特許第6865189号(P6865189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865189
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】故障確率評価システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20210419BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20210419BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20210419BHJP
【FI】
   G06Q10/04
   G01M99/00 Z
   G06Q10/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-49016(P2018-49016)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-160128(P2019-160128A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】植木 洋輔
【審査官】 田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/163561(WO,A1)
【文献】 特開2009−217718(JP,A)
【文献】 特開2007−107446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機械システムからなる機械システム群を対象とし、各機械システムを構成する部品の故障を評価する故障確率評価システムであって、
前記機械システムについての過去の故障履歴データを蓄積する故障履歴データベースと、前記機械システムの稼動状態を表す時系列稼動データを格納する時系列稼動データベースと、前記故障履歴データに基づく統計処理により機械システムの故障確率密度関数を算出する故障確率密度関数同定部と、前記時系列稼動データを用いて、前記故障確率密度関数によって定義される寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数の説明変数式を生成する機能を有するダメージモデル生成更新部を備え、
前記故障確率密度関数同定部は、寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数を与えることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の故障確率評価システムであって、
前記説明変数式とは、前記時系列稼動データベースに格納された前記時系列稼動データを用いて構成される単項式または多項式であることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の故障確率評価システムであって、
前記説明変数式とは、任意に設定された単項式または多項式であって、前記ダメージモデル生成更新部における故障確率密度関数の説明変数式の生成とは、前記単項式または多項式中に含まれる係数を前記ばらつきが最小となるように最適化計算によって決定することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記ダメージモデル生成更新部は、前記説明変数式を遺伝的プログラミングによって決定することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記故障確率密度関数同定部において求めた、寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数から故障確率を求める故障確率計算部を備えることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項6】
請求項5に記載の故障確率評価システムであって、
前記故障確率計算部は、前記説明変数式に基づいて計算された機械システムの部品の現在及びまたは任意時間経過後の累積ダメージと、前記故障確率密度関数とから故障確率を算出することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記ばらつきとは、前記故障確率密度関数の変動係数であることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記故障確率密度関数同定部は、最尤推定法に基づく対数尤度の最大化によって故障確率密度関数を同定することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記故障確率密度関数同定部は、最適化計算または遺伝的プログラミングにおいて、対数尤度を制約条件に加えることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記故障確率密度関数同定部は、最適化計算または遺伝的プログラミングにおいて、ばらつきに加え、対数尤度も目的関数とした多目的最適化計算であることを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記時系列稼動データは線形累積損傷則に基づく疲労損傷度を含むことを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
