特許第6861577号(P6861577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861577
(24)【登録日】2021年4月1日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20210412BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20210412BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   H01M8/04858
   H01M8/10
   H01M8/12
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-100488(P2017-100488)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2017-216230(P2017-216230A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2020年5月21日
(31)【優先権主張番号】201610363148.0
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ホンガン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】シャントン・コン
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−153532(JP,A)
【文献】 特表2016−533627(JP,A)
【文献】 特表2013−531870(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2499488(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を発生させるための燃料電池スタック(12)を備えたアノード再循環ループ(11)であって、前記燃料電池スタックは、アノード入口およびアノード出口を有するアノードと、カソードとを備えるとともに、前記カソードに供給された酸素を用いて電力を発生させるように構成されており、前記燃料電池スタックの前記アノード出口から燃料および廃ガスを受け取るとともに、改質器内部で改質を発生させる燃料改質器であり、前記改質器内部における前記改質は、前記アノード入口へ戻るように再循環される再循環された改質とスリップ改質とに分割される、燃料改質器をさらに備えたアノード再循環ループと、
前記アノード再循環ループ(11)の外部の前記燃料改質器の入口に供給される燃料の燃料流量を測定する流量計(21)と、
電気負荷によって前記燃料電池スタック(12)から引き出された電流を測定する電流測定装置(22)と、
前記再循環された改質と前記改質との流量比として定められる、前記アノード再循環ループ(11)におけるリサイクル率を計算するリサイクル率計算装置(23)と、
前記測定された燃料流量、前記測定された電流、および前記計算されたリサイクル率に基づいて、前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率を推定するプロセッサ(3)と
を備える燃料電池システム(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(3)は、前記燃料電池スタック(12)の前記燃料利用率、前記システムの燃料利用率、および前記アノード再循環ループ(11)における前記リサイクル率の間でマッピング関係を定める燃料利用率モデル(31)を備え、前記プロセッサ(3)は、前記測定された燃料流量、前記測定された電流、および前記燃料電池スタック(12)の燃料電池の個数に基づいて前記システムの前記燃料利用率を計算し、前記システムの前記計算された燃料利用率および前記測定されたリサイクル率に従って前記燃料利用率モデル(31)から前記燃料電池スタック(12)の前記燃料利用率を決定するように構成されている、請求項1記載の燃料電池システム(100)。
【請求項3】
前記プロセッサ(3)は、前記測定されたリサイクル率および前記燃料電池スタックの所与の燃料利用率上限に従って、燃料利用率モデルから前記システムの燃料利用率上限を予測するように構成されている、請求項2記載の燃料電池システム(100)。
【請求項4】
前記プロセッサ(3)は、前記システムの前記燃料利用率と前記アノード再循環ループにおける蒸気/炭素比との間のマッピング関係を定める蒸気/炭素比モデルをさらに備え、
前記プロセッサは、前記アノード再循環ループにおける所与の蒸気/炭素比下限に従って、前記蒸気/炭素比モデルから前記システムの燃料利用率下限を予測するようにさらに構成されている、請求項2記載の燃料電池システム(100)。
【請求項5】
前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率に基づいて燃料欠乏を防ぐように前記システムを制御するコントローラ(4)
をさらに備える、請求項1記載の燃料電池システム(100)。
【請求項6】
燃料流量調節器(150)をさらに備え、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率上限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記アノード再循環ループ(11)の中に供給された前記燃料流量を増大させるように前記燃料流量調節器(150)を制御し、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率下限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記アノード再循環ループ(11)の中に供給された前記燃料流量を減少させるように前記燃料流量調節器(150)を制御する、請求項5記載の燃料電池システム(100)。
【請求項7】
パワーコンディショニング装置(52)をさらに備え、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率上限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記燃料電池スタック(12)から引き出された前記電流を減少させるように前記パワーコンディショニング装置(52)を制御し、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率下限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記燃料電池スタック(12)から引き出された前記電流を増大させるように前記パワーコンディショニング装置(52)を制御する、請求項5記載の燃料電池システム(100)。
【請求項8】
リサイクル率調整装置(53)をさらに備え、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率上限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記アノード再循環ループ(11)における前記リサイクル率を増大させるように前記リサイクル率調整装置(53)を制御し、前記燃料電池スタック(12)の前記推定された燃料利用率が前記燃料電池スタック(12)の燃料利用率下限に近いときに、前記コントローラ(4)は、前記アノード再循環ループ(11)における前記リサイクル率を減少させるように前記リサイクル率調整装置(53)を制御する、請求項5記載の燃料電池システム(100)。
