特許第6856868号(P6856868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6856868全固体電池、及びその製造方法、並びに接合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856868
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】全固体電池、及びその製造方法、並びに接合材
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210405BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210405BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20210405BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210405BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20210405BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20210405BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210405BHJP
   C01B 25/18 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M10/0562
   H01M4/139
   C01B25/18
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-35261(P2017-35261)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-142439(P2018-142439A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】肥田 勝春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信太郎
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−066584(JP,A)
【文献】 特開2013−196916(JP,A)
【文献】 特開2014−041732(JP,A)
【文献】 特開2015−032425(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/020654(WO,A1)
【文献】 特開2007−042618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
C01B 25/18
H01M 4/13
H01M 4/131
H01M 4/139
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/0562
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合材、及び正極活物質粒子を含有する正極活物質層と、
固体電解質層と、
負極と、を有する全固体電池であって、
前記接合材が、LiO、V、及びP、LiO:V:P=4.0〜4.5:4.5〜5.5:0.5〜1.5のモル比で含有し、ガラス転移点が300℃以下であるガラスであることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記接合材が、LiO、V、及びPからなる請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記正極活物質粒子が、コバルト酸リチウム及びマンガン酸リチウムの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記正極活物質層が、更に導電材を含有する請求項1から3のいずれかに記載の全固体電池。
【請求項5】
前記導電材が、カーボンブラック、及び黒鉛の少なくともいずれかから選択される請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、
前記接合材、及び前記正極活物質粒子を含有する混合物を熱処理し、前記正極活物質層を形成することを特徴とする全固体電池の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理をする際の温度が、300℃以下である請求項6に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項8】
LiO、V、及びPを、LiO:V:P=4.0〜4.5:4.5〜5.5:0.5〜1.5のモル比で含有するガラスであり、
ガラス転移点が、300℃以下であることを特徴とする接合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、全固体電池、及びその製造方法、並びに接合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーを蓄積する二次電池は、ハイブリット車、電気自動車などへの応用で注目されている。また、小さな環境エネルギーから発電を行うエネルギーハーベスト技術が省エネ技術として関心を集めており、発電した電気エネルギーを蓄電し、供給可能な前記二次電池は、様々な応用への可能性が広がるため注目されている。例えば、エネルギーハーベストとの組み合わせによるセンサー等への応用も検討されている。
【0003】
これらの応用において、電解質に液体を使用しない全固体電池(例えば、特許文献1参照)は、液体の漏洩の危険がないことから高い関心が集まっている。
【0004】
前記全固体電池の一態様として、接合材及び正極活物質粒子を用いて正極活物質層を構成する態様がある。この態様として、例えば、接合材にホウ酸リチウムを用い、正極活物質粒子にコバルト酸リチウムを用いた全固体電池が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この報告における正極活物質層の作製は、700℃を要する。このような高温で正極活物質層を作製した場合、電池抵抗の増加を引き起こすという問題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−38843号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shingo Ohta et al., Journal of Power Sources, 238, (2013) 53−56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温処理を要せずに作製できる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、全固体電池は、
