特許第6859767号(P6859767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859767
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20210405BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20210405BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20210405BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20210405BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20210405BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20210405BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B60W20/50ZHV
   B60K6/44
   B60K6/52
   B60K6/54
   B60W10/10 900
   F16D48/02 640Q
   F16D25/12 D
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-48688(P2017-48688)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-149968(P2018-149968A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】繁田 良平
(72)【発明者】
【氏名】須増 寛
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−080437(JP,A)
【文献】 特開2004−260940(JP,A)
【文献】 特開2002−337571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/50
B60K 6/44
B60K 6/52
B60K 6/54
B60W 10/10
F16D 25/12
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動輪を駆動源の駆動力で駆動し、副駆動輪を電動機により駆動する電動四輪駆動車に搭載されるものであって、断接状態を変更することにより前記電動機から前記副駆動輪への駆動力の伝達を変更するクラッチを制御する駆動制御装置において、
前記クラッチを接続状態にするクラッチ接続指令の後、前記電動機の回転数と、前記副駆動輪の車輪速を前記電動機の回転数に換算した車輪速回転数との差が、接続時閾値以上である場合、前記クラッチが実際には切断状態にあるクラッチ接続異常である旨判定する制御部を備え
前記制御部は、前記クラッチを接続状態にするクラッチ接続指令時において、
前記クラッチ接続異常を判定する際、
前記車輪速が一定値以上、かつ前記電動機と前記副駆動輪との間で駆動力が伝達する際のバックラッシュが詰まっている場合、前記接続時閾値として、第1接続時閾値を用いて前記クラッチ接続異常を判定し、
前記車輪速が一定値以上でない、あるいは前記バックラッシュが詰まっていない場合、前記接続時閾値として、前記第1接続時閾値以上の値である第2接続時閾値を用いて前記クラッチ接続異常を判定する駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動制御装置において、
前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令の後、前記電動機の回転数と、前記車輪速回転数との差が、切断時閾値以下である場合、前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常である旨判定する駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動制御装置において、
前記制御部は、前記クラッチ接続指令の後、あるいは前記クラッチ切断指令の後、一定時間が経過したときに、前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差を演算し、前記クラッチ接続異常および前記クラッチ切断異常を判定する駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の駆動制御装置において、
前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時において、
前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差が切断時閾値以下であることに加えて、
前記車輪速が一定値以上であるとき、前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常を判定する駆動制御装置。
【請求項5】
請求項に記載の駆動制御装置において、
前記車輪速が一定値以上であることの判定は、予め記憶されている前記車輪速の判定閾値よりも閾値定数だけ大きいか否かに基づいて行われ、
前記判定閾値は、
前記クラッチが切断状態と判定された直後である場合、現在の車輪速に設定され、
前記クラッチが切断状態と判定された直後でない場合、前記判定閾値が現在の車輪速以上であるときには現在の車輪速に、前記判定閾値が現在の車輪速未満であるときには予め記憶されている前記判定閾値のまま維持される駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の駆動制御装置において、
前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時において、前記車輪速が一定値以上であるとき、前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差について、切断時閾値として、第2切断時閾値を用いて前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常でないことが確定的か否かを判定し、
前記車輪速が一定値以上でないとき、前記切断時閾値として、前記第2切断時閾値以上の値である第3切断時閾値を用いて前記クラッチ切断異常でないことが確定的か否かを判定する駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の駆動制御装置において、
