特許第6863111号(P6863111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863111
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】転がり軸受用寿命試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20210412BHJP
【FI】
   G01M13/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-117802(P2017-117802)
(22)【出願日】2017年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-2797(P2019-2797A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】合田 友之
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 敬也
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−9597(JP,A)
【文献】 特開2005−172093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の内輪と、環状の外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成された環状空間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた被試験体としての転がり軸受に潤滑油を供給して試験を行う転がり軸受用寿命試験装置であって、
装置本体と、
前記装置本体の内側に設置され前記潤滑油を貯留する貯留部と、
前記装置本体の内側で軸を水平方向に向けて配置され、前記内輪が外嵌固定される主軸と、
前記装置本体に回転不能に取り付けられ、前記外輪が内嵌固定される軸受支持部材と、
前記転がり軸受の軸方向の一側で、前記貯留部に貯留された前記潤滑油を前記転がり軸受の上方に搬送する油搬送部と、
前記転がり軸受の軸方向の他側で、前記転がり軸受を覆うカバー部材と、を備え、
前記軸受支持部材には、前記転がり軸受の上方で、前記油搬送部に向けて開口するとともに、前記カバー部材の内側に開口する油通路が形成されていることを特徴とする転がり軸受用寿命試験装置。
【請求項2】
前記油搬送部は、前記軸受支持部材に前記主軸と同軸に形成され、円筒形状の内周を有する筒部と、前記筒部の内側で前記主軸とともに回転するロータとを備えており、
前記ロータの外周には、径方向に突出する複数の凸部が形成されており、周方向で隣り合う一対の前記凸部の間に、前記貯留部の前記潤滑油を捕捉して前記転がり軸受の上方に搬送する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受用寿命試験装置。
【請求項3】
前記油通路は、少なくとも一部が、前記筒部の内周に開口し、前記凹部と径方向に連通していることを特徴とする請求項2に記載する転がり軸受用寿命試験装置。
【請求項4】
前記軸受支持部材が、前記装置本体に対して前記転がり軸受の軸方向に変位可能であり、
前記転がり軸受の軸方向の前記他側に設置され、前記軸受支持部材に、前記転がり軸受の軸方向の荷重を負荷する負荷装置が設置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載する転がり軸受用寿命試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を混入した潤滑油中における転がり寿命を試験する転がり軸受用寿命試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受では、その品質を保証するために、実際に使用される状態を模擬した試験条件で、寿命試験が行われる。
例えば、車両のリアデファレンシャルでは、転がり軸受を潤滑するために、ギアの潤滑に使用される潤滑油が供給されている。長期にわたって使用された潤滑油中には、ギアの摩耗粉などが混入するので、この摩耗粉が転がり軸受の軌道面に浸入することによって、転がり軸受の寿命が低下する恐れがある。
そこで、リアデファレンシャルのように、異物を生じる環境下で使用される転がり軸受については、あらかじめ潤滑油中に鉄粉などを混入した条件で、寿命試験が行われている。
【0003】
