(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面を用いて説明する。以下に示す各実施形態は、本発明に係る作業機械の油圧回路をクレーンに適用した例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施形態において同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1〜2を参照して、本発明に係る作業機械の油圧回路の第1実施形態を説明する。
【0011】
図1は、クレーン1の概略図である。作業機械の一例であるクレーン1は、下部走行体10と、上部旋回体20とを備える。下部走行体10は、一対のクローラ11、一対のクローラフレーム12、及びクローラ11を独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13を備える。上部旋回体20は、旋回フレーム21と、キャブ6と、旋回フレーム21に設けられたエンジン22と、メインポンプ23と、パイロットポンプ27と、旋回用油圧モータ24と、旋回用油圧モータ24の駆動力により上部旋回体20を旋回駆動させる駆動機構25と、制御弁ユニット26とを備える。なお、キャブ6内には、上部旋回体20の旋回操作を行うための旋回操作レバー(操作部材)37が設けられている。
【0012】
上部旋回体20には、起伏可能なブーム31が設置される。ブーム31の先端には不図示のシーブが設けられ、シーブに掛け回された巻き上げロープ32の先端に設けた不図示のフックに吊り荷33が吊り下げられる。上部旋回体20は、旋回用油圧モータ24により正逆所望の方向に所望の速度で駆動される。起伏ロープ34は不図示のペンダントロープに接続される。起伏ロープ34を図示しない起伏ウインチで繰り込み、繰り出すことによりブーム31が俯仰動する。巻き上げロープ32を不図示の巻き上げウインチにより繰り込み、繰り出すことにより、吊り荷33が昇降される。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る油圧回路2の構成図である。油圧回路2は、メインポンプ23と、パイロットポンプ27と、メインポンプ23から吐出される作動油により駆動される旋回用油圧モータ24と、旋回用油圧モータ24に供給される作動油の流れ方向と流量を制御する制御弁ユニット26と、パイロットポンプ27の吐出圧の上限を制限するパイロットリリーフ弁28と、パイロットポンプ27の吐出側に設けられたエンジンスピードセンシング弁ユニット(ESS弁ユニットという)29と、旋回操作レバー37(
図1参照)の操作に連動して作動するメータイン圧選択弁(制御圧選択弁)46と、逆転判定弁(制御圧切換弁)47と、シャトル弁48と、を備える。
【0014】
本実施形態では、ESS弁ユニット29(可変絞り44、圧力制御弁45)と、メータイン圧選択弁46と、逆転判定弁47と、シャトル弁48とにより流量調節弁制御部70が構成されており、詳しくは後述するが、流量調節弁制御部70から出力される指令圧Pgr´により制御弁ユニット26の流量調節弁43の作動が制御されている。
【0015】
メインポンプ23は、エンジン22により駆動され、制御弁ユニット26に作動油を供給する。メインポンプ23の吐出容量は、不図示のコントローラにより制御されるレギュレータで調整される。メインポンプ23は、可変容量型の油圧ポンプである。パイロットポンプ27は、エンジン22により駆動され、ESS弁ユニット29に作動油を供給する。パイロットポンプ27は、固定容量型の油圧ポンプである。なお、エンジン22の回転数は、オペレータにより操作される不図示のアクセルペダルの踏込量に基づき制御される。
【0016】
制御弁ユニット26は、メインポンプ23から旋回用油圧モータ24に供給される作動油(圧油)の流れ方向及び流量を制御する方向制御弁41と、メインポンプ23の吐出圧の上限を制限するリリーフ弁42と、方向制御弁41に導入される作動油の流量を調節する流量調節弁43とを備える。流量調節弁43は、メインポンプ23の吐出ポートと方向制御弁41を接続する油路から分岐してタンク65へ接続される油路上に設置される。
【0017】
方向制御弁41は、旋回操作レバー37(