【請求項9】
電力を発生させるための、燃料改質器に接続された燃料電池スタックを有するアノード再循環ループを備えた燃料電池システムを動作する方法であって、
前記アノード再循環ループへ燃料を補給するステップと、
前記燃料電池スタックのカソードへ酸素を補給するステップと、
前記アノード再循環ループの中に供給される前記燃料の燃料流量を測定するステップと、
前記燃料電池スタックから引き出された電流を測定するステップと、
前記燃料改質器により発生した改質の流量、再循環された改質の流量を決定し、前記改質の流量を前記再循環された改質の流量と比較してリサイクル率を計算することにより、前記アノード再循環ループにおける前記リサイクル率を計算するステップと、
前記測定された燃料流量、前記測定された電流、および前記計算されたリサイクル率に基づいて、前記燃料電池スタックの燃料利用率を推定するステップと、を含み、
前記燃料電池スタックの前記燃料利用率、前記システムの燃料利用率、および前記アノード再循環ループにおける前記リサイクル率の間でマッピング関係を定める燃料利用率モデルを予め確立するステップをさらに含み、
前記燃料電池スタックの前記燃料利用率を推定するステップは、前記測定された燃料流量、前記測定された電流、および前記燃料電池スタックの燃料電池の個数に基づいて前記システムの燃料利用率を計算するステップと、前記システムの前記計算された燃料利用率および前記計算されたリサイクル率に従って前記燃料利用率モデルから前記燃料電池スタックの前記燃料利用率を決定するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記アノード再循環ループへの燃料流量を増加させることにより、前記燃料電池スタックの前記推定された燃料利用率に基づいて燃料欠乏を防ぐように前記システムを制御するステップをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記システムを制御するステップは、前記燃料電池スタックの前記推定された燃料利用率が、前記燃料電池スタックの燃料利用率上限または下限に近いときに、警告信号を発生させるかまたは通知を送信するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記システムを制御するステップは、前記燃料電池スタックの前記推定された燃料利用率が、前記燃料電池スタックの燃料利用率上限または下限に近いときに、前記アノード再循環ループの中に供給された前記燃料流量、前記燃料電池スタックから引き出された前記電流、および前記アノード再循環ループにおける前記リサイクル率のうちの1つまたは複数を調整するステップを含む、請求項10または11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、燃料電池の分野に関し、より詳細には、燃料電池システムおよびこの燃料電池システムを動作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素などの燃料と大気中に含まれた酸素などの酸化剤の電気化学反応によって、燃料からの化学エネルギーを電気エネルギーに変換することができる電気化学装置である。燃料電池システムは、燃料電池が環境的に優れており、非常に効率がよいので、エネルギー供給システムとして幅広く開発されている。システム効率および燃料利用率を改善するとともに、外部から水を使用することを減少させるために、通常、燃料電池システムは、アノード再循環ループを備える。単一の燃料電池は、1Vの電圧を発生できるのに過ぎないので、したがって、所望の電圧を得るために、複数の燃料電池が、通常共にスタックされる(通常、燃料電池スタックと呼ばれる)。
【0003】
燃料利用率(UF:fuel utilization)は、燃料電池システムにおける重要な変数である。燃料利用率は、燃料電池のアノードにおける消費された相当水素と正味利用可能な相当水素の比を示す。混合ガスの相当水素は、各種のモル流量を各種が生成することができる水素の個数で乗じた総計を示す。
【0004】
この燃料利用率は、燃料電池システムの効率に影響し得る。高い燃料利用率は、燃料電池システムの燃費を高めることができ、その結果、高い燃料利用率は、燃料電池システムの燃費が高いことを示唆する。しかしながら、燃料利用率が増大すると、燃料電池のアノード内において水素などの燃料の存在が不十分となるので、燃料欠乏のリスクも増大することになる可能性があり、これによりアノードが酸化することによって取り返しがつかない燃料電池の損傷を引き起こし得る。
【0005】
したがって、燃料利用率の厳格な制御は、燃料欠乏を防ぐとともにシステム効率を改善するために重要な役割を果たし得る。しかしながら、リサイクル流量、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、および水蒸気(H2O)をリアルタイムで測定することが困難であるので、燃料電池スタックの燃料利用率を測定するのは困難である。(燃料電池スタックから引き出された電流およびアノード再循環ループの中に供給される燃料流量によってもっぱら定められる)燃料電池システムの燃料利用率が燃料電池の動作および制御に用いられてきたが、燃料電池システムの燃料利用率と燃料電池スタックの燃料利用率の間に明確な関係がないので、燃料電池システムの燃料利用率についての動作境界は、通常試行錯誤によって決定される。
【0006】
したがって、容易に測定される変数を用いてリアルタイムで燃料電池スタックの燃料利用率を得るシステムが必要とされている。燃料電池システムの燃料利用率についての動作境界をリアルタイムで予測および更新するシステムがさらに必要とされている。燃料欠乏および炭素付着を同時に防ぐように燃料電池システムを動作および制御することがまたさらに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9105895号明細書
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、本開示は、燃料電池システムを提供する。この燃料電池システムは、アノード再循環ループと、流量計と、電流測定装置と、リサイクル率測定装置と、プロセッサとを備える。アノード再循環ループは、電力を発生させるための燃料電池スタックを備える。流量計は、アノード再循環ループの中に供給される燃料の燃料流量を測定するように構成されている。電流測定装置は、燃料電池スタックから引き出された電流を測定するように構成されている。リサイクル率測定装置は、アノード再循環ループにおけるリサイクル率を測定するように構成されている。プロセッサは、測定された燃料流量、測定された電流、および測定されたリサイクル率に基づいて、燃料電池スタックの燃料利用率を推定するように構成されている。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、電力を発生させるための燃料電池スタックを有するアノード再循環ループを備えた燃料電池システムを動作する方法を提供する。この方法は、アノード再循環ループへ燃料を補給するステップと、燃料電池スタックのカソードへ酸素を補給するステップと、アノード再循環ループの中に供給される燃料の燃料流量を測定するステップと、燃料電池スタックから引き出された電流を測定するステップと、アノード再循環ループにおけるリサイクル率を測定するステップと、測定された燃料流量、測定された電流、および測定されたリサイクル率に基づいて、燃料電池スタックの燃料利用率を推定するステップとを含む。
