(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記整流板は、前記複数の列バンクと対向する前記整流板面上の領域を囲繞する周壁を有し、前記インクを乾燥させる工程において、前記基板の平面視したとき前記周壁は前記複数の列バンクを囲繞している
請求項1に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
基板上に並設された複数の列バンクにおける、行方向に隣接する列バンク間の間隙それぞれに前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布されたインクの乾燥に
用いるインク乾燥装置であって、
前記インクが塗布された基板が設置されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板が載置される支持台と、
均一な密度で複数の貫通孔が開設された整流板と、
前記整流板を、前記複数の列バンクから所定距離離間した状態で、前記複数の貫通孔が前記基板上の少なくとも前記複数の列バンクと対向する範囲に位置するように、前記支持台に対し対向させる保持手段と、
前記チャンバ内の気体を排気する手段と、
前記基板を加熱する手段とを備え、
前記整流板を前記支持台に対向させた状態において、前記整流板と前記列バンクとの最小間隙に対する前記貫通孔の開口長さの比率は、0.5以上2以下である
インク乾燥装置。
前記整流板は、前記複数の列バンクと対向する前記整流板面上の領域を囲繞する周壁を有し、前記整流板を前記基板が載置された前記支持台に対向させた状態において、前記基板を平面視したとき前記周壁は前記複数の列バンクを囲繞する
請求項5に記載のインク乾燥装置。
前記インクを乾燥させる工程における前記整流板を前記基板に対向させた状態において、前記整流板と前記列バンクとの最小間隙に対する前記貫通孔の開口長さの比率は、0.5以上2以下である
請求項10に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪本発明を実施するための形態に至った経緯≫
近年、パネルの高精細化に伴って、ひとつの画素領域内に塗布されるインクの容量は減少し、インク乾燥工程における排気の方向の乾燥時間及び画素領域内のインク形状に与える影響は大きくなってきている。そのため、特許文献1に記載されている製造方法では、基板に対して横方向の気流が発生するため、外気に近い部分の乾燥が早くなりパネル中央部は乾燥が遅くなり基板面内で乾燥時間の差を生じさせることになる。
【0012】
また、特許文献2に記載されている製造方法では、整流板に設けた仕切り部材により基板面内を区画することにより基板に対して横方向への排気の流れを遮断している。排気の移動可能距離(平均自由行程)から画素端からの距離を算出して配置した仕切り部材により、排気を上方に流すという効果を得ていると考えられる。一つの画素ごとに独立したピクセルバンクを備えたパネルでは画素間をインクが行き来することがないため、仕切り部材により基板面内を区画することにより基板に対して横方向への排気の流れを遮断しても、仕切り部材内では機能層の膜厚の不均一性が課題となることはないと考えられる。
【0013】
しかしながら、基板上の列又は行方向において画素と画素とがつながっているラインバンクを備えたパネルは、もとより画素間のインク流動を促進することにより塗布ムラを抑制する構成であるため、基板上の列又は行方向にわたって画素間をインクが容易に流動する。そのため、仕切り部材により必要以上に乾燥を抑制することは、かえって膜厚の均一性を阻害することが懸念される。すなわち、画素が単一化されている場合は画素間の相互作用がなく乾燥を抑制してインクをレベリングすることが可能となるが、ラインバンクの場合には、画素間の相互作用によりインクがバンク内で画素間を流動し、逆に画素間でインク表面の高さが不均一になると考えられる。
【0014】
したがって、ラインバンクを備えた高精細パネルにおいては、乾燥抑制と排気とのバランスをいかに実現するかが問題となる。
また、基板上の列又は行方向ににわたり画素をつなぐラインバンクの途中を仕切り部材により区画する構成を採ることは、区画間のインクの流通を許容しつつ、排気の横方向への流れは遮断することとなる。そのため、区画間において乾燥速度に差が生じた場合には、区画間のインク流動により区画間の膜厚の不均一性が生じるとともに、区画間の膜厚の不均一性が区画内の膜厚の不均一性にも影響するものと考えられる。
【0015】
そこで、発明者はラインバンクを備えたパネル構成において、乾燥抑制と排気バランスを両立する方法について鋭意検討を行い、本実施の形態に係る製造方法に想到するに至ったものである。
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板上に複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法であって、前記基板を準備する工程と、前記基板上に行列状に複数の画素電極層を形成する工程と、少なくとも前記画素電極層の行方向外縁間に位置する前記基板上方に列方向に延伸して行方向に複数の列バンクを並設する工程と、行方向に隣接する前記列バンク間の間隙それぞれに、前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して有機発光材料を含むインクを塗布する工程と、均一な密度で複数の貫通孔が開設された整流板が前記複数の列バンクから所定距離離間した状態で、前記複数の貫通孔が前記基板上の少なくとも前記複数の列バンクと対向する範囲に位置するように、前記インクが塗布された前記基板と前記整流板とを対向させて配置する工程と、前記基板及び前記整流板を含む雰囲気から気体の排気する工程と、前記基板を加熱することにより前記インクを乾燥させる工程と、前記整流板を除去した状態で前記有機機能層上方に対向電極層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
係る構成により、係るインク乾燥工程を含む表示パネルの製造方法により、インク乾燥工程において、形成される発光層の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。すなわち、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制するとともに、基板上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を緩和することができる。その結果、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間で発光層の膜厚の均一化を図ることができ、非表示パネルの成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる表示パネル内での輝度ムラを改善することができる。
【0017】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記インクを乾燥させる工程における前記整流板を前記基板に対向させた状態において、前記整流板と前記列バンクとの最小間隙に対する前記貫通孔の開口長さの比率は、0.5以上2以下である構成であってもよい。
係る構成により、基板と整流板との間の空間において、基板上の区画領域から蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板の平面方向に移動することが抑制され、溶媒の蒸気を貫通孔を介して整流板上方に放出させることができる。
【0018】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板には、前記整流板が前記複数の列バンクと対向する範囲における開口率が10%以上60%以下である構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板には、前記整流板が前記複数の列バンクと対向する範囲における開口率が20%以上40%以下である構成であってもよい。
【0019】
係る構成により、基板と整流板との間の空間において、基板上の区画領域から蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板の平面方向に移動することを抑制し、大半の蒸気を適切に溶媒の蒸気を貫通孔を介して整流板上方に放出させる構成を具体的に実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板は、前記複数の列バンクと対向する前記整流板面上の領域を囲繞する周壁を有し、前記インクを乾燥させる工程において、前記基板の平面視したとき前記周壁は前記複数の列バンクを囲繞している構成であってもよい。
【0020】
係る構成により、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動がほぼ解消する。その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラをより一層改善することができる。
本実施の形態に係るインク乾燥装置は、基板上に並設された複数の列バンクにおける、行方向に隣接する列バンク間の間隙それぞれに前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布されたインクの乾燥に用いるインク乾燥装置であって、前記インクが塗布された基板が設置されるチャンバと、前記チャンバ内において前記基板が載置される支持台と、均一な密度で複数の孔が開設された整流板と、前記整流板を、前記複数の列バンクから所定距離離間した状態で、前記複数の貫通孔が前記基板上の少なくとも前記複数の列バンクと対向する範囲に位置するように、前記インクが塗布された前記基板が載置された支持台に対し対向させる保持手段と、前記チャンバ内の気体を排気する手段と、前記チャンバ内に設置された前記基板を加熱する手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板を前記支持台に対向させた状態において、前記整流板と前記列バンクとの最小間隙に対する前記貫通孔の開口長さの比率は、0.5以上2以下である構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板には、前記整流板が前記複数の列バンクと対向する範囲における開口率が20%以上60%以下である構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板には、前記整流板が前記複数の列バンクと対向する範囲における開口率が20%以上40%以下である構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記整流板は、前記複数の列バンクと対向する前記整流板面上の領域を囲繞する周壁を有し、前記整流板を前記基板が載置された前記支持台に対向させた状態において、前記基板を平面視したとき前記周壁は前記複数の列バンクを囲繞する構成であってもよい。
【0022】
係るインク乾燥装置を用いたインク乾燥工程では、形成される発光層の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。その結果、非表示パネルの成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる表示パネル面内の輝度ムラを改善することができる。
また、別の態様では、インク乾燥装置は、上記何れかの構成において、さらに、前記整流板に開設された複数の貫通孔の一部又は全部を開閉可能な施蓋機構を備えた構成であってもよい。
【0023】
係る構成により、貫通孔の一部又は全部を閉じている所定時間の間にインクの溶媒の蒸気は整流板と基板との間隙内雰囲気中のインク溶媒の蒸気濃度を高い状態に保持して、基板上の区画領域からインクの溶媒の蒸発を抑制することができる。
また、係るインク乾燥装置を用いたインク乾燥工程では、基板上に複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法であって、前記基板を準備する工程と、前記基板上に行列状に複数の画素電極層を形成する工程と、少なくとも前記画素電極層の行方向外縁間に位置する前記基板上方に列方向に延伸して行方向に複数の列バンクを並設する工程と、行方向に隣接する前記列バンク間の間隙それぞれに、前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して有機発光材料を含むインクを塗布する工程と、均一な密度で複数の貫通孔が開設されており当該貫通孔を開閉可能な施蓋機構が付された整流板が前記複数の列バンクから所定距離離間した状態で、前記複数の貫通孔が前記基板上の少なくとも前記複数の列バンクと対向する範囲に位置するように、前記インクが塗布された前記基板と前記整流板とを、前記施蓋機構により前記貫通孔の一部又は全部を閉じた状態で対向させて配置して所定時間保持する工程と、前記基板及び前記整流板を含む雰囲気から気体を排気する工程と、前記基板を加熱することにより前記インクを乾燥させる工程と、前記整流板を除去した状態で前記有機機能層上方に対向電極層を形成する工程とを含む構成であってもよい。
【0024】
