特許第6855685号(P6855685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855685
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】ハブユニット
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20210329BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20210329BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B60B27/00 J
   B60B35/02 L
   F16C19/18
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-84308(P2016-84308)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-193238(P2017-193238A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】揚田 祐
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−067323(JP,A)
【文献】 特開2008−049933(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/155897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 27/00
B60B 35/02
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の支持部材に固定される外輪と、車輪が取り付けられる円盤状の車輪取付フランジを有するハブ輪と、前記外輪と前記ハブ輪との間に配置された複数の転動体と、前記車輪取付フランジに形成された複数のボルト挿通孔のそれぞれに圧入された複数のハブボルトとを備え、前記複数のハブボルトによって前記車輪取付フランジに前記車輪が取り付けられるハブユニットであって、
前記車輪取付フランジは、前記車輪が取り付けられる取付面からの厚みが異なる厚肉部と薄肉部とを有し、前記厚肉部に前記ボルト挿通孔が形成され、
前記車輪取付フランジを前記取付面とは反対側から見たとき、前記厚肉部の外縁は、前記ボルト挿通孔が形成されている範囲では前記車輪取付フランジの外周端縁に形成され、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間では、それぞれの前記ボルト挿通孔のボルト孔中心を結ぶ直線よりも径方向外方で、当該直線に平行な線に沿った方向に延伸して形成されており、前記ボルト挿通孔が形成されている範囲と、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間との境界では、前記ボルト孔中心と前記ハブ輪の軸心とを結ぶ直線に平行な線に沿った方向に延伸しており、
かつ、前記車輪取付フランジを前記取付面とは反対側から見たとき、前記厚肉部の外縁は、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間では、それぞれの前記ボルト挿通孔の最大外径箇所を結ぶ直線よりも径方向外方に形成されている、
ハブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対して車輪を回転可能に支持する車両用のハブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に対して車輪を回転可能に支持するハブユニットが各種の車両に用いられている。ハブユニットは、懸架装置に連結されたナックルに固定される外輪と、車輪が取り付けられるフランジを有するハブ輪と、外輪とハブ輪との間に配置された複数の転動体とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のハブユニット(軸受ユニット)は、ハブ輪(回転輪)におけるハブフランジの取付面に、車輪と共にブレーキロータが取り付けられる。そして、ハブフランジの取付面の振れ精度が劣化すると、ブレーキジャダーが発生しやすいという課題に鑑みて、ハブフランジの取付面の振れを抑制すべく、取付面にブレーキロータとの間の摩擦を低減させるための複数の凹凸状の歯形部が形成されている。そして、この歯形部により、取付面の摩耗(フレッチング摩耗)が抑制され、ハブフランジにおける取付面の振れ精度が向上し、ブレーキジャダーを抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のハブユニットでは、ハブフランジの歯形部を鍛造や切削加工により形成することを想定している。