特許第6862837号(P6862837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862837
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20210412BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B60T8/17 DZYW
   B60T8/1755 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-4465(P2017-4465)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-111458(P2018-111458A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広矩
(72)【発明者】
【氏名】永江 明
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 亮
(72)【発明者】
【氏名】池田 将之
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−231131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 8/1755
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動装置を備える車両において、(i)現在走行している走行車線から前記車両が逸脱する可能性がある場合に、前記車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する方向に第1ヨーモーメントを付与する第1制動力を発生するように前記制動装置を制御する車線逸脱抑制制御と、(ii)操舵角及び車速に基づいて推定される推定ヨーレートと、前記車両に発生する実ヨーレートとの乖離量が第1閾値以上となったことを条件に、車両挙動が安定する方向に第2ヨーモーメントを付与する第2制動力を発生するように前記制動装置を制御する車両挙動安定制御と、を実施可能な車両制御装置であって、
前記乖離量が、前記第1閾値より小さい第2閾値以上である場合、前記車線逸脱抑制制御の実施を抑制する制御手段を備える
ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、(i)自車両が走行車線から逸脱しそうな場合に、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生すべく各車輪に制動力を付与する車線逸脱防止制御と、(ii)自車両の旋回時のヨーレートと目標ヨーレートとの偏差に基づいて操縦安定性を判定し、操縦安定性が悪化している場合に、操縦安定性を確保する方向に左右の制駆動力差によるヨーモーメントを発生する車両挙動安定制御とを実施可能な装置であって、車線逸脱防止制御が開始されたときに車両挙動安定制御が誤動作することを防止するために、車線逸脱を防止するための目標ヨーモーメントに基づいて、車両挙動安定制御における目標ヨーレートを補正する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第03823924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の背景技術によれば、車線逸脱防止制御を優先するために、車両挙動安定制御が作動しない側に車両挙動安定制御における目標ヨーレートが補正される。すると、車両挙動安定制御を行うべき状況においても、車線逸脱防止制御が優先され、車両挙動が不安定になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車線逸脱防止制御に起因する車両挙動安定制御の作動を抑制することができる車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、上記課題を解決するために、制動装置を備える車両において、(i)現在走行している走行車線から前記車両が逸脱する可能性がある場合に、前記車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する方向に第1ヨーモーメントを付与する第1制動力を発生するように前記制動装置を制御する車線逸脱抑制制御(上述の“車線逸脱防止制御”に相当)と、(ii)操舵角及び車速に基づいて推定される推定ヨーレートと、前記車両に発生する実ヨーレートとの乖離量が第1閾値以上となったことを条件に、車両挙動が安定する方向に第2ヨーモーメントを付与する第2制動力を発生するように前記制動装置を制御する車両挙動安定制御と、を実施可能な車両制御装置であって、前記乖離量が、前記第1閾値より小さい第2閾値以上である場合、前記車線逸脱抑制制御の実施を抑制する制御手段を備える。
【0007】
当該車両制御装置では、車線逸脱抑制制御が実施されることに起因して、車両挙動安定制御が実施される可能性がある場合(即ち、推定ヨーレートと実ヨーレートとの乖離量が第2閾値以上である場合)は、車線逸脱抑制制御の実施が抑制される。このため、当該車両制御装置によれば、車線逸脱抑制制御に起因する車両挙動安定制御の作動を抑制することができる。加えて、乖離量が第2閾値未満である場合には、車線逸脱抑制制御が実施可能であるので、当該車両制御装置により、車両の走行車線からの逸脱が抑制される。
