特許第6859691号(P6859691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859691
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20210405BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F16H25/24 B
   F16H25/22 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-240421(P2016-240421)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-96427(P2018-96427A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和史
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭祐
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007635(JP,A)
【文献】 実開昭61−041924(JP,U)
【文献】 特開2010−255752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットが回転するボールねじと、
前記ナットをハウジングに対して回転自在に支持する転がり軸受であって、前記ナットのフランジの外周に設けられた転がり軸受と、
前記フランジに固定された回転体と、
を有し、
前記ボールねじは、ボールの軌道を形成する螺旋溝を、前記転がり軸受が配置された位置にも有し、
前記転がり軸受の外輪は、前記ハウジングに固定されるフランジを有し、
前記転がり軸受において、前記回転体に最も近い軸受軌道に配置された転動体の中心位置は、前記外輪のフランジの端面より外側であるボールねじ装置。
【請求項2】
前記ボールねじは、ボールの軌道の終点と始点を接続して循環路を形成する戻し路を複数個有し、
前記複数個の戻し路が、前記ナットの周方向に均等配置されている請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記ボールねじは多条ねじ構造を有し、
前記複数個の戻し路の前記ナットの周方向における配置間隔を示す角度は、前記多条ねじ構造の条数で360°を除した角度である請求項記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナットが回転するボールねじを備えたボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ねじ軸が内挿され、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、ナットおよびねじ軸の螺旋溝で形成される軌道を有する。また、軌道の終点と始点を接続して循環路を形成する戻し路と、軌道および戻し路に配置された複数のボールを有する。そして、ボールねじは、軌道内を負荷状態で転動するボールを介してナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。
また、ナットの軸方向一端にフランジが形成され、フランジに形成されたボルト挿通穴を挿通するボルトで、ナットを環状部品などに固定している。
【0003】
特許文献1には、ねじ軸回転で駆動し、戻し路を複数個有するボールねじにおいて、複数個の戻し路(ボール循環通路)をナットの周方向に均等配置することにより、ねじ軸の回転力をバランス良くナットに伝達することが記載されている。
特許文献2には、ボールねじと、転がり軸受と、フライホイール(回転する錘)と、摺動質部材(スプラインナット)と、を有する回転慣性質量ダンパーが記載されている。この回転慣性質量ダンパーは、互いに近接離反する方向に相対変位する第一構造体と第二構造体との間に介装されている。
【0004】
特許文献2の回転慣性質量ダンパーにおいて、ボールねじのナットは、ナットの軸方向一端面に固定された回転体(フランジ、内輪)と、ハウジングのフランジに固定された回転支持部材(外輪)と、を有する転がり軸受により、ハウジングに対して回転自在に支持されている。回転体の軸方向一端にフライホイールが固定されている。回転体の内周面には、ボールの軌道を形成する螺旋溝が存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−156117号公報
【特許文献2】特許第5410825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナットが回転するボールねじを備えたボールねじ装置に関しては、これまでは、大きな荷重がかかる用途で使用されることが少なかったため、ナットの負荷分布が問題となることはなかった。しかし、近年、大型の設備や制震ダンパーなどの大きな荷重がかかる用途で、ナットが回転するボールねじが使用されることが増加している。
特許文献2の回転慣性質量ダンパーには、ナットの負荷分布を均一にするという点で改善の余地がある。
