特許第6864579号(P6864579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864579
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/30 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   H01H50/30 H
   H01H50/30 G
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-151149(P2017-151149)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-29321(P2019-29321A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 仁
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−222112(JP,A)
【文献】 実開昭52−110348(JP,U)
【文献】 特開平01−246803(JP,A)
【文献】 実開昭54−067250(JP,U)
【文献】 特開2009−302386(JP,A)
【文献】 米国特許第06037852(US,A)
【文献】 特開平05−282984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主接点を構成する固定主接触子及び可動主接触子と、
可動鉄心を有し、前記可動主接触子と連動する操作部と、
前記可動鉄心を電磁力により吸引する固定鉄心を有する電磁石と、
を備え、前記電磁石への電圧印加により前記主接点を開閉する接触器において、
前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に、磁性体を含む緩衝材を備え、
前記電磁石が前記固定鉄心を有し、当該固定鉄心の少なくとも一部が前記緩衝材で覆われていないことを特徴とする接触器。
【請求項2】
主接点を構成する固定主接触子及び可動主接触子と、
可動鉄心を有し、前記可動主接触子と連動する操作部と、
前記可動鉄心を電磁力により吸引する固定鉄心を有する電磁石と、
を備え、前記電磁石への電圧印加により前記主接点を開閉する接触器において、
前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に、磁性体を含む緩衝材を備え、
前記緩衝材の厚さが箇所ごとに異なることを特徴とする接触器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接触器において、
前記固定鉄心が前記緩衝材を備えることを特徴とする接触器。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の接触器において、
前記固定鉄心の可動鉄心側の全面に前記緩衝材を備えることを特徴とする接触器。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の接触器において、
前記固定鉄心に前記緩衝材の一部が埋め込まれていることを特徴とする接触器。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の接触器において、
前記緩衝材が樹脂材からなることを特徴とする接触器。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の接触器において、
前記緩衝材が透磁率の違う前記緩衝材の多層構造であることを特徴とする接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁石を使用した接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
接触器は、電動機等の電力機器の起動及び停止のために、電力回路を開閉する電力機器であって、例えば鉄道車両に用いられる。接触器では、主接点の投入時に使用している電磁石に用いる鉄心間に物理的な接触が発生する。この物理的接触によって鉄心には磨耗と衝撃が発生するため、この磨耗及び衝撃を軽減する仕組みが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、コイルを巻回しケースに固定された固定鉄心と、この固定鉄心に対向しコイルの励磁により接触する可動鉄心とを備え、固定鉄心と可動鉄心との接離により通電または遮断を行う電磁接触器において、固定鉄心及び可動鉄心の対向部分に絶縁性セラミックス膜をコーティングすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−282984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者が、固定鉄心と可動鉄心の物理的接触による摩耗と衝撃を軽減しつつ、接触器を小型化することについて鋭意検討した結果、次の知見を得るに至った。