係る構成により、所定時間の間に、間隙内のインクは列方向に移動して膜厚バラツキが所定時間内にレべリングされ、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは減少する。併せて、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスや、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制することができる。
【0025】
その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラをより一層改善することができる。
≪実施の形態≫
1.表示パネル10の全体構成
1.1 概要
本実施の形態に係る表示パネル10について、図面を用いて説明する。なお、図面は模式図であって、その縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0026】
図1は、表示パネル10の模式平面図である。
表示パネル10は、有機化合物の電界発光現象を利用した有機EL表示パネルであり、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成された基板100x(TFT基板)に、各々が画素を構成する複数の有機EL表示素子100が行列状に配され、上面より光を発するトップエミッション型の構成を有する。ここで、本明細書では、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向を、それぞれ表示パネル10における、行方向、Y方向、厚み方向とする。
【0027】
図1に示すように、表示パネル10は、基板100x上をマトリックス状に区画してRGB各色の発光単位を規制する列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10a(X、Y方向にそれぞれ10Xa、10Ya、区別を要しない場合は10aとする)と、区画領域10aの周囲に非区画領域10b(X、Y方向にそれぞれ10Xb、10Yb、区別を要しない場合は10bとする)とから構成されている。区画領域10aの列方向の外周縁は列バンク522Yの列方向の端部522Yeに相当する。非区画領域10bには、区画領域10aを取り囲む矩形状の封止部材300が形成されている。さらに、区画領域10aは、基板中心を含む表示素子配列領域10eと、表示素子配列領域10eの周囲に非発光領域10neとから構成されている。表示素子配列領域10eは、列バンク522Yと行バンク122Xにより規制される各区画に有機EL表示素子100が形成されている領域であり、非発光領域10neでは、各区画に有機EL表示素子100が形成されていない領域である。また、X、Y方向における非発光領域10neの長さは、隣接する列バンク522Yと隣接する行バンク122Xとに囲まれたサブ画素100se領域のX、Y方向の長さに対し、それぞれ、2倍以上10倍以下であることが好ましい。本実施の形態では、X、Y方向とも4倍とした。
【0028】
1.2 表示素子配列領域10eの構成
図2は、
図1におけるX0部の拡大平面図である。
表示パネル10の表示素子配列領域10eには、有機EL表示素子100に対応する単位画素100eが行列状に配されている。各単位画素100eには、有機化合物により光を発する領域である、赤色に発光する100aR、緑色に発光する100aG、青色に発光する100aB(以後、100aR、100aG、100aBを区別しない場合は、「100a」と略称する)の3種類の自己発光領域100aが形成されている。すなわち、
図2に示すように行方向に並んだ自己発光領域100aR、100aG、100aBのそれぞれに対応する3つのサブ画素100seが1組となりカラー表示における単位画素100eを構成している。
【0029】
また、
図2に示すように、表示パネル10には、複数の画素電極層119が基板100x上に行及び列方向にそれぞれ所定の距離だけ離れた状態で行列状に配されている。画素電極層119は、平面視において矩形形状である。行列状に配された画素電極層119は、行方向に順に並んだ3つの自己発光領域100aR、G、Bに対応する。
表示パネル10では、バンク122の形状は、いわゆるライン状の絶縁層形式を採用し、行方向に隣接する2つの画素電極層119の行方向外縁及び外縁間に位置する基板100x上の領域上方には、各条が列方向(
図2のY方向)に延伸する列バンク522Yが複数行方向に並設されている。
【0030】
一方、列方向に隣接する2つの画素電極層119の列方向外縁及び外縁間に位置する基板100x上の領域上方には、各条が行方向(
図2のX方向)に延伸する行バンク122Xが複数列方向に並設されている。行バンク122Xが形成される領域は、画素電極層119上方の発光層123において有機電界発光が生じないために非自己発光領域100bとなる。そのため、自己発光領域100aの列方向における外縁は、行バンク122Xの列方向外縁により規定される。
【0031】
隣り合う列バンク522Y間を間隙522zと定義したとき、間隙522zには、自己発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、自己発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、自己発光領域100aBに対応する青色間隙522zB(以後、間隙522zR、間隙522zG、間隙522zBを区別しない場合は、「間隙522z」とする)が存在し、表示パネル10は、列バンク522Yと間隙522zとが交互に多数並んだ構成を採る。
【0032】
また、
図2に示すように、表示パネル10では、複数の自己発光領域100aと非自己発光領域100bとが、間隙522zに沿って列方向に交互に並んで配されている。非自己発光領域100bには、画素電極層119とTFTのソースとを接続する接続凹部119c(コンタクトホール)があり、画素電極層119に対して電気接続するための画素電極層119上のコンタクト領域119b(コンタクトウインドウ)が設けられている。
【0033】
また、1つのサブ画素100seにおいて、列方向に設けられた列バンク522Yと行方向に設けられた行バンク122Xとは直交し、自己発光領域100aは列方向において行バンク122Xと行バンク122Xの間に位置している。
2.表示パネル10の各部構成
表示パネル10における有機EL表示素子100の構成を
図3及び
図4の模式断面図を用いて説明する。
図3は、
図3におけるY1−Y1で切断した模式断面図である。
図4は、
図1におけるX1−X1で切断した模式断面図である。
【0034】
本実施の形態に係る表示パネル10は、Z軸方向下方に薄膜トランジスタが形成された基板100x(TFT基板)が構成され、その上に有機EL素子部が構成されている。
(1) 基板100x(TFT基板)
基板100xは表示パネル10の支持部材であり、基材(不図示)と、基材上に形成された薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)層(不図示)と、基材上及びTFT層上に形成された層間絶縁層(不図示)とを有する。
【0035】
基材は、表示パネル10の支持部材であり、平板状である。基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料、例えば、ガラス材料、樹脂材料、半導体材料、絶縁層をコーティングした金属材料などを用いることができる。例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0036】
TFT層は、基材上面に形成された複数のTFT及び配線からなる。TFTは、表示パネル10の外部回路からの駆動信号に応じ、自身に対応する画素電極層119と外部電源とを電気的に接続するものであり、電極、半導体層、絶縁層などの多層構造からなる。配線は、TFT、画素電極層119、外部電源、外部回路などを電気的に接続している。
基板100xの上面に位置する層間絶縁層は、TFT層によって凹凸が存在する基板100xの上面の少なくともサブ画素100seを平坦化するものである。また、層間絶縁層は、配線及びTFTの間を埋め、配線及びTFTの間を電気的に絶縁している。
【0037】
TFT上部の絶縁層は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)や酸窒化シリコン(SiON)、酸化シリコン(SiO)や酸窒化シリコン(SiON)を用いることもできる。TFTの接続電極層としては、例えば、モリブデン(Mo)と銅(Cu)と銅マンガン(CuMn)との積層体を採用することができる。基板100xの上面に位置する層間絶縁層は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、シロキサン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂などの有機化合物を用い形成されており、層厚は、例えば、2000nm〜8000nmの範囲とすることができる。
【0038】
(2)画素電極層119
基板100xの上面に位置する層間絶縁層上には、サブ画素100se単位で画素電極層119が設けられている。画素電極層119は、発光層123へキャリアを供給するためのものであり、例えば陽極として機能した場合は、発光層123へホールを供給する。画素電極層119の形状は、矩形形状をした平板状であり、画素電極層119は行方向に間隔δXをあけて、間隙522zのそれぞれにおいて列方向に間隔δYをあけて基板100x上に配されている。また、基板100xの上面に開設されたコンタクトホールを通して、画素電極層119の一部を基板100x方向に凹入された画素電極層119の接続凹部119cとTFTのソースとが接続される。
【0039】
画素電極層119は、金属材料から構成されている。トップエミッション型の場合には、層厚を最適に設定して光共振器構造を採用することにより出射される光の色度を調整し輝度を高めているため、画素電極層119の表面部が高い反射性を有することが必要である。画素電極層119は、金属層、合金層、透明導電膜の中から選択される複数の膜を積層させた構造であってもよい。金属層としては、例えば、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成することができる。合金層としては、例えば、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等を用いることができる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0040】
(3)ホール注入層120、ホール輸送層121
画素電極層119上には、ホール注入層120、ホール輸送層121が順に積層され、ホール輸送層121はホール注入層120に接触している。ホール注入層120、ホール輸送層121は、画素電極層119から注入されたホールを発光層123へ輸送する機能を有する。
【0041】
ホール注入層120は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。
ホール輸送層121は、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物などを用いることができる。
【0042】
(4)バンク122
画素電極層119、ホール注入層120及びホール輸送層121の端縁を被覆するように絶縁物からなるバンク122が形成されている。バンク122は、列方向に延伸して行方向に複数並設されている列バンク522Yと、行方向に延伸して列方向に複数並設されている行バンク122Xとがあり、
図2に示すように、列バンク522Yはバンク122Xと直交する行方向に沿った状態で設けられており、列バンク522Yと行バンク122Xとで格子状をなしている(以後、行バンク122X、列バンク522Yを区別しない場合は「バンク122」とする)。また、列バンク522Yはバンク122Xの上面122Xbよりも高い位置に上面522Ybを有する。
【0043】
行バンク122Xの形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向に平行に切った断面は上方を先細りとする順テーパー台形状である。行バンク122Xは、各列バンク522Yを貫通するようにして、列方向と直交する行方向に沿った状態で設けられており、各々が列バンク522Yの上面522Ybよりも低い位置に上122Xbを有する。そのため、行バンク122Xと列バンク522Yとにより、自己発光領域100aに対応する開口が形成されている。
【0044】
行バンク122Xは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を制御するためのものである。そのため、行バンク122Xはインクに対する親液性が所定の値以上であることが必要である。係る構成により、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動性を高めサブ画素間のインク塗布量の変動を抑制する。行バンク122Xにより画素電極層119は露出することはなく、行バンク122Xが存在する領域では発光せず輝度には寄与しない。
【0045】