【0010】
さらに別の実施形態では、本開示は、燃料電池システムを提供する。燃料電池システムは、アノード再循環ループと、リサイクル率測定装置と、プロセッサとを備える。アノード再循環ループは、電力を発生させるための燃料電池スタックを備える。燃料は、アノード再循環ループの中に供給される。リサイクル率測定装置は、アノード再循環ループにおけるリサイクル率を測定するように構成されている。プロセッサは、燃料電池スタックの燃料利用率、システムの燃料利用率、およびアノード再循環ループにおけるリサイクル率の間でマッピング関係を定める燃料利用率モデルを含む。プロセッサは、測定されたリサイクル率および燃料電池スタックの所与の燃料利用率上限に従って、燃料利用率モデルからシステムの燃料利用率上限を予測するように構成されている。
【0011】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読んだときにより良く理解されよう。ここで、同じ符号は、図面全体を通じて同じ部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アノード再循環ループを有する典型的な燃料電池システムの概略ブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による燃料電池システムの概略ブロック図である。
図3】本開示の一実施形態による燃料電池システムを動作させる典型的な方法の流れ図である。
図4】本開示の別の実施形態によるプロセッサの概略図である。
図5】本開示の別の実施形態による燃料電池システムの概略ブロック図である。
図6】本開示の別の実施形態による燃料電池システムを動作させる典型的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、添付図面を参照して以下本明細書中に説明される。不要な詳細において本開示を不明瞭にするのを防ぐために、以下の説明では、よく知られている機能または構造については詳細に説明されない。
【0014】
別段の定めがない限り、本明細書中に使用されている科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に用いられているような用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、何らかの順序、数量、または重要性を示すものでなく、むしろある要素と別の要素を区別するために使用される。また、用語「a」および「an」は、数量の限定を示すものではなく、むしろ言及された項目が少なくとも1つ存在することを示す。用語「または」は、包括的であることが意味され、挙げた項目のいずれかまたは全部を意味する。「含む、備える(including)」、「備える、含む(comprising)」、または「有する(having)」、および本明細書中のそれらの均等物を使用することは、その後に挙げられる項目、および追加の項目と同様にそれらの均等物を包含することが意図されている。さらに、用語「接続される(connected)」および「結合される(coupled)」は、物理的または機械的接続または結合に限定されず、直接または間接のいずれかで電気的な接続または結合を含むことができる。
アノード再循環ループを備えた燃料電池システム
図1は、典型的な燃料電池システム100の概略ブロック図を示す。図1に示されるように、典型的な燃料電池システム100は、アノード再循環ループ11を備える。アノード再循環ループ11は、電力を発生させるための燃料電池スタック12を備える。燃料電池スタック12は、共にスタックされた複数の燃料電池を備えることができる。燃料電池スタック12は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)等などの高温燃料電池と、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、直接メタノール燃料電池(DMFC)等などの低温燃料電池との両方に適用可能であり得る。
【0015】
燃料電池スタック12は、アノード121と、カソード122と、電解質123とを備える。燃料電池スタック12のアノード121は、アノード入口1211とアノード出口1212とを有する。
【0016】
アノード121は、電気を発生させる電気化学反応をサポートすることができる。合成ガスは、電解質123を通じた拡散によってカソード122から受信した酸素イオンを用いてアノード121において酸化することができる。この反応は、熱と、水蒸気と、アノード121における自由電子の形態の電気とを生成することができ、これはエネルギー消費装置18へ電力を補給するために使用することができる。酸素イオンは、エネルギー消費装置18からカソード122の中に戻る電子を用いてカソード酸化剤の酸素還元によって生成することができる。
【0017】
エネルギー消費装置18は、燃料電池システム100から電流を引き出すように、または燃料電池システム100へ電気的負荷を加えるようになされている。エネルギー消費装置18は、器具、電灯、または照明組立体、機器(家庭用機器または他の機器など)、家庭用住居もしくは他の住居、オフィス、または他の商業施設、コンピュータ、信号設備または通信設備などを含み得るが、それらに限定されない。
【0018】
カソード122は、大気中の酸素などのカソード酸化剤源に結合することができる。カソード酸化剤は、電力発生時に燃料電池システム100によって用いられるカソード122に補給される酸化剤として定義される。カソード122は、カソード酸化剤から受け取った酸素イオンに対して透過可能であり得る。
【0019】
電解質123は、アノード121およびカソード122と通信することができる。電解質123は、酸素イオンをカソード122からアノード121へ通すように構成することができるとともに、カソード122からアノード121への自由電子の通過を防ぐようにほとんどまたは全く電気伝導性を有さないことができる。
【0020】
燃料電池システム100は、燃料を供給する燃料補給装置14と、アノード再循環ループ11へ燃料を送出する燃料送出装置15とを備える。燃料は、ガス状または液状であり得る。そのような燃料の例は、限定するものではないが、メタン、エタン、プロパン、バイオガス、天然ガス、合成ガス、ディーゼル、灯油、ガソリンなどを含むことができる。燃料送出装置15は、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料流量を調節する燃料流量調節器150を備えることができる。
【0021】
有毒であり燃料改質のもっと後の段に使用される触媒を結合する傾向がある燃料中の硫黄などの望ましくない成分を削減または除去するために、燃料電池システム100は、燃料浄化装置16をさらに備えることができる。燃料浄化装置16は、燃料から望ましくない成分の濃度を削減または除去するように構成されている。しかしながら、燃料浄化装置16は、メタン、エタン、およびプロパン等などの純粋な燃料に対しては省かれてもよい。
【0022】
したがって、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料は、燃料補給装置14によって供給された燃料または燃料浄化装置16によって浄化された燃料を含むことができる。
【0023】