前記時系列稼動データは温度を含み、前記説明変数式にはアレニウス式を含めたことを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
故障確率密度関数同定部において求めた、寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数から故障確率を求める故障確率計算部と、表示部を備え、
前記表示部には、特定の対象部品について複数の機械システムにおける前記故障確率を同時に表示することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の故障確率評価システムであって、
故障確率密度関数同定部において求めた、寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数から故障確率を求める故障確率計算部と、表示部を備え、
前記表示部には、特定の対象部品について複数の機械システムにおける前記故障確率を同時に表示する機能を有することを特徴とする故障確率評価システム。
【請求項15】
複数の機械システムからなる機械システム群を対象とし、各機械システムを構成する部品の故障を評価する故障確率評価方法であって、
前記機械システムについての過去の故障履歴データに基づく統計処理により機械システムの故障確率密度関数を算出し、前記機械システムの稼動状態を表す時系列物理量データを用いて、前記故障確率密度関数によって定義される寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数の説明変数式を生成し、寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数を得ることを特徴とする故障確率評価方法。
【請求項16】
請求項15に記載の故障確率評価方法であって、
寿命のばらつきが最小となる故障確率密度関数から故障確率を求めることを特徴とする故障確率評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機械システムからなる機械システム群を対象とした、各機械システムを構成する部品の故障確率を評価するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機器や輸送機器といった機械システムにおいて、システムが正常に所定の機能を発揮できるようにするためには、各部品の寿命を適切に把握・管理し、各部品の修理や交換といった保全を適切なタイミングで実施することが肝要である。特に、複数の同型機を管理・運用する場合には、過去に発生した故障記録を統計的に分析すれば、将来に発生する故障事象の回数を予測することが可能となる。ここで、故障記録とは、故障事象の内容と発生時刻が対になって記録されているデータを表す。
【0003】
故障確率を評価するシステムを構築することに関連して、統計的な分析により、単位時間あたりの故障回数を表す故障率や、それを積分することで得られる故障確率を算出するための技術として、例えば非特許文献1が知られている。
【0004】
また、例えば軸受などの回転系機械要素であれば回転数や荷重に基づいて、軸受を故障に至らしめる累積負荷量を表現できることが特許文献1により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2017/203868号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】福井泰好著「入門 信頼性工学」、森北出版株式会社、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1は機械システムの稼動状況はほぼ同じであることを前提としているが、ほとんどの機械システムの稼動状況は一定ではない。例えば、風力発電機の稼働状況は、風況に応じて時々刻々変化し、その立地条件によっても負荷は異なる。また、建設機械などは、日々異なる作業項目や運転者の運転特性によって、機器への負荷が変化する。したがって、単純に時間あたりの故障率や故障確率の評価では、そこから得られる故障回数や余寿命の推定精度に限界がある。
【0008】
幸い、近年ではさまざまなセンサが機械システムに取り付けられ、ネットワークを介してこれらのセンサからの計測データにアクセスすることが容易となっている。したがって、このような計測データから個体毎に異なる稼働状況を評価し、それを適切に考慮すればより高精度な故障回数や余寿命の推定が可能となる。
【0009】
また特許文献1によれば、故障事象が発生した時点までのセンサデータから累積負荷量を計算すれば、個体毎に異なる軸受の累積負荷量に基づき、より高精度な故障回数や余寿命の予測が可能となる。
【0010】
このように、故障確率を評価するシステムを構築するにあたり、故障記録のみでなくセンサデータを併用することにより、より高精度な故障回数や余寿命の推定が可能となる。
【0011】
しかしながら、機械システムはさまざま種類の部品から構成されている。このため、全ての部品について、その故障メカニズムを物理法則に基づいて明らかにし、部品を故障に至らしめる負荷因子を定義していくことは容易ではない。
【0012】