バンク122Xの厚みの上限膜厚は、2000nmより厚い場合はインクの濡れ広がりが悪く、1200nm以下の場合には、インクの濡れ広がりが更に良化する。また、下限膜厚は、下限膜厚は、100nm以上あれば、画素電極層119端部がバンク122で被覆され画素電極層119と対向電極層125がショートする事なく一定の歩留りで製造可能となる。200nm以上あれば、膜厚バラつきにともなう上記のショート不良が軽減され安定的に製造可能となる。バンク122に接続溝部を設ける場合における、溝部の底における膜厚も同様である。
【0046】
したがって、行バンク122Xの厚み、例えば、100nm以上2000nm以下、より好ましくは200nm以上1200nm以下であることが好ましい。本実施の形態では、約1000nmとした。
列バンク522Yは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を堰き止めて形成される発光層123の行方向外縁を規定するものである。列バンク522Yの形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向に平行に切った断面は上方を縮幅する台形形状である。
【0047】
列バンク522Yは、行方向における各サブ画素100seの発光領域100aの外縁を規定する。そのため、列バンク522Yはインクに対する撥液性が所定の値以上であることが必要である。
列バンク522Yの厚み、例えば、100nm以上5000nm以下、より好ましくは200nm以上3000nm以下であることが好ましい。本実施の形態では、約2000nmとした。
【0048】
バンク122は、画素電極層119の外縁と、対向電極層125との間における厚み方向(Z方向)の電流リークを防止するために、バンク122は、体積抵抗率が1×10
6 Ωcm以上の絶縁性を備えていることが必要である。そのために、バンク122は、は後述するように所定の絶縁材料からなる構成を採る。
バンク122は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク122の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク122は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。より好ましくは、アクリル系樹脂を用いることが望ましい。屈折率が低くリフレクターとして好適であるからである。
【0049】
または、バンク122は、無機材料を用いる場合には、屈折率の観点から、例えば、酸化シリコン(SiO)を用いることが好ましい。あるいは、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの無機材料を用い形成される。
上述のとおり、バンク122Xは、約1000nmの層である。ただし、層厚は、これに限定されるものではなく、例えば、100nm〜2000nmの範囲とすることができる。また、列バンク522Yは、約2000nmの層である。ただし、層厚は、これに限定されるものではなく、例えば、100nm〜5000nmの範囲とすることができる。
【0050】
さらに、バンク122は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。
また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。また、列バンク522Yの形成にフッ素を含有した材料を用いてもよい。また、列バンク522Yの表面に撥水性を低くするために、列バンク522Yに紫外線照射を行う、低温でベーク処理を行ってもよい。
【0051】
(5)発光層123
表示パネル10は、列バンク522Yと間隙522zとが交互に多数並んだ構成を有する。列バンク522Yにより規定された間隙522zには、発光層123が列方向に延伸して形成されている。自己発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、自己発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、自己発光領域100aBに対応する青色間隙522zBには、それぞれ各色に発光する発光層123が形成されている。
【0052】
発光層123は、有機化合物からなる層であり、内部でホールと電子が再結合することで光を発する機能を有する。
発光層123は、画素電極層119からキャリアが供給される部分のみが発光するので、層間に絶縁物である行バンク122Xが存在する範囲では、有機化合物の電界発光現象が生じない。そのため、発光層123は、行バンク122Xがない部分のみが発光して、この部分が自己発光領域100aとなり、自己発光領域100aの列方向における外縁は、行バンク122Xの列方向外縁により規定される。
【0053】
発光層123のうち行バンク122Xの側面及び上面122Xb上方にある部分119bは発光せず、この部分は非自己発光領域100bとなる。発光層123は、自己発光領域100aにおいてはホール輸送層121の上面に位置し、非自己発光領域100bにおいては行バンク122Xの上面及び側面上に位置する。
なお、
図7に示すように、発光層123は、自己発光領域100aだけでなく、隣接する非自己発光領域100bまで連続して延伸されている。このようにすると、発光層123の形成時に、自己発光領域100aに塗布されたインクが、非自己発光領域100bに塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、列方向の画素間でその膜厚を平準化することができる。但し、非自己発光領域100bでは、行バンク122Xによって、インクの流動が程良く抑制される。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらが改善される。
【0054】
発光層123の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0055】
(6)電子輸送層124
バンク122上及びバンク122により規定された開口内には、発光層123の上に電子輸送層124が形成されている。また、本例では、発光層123から露出する各列バンク522Yの上面522Yb上にも配されていている。電子輸送層124は、対向電極層125から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する。電子輸送層124は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0056】
(7)対向電極層125
電子輸送層124を被覆するように、対向電極層125が積層形成されている。対向電極層125については、表示パネル10全体に連続した状態で形成され、ピクセル単位あるいは数ピクセル単位でバスバー配線に接続されていてもよい(図示を省略)。対向電極層125は、画素電極層119と対になって発光層123を挟むことで通電経路を作り、発光層123へキャリアを供給するものであり、例えば陰極として機能した場合は、発光層123へ電子を供給する。対向電極層125は、電子輸送層124の表面に沿って形成され、各発光層123に共通の電極となっている。対向電極層125は、光透過性を有する導電材料が用いられる。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。また、銀(Ag)又はアルミニウム(Al)などを薄膜化した電極を用いてもよい。
【0057】
(8)封止層126
対向電極層125を被覆するように、封止層126が積層形成されている。封止層126は、発光層123が水分や空気などに触れて劣化することを抑制するためのものである。封止層126は、対向電極層125の上面を覆うように表示パネル10全面に渡って設けられている。封止層126は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0058】
(9)接合層127
封止層126のZ軸方向上方には、上部基板130のZ軸方向下側の主面にカラーフィルタ層128が形成されたCF基板131が配されており、接合層127により接合されている。接合層127は、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルとCF基板131とを貼り合わせるとともに、各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。接合層127の材料は、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性材料樹脂材料を採用することができる。
【0059】
(10)上部基板130
接合層127の上に、上部基板130にカラーフィルタ層128が形成されたCF基板131が設置・接合されている。上部基板130には、表示パネル10がトップエミッション型であるため、例えば、カバーガラス、透明樹脂フィルムなどの光透過性材料が用いられる。また、上部基板130により、表示パネル10、剛性向上、水分や空気などの侵入防止などを図ることができる。透光性材料としては、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0060】
(11)カラーフィルタ層128
上部基板130には画素の各色自己発光領域100aに対応する位置にカラーフィルタ層128が形成されている。カラーフィルタ層128は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させるために設けられる透明層であり、各色画素から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。例えば、本例では、赤色間隙522zR内の自己発光領域100aR、緑色間隙522zG内の自己発光領域100aG、青色間隙522zB内の自己発光領域100aBの上方に、赤色、緑色、青色のフィルタ層128R、G、Bが各々形成されている。カラーフィルタ層128は、具体的には、例えば、複数の開口部を画素単位に行列状に形成されたカラーフィルタ形成用のカバーガラスからなる上部基板130に対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布する工程により形成される。
【0061】
3.インク乾燥装置
(1)全体構成
次に、表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置の構成について説明する。
図5は、実施の形態に係る有機EL表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置900の模式断面図である。
【0062】
インク乾燥装置900は、後述するインク乾燥工程において、基板100x上の列バンク522Y間の間隙522z内に充填された有機発光材料を含むインクを減圧下で乾燥させベーク処理することによって、発光層123を形成するための製造装置である。
図5に示すように、インク乾燥装置900は、列バンク522Y間の間隙522z内に有機発光材料を含むインクが塗布された基板100xを収容するチャンバ500と、チャンバ500内において基板100xが載置される支持台700を備える。さらに、基板100x上の列バンク522Yから所定距離離間した状態で基板100xに対し対向配置される整流板400と、整流板400を列バンク522Yから所定距離離間させて基板100xに対向させる保持手段としてスペーサ800とを備える。また、チャンバ500に接続されチャンバ500から気体を吸引してチャンバ500外へ排気する真空ポンプ600、支持台700上の基板100xを加熱するヒータ(不図示)とを備える。ヒータは、支持台700に設置されたホットプレート、チャンバ500内を加熱するオーブンを用いることができる。
【0063】
支持台700は、耐熱性に優れた金属、又はセラミックの板からなる。支持台700は、駆動手段(不図示)により、チャンバ500の内と外との間を双方向に移動可能に構成されている。
整流板400は、耐溶剤性を有するステンレス、アルミ、銅、鉄等の金属、又はセラミックの板からなり、貫通孔400aが複数開設されている。整流板400は、昇降手段(不図示)により支持台700の上方をZ方向に双方向に移動可能に構成されている。
【0064】
保持手段であるスペーサ800は、支持台700の外周近傍に複数設けられた金属による支柱状の間隙形成手段であり、昇降手段により整流板400が下方に移動し支持台700に近接したときに、整流板400を保持することにより支持台700と整流板400との間隙を所定距離に規制する。
チャンバ500内における真空ポンプ600への排気路への開口500aは支持台700の下方に位置することが好ましい。
図5に示すように、支持台700と整流板400とを包むように気流を形成することができ、RGB各色の発光単位を規制する列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10a内において通貫通孔400aを介してより均一な速度で整流板400上方に蒸気Air1を放出することができる。
【0065】
(2)整流板400
次に、整流板400の詳細について説明する。
図6は、インク乾燥装置900における整流板400と基板100xとの位置関係を示す模式図であって、(a)は斜視図、(b)は整流板400を透視して示した基板100xの平面図である。