一実施形態では、図1に示されるように、アノード再循環ループ11は、燃料改質器13をさらに備えることができる。燃料改質器13は、改質器入口131と改質器出口132とを有する。燃料電池スタック12のアノード出口1212は、燃料改質器13の改質器入口131に結合することができ、燃料改質器13の改質器出口132は、アノード再循環ループ11を形成するように燃料電池スタック12のアノード入口1211へ戻される。
【0024】
燃料改質器13は、燃料電池スタック12のアノード出口1212から燃料および廃ガスを受け取るとともに、燃料および廃ガスから改質器出口132で改質油Sを発生させるように構成することができる。改質油Sは、水素(H2)リッチガスを含むとともに、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、およびメタン(CH4)などの燃料のスリップも含むことができる。改質器出口132における改質油Sは、再循環された改質油S1とスプリット位置Qにおけるスリップ改質油S2とに分割することができる。再循環された改質油S1は、アノード入口1211へ戻るように再循環される。
【0025】
燃料電池システム100が動作時であるとき、燃料は、アノード再循環ループ11、特に本実施形態では燃料改質器13の改質器入口131へ補給され、酸素、例えば大気中に含有される酸素は、燃料電池スタック12のカソード122へ補給される。燃料改質器13では、燃料は、化学反応によって水素を発生させるように改質することができる。例えば、炭化水素燃料の場合、炭化水素燃料は、以下の蒸気変質反応(1)によって一酸化炭素(CO)および水素(H2)に変換され、一酸化炭素および水蒸気(H2O)は、以下の水ガスシフト反応(2)によって二酸化炭素(CO2)および水素に変換される。
【0026】
【数1】
任意の炭化水素燃料を使用することができるが、それは、簡単にするために以下燃料の例示的な一例としてメタン(CH4)を使用する。メタン(CH4)が燃料として使用されるとき、上記の蒸気変質反応(1)は、以下の通りに修正することができる。
【0027】
【数2】
再循環された改質油S1は、燃料電池スタック12のアノード入口1211へ戻される。燃料電池スタック12のアノード121では、再循環された改質油S1とカソード122からの酸素イオンとが混合され、電力と熱を発生させるように以下の反応(4)を通じて水蒸気に変換される。
【0028】
【数3】
別の実施形態では、燃料電池スタック12は、別個の燃料改質器13を用いずに内部改質機能を有することができる。そのような状況下では、燃料電池スタック12のアノード出口1212は、アノード再循環ループ11を形成するようにアノード入口1211へ直接戻され得る。したがって、燃料電池スタック12のアノード121では、蒸気変質反応(1)または(3)、および上記の水ガスシフト反応(2)は、やはり行われる。
【0029】
図1を続けて参照すると、燃料電池システム100は、内燃機関を含むボトミングサイクル17をさらに備えることができる。改質油Sのスリップ改質油S2は、ボトミングサイクル17へ分流される。内燃機関は、スリップ改質油S2に応じて発電効率の増加をもたらすためにさらなる電気を発生させるように駆動され、冗長の一部は、内燃機関から排気として排出される。
【0030】
以下により詳細に説明されるように、燃料電池システム100における燃料電池スタック12の燃料利用率(UF)を推定し、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率に基づいて燃料電池システム100を制御することが望ましい物であり得る。
実施形態1
燃料電池スタックの燃料利用率推定
図2は、本開示の一実施形態による燃料電池システム200の概略ブロック図を示す。図2を参照すると、図1と比較して、本開示の実施形態による燃料電池システム200は、流量計21と、電流測定装置22と、リサイクル率(RR)測定装置23と、プロセッサ3とをさらに備えることができる。流量計21は、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料流量ffuelを測定することができる。電流測定装置22は、燃料電池スタック12から引き出された電流Iを測定することができる。RR測定装置23は、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを測定することができる。RR測定装置23についての詳細は、米国特許出願第20160104906(A1)号を参照してもよく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRは、再循環された改質油S1と改質油Sの流量比として定められる。プロセッサ3は、測定された燃料流量ffuel、測定された電流I、および測定されたリサイクル率RRに基づいて、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estをリアルタイムで推定していることができる。
【0031】
一実施形態では、プロセッサ3は、以下の式、すなわち、
【0032】
【数4】
に従って、測定された燃料流量ffuel、測定された電流I、および燃料電池スタック12の燃料電池の個数に基づいてシステム200の燃料利用率UFsysを計算することができる。
【0033】
ただし、UFsysはシステム200の燃料利用率を表し、Iは燃料電池スタック12から引き出された電流を表し、Nは燃料電池スタック12の燃料電池の個数を表し、ffuelはアノード再循環ループ11の中に供給される燃料流量を表し、Fはファラデー定数を表す。
【0034】
プロセッサ3は、燃料利用率(UF)モデル31を備えることができる。UFモデル31は、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc、システム200の燃料利用率UFsys、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRの間でマッピング関係を定めることができる。
【0035】
プロセッサ3は、システム200の計算された燃料利用率UFsysおよび測定されたリサイクル率RRに従って、UFモデル31から燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estを決定することができる。
【0036】
一例として、UFモデル241は、以下の式、すなわち、
【0037】
【数5】
を含むことができる。
【0038】
したがって、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuel、燃料電池スタック12から引き出された電流I、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRが測定される限り、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estは、上記式(5)〜(7)に従って容易に推定することができる。
【0039】
上記式(7)の有効性は、高い忠実性の第1の原理コンピュータモデルに対しての以下の比較試験(表1参照)によって示すことができる。燃料電池スタック12が800℃の温度にある条件において、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RR、燃料電池スタック12から引き出された電流I、およびアノード再循環ループ11の改質器入口131の中に供給されるメタン流量