接合材、及び正極活物質粒子を含有する正極活物質層と、
固体電解質層と、
負極と、を有する全固体電池であって、
前記接合材が、LiO、V、及びPを含有し、ガラス転移点が300℃以下であるガラスである。
【0009】
また、1つの態様では、全固体電池の製造方法は、
前記全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、
前記接合材、及び前記正極活物質粒子を含有する混合物を熱処理し、前記正極活物質層を形成する。
【0010】
また、1つの態様では、接合材は、
LiO、V、及びPを含有するガラスであり、
ガラス転移点が、300℃以下である。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面として、高温処理を要せずに作製できる全固体電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、全固体電池において異相が形成された状態を説明するための断面模式図である。
図2図2は、開示の全固体電池の一例の模式図である。
図3図3は、実施例1の接合材のDTA曲線である。
図4図4は、実施例1の全固体電池の充放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(全固体電池)
開示の全固体電池は、正極活物質層と、固体電解質層と、負極とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0014】
接合材にホウ酸リチウムを用いて正極活物質層を作製する場合、ホウ酸リチウムを溶融させるために700℃程度の高温を要する。そうすると、正極活物質粒子の種類によっては、図1に示すように、高温で処理されることにより、接合材112に囲まれた正極活物質粒子111表面、又は、正極活物質層11と固体電解質層12との界面に異相119が形成される。この異相119は、電池抵抗の増加などの電池性能の低下を生じさせ、場合によっては、電池としての機能を奪う。
【0015】
そこで、本発明者らは、高温処理を要せずに作製できる全固体電池を提供するために鋭意検討を行った。
その結果、正極活物質層を作製する際に、LiO、V、及びPを含有し、ガラス転移点が300℃以下であるガラスを接合材として用いることにより、高温処理を要せずに全固体電池を作製できることを見出し、本発明の完成に至った。
高温処理を要しないために、異相の形成を防ぎ、正極活物質粒子の性能、及び固体電解質層の性能が良好に反映された全固体電池を得ることができる。
また、高温処理を要しないため、全固体電池の作製に使用するエネルギーを低減することができる。
【0016】
<正極活物質層>
前記正極活物質層は、接合材と、正極活物質粒子とを少なくとも含有し、好ましくは、導電材を含有し、更に必要に応じて、後述する固体電解質などのその他の成分を含有する。
前記接合材は、LiO、V、及びPを含有するガラスである。
前記接合材のガラス転移点は、300℃以下である。
【0017】
<<接合材>>
前記接合材は、前記正極活物質粒子が前記正極活物質層から脱離することを防止するために含有される。
前記接合材は、LiO、V、及びPを含有し、必要に応じてその他の成分を含有するガラスである。本発明において、「ガラス」とは、無定形物質を指す。
前記その他の成分としては、本発明の効果を阻害するものでなければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その他の成分を含有しないことが、ガラス転移点を下げることができる点から、好ましい。
前記接合材の組成としては、物質量比において、LiO:V:P=4.0〜4.5:4.5〜5.5:0.5〜1.5が好ましく、LiO:V:P=4.0:5.0:1.0がより好ましい。
【0018】
前記接合材のガラス転移点としては、300℃以下であり、250℃以下が好ましい。前記ガラス転移点の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150℃以上であることが好ましい。前記接合材のガラス転移点が300℃以下であることにより、全固体電池を作製する際の熱処理温度を、従来に比べて大幅に下げることができる。
【0019】
前記正極活物質層における前記接合材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記正極活物質粒子100質量部に対して、30質量部以上70質量部以下が好ましい。前記含有量が、30質量部未満であると、電池抵抗が低下することがあり、70質量部を超えると、相対的に前記正極活物質粒子の含有量が低下する結果、電池容量が小さくなることがある。
【0020】
開示の接合材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、以下の方法が挙げられる。ガラスの原料となる酸化物の粉末などを、所望のガラスの組成となるような比で混合する。次に、原料の酸化物粉末の融点より高い温度で加熱して、酸化物粉末を溶融させる。この溶融物を急冷させることで、ガラスである接合材を得ることができる。
【0021】
<<正極活物質粒子>>
前記正極活物質粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム含有複合酸化物などが挙げられる。前記リチウム含有複合酸化物としては、リチウムと他の金属とを含有する複合酸化物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LiCoO、LiNiO、LiCrO、LiVO、LiMMn2-x(Mは、Co、Ni、Fe、Cr及びCuの少なくともいずれかである。0≦x<2)、LiFePO、LiCoPO、LiCoPなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記リチウム含有複合酸化物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ピロリン酸コバルトリチウム(LiCoP)が、LiCoOは実績のある点で好ましく、LiCoPは電位を高めることができる点で好ましい。
【0023】
前記正極活物質粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜20μmが好ましく、0.1μm〜10μmがより好ましい。
前記平均粒子径は、例えば、任意に50個の粒子を電子顕微鏡観察した際の算術平均値により求めることができる。
【0024】
<<導電材>>
前記導電材は、前記正極活物質層における電気伝導性を確保する機能を有する。