図5、6に示すように、整流板400は、X方向、Y方向ともに、基板100x上の少なくとも区画領域10aよりも大きい。また、基板100xに対し対向して配置された状態において、整流板400上の貫通孔400aが開設されている領域400aAreaに、基板100x上の少なくとも区画領域10aに対向する領域は含まれる。例えば、
図6(b)に示すように、領域400aAreaに基板100xが含まれていている構成としてもよい。
【0066】
基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲における貫通孔400aの開口面積の総和は、列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10aの面積に対し、10%以上60%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがさらに好ましい。また、貫通孔400aの直径は、2mm以上50mm以下であることが好ましく、3mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。流路抵抗を減少し、排気のバランスを向上するためである。流路抵抗を減少することにより、基板100xと整流板400間の大気を排出するために要する時間が過大になるのを防ぎ、この時間に間隙522z内でインク流動が発生し、間隙522z内で膜厚のバラつきを生じることを防止できる。貫通孔400aの直径は、上記範囲において、区画領域10aと対向する範囲において異なっていてもよく、区画領域10a内において分布を持って変化していてもよい。基板100xに対し対向して配置された状態において、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙は、3mm以上50mm以下であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。孔形状は、例えば、真円、正方形、六角形などが好ましい。また、貫通孔400aの形状を円形としたとき、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの最小間隙に対する貫通孔400aの直径の比率は、0.5以上2以下であることが好ましく、0.8以上1.5以下であることがさらに好ましい。本実施の形態では、比率は1としている。貫通孔400aの形状は円形以外であってもよく、この場合、貫通孔400aのX方向及びY方向における開口長さの平均値が、上記した直径における好適な数値範囲に含まれていればよい。
【0067】
貫通孔400aは、基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において均一に分布している。整流板400において、貫通孔400aが千鳥状に配置されてなることが好ましい。千鳥状に配置された構成では、同じ開口率において貫通孔400aを並列状に配列させた場合に比べて気流の流れが向上し、形成されるインク層123の膜厚の均一性が向上するためである。貫通孔400aを並列状に配列させた場合では、整流板400において、孔が開いている部分と孔が開いていない部分とがはっきりと区別される。また、貫通孔400aを千鳥状に配置した場合と比べて、孔があいていない部分が連続したまとまったエリアを構成し、整流板400に占める孔があいていないエリアの面積が相対的に大きなものとなる。その結果、排気時にパネル基板と整流板の間で乱流気味となり膜厚のバラつきが増加すると考えられる。
【0068】
千鳥状の配置において、隣接する貫通孔400a間のピッチは、例えば、20mm以上30mm以下としてもよい。しかしながら、隣接する貫通孔400a間のピッチは、区画領域10aと対向する範囲において異なっていてもよく、区画領域10a内において分布を持って変化してもよい。
整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙に対する貫通孔400aの直径の比率は、上記範囲内に規制することにより、
図5に示すように、基板100xと整流板400との間の空間において、基板100x上の区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気Air1が、基板100xの平面方向に移動することが抑制され、溶媒の蒸気Air1を貫通孔400aを介して整流板400上方に放出される。
【0069】
さらに、本実施の形態では、上述のとおり、貫通孔400aの直径とピッチは、基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において均一に配置されている構成を採る。そのため、区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気Air1は、区画領域10a内において通貫通孔400aを介して均一な速度で蒸気Air1を整流板400上方に放出される。
【0070】
また、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙に対する貫通孔400aの直径の比率は、上記範囲内に規制した状態において、貫通孔400aの直径とピッチの何れか又は両方を基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において分布させてもよい。これにより、区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気Air1の、区画領域10a内における整流板400上方への蒸発速度の分布を好適にコントロールすることができる。
【0071】
以上、説明したようにインク乾燥装置900を用いたインク乾燥工程では、形成される発光層123の膜形状も同様に、成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。すなわち、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制するとともに、後述するように、基板上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を緩和することができる。
【0072】
その結果、係るインク乾燥工程を含む表示パネル10の製造方法では、非表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
4.表示パネル10の製造方法
次に、表示パネル10の製造方法について説明する。
図7は、表示パネル10の製造工程を示す工程図である。
図8(a)〜(d)、
図13(a)(b)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す
図3におけるにおけるY1−Y1と同じ位置で切断した模式断面図である。
【0073】
(1)画素電極層119の形成
先ず、
図7、8(a)に示すように、層間絶縁層までが形成されたTFT基板100x0を準備する。層間絶縁層にコンタクト孔を開設し、画素電極層119を形成する(ステップS10)。
画素電極層119の形成は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法などを用い金属膜を形成した後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法を用いパターニングすることでなされる。なお、画素電極層119は、TFTの電極と電気的に接続された状態となる。
【0074】
(2)ホール注入層120、ホール輸送層121の形成
次に、
図8(b)に示すように、画素電極層119上に対して、ホール注入層120、ホール輸送層121を形成する(ステップS20、30)。ホール注入層120、ホール輸送層121は、スパッタリング法を用い酸化金属(例えば、酸化タングステン)からなる膜を形成、あるいは、スパッタリング法を用い金属(例えば、タングステン)からなる膜を堆積し、焼成によって酸化して形成される。その後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い各画素単位にパターニングしてもよい。
【0075】
(3)バンク122の形成
図8(b)に示すように、ホール輸送層121の縁部を覆うようにバンク122を形成する。バンク122の形成では、先ず行バンク122Xを形成し(ステップS40)、その後、各画素を規定する間隙522zを形成するように列バンク522Yを形成し(ステップS50)、間隙522z内の行バンク122Xと行バンク122Xとの間にホール輸送層121の表面が露出するように設けられる。
【0076】
バンク122の形成は、先ず、ホール輸送層121上に、バンク122の構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜を積層形成する。そして、樹脂膜をパターニングして行バンク122X、列バンク522Yを順に形成する。行バンク122X、列バンク522Yのパターニングは、樹脂膜の上方にフォトマスクを利用し露光を行い、現像工程、焼成工程(約230℃、約60分)をすることによりなされる。
【0077】
バンク122Xの形成工程では、先ず、スピンコート法などを用い、有機系の感光性樹脂材料、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等からなる感光性樹脂膜を形成した後、乾燥し、溶媒をある程度揮発させてから、所定の開口部が施されたフォトマスクを重ね、その上から紫外線照射を行い感光性樹脂等からなるフォトレジストを露光し、そのフォトレジストにフォトマスクが有するパターンを転写する。次に、感光性樹脂を現像によってバンク122Xをパターニングした絶縁層を形成する。一般にはポジ型と呼ばれるフォトレジストが使用される。ポジ型は露光された部分が現像によって除去される。露光されないマスクパターンの部分は、現像されずバンク122が約500nm程度の厚みで残存する。
【0078】
列バンク522Yの形成は、先ず、スピンコート法などを用い、列バンク522Yの構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜を積層形成する。そして、樹脂膜をパターニングして間隙522zを開設して列バンク522Yを形成する。間隙522zの形成は、樹脂膜の上方にマスクを配して露光し、その後で現像することによりなされる。列バンク522Yは、列方向に延設され、行方向に間隙522zを介して並設される。
【0079】
また、列バンク522Yは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を堰き止めて、形成される発光層123の行方向外縁を規定するため、列バンク522Yはインクに対する撥液性が所定の値以上であることが必要である。他方、行バンク122Xは、発光層123のインクの列方向への流動を制御するために、行バンク122Xはインクに対する親液性が所定の値以上であることが必要である。
【0080】
列バンク522Yの表面に撥水性をもたせるために、列バンク522Yの表面をCF4プラズマ処理することもできる。また、列バンク522Yの形成にフッ素を含有した材料、もしくはフッ素を含有した材料を混合した組成物を用いてもよい。
製造上、バンク122Xの上限膜厚は、1000nm以下で、製造時の膜厚バラツキがより小さくなると共にボトム線幅の制御が可能となる。また、下限膜厚は、膜厚が薄くなるとともに膜厚とボトム線幅とを同程度にする必要があり、下限膜厚が200nm以上で、解像度の制約による所望のボトム線幅を得ることが可能となる。ましたがって、バンク122Xの厚みは、製造プロセスの観点では、例えば、200mm以上1000nm以下であることが好ましい。本実施の形態では約500nmとした。
【0081】
製造上、バンク522Yの上限膜厚は、コスト削減による生産性向上の観点から1500nm以下が望ましい。また、下限膜厚は、膜厚が薄くなるとともに膜厚とボトム線幅とを同程度にする必要があり、下限膜厚が1000nm以上で、解像度の制約による所望のボトム線幅を得ることが可能となる。また溶液塗布をともなうプロセスの場合、下地の凹凸が膜厚の均一性が向上する。このことよりTFTの段差をできるだけ低減する必要があることより絶縁膜の下限膜厚が決定し500nm以上が好ましい。したがって、バンク522Yの厚みは、製造プロセスの観点では、例えば、500nm以上1500nm以下であることが好ましい。本実施の形態では約1000nmとした。
【0082】
(4)発光層123の形成
図8(c)に示すように、列バンク522Yで規定された各間隙522z内に、ホール輸送層121側から順に、発光層123を積層形成する(ステップS60)。
発光層123の形成は、インクジェット法を用い、有機発光材料を含むインクを列バンク522Yにより規定される間隙522z内に塗布(ステップS61)した後、焼成によりインクを乾燥する(ステップS62)ことによりなされる。
【0083】
具体的には、この工程では、副画素形成領域となる間隙522zに、インクジェット法によりR、G、Bいずれかの有機発光層の材料を含むインク123RI、123GI、123BIをそれぞれ充填し、充填したインクを減圧下で乾燥させ、ベーク処理することによって、発光層123R、123G、123Bを形成する(
図8(c))。
(4−1)インク塗布方法(ステップS60)について