そこで、故障回数や余寿命の推定にセンサデータを活用し、かつ適正な負荷因子を自動探索できる技術の出現が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明においては「複数の機械システムからなる機械システム群を対象とし、各機械システムを構成する部品の故障を評価する故障確率評価システムであって、機械システムについての過去の故障履歴データを蓄積する故障履歴データベースと、機械システムの稼動状態を表す時系列物理量データを格納する時系列稼動データベースと、故障履歴データに基づく統計処理により機械システムの故障率関数を算出する故障率関数同定部と、時系列物理量データを用いて、故障率関数によって定義される寿命のばらつきが最小となる故障率関数の説明変数式を生成する機能を有するダメージモデル生成更新部を備え、故障率関数同定部は、寿命のばらつきが最小となる故障率関数を与えることを特徴とする故障確率評価システム」としたものである。
【0014】
また本発明は、「複数の機械システムからなる機械システム群を対象とし、各機械システムを構成する部品の故障を評価する故障確率評価方法であって、機械システムについての過去の故障履歴データに基づく統計処理により機械システムの故障率関数を算出し、機械システムの稼動状態を表す時系列物理量データを用いて、故障率関数によって定義される寿命のばらつきが最小となる故障率関数の説明変数式を生成し、寿命のばらつきが最小となる故障率関数を得ることを特徴とする故障確率評価方法」としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は公知技術と同様に、故障データを基にした故障率関数の同定を行うが、時系列稼動データを考慮したダメージモデルの自動生成機能を具備することにより、より高精度な故障回数や寿命の推定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】複数の風力発電機を対象として構成された故障確率評価システムを例示する図。
図2】故障イベントデータベースDB1の構成事例を示す図。
図3】故障時間のデータD31の事例を示す図。
図4】生存時間のデータD32の事例を示す図。
図5】ダメージモデル生成・更新部7が与える生存解析用データD3の一例を示す図。
図6】故障率f(故障率関数11)と、故障確率F(故障確率関数21)の関係を示す図。
図7】ダメージモデル生成・更新部7が提供する、新たなセットの生存解析用データD3の事例を示した図。
図8】風力発電機群を対象としたフリートビューの例を示す図。
図9】任意の風力発電機1を対象とした単機ビューの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0018】
なお以下においては、風力発電機の構成部品を対象とした故障確率評価システム及び方法を例にとり、本発明の実施例を説明する。ここでは、複数の風力発電機を対象とするが、その設置場所を限定するものではなく、各風力発電機は異なる風力発電所(ウィンドファーム)に設置されたものでもよい。
【実施例1】
【0019】
図1は、複数の風力発電機を対象として構成された故障確率評価システムを例示している。
【0020】
図1の故障確率評価システム100は計算機により構成されており、複数のデータベースDB(DB1,DB2)と、演算部101と、表示部16により構成されている。なお故障確率評価システム100には、複数の風力発電機1からのデータや、あるいは保全を担当する作業担当者Mが入力したデータが与えられており、故障確率評価システム100の出力は表示部16により外部に提供される。また故障確率評価システム100の出力は、複数の風力発電機の運用計画システム18や、部品在庫管理システムに与えられて、活用することができる。
【0021】
複数のデータベースDBのうち、まず故障イベントデータDB1には、風力発電機1の故障イベントが蓄積される。
【0022】
ここで故障イベントとは、「故障」「異常」「部品交換」といった故障に関連した事象である。対象となる風力発電機1に、故障イベントを自動検出するシステムが備わっている場合には、故障イベント自動検出システムと故障イベントデータベースDB1とをネットワークを介して接続し、データを自動蓄積するような方式としてもよい。或いは、保全を担当する作業担当者Mが、故障事象を判断し、その内容を登録するような方式としてもよい。本構成により、複数の風力発電機1において過去に発生した故障事象が故障イベントデータベースDB1に蓄積される。
【0023】
図2は、故障イベントデータベースDB1の構成事例を示した図である。故障イベントデータベースDB1に蓄積される故障イベントデータD1は、図2に例示するように故障が発生した個体のデータD11(図2では風力発電機が属するサイトの名称とその号機番号で定義)と、故障の発生時刻データD12である。なお故障イベントデータD1は、さらに故障内容D13(図2では故障の発生部品名、箇所とその発生事象で定義)を含むものであってもよい。
【0024】
複数のデータベースDBのうち、時系列稼動データベースDB2には、時系列稼動データD2が蓄積される。
【0025】
大型の風力発電機1には、通常、風速や風向といった風況データや、発電量やロータ回転数など運転データを収集するデータ収集システムが備わっている。本発明では、これらの各データを時系列稼動データD2として、ネットワークなどの通信手段を介して、時系列稼動データベースDB2に蓄積していく方式とする。このとき、各データの収集間隔は特に限定されないが、本発明では比較的長期での故障回数や余寿命の推定を行うため、1日間隔程度が理想的である。
