凸が存在している。従来の手法では、このような粗面からの反射光については、フィードバック用の干渉信号を得ることは難しい。これに対し、観察対象物カバー60によれば、透過反射部61が第2光L2を反射するため、このような観察対象物3の場合でも適切なフィードバック用の干渉信号を得ることができる。すなわち、従来の手法では観察対象物3に対して第2光L2を反射させるためのコーティングをすることが難しい、或いはコーティングをすることができたとしても観察対象物3の表面の凹凸が大き過ぎるためにフィードバック制御用の干渉信号を十分に得られないような場合でも、観察対象物カバー60によれば、観察対象物3とは別に透過反射部61が基準反射面として設けられるため、フィードバック用の干渉信号のS/Nを向上することができる。