鍛造で歯形部を形成する場合には、鍛造時に鍛造金型における歯形部に対応する角部に材料流圧が集中することで、鍛造金型の寿命が短くなるので、製造コストがかさむ。一方、切削加工で歯形部を形成する場合でも、鍛造等でハブフランジを形成した後に取付面に切削加工を施すことで歯形部を形成するため、製造工程に切削加工が増えることになり、製造コストがかさむ。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストを増加させることなく、ハブ輪のフランジの振れを抑制することが可能なハブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、車体側の支持部材に固定される外輪と、車輪が取り付けられる円盤状の車輪取付フランジを有するハブ輪と、前記外輪と前記ハブ輪との間に配置された複数の転動体と、前記車輪取付フランジに形成された複数のボルト挿通孔のそれぞれに圧入された複数のハブボルトとを備え、前記複数のハブボルトによって前記車輪取付フランジに前記車輪が取り付けられるハブユニットであって、前記車輪取付フランジは、前記車輪が取り付けられる取付面からの厚みが異なる厚肉部と薄肉部とを有し、前記厚肉部に前記ボルト挿通孔が形成され、前記車輪取付フランジを前記取付面とは反対側から見たとき、前記厚肉部の外縁は、前記ボルト挿通孔が形成されている範囲では前記車輪取付フランジの外周端縁に形成され、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間では、それぞれの前記ボルト挿通孔のボルト孔中心を結ぶ直線よりも径方向外方で、当該直線に平行な線に沿った方向に延伸して形成されており、前記ボルト挿通孔が形成されている範囲と、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間との境界では、前記ボルト孔中心と前記ハブ輪の軸心とを結ぶ直線に平行な線に沿った方向に延伸しており、かつ、前記車輪取付フランジを前記取付面とは反対側から見たとき、前記厚肉部の外縁は、前記車輪取付フランジの周方向に隣り合う一対の前記ボルト挿通孔の間では、それぞれの前記ボルト挿通孔の最大外径箇所を結ぶ直線よりも径方向外方に形成されている、ハブユニットを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るハブユニットによれば、製造コストを増加させることなく、ハブ輪のフランジの振れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るハブユニットの全体構成を示す断面図である。
図2】ハブユニットのハブ輪を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3】(a)は、ボルト挿通孔にハブボルトを圧入する前後の車輪取付フランジの各部の変位量を示す説明図である。(b)は、車輪取付フランジの変位量を示すグラフである。
図4】比較例に係るハブ輪を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】(a)は、比較例に係るハブ輪のボルト挿通孔にハブボルトを圧入する前後の車輪取付フランジの各部の変位量を示す説明図である。(b)は、比較例に係る車輪取付フランジの変位量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものである。このため、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るハブユニットの全体構成を示す断面図である。図1では、車両に搭載されたハブユニットを、その周辺部と共に示している。図2は、ハブユニットのハブ輪を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0012】
このハブユニット1は、車両の懸架装置に連結された車体側の支持部材としてのナックル90に対して、車輪91をブレーキロータ92と共に回転可能に支持する。図1では、車輪91のホイール及びブレーキロータ92の一部を示している。以下、ハブユニット1において、車輪91が取り付けられる側(図1の左側)を車両アウタ側といい、その反対側(図1の右側)を車両インナ側という。
【0013】