このように、異物を混入した潤滑油を使用する寿命試験方法として、あらかじめ鉄粉などを混入した潤滑油を容器に貯留し、転がり軸受の一部が当該潤滑油に浸漬された状態で寿命試験を行う方法(例えば、特許文献1の図4)や、油圧ポンプを使用して、異物が混入した潤滑油を強制的に転がり軸受に供給して寿命試験を行う方法(例えば、非特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−166017号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】浅井康夫、大島宏之、坂元和樹著 1997年秋季自動車技術会講演会論文集「円すいころ軸受における異物油中での寿命と貫通油量」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、被試験体として円すいころ軸受を使用したときには、特許文献1に記載された従来の潤滑油供給方式では、外輪と内輪との間の潤滑油は、円すいころ軸受自体のポンプ作用によって流動するにすぎず、その流量を制御することができない。このため、環状空間に流入する潤滑油量が安定しないので、軌道面に浸入する異物の量のばらつきが大きくなり、精度のよい寿命試験を行うことが困難であった。
【0007】
これに対し、非特許文献1に記載された方法では、潤滑油が、ポンプによって送り出されるので、その流量を制御しつつ、転がり軸受に強制的に供給することができる。これにより、環状空間に流入する潤滑油量が安定するので、より精度の高い寿命試験をすることができる。
しかし、ポンプを試験装置の外部に設置するため、潤滑油が流動する配管が長くなり、配管の途中で異物が堆積する恐れがある。また、ポンプ自体が異物によって摩耗し、故障する場合がある。このため、試験装置のメンテナンスに大きな工数が必要となるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、異物を混入した潤滑油を用いて行う転がり軸受の寿命試験において、メンテナンスなどの取扱いが容易で、軌道面に浸入する異物の量のばらつきを低減することによって、精度の高い寿命試験を行うことができる試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、環状の内輪と、環状の外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成された環状空間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた被試験体としての転がり軸受に潤滑油を供給して試験を行う転がり軸受用寿命試験装置であって、装置本体と、前記装置本体の内側に設置され前記潤滑油を貯留する貯留部と、前記装置本体の内側で軸を水平方向に向けて配置され、前記内輪が外嵌固定される主軸と、前記装置本体に回転不能に取り付けられ、前記外輪が内嵌固定される軸受支持部材と、前記転がり軸受の軸方向の一側で、前記貯留部に貯留された前記潤滑油を前記転がり軸受の上方に搬送する油搬送部と、前記転がり軸受の軸方向の他側で、前記転がり軸受を覆うカバー部材と、を備え、前記軸受支持部材には、前記転がり軸受の上方で、前記油搬送部に向けて開口するとともに、前記カバー部材の内側に開口する油通路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、異物を混入した潤滑油を用いて行う転がり軸受の寿命試験において、メンテナンスなどの取扱いが容易で、軌道面に浸入する異物の量のばらつきを低減することによって、精度の高い寿命試験を行うことができる試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】転がり軸受用寿命試験装置の軸方向断面図
図2図1の要部拡大図である。
図3図1におけるA−Aの位置における軸直角方向の断面図である。
図4】ロータで搬送される潤滑油の動きを説明する説明図である。
図5図1におけるDの向きに見た模式図である。
図6】油通路の他の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)である転がり軸受用寿命試験装置20(以下、単に「試験装置」という)について図を用いて説明する。
図1は、試験装置20の軸方向断面図である。図1では、被試験体である転がり軸受としての円すいころ軸受について、寿命試験を行っている状態を示している。図2は、図1において、円すいころ軸受が組み込まれている部分を拡大した要部拡大図である。試験装置20では、二つの円すいころ軸受10,10が、同時に寿命試験に供されており、各円すいころ軸受10,10は、互いに同一の形態である。なお、以下の説明では、試験装置20に組み込まれたときの、円すいころ軸受10の軸mの方向を軸方向といい、軸mと直交する方向を径方向、軸mの周りを周回する方向を周方向という。
【0013】
(円すいころ軸受)
図2を参照して説明する。円すいころ軸受10は、外輪11と、内輪12と、複数の円すいころ13(転動体)と、保持器14とを備えている。
