特許第6862696号(P6862696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862696
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】自動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20210412BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20210412BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20210412BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20210412BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B60L3/00 JZHV
   B60L15/20 J
   B60K6/445
   B60W20/00
   B60W10/08 900
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-133193(P2016-133193)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-7457(P2018-7457A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173361(JP,A)
【文献】 特開2007−185069(JP,A)
【文献】 特開2007−326478(JP,A)
【文献】 特開2015−137084(JP,A)
【文献】 特開2007−045325(JP,A)
【文献】 特開平11−122703(JP,A)
【文献】 特開2007−252024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60L 50/00 − 58/40
B60K 6/445
B60W 10/08
B60W 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備える自動車であって、
前記制御装置は、
前記モータの許容トルクの範囲内で前記モータから後進用のトルクを出力して登坂路を後進走行する際には、
前記モータの回転数およびトルク指令と温度とに基づいて、所定時間後の前記モータの温度である将来温度を推定し、
前記将来温度に基づいて前記所定時間後の前記許容トルクである将来許容トルクを推定し、
前記将来許容トルクが後進走行に必要な後進必要トルク未満のときには、ブレーキペダルの踏込を促すように警告を行なう、
自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関し、詳しくは、走行用のモータを備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、モータの出力上限値の範囲内でモータから後進用のトルクを出力して登坂路を走行する後進登坂時において、モータの出力上限値が登坂必要出力に満たないときには、警告を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、こうした制御により、車両のずり下がりの発生を予防するためのブレーキ操作を運転者に促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−185069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の自動車では、モータの出力上限値が登坂必要出力に満たなくなってから警告を行なう。このため、運転者のブレーキ操作が間に合わずに、車両のずり下がりを十分に予防(抑制)できない場合が生じ得る。
【0005】
本発明の自動車は、後進走行する際に、車両のずり下がりの発生をより十分に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
走行用のモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備える自動車であって、
前記制御装置は、
前記モータの許容トルクの範囲内で前記モータから後進用のトルクを出力して登坂路を後進走行する際には、
所定時間後の前記モータの温度である将来温度を推定し、
前記将来温度に基づいて前記所定時間後の前記許容トルクである将来許容トルクを推定し、
前記将来許容トルクが後進走行に必要な後進必要トルク未満のときには、警告を行なう、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動車では、モータの許容トルクの範囲内でモータから後進用のトルクを出力して登坂路を後進走行する際には、所定時間後のモータの温度である将来温度を推定し、推定した将来温度に基づいて所定時間後の許容トルクである将来許容トルクを推定し、将来許容トルクが後進走行に必要な後進必要トルク未満のときには、警告を行なう。警告を行なうことにより、登坂路を後進走行する際の車両のずり下がりを抑制するための操作(ブレーキ操作)を運転者に促すことができる。そして、将来許容トルクが後進必要トルク未満のときに警告を行なうことにより、現在の許容トルクが後進必要トルク未満のときに警告を行なうものに比して、車両のずり下がりを抑制するための操作(ブレーキ操作)を運転者が行なう時間をより十分に確保することできる。この結果、車両のずり下がりの発生をより十分に抑制することができる。ここで、「所定時間後」は、例えば、4秒後や5秒後,6秒後などとすることができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、前記制御装置は、前記モータの回転数およびトルク指令と温度とに基づいて前記将来温度を推定するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記モータの回転数およびトルク指令に基づいて現在からの前記所定時間の間の前記モータの温度上昇量を推定し、前記温度上昇量と前記モータの温度とに基づいて前記将来温度を推定するものとしてもよい。また、前記制御装置は、前記モータの回転数およびトルク指令に基づいて前記モータの損失を推定し、前記損失と前記モータの温度とに基づいて前記将来温度を推定するものとしてもよい。これらの場合、将来温度をより適切に推定することができる。
【0010】
また、本発明の自動車において、前記制御装置は、前記モータの温度が高いときには低いときに比して小さくなるように前記許容トルクを設定し、前記将来温度が高いときには低いときに比して小さくなるように前記将来許容トルクを推定するものとしてもよい。こうすれば、許容トルクや将来許容トルクをより適切に設定することができる。
【0011】
さらに、本発明の自動車において、前記制御装置は、路面勾配の後進側の登坂を正としたときに、前記路面勾配が大きいときには小さいときに比して大きくなるように前記後進必要トルクを設定するものとしてもよい。こうすれば、後進必要トルクをより適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】許容トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
図3】実施例のHVECU70によって実行される処理ルーチンの一例を示す説明図である。
図4】モータMG2の或る回転数Nm2についての温度上昇量推定用マップの一例を示す説明図である。
図5】後進必要トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