ハブユニット1は、ナックル90に固定される外輪2と、車輪91及びブレーキロータ92が取り付けられる円盤状の車輪取付フランジ31を有するハブ輪3と、外輪2の内側でハブ輪3に嵌着された内輪4と、外輪2とハブ輪3及び内輪4との間に配置された複数の転動体5と、複数の転動体5を保持する保持器61,62と、シール部材71,72と、車輪取付フランジ31に圧入によって固定された複数のハブボルト8とを備えている。ハブ輪3及び内輪4は、転動体5の転動により、回転軸線Oを中心として外輪2に対して回転可能である。図1では、図2(a)のA−A線断面におけるハブ輪3を示している。
【0014】
外輪2は、筒状の筒部21と、筒部21から外方に突出してナックル90に固定される固定フランジ22とを一体に有している。筒部21の両端部とハブ輪3及び内輪4との間には、シール部材71,72が配置されている。筒部21の内周には、転動体5が転動する第1の外側軌道面2a及び第2の外側軌道面2bが互いに平行に形成されている。固定フランジ22は、複数のボルト93によってナックル90に固定されている。図1では、このうち1つのボルト93を図示している。ボルト93は、固定フランジ22に形成された挿通孔220を挿通してナックル90に形成されたねじ孔900に螺合する。
【0015】
ハブ輪3は、車輪取付フランジ31と、外輪2の内側に配置される胴部33と、車輪取付フランジ31と胴部33とを連結する連結部32と、車輪取付フランジ31から車両アウタ側に突き出した円筒状のボス部34とを一体に有している。ハブ輪3は、例えばS55C(機械構造用炭素鋼)からなり、鍛造によって成形されている。車輪91及びブレーキロータ92は、ボス部34に外嵌されることで、ハブ輪3に対する径方向の位置が位置決めされる。
【0016】
胴部33は、車両アウタ側の大径部331と、車両インナの小径部332とを有している。大径部331の外周面には、外輪2の第1の外側軌道面2aに対向する内側軌道面3aが形成されている。小径部332の外周面には、内輪4が嵌着されている。内輪4の外周面には、外輪2の第2の外側軌道面2bに対向する内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、ハブ輪3の胴部33における車両インナ側の端部を塑性変形させた加締め部333によって、ハブ輪3に固定されている。第1の外側軌道面2aとハブ輪3の内側軌道面3aとの間、及び第2の外側軌道面2bと内輪4の内側軌道面4aとの間には、それぞれ複数の転動体5が配置されている。
【0017】
車輪取付フランジ31には、ハブボルト8が圧入される複数のボルト挿通孔310が形成されている。本実施の形態では、車輪取付フランジ31に5つのボルト挿通孔310が周方向に沿って等間隔に形成され、それぞれのボルト挿通孔310にハブボルト8が圧入されている。車輪91及びブレーキロータ92は、ハブボルト8、及びハブボルト8に螺合するホイールナット94によって車輪取付フランジ31に固定されている。
【0018】
ハブボルト8は、頭部81及び軸部82を一体に有している。頭部81は、車輪取付フランジ31の車両インナ側の端面に当接している。軸部82は、車輪取付フランジ31のボルト挿通孔310に圧入され、かつ車輪91のホイールに形成された挿通孔910及びブレーキロータ92に形成された挿通孔920に挿通されている。軸部82は、車輪取付フランジ31のボルト挿通孔310に圧入される基端部が、外周面に複数の凹凸を有するセレーション部821として形成されている。ボルト挿通孔310の内径は、セレーション部821が所定の締め代(例えば、0.36mm)をもって圧入される寸法に設定されている。軸部82の先端部には、ホイールナット94が螺合する雄ねじ部822が形成されている。
【0019】
なお、本実施の形態では、転動体5が球体であるが、これに限らず円錐ころであってもよい。また、本実施の形態では、ハブ輪3の胴部33の外周に1つの内輪4が嵌着されているが、胴部33に一対の内輪が嵌着され、それぞれの内輪に転動体5を転動させる内側軌道面が形成されていてもよい。この場合、外輪2とハブ輪3との間に、複数の転動体5が一対の内輪を介して配置される。
【0020】
車輪取付フランジ31は、車輪91及びブレーキロータ92が取り付けられる取付面31aからの厚みが異なる厚肉部311と薄肉部312とを有している。車輪取付フランジ31に薄肉部312が設けられていることにより、ハブ輪3の軽量化が図られている。ボルト挿通孔310は、厚肉部311に形成されている。取付面31aは、回転軸線Oに対して垂直な平坦な面である。回転軸線Oに平行な軸方向における薄肉部312の厚みは、同方向における厚肉部311の厚みの例えば30〜70%である。
【0021】
本実施の形態では、薄肉部312における取付面31aとは反対側の内側面312a(薄肉部312の車両インナ側の端面)が取付面31aと平行な平坦面である。ただし、内側面312aが車輪取付フランジ31の外径側ほど取付面31aに近づくように、薄肉部312の厚みが外径側ほど薄くなっていてもよい。薄肉部312の内側面312aよりも車両インナ側の厚肉部311は肉盛部として形成され、この肉盛部によって車輪取付フランジ31の剛性が高められている。