外輪11は、環状で、内周に外側軌道面15を有している。外側軌道面15は、円錐面で形成されている。
内輪12は、環状で、外周に内側軌道面16を有している。内側軌道面16は、円錐面で形成されている。内側軌道面16の小径側には小鍔17が形成されており、大径側には大鍔18が形成されている。大鍔18の内側軌道面16側の側面は、円すいころ13が転動するときの案内面となっている。
円すいころ13は、外側軌道面15と内側軌道面16との間に転動自在に組み込まれている。各円すいころ13は、保持器14によって周方向に等しい間隔で保持されている。
【0014】
円すいころ軸受10では、外輪11と内輪12との間には軸方向の両側に開口する環状空間K1が形成されている。また、各軌道面15,16が互いに向き合った状態で組み合わされており、円すいころ軸受10は、軸方向の荷重を支持することができる。
なお、円すいころ軸受10が回転している状態で環状空間K1に潤滑油が供給されると、潤滑油は遠心力によって径方向外方に飛散し、外側軌道面15に沿って流れる。これにより、回転中の円すいころ軸受10では、外輪11の背面側(外側軌道面15の小径側である)から正面側(外側軌道面15の大径側である)に向けて、潤滑油が、環状空間K1を流れるようになる。この現象を、「ポンプ作用」という。以下の説明において、円すいころ軸受10の外輪11の背面側を「流入側」といい、その反対側を「流出側」という場合がある。
【0015】
(試験装置)
図1を参照する。試験装置20は、円すいころ軸受10を組付ける装置本体22と、円すいころ軸受10を回転させる主軸24と、円すいころ軸受10に潤滑油を供給する油供給部と、円すいころ軸受10に軸方向の荷重を負荷する負荷装置28を備えている。
【0016】
装置本体22は、鋼製で中空の箱形状である。装置本体22は、所定の厚さを有する長方形の底板22aと、底板22aの外周に沿って底板22aと直角に組み合わされた4枚の側壁22bとを備えている。各側壁22bと底板22a、及び、側壁22bと側壁22bとは、互いに溶接接合等によって液密につなぎ合わされている。こうして、装置本体22の内側に、試験に供される潤滑油が貯留される貯留部30が形成されている。
【0017】
図1では、4枚の側壁22bのうち、互いに向き合って配置されている一対の側壁22b,22bを示している。一対の側壁22b,22bには、それぞれ板厚方向に貫通する円筒形状の孔32が設けられている。各孔32の中心軸線は、水平方向に向けて、互いに同軸に形成されている。
【0018】
各孔32の内側には、それぞれ軸受支持部材としてのハウジング34が組み込まれている。両方のハウジング34は、互いに同一形状であり、その外周は、孔32の内径寸法よりわずかに小径の円筒形状である。ハウジング34の外周と孔32の内周との嵌め合い部には、図示しない滑りキーが設けられており、ハウジング34は、軸mの周りの回転が防止されるとともに、装置本体22に対して軸方向に変位することができる。
【0019】
ハウジング34の内周には、互いに内径寸法が異なる第1内周面35(筒部)、軸受嵌合面36、第2内周面37が形成されている(図2参照)。各面35,36,37は、それぞれ円筒形状で、互いに同軸に形成されている。第1内周面35の内径寸法は、軸受嵌合面36の内径寸法より大径であり、第2内周面37の内径寸法は軸受嵌合面36の内径寸法より小径である。第1内周面35と軸受嵌合面36とは第1側面38でつながっており、軸受嵌合面36と第2内周面37とは第2側面39でつながっている。第1側面38と第2側面39は、それぞれ軸と直交する向きに形成されている。
外輪11の外周は、軸受嵌合面36に締りばめの状態で嵌め合わされている。外輪11の背面側の端面は、第2側面39と軸方向で当接している。
【0020】
主軸24は、段付きの円筒形状であって、軸方向のほぼ中央に本体部41が形成されている。その軸方向両側に、それぞれ本体部41より小径の軸部42が形成されている。図1の左側に形成された軸部42の軸端には、更に同軸に延在する入力軸43が一体に形成されている。入力軸43は、図示しないモータ等の駆動装置に連結されている。
【0021】
各軸部42には、それぞれ軸方向の両側からスリンガ45及びロータ47が組み付けられた後、被試験体である円すいころ軸受10が組み付けられている。各円すいころ軸受10は、外輪11の正面側をロータ47の側に向けて、組み付けられている。その後、ナット62を締め付けることによって、スリンガ45とロータ47と円すいころ軸受10の内輪12とが、同時に固定されている。
【0022】
こうして、主軸24は、軸方向に離れた2カ所で円すいころ軸受10によって回転自在に支持されており、その軸を水平方向に向けて装置本体22の内側に配置されている。スリンガ45及びロータ47の詳細については後述する。
【0023】
(油供給部)