【0026】
なお時系列稼動データD2は、任意間隔でサンプリングされた計測値よりも、収集間隔内における最大値、最小値、平均値、標準偏差といった統計値を用いることが望ましい。これにより、データ量を大幅に削減しながらも情報を最大限に活用することが可能である。また、単純な平均値などの統計値だけでなく、線形累積損傷則に基づく疲労損傷分析結果として疲労損傷度を時系列データとして格納するような方式としてもよい。ここで、疲労損傷度は計測波形に対してレインフローカウント処理などを施すことによって得られる統計量である。例えば対象にひずみセンサやロードセルなどの荷重情報を取得するためのセンサが取り付けられていて、かつ、故障が疲労損傷蓄積によって発生することが明らかとなっている場合には、時系列稼動データのひとつとして疲労損傷度を採用することが特に有効である。
【0027】
このように、風力発電機1側のデータ収集システム、または故障確率評価システム100側の時系列稼動データベースDB2には、計測値に対して統計処理や疲労損傷度分析処理などの前処理を行う機能を具備することが望ましい。また、時系列稼動データベースDB2に蓄積される情報は、風力発電機1自身から得られる情報に限定されない。例えば、風力発電機1の近隣に設けられた気象観測設備で計測された気象データなども、風力発電機1の稼動状態を評価する上では有用である。
【0028】
データベースDB1,DB2に蓄積された故障イベントデータD1、時系列稼動データD2は演算部101において処理され、最終的に故障確率Fが得られる。
【0029】
故障確率Fを導出する演算部101は、ダメージモデル生成・更新部7、故障率関数同定部8、稼働状況予測部12、故障確率同定部14を主たる要素として構成されている。
【0030】
演算部101について、まず故障率関数同定部8について説明する。ここでは説明を簡便に行うために時系列稼動データD2を用いず、故障イベントデータD1のみを用いた故障率関数の同定について説明する。すなわち、図1において、ダメージモデル生成・更新部7へ時系列稼動データD2が入力されない条件を想定する。
【0031】
この想定事例の場合にはまず、故障イベントデータベースDB1に格納された故障イベントデータD1を、ダメージモデル生成・更新部7において分析用の生存解析用データD3に整形し故障率関数同定部8に提供する。ここで生存解析用データD3は、故障時間のデータD31と生存時間のデータD32を含むデータである。
【0032】
図3は、故障時間のデータD31を示す事例であり、ここで故障時間とは故障発生までの稼働時間のことを意味している。故障発生までの稼働時間D31は、故障イベントデータD1から求められる。故障イベントデータD1は、図2に示すような故障事象(故障が発生した個体のデータD11)と発生時刻D12が対になったデータである。以降の故障率関数の同定で必要となるのは、故障発生までの稼働時間(以下単に故障時間という)である。なお故障時間は、前回の故障事象が発生してからの時間(故障事象間の時間)、あるいはシステムが稼動を開始してから今回の故障事象が発生するまでの時間であり、双方の時間を含むものである。
【0033】
図2の故障イベントデータD1には、前回の故障事象が発生した時刻D12が記録されているので、前回と今回の発生時刻の差分から、故障時間を算出できる。また、今回の故障事象が初回故障事象だった場合には、システム稼動開始時刻と今回の故障発生時刻の差分から故障時間を算出できる。故障時間算出処理を、ダメージモデル生成・更新部7で行い、図3に示す集計故障データD31のような形式にデータを整形する。図3は、算出された故障時間の一例を示す図であり、例えば200基の風力発電機1のデータから、故障時間D31を求めたものである。
【0034】
図4は、生存時間のデータD32を示す事例であり、ここで故障時間とは、現在までの連続稼働時間のことである。ダメージモデル生成・更新部7では、集計故障データD31の生成と同時に、現時点から前回の故障事象発生までの時間またはシステム稼動開始時刻までの時間を集計した図4に示すような集計生存データD32として整形する。
【0035】
ダメージモデル生成・更新部7において生存解析用データD3を生成するに当たり、故障時間のデータD31と生存時間のデータD32を含むデータとする理由は、以下の通りである。
【0036】
故障率関数同定部8において、より尤もらしい故障率関数を同定するためには、故障事象(図3の故障時間のデータD31)のみでなく、ある時間継続稼動したのちも、部品が健全な状態にあるという事実(図4の生存時間のデータD32)も反映する必要がある。
【0037】
通常は、一度故障事象が発生しても部品交換や修理によって、健全な状態を極力短期間で回復させて、システムを再稼動させる。したがって、ある時刻に故障率関数同定を行うことを考えれば、その時刻において大部分の個体の対象部品は、前回の故障事象が発生してから、あるいはシステムが稼動を開始してから現時点まで稼動を続けている。この事実を反映するため、最終的にダメージモデル生成・更新部7では、集計故障データD31には故障フラグ22を付与し、集計生存データD32には生存フラグ23を付与した上で、これらを統合して生存解析用データD3を生成する。
【0038】
図5は、ダメージモデル生成・更新部7が与える生存解析用データD3の一例を示している。これによれば生存解析用データD3は故障フラグ22を付与した故障時間のデータD31と、生存フラグ23を付与した生存時間のデータD32により構成されていることがわかる。