【0008】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る車線逸脱抑制動作を示すフローチャートである。
図3】実施形態に係るブレーキLDA抑制判定処理を示すフローチャートである。
図4】乖離量とブレーキLDAに係る制御量の制限量との関係の一例を示す図である。
図5】実施形態に係るブレーキLDAが実施される場合のタイミングチャートの一例である。
図6】比較例に係るブレーキLDAが実施される場合のタイミングチャートの一例である。
図7】変形例に係るブレーキLDA抑制判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車両制御装置に係る実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の車両制御装置が搭載された車両1を用いて説明を進める。
【0011】
(車両の構成)
車両1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、車両1は、ブレーキペダル111と、マスタシリンダ112と、ブレーキアクチュエータ13と、左前輪121FLに配設されたホイールシリンダ122FLと、左後輪121RLに配設されたホイールシリンダ122FRと、右前輪121FRに配設されたホイールシリンダ122RLと、右後輪121RRに配設されたホイールシリンダ122RRと、ブレーキパイプ113FL、113RL、113FR及び113RRと、を備えている。
【0013】
車両1は、更に、ブレーキ制御部14と、車速センサ151と、車輪速センサ152と、操舵角センサ153と、ヨーレートセンサ154と、加速度センサ155と、カメラ156と、B−LDA ECU(Brake−Lane Departure Alart Electronic Control Unit)16と、VSC(Vehicle Stability Control) ECU17と、ディスプレイ18と、を備えている。
【0014】
マスタシリンダ112は、ブレーキペダル111の踏み込み量に応じて、マスタシリンダ112内のブレーキフルード(或いは、任意の流体)の圧力を調整する。マスタシリンダ112内のブレーキフルードの圧力は、ブレーキパイプ113FL、113RL、113FR及び113RRを夫々介してホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達される。この結果、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達されるブレーキフルードの圧力に応じた制動力が、夫々、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRに付与される。
【0015】
ブレーキアクチュエータ13は、ブレーキ制御部14の制御下で、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々に伝達されるブレーキフルードの圧力を調整可能である。従って、ブレーキアクチュエータ13は、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を調整可能である。
【0016】
B−LDA ECU16は、現在走行している走行車線からの車両1の逸脱を抑制するための車線逸脱抑制制御を行う。つまり、B−LDA ECU16は、所謂LDA又はLDP(Lane Departure Prevention)を実現するための制御装置として機能する。B−LDA ECU16は、車線逸脱抑制制御を行うために、その内部に論理的に実現される処理ブロックとして又は物理的に実現される処理回路として、データ取得部161及びLDA制御部162を備えている。尚、車線逸脱抑制制御の詳細については後述する。
【0017】
VSC ECU17は、例えば車両1の旋回時の横滑り等に起因して車両1の挙動が不安定になることを抑制するための車両挙動安定制御を行う。VSC ECU17は、車両挙動安定制御を行うために、その内部に論理的に実現される処理ブロックとして又は物理的に実現される処理回路として、データ取得部171及びVSC制御部172を備えている。
【0018】
VSC ECU17のVSC制御部172は、データ取得部171が取得した検出データに基づく車両1の状態から推定されるヨーレートである推定ヨーレートと、車両1に実際に発生するヨーレートである実ヨーレートとの乖離量を求める。具体的には、VSC制御部172は、例えば車速センサ151の検出結果に基づく車速、及び操舵角センサ153の検出結果に基づく操舵角に基づいて、上記推定ヨーレートを算出する。VSC制御部172は、例えばヨーレートセンサ154の検出結果に基づいて、上記実ヨーレートを求める。そして、VSC制御部172は、推定ヨーレートと実ヨーレートとの差分を計算することにより乖離量を求める。
【0019】
VSC制御部172は、求められた乖離量が、所定のVSC閾値(本発明に係る“第1閾値”の一具体例に相当)以上であることを条件に、車両1の挙動が安定する方向にヨーモーメントを付与するため、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに制動力を付与するように、ブレーキ制御部14を介して、ブレーキアクチュエータ13を制御する。
【0020】
尚、車両挙動安定制御については、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0021】
(車線逸脱抑制動作)
次に、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作について説明する。