次に、図を参照しつつ、油供給部について説明する。
油供給部は、貯留部30に貯留された潤滑油を、円すいころ軸受10に、供給している。当該潤滑油には、100μm程度の大きさの鉄粉が、異物として混入されている。図示を省略するが、貯留部30では、鉄粉が沈殿しないように、例えば、空気を吹き込む等によって潤滑油が常時撹拌されている。
本試験装置20では、各円すいころ軸受10,10に対して、それぞれ個別に油供給部が設けられている。各油供給部の形態は互いに同様であるので、以下の説明では、図1において右方に取り付けられた円すいころ軸受10の油供給部を例にして説明する。
【0024】
図2に示すように、油供給部は、油搬送部49と、ハウジング34に設けられた円筒孔51(油通路)と、円すいころ軸受10を軸方向で覆うカバー部材53とで構成される。
【0025】
図3は、図1におけるA−Aの位置で矢印の向きに見た断面図である。図2図3によって、油搬送部49について説明する。図3では、貯留部30における潤滑油の油面の位置を二点鎖線で示している。
油搬送部49は、油搬送部49は、ハウジング34に設けられた第1内周面35及び第1側面38と、ロータ47と、スリンガ45とで構成されており、円すいころ軸受10の流入側である軸方向の一方の側(一側)で、円すいころ軸受10に近接して設置されている。
【0026】
ロータ47は、略円板状で、中央に、主軸24の軸部42の外径寸法と同等の大きさの孔が設けられている。ロータ47の軸方向断面は、長方形で、軸方向両側の側面c及び側面dは互いに平行である。軸方向の厚さ(側面cと側面dの間の軸方向の寸法)は、第1内周面35の軸方向長さと同等である。
ロータ47の外周には、径方向外方に突出する複数の羽55(凸部)が、周方向に所定の間隔で形成されている。羽55の軸方向両側の側面は、ロータ47の側面c及び側面dと同一の面で形成されている。
周方向に互に隣り合う羽55と羽55との間には、径方向外方及び軸方向に開口する溝57(凹部)が形成されている。溝57を周方向に画定する面571,572は、互いに平行であり、径方向内方に凸となった円弧面573でつながっている。
各羽55の外周面59は、軸mと同軸の円筒面である。その外径寸法は、第1内周面35の内径寸法よりわずかに小さく、第1内周面35と羽55の外周面59との間には、すきまs1が形成されている。すきまs1の大きさは、概ね0.5mm程度である。
【0027】
スリンガ45は、略円板状で、板厚方向の一方の側には、軸方向に突出したボス部が設けられており、中央に、主軸24の軸部42の外径寸法と同等の大きさの孔が設けられている。ボス部の側の側面e、及び、板厚方向のボス部と反対側の側面fは、互いに平行で、軸mと直交する向きに設けられている。スリンガ45の外径寸法は、ハウジング34の第1内周面35の内径寸法より大径である。
【0028】
スリンガ45は、ボス部を本体部41の段部に当接させて、主軸24の軸部42に嵌め合わされている。その後、ロータ47が、スリンガ45と軸方向に当接するまで、同軸に嵌め合わされている。その後、スペーサ61を介して円すいころ軸受10が組み付けられており、ナット62を締め付けることによって、スリンガ45とロータ47、及び円すいころ軸受10が、主軸24に、同時に固定されている。
【0029】
このように、円すいころ軸受10とロータ47とは、軸方向に互いに近接して組み込まれている。ロータ47と円すいころ軸受10との軸方向の寸法は、スペーサ61の厚さを適宜選択することによって、調整することができる。
本実施形態では、ロータ47とハウジング34の第1側面38との間に、すきまs2が形成されている。すきまs2の大きさは、概ね0.5mm程度である。
また、ロータ47の板厚と第1内周面35の軸方向長さが等しいので、スリンガ45とハウジング34の側面aとの間においても、すきまs2と同等の大きさで、すきまs3が形成されている。
こうして、ロータ47は、ハウジング34の内側で回転することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、第1内周面35がハウジング34と一体に形成されている。しかし、図示を省略するが、ハウジング34の内周に、軸受嵌合面36と第2内周面37のみを形成し、ハウジング34とは切り離された筒部の内周に、第1内周面35が形成されていてもよい。
【0031】
次に、同じく図2図3によって、油通路について説明する。
本実施形態では、油通路は、軸mより鉛直方向の上方で軸方向に設置された5本の円筒孔51で形成されている。円筒孔51は、油搬送部49が設置されている側と反対の側の側面bから、軸方向に延在する向きに形成されており、油搬送部49に向けて開口している。