前記制御部は、前記クラッチ接続異常、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時に前記クラッチが実際には接続されているクラッチ切断異常、および前記クラッチの切断状態であることが確定的である旨の判定が、一定時間継続したときに、最終的に前記クラッチ接続異常、前記クラッチ切断異常、および前記クラッチの切断状態であることが確定的である旨判定する駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源であるエンジンの動力を主駆動輪である前輪に伝達するとともに、副駆動輪である後輪にも動力の一部を選択的に伝達する車両用の四輪駆動装置が知られている。近年は、四輪駆動装置の中でも、前輪をエンジンで直接駆動し、後輪をモータにより駆動する電動四輪駆動車が普及し始めている。たとえば、特許文献1に示すように、専用の発電機をエンジンに接続し、エンジンの駆動力を発電機によって電力に変換して、当該電力により駆動するモータの回転力によって、後輪を駆動する車両が知られている。このような電動四輪駆動車では、モータと後輪との間の動力伝達経路に設けられるクラッチを切断または接続することにより、エンジンおよびモータによる動力が前輪および後輪に伝達される四輪駆動状態と、エンジンによる動力が前輪のみに伝達される二輪駆動状態とに切り替えることが可能である。たとえば、四輪駆動装置の駆動制御装置は、車両の高速走行時には、モータの駆動効率が悪化してしまうため、クラッチを切断状態にすることにより、二輪駆動状態に切り替えている。四輪駆動装置の駆動制御装置は、二輪駆動状態と四輪駆動状態とで、モータを異なる制御方法で制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−183919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、駆動制御装置が、クラッチの接続状態とクラッチの切断状態とを誤って判定してしまうと、車両が二輪駆動状態にあるのか四輪駆動状態にあるのかを誤って認識してしまうので、モータを的確な制御方法で制御することができない。このため、クラッチの断接状態を検出する方法が求められていた。
【0005】
本発明は、モータと前記モータで駆動される車輪との間の動力伝達経路に設けられるクラッチの断接状態を検出できる駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成しうる駆動制御装置は、主駆動輪を駆動源の駆動力で駆動し、副駆動輪を電動機により駆動する電動四輪駆動車に搭載されるものであって、断接状態を変更することにより前記電動機から前記副駆動輪への駆動力の伝達を変更するクラッチを制御する駆動制御装置において、前記クラッチを接続状態にするクラッチ接続指令の後、前記電動機の回転数と、前記副駆動輪の車輪速を前記電動機の回転数に換算した車輪速回転数との差が、接続時閾値以上である場合、前記クラッチが実際には切断状態にあるクラッチ接続異常である旨判定する制御部を備えている。
【0007】
この構成によれば、制御部は、電動機の回転数と車輪速回転数との差に基づいて、クラッチの断接状態(クラッチ接続異常)を検出できる。たとえばクラッチ接続指令が出力されている場合には、クラッチが接続状態になるため、電動機の回転が副駆動輪に伝達される。このため、電動機の回転数と車輪速回転数とは一致すると考えられる。しかし、クラッチ接続指令が出力されているにも関わらず、クラッチが接続状態とならないクラッチ接続異常である場合には、電動機の回転が副駆動輪に伝達しなくなる。このため、電動機の回転数と車輪速回転数とは一致しなくなる。制御部は、クラッチ接続指令後、電動機の回転数と車輪速回転数との差が接続時閾値以上である場合には、電動機の回転数と車輪速回転数が一致しないものとして、クラッチ接続異常であることを判定することができる。
【0008】
上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令の後、前記電動機の回転数と、前記車輪速回転数との差が、切断時閾値以下である場合、前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常である旨判定することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、制御部は、電動機の回転数と車輪速回転数との差に基づいて、クラッチの断接状態(クラッチ切断異常)を検出できる。たとえばクラッチ切断指令が出力されている場合には、クラッチが切断状態になるため、電動機と副駆動輪との間が切断され、電動機の回転が副駆動輪に伝達されなくなる。このため、電動機の回転数と車輪速回転数とが一致しないことがあると考えられる。しかし、クラッチ切断指令が出力されているにも関わらず、クラッチが切断状態とならないクラッチ切断異常である場合には、電動機の回転が副駆動輪に伝達してしまう。このため、電動機の回転数と車輪速回転数とが一致してしまう。制御部は、クラッチ切断指令後、電動機の回転数と車輪速回転数との差が切断時閾値以下である場合には、電動機の回転数と車輪速回転数とが一致するものとして、クラッチ切断異常であることを判定することができる。
【0010】
クラッチ接続指令あるいはクラッチ切断指令が出力された後、クラッチが接続状態あるいは切断状態になるまでにタイムラグがある。
このため、上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチ接続指令の後、あるいは前記クラッチ切断指令の後、一定時間が経過したときに、前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差を演算し、前記クラッチ接続異常および前記クラッチ切断異常を判定することが好ましい。
【0011】
上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチを接続状態にするクラッチ接続指令時において、前記クラッチ接続異常を判定する際、前記車輪速が一定値以上、かつ前記電動機と前記副駆動輪との間で駆動力が伝達する際のバックラッシュが詰まっている場合、前記接続時閾値として、第1接続時閾値を用いて前記クラッチ接続異常を判定し、前記車輪速が一定値以上でない、あるいは前記バックラッシュが詰まっていない場合、前記接続時閾値として、前記第1接続時閾値以上の値である第2接続時閾値を用いて前記クラッチ接続異常を判定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、クラッチ接続指令時には、電動機の回転数と車輪速回転数との差が接続時閾値以上であるか否かという判定をする際に、車輪速が一定以上、かつバックラッシュが詰まっているか否かに基づいて、接続時閾値を可変に設定することができる。このため、より適切な接続時閾値を設定することができる分、より確実にクラッチ接続異常を判定することができる。
【0013】
上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時において、前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差が前記切断時閾値以下であることに加えて、前記車輪速が一定値以上であるとき、前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常を判定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、電動機の回転数と車輪速回転数とがほとんど一致する場合であっても、車輪速が小さくなっているような判定することが困難な状況で判定を行わない分、より確実にクラッチ異常を判定することができる。
【0015】
上記の駆動制御装置において、前記車輪速が一定値以上であることの判定は、予め記憶されている前記車輪速の判定閾値よりも閾値定数だけ大きいか否かに基づいて行われ、前記判定閾値は、前記クラッチが切断状態と判定された直後である場合、現在の車輪速に設定され、前記クラッチが切断状態と判定された直後でない場合、前記判定閾値が現在の車輪速以上であるときには現在の車輪速に、前記判定閾値が現在の車輪速未満であるときには予め記憶されている前記判定閾値のまま維持されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、車輪速が一定以上か否かを判定するための判定閾値をクラッチが切断状態になった直後であるか否かに応じて可変に設定できるため、より適した判定閾値を設定することができる。このため、より正確に車輪速が一定以上か否かを判定することができる。