【0022】
1.車線逸脱抑制動作の概要
LDA ECU16のLDA制御部162は、データ取得部161が取得した検出データ(即ち、車速センサ151、車輪速センサ152、操舵角センサ153、ヨーレートセンサ154及び加速度センサ155各々の検出結果を示すデータ)と、カメラ156により撮像された画像データとに基づいて、車両1が、現在走行している走行車線から逸脱する可能性があるか否かを判定する。
【0023】
LDA制御部162は、逸脱の可能性がある場合に、車両1の逸脱を抑制可能な抑制ヨーモーメントを車両1に付与するため、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに制動力を付与する。つまり、本実施形態では、左右の制動力差を用いて車両1の走行車線からの逸脱が抑制される。以降、本実施形態に係る「車線逸脱抑制」を、適宜“ブレーキLDA”と称する。
【0024】
ここで、「車両1の逸脱を抑制」とは、車両1に抑制ヨーモーメントを付与しない場合の走行車線からの逸脱距離と比較して、車両1に抑制ヨーモーメントを付与する場合の走行車線からの逸脱距離を小さくすることを意味する。
【0025】
2.ブレーキLDAに起因する問題
ブレーキLDAでは、上述の如く、左右の制動力差を用いて車両1の走行車線からの逸脱が抑制される。つまり、ブレーキLDAでは、車両1の操舵角が維持された状態で、左右の制動力差に起因して付与される抑制ヨーモーメントにより、車両1の姿勢が変更される。
【0026】
このため、ブレーキLDAが実施されると、車速及び操舵角から推定される推定ヨーレートは殆ど又は全く変化しない一方で、車両1の実ヨーレートは増加する。つまり、ブレーキLDAが実施されると、推定ヨーレートと実ヨーレートとの乖離量が増加する。この結果、ブレーキLDAの実施に起因して、車両挙動安定制御が実施され易くなる。
【0027】
そこで本実施形態では、車両挙動安定制御の実施を抑制するために、ブレーキLDAと車両挙動安定制御とが調停される。
【0028】
3.車線逸脱抑制動作の詳細
次に、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作の詳細について、図2乃至図4を参照して説明する。
【0029】
図2において、先ず、データ取得部161は、車速センサ151、車輪速センサ152、操舵角センサ153、ヨーレートセンサ154及び加速度センサ155各々の検出結果を示す検出データ、並びにカメラ156が撮像した画像を示す画像データを取得する(ステップS101)。
【0030】
LDA制御部162は、ステップS101の処理において取得された画像データを解析することで、車両1が現在走行している走行車線の車線端(本実施形態では、車線端の一例として“白線”を挙げる)を、カメラ156が撮像した画像内で特定する(ステップS102)。
【0031】
LDA制御部162は、ステップS102の処理において特定された白線に基づいて、車両1が現在走行している走行車線が直線路であるかカーブ路であるかを判定し、カーブ路であると判定された場合は、走行車線の曲率半径を算出する(ステップS103)。尚、走行車線の曲率半径は、実質的には、白線の曲率半径と等価である。このため、LDA制御部162は、ステップS102の処理において特定された白線の曲率半径を算出すると共に、当該算出した曲率半径を、走行車線の曲率半径として取り扱ってよい。
【0032】
LDA制御部162は、更に、ステップS102の処理において特定された白線に基づいて、車両1の現在の横位置、横速度及び逸脱角度を算出する(ステップS104)。ここで、「横位置」は、走行車線が延伸する方向(車線延伸方向)に直交する車線幅方向に沿った、走行車線の中央から車両1までの距離(典型的には、車両1の中央までの距離)を意味する。「横速度」は、車線幅方向に沿った車両1の速度を意味する。「逸脱角度」は、走行車線と車両1の前後方向軸とがなす角度(即ち、白線と車両1の前後方向軸とがなす角度)を意味する。
【0033】
LDA制御部162は、更に、許容逸脱距離を設定する(ステップS105)。許容逸脱距離は、走行車線から車両1が逸脱する場合において走行車線からの車両1の逸脱距離(即ち、白線からの車両1の逸脱距離)の許容最大値を示す。このため、車線逸脱抑制動作は、走行車線からの車両1の逸脱距離が許容逸脱距離内に収まるように、車両1に対して抑制ヨーモーメントを付与する動作となる。
【0034】
許容逸脱距離は、例えば次のように設定されてよい。即ち、LDA制御部162は、法規等の要請(例えば、NCAP:New Car Assessment Programmeの要請)を満たすという観点から許容逸脱距離を設定してよい。このような観点から設定された許容逸脱距離は、デフォルトの許容逸脱距離として用いられてよい。尚、許容逸脱距離の設定方法は、これに限定されない。
【0035】
LDA制御部162は、上記ステップS105の処理と並行して、ブレーキLDA抑制判定(即ち、ブレーキLDAと車両挙動安定制御との調停)を実施する。ここで、ブレーキLDA抑制判定について、図3のフローチャートを参照して説明を加える。
【0036】
図3において、LDA制御部162は、上記ステップS101の処理においてデータ取得部161が取得した検出データを取得する(ステップS201)。次に、LDA制御部162は、例えばヨーレートセンサ154の検出結果に基づいて、車両1の実ヨーレートを車両1に係る実旋回状態として取得する(ステップS202)。
【0037】