各円筒孔51の中心軸は、軸mを中心とするピッチ円C上にあり、ピッチ円Cの直径寸法は第1内周面35の内径寸法とほぼ等しい。また、各円筒孔51の軸方向長さLは、側面bから第1側面38までの寸法より長く、ハウジング34の板厚(側面aと側面bの間の軸方向の寸法)より短い。これにより、各円筒孔51は、その中心軸と直交する断面の約半分が第1側面38に開口するとともに、その他の半分は更に軸方向に延在して、第1内周面35に開口している。
【0032】
再び図1を参照する。カバー部材53は、鉄などの金属製で、軸方向の一方に開口する有底の円筒形状である。軸方向の両側に形成された端面は、いずれも円筒部の軸と直交する面となっており、互いに平行である。
カバー部材53は、ハウジング34を挟んでロータ47と反対の側(他側)に設置されており、開口部の側の端面をハウジング34に当接させて、ハウジング34と同軸に組付けられている。カバー部材53は、円すいころ軸受10の流入側を全面にわたって覆っており、カバー部材53と円すいころ軸受10との間には、密閉された空間K2が形成されている。円筒部分の内径寸法は、ハウジング34に形成された円筒孔51より大径となっており、各円筒孔51は、カバー部材53の内側の空間K2に開口している。
【0033】
なお、カバー部材53の外径寸法は、側壁22bの孔32の内径寸法より小径であり、孔32の内側でハウジングと共に軸方向に変位可能である。また、カバー部材53の内側の鉛直方向下方では、内周形状に沿った埋設部材66が挿入されており、潤滑油がカバー部材53の下方に滞留しないようになっている。
【0034】
(負荷装置)
負荷装置28は、装置本体22に固定されており、油圧等によって軸方向に伸縮するロッド68を備えている。ロッド68は、軸mと同軸に設置されており、カバー部材53を介してハウジング34と軸方向に当接している。負荷装置28は、ロッド68が軸方向に伸びることにより、ハウジング34を軸方向に付勢することができる。
円すいころ軸受10の外輪11の背面と、ハウジング34の第2側面39とが、軸方向で当接しているので(図2参照)、ロッド68による軸方向の荷重は、円すいころ軸受10を介して主軸24に伝達される。
【0035】
図1の左側に組み込まれた円すいころ軸受10は、固定板70によって、軸方向に固定されている。固定板70は、図示を省略したボルトなどによって、側壁22bに固定されている。固定板70には、全周にわたって軸方向に突出した環状のガイド部72が形成されている。ガイド部72は、図1の左側に設置されたハウジング34と軸方向に当接している。これにより、ハウジング34が、軸方向に支持されており、固定板70に向けて変位しないようになっている。
【0036】
こうして、負荷装置28によって負荷された軸方向の荷重は、二つの円すいころ軸受10,10を介して、固定板70で支持されている。すなわち、本試験装置20では、二つの円すいころ軸受10,10に対して、同時に軸方向荷重を負荷することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、カバー部材53を介して軸受支持部材を軸方向に付勢しているが、これに限定されない。負荷装置28のロッド68を、カバー部材53より更に大径の円筒形状(図示を省略)として、軸受支持部材を直接付勢してもよい。
【0038】
(寿命試験中の潤滑油の流れ)
次に、図4によって、本試験装置20を使用して、円すいころ軸受10の寿命試験を行うとき潤滑油の流れを説明する。図4は、図1のA−Aの位置における断面を示しており、ロータで搬送される潤滑油の動きを説明する説明図である。
【0039】
試験装置20の貯留部30には、円すいころ軸受10に供給する潤滑油が貯留されている。図4では、潤滑油の油面の位置を、二点鎖線で示している。潤滑油の油面高さは、軸の鉛直方向下方では、ロータ47に形成された羽55の少なくとも一部が浸漬される程度であればよいが、搬送される潤滑油量を多くするために、鉛直方向で最も下方の溝57の全体が浸漬される程度まで注入されることが望ましい。
また、潤滑油の油面高さは、軸受嵌合面36より、下方に設定されている。これにより、貯留部30の潤滑油が、円すいころ軸受10の流出側から直接環状空間K1に流入することがない。
【0040】
本実施形態の油搬送部49では、ハウジング34の鉛直方向下方に、径方向に延在する切り欠き部64が設けられている。図5は、図1における矢印Dの向きから見たときの、ハウジング34の形状を示している。切り欠き部の位置では、ロータ47が、鉛直方向下方の貯留部30に向けて露出している。このため、切り欠き部64の位置にある溝57(図4では溝57aとしている)では、貯留部30の潤滑油が、速やかに流入することができる。
【0041】
主軸24とともにロータ47が回転すると、溝57は、内側に潤滑油が捕捉された状態で周方向に移動し、貯留部30の潤滑油が円すいころ軸受10の上方に搬送される。この移動する過程にある溝57の一例を、図4では、溝57bとしている。なお、スリンガ45は、ロータ47と一体となって回転している。