【0017】
上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時において、前記車輪速が一定値以上であるとき、前記電動機の回転数と前記車輪速回転数との差について、前記切断時閾値として、第2切断時閾値を用いて前記クラッチが実際には接続状態にあるクラッチ切断異常でないことが確定的か否かを判定し、前記車輪速が一定値以上でないとき、前記切断時閾値として、前記第2切断時閾値以上の値である第3切断時閾値を用いて前記クラッチ切断異常でないことが確定的か否かを判定することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、クラッチの切断状態であることが確定的か否かを判定する際に、切断時閾値を第2切断時閾値と第3切断時閾値との間で可変に設定することができるので、より正確にクラッチの断接状態を判定することができる。
【0019】
上記の駆動制御装置において、前記制御部は、前記クラッチ接続異常、前記クラッチを切断状態にするクラッチ切断指令時に前記クラッチが実際には接続されているクラッチ切断異常、および前記クラッチの切断状態であることが確定的である旨の判定が、一定時間継続したときに、最終的に前記クラッチ接続異常、前記クラッチ切断異常、および前記クラッチの切断状態であることが確定的である旨判定することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、クラッチ接続異常、クラッチ切断異常、およびクラッチの切断状態であると考えられる状況であっても、その状況が一定時間継続されたときでなければ、クラッチ接続異常、クラッチ切断異常、およびクラッチの切断状態が確定的と判定しない。このため、より確実にクラッチの断接状態を判定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の駆動制御装置によれば、クラッチの断接状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】駆動制御装置を四輪駆動装置に適用した一実施形態を示す概略構成図。
図2】クラッチの断接状態に応じた、モータの回転数および車輪速回転数の時間変化を示すグラフ。
図3】クラッチの断接状態に応じた、モータの回転数および車輪速回転数の時間変化を示すグラフ。
図4】一実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチ状態判定処理を示すフローチャート。
図5】一実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチON異常判定処理を示すフローチャート。
図6】一実施形態の駆動制御装置で実行される車輪速判定値更新処理を示すフローチャート。
図7】一実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチOFF異常判定処理を示すフローチャート。
図8】一実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチOFF判定処理を示すフローチャート。
図9】他の実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチ状態判定処理を示すフローチャート。
図10】他の実施形態の駆動制御装置で実行されるクラッチON判定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、駆動制御装置を電動四輪駆動車に適用した一実施形態について説明する。
図1に示すように、電動四輪駆動車1には、エンジン2、トランスミッション3、左右一対の主駆動輪としての前輪4L,4R、左右一対の副駆動輪としての後輪5L,5R、オルタネータ6、後輪駆動機構7、バッテリ8、および制御部としてのECU9(電子制御装置)を備えている。
【0024】
エンジン2は、電動四輪駆動車1が走行する際の駆動力を発生させる駆動源である。エンジン2の出力軸には、前輪側の変速機として、トランスミッション3が接続されている。また、トランスミッション3の出力軸は、フロントアスクル10L,10Rを介して、前輪4L,4Rに接続されている。なお、各符号に付与されている「L」は車両の前進方向に対する左側、「R」は車両の前進方向に対する右側を意味する。
【0025】
エンジン2の駆動力は、トランスミッション3およびフロントアスクル10L,10Rを介して、前輪4L,4Rに伝達される。エンジン2は、図示しないエンジンECUからの指令に基づいて制御されることにより、前輪4L,4Rに駆動力を出力する。また、エンジン2は、前輪4L,4Rのみならず、オルタネータ6にも駆動力を出力する。オルタネータ6は、トランスミッション3を介してエンジン2に接続されている。オルタネータ6は、発電機として機能し、エンジン2により発生する駆動力により交流電力を発生させる。オルタネータ6とバッテリ8との間には整流器12が設けられている。整流器12は、オルタネータ6により発生する交流電力を直流電力に変換する。また、オルタネータ6によって得られる電力が、整流器12を介してバッテリ8に供給されることにより、バッテリ8が充電される。
【0026】
後輪駆動機構7は、電動四輪駆動車1の後輪5L,5Rを駆動させる。後輪駆動機構7は、モータ20(電動機)、減速機21、およびクラッチ22を備えている。クラッチ22は、たとえば減速機21の最終段に設けられる。クラッチ22は、たとえば油圧クラッチや電磁クラッチによって構成されており、モータ20と後輪5L,5Rとの間のモータトルクの伝達経路に設けられている。
【0027】
モータ20は、ECU9から供給される駆動電力に基づいて、後輪5L,5Rを駆動させる駆動力を発生させる。クラッチ22が接続状態であるとき、モータ20の駆動力(回転力)は、減速機21およびクラッチ22を介してリヤアスクル11L,11Rに伝達されることにより、後輪5L,5Rに伝達される。これにより、電動四輪駆動車1は四輪駆動状態となり、前輪4L,4Rおよび後輪5L,5Rが駆動輪となる。
【0028】
これに対し、クラッチ22が切断状態になることにより、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に切り離されるので、モータ20の回転力が後輪5L,5Rに伝達されなくなる。これにより、電動四輪駆動車1は二輪駆動状態となり、前輪4L,4Rのみが駆動輪となる。
【0029】
このように、電動四輪駆動車1は、エンジン2の駆動力を前輪4L,4Rおよび後輪5L,5Rの両方に伝達する四輪駆動状態と、エンジン2の駆動力を前輪4L,4Rのみに伝達する二輪駆動状態との間で切り替え可能である。なお、四輪駆動状態では、エンジン2の駆動力が前輪4L,4Rに伝達され、エンジン2の駆動力から変換した電力により駆動するモータ20の回転力が後輪5L,5Rに伝達される。
【0030】
バッテリ8は、たとえば充放電可能なニッケル水素やリチウムイオンなどの二次電池が採用される。