【0015】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24によって運転制御されている。
【0016】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23からのクランク角θcrなどが入力ポートから入力されている。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ23からのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
【0017】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
【0018】
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2と接続されると共に電力ライン54を介してバッテリ50と接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0019】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2,モータMG2の温度を検出する温度センサ45からのモータMG2の温度tm2などが入力ポートを介して入力されている。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
【0020】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン54を介してインバータ41,42と接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
【0021】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの電池電圧Vbやバッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからの電池電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサ51bからの電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
【0022】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。ここで、シフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)、後進ポジション(Rポジション)、ニュートラルポジション(Nポジション)、前進ポジション(Dポジション)などがある。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。さらに、路面の勾配を検出する勾配センサ89からの路面勾配θrdも挙げることができる。HVECU70からは、警告灯90への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド走行(HV走行)モードや電動走行(EV走行)モードで走行する。ここで、HV走行モードは、エンジン22を運転しながら、エンジン22の運転を伴って走行するモードであり、EV走行モードは、エンジン22の運転を伴わずに走行するモードである。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、シフトポジションSPがRポジションのときの動作について説明する。以下、シフトポジションSPがRポジションのときの説明において、トルクや回転数については後進方向を正とし、路面勾配θrdについては後進側の登坂を正として説明する。
【0025】
シフトポジションSPがRポジションのときには、EV走行モードで走行する。シフトポジションSPがRポジションのときの駆動制御では、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accとブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBPと車速センサ88からの車速Vとに基づいて、駆動軸36に要求される後進走行用の要求トルクTd*を設定する。続いて、温度センサ45からモータECU40を介して入力されるモータMG2の温度tm2に基づいて、モータMG2の許容トルクTm2limを設定する。ここで、モータMG2の許容トルクTm2limは、実施例では、モータMG2の温度tm2と許容トルクTm2limとの関係を予め定めて許容トルク設定用マップとして記憶しておき、モータMG2の温度tm2が与えられると、このマップから対応する許容トルクTm2limを導出して設定するものとした。許容トルク設定用マップの一例を図2に示す。図示するように、モータMG2の許容トルクTm2limは、モータMG2の温度tm2が所定温度tm2a(例えば、150℃や160℃,170℃など)以下のときには、モータMG2の定格値Tm2rtを設定し、モータMG2の温度tm2が所定温度tm2aよりも高いときには、温度tm2が高いときに低いときよりも小さくなるように(具体的には、温度tm2が高いほど小さくなるように)設定するものとした。そして、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に要求トルクTd*をモータMG2の許容トルクTm2limで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。モータECU40は、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0026】
次に、シフトポジションSPがRポジションで路面勾配θrdが正である(後進側の登坂である)ときに上述の駆動制御と並行して実行される処理について説明する。図3は、実施例のHVECU70によって実行される処理ルーチンの一例を示す説明図である。このルーチンは、シフトポジションSPがRポジションで路面勾配θrdが正であるときに上述の駆動制御と並行して、繰り返し実行される。
【0027】
図3の処理ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、モータMG2の回転数Nm2やトルク指令Tm2*,温度tm2,路面勾配θrdなどのデータを入力する(ステップS100)。ここで、モータMG2の回転数Nm2は、回転位置検出センサ44からのモータMG2の回転子の回転位置θm2に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。モータMG2のトルク指令Tm2*は、上述の駆動制御で設定されたものを入力するものとした。モータMG2の温度tm2は、温度センサ45によって検出されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。路面勾配θrdは、勾配センサ89によって検出されたものを入力するものとした。
【0028】
こうしてデータを入力すると、入力したモータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*に基づいて、現在からの所定時間T1(例えば、4秒や5秒,6秒など)の間のモータMG2の温度tm2の上昇量としての温度上昇量Δtm2を推定する(ステップS110)。ここで、温度上昇量Δtm2は、実施例では、モータMG2のトルク指令Tm2*と温度上昇量Δtm2との関係をモータMG2の各回転数Nm2について予め定めて複数の温度上昇量推定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、モータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*が与えられると、複数の温度上昇量推定用マップのうちモータMG2の回転数Nm2に対応するマップにモータMG2のトルク指令Tm2*を適用して温度上昇量Δtm2を推定するものとした。モータMG2の或る回転数Nm2についての温度上昇量推定用マップの一例を図4に示す。温度上昇量Δtm2は、図示するように、モータMG2のトルク指令Tm2*が大きいときには小さいときに比して大きくなるように、具体的には、モータMG2のトルク指令Tm2*が大きいほど大きくなるように推定するものとした。これは、モータMG2のトルク指令Tm2*が大きいほどモータMG2に供給される電流が大きくなり、発熱量が大きくなるためである。