図1参照)の操作に応じて生成されたパイロット圧PiL,PiRにより、図示中央の中立位置41O、図示左側の左位置41A、及び図示右側の右位置41Bの間の任意の位置に切換えられる。方向制御弁41が中立位置41Oにある場合は、メインポンプ23から吐出された作動油はブリードオフ絞り41BOを通ってタンク65へ戻る。方向制御弁41のパイロットポートにパイロット圧PiL,PiRが導かれると、方向制御弁41は左位置41A又は右位置41Bの方向へ移動し、ブリードオフ絞り41BOの開口面積が減少し、メータイン絞り41Ia,41Ibの開口面積が増加する。メインポンプ23から吐出された作動油は、メータイン絞り41Ia,41Ibを通って旋回用油圧モータ24に導かれる。
【0018】
方向制御弁41には、メータイン絞り41Ia,41Ibの下流圧(以下、メータイン絞り下流圧という)Pcを流量調節弁43に導くポートが設けられている。方向制御弁41が中立位置41Oにある場合、メータイン絞り下流圧Pcはタンク圧である。方向制御弁41が左位置41A又は右位置41Bにある場合、メータイン絞り下流圧Pcはメインポンプ23の吐出圧がメータイン絞り41Ia,41Ibの圧損で低下した圧力である。
【0019】
流量調節弁43は、閉位置43Aと開位置43Bとの間で切り換わる。開位置43Bでは、メインポンプ23の吐出油の一部がタンク65へバイパスする。閉位置43Aでは、メインポンプ23の吐出油は全量が方向制御弁41に導入される。
【0020】
流量調節弁43の切り換え位置は、以下の3つの圧力に応じて制御される。第1の圧力はメインポンプ23の吐出圧Psであり、流量調節弁43を開位置43B側に付勢するように導かれる。第2の圧力は方向制御弁41のメータイン絞り下流圧Pcであり、流量調節弁43を閉位置43A側に付勢するように導かれる。第3の圧力はシャトル弁48で選択される指令圧Pgr´であり、流量調節弁43を閉位置43A側に付勢するように導かれる。
【0021】
流量調節弁43は、方向制御弁41のメータイン絞り41Ia,41Ibの前後差圧、すなわちメインポンプ23の吐出圧Psとメータイン絞り下流圧Pcの差が指令圧Pgr´に応じた値となるように開閉動作し、圧力補償弁としての機能を有する。
【0022】
ESS弁ユニット29は、パイロットポンプ27の吐出流量に応じた差圧を発生させる可変絞り44と、パイロットポンプ27の吐出圧を一次圧として、その一次圧を可変絞り44の前後差圧に応じて調圧した第1制御圧Pgrを生成させる圧力制御弁45とを備える。第1制御圧Pgrは、エンジン回転数に応じて増減する。
【0023】
可変絞り44は、パイロットポンプ27の吐出圧(可変絞り44の上流圧)Pdと可変絞り44の下流圧Peに基づき、開位置44Aと絞り位置44Bとの間で切り換わる。具体的には、パイロットポンプ27の吐出圧Pdは、可変絞り44を開位置44A側に切り換えるように導かれ、可変絞り44の下流圧Peは、可変絞り44を絞り位置44B側に切り換えるように導かれる。バネは、可変絞り44を絞り位置44B側に切り換えるように付勢する。バネは、パイロットポンプ27から作動油が吐出され始めると可変絞り44が開位置44Aに切り換わるようなバネ定数を有する。
【0024】
可変絞り44は、パイロットポンプ27の吐出流量に応じた前後差圧を発生させ、パイロットポンプ27の吐出流量と可変絞り44の前後差圧が比例関係になるように、開位置44Aと絞り位置44Bとの間の位置における開口面積が設定される。可変絞り44の下流圧Peは、パイロットリリーフ弁28によりおおよそ一定圧となるように規定される。
【0025】
圧力制御弁45は、可変絞り44の上流圧Pdと下流圧Peに基づき位置45Aと位置45Bとの間で切り換わる。可変絞り44の上流圧Pdが可変絞り44の下流圧Peと第1制御圧Pgrとの和よりも大きい場合は、圧力制御弁45は位置45A側に切り換えられ、可変絞り44の上流圧Pdが導かれることにより第1制御圧Pgrを増加させる。可変絞り44の上流圧Pdが可変絞り44の下流圧Peと第1制御圧Pgrとの和よりも小さい場合は、圧力制御弁45は位置45B側に切り換えられ、タンク65と接続されることにより第1制御圧Pgrを減少させる。すなわち、圧力制御弁45は、可変絞り44の下流圧Peを一次圧として、可変絞り44の前後差圧に比例した第1制御圧Pgrを生成する。
【0026】
メータイン圧選択弁46は、旋回操作レバー37の操作と連動して、位置46Aと位置46Bとの間で切り換わる。具体的には、パイロット圧PiLがパイロットポートに入力されると、メータイン圧選択弁46は位置46Aに切り換わり、旋回用油圧モータ24のメータイン油路(旋回用油圧モータ24とメインポンプ23とを繋ぐ油路)の圧力PLを第2制御圧Pmiとして出力する。一方、パイロット圧PiRがパイロットポートに入力されると、メータイン圧選択弁46は位置46Bに切り換わって、旋回用油圧モータ24のメータイン油路の圧力PRを第2制御圧Pmiとして出力する。