ECU9は、図示しないエンジンECUなどとCANなどの通信手段で接続されており、後輪駆動用のモータ20の制御を実行する。また、ECU9には、車輪速センサ13L,13R,14L,14R、スロットル開度センサ15、および回転角センサ17が接続されている。ECU9は、これら各車輪速センサ13L,13R,14L,14Rにより検出される出力信号(車輪速Sw)、スロットル開度センサ15により検出されるスロットル開度Ot、および回転角センサ17により検出されるモータ20の回転角θに基づいて、モータ20の指令値を演算する。ECU9は、演算された指令値およびエンジン回転数などに基づいて、モータ20を制御する。
【0031】
また、ECU9は、クラッチ22の断接状態(切断状態および接続状態)を制御する。クラッチ22は、ECU9からクラッチ制御指令としてクラッチON指令が出力されるとき、接続状態となり、クラッチ制御指令としてクラッチOFF指令が出力されるとき、切断状態となる。具体的には、ECU9は、四輪駆動のときには、クラッチON指令を出力することによりクラッチ22を接続状態とし、二輪駆動のときには、クラッチOFF指令を出力することによりクラッチ22を切断状態とする。
【0032】
なお、ECU9からクラッチON指令あるいはクラッチOFF指令が出力されてから、クラッチ22が接続状態あるいは切断状態になるまでには、一定のタイムラグがある。また、本実施形態のクラッチ22は、クラッチ22が切断状態にあるときが通常状態、すなわちECU9から何らクラッチ22を操作するようなクラッチ制御指令が出力されていない場合であるが、便宜上、何らクラッチ制御指令が出力されていないときにクラッチOFF指令が出力されることとしている。なお、クラッチ22のクラッチOFF指令が出力されている間において、ECU9によりクラッチ22が切断状態であると確定するまで、後輪5L,5Rにブレーキトルクを作用させない。また、クラッチ22のクラッチOFF指令が出力されることにより、クラッチ22が切断状態にあるときであっても、機械的な摩擦などによってモータ20の回転数は低下する。
【0033】
また、ECU9は、クラッチ制御指令(クラッチON指令およびクラッチOFF指令)、モータ20の回転数N、および車輪速Swから換算された車輪速回転数Nwに基づいて、クラッチ22にクラッチON異常およびクラッチOFF異常が発生しているか否かを判定する。なお、車輪速回転数Nwは、車輪速Swをモータ20の回転数に換算したものである。また、クラッチON異常(クラッチ接続異常)とは、ECU9によりクラッチON指令が出力されているにも関わらず、クラッチ22が誤って切断状態にあるときの異常である。クラッチOFF異常(クラッチ切断異常)とは、ECU9によりクラッチOFF指令が出力されているにも関わらず、クラッチ22が誤って接続状態にあるときの異常である。
【0034】
なお、クラッチ22が接続状態にあるときには、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に連結されているため、回転数Nと車輪速回転数Nwとはほとんど一致する。これに対し、クラッチON異常が発生している場合には、実際にはモータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に切り離されているので、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれてしまう。このため、ECU9は、回転数Nと車輪速回転数Nwとの差である回転数差dNonが、閾値以上であるか否かに基づいて、クラッチON異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0035】
また、クラッチ22が切断状態にあるときには、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に切り離されているため、回転数Nと車輪速回転数Nwとは、ずれることがある。これに対し、クラッチOFF異常が発生している場合には、実際にはモータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に連結されているので、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致する。このため、ECU9は、回転数Nと車輪速回転数Nwとの差である回転数差dNoffが、閾値以上であるか否かに基づいて、クラッチOFF異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0036】
なお、クラッチON指令からクラッチOFF指令に切り替えた直後、およびクラッチOFF指令からクラッチON指令に切り替えた直後は、まだクラッチ22の断接状態が変化していないと考えられるので、ECU9はクラッチON異常およびクラッチOFF異常の判定を行わない。
【0037】
つぎに、ECU9により実行されるクラッチON異常およびクラッチOFF異常のクラッチ状態判定処理を説明する。
図2および図3には、モータ20の回転数Nの時間変化が実線で示され、車輪速Swをモータ20の回転数に換算した車輪速回転数Nwの時間変化が破線で示されている。ここでの車輪速Swは、後輪5L,5Rに設けられた車輪速センサ14L,14Rにより検出される車輪速Swである。ECU9は、回転数Nおよび車輪速回転数Nwの時間変化に基づいて、クラッチON異常およびクラッチOFF異常を検出する。なお、図2ではクラッチON指令時のクラッチON異常の検出に着目して説明し、図3ではクラッチOFF指令時のクラッチOFF異常の検出に着目して説明する。また、図2および図3の第1領域〜第7領域は、クラッチ22の断接状態に応じて分けている。
【0038】
図2に示すように、第1領域においては、クラッチON指令に基づいてクラッチ22が接続状態にあるため、モータ20の回転数Nの増大に伴って車輪速回転数Nwも増大する。このため、ECU9は、回転数差dNonが閾値(第1ON閾値Th11および第2ON閾値Th12)未満になるため、クラッチON異常が発生していないと判定することができる。なお、回転数Nが微小な領域においては、電動四輪駆動車1が移動するまでにタイムラグがあるので、車輪速Swがほとんどゼロとなる。このため、車輪速Swが微小な領域においては、回転数Nと車輪速回転数Nwとの間に差が生じてしまう。しかし、これはクラッチON異常により生じる差ではないため、ECU9が誤ってクラッチON異常と判定しないように、クラッチON異常か否かを判定するための閾値を、車輪速Swが大きいときの閾値と異なるように設定する。
【0039】
つぎに、第2領域においては、クラッチOFF指令に基づいてクラッチ22が切断状態にあるため、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に切り離されている。これにより、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれる場合がある。なお、モータ20と後輪5L,5Rとの間が切り離されていることから、モータ20を駆動させても後輪5L,5Rに動力を伝達することができないため、ECU9はモータ20の駆動を停止する。モータ20の駆動が停止すると、モータ20の回転数Nは機械的な摩擦などによって速やかに自然減少する。これに対し、クラッチ22が切断状態になったとしても、後輪5L,5Rは前輪4L,4Rの駆動に伴って回転するため、車輪速回転数Nwの減少するタイミングはモータ20の回転数Nが減少するタイミングとずれることがある。このため、ECU9は、モータ20の回転数Nと車輪速回転数Nwとの差が閾値(後述の第2OFF閾値Th2)以上であることが一定時間継続された場合には、クラッチ22が切断状態にあることが確定的であるとして、クラッチOFF確定と判定する。