【0039】
図1の故障率関数同定部8では、この生存解析用データD3に対して、統計学的手法に基づき、ある確率分布関数を当てはめることにより、故障率関数の同定を行う。なお、ここでは、簡便な説明とするために時系列稼動データD2は考慮しないとしているので、対象を故障に至らしめるダメージは単純に累積稼動時間のみで表されると仮定する。
【0040】
稼動時間にこのような生存解析用データD3のような故障データD31と生存データD32(打ち切りデータ)が含まれるデータから、故障率関数を同定する手法は生存解析と呼ばれ、その具体的な手法はいくつか知られている。本発明では、後述するダメージモデル更新処理において、故障率関数11のばらつきVを目的関数とするため、故障率関数11に連続性が必要となるものの、詳細な手法を限定するものではない。ただし、実用上は計算コストの観点から、最尤推定法(MLE)を採用することが望ましい。最尤推定法MLEは、故障率関数p(t)に任意の確率密度関数を仮定し、確率密度関数の母数をパラメトリックに最適化計算で求める手法である。
【0041】
具体的には、仮定する故障率関数11と生存解析用データD3について、(1)式で定義される対数尤度和Lを最大化するように、故障率関数の母数を探索する。
【0042】
【数1】
【0043】
なお(1)式において、i、jはそれぞれ故障データD31および生存データD32の番号であり、p(x)は故障率関数である。すなわち、(1)式の右辺第一項は故障データD31に付いての尤度を、第二項は生存データD32についての尤度をそれぞれ表している。
【0044】
本発明では、最尤推定法MLEで採用する最適化アルゴリズムについては、特に限定しないが、扱う目的関数は微分可能であり、変数(母数)の数も高々2つないし3つ程度であるので、準ニュートン法などの目的関数の微分を利用したアルゴリズムを採用すれば、比較的少ない計算コストで最適解が得られる。特に本発明では、後述するダメージモデル生成・更新部7から、故障率関数同定部8を繰り返し呼び出して、ダメージモデルの更新を行う。すなわち、最尤推定法MLE自体が最適化問題の目的関数計算に含まれるので、最尤推定法MLEの高速化は極めて重要である。
【0045】
また確率密度関数には例えば、ワイブル分布やガンマ分布、対数正規分布などが挙げられる。本発明はいずれかの確率密度関数に限定されるものではなく、ユーザの経験に基づいて関数を選定してもよい。或いは、複数種類の確率密度関数を仮定してそれぞれについて最尤推定法MLEを行い、最も尤度が大きくあてはまりの良い確率密度関数を採用する方式としてもよい。最尤推定法MLEによって、生存解析データ10に最もあてはまりのよい確率密度関数(故障率関数11)が定義されるが、故障率関数11はここでは、単位時間(単位ダメージ)あたりの故障回数として定義されるので、これを時間積分することによって故障確率関数21が得られる。この時間を変数とした最尤推定法MLEによる故障率関数および故障確率関数の同定方法は公知である。
【0046】
図6は、故障率f(故障率関数11)と、故障確率F(故障確率関数21)の関係を示す図である。図6の左に故障率f(故障率関数11)、右に故障確率F(故障確率関数21)を示している。故障率関数同定部8で求めた故障率関数11は、横軸に時間、縦軸に故障率fで示されており、例えば正規分布している。この図によれば、所定確率fとなる時刻は時刻t1とt2に存在し、この期間が故障率関数11のばらつきVである。故障確率F(故障確率関数21)は、横軸に時間、縦軸に故障確率Fで示されており、故障率f(故障率関数11)を時間積分したものであり、最終的には故障確率関数21は1.0に至る、0から1.0の範囲の値である。
【0047】
図6において、ばらつきVが大きいということは、故障発生予測時間に幅があることを意味しており、予測時間幅を極小化して次回故障発生日時を短時間幅内で推定するためにはばらつきVを小さくする必要がある。図6において、ばらつきVが小さい点線の故障率関数11Aが得られるとしたら、急峻な立ち上がりの故障確率関数21Aが得られることになる。
【0048】
本発明においては、ばらつきVが小さい点線の故障率関数11Aを実現し、急峻な立ち上がりの故障確率関数21Aを得ようとしている。この実現のための手法を以下に詳細に説明する。
【0049】
最初に、ダメージモデル生成・更新部7におけるダメージモデルD(x)の更新について説明する。上述の故障率関数同定により故障率関数11が得られるので、同定された確率密度関数の定義に則れば、故障率関数11のばらつきVは容易に定義できる。ダメージモデル生成・更新部7では、故障率関数11のばらつきVが最小となるような時系列稼動データD2を考慮したダメージモデルを自動探索し、それを生存解析用データD3に反映する。
【0050】
すなわち、目的関数をばらつきV、変数をダメージモデルとした最適化問題に帰着させる。ここで、目的関数とするばらつきVには、具体的には故障率関数11の標準偏差を平均値で除して得られる変動係数を用いることが望ましい。標準偏差や分散を用いたばらつきの定義では、異なる変数(ダメージモデル)について、統一的なばらつきの評価ができないためである。次に、累積ダメージモデルとは、対象を故障に至らしめる累積ダメージを時系列稼動データD2の関数として表したモデルであり、(2)式で表される。
【0051】
【数2】
【0052】