発光層123のインクの塗布では、先ず、液滴吐出装置を用いて発光層123の形成するための溶液の塗布を行う。基板100xに対して赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の何れかを形成するためのインクの塗布が終わると、次に、その基板に別の色のインクを塗布し、次にその基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。これにより、基板100x上には、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、図の紙面横方向に繰り返して並んで形成される。
【0084】
次に、インクジェット法を用いて、発光層123のインクを間隙522z内に塗布する方法の詳細について説明する。
図9は、基板に対して発光層形成用のインクを塗布する工程を示す図であって、列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する場合の模式図である。
発光層123の形成時には、発光層123を形成するための溶液であるインクを用いて、赤色副画素用の間隙522zR内に発光層123R、緑色副画素用の間隙522zG内に発光層123G、及び青色副画素用の間隙522zB内に発光層123Bを、複数のラインバンク間の各領域に形成する。発光層123Rと、発光層123G又は発光層123Bとは厚みが異なる。具体的には、間隙522zR内に塗布するインクの量を、間隙522zB及び間隙522zG内に塗布するインクの量よりも多くすることにより、発光層123Rの厚みを、発光層123B及び発光層123Gの厚みよりも大きく形成することができる。
【0085】
説明を簡略にするため、ここでは、ノズルから吐出するインクの量を第1の条件に設定して基板上の複数の第1色目の間隙にインクを塗布し、次に、ノズルから吐出するインクの量を第2の条件に設定してその基板上の複数の第2色目の間隙にインクを塗布し、次にノズルから吐出するインクの量を第3の条件に設定してその基板上の複数の第3色目の間隙にインクを塗布する方法で、3色全部の間隙にインクを順次塗布する。基板100xに対して第1色目の間隙へのインクの塗布が終わると、次に、その基板の第2色目の間隙にインクを塗布し、さらに、その基板の第3色目の間隙にインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色の間隙用のインクを順次塗布する。
【0086】
上記において、複数の基板に対して第1色目の間隙へのインクの塗布が終わると、次に、その複数の基板に第2色目の間隙にインクを塗布し、次にその複数の基板の第3色目の間隙にインクを塗布する工程を繰り返し行って、3色の間隙用のインクを順次塗布してもよい。
他方、ノズルから吐出するインクの量を第1の条件に設定して1枚の基板上の第1色目の間隙にインクを塗布した後、インクの量を第2の条件に変更して隣接する第2色目の間隙にインクを塗布し、さらに、インクの量を第3の条件に変更して隣接する第3色目の間隙にインクを塗布し、インクの量を第1の条件に戻して隣接する第1色目の間隙にインクを塗布し、この動作を繰り返して1枚の基板上の3色の間隙全部にインクを連続して塗布してもよい。
【0087】
(列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する方法)
次に、1色の間隙中にインク(例えば、赤色間隙用のインク)を塗布する方法について説明する。
発光層123は、発光領域100aだけでなく、隣接する非自己発光領域100bまで連続して延伸されている。このようにすると、発光層123の形成時に、発光領域100aに塗布されたインクが、非自己発光領域100bに塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、列方向の画素間でその膜厚を平準化することができる。但し、非自己発光領域100bでは、行バンク122Xによって、インクの流動が程良く抑制される。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらや寿命低下が改善される。
【0088】
本塗布方法では、
図7(a)に示すように、基板100xは、列バンク522YがY方向に沿った状態で液滴吐出装置の作業テーブル上に載置され、Y方向に沿って複数の吐出口624d1がライン状に配置されたインクジェットヘッド622をX方向に走査しながら、各吐出口624d1から列バンク522Y同士の間隙522z内に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。
【0089】
なお、同一の塗布量にて発光層123のインクを塗布する領域は、x方向に隣接して並ぶ3つの領域の中の1つである。
発光層123の形成方法はこれに限定されず、インクジェット法やグラビア印刷法以外の方法、例えばディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布しても良い。
【0090】
(4−2)インク乾燥方法(ステップS62)について
塗布したインクを焼成により乾燥するインク乾燥工程について説明する。
図10は、有機EL表示パネル10の製造方法において、インク乾燥工程の詳細を示す工程図である。
図11は、インク乾燥工程におけるチャンバ内圧力の時間変化を示す図である。
ステップS620では、列バンク522Y間の間隙522z内に有機発光材料を含むインクが塗布された基板100xを支持台700に載置し、支持台700を駆動手段(不図示)により、チャンバ500の内に移動させて、基板100xをチャンバ500内に収容する。
【0091】
ステップS621では、チャンバ500内において、整流板400を昇降手段(不図示)により上方から下方に移動させ、支持台700の外周近傍に複数設けられたスペーサ800に保持させる。これにより、支持台700と整流板400との間隙が所定距離に規制され、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙が、所定距離範囲内に規制される。
【0092】
この状態において、真空ポンプ600を駆動してチャンバ500内の圧力を大気圧から真空まで減圧する(ステップS622)。
図11は、インク乾燥工程におけるチャンバ500内圧力の時間変化を示す図である。
図11に示すように、本実施の形態では、チャンバ500内の圧力を、約100kPaから約1分で約10Paまで1/10000に減圧し、3分で1Pa以下まで1/100000に減圧し、その後、0.1Paまで減圧する。減圧過程では、主に開始から2分から3分までの時間Tiniにおいて、
図5に示すように、支持台700と整流板400が位置するチャンバ500内から外への気流が発生する。同様に基板100xに塗布されたインクから蒸発した溶媒蒸気も、主に時間Tiniの時間帯において、基板100xと整流板400との間隙からチャンバ500外へ放出される。
【0093】
上述のとおり、インク乾燥装置900では、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙が所定の範囲内に規制され、かつ、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙に対する貫通孔400aの直径の比率が、所定の範囲内に規制されている。さらに、貫通孔400aの直径とピッチは、基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において均一に配置されている。
【0094】
そのため、基板100xと整流板400との間の空間において、基板100x上の区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板100xの平面方向に移動することが抑制され、区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気は、区画領域10a内において通貫通孔400aを介して均一な速度で蒸気を整流板400上方に放出される。
次に、チャンバ500内の圧力が所定の基準値以下になるまで減圧し、基準値以下を維持し充填したインクに含まれる溶媒を蒸発してインクを乾燥させる。その後、基板100xにベーク処理を施すことによって、発光層123を形成する(ステップS623)。ベーク処理は、所定条件の焼成工程(加熱温度約150℃、加熱時間約60分15分以上45分以内の条件で真空焼成する工程)により行う。
【0095】
焼成工程が終了すると、チャンバ500内に気体を導入し(ステップS624)、整流板400を昇降手段(不図示)により上方に移動して基板100xから退避させて、支持台700を駆動手段(不図示)により、チャンバ500の外に移動させて、発光層123が形成された基板100xをチャンバ500外に搬出し(ステップS625)、インク乾燥工程を終了する。
【0096】
(5)電子輸送層124、対向電極層125および封止層126の形成
図8(d)に示すように、間隙522z内、及び列バンク522Y上にベタ膜として真空蒸着法などを用い電子輸送層124を形成する(ステップS70)。間隙522z内、及び列バンク522Y上にベタ膜として電子輸送層124を被覆するように、対向電極層125および封止層126を順に積層形成する(ステップS80、S90)。対向電極層125および封止層126は、CVD法、スパッタリング法などを用い形成できる。
【0097】
(6)CF基板131の形成
次に、CF基板131を形成する(ステップS100)。
図12(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造におけるCF基板131製造の各工程での状態を示す模式断面図である。
CF基板131の形成では、先ず、透明な上部基板130を準備する(
図12(a))。次に、上部基板130表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ層128(例えば、G)の材料を溶媒に分散させ、ペースト128Xを塗布し(
図12(b))、溶媒を一定除去した後、所定のパターンマスクPM2を載置し、紫外線照射を行う(
図12(c))。その後はキュアを行い、パターンマスクPM2及び未硬化のペースト128Xを除去して現像すると、カラーフィルタ層128(G)が形成される(
図12(d))。この
図12(b)、(d)の工程を各色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、カラーフィルタ層128(R)、128(B)を形成する。なお、ペースト127Xを用いる代わりに市販されているカラーフィルタ製品を利用してもよい。
【0098】
(7)CF基板131と背面パネルとの貼り合わせ
次に、CF基板131と背面パネルとの貼り合わせる(ステップS110)。
工程では、先ず、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルに、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの紫外線硬化型樹脂を主成分とする接合層127の材料を塗布する(
図13(a))。
【0099】
続いて、塗布した材料に紫外線照射を行い、背面パネルとCF基板131との相対的位置関係を合せた状態で両基板を貼り合わせる。このとき、両者の間にガスが入らないように注意する。その後、両基板を焼成して封止工程を完了すると、表示パネル10が完成する(
図13(b))。
6.表示パネル10の製造方法による効果について
以下、表示パネル10から得られる効果について説明する。
【0100】
6.1 膜厚測定結果
発明者は、表示パネル10における発光層123の膜厚の分布を測定した。
図13は、表示パネル10の実施例、比較例1から3における膜厚の測定位置を示す模式平面図である。本試験では、表示パネル10の実施例における、区画領域10aのX方向中心線上における基板100x上の発光層123の膜厚の分布を、列バンク522Yの列方向端部522Yeから端部522Yeまで測定した。
【0101】
(1)供試サンプル
次に、実施例、比較例1から3の仕様について説明する。
実施例のサンプルは、インク乾燥工程において、実施例に係るインク乾燥装置900を用いて製造した表示パネル10である。
比較例1の結果は、インク乾燥工程において、インク乾燥装置900から整流板400を取り除いた比較例1に係るインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルの膜厚測定結果である。
【0102】
比較例2の結果は、インク乾燥工程において、インク乾燥装置900から整流板400に変えて貫通孔を一切設けない整流板400X2を用いた比較例2に係るインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルの膜厚測定結果である。
図15は、インク乾燥装置の比較例2における整流板400X2と基板100xとの位置関係を示す斜視図である。
比較例3の結果は、インク乾燥工程において、インク乾燥装置900から整流板400に変えて基板100xの区画領域10aに対向する範囲、あるいは当該範囲の外縁よりX、Y方向とも0〜50mm内方を外縁とする範囲の何れかを開口とした整流板400X3を用いた比較例2に係るインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルの膜厚測定結果である。