【0040】
【数6】
を変えることによって、試験データは、燃料電池システム200に生成され得る。
【0041】
【表1】
ただし、Tstackは燃料電池スタック12の温度を表し、UFfc_estは式(7)による燃料電池スタック12の推定された燃料利用率を表し、UFfc_simは高い忠実性の第1の原理コンピュータモデルによる燃料電池スタック12のシミュレートされた燃料利用率を表し、REは推定された燃料利用率UFfc_estとシミュレートされた燃料利用率UFfc_simとの間の相対誤差を表す。上記表1から、平均絶対相対誤差は1.2%であり、一方、最大絶対相対誤差は2%であり、これは燃料電池業界における工学的標準誤差(例えば5%)より低い。したがって、比較結果は、式(7)からの予測は、高い忠実性の第1の原理コンピュータモデルからの結果とよく一致することができることを示す。
【0042】
たくさんのシミュレーション試験データに従って、上記式(7)は、以下の回帰式、
【0043】
【数7】
としておおよそ表すことができる。
燃料電池スタックの推定された燃料利用率に基づく燃料欠乏防止
図2を続けて参照すると、燃料電池システム200における燃料欠乏を防止するために、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estをより良く利用するように、燃料電池システム200は、コントローラ4をさらに備えることができる。コントローラ4は、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estに基づいて燃料電池システム200を制御することができる。燃料電池スタック12の燃料利用率上限、および燃料電池スタック12の燃料利用率下限は、コントローラ4に予め記憶することができる。
【0044】
燃料電池システム200を制御することは、燃料電池システム200のパラメータを調整することを含み得る。
【0045】
例えば、一実施形態では、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限に近いときに、コントローラ4は、燃料電池システム200の燃料流量調節器150へ調整命令を送信することができる。燃料流量調節器150は、燃料欠乏を防ぐように調整命令に応じて、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuelを増大させることが。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率下限に近いときに、コントローラ4は、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuelを減少させるように燃料流量調節器150を制御することができる。
【0046】
別の実施形態では、本開示の燃料電池システム200は、パワーコンディショニング装置52をさらに備えることができる。パワーコンディショニング装置52は、(図1に示されるように)燃料電池スタック12をエネルギー消費装置18に接続するために使用することができる。パワーコンディショニング装置52は、例えば、DC−DCコンバータ、DC−ACインバータ、またはDC−DCコンバータとDC−ACインバータの組み合わせを含むことができる。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限に近いときに、コントローラ4は、パワーコンディショニング装置52へ調整命令を送信することができる。パワーコンディショニング装置52は、燃料欠乏を防ぐように調整命令に応じて燃料電池スタック12から引き出された電流Iを減少させることができる。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率下限に近いときに、コントローラ4は、燃料電池スタック12から引き出された電流Iを増大させるようにパワーコンディショニング装置52を制御することができる。
【0047】
さらに別の実施形態では、本開示の燃料電池システム200は、リサイクル率(RR)調整装置53をさらに備えることができる。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限に近いときに、コントローラ4は、RR調整装置53へ調整命令を送信することができる。RR調整装置53は、燃料欠乏を防ぐように調整命令に応じてアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを増大させることができる。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率下限に近いときに、コントローラ4は、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを減少させるようにRR調整装置53を制御することができる。RR調整装置53は、例えば、S2での排気ラインにおけるアノードブロワまたは流量制御弁であり得る。リサイクル率RRは、アノードブロワ速度または流量制御弁開度を調整することによって調節することができる。
【0048】
燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料利用率上限または燃料電池スタック12の下限に近いときに、コントローラ4は、燃料欠乏を防ぐように、燃料流量調節器150、パワーコンディショニング装置52、およびRR調整装置53のうちの1つまたは複数を制御することもできる。
【0049】
確かに、燃料電池システム200を制御することは、燃料電池システム200を監視することだけを含むこともできる。例えば、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料利用率上限または燃料電池スタック12の下限に近いときに、コントローラ4は、燃料欠乏を防ぐために対応するアクションをとるようにシステムオペレータに知らせるように、オペレータインタフェース(例えば、ヒューマンマシンインタフェース)に警告信号を発生させるだけでもよく、または単に電子メールまたはテキストメッセージを介してシステムオペレータへ通知を送信するだけでもよい。
【0050】
本開示のコントローラ4は、マルチコアコントローラとすることができる。プロセッサ3は、コントローラ4に組み込むことができる。
【0051】
本開示の燃料電池システム200は、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuel、燃料電池スタック12から引き出された電流I、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを用いて、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estを容易にかつリアルタイムで推定することができる。さらに、本開示の燃料電池システム200は、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estに従ってよく制御することができ、したがって、燃料電池システム200の燃料欠乏は、有効に防ぐことができる。本開示の燃料電池スタック12のリアルタイムで推定された燃料利用率UFfc_estは、さらなる高価なガス分析器または別個のプロセスを用いることなく、動作の可観測性を改善するとともに動作中の装置の健全性を改善することができ、これによって、本開示の燃料電池システム200が高い信頼性および柔軟性を有するとともに、運転コストを下げることを可能にする。
