(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863268
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】異電圧電動機駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20210412BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
H02M7/49
H02P27/06
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-246396(P2017-246396)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-115155(P2019-115155A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大泊 翔悟
【審査官】
土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−135918(JP,A)
【文献】
特開2009−171684(JP,A)
【文献】
特表2017−508426(JP,A)
【文献】
特開昭57−153572(JP,A)
【文献】
特開平10−066372(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0176755(US,A1)
【文献】
特開2000−172350(JP,A)
【文献】
特開昭52−006927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H02P 5/00−5/753
H02P 21/00−25/03
H02P 25/04
H02P 25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定格電圧が異なる複数の電動機と、
入力変圧器が一体化された電圧型インバータと、
前記入力変圧器の一次巻線において前記複数の電動機のそれぞれの定格電圧に応じた位置に設けられた複数個のタップと、
前記電圧型インバータと接続する電動機を前記複数の電動機の間で切り替える電動機切替装置と、
電力系統と接続するタップを前記複数のタップの間で切り替えるタップ切替装置と、
を備えることを特徴とする異電圧電動機駆動システム。
【請求項2】
前記電動機切替装置による電動機の切り替えと前記タップ切替装置によるタップの切り替とは連動していることを特徴とする請求項1に記載の異電圧電動機駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの電圧型インバータで複数の異なる定格電圧の電動機を駆動する異電圧電動機駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来使用されている異電圧電動機駆動システムの構成を示す図である。異電圧電動機駆動システムは、1つの電圧型インバータで複数の異なる定格電圧の電動機を駆動するシステムである。
【0003】
図3に示すシステムでは、定格電圧6.6kVの電圧型インバータ10を用いて、定格電圧3.3kVの低電圧電動機1と定格電圧6.6kVの高電圧電動機2とが駆動される。電圧型インバータ10は、入力変圧器20と多数のセルインバータ11とを内蔵している。入力変圧器20は、上位遮断器3を介して定格電圧6.6kVの電力系統100に接続されている。電圧型インバータ10と接続するインバータを、低電圧電動機1と高電圧電動機2とで切り替えるため、電圧型インバータ10と各電圧電動機1,2との間には、それぞれ切替遮断器4,5が設けられている。さらに、電圧型インバータ10の出力電圧は6.6kVにしか対応していないため、電圧型インバータ10と低電圧電動機1との間には、出力電圧を6.6kVから3.3kVに変圧する出力変圧器6が設けられている。
【0004】
上記のように、従来使用されている異電圧電動機駆動システムでは、電圧型インバータの出力電圧と異なる定格電圧の電動機を駆動するには出力変圧器を必要とする。出力変圧器を必要とすることでシステム全体が高コスト化し、また、システムの構成機器数が増えることでシステム全体の信頼性は低下する。しかも、この出力変圧器は、電圧型インバータの高調波電圧を受けるために直流偏磁対策を考慮した変圧器とする必要が有り、通常の変圧器よりもサイズやコストが大きいという問題もあった。
【0005】
なお、下記の特許文献1には、インバータと電源との間に出力電圧可変機能付変圧器を設け、出力電圧可変機能付変圧器によってインバータに供給する2次側電圧を可変にすることが記載されている。しかし、この公報に記載されたシステムは、定格電圧が等しい複数の電動機のそれぞれにインバータを接続し、1台のインバータで1台の電動機を駆動するシステムであって、異電圧電動機駆動システムとは異なる。また、この公報に記載された出力電圧可変機能付変圧器は、二次側巻線のタップを切り替えて二次側電圧を可変にするものであるため、入力変圧器が一体化された電圧型インバータへの適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−136568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、出力変圧器を用いることなく1つの電圧型インバータで異なる定格電圧の電動機を駆動することができる異電圧電動機駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る異電圧電動機駆動システムは、定格電圧が異なる複数の電動機と、入力変圧器が一体化された電圧型インバータと、前記入力変圧器の一次巻線において前記複数の電動機のそれぞれの定格電圧に応じた位置に設けられた複数個のタップと、前記電圧型インバータと接続する電動機を前記複数の電動機の間で切り替える電動機切替装置と、電力系統と接続するタップを前記複数のタップの間で切り替えるタップ切替装置とを備えることを特徴とする。