(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示による好ましいエポキシ官能性カップリング剤は、ポリエポキシド及びアミノシランの反応生成物を含む。
【0019】
有用なポリエポキシドは少なくとも2つのエポキシ基を有する。例えば、ポリエポキシドは、少なくとも3つのエポキシ基、少なくとも4つのエポキシ基、少なくとも5つのエポキシ基、又は更には少なくとも6つのエポキシ基を有していてもよい。多くのポリエポキシドが市販されている。他のものは従来の方法によって容易に合成することができる。
【0020】
例示のポリペプチドとしては、モノマーポリエポキシド、オリゴマーポリエポキシド、ポリマーポリエポキシドが挙げられる。好適なポリエポキシドは、1つ以上のグリシジル基を含んでいても、グリシジル基を含まなくても、又はグリシジルエポキシ基及び非グリシジルエポキシ基の混合物を含んでいてもよい。有用なポリエポキシドとしては、例えば、芳香族ポリエポキシド、脂環式ポリエポキシド、及び脂肪族ポリエポキシドが挙げられてもよい。ポリエポキシドの混合物もまた使用してもよい。
【0021】
グリシジル基を含む好適なポリエポキシドの例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型樹脂及びそれらの誘導体等の多価フェノールポリグリシジルエーテル、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、並びに芳香族カルボン酸のグリシジルエステル(例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、及びピロメリト酸テトラグリシジルエステル)、並びにN、N、N’、N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンビスベンゼンアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、多価脂肪酸ポリグリシジルエステル、例えば、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレエート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート及びジグリシジルピメレートが挙げられる。市販のグリシジル基含有ポリエポキシドの例には、Huntsman Chemical Companyから入手可能な商品名ARALDITEを有するもの(例えば、ARALDITE MY−720、ARALDITE MY−721、ARALDITE 0510、ARALDITE PY−720、及びARALDITE EPN 1179)、Momentive Specialty Chemicals(Houston,Tex.)から入手可能な商品名EPON RESINを有するもの(例えば、EPON RESIN 828、EPON RESIN 826、EPON RESIN 862、及びEPON RESIN CS−377)、並びに商品名DER(例えばDER 330)、及びDEN(例えば、DEN 438及びDEN 439)を有する芳香族ポリエポキシドが含まれる。いくつかの好ましい実施形態において、ポリエポキシドにはエポキシ化ノボラック又はレゾール樹脂が含まれる。いくつかの好ましい実施形態において、ポリエポキシドにはN、N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリンが含まれる。
【0022】
グリシジル基を含まない好適なポリエポキシドの例としては、エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、Dow Chemical Co.から商品名ERL−4221で入手可能)3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、Dow Chemical Co.から商品名ERL−4201で入手可能))、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、Dow Chemical Co.から商品名ERL−4206で入手可能)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、Dow Chemical Co.から商品名ERL−0400で入手可能)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、Dow Chemical Co.から商品名ERL−4289で入手可能)、ジペンテリックジオキシド(例えば、Dow Chemical Co.から商品名「ERL−4269」で入手可能)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,1’−スピロ−3’,4’−エポキシシクロヘキサン−1,3−ジオキサン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、エポキシ化ポリブタジエン、及びエポキシ化大豆油が挙げられる。