燃料電池システムを動作する方法
図3は、本開示の一実施形態による燃料電池システム200を動作する方法の流れ図を示す。
【0052】
図3に示されるように、ブロックB31では、燃料、例えばメタンなどの炭化水素燃料は、燃料電池システム200のアノード再循環ループ11へ補給することができる。本開示におけるアノード再循環ループ11の中に供給される燃料は、燃料補給装置14によって供給される燃料、または燃料浄化装置16によって純化された燃料を含むことができる。一実施形態では、アノード再循環ループ11は、燃料改質器13をさらに備えることができる。燃料は、燃料改質器13の改質器入口131へ供給することができる。
【0053】
ブロックB32では、酸素、例えば大気中に含有される酸素は、アノード再循環ループ11の燃料電池スタック12のカソード122へ補給されてもよい。燃料改質器13は、燃料電池スタック12のアノード出口1212から燃料および廃ガスを受け取るとともに、改質油Sを発生させる。次いで、改質油Sの再循環された改質油S1は、燃料電池スタック12のアノード入口1211へ戻すことができる。燃料電池スタック12のアノード121では、再循環された改質油S1とカソード122からの酸素イオンとが混合することができ、電力を発生させるように水蒸気に変換される。
【0054】
ブロックB33では、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料(例えば、メタン流量
【0055】
【数8】
の燃料流量ffuelは、例えば、流量計21を用いて測定することができる。
【0056】
ブロックB34では、燃料電池スタック12から引き出された電流Iは、例えば、電流測定装置22を用いて測定することができる。
【0057】
ブロックB35では、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRは、例えば、リサイクル率(RR)測定装置23を用いて測定することができる。
【0058】
ブロックB36では、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estは、ブロックB33における測定された燃料流量ffuel、ブロックB34における測定された電流I、およびブロックB35における測定されたリサイクル率RRに基づいて推定することができる。
【0059】
以下、ブロックB36における燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estの推定の仕方について図3を続けて参照しながら詳細に説明する。
【0060】
ブロックB361では、システム200の燃料利用率UFsysは、上記式(5)に従って、測定された燃料流量ffuel、測定された電流I、および燃料電池スタック12の燃料電池の個数Nに基づいて計算することができる。
【0061】
ブロックB362では、燃料利用率(UF)モデル31は、予め確立されておいてよい。UFモデル31は、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc、システム200の燃料利用率UFsys、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRの間でマッピング関係を定めることができる。
【0062】
ブロックB363では、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc_estは、システム200の計算された燃料利用率UFsysおよび測定されたリサイクル率RRに従って、UFモデル31から決定することができる。
【0063】
ブロックB37は、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限または下限に近いか判定することができる。燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限または下限に近いときに、本プロセスは、ブロックB38へ進むことができる。そうでない場合、本プロセスは、ブロックB31へ戻すことができる。
【0064】
ブロックB38では、燃料電池システム200は、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estに基づいて制御することができる。一実施形態では、燃料電池システム200を制御することは、燃料電池システム200を監視することだけを含むこともできる。例えば、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限または下限に近いときに、燃料電池スタック12の燃料利用率を制御するためのアクションをとるようにシステムオペレータに知らせるように、オペレータインタフェースに警告信号を発生させることができ、または通知を電子メールまたはテキストメッセージを介してシステムオペレータへ送信することができる。別の実施形態では、燃料電池システム200を制御することは、燃料電池システム200のパラメータを調整することを含むことができる。例えば、燃料電池スタック12の推定された燃料利用率UFfc_estが燃料電池スタック12の燃料利用率上限または下限に近いときに、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuel、燃料電池スタック12から引き出された電流I、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRのうちの1つまたは複数を調整することができる。
【0065】
本開示の燃料電池システム200を動作する方法は、動作の可観測性を改善するとともに動作中の装置性能を改善することができ、これにとよって本開示の燃料電池システム200が高い信頼性および柔軟性を有するとともに低い運転コストとなることを可能にする。
実施形態2
燃料電池システムの燃料利用率上限予測
本開示は、別の実施形態の燃料電池システム300をさらに提供することができる。燃料電池システム300は、図2に示されるような燃料電池システム200の構造の特徴の大部分を有することができる。例えば、同様に、燃料電池システム300は、電力を発生させるための燃料電池スタック12を有するアノード再循環ループ11と、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを測定するリサイクル率(RR)測定装置23とを備えることができる。
【0066】
しかし、燃料電池システム200とは異なり、燃料電池システム300は、別の実施形態のプロセッサ3を備えることができる。図4は、別の実施形態のプロセッサ3の概略図を示す。図4に示されるように、プロセッサ3は、燃料利用率(UF)モデル31を備えることができる。UFモデル31は、燃料電池スタック12の燃料利用率UFfc、システム300の燃料利用率UFsys、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRの間でマッピング関係を定めることができる。例えば、UFモデル31は、上記式(7)を備えることができる。プロセッサ3は、(以下の式に示されるように)測定されたリサイクル率RRおよび燃料電池スタック12の所与の燃料利用率上限に従って、UFモデル31からシステム300の燃料利用率上限を予測することができる。
【0067】
【数9】