【0006】
特許文献1に係る接触器では、可動鉄心が励磁され、固定鉄心と接触することで発生する鉄心の摩耗を防止することができるものの、固定鉄心に可動鉄心が接触する際の衝撃に対処することは困難である。
【0007】
一方、固定鉄心と可動鉄心との間に緩衝材を介在させて衝撃を緩和しようとしても、緩衝材の介在によって、鉄心吸着時に空隙が生じることにより、電磁石の吸引力が低下してしまうため、電磁石を大型化してしまうという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、主接点投入時における電磁石の固定鉄心と可動鉄心との磨耗と衝撃を緩和しながらも、小型化し得る接触器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、電磁石の固定鉄心と、操作部の可動鉄心との間に、磁性体を含む緩衝材を備えるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主接点投入時における電磁石の固定鉄心と可動鉄心との摩耗と衝撃を緩和しながらも、小型化し得る接触器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】接触器を備える交流鉄道車両の駆動システムを示す回路図である。
図2】本実施の形態による接点開放状態における接触器の概略構造を示す概念図である。
図3】本実施の形態による接点投入状態における接触器の概略構造を示す概念図である。
図4】本実施の形態による電磁石の吸引力特性図である。
図5】本実施の形態による固定鉄心間及び固定鉄心・可動鉄心間の距離の関係を示す概念図である。
図6】他の実施の形態による緩衝材の配置箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、交流鉄道車両の駆動システムの一例に係るブロック図を示す。駆動システムは、本発明に係る接触器を備える。駆動システム1は、鉄道車両が走行する際に、単相交流電源である変電所と接続される架線2から単相交流電力を集電装置3によって取り込み、遮断器4を閉状態とすることで変圧器5へ電流を流し、架線2の架線電圧を変圧器5によって降圧する。変圧器5の入力側の1次巻線は、一端が事故電流等の大きな電流を遮断する遮断器4と接続し、他端はレールに接する(接地する)車輪に接地ブラシ6を介して接続する。
【0013】
変圧器5の出力側の2次巻線は、一端が接触器20を介して単相コンバータ9の交流入力端(u相)に接続され、他端が単相コンバータ9の交流入力端(v相)に接続される。接触器20と並列に補助接触器7及び充電抵抗器8が接続される。なお変圧器の入力側は上位で高電圧が印加されており、出力側は降圧されるため入力側より低い電圧が印加される。
【0014】
接触器20は、電力機器の起動及び停止のために電力回路を物理的に開閉し、接触器20より電位的に下位の(図1において右側に配置されている)機器を切り離す機器である。なお接触器20の高電位側をA端、低電位側をB端とする。また、フィルタコンデンサ10を充電するための補助接触器7及び充電電流を抑制する充電抵抗器8は直列に接続される。フィルタコンデンサ10が充電されると、接触器20は閉状態となり、単相コンバータ9及び3相インバータ11が鉄道車両を駆動させる電動機12の制御を開始する。なお、単相コンバータ9の直流出力端には、フィルタコンデンサ10及び3相インバータ11の直流入力端が接続される。また、3相インバータ11の交流出力端には電動機12が接続される。
【0015】
また接触器20は、図2に示すように、主接点23、操作部26、電磁石31及び制御装置33を備えて構成され、接触器20より電位的に下位の機器である単相コンバータ9、3相インバータ11及び電動機12を監視する制御装置33からの情報に基づいて制御される。
【0016】
この制御装置33は、フィルタコンデンサ10が充電され、接触器20より電位的に下位の機器に異常がないことを確認すると、電源32を介して電磁石31に所定値以上の電圧を印加する。電磁石31は、所定値以上の電圧が印加されると図3に示すように、操作部26を吸引する。この操作部26は、電磁石31に吸引されることで、主接点23を閉状態とする。
【0017】
接触器20は、主接点23が閉状態となると接触器20より電位的に下位の機器に電流を供給する。電磁石31に印加される電圧が、所定値より小さい場合、電磁石31の吸引力が弱まり、可動鉄心27に設けられた復帰用のバネにより主接点23は開状態となり、接触器20より電位的に下位の機器には電流は供給されない。