前記電動機切替装置による電動機の切り替えと前記タップ切替装置によるタップの切り替えとを連動させてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る異電圧電動機駆動システムによれば、電圧型インバータと接続する電動機を切り替える際、電力系統と接続するタップを電動機の定格電圧に合ったタップに切り替えることにより、1台の電圧型インバータで出力変圧器を用いずに異なる定格電圧の電動機を切り替えて駆動することができる。また、入力変圧器の一次巻線に設けるタップを増やすことで、駆動可能な電動機の定格電圧の種類を増やすことができる。このため、本発明に係る異電圧電動機駆動システムによれば、出力変圧器分のコストが不要となり、部品点数削減によるシステム信頼性の向上が望める。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る異電圧電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す異電圧電動機駆動システムの入力変圧器の一次巻線結線図である。
【
図3】従来使用されている異電圧電動機駆動システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る異電圧電動機駆動システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る異電圧電動機駆動システムは、定格電圧6.6kVの電圧型インバータ10と、それにより駆動される定格電圧3.3kVの低電圧電動機1及び定格電圧6.6kVの高電圧電動機2とを備える。電圧型インバータ10は入力変圧器一体型であり、入力変圧器20と多数のセルインバータ11とを内蔵している。低電圧電動機1と高電圧電動機2とは、電圧型インバータ10に並列に接続されている。
【0013】
本実施の形態では、電圧型インバータ10と、低電圧電動機1及び高電圧電動機2とは、電動機切替装置40を介して接続されている。電動機切替装置40は、電圧型インバータ10と低電圧電動機1との間に設けられた切替遮断器41と、電圧型インバータ10と高電圧電動機2との間に設けられた切替遮断器42とを備える。電動機切替装置40は、2つの切替遮断器41,42の何れか一方を投入しているときには他方を遮断するインターロック機構(図示略)を備えている。本実施の形態では、電圧型インバータ10と低電圧電動機1との間に出力変圧器は設けられていない。
【0014】
本実施の形態では、電圧型インバータ10の入力変圧器20と電力系統100とを接続するラインは2つ設けられ、それぞれのラインに上位遮断器31,32が設けられている。2つの上位遮断器31,32はタップ切替装置30を構成する。タップ切替装置30は、2つの上位遮断器31,32の何れか一方を投入しているときには他方を遮断するインターロック機構(図示略)を備えている。電動機切替装置40とタップ切替装置30とは、その切替動作を連動させることができる。
【0015】
図2は、入力変圧器20の一次巻線結線図である。入力変圧器20は3つの一次巻線21,22,23を備える。各一次巻線21,22,23の中央部付近には高電圧出力用タップ24,25,26が設けられている。上位遮断器32が投入されたときには、高電圧出力用タップ24,25,26に電力系統100が接続される。また、各一次巻線21,22,23の端部には低電圧出力用タップ27,28,29が設けられている。上位遮断器31が投入されたときには、低電圧出力用タップ27,28,29に電力系統100が接続される。本実施の形態では、高電圧出力用タップ24,25,26に電力系統100が接続されたときには電圧型インバータ10の出力電圧は6.6kVとなり、低電圧出力用タップ27,28,29に電力系統100が接続されたときには電圧型インバータ10の出力電圧は3.3kVとなるように、入力変圧器20の巻数比が設計されている。
【0016】
上記の構成によれば、上位遮断器31を開いて上位遮断器32を投入し、且つ、切替遮断器41を開いて切替遮断器42を投入することで、電圧型インバータ10から高電圧電動機2へ、その定格電圧である6.6kVの電圧を供給することができる。また、上位遮断器32開いて上位遮断器31を投入し、且つ、切替遮断器42を開いて切替遮断器41を投入することで、電圧型インバータ10から低電圧電動機1へ、その定格電圧である3.3kVの電圧を供給することができる。つまり、本実施の形態に係る異電圧電動機駆動システムによれば、出力変圧器を用いることなく、1つの電圧型インバータ10で異なる定格電圧の電動機1,2を駆動することができる。
【0017】
なお、電圧型インバータ10の出力電圧を3.3kVに切り替えた場合、電圧型インバータ10の内部の直流電圧も半分となる。この場合、不足電圧の保護設定によっては電圧型インバータ10がトリップすることもある。ゆえに、出力電圧を切り替えるときには、異常と誤判断されないように不足電圧の保護設定を変更することを併せて実施する。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変形して実施することもできる。例えば、入力変圧器20のタップ位置や電圧型インバータ10の定格出力電圧を変更する事により、3.3kVや6.6kVだけでなく10kVや11kVなどの他の電圧も出力可能となる。また、タップ切替装置は、1つの上位遮断器と、その上位遮断器と接続するタップを高電圧出力用タップと低電圧出力用タップとで切り替える切替器とで構成してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 低電圧電動機
2 高電圧電動機
3 上位遮断器
4,5 切替遮断器
6 出力変圧器
10 電圧型インバータ
11 セルインバータ
20 入力変圧器
21,22,23 一次巻線
24,25,26 高電圧出力用タップ
27,28,29 低電圧出力用タップ
30 タップ切替装置
31,32 上位遮断器
40 電動機切替装置
41,42 切替遮断器
100 電力系統