【0023】
これらのうち、エポキシ化大豆油(CAS Reg.No.8013−07−8)は、研磨粒子の表面処理として使用されるエポキシ官能性カップリング剤の作製における使用に好ましい。エポキシ化大豆油(epoxidized soybean oil)(エポキシ化大豆油(epoxidized soya bean oil)とも称される)は容易に入手可能であり、かつ世界中で最も低コストの植物油のうちの1つである。エポキシ化大豆油は、大豆油が過酸化水素及び酢酸又はギ酸のいずれかによって酸化した結果である。エポキシ化大豆油は、工業上、比較的低価格で大量に入手可能である。エポキシ化大豆油は、主要構成成分として以下を含む混合物である。
【化2】
及び
【化3】
【0024】
したがって、それは、本開示を実施するのに有用なポリエポキシドの供給源としての使用に好適である。同様に、他の多価不飽和植物油のエポキシ化誘導体をまた、ポリエポキシドの供給源として使用してもよい。例としては、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化菜種油、エポキシ化綿実油、エポキシ化サフラワー油、及びエポキシ化ヒマワリ油が挙げられる。
【0025】
本開示によるエポキシ官能性カップリング剤を作製するのに有用なアミノシランは式
HNR
1R
2
[式中、R
1は−Z−SiL
3を表し、
R
2は−Z−SiL
3又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、又はブチル)基を表す]
によって表される。
【0026】
各Zは独立して1〜18個の炭素原子を有する二価結合基を表す。好ましい連結基Zとしては、例えばメチレン、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、及びシクロヘキサン−1,4−ジイル等の1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基及び脂環式基、−CH
2CH
2OCH
2CH
2−、−CH
2CH
2O(CH
2CH
2)
2−、並びに、例えばフェニレン及び
【化4】
[式中、n=1、2、又は3である]等の芳香族基(例えば、アリーレン及びアルキレニルアリーレン)が挙げられる。
【0027】
各Lは独立して加水分解性基(すなわち、水に曝露されたときにケイ素原子から自発的に解離する基)を表す。加水分解性基の例としては、−Cl、−Br、−OH、−OC(=O)CH
3、−OCH
3、−OSi(CH
3)
3、及び−OC
2H
5が挙げられる。
【0028】
例示の有用なアミノシランとしては、Gelest,Morrisville,Pennsylvaniaから全て入手可能なビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−メチルアミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、並びに従来の方法によって作製することができるN−メチルアミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0029】
平均すると、ポリエポキシドのエポキシ基のうち半分以下がアミノシランと反応している。いくつかの実施形態において、ポリエポキシドのエポキシ基のうちの1〜3つがアミノシランと反応している。いくつかの実施形態において、ポリエポキシドのうちの1つ又は2つのエポキシ基がアミノシランと反応している。
【0030】
概して、アミノシランがポリエポキシドとエポキシ官能性カップリング剤を形成するには、任意選択で軽く加熱しながら、単に混合するだけで十分である。必要に応じて、反応は有機溶媒中で又は無溶媒下で行ってもよい。
【0031】
いくつかの立体的に障害された又は置換されたアミノシラン及びポリエポキシドは、これらの反応性が低いために、反応温度を高くし、エポキシ官能性カップリング剤を形成する必要がある。この場合、未反応のアミノシラン及びポリエポキシドのブレンドを、基材に適用することができ、その後、高温での更なる加工ステップ(例えば、樹脂硬化)中に、実際の接着促進剤をin situで生成することができる。
【0032】
本開示による1種類を超えるエポキシ官能性カップリング剤の組み合わせを使用してもよい。一部の適用に関しては、その組み合わせは、従来のカップリング剤を上述のエポキシ官能性シランカップリング剤とともに更に含むことが望ましい場合がある。
【0033】