LDA制御部162は、上記ステップS202の処理と並行して又は相前後して、例えば車速センサ151の検出結果に基づく車速、及び操舵角センサ153の検出結果に基づく操舵角から推定される推定ヨーレートを車両1に係る推定旋回状態として取得する(ステップS203)。
【0038】
その後、LDA制御部162は、実ヨーレートと推定ヨーレートとの乖離量を算出する(ステップS204)。次に、LDA制御部162は、乖離量が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。この判定において、乖離量が所定量以上であると判定された場合(ステップS205:Yes)、LDA制御部162は、ブレーキLDAを抑制する(ステップS206)。
【0039】
他方、ステップS205の判定において、乖離量が所定量未満であると判定された場合(ステップS205:No)、LDA制御部162は、ブレーキLDAに係る制御量の制限量(例えば、制御量の上限値)を演算する(ステップS207)。尚、「ブレーキLDAに係る制御量の制限量」を以降、適宜「LDA制限量」と称する。具体的には、LDA制御部162は、図4に示すように、乖離量が大きくなるほどLDA制限量が小さくなるような演算式を用いて、LDA制限量を演算する。次に、LDA制御部162は、LDA制限量に応じた逸脱判定条件を演算する(ステップS208)。
【0040】
尚、実施形態に係る「所定値」は、本発明に係る「第2閾値」の一例である。「所定値」は、図4に示すように、VSC閾値よりも小さい値である。「所定値」は、ブレーキLDAを抑制するか否かを決定する値であり、予め固定値として又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変値として設定される。「所定値」は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えばブレーキLDAにより車両1に付与可能な抑制ヨーモーメントの最大値を求め、該抑制ヨーモーメントの最大値が車両1に付与されることによるヨーレートの変化量を求め、VSC閾値から該変化量を引いた値として設定すればよい。
【0041】
再び図2に戻り、その後、LDA制御部162は、車両1が、現在走行している走行車線から逸脱する可能性があるか否かを判定する(ステップS106)。具体的には例えば、LDA制御部162は、車両1の現在の速度、横位置及び横速度等に基づいて、車両1の将来の(例えば、数秒〜十数秒後の)位置を算出する。そして、LDA制御部162は、将来の位置において、車両1が白線を跨ぐ又は踏むか否かを判定する。将来の位置において、車両1が白線を跨ぐ又は踏むと判定された場合、LDA制御部162は、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定する。
【0042】
ステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性がないと判定された場合(ステップS106:No)、図2に示す車線逸脱抑制動作は終了される。その後、LDA制御部162は、所定期間(例えば、数ミリ秒から数十ミリ秒)が経過した後に再度図2に示す車線逸脱抑制動作を開始する。つまり、図2に示す車線逸脱抑制動作は、所定期間に応じた周期で繰り返し行われる。
【0043】
他方で、ステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定された場合(ステップS106:Yes)、LDA制御部162は、ブレーキLDAに係る制御フラグをオンにすると共に、車両1が走行車線から逸脱する可能性がある旨を、車両1の運転者に対して警告する(ステップS107)。具体的には、LDA制御部162は、例えば車両1が走行車線から逸脱する可能性があることを示す画像を表示するように、ディスプレイ18を制御する、及び/又は、車両1が走行車線から逸脱する可能性があることをステアリングホイール(図示せず)を振動させる。
【0044】
車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定された場合、上記ステップS107の処理と並行して又は相前後して、LDA制御部162は、ブレーキLDAが抑制されているか否かを判定する(ステップS108)。この判定において、ブレーキLDAが抑制されていると判定された場合(ステップS108:Yes)、図2に示す車線逸脱抑制動作は終了される。その後、LDA制御部162は、所定期間が経過した後に再度図2に示す車線逸脱抑制動作を開始する。
【0045】
他方、ステップS108の判定において、ブレーキLDAが抑制されていないと判定された場合(ステップS108:No)、LDA制御部162は、走行車線の中央から離れるように走行している車両1が、走行車線の中央に向かうように走行することになる新たな走行軌跡を算出する。このとき、算出される走行軌跡は、ステップS105の処理において設定された許容逸脱距離の制約、及びステップS207の処理において算出されたLDA制限量を満たす。
【0046】
次に、LDA制御部162は、車両1の走行車線からの逸脱を回避するために(即ち、車両1を上記算出された走行軌跡に沿って走行させるために)、該車両1に発生させるべきヨーレートを目標ヨーレートとして算出する(ステップS109)。続いて、LDA制御部162は、車両1に目標ヨーレートを発生させるために、車両1に付与すべきヨーモーメントを目標ヨーモーメントとして算出する(ステップS110)。
【0047】