図16は、インク乾燥装置の比較例3における整流板400X3と基板100xとの位置関係を示す模式図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【0103】
(2)測定結果
図17は、表示パネル10の実施例及び比較例1における膜厚の測定結果である。比較例1では、列バンク522Yの上端部(0mm位置)にて、上端部から約20mmの位置と比較して膜厚が最大18nm減少した。また、下端部(220mm位置)にて、下端部から約40mmの位置と比較して膜厚が最大13nm減少した。これに対し、表示パネル10の実施例では、列バンク522Yの上端部(0mm位置)及び下端部(220mm位置)における膜厚の減少は3〜5nm程度しか観測されなかった。
【0104】
以上の結果より、表示パネル10では、インク乾燥装置900から整流板400を取り除いた比較例1に対して隣接する列バンク522Y間の間隙522YZに沿った列状塗布領域内で機能層の膜厚の均一性が向上したことが確認された。
図18は、比較例2における膜厚の測定結果である。比較例2では、列バンク522Yの上端部(0mm位置)にて、上端部から約100mmの位置と比較して膜厚が最大25nm減少した。また、下端部(220mm位置)にて、同じ位置と比較して膜厚が最大23nm減少した。
【0105】
以上の結果より、表示パネル10では、貫通孔を一切設けない整流板400X2を用いた比較例2に対しても隣接する列バンク522Y間の間隙522YZに沿った列状塗布領域内で機能層の膜厚の均一性が向上したことが確認された。また、比較例1との比較では、比較例2では比較例1よりも、間隙522YZに沿った列状塗布領域内で機能層の膜厚の変動が大きいことが確認された。
【0106】
図19は、比較例3における膜厚の測定結果を比較例1における膜厚の測定結果とともに示した図である。比較例3として、整流板400に変えて基板100xの区画領域10aに対向する範囲開口とした整流板を用いた比較例3Aに係るインク乾燥装置により製造された表示パネルの膜厚、及び、区画領域10aに対向する範囲の外縁よりX、Y方向とも20mm内方を外縁とする範囲を開口とした整流板を用いた比較例3Bに係るインク乾燥装置により製造された表示パネルの膜厚との両方を示す。
【0107】
比較例3Aでは、列バンク522Yの上端部(0mm位置)にて、上端部から約20mmの位置と比較して膜厚が最大15nm減少した。また、下端部(220mm位置)にて、下端部から約40mmの位置と比較して膜厚が最大15nm減少しており、比較例1と同様の結果であった。
比較例3Bでは、列バンク522Yの上端部(0mm位置)にて、上端部から約70mmの位置と比較して膜厚が最大11nm減少した。また、下端部(220mm位置)にて、下端部から約60mmの位置と比較して膜厚が最大10nm減少しており、比較例1及びと比較例3Aよりも5nm程度の良化が確認された。
【0108】
上述した実施例との比較では、比較例3A、比較例3Bともに、間隙522YZに沿った列状塗布領域内で機能層の膜厚の変動が大きいことが確認された。
6.2 膜厚測定結果について
表示パネル10から得られた発光層123の膜厚測定結果について考察する。
(1)比較例1について
(行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に起因する膜厚変動)
発明者は、基板上にインクを充填し乾燥する方法で機能層を形成するウエットプロセスに於いて、基板上の表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分での乾燥速度差による成膜形状にばらつきについて検討を行った。
【0109】
図20(a)(b)は、比較例1に係る表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分との間の成膜形状の違いを示す説明図である。
図20(a)において、100xは基板、522Yは基板100xに配設される列バンクであって、隣接する列バンク522Y間の間隙522zを規定する。123は発光層を形成するために間隙522zに充填されたインクである。
【0110】
図17に示すように、列バンク522Yの高さを面内で均一に素子を作製した場合、インクの溶媒の蒸気濃度が高く乾燥の遅い表示領域の中央部分A1のサブ画素では、区画領域10aの外周付近に位置するために相対的に蒸気濃度が低く乾燥の速い表示領域の周縁部分B1又はC1のサブ画素に比べ、発光層123は側壁近傍が薄膜化し画素中央が厚膜化するという結果となった。
【0111】
図20(a)(b)に示すように、乾燥の遅い中央部分A1では、溶媒が蒸発する過程で、発光層123インクを構成する固形成分が沈降し間隙522zの底部に移動し、底部の膜厚を増加させたものと考えられる。
このように、比較例1では、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動が発生する。
【0112】
(列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動)
図20(a)は、比較例1における列バンク522Yの端部522Ye付近の基板100Xの模式平面図であり、(b)は(a)におけるY2−Y2で切った模式側断面図である。(c)は、時間経過に伴う発光層123Yの膜厚の変化を示す(a)におけるY2−Y2で切った模式側断面図である。
図20(a)(b)に示すように、基板100Xには、列バンク522Y及び行バンク122Xが配設されている。
【0113】
図20(c)に示すように、比較例1における基板100x上に塗布された発光層123Yのインクは、列バンク522Yの端部522Yeから溶媒の乾燥は始まる。その理由は、ウエットプロセスに於いては、インクの溶媒を蒸発乾燥させるプロセスにおいて、成膜エリアの中央部分と周縁部分とでは、周縁部分の方が中央部分よりも溶媒蒸気圧が低くなることにより溶媒の乾燥速度が大きいためである。成膜エリアとは、ウエットプロセスによりインクを塗布するエリアであり、
図1に示した区画領域10aと同じ領域である。そのため、乾燥により溶媒の蒸発が進み、単位面積あたりの残存溶媒量が少ない端部522Ye付近のインクよりも、溶媒の蒸発が遅く単位面積あたりの残存溶媒量が多い端部522Yeより内方のインクの表面張力が不均一となる。そして、端部522Ye付近のインクは端部522Yeより内方のインクからの表面張力によって内方に引っ張られ内方に向けたインク対流が生じる。その結果、端部522Ye付近のインクは端部522Yeより内方へ移動し、端部522Yeより内方におけるインク膜厚は増加する。
【0114】
図20(c)の上段から下段に向けて段階的に示すように、時間経過に伴い端部522Yeから内方に向けて徐々に溶媒の乾燥が進行し、これに伴い、端部522Yeから内方に向けたインクの移動により端部522Yeから内方に向けてインク膜厚も徐々に増加する。最終的には、成膜エリアの中央部分においてインク膜厚が最大となり、
図22に示すように、形成される発光層123Yの膜形状も同様に成膜エリアの列方向の中央部分において膜厚が最大となる形状になる。
【0115】
このように、比較例1では、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動が発生する。
(2)比較例2について
図23(a)(b)は、比較例2に係る表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分との間の成膜形状の違いを示す説明図である。
図18に示すように、貫通孔を一切設けない整流板400X2を用いてインク乾燥を行った比較例2では、比較例1との比較において、より一層側壁近傍が薄膜化し画素中央が厚膜化する結果となった。すなわち、インクの溶媒の蒸気濃度が高く乾燥の遅い表示領域の中央部分A2のサブ画素では、区画領域10aの外周付近に位置するために相対的に蒸気濃度が低く乾燥の速い表示領域の周縁部分B2又はC2のサブ画素に比べ、より一層側壁近傍が薄膜化し画素中央が厚膜化する傾向が堅調となった。
【0116】
図23(a)(b)に示すように、貫通孔を一切設けない整流板400X2を用いたことにより、インクの溶媒の蒸気は整流板400X2と基板100xとの間隙から上方へ放出(Fz2)されず、間隙の外周縁のみから放出(Fx1、2)されるために、中央部分A2と周縁部分B2又はC2との蒸気濃度の差がより一層大きくなるためである。そのため、比較例1に比べてさらに乾燥が抑制される中央部分A2では、溶媒が蒸発する過程で、発光層123インクを構成する固形成分が沈降し間隙522zの底部に移動し、底部の膜厚を増加させたものと考えられる。
【0117】
このように、比較例2では、比較例1に対し行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動が拡大する。
他方、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動については、比較例2は比較例1と同等であると考えられる。
【0118】
(3)実施例について
図24(a)(b)は、実施例に係る表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分との間の成膜形状の違いを示す説明図である。
図17に示すように、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設された整流板400を用いてインク乾燥を行った実施例では、表示領域の中央部分A3のサブ画素と区画領域10aの外周付近に位置する表示領域の周縁部分B3又はC3のサブ画素との間で、比較例1、2に対して発光層123の膜厚の差が減少するという結果になった。
【0119】
図24(a)(b)に示すように、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設された整流板400を用いたことにより、インクの溶媒の蒸気は整流板400と基板100xとの間隙から主に貫通孔400aを通って上方に多くが放出され(Fz1)、外周縁から放出(Fx1、2)される蒸気の面内の移動が減少したために、中央部分A3と周縁部分B3又はC3との蒸気濃度の差が減少して、中央部分A3と周縁部分B3又はC3における溶媒の蒸発速度の差が減少する。そのため、中央部分A3において、周縁部分B3又はC3との比較において、溶媒が蒸発する過程で、発光層123インクを構成する固形成分が沈降し間隙522zの底部に移動し、底部の膜厚が増加する傾向ことを抑制できたものと考えられる。
【0120】
このように、実施例では、比較例1、2に対し行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動が減少する。
他方、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動についても、実施例は比較例1、2に対し改善すると考えられる。実施例では、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に起因する膜厚変動が減少したことによって、列状塗布領域内でのインク表面張力のアンバランスの発生要因である蒸発速度差が減少し、インク表面張力のアンバランスが減少するためである。
【0121】
以上により、実施例では、
図24(b)に示すように、形成される発光層123の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。すなわち、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制するとともに、基板上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を緩和することができる。その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0122】
7.小 括
以上説明したように、実施の形態1に係る表示パネル10の製造方法では、行方向に隣接する列バンク522Y間の間隙522zそれぞれに、列バンク22Yの列方向端部間にわたり列方向に連続して有機発光材料を含むインクを塗布する工程と、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設された整流板400が複数の列バンクから所定距離離間した状態で、複数の貫通孔が基板100x上の少なくとも複数の列バンク22Yと対向する範囲10aに位置するように、インクが塗布された基板100xと整流板400とを対向させて配置する工程と、基板100x及び整流板400を含む雰囲気から気体の排気する工程と、雰囲気の圧力が所定圧力以下の状態において基板100xを加熱することによりインクを乾燥させる工程とを含むことを特徴とする。
【0123】
係るインク乾燥工程を含む表示パネル10の製造方法により、インク乾燥工程において、形成される発光層123の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。
上記したように、貫通孔400aの直径とピッチは、基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において均一に配置されている構成を採る。そのため、区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気は、区画領域10a内において通貫通孔400aを介して均一な速度で蒸気を整流板400上方に放出される。