【0022】
図2(a)は、車輪取付フランジ31を取付面31aとは反対側から見た状態を示している。図2(a)では、各ボルト挿通孔310のボルト孔中心を符号310aで示し、これらのボルト孔中心310aを直線で結んで出来る多角形Pを図示している。本実施の形態では、車輪取付フランジ31に5つのボルト挿通孔310が形成されているので、この多角形Pが正五角形である。厚肉部311は、ハブボルト8の頭部81が当接するボルト挿通孔310の周辺部を含むように、周方向の5箇所において車輪取付フランジ31の外径側に張り出している。薄肉部312は、外径側に張り出した部分の厚肉部311のそれぞれの間に設けられている。
【0023】
図2(a)に示すように、厚肉部311の外縁は、ボルト挿通孔310が形成されている範囲、すなわち車輪取付フランジ31の径方向におけるボルト挿通孔310の外側にあたる範囲では、車輪取付フランジ31の外周端縁に形成されている。また、厚肉部311の外縁は、車輪取付フランジ31の周方向に隣り合う一対のボルト挿通孔310の間では、それぞれのボルト挿通孔310のボルト孔中心310aを結ぶ直線よりも径方向外方に形成されている。換言すれば、多角形Pの各辺は、全て厚肉部311に含まれ、薄肉部312と交差しない。
【0024】
前述のように、ボルト挿通孔310には、ハブボルト8が所定の締め代をもって圧入される。このため、ハブボルト8をボルト挿通孔310に圧入する際には、車輪取付フランジ31に応力が発生し、この応力によって車輪取付フランジ31が変形する。この変形は、車輪取付フランジ31の外周側の端部が車両インナ側に向かう方向であることが、本発明者によって確認されている。
【0025】
図3(a)では、各ボルト挿通孔310にハブボルト8を圧入する前後の車輪取付フランジ31の各部の変位量を第1乃至第5領域A〜Aの5段階で図示している。第1領域Aは、ハブボルト8の圧入後の車両インナ側への変位量が最も大きい領域であり、第5領域Aは、車両インナ側への変位量が最も小さい領域である。第2領域A,第3領域A,及び第4領域Aは、この順に車両インナ側への変位量が徐々に小さくなる中間の領域である。
【0026】
図3(a)に示すように、ハブボルト8を圧入することによる変位量は、車輪取付フランジ31の径方向におけるボルト挿通孔310の外側で最も大きく、ボルト挿通孔310の内側で最も小さい。薄肉部312は、大部分が第3領域Aに含まれ、多角形Pの各辺の中点に近い一部分のみが、比較的変位量が小さい第4領域Aに含まれる。ただし、この薄肉部312における第4領域Aは、車輪取付フランジ31の外周端縁には達していない。
【0027】
図3(b)は、図3(a)に破線で示す円環状の測定位置Cの各部位における車輪取付フランジ31の変位量を示したグラフである。測定位置Cは、車輪取付フランジ31における取付面31aの外周端縁に設定されている。このグラフでは、1つのボルト挿通孔310のボルト孔中心310aの外周にあたる位置を起点S(位相=0°)とし、起点Sから右回りに各部位の変位量を示している。
【0028】
図3(b)に示すように、車輪取付フランジ31の変位量は、各ボルト挿通孔310の外周にあたる部位で大きくなる。また、周方向に隣り合う一対のボルト挿通孔310の間にあたる位置にも、ボルト挿通孔310の外周にあたる位置の変位量よりも小さい変位量の極大点が発現している。
【0029】
なお、車輪取付フランジ31の変位量が各ボルト挿通孔310の外周にあたる部位で大きくなる理由としては、薄肉部312の内側面312aよりも車両アウタ側の部分では、内側面312aよりも車両インナ側の部分に比較して剛性が高いため、より大きな応力が発生し、この応力によって内側面312aよりも車両インナ側の部分が湾曲するためと考えられる。なお、車輪取付フランジ31の剛性が薄肉部312の内側面312aよりも車両アウタ側で高い理由としては、内側面312aよりも車両インナ側の部分では、周方向に隣り合う一対のボルト挿通孔310の間に肉(素材)が盛られていない領域が存在するためである。
【0030】
また、周方向に隣り合う一対のボルト挿通孔310の間にあたる位置に変位量の極大点が現れる理由としては、両ボルト挿通孔310のボルト孔中心310aを結ぶ直線上に薄肉部312が存在しないため、これらのボルト挿通孔310に挟まれる部位に大きな圧縮応力が発生し、この圧縮応力が比較的剛性の小さい薄肉部312の外周端部にも影響を及ぼすためと考えられる。
【0031】
(比較例)
次に、比較例に係るハブ輪3Aについて、図4及び図5を参照して説明する。
【0032】