この発明の課題は、ナットが回転するボールねじを備えたボールねじ装置において、ナットの負荷分布が不均一にならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の一態様は、ナットが回転するボールねじと、前記ナットをハウジングに対して回転自在に支持する転がり軸受であって、前記ナットのフランジの外周に設けられた転がり軸受と、前記フランジに固定された回転体と、を有し、前記ボールねじは、ボールの軌道を形成する螺旋溝を、前記転がり軸受が配置された位置にも有するボールねじ装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一態様によれば、ナットが回転するボールねじを備えたボールねじ装置として、ナットの負荷分布が不均一になりにくいものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のボールねじ装置を示す側面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図2の部分拡大断面図である。
図4】フランジの外周に二個の内輪が嵌合されているボールねじ装置の一例を示す部分断面図である。
図5】フランジの外周に二個の内輪が嵌合されているボールねじ装置の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
図1に示すように、この実施形態のボールねじ装置は、ボールねじ1と、転がり軸受2と、フライホイール(回転体)3と、スプラインナット4を有する回転慣性質量ダンパーである。この回転慣性質量ダンパーが、互いに近接離反する方向に相対変位する第一構造体5と第二構造体6の間に介装されている。第一構造体5と第二構造体6の組み合わせとしては、例えば、建物の柱梁と床が挙げられる。第一構造体5は第一ユニット51と第二ユニット52を有する。第一ユニット51と第二ユニット52は、互いに平行に間隔を開けて配置され、同一方向に変位する。
【0011】
図2および図3に示すように、ボールねじ1は、ねじ軸11とナット12とボール13を有する。図1に示すように、ねじ軸11の軸方向中央部より一端側の部分の外周面に螺旋溝11aが形成されている。他端側の部分の外周面にはスプライン溝11bが形成され、他端部は小径部11cとなっている。図3に示すように、ナット12の内周面に螺旋溝12aが形成されている。ナット12に、ねじ軸11の一端側の部分(螺旋溝11aが形成されている部分)が内挿されている。
また、ボールねじ1は、ボール3の軌道の終点と始点を接続してボール13の循環路を形成する戻し路として、図2に示すように、四つのリターンチューブ14a〜14dを有する。つまり、ボールねじ1は、ボール13の循環路を四つ有し、これらの循環路内に複数のボール13が配置されている。
【0012】
ボールねじ1は二条ねじ構造を有し、二条ねじの一方の螺旋用のリターンチューブ14a,14bと、他方の螺旋用のリターンチューブ14c,14dとが、ナット12の軸方向の同じ位置で、位相(ナット12の周方向での配置間隔を示す角度)が180°となる位置に配置されている。つまり、リターンチューブ14a,14bとリターンチューブ14c,14dが、ナット12を介して対向配置されている。180°は、ボールねじ1の条数である2で360°を除した角度である。
図2および図3に示すように、ナット12は、円筒部121と、円筒部121の軸方向一端に形成されたフランジ122を有する。
【0013】
転がり軸受2は、二列アンギュラ玉軸受であり、フランジ122の外周面に形成された第一内輪軌道溝211と、第二内輪軌道溝212を有する内輪21と、二列の外輪軌道溝221,222を有する外輪22と、ボール(転動体)23と、保持器24とからなる。
内輪21の内周面に、ナット12の螺旋溝12aと連続する螺旋溝21aが形成されている。これにより、ボールねじ1では、ナット12の螺旋溝12aおよび内輪21の螺旋溝21aとねじ軸11の螺旋溝11aとで、ボール13の軌道が形成される。つまり、ボールねじ1は、ボール13の軌道を形成する螺旋溝を、転がり軸受2が配置された位置にも有する。
【0014】
外輪22の外周にフランジ223が形成されている。フライホイール3に最も近い軸受軌道(第二内輪軌道溝212と外輪軌道溝222とからなる軌道)に配置されたボール23の中心位置Oは、フランジ223の端面223aより外側である。
転がり軸受2は、ナット12を第一ユニット(ハウジング)51に対して回転自在に支持するためのものである。第一ユニット51は外輪22を内側に嵌合する円穴51aを有する。外輪22のフランジ223が、第一ユニット51の軸方向端面にボルト7で固定されている。
【0015】
フライホイール3は、環状部品(回転体)31を介して、内輪21およびナット12のフランジ122に固定されている。
図1に示すように、スプラインナット4は、第一構造体5の第二ユニット52に固定されている。第二ユニット52は、スプラインナット4を内側に嵌合する円穴52aを有する。ねじ軸11のスプライン溝11bが形成されている部分が、スプラインナット4に挿入され、スプラインナット4に対して軸方向に摺動自在に支持されている。ねじ軸11の小径部11cが第二構造体6に固定されている。
【0016】
この回転慣性質量ダンパーは以下のように動作する。第一構造体5と第二構造体6との間に変位が発生すると、スプライン機構によりねじ軸11が軸方向に変位する。これに伴い、ボールねじ機構によりボール13を介してナット12が回転し、環状部品31を介してナット12に固定されたフライホイール3が回転する。このフライホイール3の回転により発生する慣性質量に応じて、ねじ軸11とナット12の相対加速度に比例した軸方向の反力が発生することで、第一構造体5と第二構造体6との間の変位が減衰される。