【0040】
なお、第2領域において、ECU9から出力されるクラッチ制御指令がクラッチOFF指令からクラッチON指令に切り替わったとき、モータ20の回転数Nの減少から増加に切り替わる。そして、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に連結されるので、ECU9は、クラッチON指令を出力するとともに、モータ20の駆動を再開する。これにより、モータ20の回転数Nが再度増加している。
【0041】
第3領域は、ECU9がクラッチON指令を出力することによりクラッチ22が接続状態であったところでクラッチON異常が発生した場合を示している。クラッチ22が接続状態にある場合には、モータ20と後輪5L,5Rとの間が機械的に連結されているために、回転数Nと車輪速回転数Nwとはほとんど一致するはずである。このため、ECU9は、回転数Nと車輪速回転数Nwとの差が閾値(後述の第1ON閾値Th11)以上であることが一定時間継続した場合には、クラッチON異常と判定する。
【0042】
つぎに、図3に示すように、第4領域および第5領域は、図2の第1領域および第2領域と同様である。これに対し、第6領域では、ECU9がクラッチON指令を出力している間に、クラッチON異常が発生しなかったために、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致している。
【0043】
第7領域は、ECU9がクラッチOFF指令を出力することによりクラッチ22が切断状態にあったところでクラッチOFF異常が発生した場合を示している。クラッチ22が切断状態にある場合には、モータ20と後輪5L,5Rとの間が切り離されるため、回転数Nと車輪速回転数Nwとの間に差が生じることが想定される。しかし、クラッチ22が切断状態にあるにも関わらず、回転数Nと車輪速回転数Nwとの差が閾値(第1OFF閾値Th1)以下である場合、車輪速回転数NwがクラッチOFF異常判定閾値(車輪速判定値と閾値定数との和)を超えたとき、ECU9はクラッチ22のクラッチOFF異常である旨判定する。ただし、車輪速回転数Nwが減少しているときには、モータ20の自然減速と判別することが困難なため、クラッチOFF異常か否かを判定しない。
【0044】
つぎに、ECU9により実行されるクラッチ22のクラッチON異常およびクラッチOFF異常を判定するクラッチ状態判定処理について、図4図8のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
図4のフローチャートに示すように、ECU9は、出力しているクラッチ制御指令がクラッチON指令であるか否かを判定する(ステップS1)。
ECU9は、クラッチ制御指令がクラッチON指令である旨判定する場合(ステップS1のYES)、クラッチON指令後、一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS2)。なお、一定時間は、ECU9がクラッチON指令を出力した後、クラッチ22が接続状態に切り替わったと考えられる程度の時間に設定される。
【0046】
ECU9は、クラッチON指令後、一定時間が経過した旨判定する場合(ステップS2のYES)、モータ20の回転数Nと車輪速回転数Nwとの差である回転数差dNonを演算し(ステップS3)、クラッチON異常判定処理(ステップS10)に移行する。以上でクラッチ状態判定処理を終了する。
【0047】
これに対し、ECU9は、クラッチON指令後、一定時間が経過していない旨判定する場合(ステップS2のNO)、処理を終了する。これは、クラッチ22の断接状態が変化するまでにタイムラグがあるため、クラッチON指令の直後は、まだクラッチ22が接続状態になっていないおそれがあるからである。
【0048】
また、ECU9は、出力しているクラッチ制御指令がクラッチON指令でない旨判定する場合(ステップS1のNO)、クラッチOFF指令後、一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。
【0049】
ECU9は、クラッチOFF指令後、一定時間が経過した旨判定する場合(ステップS5のYES)、車輪速判定値更新処理(ステップS20)を実行する。
ECU9は、車輪速判定値更新処理(ステップS20)の終了後、モータ20の回転数Nと車輪速回転数Nwとの差である回転数差dNoffを演算し(ステップS6)、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0050】
ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下である場合(ステップS7のYES)、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)を実行し、処理を終了する。第1OFF閾値Th1は、クラッチ22が切断状態にあるか否かを切り分けるための閾値である。すなわち、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1よりも大きい場合には、回転数Nと車輪速回転数Nwとがある程度ずれているため、クラッチ22が切断状態にある可能性が高いと考えられる。また、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下である場合には、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致しているため、クラッチ22が接続状態にある可能性が高いと考えられる。
【0051】
これに対し、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1よりも大きい場合(ステップS7のNO)、クラッチOFF判定処理(ステップS40)を実行し、処理を終了する。
ECU9は、クラッチ制御指令がクラッチOFF状態で確定でない場合(ステップS4のYES)、処理を終了する。また、ECU9は、クラッチOFF指令後、一定時間が経過していないと判定する場合(ステップS5のNO)、処理を終了する。これは、クラッチOFF指令の直後は、まだクラッチ22が切断状態になっていないおそれがあるためである。
【0052】
つぎに、クラッチON異常判定処理(ステップS10)、車輪速判定値更新処理(ステップS20)、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)、およびクラッチOFF判定処理(ステップS40)について詳しく説明する。
【0053】
まず、クラッチON異常判定処理(ステップS10)について説明する。
図5に示すように、ECU9は、車輪速Swが一定以上かつバックラッシュが詰まっているか否かを判定する(ステップS11)。なお、バックラッシュとは、モータ20が後輪5L,5Rへと駆動力を伝達する際のあそび(隙間)である。また、車輪速Swが一定以上とは、たとえば、車輪速Swが後輪5L,5Rが回転しているか否かを判定するための車輪速閾値Sw0以上である場合である。
【0054】