ただし、UFsys_maxはシステム300の燃料利用率上限を表し、UFfc_maxは燃料電池スタック12の所与の燃料利用率上限を表し、RRはアノード再循環ループ11における測定されたリサイクル率を表す。
【0068】
したがって、燃料電池スタック12の燃料利用率上限UFfc_maxが与えられ、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRが測定される限り、システム300の燃料利用率上限UFsys_maxは、上記式(9)に従って容易に予測することができる。
燃料電池システムの燃料利用率下限の予測
図4を続けて参照すると、プロセッサ3は、蒸気/炭素比(SCR)モデル32をさらに備えることができる。SCRモデル32は、システム300の燃料利用率UFsysとアノード再循環ループ11における蒸気/炭素比SCRとの間のマッピング関係を定めることができる。アノード再循環ループ11における蒸気/炭素比SCRについての定義は、中国特許出願第201510962881.X号を参照することができ、その内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0069】
一例として、SCRモデル32は、以下の式、
【0070】
【数10】
を含むことができる。
【0071】
したがって、アノード再循環ループ11における蒸気/炭素比下限が与えられる限り、プロセッサ3は、(以下の式に示されるように)アノード再循環ループ11における所与の蒸気/炭素比下限に従ってSCRモデル32からシステム300の燃料利用率下限を容易に予測することができる。
【0072】
【数11】
ただし、UFsys_minはシステム300の燃料利用率下限を表し、SCRminはアノード再循環ループ11における所与の蒸気/炭素比下限を表す。
【0073】
典型的な実施形態では、アノード再循環ループ11における所与の蒸気/炭素比下限SCRminが2であり、燃料電池スタック12の所与の燃料利用率上限UFfc_maxは80%であり、燃料電池の電圧は0.6Vである状況において、かつアノード再循環ループ11における測定された異なるリサイクル率RRに基づいて、システム300の燃料利用率下限UFsys_minおよびシステム300の燃料利用率上限UFsys_maxは、式(10)および(9)に従ってそれぞれ得ることができる(表2参照)。
【0074】
【表2】
システムの予測された燃料利用率上限に基づく燃料欠乏防止
同様に、燃料電池システム300は、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料の燃料流量ffuelを測定する流量計21と、燃料電池スタック12から引き出された電流Iを測定する電流測定装置22と、コントローラ4とをさらに備えることができる。
【0075】
プロセッサ3は、上記式(5)に従って、測定された燃料流量ffuel、測定された電流I、および燃料電池スタック12の燃料電池の個数Nに基づいてシステム300の燃料利用率UFsysを計算することができる。
【0076】
システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_max、およびシステム300の計算された燃料利用率UFsysに基づいて、コントローラ4は、燃料欠乏を防ぐようにシステム300を制御することができる。
システムの予測された燃料利用率上限およびシステムの予測された燃料利用率下限に基づく燃料欠乏および炭素付着防止
システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_max、システム300の予測された燃料利用率下限UFsys_min、およびシステム300の計算された燃料利用率UFsysに基づいて、コントローラ4は、燃料欠乏および炭素付着を防ぐようにシステム300をやはり制御することができる。
【0077】
図4を続けて参照すると、プロセッサ3は、燃料利用率(UF)制約モジュール33をさらに備えることができる。UF制約モジュール33は、システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_max、システム300の予測された燃料利用率下限UFsys_min、およびシステム300の計算された燃料利用率UFsysに基づいて、燃料流量トリムffuel_trim、電流トリムItrim、およびリサイクル率トリムRRtrimのうちの1つまたは複数のトリムを決定することができる。
【0078】
コントローラ4は、1つまたは複数の決定されたトリムffuel_trim、Itrim、RRtrimに基づいてシステム300を制御することができる。例えば、コントローラ4は、1つまたは複数の決定されたトリムffuel_trim、Itrim、RRtrimを用いて、燃料流量設定点ffuel_sp、電流設定点Isp、およびリサイクル率設定点RRspのうちの1つまたは複数の対応する設定点を補正し、1つまたは複数の補正された設定点に基づいてシステム300を制御することができる。
【0079】
図5を参照すると、燃料電池システム300は、燃料流量調節器150と、パワーコンディショニング装置52と、リサイクル率(RR)調整装置53とを備えることができる。コントローラ4は、燃料利用率(UF)コントローラ41と、電力コントローラ42と、リサイクル率(RR)コントローラ43とを含む。
【0080】
一実施形態では、システム300の燃料利用率設定点UFsys_spおよびシステム300の計算された燃料利用率UFsysは、減算器61へ入力することができ、次いでUFコントローラ41へ入力することができ、それによって燃料流量設定点ffuel_spを得る。燃料流量設定点ffuel_spおよび決定された燃料流量トリムffuel_trimは、加算器62へ入力されてもよい。加算器62は、決定された燃料流量トリムffuel_trimを燃料流量設定点ffuel_spに加えることができ、それによって補正された燃料流量設定点を得られ、これは燃料流量調節器150へ送信することができる。燃料流量調節器150は、補正された燃料流量設定点に基づいてアノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuelを調節することができる。
【0081】
別の実施形態では、燃料電池スタック12から測定された電力需要および出力パワーPoは減算器63へ入力することができ、次いで電力コントローラ42へ入力することができ、それによって電流設定点Ispを得る。電力需要は、例えば、送電網または電気的負荷から来る可能性がある。電流設定点Ispおよび決定された電流トリムItrimは、加算器64へ入力することができる。加算器64は、決定された電流トリムItrimを電流設定点Ispへ加えることができ、それによって補正された電流設定点を得るようになり、これはパワーコンディショニング装置52へ送られ得る。パワーコンディショニング装置52は、補正された電流設定点に基づいて燃料電池スタック12から引き出された電流Iを調整することができる。
【0082】
さらに別の実施形態では、リサイクル率設定点RRsp、決定されたリサイクル率トリムRRtrim、および測定されたリサイクル率RRは、加算器/減算器65へ入力することができる。加算器/減算器65は、決定されたリサイクル率トリムRRtrimをリサイクル率設定点RRspに加えることができ、それによって補正されたリサイクル率設定点を得て、補正されたリサイクル率設定点から測定されたリサイクル率RRを減算し、これはRRコントローラ43へ送信することができる。RRコントローラ43は、アノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRを調整するようにRR調整装置53を制御することができる。