ここで、d(x)は単位時間あたりのダメージモデルであり、xはt番目の時系列稼動データセットを表す稼動データベクトルである。本発明が対象とするのは、初期故障、偶発故障、磨耗故障のうち、磨耗故障である。したがって、ダメージの蓄積によって故障がもたらされる現象を扱うので、d(x)の時間積分を累積ダメージモデルD(x)として定義する。
【0053】
なお、上述した時系列稼動データD2を考慮しないケースは、x=[1]であることと等価であり、任意の稼動時間ステップΔtが経過した時点での累積ダメージはD(x)=Δtとなる。本発明では、ダメージモデルの式の形状については、特に限定しない。例えば、(3)式で表されるようにダメージは時系列稼動データD2の線形結合の形で表す方式が最も単純であり、最適化計算も比較的少ない計算コストで済む。
【0054】
【数3】
【0055】
ここでCは各時系列稼動データD2の重み付けを表す係数ベクトルである。
【0056】
或いは、故障メカニズムがある程度既知となっている場合には、式の形状のみを故障メカニズムに則ってユーザが予め定義しておき、その係数を探索するような方式を採用してもよい。例えば、材料劣化の温度依存性は、(4)式に示すアレニウスの式で表現できることが経験的に知られている。
【0057】
【数4】
【0058】
ここで、kは劣化反応の速度を表すので、これを時間積分した値は蓄積されたダメージと等価と考えることができる。したがって、対象の劣化要因として熱負荷が支配的である場合には、(4)式で表されるアレニウスの式を(2)式のダメージモデルに組み込むことで、時系列稼動データ5として得られる温度データを効果的に考慮することができる。
【0059】
いずれの方法であっても、このとき変数の数は、ダメージモデルにおける未定係数の数そのものとなるので、比較的大規模な最適化問題となる。また、目的関数が非凸となる場合もあるので、遺伝的アルゴリズムや粒子群最適化などのメタヒューリスティクスを用いることが望ましい。
【0060】
逆に、故障メカニズムが全く不明な場合は、遺伝的プログラミング(GP)により、式形状自体を自動探索するような方式を採用してもよい。ただし、遺伝的プログラミングGPを採用する場合には計算負荷が大きくなるため、その採用可否については、確保可能な計算リソースを十分に検討する必要がある。
【0061】
いずれの方式を採用する場合であっても、ダメージモデル生成・更新部7にてダメージモデルの更新とばらつきVの評価を繰り返し行い、最終的に収束判定を行い、より小さい変動係数を得られる故障率関数を定義することが可能となる。ばらつきVを最小化できるダメージモデル更新の過程では、変動係数のみを目的関数としている。したがって、この過程で、変動係数の小ささのみを優先され、確率密度関数へのあてはまり度合い(尤度)が小さくなる可能性もある。これを回避するために、MLEで計算される対数尤度和について一定の値を設定して、ダメージモデル更新における制約条件としたり、変動係数と対数尤度和の双方を目的関数とした多目的最適化問題としたりして問題を解いてもよい。
【0062】
以上説明したダメージモデル生成・更新部7におけるダメージモデルD(x)について、風車発電機1を例にとって具体的に示したものが(5)式である。
【0063】
【数5】
【0064】
この式に示すダメージモデルD(x)は、複数の時系列稼動データD2として採用した平均温度、最大風速、平均風速、発電量に対して、各時系列稼動データD2の重み付けを表す係数ベクトルc(c1、c2、c3、c4、c5)を乗じて積分を行ったものである。なお、時系列稼動データD2として何を採用するかは、適宜事前設定しておき、風車発電機1からの時系列稼動データD2をあてはめ、かつ係数ベクトルc(c1、c2、c3、c4、c5)の最適値を収束計算により求めていくものである。
【0065】
ダメージモデル(x)を用いた計算によりダメージモデル生成・更新部7は、逐次新たなセットの生存解析用データD3を故障率関数同定部8に提供している。
【0066】
図7は、ダメージモデル生成・更新部7が提供する、新たなセットの生存解析用データD3の事例を示した図である。図5に示した生存解析用データD3は、ダメージモデルD(x)の更新により、新たな重みづけ(係数ベクトルc)をされた修正日数として故障率関数同定部8に提供される。この重みづけの更新により、過酷な運転状況下におかれた風力発電機1からの生存解析用データD3は日数が増加するように修正され、逆に過酷でない運転状況下におかれた風力発電機1からの生存解析用データD3は日数が減少するように修正される。このことは、図6に示したばらつきVが小さくなったことを表しており、故障率関数11が11Aのように修正されたことを意味している。
【0067】
なお(5)式のダメージモデルD(x)を実行するに当たり、各時系列稼動データD2の重み付けを表す係数ベクトルc(c1、c2、c3、c4、c5)の初期値は、乱数により適宜定められた値である。ダメージモデル生成・更新部7が与えた乱数による初期値の係数ベクトルc(c1、c2、c3、c4、c5)のときの修正日数が生存解析用データD3として故障率関数同定部8に提供され、故障率関数同定部8において乱数による初期値の時のばらつきVが求められて再度ダメージモデル生成・更新部7に与えられる。この繰り返しにより、ばらつきVを最小とする係数ベクトルcの各値c1、c2、c3、c4、c5を最終決定していく。
【0068】