【0027】
逆転判定弁47は、メータイン圧選択弁46から出力された第2制御圧Pmiとメインポンプ23の吐出圧Psとの差圧により作動する。第2制御圧Pmiがメインポンプ23の吐出圧Psより大きいとき(Pmi>Ps)、逆転判定弁47は位置47Aに切り換わり、可変絞り44の下流圧(ESS弁ユニット29の下流圧)Peを第3制御圧Pfとして出力する。一方、第2制御圧Pmiがメインポンプ23の吐出圧Psより小さいとき(Pmi<Ps)、逆転判定弁47は位置47Bに切り換わり、タンク圧を第3制御圧Pfとして出力する。
【0028】
シャトル弁48は、ESS弁ユニット29にて生成された第1制御圧Pgrと逆転判定弁47から出力された第3制御圧Pfとのうち高圧側の制御圧を選択し、選択された高圧側の制御圧を指令圧Pgr´として流量調節弁43に出力する。
【0029】
(油圧回路の動作)
次に、第1実施形態に係る油圧回路2の動作について説明する。
【0030】
旋回操作レバー37を通常操作して方向制御弁41を左位置41A又は右位置41Bに切り換えると、旋回用油圧モータ24は回転を開始する。メータイン圧選択弁46は、方向制御弁41のパイロット圧PiL,PiRに応じて方向制御弁41のメータイン油路の圧力PL,PRを第2制御圧Pmiとして出力する。逆転判定弁47では、メインポンプ23の吐出圧Psとメータイン圧選択弁46から出力された第2制御圧Pmiとの大小を比較する。旋回用油圧モータ24が通常回転中の場合、メインポンプ23の吐出圧Psが第2制御圧Pmiより大きい(Ps>Pmi)ため、逆転判定弁47はタンク圧を第3制御圧Pfとして出力する。
【0031】
逆転判定弁47が出力する第3制御圧Pfがタンク圧のとき、シャトル弁48はESS弁ユニット29から出力される第1制御圧Pgrを選択し、第1制御圧Pgrを指令圧Pgr´として出力する。これにより、流量調節弁43には第1制御圧Pgrが作用し、流量調節弁43は、方向制御弁41のメータイン絞り41Ia,41Ibの前後差圧が第1制御圧Pgrに比例した圧力以下となるよう前後差圧の上限値を制御する。メータイン絞り41Ia,41Ibの前後差圧が所定の上限値以下となるということは、方向制御弁41は、開口面積に比例した流量制限値を持つということになる。したがって、流量調節弁43は、方向制御弁41の通過流量の上限値を、メータイン絞り41Ia,41Ibの開口面積及びエンジン22の回転数に比例した流量とする働きを有する。
【0032】
旋回用油圧モータ24が回転中において、方向制御弁41を左位置41A又は右位置41Bから中立位置41Oに切り換える(戻す)と、旋回用油圧モータ24の両ポートは方向制御弁41を介して連通されるため、旋回用油圧モータ24は慣性によって回転を続ける。この状態で旋回用油圧モータ24に制動をかけたい場合には、旋回操作レバー37を旋回用油圧モータ24の回転方向と逆方向に操作して、旋回用油圧モータ24から作動油が排出されている側のポートをメインポンプ23と連通するように一時的に方向制御弁41を切り換える(逆レバー操作)。すると、旋回用油圧モータ24から排出される作動油は、方向制御弁41の操作量に応じてリリーフ弁42のリリーフセット圧を上限とする高圧に制御されるため、旋回用油圧モータ24には制動トルクが発生する。
【0033】
このように逆レバー操作を行うと、旋回用油圧モータ24のメータイン油路の圧力はメインポンプ23の吐出圧Psより高くなるため、メータイン圧選択弁46から出力される第2制御圧Pmiもメインポンプ23の吐出圧Psより高くなる。その結果、メータイン圧選択弁46の第2制御圧Pmiがメインポンプ23の吐出圧Psより大きくなり(Pmi>Ps)、逆転判定弁47は可変絞り44の下流圧Peを第3制御圧Pfとして出力する。第3制御圧Pfは第1制御圧Pgrより大きいため、シャトル弁48は第3制御圧Pfを指令圧Pgr´として出力する。流量調節弁43には可変絞り44の下流圧Peに等しい第3制御圧Pfが作用するため、流量調節弁43は閉位置43Aに保持される。
【0034】