【0042】
こうして、溝57が、円筒孔51と連通する位置に回転したときには、溝57の中の潤滑油は、円筒孔51に向けて排出される。このときの溝57を、図4では、溝57cとしている。
このとき、ロータ47が回転しているので、溝57の中の潤滑油には、遠心力が作用している。このため、潤滑油が、速やかに円筒孔51に向けて排出される。
本実施形態では、円筒孔51が、羽55の外周面59と径方向のほぼ同等の位置に形成されており、円筒孔51は、各溝57の径方向の最外方に開口している。溝の中の潤滑油は遠心力によって各溝57の径方向の最外方に移動するので、溝57の中の潤滑油の全量が排出される。
特に、本実施形態では、図2に示したように、円筒孔51が、側面bの側から第1側面38を越えて軸方向に延在している。このため、円筒孔51の一部が、溝57の径方向外方に形成されるとともに、第1内周面35に開口している。このため、溝57の中の潤滑油は、遠心力によって径方向に飛散して、直接円筒孔51に向けて排出される。このため、本実施形態では、溝57の中の潤滑油を、更に速やかに円筒孔51に排出することができる。
【0043】
また、本実施形態の油搬送部49では、貯留部30の潤滑油を、円すいころ軸受10の上方に設置した円筒孔51に向けて、効率よく搬送することができる。図2を参照しつつ説明する。
潤滑油が溝57に捕捉されて、円すいころ軸受10の上方に移動する過程では、溝57の容積は一定であり、変化しない。このため、溝57の中に捕捉された潤滑油が、ロータ47と第1側面38とのすきまs2や、羽55の外周面59と第1内周面35とのすきまs1に向けて、大きな圧力で押し出されることがない。したがって、これらのすきまに、鉄粉等の異物がかみ込むのを抑制できるので、ハウジング34やロータ47の摩耗を低減することができる。
【0044】
また、溝底を形成する円弧面573は、軸受嵌合面36より径方向外方に形成されている。このため、円すいころ軸受10の流出側の空間K3と溝57との間に、すきまs2が形成されている。すきまs2は極めて小さいので、溝57から円すいころ軸受10に向けて潤滑油が流れるのを抑制することができる。
また、周方向に隣り合う溝57は、羽の側面(すなわちロータの側面cである)と第1側面38との間のすきまs2によって仕切られるとともに、第1内周面35と羽55の外周面59とのすきまs1によって仕切られている。すきまs1及びすきまs2は極めて小さいので、一の溝57から隣接する他の溝57に向けて潤滑油が流れるのを抑制することができる。
更に、スリンガ45の側面fとハウジング34の側面aとの間には、すきまs3が形成されている。すきまs3は極めて小さいので、溝57からハウジング34の外部に向けて潤滑油が流れるのを抑制することができる。
【0045】
こうして、油搬送部49では、各溝57の中に捕捉された潤滑油の漏れ出しを抑制して、貯留部30の潤滑油を、円すいころ軸受10の上方に設置した円筒孔51に向けて、効率よく搬送することができる。
【0046】
同じく図2によって、潤滑油の流れを説明する。溝57から円筒孔51に排出された潤滑油は、カバー部材53の内側の空間K2に向けて流れる。カバー部材53の内側では、潤滑油は、鉛直方向下方に落下し、円すいころ軸受10の流入側に到達する。先にも述べたように、回転中の円すいころ軸受10では、潤滑油が、環状空間K1を貫通して外輪11の背面側(流入側)から正面側(流出側)に向けて流れる。このため、空間K2の潤滑油は、環状空間K1を貫通して、円すいころ軸受10の流出側とロータ47とで囲まれた空間K3に向けて流れる。
このとき、カバー部材53は、円すいころ軸受10の全面を覆っている。したがって、円筒孔51から空間K2に流入した潤滑油は、外部に流出することがなく、その全量が、環状空間K1を貫通して流れる。
【0047】
ハウジング34には、切り欠き部64が形成されており、円すいころ軸受10の流出側に形成された空間K3は、鉛直方向下方に向けて開口している。これにより、環状空間K1を貫通した潤滑油は、切り欠き部64を通って、貯留部30に還流している。
【0048】
こうして、油搬送部49で搬送された潤滑油の全量が、円すいころ軸受10の環状空間K1を貫通して流れる。したがって、本試験装置20では、円すいころ軸受10に供給される潤滑油量のばらつきを抑えて、所定の量の潤滑油を安定して供給することができる。
【0049】
図1を参照する。図1の左側に組み込まれた円すいころ軸受10においても、同様にして、貯留部30の潤滑油が供給されている。
図1の左側の円すいころ軸受10においては、固定板70は、円すいころ軸受10の流入側の全面を覆っており、カバー部材53と同様の作用効果を有している。ガイド部72の内径寸法は、図1の左側のハウジング34に形成された円筒孔51より大径となっており、円筒孔51は、固定板70と円すいころ軸受10とで囲まれた空間K4に向けて開口している。