ダメージモデル生成・更新部7における上記処理は、故障率関数fによって定義される寿命のばらつきが最小となる故障率関数fの説明変数式を自動生成したものということができる。ここで説明変数式とは、時系列稼動データベースDB2に格納された時系列稼動データD2の一部若しくは全部を用いて構成される単項式または多項式であり、この例が(5)式に示されている。また説明変数式とは、図7の日数と修正日数の関係を表す式ということができる。
【0069】
係数ベクトルcの各値c1、c2、c3、c4、c5が最終決定されたことにより、(5)式のダメージモデルD(x)が完成され、ダメージモデル生成・更新部7から稼働状況予測部12に提供される。またこのとき故障率関数同定部8では、ばらつきVを最小とする故障率f(故障率関数11)が完成され、故障確率計算部14に提供される。
【0070】
次に、故障確率計算部14について説明する。ここまでで得られた故障率関数11は、任意の累積ダメージが蓄積された時点における、単位ダメージあたりの故障回数を表す関数である。したがって、故障確率計算部14ではこれを積分して、任意の累積ダメージが負荷された時点までに故障が発生する確率(故障確率F)を表す故障確率関数21を計算する。図6で説明したように、確率関数21は、同定された故障率関数11の累積分布関数となるので、単調増加関数となる。
【0071】
次に、得られた故障確率関数21と、個体毎の現時点での累積ダメージ33を元に、現時点での故障確率Fnおよび任意時間経過後の故障確率Ftをそれぞれ計算する。
【0072】
具体的には、現時点での故障確率Fnについては、ダメージモデル生成・更新部7にて最終的に採用されたダメージモデルD(x)に基づいて計算された各個体の現時点での累積ダメージ33を、故障確率関数21に代入することにより、現時点での故障確率Fnを計算することができる。
【0073】
任意時間経過後の故障確率Ftについては、以下のようにして求めることができる。ここでは、現時点をt、任意時間をΔtとして、任意時間経過後までの累積ダメージ量13を、予め稼動状況予測部12で推定する。
【0074】
具体的な予測方法について、本発明ではなんら制限を設けるものではないが、少なくとも各個体について個別に予測を行う必要がある。具体的には、各個体における任意時間経過後までの時系列稼動データD2の推定値をなんらかの手法で取得する。最も単純な手法は、現時点までに記録された時系列稼動データD2の値の平均値が今後も継続するという仮定を設ける手法であり、これは現時点までの累積ダメージ量のトレンドを単純に外挿することと等価である。
【0075】
風況や気温といった季節依存性のある稼動データを用いる場合おいては、季節ごとの傾向や気象予報機関による予報を参照して推定することが望ましい。或いは、今後の稼動シナリオをいくつか想定し、そのそれぞれについて時系列稼動データD2を任意に生成してもよい。
【0076】
推定あるいは生成された時系列稼動データD2の推定値を、ダメージモデル生成・更新部7で定義されたダメージモデルD(x)に代入すれば、将来の累積ダメージ13として、D(t+Δt)を計算することができる。これと、現時点の累積ダメージX(D(t))に基づき、現時点で稼動している個体が、任意時間(Δt)経過後までに故障する確率Pは、(6)式に従って条件付確率として計算できる。
【0077】
【数6】
【0078】
ここでF(D)は、故障率関数同定部8によって定義された累積ダメージを説明変数とした故障確率関数である。故障確率Fは任意時間(Δt)経過後までの、故障事象発生回数の期待値である。Δtを長く取ればこの値は大きくなるが、通常Δtはその機械システムの定期点検間隔などを想定して設定することが望ましく、このようなΔtの設定範囲内では、各個体の故障確率Fが1.0に近い値となることは考えにくい。しかし、故障確率Fの個体全体での合計値が1.0を超えることは起こりうる。この合計値は、対象としている個体全体での故障事象発生回数の期待値である。
【0079】
したがって、故障確率の合計値を例えば部品在庫管理システム17に反映させることにより、交換部品の在庫状況を適正化することが可能となる。
【0080】
あるいは、風力発電機システムに運用計画システム18が接続されている場合には、故障確率Fを用いて運用計画を変更する方式を採用してもよい。例えば、将来実施予定の定期点検までの故障確率Fが想定より高い場合は、風力発電機1を積極的に停止させたり出力を抑制したりする運用計画に変更することで、部品の延命を図ることが可能となる。この運用計画の変更によって、将来の稼動状況も変化し、必然的に将来の累積ダメージも変化するため、この方式を採用する場合には、運用計画19を稼働状況予測部12における将来の累積ダメージ13の計算に反映させることが望ましい。このような構成とすることで、運用計画の変更と故障確率変化の関係を、ユーザは容易に確認することが可能となる。
【0081】
以上で述べたダメージモデル生成・更新部7、故障率関数同定部8、稼働状況予測部12および故障確率計算部14は、それぞれが計算機プログラムとして実装されるが、具体的な計算機への実装形態を限定するものではない。ただし、ダメージモデル生成・更新部7は、故障率関数同定部8を繰り返し呼び出しながら、比較的計算コストの大きい計算処理を行う必要があるので、その双方が同一の計算機に実装されている形態とすることが理想的である。
【0082】
最後に、表示部16の例について説明する。表示部16は、具体的には画面描画プログラムを実装した計算機および表示装置から構成されるが、ここで用いられる計算機は、上述した演算部101の各機能(7、8、12、14)とは異なるものであっても差し支えない。