【0124】
そのため、基板100x中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制するとともに、基板100x上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を緩和することができる。その結果、基板100x上の列状塗布領域522z内及び列状塗布領域522z間で発光層123の膜厚の均一化を図ることができる。すなわち、非表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる表示パネル10面内での輝度ムラを改善することができる。
【0125】
また、インクを乾燥させる工程における整流板400を基板100xに対向させた状態において、整流板400と列バンクとの最小間隙に対する貫通孔の開口長さの比率は、0.5以上2以下である構成としてもよい。
係る構成により、基板100xと整流板400との間の空間において、基板100x上の区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板100xの平面方向に移動することが抑制され、溶媒の蒸気を貫通孔400aを介して整流板400上方に放出させることができる。
【0126】
また、整流板には、整流板が複数の列バンクと対向する範囲における開口率が10%以上60%以下、さらに好ましくは開口率が20%以上40%以下である構成であってもよい。
係る構成により、基板100xと整流板400との間の空間において、基板100x上の区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板100xの平面方向に移動することを抑制し、大半の蒸気を適切に溶媒の蒸気を貫通孔400aを介して整流板400上方に放出させる構成を実現できる。
【0127】
また、実施の形態1に係る表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置900は、基板100x上に並設された複数の列バンクにおける、行方向に隣接する列バンク間の間隙それぞれに列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布されたインクの乾燥に用いるインク乾燥装置であって、インクが塗布された基板100xが設置されるチャンバと、チャンバ内において基板100xが載置される支持台と、均一な密度で複数の孔が開設された整流板400と、整流板400を、複数の列バンクから所定距離離間した状態で、複数の貫通孔が基板100x上の少なくとも複数の列バンクと対向する範囲に位置するように、インクが塗布された基板100xが載置された支持台に対し対向させるスペーサと、チャンバ内の気体を排気する手段と、チャンバ内に設置された基板100xを加熱する手段とを備えたことを特徴とする。
【0128】
係るインク乾燥装置900を用いたインク乾燥工程では、形成される発光層123の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。すなわち、基板100x中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制することができる。その結果、基板上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する表示パネルにおいて、非表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0129】
8.変形例1
次に、変形例1に係るインク乾燥装置900Aを用いた表示パネル10Aの製造方法について説明する。
実施の形態1に係るインク乾燥装置900を用いた表示パネル10の製造方法では、インク乾燥工程において、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設された整流板400が複数の列バンクから所定距離離間した状態でインクが塗布された基板と対向して配される構成とした。しかしながら、整流板の形状は上記に限らず適宜変更してもよい。
【0130】
図25は、変形例に係る有機EL表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置900Aの模式断面図である。
図26は、インク乾燥装置900Aにおける整流板400Aと基板100xとの位置関係を示す模式図であって、(a)は斜視図、(b)は整流板400Aを透視して示した基板100xの平面図である。
図25、
図26に示すように、インク乾燥装置900Aは、均一な密度で複数の貫通孔400aaが開設されているとともに、複数の列バンク522Yと対向する面上の領域を囲繞する周壁400Abを有する整流板400Aを有する構成を採る。そして、インク乾燥工程では、整流板400Aが複数の列バンク522Yから所定距離離間した状態で前記インクが塗布された基板100xと整流板400Aとを対向させて配置した状態において、基板100xの平面視したとき周壁400Abは複数の列バンク522Yを囲繞している構成を採る。整流板400Aにおいて周壁400Ab以外の要素、及び、インク乾燥装置900Aにおける整流板400A以外の構成については、インク乾燥装置900における各構成と同じであり説明を省略する。
【0131】
係る構成により、インクの溶媒の蒸気は整流板400Aと基板100xとの間隙における外周縁からの放出(Fx0)を停止でき、インクの溶媒の蒸気は全て整流板400Aの貫通孔400aを通って上方に放出される(Fz1)こととなる。これより、中央部分A4と周縁部分B4又はC4との蒸気濃度の差がさらに減少することができる。
図27(a)(b)は、変形例に係る表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分との間の成膜形状の違いを示す説明図である。均一な密度で複数の貫通孔400aが開設され、さらに外周縁に周壁400Abを設けた整流板400Aを用いてインク乾燥を行った変形例では、表示領域の中央部分A4のサブ画素と区画領域10aの外周付近に位置する表示領域の周縁部分B4又はC4のサブ画素との間で、実施例に対して発光層123の膜厚の差が同等か又は減少すると考えられる。
【0132】
図27(a)(b)に示すように、周縁に周壁400Abを設けた整流板400Aを用いたことにより、インクの溶媒の蒸気は整流板400と基板100xとの間隙から貫通孔400aを通って全て放出され(Fz1)、外周縁からの蒸気の放出(Fx0)を停止でき、中央部分A4と周縁部分B4又はC4との蒸気濃度の差がさらに減少する。そのため、中央部分A4において、発光層123インクの底部の膜厚増加をほぼ解消できたものと考えられる。基板100xに対し対向して配置された状態において、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙が20mm以上である場合において、周壁400Abを設けた整流板400Aを用いることが好ましい。間隙が20mm以上である場合において蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板100xの平面方向に移動が生じるからである。また、X、Y方向における整流板400の長さが、同方向における基板100xの長さと近似する場合にも周壁400Abを設けた整流板400Aを用いることが好ましい。この場合にも、インク溶媒の蒸気の基板100xの平面方向への移動が生じるからである。
【0133】
なお、以上において、整流板400Aにおける周壁400Abは、基板100x表面には接触させないことが必要である。
以上、説明したように、変形例では、整流板400は、複数の列バンク522Yと対向する整流板400面上の領域を囲繞する周壁400Abを有し、インクを乾燥させる工程において、基板100xの平面視したとき周壁400Abは複数の列バンク522Yを囲繞している構成を採る。係る構成により、比較例1、2に対し行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動がほぼ解消する。
【0134】
他方、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動についても、変形例は実施例に対し改善すると考えられる。変形例では、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に起因する膜厚変動が減少したことによって、列状塗布領域内でのインク表面張力のアンバランスがさらに減少するためである。
その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラをより一層改善することができる。
【0135】
9.変形例2
次に、変形例2に係るインク乾燥装置900Bの構成とそれを用いた表示パネルの製造方法について説明する。
9.1 インク乾燥装置900Bの構成
実施の形態1に係るインク乾燥装置900を用いた表示パネル10の製造方法では、インク乾燥工程において、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設された整流板400が複数の列バンクから所定距離離間した状態でインクが塗布された基板と対向して配される構成とした。しかしながら、整流板の貫通孔400aは上記に限らず適宜変更してもよい。
【0136】
図28(a)(b)は、変形例2に係る有機EL表示パネルの製造方法に用いるインク乾燥装置900Bの模式断面図である。
図28(a)(b)に示すように、インク乾燥装置900Bは、実施の形態に係るインク乾燥装置900と同様に、均一な密度で複数の貫通孔400aが開設されている整流板400を有する。そして、インク乾燥装置900Bでは、整流板400に開設された複数の貫通孔400aの一部又は全部を開閉可能な施蓋機構450を備えた点でインク乾燥装置900と相違する。ここで、貫通孔400aの全部を閉じるとは各貫通孔400aを完全に蓋をして閉じることをさす。一方、貫通孔400aの一部を閉じるとは、各貫通孔400aのそれぞれに対し部分的に蓋をして各貫通孔の開口率を減少する場合と、複数の貫通孔のうち一部の貫通孔に蓋をして開口している貫通孔の割合を減少する場合との両方をさすものである。インク乾燥装置900Bにおける施蓋機構450以外の構成については、インク乾燥装置900における各構成と同じであり説明を省略する。
【0137】
図28(a)は、施蓋機構450が貫通孔400aの全部を閉じた状態を示している。施蓋機構450に設けられた蓋部450bが整流板400の貫通孔400aの上方に位置して貫通孔400aの各開口に蓋をしている。この状態では、インクの溶媒の蒸気は施蓋機構450の蓋部450bにより遮られ、整流板400Aの貫通孔400aを通って上方に放出されることはない(
図28(a)Fz0)。
【0138】
図28(b)は、施蓋機構450が貫通孔400aを開いた状態を示している。施蓋機構450に設けられた孔部450aが整流板400の貫通孔400aの上方に位置し、蓋部450bは貫通孔400aと重ならない位置に移動して、貫通孔400aの蓋を解除している。この状態では、インクの溶媒の蒸気は整流板400の貫通孔400aを通って上方に放出される(
図28(b)Fz1)。
【0139】
このように、インク乾燥装置900Bは、整流板400に開設された複数の貫通孔400aの一部又は全部を開閉可能な施蓋機構450を備えた整流板400が、インク乾燥工程において、複数の列バンク522Yから所定距離離間した状態でインクが塗布された基板100xと整流板400とを対向させて配置した状態で、基板100xの平面視したとき複数の貫通孔400aは複数の列バンク522Yを上方に位置している構成を採る。
【0140】
係る構成により、貫通孔400aの一部又は全部を閉じている所定時間の間にインクの溶媒の蒸気は整流板400Aと基板100xとの間隙内雰囲気中のインク溶媒の蒸気Air1の蒸気濃度を高い状態に保持して、基板100x上の区画領域10aからインクの溶媒の蒸発を抑制することができる。
9.2 インク乾燥装置900Bを用いたインク乾燥方法
次に、インク乾燥装置900Bを用いたインク乾燥方法(
図7におけるステップS62)について説明する。
図29は、有機EL表示パネル10の製造方法において、インク乾燥装置900Bを用いたインク乾燥工程の詳細を示す工程図である。
図29において、ステップS621B1、ステップS621B2以外の工程については、
図10に示す実施の形態におけるインク乾燥方法の各ステップと同じである。
【0141】
ステップS620では、列バンク522Y間の間隙522z内に有機発光材料を含むインクが塗布された基板100xを支持台700に載置してチャンバ500の内に移動させて、基板100xをチャンバ500内に収容する。