これにより、逆レバー操作時に旋回用油圧モータ24のメータイン油路の圧力が低下することがなくなり、回転中の旋回用油圧モータ24に確実に制動をかけることができる。より詳細に説明すると、メインポンプ23の吐出圧Ps及び旋回用油圧モータ24の両ポート圧PL,PRは、方向制御弁41の開口面積、メインポンプ23の吐出量、及び上部旋回体20の旋回速度などによって決定されるため、従来技術のように逆転判定弁47から可変絞り44の下流圧Peを流量調節弁43に作用させることができない構成の場合、運転条件次第では、逆レバー操作時に流量調節弁43が一時的に開位置43Bに切り換わる場合が起こり得る。流量調節弁43が開位置43Bに切り換わると、メインポンプ23と旋回用油圧モータ24とを繋ぐメータイン油路がタンク65と連通してメータイン油路の圧力が低下するため、旋回用油圧モータ24の制動性能が低下する。
【0035】
これに対して、本実施形態では、メータイン圧選択弁46から出力される第2制御圧Pmiにより、逆転判定弁47が可変絞り44の下流圧Peを第3制御圧Pfとして出力するよう切り換わり、第3制御圧Pfにより流量調節弁43が閉位置43Aに保持されるため、確実に旋回用油圧モータ24に制動をかけることができる。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態においては、上部旋回体20をエンジン回転数に応じた速度で旋回駆動させることが可能となり、エンジン回転数の変動によりポンプ吐出量が変動しても、常に広い操作域を確保することができる。また、上述したように、逆レバー操作時に流量調節弁43が確実に閉位置43Aに保持されるため、逆レバー操作時にショックが発生することを抑制できる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、
図3〜
図4を参照して、本発明に係る作業機械の油圧回路の第2実施形態を説明する。
図3は、第2実施形態に係る油圧回路202の構成図である。
図3に示す第2実施形態は、流量調節弁43を制御する流量調節弁制御部170の構成が第1実施形態と相違するため、以下、相違点を中心に説明する。
【0038】
図3に示すように、第2実施形態に係る油圧回路202では、コントローラ51と、回転数センサ52と、電磁比例減圧弁53と、圧力センサ54〜58とにより流量調節弁制御部170が構成されている。電磁比例減圧弁53は、パイロットポンプ27の吐出圧Pdを一次圧としてコントローラ51からの電気信号に応じた指令圧Pgr´を流量調節弁43に出力する。
【0039】
コントローラ51は、エンジン22の回転数を検出する回転数センサ52、旋回操作レバー37の左旋回操作に応じた左パイロット圧PiLを検出する圧力センサ54、旋回操作レバー37の右旋回操作に応じた右パイロット圧PiRを検出する圧力センサ55、旋回用油圧モータ24の左ポート圧力(左旋回時のメータイン側の圧力/以下、左旋回圧という)PLを検出する圧力センサ56、旋回用油圧モータ24の右ポート圧力(右旋回時のメータイン側の圧力/以下、右旋回圧という)PRを検出する圧力センサ57、及びメインポンプ23の吐出圧Psを検出する圧力センサ58からの各検出信号を入力し、これら各検出信号に基づいて、電磁比例減圧弁53を駆動するための電気信号を出力する。
【0040】
次に、コントローラ51の制御処理の詳細について説明する。
図4は、コントローラの内部で行われる制御内容を示す制御ブロック図である。
図4に示すように、エンジン22の実回転数と目標差圧PGRが規定された実回転数−目標差圧テーブル101を参照して、回転数センサ52にて検出されたエンジン回転数Nengに対応する目標差圧PGRが選択器108に出力される。
【0041】
圧力センサ54にて検出された左パイロット圧PiLと圧力センサ55にて検出された右パイロット圧PiRとの差ΔPiが加算器102により演算され、演算された差ΔPiは切換器103に出力される。切換器103は、差ΔPiが0より大きい(ΔPi>0)とき圧力センサ56にて検出された左旋回圧PLを出力し、差ΔPiが0以下(ΔPi≦0)のとき圧力センサ57にて検出された右旋回圧PRを出力する。
【0042】
加算器104にて、選択的に出力された左旋回圧PL又は右旋回圧PRと、圧力センサ58にて検出されたメインポンプ23の吐出圧Psとの差Δが演算され、演算された差ΔPは切換器107に出力される。切換器107には、出力器105から定数0、出力器106から定数5がそれぞれ入力されており、加算器104から入力された差ΔPが0より大きい(ΔP>0)のとき切換器107は定数0を選択器108に出力し、差ΔPが0以下(ΔP≦0)のとき切換器107は定数5を選択器108に出力する。なお、出力器106により出力される定数は例えばパイロットリリーフ弁28の設定圧である。