ECU9は、車輪速Swが一定以上かつバックラッシュが詰まっている場合(ステップS11のYES)、回転数差dNonが第1ON閾値Th11以上であるか否かを判定する(ステップS12)。第1ON閾値Th11は、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれているか否かを切り分けるための閾値である。すなわち、回転数差dNonが第1ON閾値Th11以上である場合、回転数Nと車輪速回転数Nwとはずれていると考えられるため、クラッチ22は切断状態にあると考えられる。これに対し、回転数差dNonが第1ON閾値Th11未満である場合、回転数Nと車輪速回転数Nwとはほとんど一致しているため、クラッチ22は接続状態にあると考えられる。また、バックラッシュが詰まっているかどうかは、たとえば圧力センサにより隙間が埋まっていることを検出することや、モータ20のトルクが直ちに後輪5L,5Rに伝達されていることなどに基づいて判断される。
【0055】
ECU9は、回転数差dNonが第1ON閾値Th11以上である場合(ステップS12のYES)、クラッチON異常カウントを加算し(ステップS13)、クラッチON異常カウントがクラッチON異常カウント閾値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。クラッチON異常カウント閾値は、ステップS13と判定されたクラッチON異常と考えられる状況が、どれだけの時間継続した場合に、クラッチON異常と判定するかに基づいて決定される。
【0056】
ECU9は、クラッチON異常カウントがクラッチON異常カウント閾値以上である場合(ステップS14のYES)、クラッチON異常を確定する(ステップS15)。
これに対し、ECU9は、クラッチON異常カウントがクラッチON異常カウント閾値未満である場合(ステップS14のNO)、処理を終了する。
【0057】
また、ECU9は、車輪速Swが一定以上でない、あるいはバックラッシュが詰まっていない場合(ステップS11のNO)、回転数差dNonが第2ON閾値Th12以上であるか否かを判定する(ステップS16)。第2ON閾値Th12は、第1ON閾値Th11と同様に、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれているか否かを切り分けるための閾値である。なお、第2ON閾値Th12は、第1ON閾値Th11よりも大きく設定されている。これは、車輪速Swが一定未満である場合やバックラッシュが詰まっていない場合には、ON異常が発生していない場合であっても、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれるためである。
【0058】
ECU9は、回転数差dNonが第2ON閾値Th12未満である場合(ステップS16のNO)、クラッチON異常カウントをリセットする(ステップS17)。
これに対し、ECU9は、回転数差dNonが第2ON閾値Th12以上である場合(ステップS16のYES)、ステップS13に移行し、クラッチON異常カウントを加算する。
【0059】
また、ECU9は、回転数差dNonが第1ON閾値Th11未満である場合(ステップS12のNO)、クラッチON異常カウントをリセットする(ステップS17)。
以上で、クラッチON異常判定処理を終了する。
【0060】
つぎに、車輪速判定値更新処理(ステップS20)について説明する。
図6に示すように、ECU9は、クラッチ22が切断状態になった直後か否かを判定する(ステップS21)。なお、クラッチ22が切断状態になった直後とは、ECU9がクラッチOFF指令を出力した直後のことである。
【0061】
ECU9は、クラッチ22が切断状態になった直後である旨判定した場合(ステップS21のYES)、車輪速判定値を現在の車輪速Sw(現車輪速)とし(ステップS22)、処理を終了する。なお、車輪速判定値は、クラッチOFF異常を判定するための閾値の基礎成分である。すなわち、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致しているときに、車輪速判定値を基準として、車輪速回転数Nwがある程度大きくなったときに、クラッチOFF異常を判定する。
【0062】
これに対し、ECU9は、クラッチ22が切断状態になった直後ではない旨判定した場合(ステップS21のNO)、車輪速判定値が現車輪速以上であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0063】
ECU9は、車輪速判定値が現車輪速以上である場合(ステップS23のYES)、車輪速判定値を現車輪速とする(ステップS22)。
これに対し、ECU9は、車輪速判定値が現車輪速未満である場合(ステップS23のNO)、処理を終了する。すなわち、車輪速判定値はそのまま維持される。
【0064】
つぎに、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)について説明する。
図7に示すように、ECU9は、クラッチOFF確定カウントをリセットする(ステップS31)。これは、図4のステップS7において、回転数Nと車輪速回転数Nwとの差が小さいと判定されることにより、クラッチOFF異常判定処理に移行するため、クラッチ22が切断状態にないと考えられるためである。
【0065】
つぎに、ECU9は、車輪速判定値と閾値定数との和をクラッチOFF異常判定閾値として演算し(ステップS32)、車輪速SwがクラッチOFF異常判定閾値よりも大きく、かつモータ20の回転数Nが回転数閾値以上であるか否かを判定する(ステップS33)。すなわち、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致しているときに、車輪速判定値を基準として、車輪速回転数Nwが閾値定数だけ大きくなったときに、クラッチOFF異常を判定する。閾値定数は、回転数の差があると考えられる程度の値に設定されている。
【0066】
ECU9は、車輪速SwがクラッチOFF異常判定閾値よりも大きく、かつ回転数Nが回転数閾値以上である場合(ステップS33のYES)、クラッチOFF異常カウントを加算し(ステップS34)、クラッチOFF異常カウントがクラッチOFF異常カウント閾値以上であるか否かを判定する(ステップS35)。なお、クラッチOFF異常カウント閾値は、ステップS34で判定されたクラッチOFF異常と考えられる状況が、どれだけの時間継続した場合に、クラッチOFF異常と判定するかに基づいて決定される。
【0067】
ECU9は、クラッチOFF異常カウントがクラッチOFF異常カウント閾値以上である場合(ステップS35のYES)、クラッチOFF異常であると確定する(ステップS36)。
【0068】
これに対し、ECU9は、車輪速SwがクラッチOFF異常判定閾値以下、あるいは回転数Nが回転数閾値未満である場合(ステップS33のNO)、処理を終了する。
また、ECU9は、クラッチOFF異常カウントがクラッチOFF異常カウント閾値未満である場合(ステップS35のNO)、処理を終了する。
【0069】
つぎに、クラッチOFF判定処理(ステップS40)について説明する。
図8に示すように、ECU9は、車輪速Swが車輪速閾値Sw0以上であるか否かを判定する(ステップS41)。
【0070】
ECU9は、車輪速Swが車輪速閾値Sw0以上である場合(ステップS41のYES)、回転数差dNoffが第2OFF閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS42)。なお、第2OFF閾値Th2は、クラッチ22が切断状態にあるか否かを判定するための閾値である。回転数差dNoffが第2OFF閾値Th2以上である場合には、クラッチ22が切断状態にあるために、回転数Nと車輪速回転数Nwとの間に差が生じていると考えられる。