【0083】
図8および図9に表示部16に好適なグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の一例を示す。GUIは、風力発電機群を対象としたフリートビュー(図8)と、任意の風力発電機1を対象とした単機ビュー(図9)に大別される。
【0084】
まず、図8のフリートビューでは、風力発電機1の模式図が表示された部品選択部25が具備されており、ユーザが模式図上から任意の部品26を選択する。さらに故障確率算定期間設定部27で故障確率を計算する期間を任意に設定すると、その部品26について各機の現在および任意期間後の故障確率Fがグラフとしてフリート故障確率表示部28に表示される。これにより、ユーザが注目する部品26について、いずれの個体において故障リスクが高まっているのかを容易に確認することができる。また、同時にダメージモデル生成・更新部7において生成・更新されたダメージモデルD(x)の式がダメージモデル表示部29に表示されるので、ユーザはどのような因子が部品26の故障要因となっているのかを容易に把握できる。これは、風力発電所の保守・運用だけではなく、風力発電機1の設計・開発にも有益な情報をもたらす。
【0085】
次に、図9の単機ビューでは、風力発電機の設置場所を表した地図30または風力発電機リスト31から任意の風力発電機1を選択すると、評価対象となっている部品について、現在および任意期間後の故障確率Fがグラフ32として表示される。これによって、対象機の中で故障リスクの高い部品を容易に確認できる効果が期待できる。
【0086】
フリートビューと単機ビューは、タブ24の切替えによって容易に切り替えが可能なほか、フリート故障確率表示部28または単機故障確率表示部32中のグラフのバーを直接クリックまたはタップ操作することによって、任意の風力発電機の単機ビューと任意の部品のフリートビューを容易に行き来することが可能である。
【0087】
なおGUIを実装するプログラムのプラットフォームについて、本発明はなんら限定しないが、ウェブブラウザで動作するウェブアプリケーションとして実装し、これを前述の演算部101の各部(7、8、12、14)と同一の計算機に搭載しておく形態が望ましい。ユーザが使用する計算機端末(ユーザ端末)からネットワークなどの通信手段を介して接続することが可能であれば、ユーザ端末に求められる計算能力や前提ソフトウェアは最小限でよい。複数のユーザが同時に本システムにアクセスする場合には、このような構成が特に有効である。
【0088】
以上説明したように、本発明に係る故障確率評価システムは、機械システムについての過去の故障履歴データが蓄積された故障履歴データベース、機械システムの稼動状態を表す時系列物理量データを格納した時系列稼動データベース、故障履歴データに基づく統計処理により機械システムの故障率関数若しくはその積分で表される累積故障確率関数を算出する故障率関数同定部、故障率関数によって定義される寿命のばらつきが最小となる故障率関数の説明変数式を自動生成する機能を有するダメージモデル生成更新部を備えて構成されている。
【実施例2】
【0089】
建設機械の構成部品を対象とした故障確率評価システムを例にとり、本発明の実施例を説明する。
【0090】
ここでは、複数の建設機械を対象とするが、その運用場所を限定するものではなく、各建設機械は異なる場所に設置されたものでもよい。建設機械を対象としたシステムであっても、実施例1で説明した風力発電機向けのシステムと大きな差異はない。
【0091】
ただし、建設機械においては単純な時系列データ以外にも、どのような運用を行ったかを表す運用データも有用な情報である。運用データとは、例えば所定の動作を単位時間に何回行ったのかを表すデータである。例えば、鉱山用ダンプトラックの場合は、1日のうちペイロードの積み下ろしを行った回数などがこれに相当する。
【0092】
対象部品が例えば溶接部である場合、積み下ろし動作によって疲労荷重が作用するため、このような動作回数データを時系列稼動データD2として活用することは有効である。このような回数に基づくデータは、建設機械以外にも所定の動作を繰り返すような機械システムには有効であり、例えば同一区間を繰り返し走行する鉄道車両における運行回数や、家電品の使用回数などが挙げられる。このように、本発明は時系列稼動データD2の選び方によって多種多様な機械システムに対応した故障確率評価が可能なシステムである。
【符号の説明】
【0093】
1:風力発電機
7:ダメージモデル生成・更新部
8:故障率関数同定部
11:故障率関数
12:稼動状況予測部
13:将来の累積ダメージ
14:故障確率計算部
16:表示部
17:部品在庫管理システム
18:運用計画システム
19:運用計画
22:故障フラグ
23:生存フラグ
24:タブ
25:部品選択部
26:ポインタ
27:故障確率算定期間設定部
28:フリート故障確率表示部
29:ダメージモデル表示部
30:サイト選択部
31:個体選択部
32:単機故障確率表示部
33:現時点での累積ダメージ
D1:故障イベントデータ
D2:時系列稼動データ
D3:生存解析用データ
D31:故障データ
D32:生存データ
DB1:故障イベントデータベース
DB2:時系列稼動データベース
F:故障確率
M:保守担当者
V:ばらつき
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9