また、この実施形態の回転慣性質量ダンパー(ボールねじ装置)によれば、ボールねじ1のナット12を第一ユニット51に対して回転自在に支持する転がり軸受2の第一内輪軌道溝211が、ナット12のフランジ122の外周に形成されている。そのため、転がり軸受2の荷重を受ける点とナット12の荷重を受ける点が近接している。これにより、ナット12に曲げモーメントがかかりにくい構造となっているため、ナット12の負荷分布を均一化することができる。
【0017】
また、ボールねじ1は、ボール13の軌道を形成する螺旋溝を、転がり軸受2が配置された位置にも有する。つまり、転がり軸受2が配置された位置でも、ねじ軸1の螺旋溝11aと内輪21の螺旋溝21aとで形成される軌道内を、ボール13がねじ軸11およびナット12に対して負荷状態で転動する。これにより、転がり軸受2が配置された位置にボール13の軌道を形成する螺旋溝21aがない場合と比較して、ボールねじ1の剛性が高くなるため、ナット12に曲げモーメントが発生しにくい。これに伴い、ナット12の負荷分布を均一化することができる。
また、フライホイール3に最も近い軸受軌道に配置されたボール23の中心位置Oが、外輪22のフランジ223の端面223aより外側にあることで、端面223aより内側にある場合と比較して、ボールねじ1の剛性が高くなるため、ナット12に曲げモーメントが発生しにくい。これに伴い、ナット12の負荷分布を均一化することができる。
【0018】
また、二条ねじの一方の螺旋用のリターンチューブ14a,14bと、他方の螺旋用のリターンチューブ14c,14dとが、ナット12の軸方向の同じ位置で、ナット12を介して対向配置されている。これにより、ナット12の回転が安定するため、ボール13の負荷分布が均一になる。
なお、上記実施形態では、ナット12のフランジ122の外周面に第一内輪軌道溝211を形成することで、転がり軸受2の内輪をフランジ122に一体化している。しかし、図4および図5に示すように、環状部品(回転体)31を固定するフランジ122の外周に、二個の内輪21を嵌合してもよい。
【0019】
図4および図5の例では、ボール13の軌道を形成する螺旋溝12aが、転がり軸受2が配置された位置まで形成されている。つまり、図4および図5の例でも、ボールねじ1は、ボール13の軌道を形成する螺旋溝12aを、転がり軸受2が配置された位置にも有する。
図4の例では、外輪22が二列の外輪軌道溝221,222を有する。
図5の例では、内輪21と外輪22とボール23と保持器24を有する二個の単列アンギュラ玉軸受(転がり軸受)2A,2Bを備え、二個の内輪21がフランジ122の外周に嵌合されている。また、二個の外輪22の間に間座25を配置することで、二個の単列アンギュラ玉軸受2A,2Bに二点接触予圧を付与している。
【0020】
図5の例で、軸方向で環状部品(回転体)31が固定されている側の単列アンギュラ玉軸受2Aを四点接触予圧とし、もう一つの単列アンギュラ玉軸受2Bを二点接触予圧としてもよい。このようにすることで、二個の単列アンギュラ玉軸受2A,2Bを二点接触予圧が付与されている場合よりも、ラジアル荷重に対する耐性が高くなる。
また、図5の例で、軸方向で環状部品(回転体)31側の単列アンギュラ玉軸受2Aを、図5の状態よりも大きなものとしてもよい。このようにすることで、環状部品(回転体)31側の単列アンギュラ玉軸受2Aの剛性がより高くなるため、図5の例よりも単列アンギュラ玉軸受2Aの寿命を長くすることができる。
【0021】
また、この発明のボールねじ装置の用途としては、上記実施形態の回転慣性質量ダンパー以外に、例えば、ナット回転の搬送装置が挙げられる。この場合、転がり軸受2の外輪22を回転しない移動部材(ハウジング)に固定し、ナット12はプーリなどを介してモータで回転させ、ねじ軸11を軸方向に移動させる構造とする。あるいは、ナット12が回転しながら軸方向に移動する構造とする。
また、ボールねじが三条ねじ構造を有する場合は、ナットの軸方向の同じ位置で、位相(ナットの周方向での配置間隔を示す角度)が120°(360°/3)となる位置に配置されていることが好ましい。ボールねじが四条ねじ構造を有する場合は、ナットの軸方向の同じ位置で、位相が90°(360°/4)となる位置に配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 ボールねじ
11 ねじ軸
11a ねじ軸の螺旋溝
11b ねじ軸のスプライン溝
11c ねじ軸の小径部
12 ナット
12a ナットの螺旋溝
121 ナットの円筒部
122 ナットのフランジ
13 ボール
14a〜14d リターンチューブ
2 転がり軸受
2A 転がり軸受
2B 転がり軸受
21 内輪
211 内輪軌道溝
22 外輪
221,222 外輪軌道溝
223 外輪のフランジ
223a 外輪のフランジの端面
23 ボール(転がり軸受の転動体)
24 保持器
223 外輪のフランジ
3 フライホイール(回転体)
31 環状部品(回転体)
4 スプラインナット
5 第一構造体
51 第一ユニット(ハウジング)
52 第二ユニット
6 第二構造体
図1
図2
図3
図4
図5