エポキシ官能性シランカップリング剤は、バインダー前駆体材料と反応できるような基剤表面の処理に有用であり、エポキシ樹脂反応性バインダー前駆体系(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂、2成分ポリウレタン、ポリイソシアネート、及びヒドロキシ−又はアミノ−官能アクリル系樹脂)に対するカップリング剤の機能を果たし、少なくともいくつかの研磨状態下で研磨粒子の固定が改善された結合研磨物品をもたらす。一般的には、このことは、エポキシ官能性シランカップリング剤を基材へ単に適用することによって、無溶媒下で達成することができるが、必要に応じて、例えばコーティング量を極めて少量にするために溶媒を使用してもよい。
【0034】
エポキシ官能性シランカップリング剤は、バインダー前駆体材料と反応できるような(例えば、下記のような)研磨粒子表面の処理に特に有用であり、少なくともいくつかの研磨状態下で研磨粒子の固定が改善された、結合、被覆又は不織研磨物品が得られる。典型的には、これは、エポキシ官能性シランカップリング剤を研磨粒子へ単に適用することによって、無溶媒下で達成することができるが、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。
【0035】
ここで
図1を参照すると、本開示の1つの実施形態による例示の樹脂結合研磨カットオフホイール100は、カットオフホイール100を例えば動力駆動の工具に取り付けるために使用される中央孔112を有する(図示せず)。カットオフホイール100は、任意選択の研磨粒子20(例えば、本開示によるエポキシ官能性アミノシランカップリング剤で表面処理された成形及び/又は破砕研磨粒子)、並びに/又は任意選択の従来の粉砕し分級された研磨粒子30、並びに樹脂結合剤25を含む。
【0036】
ここで
図2を参照すると、カットオフホイール100は、任意選択の研磨粒子(例えば、成形及び/又は破砕研磨粒子)20、及び/又は任意選択の従来の粉砕研磨粒子30、及びバインダー材料25を含む。カットオフホイール100は、任意選択の第1スクリム115及び任意選択の第2スクリム116を有し、これはカットオフホイール100の両主表面上に配置される。
【0037】
本開示による樹脂結合研磨物品(例えば、研削ホイール及び切断ホイール)は、概ね、成型プロセスによって作製される。成型中に、液状有機、粉状無機、粉状有機、又はこれらの組み合わせのいずれかのバインダー前駆体材料が研磨粒子と混合される。場合によっては、液状媒体(樹脂又は溶媒のいずれか)を、研磨粒子に最初に適用し、その外面を湿潤させ、その後、湿潤粒子を粉状媒体と混合する。本開示による樹脂結合研磨物品(例えば研磨ホイール)は、圧縮成型工程、射出成型工程、トランスファー成型工程等によって作製されてもよい。成型は、ホットプレス法若しくはコールドプレス法又は当業者に公知の任意の好適な方法のいずれかによって行うことができる。
【0038】
樹脂結合剤は、1つ以上の有機バインダー材料を含む。有機結合剤材料は、典型的には、樹脂結合研磨ホイールの総重量に基づいて、5重量%〜30重量%、より典型的には10重量%〜25重量%、より典型的には15重量%〜24重量%の量で含まれる。フェノール樹脂は、最も一般に用いられる有機バインダー材料であり、粉状形状及び液状状態の両方で使用されうる。フェノール樹脂が広く使用されているが、例えばエポキシ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アミノプラスト、及びエポキシ反応性アクリルバインダーを含めた、他の有機バインダー材料を使用することも本開示の範囲内である。有機バインダー材料はまた、バインダー材料の特性を改良し又は変えるために、他のバインダー材料によって改質されてもよい。
【0039】
所望の有機バインダー材料に応じて、触媒及び/又は開始剤を有機バインダー前駆体材料(すなわち、硬化してバインダー材料を形成する材料)に添加してもよい。典型的には、熱を適用し、有機バインダー前駆体材料の硬化を促進するが、他のエネルギー源(例えば、マイクロ波放射線、紫外光、可視光)を使用してもよい。使用される特定の硬化剤及び量は当業者であれば明らかであろう。
【0040】
有用なフェノール樹脂としては、ノボラック又はレゾールフェノール樹脂が挙げられる。ノボラックフェノール樹脂は、酸性触媒されること、ホルムアルデヒドのフェノールに対する比が1未満、典型的には、0.5:1〜0.8:1であることを特徴とする。レゾールフェノール樹脂は、アルカリ触媒されること、及びホルムアルデヒドのフェノールに対する比が1以上、典型的には1:1〜3:1であることを特徴とする。ノボラック又はレゾールフェノール樹脂は、(例えば、エポキシ化合物との反応によって)化学的に修飾されていてもよく、又は未修飾であってもよい。フェノール樹脂の硬化に好適な例示の酸性触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、シュウ酸、及びp−トルエンスルホン酸が挙げられる。フェノール樹脂の硬化に好適なアルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、有機アミン、又は炭酸ナトリウムがある。