【0018】
主接点23は、内部が真空の真空インタラプタ22に封入された互いに対向する固定主接触子21及び可動主接触子24によって構成される。固定された固定主接触子21に操作部26と連動する可動主接触子24が接触することで、主接点23は閉状態となる。
【0019】
操作部26は、主接点23の開閉状態を操作する部位であって、絶縁継手25及び可動鉄心27から構成される。絶縁継手25は、例えばその表面がポリエステル樹脂で覆われており、高電圧が印加される主接点23側の回路と、低電圧が印加される電磁石31側の回路とを電気的に遮断する。可動鉄心27は絶縁継手25に接続されており、絶縁継手25を介して可動主接触子24と連動する。
【0020】
電磁石31は、円筒状のボビンにコイルが巻回された励磁コイル30及び励磁コイル30に固定された固定鉄心29から構成される。励磁コイル30は電源32に接続され、励磁コイル30を介して電磁石31には電圧が印加される。励磁コイル30は電圧が印加されると励磁し、固定鉄心29を介して、可動鉄心27を電磁力によって吸引する。
【0021】
そして可動鉄心27及び固定鉄心29間には、可動鉄心27及び固定鉄心29の接触面と、2つの固定鉄心29間とを覆うように緩衝材28が設けられる。この緩衝材28は、可動鉄心27が吸引され、固定鉄心29に接触する際の衝撃を和らげる。この緩衝材28は、衝撃を和らげるために主材料を樹脂などの低弾性体とする必要があるが、可動鉄心27及び固定鉄心29間に樹脂材を設けると、主接点23投入時の可動鉄心27及び固定鉄心29間の空隙が増すため磁気抵抗が増加し、このため電磁石31の吸引力が低下する。なお緩衝材28は例えば固定鉄心29に配置される。
【0022】
そこで本接触器20では、緩衝材28に樹脂を主材料として採用することで耐衝撃性を確保しつつ磁性体を含ませることにより、主接点23投入時の可動鉄心27及び固定鉄心29間の磁気抵抗の増加を抑制し、電磁石31の吸引力を維持する。例えば磁性体は、電磁軟鉄、構造用炭素鋼、鋳鋼、フェライト及びケイ素鋼板などの強磁性材料の何れか1種とする。なお走行中の車両の振動を受ける環境下で接触器20は使用されるため、接触器20に使用する部品には振動で脱落しないものが採用されることは言うまでもない。
【0023】
(2)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の接触器20では、緩衝材28に樹脂を主材料として採用することで衝撃緩和もしくは衝撃吸収性を確保しつつ磁性体を含ませることで磁気抵抗の増加を抑える。可動鉄心27及び固定鉄心29間の距離を8mmとして電磁石31の吸引力特性を示した図4に示すように、緩衝材28を樹脂材のみとした場合はグラフ35のように、主接点23の投入直前時(可動鉄心の移動量が8mmとなる直前)に吸引力1200N程度となる。これに対して、緩衝材28に磁性体を含ませた場合はグラフ36のように主接点23の投入直前時(可動鉄心の移動量が8mmとなる直前)に吸引力1500N程度となる。
【0024】
従って、本接触器20によれば、衝撃緩和もしくは衝撃吸収性を確保しつつ電磁石31の吸引力を維持でき、接触器20及び接触器20の周辺機器に可動鉄心27及び固定鉄心29によって生じる衝撃による悪影響を与えることが少なくなり、接触器20の小型軽量化をすることができる。
【0025】
また可動鉄心27及び固定鉄心29により生じる衝撃によって主接点23で投入時に発生するチャタリングは、主接点23にアークを発生させる。このアークによって主接点23は炭化し劣化する。可動鉄心27及び固定鉄心29によって生じる衝撃を抑えることで、主接点23で投入時に発生するチャタリングを抑制し、主接点23の劣化を抑え、接触器20の耐久性を高めることができる。
【0026】
また可動鉄心27及び固定鉄心29により生じる衝撃を抑えることで、主接点23の機械的疲労を軽減することができ、接触器20の耐久性を高めることができる。
【0027】
また電磁石31の吸引力が増すため、励磁コイル30に巻かれるコイルの巻回数を少なくすることができ、励磁コイル30の小型軽量化ができ、このことによっても接触器20の小型軽量化が可能となる。電磁石31の吸引力が増加すると、励磁コイル30を励磁するための電流(以下、これをコイル励磁電流)も少なく済み、接触器20はより小さい電圧での動作が可能となる。
【0028】
車両走行中は、本接触器20の投入状態を維持するために、コイル励磁電流を流す必要があるが、このコイル励磁電流によって励磁コイル30の温度が上昇し、故障などの原因となることがある。コイル励磁電流が少なくなることで、励磁コイル30の温度上昇を抑えることができ、接触器20の信頼性を高めることができる。
【0029】