【0071】
ECU9は、回転数差dNoffが第2OFF閾値Th2以上である場合(ステップS42のYES)、クラッチOFF確定カウントを加算し(ステップS43)、クラッチOFF異常カウントをリセットし(ステップS44)、クラッチOFF確定カウントがクラッチOFF確定カウント閾値以上であるか否かを判定する(ステップS45)。
【0072】
ECU9は、クラッチOFF確定カウントがクラッチOFF確定カウント閾値以上である場合(ステップS45のYES)、クラッチOFFを確定する(ステップS46)。なお、クラッチOFF確定カウント閾値は、ステップS42,S47で判定されたクラッチOFFが確定的と考えられる状況が、どれだけの時間継続した場合に、クラッチOFFが確定するかに基づいて決定される。
【0073】
これに対し、ECU9は、車輪速Swが車輪速閾値Sw0未満である場合(ステップS41のNO)、回転数差dNoffが第3OFF閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS47)。なお、第3OFF閾値Th3は、第2OFF閾値Th2と同様に、クラッチ22が切断状態にあるか否かを判定するための閾値である。第3OFF閾値Th3は、第2OFF閾値Th2よりも大きく設定されている。
【0074】
ECU9は、回転数差dNoffが第3OFF閾値Th3未満である場合(ステップS47のNO)、クラッチOFF確定カウントをリセットし(ステップS48)、処理を終了する。
【0075】
これに対し、ECU9は、回転数差dNoffが第3OFF閾値Th3以上である場合(ステップS47のYES)、クラッチOFF確定カウントを加算する(ステップS43)。
【0076】
また、ECU9は、回転数差dNoffが第2OFF閾値Th2未満である場合(ステップS42のNO)、クラッチOFF確定カウントをリセットする(ステップS48)。
また、ECU9は、クラッチOFF確定カウントがクラッチOFF確定カウント閾値未満である場合(ステップS45のNO)、処理を終了する。
【0077】
以上により、クラッチ状態判定処理を終了する。なお、クラッチ状態判定処理は、一定の制御周期で繰り返し実行される。ただし、ECU9がクラッチOFFを確定した後は、クラッチOFF異常およびクラッチOFF確定の判定を、一定の制御周期の間実行しない。すなわち、ECU9がクラッチOFFを確定した後は、図4のステップS1でNOの場合、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)およびクラッチOFF判定処理(ステップS40)を行うことなく、処理を終了する。なお、この場合であっても、図4のステップS1でYESの場合、クラッチON異常判定処理(ステップS10)を実行することにより、クラッチON異常を検出する。
【0078】
本実施形態の作用および効果を説明する。
(1)ECU9は、回転数差dNon,dNoffが閾値以上であるか否かに基づいて、クラッチ22の断接状態を判定することができる。
【0079】
クラッチON指令が出力されている場合、ECU9は、回転数差dNonが第1ON閾値Th11あるいは第2ON閾値Th12以上であるとき、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれているものとして、クラッチ22が実際には切断状態と考えられる状況にあるものと判定する。このため、クラッチON異常と考えられる状況を検出することができる。
【0080】
また、クラッチOFF指令が出力されている場合、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下であるとき、回転数Nと車輪速回転数Nwとがほとんど一致しているため、クラッチ22が実際には接続状態と考えられる状況にあるものと判定する。このため、クラッチOFF異常であると考えられる状況を検出することができる。
【0081】
また、クラッチOFF指令が出力されている場合、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以上であるとき、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれているため、クラッチ22が切断状態と考えられる状況にあるものと判定する。このため、クラッチOFFが確定的と考えられる状況を検出することができる。
【0082】
(2)クラッチ22の断接状態を検出するために用いられるセンサは、従来から車両に設けられている各車輪速センサ13L,13R,14L,14Rおよび回転角センサ17である。このため、新たなセンサを設けることなしに、クラッチON異常、クラッチOFF異常、およびクラッチOFF確定を判定することができ、ECU9はクラッチ22の断接状態を監視することができる。また、クラッチ22の断接状態を検出するための新たなセンサを設けた場合には、新たに設けたセンサの故障を考慮しなければならないことを考えると、電動四輪駆動車1の故障率の増大を抑制することができ、電動四輪駆動車1の信頼性を確保することができる。
【0083】
(3)クラッチON指令が出力されている場合、ECU9は、車輪速Swが一定以上、かつバックラッシュが詰まっているか否かに基づいて、回転数差dNonと比較する閾値を、第1ON閾値Th11と第2ON閾値Th12との間で変更している。すなわち、車輪速Swが一定以上、かつバックラッシュが詰まっている場合には、車輪速Swが一定未満、かつバックラッシュが詰まっていない場合と比べて、より小さな閾値である第1ON閾値Th11を用いる。これにより、車輪速Swが微小な領域や、バックラッシュが詰まっていないような、回転数Nと車輪速回転数Nwとの間に差が生じやすい場合であっても、クラッチON異常をより確実に判定することができる。
【0084】
(4)クラッチOFF指令が出力されている場合、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下であるか否かという判定に加えて、車輪速SwがクラッチOFF異常判定閾値よりも大きい、かつ回転数Nが回転数閾値以上であるか否かに基づいて、クラッチOFF異常を検出している。これにより、モータ20の回転が減速しているような、自然減速との切り分けが困難な状況でクラッチOFF異常を検出しない分、より正確にクラッチOFF異常を検出することができる。
【0085】
(5)クラッチOFF指令が出力されている場合、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以下であるか否かという判定に加えて、車輪速Swが車輪速閾値Sw0以上か否かに基づいて、さらに回転数差dNoffと比較するための閾値を、第2OFF閾値Th2と第3OFF閾値Th3との間で変更している。これにより、車輪速Swが微小なために、誤って判定される状況では、より値の大きな第3OFF閾値Th3を用いてクラッチOFFが確定か否かの判定を行うことにより、より確実にクラッチOFFを判定することができる。
【0086】
(6)クラッチON異常判定処理、クラッチOFF異常判定処理、およびクラッチOFF判定処理では、いずれもクラッチON異常、クラッチOFF異常、およびクラッチOFFと考えられる状況があったときに、カウントを加算していき、それらのカウントがカウント閾値を超えるか否かに基づいて判定処理を行っていた。これにより、クラッチON異常、クラッチOFF異常、およびクラッチOFFと考えられる状況が1回あったとして、それが継続しなければクラッチON異常、クラッチOFF異常、およびクラッチOFFと判定されない分、より確実にクラッチON異常、クラッチOFF異常、およびクラッチOFFを判定することができる。