【0083】
本開示の燃料電池システム300は、システム300の動作変数、すなわち、システム300の燃料利用率UFsysが、前もって定められた制約境界に近いまたは制約境界を越えていると、トリム調整を実行することができ、したがって本開示の燃料電池システム300は、制約境界内で動作することが確実となり得、動作中の装置の健全性を改善する。
燃料電池システムを動作する方法
図6は、本開示の別の実施形態による燃料電池システム300を動作する典型的な方法の流れ図を示す。
【0084】
図6に示されるように、ブロックB61では、システム300の燃料利用率UFsysは、上記式(5)に従って、測定されたアノード再循環ループ11の中に供給される燃料流量ffuel、燃料電池スタック12から引き出された測定された電流I、および燃料電池スタック12の燃料電池の個数Nに基づいて計算することができる。
【0085】
ブロックB62では、システム300の燃料利用率下限UFsys_minは、上記式(11)に従って、アノード再循環ループ11における所与の蒸気/炭素比下限SCRminに基づいて、蒸気/炭素比(SCR)モデル32から予測することができる。
【0086】
ブロックB63では、システム300の燃料利用率上限UFsys_maxは、上記式(9)に従って、アノード再循環ループ11における測定されたリサイクル率RRおよび燃料電池スタック12の所与の燃料利用率上限UFfc_maxに基づいて燃料利用率(UF)モデル31から予測することができる。
【0087】
ブロックB64は、以下の式(12)に示されるように、システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_maxとシステム300の計算された燃料利用率UFsysとの間の差が第1の閾値未満であるか決定することができる。式(12)では、aは第1の閾値を表す。
【0088】
【数12】
ブロックB65は、式(13)に示されるように、システム300の計算された燃料利用率UFsysとシステム300の予測された燃料利用率下限UFsys_minとの間の差が第2の閾値未満であるか決定することができる。式(13)では、bは第2の閾値を表す。
【0089】
【数13】
第1の閾値aおよび第2の閾値bは、システム300の燃料利用率UFsysの完全な不確実性によって決定することができる。
【0090】
ブロックB66では、燃料流量トリムffuel_trim、電流トリムItrim、およびリサイクル率トリムRRtrimのうちの1つまたは複数のトリム、例えば、燃料流量トリムffuel_trimは決定された結果に従って決定することができる。
【0091】
ブロックB661では、システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_maxとシステム300の計算された燃料利用率UFsysとの間の差が第1の閾値a未満であるとき、決定された燃料流量トリムffuel_trimは、以下の通り表現することができる。
【0092】
【数14】
ブロックB662では、システム300の計算された燃料利用率UFsysとシステム300の予測された燃料利用率下限UFsys_minの間の差が第2の閾値b未満であるとき、決定された燃料流量トリムffuel_trimは、以下の通り表現することができる。
【0093】
【数15】
ブロックB663では、システム300の予測された燃料利用率上限UFsys_maxとシステム300の計算された燃料利用率UFsysとの間の差が第1の閾値a未満でなく、かつシステム300の計算された燃料利用率UFsysとシステム300の予測された燃料利用率下限UFsys_minとの間の差が第2の閾値b未満でないとき、決定された燃料流量トリムffuel_trimは、以下の通り表現することができる。
【0094】
【数16】
ブロックB67では、燃料流量設定点ffuel_spは、決定された燃料流量トリムffuel_trimに基づいて補正することができる。一例として、決定された燃料流量トリムffuel_trimは、補正された燃料流量設定点を得るように燃料流量設定点ffuel_spへ加えことができる。
【0095】
ブロックB68では、アノード再循環ループ11の中に供給される燃料流量ffuelは、補正された燃料流量設定点に基づいて制御することができる。
【0096】
燃料流量トリムffuel_trimは、上記方法における1つまたは複数のトリムの例示的な一例として用いられているが、上記方法は、電流トリムItrimおよびリサイクル率トリムRRtrimに同様に適用されてもよい。
【0097】
本開示の方法は、燃料欠乏と炭素付着の両方を有効に防ぐとともに、アノード再循環ループ11の中に供給された燃料流量ffuel、燃料電池スタック12から引き出された電流I、およびアノード再循環ループ11におけるリサイクル率RRなどの限られた調整可能な変数によって2つの重要な制約を解決することができる。
【0098】
本開示の実施形態による燃料電池システム200、300を動作する方法のステップは、機能ブロックとして示されているが、図3および図6に示された様々なブロックの間のブロックの順序およびステップの仕切り方は、限定であることは意図されていない。例えば、ブロックは、異なる順序で実行することができ、1つのブロックに関連したステップは、1つまたは複数の他のブロックと組み合わされてもよく、いくつかのブロックに小さく分割されてもよい。
【0099】
本開示は典型的な実施形態において図示および説明されてきたが、本開示の精神から何らかの形で逸脱することなく様々な修正および置換がなされてもよいので、図示された詳細に限定することは意図されていない。したがって、本明細書中に開示された本開示のさらなる修正および置換は、ただの日常の実験にすぎないものを用いて当業者に思い浮かび得るものであり、そのような全ての修正および均等物は、特許請求の範囲によって定められるように本開示の精神および範囲内にあると考えられる。
【符号の説明】
【0100】
3 プロセッサ
4 コントローラ
11 アノード再循環ループ
12 燃料電池スタック
13 燃料改質器
14 燃料補給装置
15 燃料送出装置
16 燃料浄化装置
17 ボトミングサイクル
18 エネルギー消費装置
21 流量計
22 電流測定装置
23 リサイクル率(RR)測定装置、RR測定装置
31 燃料利用率(UF)モデル、UFモデル
32 蒸気/炭素比(SCR)モデル、SCRモデル
33 燃料利用率(UF)制約モジュール、UF制約モジュール
41 燃料利用率(UF)コントローラ
42 電力コントローラ
43 リサイクル率(RR)コントローラ、RRコントローラ
52 パワーコンディショニング装置
53 リサイクル率(RR)調整装置、RR調整装置、リサイクル率(RR)調整装置
61 減算器
62 加算器
63 減算器
64 加算器
65 加算器/減算器
100 燃料電池システム
121 アノード
122 カソード
123 電解質
131 改質器入口
132 改質器出口
150 燃料流量調節器
200 燃料電池システム、システム
241 UFモデル
300 燃料電池システム、システム
1211 アノード入口
1212 アノード出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6