【0029】
続いて、推定したモータMG2の温度上昇量Δtm2をモータMG2の温度tm2に加えて、所定時間T1後のモータMG2の温度としての将来温度tm2fuを推定する(ステップS120)。そして、モータMG2の将来温度tm2fuに基づいて、所定時間後T1後のモータMG2の許容トルクTm2limとしての将来許容トルクTm2limfuを推定する(ステップS130)。ここで、将来許容トルクTm2limfuは、実施例では、図2の許容トルク設定用マップの横軸および縦軸を「温度tm2」および「許容トルクTm2lim」から「将来温度tm2fu」および「将来許容トルクTm2limfu」に置き換えたものに将来温度tm2fuを適用して推定するものとした。
【0030】
そして、路面勾配θrdに基づいて、後進走行するのに必要な後進必要トルクTm2rqを設定する(ステップS140)。ここで、後進必要トルクTm2rqは、実施例では、路面勾配θrdと後進必要トルクTm2rqとの関係を予め定めて後進必要トルク設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、路面勾配θrdが与えられると、このマップから対応する後進必要トルクTm2rqを導出して設定するものとした。後進必要トルク設定用マップの一例を図5に示す。後進必要トルクTm2rqは、路面勾配θrdが大きいときには小さいときに比して大きくなるように、具体的には、路面勾配θrdが大きいほど大きくなるように設定するものとした。これは、登坂路を後進走行する際において、路面勾配θrdが大きいほど車両に作用する前進方向(ずり下がる方向)の力が大きくなるためである。
【0031】
次に、モータMG2の将来許容トルクTm2limfuを後進必要トルクTm2rqと比較する(ステップS150)。モータMG2の将来許容トルクTm2limfuが後進必要トルクTm2rq以上のときには、所定時間T1後にモータMG2から後進必要トルクTm2rq以上のトルクを出力可能であると判断し、即ち、運転者がアクセルペダル83を大きく踏み込めば車両のずり下がりを発生させずに後進走行可能であると判断し、ステップS100に戻る。
【0032】
ステップS150で将来許容トルクTm2limが後進必要トルクTm2rq未満のときには、所定時間T1後にモータMG2から出力可能なトルクの上限が後進必要トルクTm2rq未満であると判断し、即ち、運転者がアクセルペダル83を大きく踏み込んでも所定時間T1後もしくはそれよりも若干後に車両のずり下がりが発生する可能性があると判断し、ブレーキペダル85の踏込を促すように警告灯90を点灯する(ステップS160)。これにより、モータMG2の現在の許容トルクTm2limが後進必要トルクTm2rq未満になってから警告灯90を点灯するものに比して、車両のずり下がりの発生を予防するための操作(ブレーキ操作)を運転者が行なう時間をより十分に確保することできる。この結果、車両のずり下がりの発生ををより十分に抑制することができる。
【0033】
そして、車両が停止して更にモータMG2の温度tm2が閾値tm2ref未満になるのを待つ(ステップS170〜S190)。ここで、閾値tm2refは、例えば、上述の所定温度tm2aやその付近の温度を用いたり、許容トルクTm2limが後進必要トルクTm2rqと等しくなるときの温度よりも若干低い温度を用いたりすることができる。そして、車両が停止して更にモータMG2の温度tm2が閾値tm2ref未満になると、後進走行を再開してよいと判断し、警告灯90を消灯して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。
【0034】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の許容トルクTm2limの範囲内でモータMG2から後進用のトルクを出力して登坂路を後進走行する際には、所定時間T1後のモータMG2の温度としての将来温度tm2fuを推定し、推定したモータMG2の将来温度tm2fuに基づいて所定時間T1後のモータMG2の許容トルクTm2limとしての将来許容トルクTm2limfuを推定し、推定したモータMG2の将来許容トルクTm2limfuが後進必要トルクTm2rq未満のときには、警告灯90を点灯する。これにより、モータMG2の現在の許容トルクTm2limが後進必要トルクTm2rq未満のときに警告灯90を点灯するものに比して、車両のずり下がりの発生を予防するための操作(ブレーキ操作)を運転者が行なう時間をより十分に確保することできる。この結果、車両のずり下がりの発生ををより十分に抑制することができる。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*に基づいて現在からの所定時間T1のモータMG2の温度上昇量Δtm2を推定し、現在のモータMG2の温度tm2に温度上昇量Δtm2を加えて所定時間T1後のモータMG2の将来温度tm2を推定するものとした。しかし、モータMG2の回転数Nm2およびトルク指令Tm2*に基づいてモータMG2の損失Lm2を推定し、この損失Lm2と現在のモータMG2の温度tm2とに基づいて所定時間T1後のモータMG2の将来温度tm2を推定するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、後進必要トルクTm2rqは、路面勾配θrdに基づいて設定するものとしたが、一律の値、例えば、路面勾配θrdが14°や16°,18°などのときに後進走行するのに必要なトルクを用いるものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70は、シフトポジションSPがRポジションで路面勾配θrdが正であるときに、図3の処理ルーチンを実行するものとした。しかし、シフトポジションSPがRポジションのときには、路面勾配θrdに拘わらずに、図3の処理ルーチンを実行するものとしてもよい。この場合、路面勾配θrdが値0以下のときには、車両のずり下がりは生じないと考えられることから、後進必要トルクTm2rqを値0とすればよい。
【0038】
実施例では、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とを備えるハイブリッド自動車20の構成とした。しかし、エンジンと1つのモータとを備えるいわゆる1モータハイブリッド自動車の構成としてもよい。また、エンジンを備えずにモータからの動力だけを用いて走行する電気自動車の構成としてもよい。
【0039】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「モータ」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、HVECU70とモータECU40とが「制御装置」に相当する。
【0040】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクポジションセンサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置センサ、45 温度センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 勾配センサ、90 警告灯、MG1,MG2 モータ。
図1
図2
図3
図4
図5