前記導電材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。
これらの中でも極少量で優れた導電性を示し、少量の添加で優れた導電性が得られる点で、ケッチェンブラックが好ましい。
【0025】
前記正極活物質層における前記導電材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記接合材及び前記正極活物質粒子の合計量100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0026】
前記正極活物質層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜300μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。
【0027】
<固体電解質層>
前記固体電解質層としては、固体電解質で構成される層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記固体電解質としては、電池反応を担うキャリアであるリチウムイオンの伝導性を有する固体の電解質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質などが挙げられる。
【0029】
前記酸化物系固体電解質としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物、NASICON型酸化物、LISICON型酸化物、ガーネット型酸化物などが挙げられる。
【0030】
前記ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、LiLa1−aTiO等のように表されるLi−La−Ti系ペロブスカイト型酸化物、LiLa1−bTaO等のように表されるLi−La−Ta系ペロブスカイト型酸化物、LiLa1−cNbO等のように表されるLi−La−Nb系ペロブスカイト型酸化物などが挙げられる(前記式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1である。)。
【0031】
前記NASICON型酸化物としては、例えば、Li1+lAlTi2−l(PO等に代表される結晶を主晶とするLi(前記式中、Xは、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Yは、Ti、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、0≦l≦1、m、n、o、p及びqは、任意の正数である。)で表される酸化物などが挙げられる。
【0032】
前記LISICON型酸化物としては、例えば、LiXO−LiYO(前記式中、Xは、Si、Ge、及びTiから選択される少なくとも1種の元素であり、Yは、P、As及びVから選択される少なくとも1種の元素である。)で表される酸化物などが挙げられる。
【0033】
前記ガーネット型酸化物としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム(LiLaZr12)等に代表されるLi−La−Zr系酸化物などが挙げられる。
【0034】
前記硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、Li3.250.25Ge0.76、Li4−rGe1−r(式中、0≦r≦1である。)、Li11、LiS−SiS−LiPOなどが挙げられる。前記硫化物系固体電解質は、結晶性硫化物、非晶性硫化物のいずれであってもよい。
【0035】
なお、これらの固体電解質は、結晶構造が同等である限り、元素の一部が他の元素に置換されたものでもよく、元素組成比が異なるものでもよい。
また、これらの固体電解質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記固体電解質としては、ランタンジルコン酸リチウムが、Li負極との反応性が無い点で、好ましい。
【0037】
前記固体電解質層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜500μmが好ましく、10μm〜90μmがより好ましい。
【0038】
<負極>
前記負極としては、例えば、負極活物質層を少なくとも有し、更に必要に応じて、負極集電体などのその他の部材を有する。
【0039】
<<負極活物質層>>
前記負極活物質層としては、負極活物質を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極活物質層は、前記負極活物質自体であってもよい。
【0040】
前記負極活物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム、リチウムアルミニウム合金、非晶質カーボン、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
【0041】
前記負極活物質層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜3.0μmが好ましく、0.1μm〜2.0μmがより好ましい。
【0042】
前記負極活物質層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記負極活物質のターゲット材料を用いたスパッタリング、前記負極活物質を圧縮成形する方法、前記負極活物質を蒸着する方法などが挙げられる。
【0043】
<<負極集電体>>
前記負極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、金、インジウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などが挙げられる。
前記負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
前記負極集電体の平均厚みとしては、例えば、10μm〜500μmなどが挙げられる。
【0044】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極集電体、電池ケースなどが挙げられる。
【0045】
<<正極集電体>>
前記正極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、銅、ニッケルなどが挙げられる。
前記正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
前記正極集電体の平均厚みとしては、例えば、10μm〜500μmなどが挙げられる。
【0046】
前記正極集電体と、前記正極活物質層とを合わせて、正極と称されることもある。
【0047】
<<電池ケース>>