また可動鉄心27及び固定鉄心29により生じる衝撃を抑えることで、この衝撃による衝撃音を抑えることができ、静音性が向上する。なお主接点23で発生する衝撃音についても同様に抑えることができる。
【0030】
(3)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、真空中に主接点23を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、空気中に主接点23を設けてもよくこの他種々の接触器に広く適用することができる。
【0031】
また上述の実施の形態においては、励磁コイル30のボビンの形状が円筒状の場合について述べたが、本発明はこれに限らず、励磁コイル30のボビンの形状を四角柱状にしてもよい。
【0032】
また上述の実施の形態においては、励磁コイル30がボビコイルの場合について述べたが、本発明はこれに限らず、励磁コイル30をモールドコイルにしてもよい。
【0033】
さらに上述の実施の形態においては、操作部26に回転機構が設けられ、操作部26がバネによって回転することで主接点23が開状態に復帰する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、可動鉄心27に設けられたバネによって主接点23が開状態に復帰するようにしてもよい。
【0034】
さらに上述の実施の形態においては、固定鉄心29が2つの場合について述べたが、本発明はこれに限らず、固定鉄心29は3つ以上でもよい。
【0035】
さらに上述の実施の形態においては、緩衝材28の厚さが均一の場合について述べたが、本発明はこれに限らず、緩衝材28の厚さは箇所ごとに異なってもよい。
【0036】
さらに上述の実施の形態においては、図3及び図5(A)に示すように、主接点が閉状態時に、可動鉄心27と固定鉄心29の互いに向かい合う面が平行になる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図5(B)に示すように主接点が閉状態時に、可動鉄心27と固定鉄心29の互いに向かい合う面が平行でなくてもよい。
【0037】
なお固定鉄心29間の距離D1が、可動鉄心27及び固定鉄心29間の距離D2,D3の和よりも大きくすることで、固定鉄心29間の磁束のもれを低減することが望ましい。
【0038】
さらに上述の実施の形態においては、可動鉄心27及び固定鉄心29の接触面と、2つの固定鉄心29間とを覆うように緩衝材28を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図6(A)〜図6(G)に示すように2つの固定鉄心29間を緩衝材28で覆わないようにしてもよい。
【0039】
例えば、図6(A)に示すように単純に2つの固定鉄心29間は緩衝材28で覆わないようにしてもよいし、図6(B)に示すように緩衝材28の厚さを変更して厚くしてもよい。なお磁性体の含有量が少ないほど、緩衝材28は衝撃を緩和しやすくなる。また厚さが厚いほど、緩衝材28は衝撃を緩和しやすくなる。
【0040】
また、図6(C)〜図6(E)に示すように固定鉄心29の面の幅に対して、緩衝材28の幅を小さくしたり、緩衝材28が固定鉄心29の側部を覆うようにしたりしてもよい。緩衝材28の断面積が大きいほど磁気抵抗は小さくなり電磁石31の吸引力は強くなる。振動で脱落しないという観点からは、図6(D)のように固定鉄心29に埋め込まれるような配置や図6(E)のように固定鉄心29を覆うような配置が好ましい。
【0041】
さらに、図6(F)、図6(G)に示すように、透磁率の違う緩衝材28,40を用いて多層構造としてもよい。なお透磁率が高い緩衝材28を可動鉄心27側に配置することで電磁石31の吸引力を強くするようにする。緩衝材40は磁性体を含まなくてもよいものとする。
【0042】
さらに上述の実施の形態においては、固定鉄心29に緩衝材28が配置される場合について述べたが、本発明はこれに限らず、可動鉄心27に緩衝材28が配置されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1……駆動システム、2……架線、3……集電装置、4……遮断器、5……変圧器、6……接地ブラシ、7……補助接触器、8……充電抵抗器、9……単相コンバータ、10……フィルタコンデンサ、11……3相インバータ、12……電動機、21……固定主接触子、22……真空インタラプタ、23……主接点、24……可動主接触子、25……絶縁継手、26……操作部、27……可動鉄心、28……緩衝材、29……固定鉄心、30……励磁コイル、31……電磁石、32……電源、33……制御装置、35,36……グラフ、40……緩衝材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6