ここで、LDA制御部162は、例えば所定の変換関数に基づいて目標ヨーレートを目標ヨーモーメントに変換することで、目標ヨーモーメントを算出してもよい。尚、目標ヨーモーメントは、上述した抑制ヨーモーメントと等価である。
【0048】
続いて、LDA制御部162は、目標ヨーモーメントを車両1に付与することが可能な制動力を算出する。このとき、LDA制御部162は、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を個別に算出する。
【0049】
次に、ブレーキ制御部14は、LDA制御部162により算出された制動力を発生させるために必要な油圧を指定する圧力指令値を算出する(ステップS111)。このとき、ブレーキ制御部14は、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々の内部での油圧を指定する圧力指令値を個別に算出する。
【0050】
続いて、ブレーキ制御部14は、ステップS111の処理において算出された圧力指令値に基づいて、ブレーキアクチュエータ13を制御する。この結果、圧力指令値に応じた制動力が、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに付与される(ステップS112)。
【0051】
(技術的効果)
1.ブレーキLDAが抑制される場合
本実施形態では、車両1の操舵角及び車速から推定される推定ヨーレートと、車両1に実際に発生する実ヨーレートとの乖離量が所定量以上である場合、ブレーキLDAが抑制される。この場合、ブレーキLDAに起因して、推定ヨーレートと実ヨーレートとの乖離量が増加することはない。従って、ブレーキLDA及び車両挙動安定制御が同時期に実施されることがないので、車両挙動安定制御が実施されることを抑制することができる。
【0052】
2.ブレーキLDAが許可される場合
ブレーキLDAが許可される場合の技術的効果について、図5及び図6を参照して具体的に説明する。図5は、実施形態に係るブレーキLDAが実施される場合のタイミングチャートの一例である。図6は、比較例に係るブレーキLDAが実施される場合のタイミングチャートの一例である。
【0053】
図5の時刻t1において、車両1が、例えば横風等によって横滑りを始めたとする。この結果、操舵角は変化していないにもかかわらず、車両1にヨーレートが発生したことに起因して実旋回量が増加する。このとき、推定旋回量(即ち、操舵角及び車速から推定される推定ヨーレート)と実旋回量との乖離量も増加するので、上記ステップS207の処理により、LDA制限量が低下する(図5における破線参照)。
【0054】
図5では、便宜上、時刻t2以降、横滑りによる実旋回量が一定であるとする。図5の時刻t3において、上記ステップS106の判定において、車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定され、ブレーキLDAに係る制御フラグがオンにされたとする。図5の時刻t3から時刻t4までの期間、ブレーキLDAが実施されることにより、ブレーキLDAに係る制御量が増加する。
【0055】
図5に示すように、ブレーキLDAに係る制御量は、LDA制限量以下にされるので、ブレーキLDAに起因する実旋回量の増加が抑制される。このため、ブレーキLDAが実施される期間(即ち、時刻t3〜時刻t4)に、乖離量がVSC閾値以上となることが防止される。つまり、本実施形態では、ブレーキLDAが許可される場合であっても、乖離量に応じてLDA制限量が設定されるので、ブレーキLDA及び車両挙動安定制御が同時期に実施されることはない。従って、この場合も、車両挙動安定制御の実施を抑制することができる。
【0056】
図6に示す比較例でも、時刻t11において、車両が、例えば横風等によって横滑りを始めたとする。そして、時刻t13において、ブレーキLDAに係る制御フラグがオンにされたとする。
【0057】
比較例では、ブレーキLDAが実施される前の乖離量にかかわらず、LDA制限量は一定である。
図6の時刻t13から時刻t14までの期間、ブレーキLDAが実施されることにより、ブレーキLDAに係る制御量が増加する。該制御量はLDA制限量以下ではあるが、LDA制限量が比較的大きいので、該制御量も比較的大きくなる。この結果、ブレーキLDAが実施される期間(即ち、時刻t13〜時刻t14)に、実旋回量が比較的大きくなり、乖離量がVSC閾値より大きくなる可能性がある。すると、ブレーキLDA及び車両挙動安定制御が同時期に実施されることとなる。
【0058】
実施形態に係る「LDA制御部162」は、本発明に係る「制御手段」の一例である。実施形態に係る「B−LDA ECU16」及び「VSC ECU17」は、本発明に係る「車両制御装置」の一例である。
【0059】
<変形例>
上述した実施形態では、乖離量が所定値未満である場合に、乖離量に応じてLDA制限量が設定される(図3のフローチャート参照)。しかしながら、図7のフローチャートに示すように、乖離量が所定値以上であるか否かに応じて、単純に、ブレーキLDAが抑制されるか否かが決定されてもよい。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、13…ブレーキアクチュエータ、14…ブレーキ制御部、16…B−LDA
ECU、17…VSC ECU、111…ブレーキペダル、112…マスタシリンダ、122FL、122RL、122FR、122RR…ホイールシリンダ、161、171…データ取得部、162…LDA制御部、172…VSC制御部
図1
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図3
図4
図5
図6
図7