図4は、比較例に係るハブ輪3Aを示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。図5(a)は、ハブ輪3Aの各ボルト挿通孔310にハブボルト8を圧入する前後の車輪取付フランジ31Aの各部の変位量を第1乃至第5領域A〜Aの5段階で図示している。図5(b)は、図5(a)に破線で示す円環状の測定位置Cの各部位における車輪取付フランジ31Aの変位量を示したグラフである。図4及び図5において、図1乃至図3を参照して説明した実施の形態に係るハブ輪3と共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
比較例に係るハブ輪3Aは、その車輪取付フランジ31Aの形状が、図2及び図3に示す実施の形態に係るハブ輪3と異なっている。より具体的には、車輪取付フランジ31Aは、ハブ輪3の車輪取付フランジ31と同様に、厚肉部311Aと薄肉部312Aとを有しているが、厚肉部311Aの形状が相違している。
【0034】
なお、ハブ輪3Aの外径寸法及び重量は、実施の形態に係るハブ輪3と同じである。また、厚肉部311A及び薄肉部312Aの厚さについても、実施の形態に係る車輪取付フランジ31の厚肉部311及び薄肉部312の厚さと同じである。またさらに、第1乃至第5領域A〜Aのそれぞれの変位量ならびに図5(b)に示すグラフの縦軸の1目盛の大きさも、図3(a)及び(b)を参照して説明したものと同じである。
【0035】
ハブ輪3Aは、5つのボルト挿通孔310のボルト孔中心310aを直線で結んで出来る多角形Pの各辺に、厚肉部311Aの外縁が交差している。つまり、薄肉部312Aの一部が多角形Pの内側に形成されている。また、ハブ輪3Aでは、薄肉部312Aにおける第4領域Aが、車輪取付フランジ31Aの外周端縁に達している。
【0036】
図5(b)に示すように、車輪取付フランジ31Aの変位量は、実施の形態に係る車輪取付フランジ31と同様に、各ボルト挿通孔310の外周にあたる部位で大きくなる。しかし、周方向に隣り合う一対のボルト挿通孔310の間にあたる位置には、極大点が発現していない。この理由としては、周方向に隣り合う2つのボルト挿通孔310のボルト孔中心310aを結ぶ直線上に厚肉部311よりも剛性が低い薄肉部312が存在するため、これらのボルト挿通孔310に挟まれる部位の圧縮応力が緩和され、この圧縮応力が薄肉部312の外周端部に及ぼす影響が小さくなるためと考えられる。
【0037】
この比較例に係るハブ輪3Aでは、図5(b)に示すように、車輪取付フランジ31Aの変位量の最大値と最小値との差が大きい。つまり、車輪取付フランジ31Aにおける取付面31aの外周端縁における軸方向位置の振れ幅が大きい。このため、車輪取付フランジ31Aに取り付けられた車輪91及びブレーキロータ92が回転する車両走行時には、振動やブレーキジャダーが発生しやすくなる。
【0038】
一方、実施の形態に係るハブ輪3では、図3(b)と図5(b)との比較から明らかなように、ハブボルト8を圧入する前後における車輪取付フランジ31の変位量の平均値は、比較例に係るハブ輪3Aよりも大きい。しかし、変位量の最大値と最小値との差はハブ輪3Aよりも小さい。このため、車輪取付フランジ31における取付面31aの外周端縁における軸方向位置の振れ幅が小さくなり、車輪91及びブレーキロータ92の取り付け剛性が高まって、車両走行時における振動やブレーキジャダーが抑制される。
【0039】
(実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態によれば、ハブ輪3の車輪取付フランジ31の取付面31aに切削加工等を施すことなく、車輪取付フランジ31の振れを抑制することができる。つまり、図2に例示するような形状の厚肉部311は、鍛造によって容易に成形することができるので、製造コストを増大させることなく、車輪取付フランジ31の振れを抑制することが可能となる。
【0040】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0041】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、エンジン等の駆動源の駆動力が伝達されない従動輪としての車輪91を支持するハブユニット1を例にとって説明した。しかし、これに限らず、駆動力が伝達される駆動輪を支持するハブユニットに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…ハブユニット 2…外輪
3,3A…ハブ輪 31,31A…車輪取付フランジ
31a…取付面 310…ボルト挿通孔
310a…ボルト孔中心 311,311A…厚肉部
312,312A…薄肉部 5…転動体
8…ハブボルト 91…車輪
図1
図2
図3
図4
図5