【0087】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・クラッチ22を切断状態にする場合、ECU9がクラッチOFF指令を実際に出力するようにしてもよい。
【0088】
図5のステップS11では、車輪速Swが一定以上、かつバックラッシュが詰まっているか否かに基づいて、ステップS12あるいはステップS16に移行したが、これに限らない。たとえば、ステップS11では、車輪速Swが一定以上であるか否かのみに基づいて判定を行ってもよいし、バックラッシュが詰まっているか否かのみに基づいて判定を行ってもよい。すなわち、モータ20の駆動力が直ちに後輪5L,5Rに伝達されないような、回転数Nと車輪速回転数Nwとがずれやすい状況にあるか否かが判別できればよい。
【0089】
・回転数Nが微小な領域では、クラッチON異常およびクラッチOFF異常を判定するための閾値を、回転数Nが微小でない領域の閾値と異なるものとしたが、同じであってもよい。たとえば、図5のステップS11を設けず、クラッチON異常を判定するための閾値を、ステップS11がYESの場合もNOの場合もともに同じ閾値(第1ON閾値Th11=第2ON閾値Th12)としてもよい。また、図8のステップS41も同様に、ステップS41を設けなくてもよい。
【0090】
・本実施形態では、図4のステップS2およびステップS5において、一定時間が経過したか否かを判定したが、これに限らない。たとえば、ECU9がクラッチON指令を出力してから、クラッチ22が接続状態になるまでの時間が短い(反応が良い)場合、判定しなくてもよい。また、ECU9がクラッチOFF指令を出力してから、クラッチ22が切断状態になるまでの時間が短い場合、判定しなくてもよい。
【0091】
・本実施形態では、図4のステップS7において、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以上か否かに基づいて、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)あるいはクラッチOFF判定処理(ステップS40)に移行したが、これに限らない。たとえば、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1以上である場合には、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)を経ることなく、クラッチOFF異常を判定してもよい。また、ECU9は、回転数差dNoffが第1OFF閾値Th1未満である場合には、クラッチOFF判定処理(ステップS40)を経ることなく、クラッチOFFを確定してもよい。
【0092】
・本実施形態では、図5のステップS11がYES、かつステップS12がYESの場合、およびステップS11がNO、かつステップS16がYESの場合に、クラッチON異常カウントを加算したが、これに限らない。たとえば、クラッチON異常判定処理(ステップS10)の開始後、まずステップS12の回転数差dNonが第1ON閾値Th11以上であるか否かを判定するようにしてもよい。そして、回転数差dNonが第1ON閾値Th11以上である場合、クラッチON異常を確定してもよい。
【0093】
・本実施形態では、クラッチON異常、クラッチOFF異常、クラッチOFFが確定的と考えられる状況が一定時間継続したときに、クラッチON異常、クラッチOFF異常、クラッチOFFが確定的と判定したが、これに限らない。たとえば、図5のステップS12がYESのときに直ちにステップS15に移行してもよい。また、図7のステップS33がYESのときに直ちにステップS36に移行してもよい。また、図8のステップS42のYESあるいはステップS47のYESのときに直ちにステップS46に移行してもよい。
【0094】
・本実施形態では、ECU9が何らクラッチ22を制御していない場合には、クラッチ22が切断状態にあったが、これに限らない。すなわち、クラッチ22の通常状態は、接続状態であってもよい。ここで、図9に、クラッチ22の通常状態が接続状態の場合のクラッチ状態判定処理を一例として示す。なお、図4図8と同様の判定を行う部分については、便宜上同じ符号を付与した。
【0095】
まず、図9に示されるように、ECU9は、クラッチ制御指令がクラッチOFF指令か否かを判定する(ステップS50)。ステップS50でYESのときに行われる処理は、図4のステップS1でNOの場合と比べると、ステップS4およびステップS40が設けられないことを除いて同じである。すなわち、クラッチ22の通常状態が接続状態である場合には、クラッチOFF判定処理(ステップS40)は行わず、クラッチON判定処理(ステップS53)を行う。
【0096】
つぎに、ECU9は、ステップS50でNOのとき、ステップS2およびステップS3に移行する。そして、ECU9は、回転数差dNonが第3ON閾値Th13以上である場合(ステップS52のYES)、クラッチON異常判定処理(ステップS10)に移行し、回転数差dNonが第3ON閾値Th13未満の場合(ステップS52のNO)、クラッチON判定処理(ステップS53)に移行する。
【0097】
つぎに、クラッチON判定処理(ステップS53)を、図10を用いて説明する。
図10に示すように、ECU9は、車輪速判定値更新処理(ステップS20)を実行し、クラッチOFF異常判定処理(ステップS30)を実行する。そして、ECU9は、ステップS30において、クラッチOFF異常が検出された場合、クラッチONが確定的であると判定する。
【0098】
・本実施形態では、図5のステップS17、図7のステップS31、図8のステップS44、およびステップS48において、カウントをリセットしたが、これに限らない。たとえば、カウントを減算するようにしてもよい。
【0099】
・二輪駆動状態と四輪駆動状態との切り替えは、各種の状態量に基づいてECU9により実行されてもよいし、運転者が切り替えスイッチを操作することにより、ECU9が実行するようにしてもよい。
【0100】
・本実施形態では、前輪4L,4Rを駆動するための駆動源としてエンジン2が採用されたが、これに限らない。たとえば、駆動源としてエンジン2とモータを併用することによって、前輪4L,4Rを駆動してもよい。また、駆動源としてモータを採用することによって前輪4L,4Rを駆動してもよい。
【0101】
・本実施形態では、前輪4L,4Rを主駆動輪とし、後輪5L,5Rを副駆動輪とした電動四輪駆動車1を例示したが、これに限らない。たとえば、後輪5L,5Rを主駆動輪とし、前輪4L,4Rを副駆動輪とする電動四輪駆動車1であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…電動四輪駆動車、2…エンジン、3…トランスミッション、4L,4R…前輪、5L,5R…後輪、6…オルタネータ、7…後輪駆動機構、8…バッテリ、9…ECU、10L,10R…フロントアスクル、11L,11R…リヤアスクル、12…整流器、13L,13R,14L,14R…車輪速センサ、15…スロットル開度センサ、20…モータ、21…減速機、22…クラッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10