ステップS621B1では、チャンバ500内において、整流板400を上方から下方に移動させ、支持台700の外周近傍に複数設けられたスペーサ800に保持させる。上述のとおり、インク乾燥装置900Bは、整流板400に開設された複数の貫通孔400aを開閉可能な施蓋機構450を備えている。ステップS621B1では、施蓋機構450に設けられた蓋部450bが整流板400の貫通孔400aの上方に位置して貫通孔400aの一部又は全部に蓋をしている状態で、基板100xと整流板400とを対向させて配置して所定時間保持する。ここで、貫通孔400aの一部又は全部に蓋をした状態で、基板100xと整流板400とを対向させて保持する時間は、排気プロファイル(排気速度)によって変わるが、例えば、排気開始から30秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0142】
これにより、支持台700と整流板400との間隙が所定距離に規制され、所定時間貫通孔400aを閉じた状態で整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙が、所定距離範囲内に規制されることによりインク乾燥を抑制することができる。すなわち、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙内雰囲気中のインク溶媒の蒸気Air1の蒸気濃度を高い状態に保持して、基板100x上に溶剤蒸気の飽和域をつくりあげ、基板100x上の区画領域10aからインクの溶媒の蒸発を抑制することができる。そのため、インク吐出直後においては、列状塗布領域を構成する間隙522z内において、インク吐出口のインクの吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキが生じるが、貫通孔400aの一部又は全部を閉じている所定時間の間に基板100xの間隙522z内のインクの列方向への移動が許容されるので、間隙522z内のインクは列方向に移動して膜厚バラツキが所定時間内にレべリングされる。その結果、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは減少する。
【0143】
その後、施蓋機構450を動作させて、施蓋機構450に設けられた蓋部450bを貫通孔400aと重ならない位置に移動して貫通孔400aの蓋を解除し、孔部450aが整流板400の貫通孔400aの上方に位置させて貫通孔400aを開口させる(ステップS621B1)。
この状態において、真空ポンプ600を駆動してチャンバ500内の圧力を大気圧から真空まで減圧する(ステップS622)。ステップS622におけるインク乾燥工程におけるチャンバ500内圧力の時間変化は
図11に示す態様と同じである。減圧過程では、主に開始から2分から3分までの時間Tiniにおいて、
図28(b)に示すように、支持台700と整流板400が位置するチャンバ500内から外への気流Fl1が発生する。気流Fl1に吸引されて、基板100xに塗布されたインクから蒸発した溶媒蒸気は、主に時間Tiniの時間帯において、基板100xと整流板400との間隙から貫通孔400aを通って整流板400上方へ移動し、気流Fl1によりチャンバ500外へ放出される。
【0144】
次に、チャンバ500内の圧力が所定の基準値以下になるまで減圧し、充填したインクに含まれる溶媒を蒸発してインクを乾燥させ、その後、基板100xにベーク処理を施して、発光層123を形成する(ステップS623)。
焼成工程が終了すると、チャンバ500内に気体を導入し(ステップS624)、整流板400を基板100xから退避させて、支持台700をチャンバ500の外に移動させて、発光層123が形成された基板100xをチャンバ500外に搬出し(ステップS625)、インク乾燥工程を終了する。
【0145】
以上、説明したように、変形例2に係るインク乾燥装置900B及びそれを用いたインク乾燥方法では、整流板400に開設された複数の貫通孔400aの一部又は全部を開閉可能な施蓋機構450を備えた構成を有し、施蓋機構450に設けられた蓋部450bが整流板400の貫通孔400aの上方に位置して貫通孔400aの一部又は全部に蓋をしている状態で、基板100xと整流板400との間隙を所定の範囲内に規制して対向配置させて所定時間保持する。
【0146】
これにより、所定時間の間に、間隙522z内のインクは列方向に移動して膜厚バラツキが所定時間内にレべリングされ、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは減少する。
さらに、所定時間経過後においては、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙が所定の範囲内に規制され、かつ、整流板400と基板100x上の列バンク522Yとの間隙に対する貫通孔400aの直径の比率が、所定の範囲内に規制されている。さらに、貫通孔400aの直径とピッチは、基板100x上の少なくとも区画領域10aと対向する範囲において均一に配置されている。
【0147】
そのため、基板100xと整流板400との間の空間において、基板100x上の区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気が、基板100xの平面方向に移動することが抑制され、区画領域10aから蒸発したインクの溶媒の蒸気は、区画領域10a内において通貫通孔400aを介して均一な速度で蒸気を整流板400上方に放出される。
その結果、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスや、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動を抑制することができ、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラをより一層改善することができる。
【0148】
なお、インク乾燥装置900Bにおいても、変形例1に係るインク乾燥装置900Aと同様に、複数の列バンク522Yと対向する面上の領域を囲繞する周壁を設ける構成としてもよい。
10.まとめ
以上説明したとおり、上記実施の形態に係る製造方法によれば、基板上の列状塗布領域内に有機発光材料を含むインクを塗布して製造する表示パネルにおいて、列状塗布領域内及び列状塗布領域間で発光層123の膜厚の均一化を図ることにより、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0149】
≪その他の変形例≫
実施の形態では、本実施の形態に係る表示パネル10を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、表示パネル10の変形例を説明する。
(1)実施の形態では、表示パネル10の量産工程において1枚の基板から表示パネル10を同時に形成する枚数について、枚数を特定した説明は行わなかった。しかしながら、表示パネル10の量産工程において1枚の基板から複数の表示パネル10を同時に形成する多面取りを行う場合にも、各表示パネル10に対するそれぞれの区画領域10aが1つの成膜エリアとなることは言うまでもない。多面取りの場合でも隣接する成膜エリア(区画領域10a)が所定の距離以上離間している場合には、各成膜エリアにおいて周縁部分の方が中央部分よりも溶媒蒸気圧が低くなるからである。
(2)上記実施の形態では、例えば、
図1に示すように、表示パネル10は、基板100x上をマトリックス状に区画してRGB各色の発光単位を規制する列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10aと、区画領域10aの周囲に非区画領域10b(X、Y方向にそれぞれ10Xb、10Yb、区別を要しない場合は10bとする)とから構成される例を示した。しかしながら、列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10aの周囲又は周囲の一部に、格子状の絶縁層により区画された周辺区画領域を設ける構成としてもよい。周辺区画領域では、格子状の絶縁層により区画された部分にも区画領域10aと同様に、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を形成するためのインクが塗布される。さらに周辺区画領域の周囲に非区画領域10bを設けてもよい。(3)上記実施の形態では、
図1に示すように、表示パネル10では、基板100x上の区画領域10aの外縁から所定の区画数だけ、各区画に有機EL表示素子100が形成されていない非発光領域10neが形成された構成とした。しかしながら、列バンク522Yの端部522Yeまで、基板100x上の各区画に画素電極層119を配設して表示素子配列領域10eとしてもよい。基板上の成膜エリアを有効に活用することができ表示素子配列領域10eを拡大することができコスト削減に資する。
(4)表示パネル10では、各色サブ画素100seである間隙522zの上方に、透光
性材料からなる上部基板130を備え、カラーフィルタ層128が形成されている構成とした。しかしながら、例示した表示パネル10において、透光性材料からなる上部基板130を設けずに、間隙522zの上方にはカラーフィルタ層128を設けない構成としてもよい。これにより、外光の照り返し抑制と発光効率を向上に加え、製造コストを低減することができる。
(5)表示パネル10では、発光層123は、行バンク上を列方向に連続して延伸している構成としている。しかしながら、上記構成において、発光層123は、行バンク上において画素ごとに断続している構成としてもよい。係る構成によっても、インクの溶媒の蒸気濃度の分布に起因する輝度ムラを改善することができる。
(6)表示パネル10では、行方向に隣接する列バンク522Y間の間隙522zに配されたサブ画素100seの発光層123が発する光の色は互いに異なる構成とし、列方向
に隣接する行バンク122X間の間隙に配されたサブ画素100seの発光層123が発
する光の色は同じである構成とした。しかしながら、上記構成において、行方向に隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色は同じであり、列方向に隣接するサ
ブ画素100seの発光層123が発する光の色が互いに異なる構成としてもよい。また
、行列方向の両方において隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色が
互いに異なる構成としてもよい。係る構成によっても、インクの溶媒の蒸気濃度の分布に起因する輝度ムラを改善することができる。
【0150】
(7)その他
実施の形態に係る表示パネル10では、画素100eには、赤色画素、緑色画素、青色
画素の3種類があったが、本発明はこれに限られない。例えば、発光層が1種類であってもよいし、発光層が赤、緑、青、黄色に発光する4種類であってもよい。
また、上記実施の形態では、画素100eが、マトリクス状に並んだ構成であったが、
本発明はこれに限られない。例えば、画素領域の間隔を1ピッチとするとき、隣り合う間隙同士で画素領域が列方向に半ピッチずれている構成に対しても効果を有する。高精細化が進む表示パネルにおいて、多少の列方向のずれは視認上判別が難しく、ある程度の幅を持った直線上(あるいは千鳥状)に膜厚むらが並んでも、視認上は帯状となる。したがって、このような場合も輝度むらが上記千鳥状に並ぶことを抑制することで、表示パネルの表示品質を向上できる。
【0151】
また、表示パネル10では、すべての間隙522zに画素電極層119が配されていたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、バスバーなどを形成するために、画素電極層119が形成されない間隙522zが存在してもよい。
また、上記実施の形態では、画素電極層119と対向電極層125の間に、ホール注入層120、ホール輸送層121、発光層123及び電子輸送層124が存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、ホール注入層120、ホール輸送層121及び電子輸送層124を用いずに、画素電極層119と対向電極層125との間に発光層123のみが存在する構成としてもよい。また、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態では、発光層123の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。さらに、各構成部位の材料には、公知の材料を適宜採用することができる。
【0153】
上記の形態では、EL素子部の下部にアノードである画素電極層119が配され、TFTのソースに画素電極層119を接続する構成を採用したが、EL素子部の下部に対向電極層、上部にアノードが配された構成を採用することもできる。この場合には、TFTにおけるドレインに対して、下部に配されたカソードを接続することになる。
さらに、上記実施の形態では、トップエミッション型のEL表示パネルを一例としたが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、ボトムエミッション型の表示パネルなどに適用することもできる。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。
【0154】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0155】
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0156】
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。