また、入力軸43と固定板70との間には、オイルシールなどの密封部材74が組み込まれており、空間K4は密閉されている。このため、円筒孔51から空間K4に流入した潤滑油の全量が、図1の左側の円すいころ軸受10を貫通して流れる。
こうして、図の左側の円すいころ軸受10においても、供給される潤滑油量のばらつきを抑えて、所定の量の潤滑油を安定して供給することができる。
【0050】
上記の説明によって理解できるように、本実施形態の油搬送部49では、溝57で潤滑油を捕捉し、円すいころ軸受10の上方に設置した円筒孔51に向けて搬送している。この搬送時に、溝57の容積が変化しないので、捕捉された潤滑油に高い圧力が作用しない。この結果、溝57から潤滑油が漏れ出すのを抑制して、貯留部30の潤滑油を効率よく搬送できるとともに、ハウジング34やロータ47の摩耗を低減することができる。
【0051】
更に、本実施形態では、油搬送部49が、円すいころ軸受10と近接して配置されるとともに、負荷装置28が、円すいころ軸受10を挟んで油搬送部49と反対の位置に設置されている。これにより、潤滑油の油通路である円筒孔51の長さを短くすることができる。円筒孔51の長さは、円すいころ軸受10の幅寸法と同等か、もしくはこれよりわずかに長くなるに過ぎない。このため、潤滑油の流路における異物の堆積等の不具合を回避できる。また、円筒孔51の長さを短くできるので、試験装置20を小型化できるという利点がある。
仮に、油搬送部49と負荷装置28とが、円すいころ軸受10に対して同一の側に設置されていると仮定した場合には、カバー部材53の内側に潤滑油を供給するための配管等を設置する必要がある。これらの配管は、流路が長くならざるを得ず、配管の途中における異物の堆積等の不具合を回避するために、大きな工数を必要とする。
これに対して、本実施形態ではかかる不具合を抑制できる。
【0052】
更に、本実施形態では、溝57で搬送された潤滑油が、遠心力によって円筒孔51に吐出される。このため、円筒孔51における潤滑油の流速が早く、異物の堆積を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、油搬送部49で搬送された潤滑油の全量が、円すいころ軸受10の環状空間K1を貫通する。このため、円すいころ軸受10に供給される潤滑油量を安定化することができ、軌道面に浸入する異物の量のばらつきを低減することができる。
【0054】
こうして、本実施形態の試験装置20では、異物を混入した潤滑油を用いて円すいころ軸受10の寿命試験を行うにあたり、円すいころ軸受10に供給される潤滑油量を安定化し、各軌道面15,16に浸入する異物の量のばらつきを低減することができるので、精度の高い寿命試験を行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、円筒孔51は、側面bから軸方向に設けた5個の円筒孔51で形成されているが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、周方向につながった長孔76であってもよい。これによって、溝57によって搬送された潤滑油を更に円滑に空間K4や空間K2に向けて吐出することができる。
【0056】
本試験装置では、2個の円すいころ軸受10,10を同時に試験に供することができる。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、図1の左側に組み込まれていた円すいころ軸受10に替えて、単に主軸24を支持するための転がり軸受を組み込んで、右側のみに被試験体としての円すいころ軸受10を組み込んでもよい。この場合には、左側に組み込まれた油搬送部では、ロータを取り外して、異物を含んだ潤滑油が供給されないようにすればよい。
【0057】
また、本実施形態では、被試験体の転がり軸受として円すいころ軸受を使用している。しかし、これに限定されるものではなく、一般的な深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受など、種々の転がり軸受の寿命試験に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10:円すいころ軸受、11:外輪、12:内輪、13:円すいころ、14:保持器、15:外側軌道面、16:内側軌道面、20:試験装置、22:装置本体、24:主軸、28:負荷装置、30:貯留部、34:ハウジング、35:第1内周面、36:軸受嵌合面、37:第2内周面、38:第1側面、39:第2側面、42:軸部、45:スリンガ、47:ロータ、49:油搬送部、51:円筒孔、53:カバー部材、55:羽、57:溝、64:切り欠き部、70:固定板
図1
図2
図3
図4
図5
図6