前記電池ケースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来の全固体電池で使用可能な公知のラミネートフィルムなどが挙げられる。前記ラミネートフィルムとしては、例えば、樹脂製のラミネートフィルム、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルムなどが挙げられる。
【0048】
前記全固体電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、扁平型などが挙げられる。
【0049】
図2は、開示の全固体電池の一例の断面模式図である。図2の全固体電池においては、負極3上に、固体電解質層2、及び正極活物質層1がこの順で積層されている。正極活物質層1は、正極活物質粒子1A、及び接合材1Bを含有している。
【0050】
開示の全固体電池の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の全固体電池の製造方法が好ましい。
【0051】
(全固体電池の製造方法)
開示の全固体電池の製造方法は、正極活物質層形成工程を含み、更に必要に応じて、固体電解質層形成工程、負極形成工程などのその他の工程を含む。
【0052】
<正極活物質層形成工程>
前記正極活物質層の形成工程は、前記接合材、及び前記正極活物質粒子を含有する混合物を熱処理し、前記正極活物質層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記接合材と、前記正極活物質粒子と、溶媒と、好ましくは前記導電材とを含有するペーストを、前記固体電解質層上に塗布し、前記溶媒を除去した後に、熱処理を行う方法が挙げられる。
【0053】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、γ−ブチロラクトン、テルピネオールなどが挙げられる。
【0054】
前記熱処理としては、低温での加熱でよく、加熱温度としては、300℃以下が好ましく、180℃〜250℃がより好ましい。前記熱処理温度が、300℃以下であると、次のような有利な効果を得ることができる。まず、正極活物質及び固体電解質の材料選択の幅が広がる点である。熱処理温度を下げることにより、熱に弱い材料を使用することができるようになるためである。次に、設備面のコストを下げることができる点である。一般に、高温処理は電気炉で行われることが多いが、熱処理温度を下げることにより、熱処理を、一般的に電気炉よりも安価な乾燥機により行うことができるためである。
【0055】
<固体電解質層形成工程>
前記固体電解質層形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記固体電解質のターゲット材料を用いたスパッタリング法、前記固体電解質を圧縮成形する方法などが挙げられる。これらの中でも、スパッタリング法が、前記平均厚みの固体電解質層を容易に作製できる点で、好ましい。
【0056】
<負極形成工程>
前記負極形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述した負極活物質層の形成方法などにより行うことができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
<接合材の合成>
接合材として、LiO、V、及びPを含有するガラス(LiO−V−Pガラス)を合成した。原料として、LiO、V、及びPの粉末を用いた。モル比でLiO:V:P=4.0:5.0:1.0となるように、原料の粉末を白金るつぼに投入し、電気炉を用いて1,100℃、1時間加熱して原料の粉末を溶解させた。溶解させたものを、室温の金属プレートに流して急冷し、LiO:V:P=4.0:5.0:1.0であるLiO−V−Pガラスを得た。
得られたLiO−V−PガラスのDTA曲線を図3に示す。DTA曲線から、得られたLiO−V−Pガラスのガラス転移点(Tg)が220℃であることが分かった。
【0059】
<全固体電池の作製>
正極活物質粒子としてコバルト酸リチウム(LiCoO、平均粒子径10μm、セルシード、日本化学工業社製)、固体電解質としてLi1.5Al0.5Ge1.5(PO、及びLiO−V−Pガラスを、質量比で9:36:5となるよう混合して合剤を得た。この合剤に、導電材としてのケッチェンブラック(ECP600JD、ライオン(株)社製)を、前記合剤に対して10質量%、及び溶媒としてテルピネオール適量を加え正極ペーストを作製した。
次に、固体電解質基板〔ランタンジルコン酸リチウム(LiLaZr12)、500μm〕上に、前記正極ペーストを、φ5mm、平均厚み40μmとなるように塗布して正極活物質層を形成し、溶媒を乾燥除去後、10MPaの圧力を加えて正極活物質層と固体電解質基板とを固定させたまま、220℃で1h熱処理を行った。
その後、固体電解質基板における正極活物質層と反対面に、蒸着法にてLiを平均厚み2.0μmとなるように形成し、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
得られた二次電池について、充放電評価装置(TOSCAT、東洋システム株式会社製)を用いて、充放電評価を行った。結果を図4に示す。得られた二次電池は、問題なく電池としての動作をしていることがわかった。
【0060】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
接合材、及び正極活物質粒子を含有する正極活物質層と、
固体電解質層と、
負極と、を有する全固体電池であって、
前記接合材が、LiO、V、及びPを含有し、ガラス転移点が300℃以下であるガラスであることを特徴とする全固体電池。
(付記2)
前記接合材の組成が、LiO:V:P=4.0〜4.5:4.5〜5.5:0.5〜1.5である付記1に記載の全固体電池。
(付記3)
前記正極活物質粒子が、コバルト酸リチウム及びマンガン酸リチウムの少なくともいずれかである付記1又は2に記載の全固体電池。
(付記4)
前記正極活物質層が、更に導電材を含有する付記1から3のいずれかに記載の全固体電池。
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載の全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、
前記接合材、及び前記正極活物質粒子を含有する混合物を熱処理し、前記正極活物質層を形成することを特徴とする全固体電池の製造方法。
(付記6)
前記熱処理をする際の温度が、300℃以下である付記5に記載の全固体電池の製造方法。
(付記7)
LiO、V、及びPを含有するガラスであり、
ガラス転移点が、300℃以下であることを特徴とする接合材。
【符号の説明】
【0061】
1 正極活物質層
1A 正極活物質粒子
1B 接合材
2 固体電解質層
3 負極
図1
図2
図3
図4