【0043】
選択器108は、目標差圧PGRと切換器107の出力(0または5)のうち最大値を選択して、ソレノイド出力部109に出力する。ソレノイド出力部109は、選択器108から出力された値を駆動信号に変換して電磁比例減圧弁53に出力する。このように、第2実施形態では、
図2に示すESS弁ユニット29、メータイン圧選択弁46、逆転判定弁47、シャトル弁48からなるシステムによってなされる出力信号生成が電気的に実現される。
【0044】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、逆レバー操作時に流量調節弁43が確実に閉位置43Aに保持されるため、逆レバー操作時にショックが発生することを抑制できる。また、流量調節弁43の制御を電気的に実現しているため、第1実施形態に比べて部品点数が低減され、油圧回路の構成を簡素化できる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、
図5〜
図6を参照して、本発明に係る作業機械の油圧回路の第3実施形態を説明する。
図5は、第3実施形態に係る油圧回路302の構成図である。
図5に示す第3実施形態は、流量調節弁43を制御する流量調節弁制御部270の構成が第2実施形態と一部相違するため、以下、相違点を中心に説明する。
【0046】
図5に示すように、第3実施形態に係る油圧回路302では、コントローラ51と、回転数センサ52,60と、電磁比例減圧弁53と、圧力センサ54,55とにより流量調節弁制御部270が構成されている。電磁比例減圧弁53は、パイロットポンプ27の吐出圧Pdを一次圧としてコントローラ51からの電気信号(駆動信号)に応じた指令圧Pgr´を流量調節弁43に出力する。
【0047】
コントローラ51は、エンジン22の回転数を検出する回転数センサ52、旋回操作レバー37の左旋回操作に応じた左パイロット圧PiLを検出する圧力センサ54、旋回操作レバー37の右旋回操作に応じた右パイロット圧PiRを検出する圧力センサ55、旋回用油圧モータ24と接続されて回転する上部旋回体20の回転数を検出する回転数センサ60からの各検出信号を入力し、これら各検出信号に基づいて、電磁比例減圧弁53を駆動するための電気信号を出力する。
【0048】
次に、コントローラ51の制御処理の詳細について説明する。
図6は、コントローラの内部で行われる制御内容を示す制御ブロック図である。
図6に示すように、エンジン22の実回転数と目標差圧PGRが規定された実回転数−目標差圧テーブル101を参照して、回転数センサ52にて検出されたエンジン回転数Nengに対応する目標差圧PGRが選択器108に出力される。
【0049】
圧力センサ54にて検出された左パイロット圧PiLと圧力センサ55にて検出された右パイロット圧PiRとの差ΔPiが加算器102により演算され、演算された差ΔPiは積算器110に出力される。
【0050】
切換器111には、出力器105から定数0、出力器106から定数5がそれぞれ入力されており、積算器110から入力された積Dirが0より小さい(Dir<0)のとき切換器111は定数0を選択器108に出力し、積Dirが0以上(Dir≧0)のとき切換器111は定数5を選択器108に出力する。なお、出力器106により出力される定数がパイロットリリーフ弁28の設定圧である点は第2実施形態と同様である。
【0051】
選択器108は、目標差圧PGRと切換器111の出力(0または5)のうち最大値を選択して、ソレノイド出力部109に出力する。ソレノイド出力部109は、選択器108から出力された値を駆動信号に変換して電磁比例減圧弁53に出力する。このように、第3実施形態でも第2実施形態と同様に、
図2に示すESS弁ユニット29、メータイン圧選択弁46、逆転判定弁47、シャトル弁48からなるシステムによってなされる出力信号生成が電気的に実現される。
【0052】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、逆レバー操作時に流量調節弁43が確実に閉位置43Aに保持されるため、逆レバー操作時にショックが発生することを抑制できる。また、流量調節弁43の制御を電気的に実現しているため、第1実施形態に比べて部品点数が低減され、油圧回路の構成を簡素化できる。
【0053】
なお、上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。