【0041】
フェノール樹脂は周知であり、市販供給源から容易に入手可能である。市販のノボラック樹脂の例としては、2ステップの粉末フェノール樹脂(Durez Corporation of Addison,Texasによって商品名VARCUM(例えば、29302)として販売されている)であるDUREZ 1364、又はHEXION AD5534 RESIN(Hexion Specialty Chemicals,Inc.,Louisville,Kentuckyから販売されている)が挙げられる。本開示の実施に有用な市販のレゾールフェノール樹脂の例としては、Durez Corporationによって商品名VARCUM(例えば、29217、29306、29318、29338、29353)として販売されているもの;Ashland Chemical Co.,Bartow,Floridaによって商品名AEROFENE(例えばAEROFENE 295)として販売されているもの;及びKangnam Chemical Company Ltd.,Seoul,South Koreaによって商品名「PHENOLITE」(例えばPHENOLITE TD−2207)として販売されているものが挙げられる。
【0042】
有機バインダー前駆体材料の硬化温度は、選択された材料及びホイールの設計によって異なる。好適な条件の選択は、当業者の能力の範囲内である。フェノールバインダーの例示の条件としては、室温で直径4インチ当たり約20トン(244kg/cm
2)の圧力を適用した後、最高約185℃の温度で有機バインダー前駆体材料が硬化するのに十分な時間加熱することが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、樹脂結合研磨ホイールは、バインダー材料及び研磨粒子の総重量に基づいて、約10〜約65重量%、典型的には30〜60重量%、より典型的には40重量%〜60重量%の研磨粒子(例えば、成形及び/又は破砕研磨粒子)を含む。
【0044】
αアルミナ、マグネシウムアルミナスピネル、及び希土類の六方晶系アルミン酸塩の微結晶から構成される研磨粒子(例えば、成形及び/又は破砕研磨粒子)は、例えば、米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)、並びに米国特許出願公開第2009/0165394(A1)号(Cullerら)、及び同第2009/0169816(A1)号(Ericksonら)に記載の方法による、ソルゲルαアルミナ粒子前駆体を使用して調製してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、αアルミナ系研磨粒子(例えば成形研磨粒子)は、複数ステップのプロセスにしたがって作製することができる。簡潔に言うと、方法は、αアルミナに変換することができる種晶添加又は種晶非添加のいずれかのゾルゲルαアルミナ前駆体分散体を作製するステップと、成形研磨粒子の所望の外側形状を有する1つ以上の金型キャビティにゾルゲルを充填するステップと、ゾルゲルを乾燥させて研磨粒子前駆体を形成するステップと、成形研磨粒子前駆体を金型キャビティから取り出すステップと、成形研磨粒子前駆体をか焼し、か焼された成形研磨粒子前駆体を形成するステップと、次いでか焼された成形研磨粒子前駆体を焼結し、成形研磨粒子を形成するステップとを含む。以下にプロセスを更に詳しく説明する。
【0046】
第1のプロセスステップは、αアルミナに変換することができる種晶添加又は種晶非添加のいずれかのαアルミナ前駆体分散体を準備することを伴う。αアルミナ前駆体分散体は、揮発性成分である液体を含むことが多い。1つの実施形態において、揮発性成分は水である。分散体は、分散体の粘度を十分に低くし、金型キャビティへの充填及び金型表面の複製を可能にするために十分な量の液体を含むべきであるが、後に続く液体の金型キャビティからの取り出しが非常に高価になるような大量の液体を含むべきではない。1つの実施形態において、αアルミナ前駆体分散体は、2重量%〜90重量%の、酸化アルミニウム一水和物(ベーマイト)粒子等のαアルミナに変換することができる粒子、及び少なくとも10重量%、又は50重量%〜70重量%、又は50重量%〜60重量%の、水等の揮発性成分を含む。逆に、いくつかの実施形態において、αアルミナ前駆体分散体は、30重量%〜50重量%又は40重量%〜50重量%の固形物を含む。
【0047】
また、ベーマイト以外の酸化アルミニウム水和物を使用することもできる。ベーマイトは、公知の技術によって調製することが、又は市販のものを入手することができる。市販のベーマイトの例としては、両方ともSasol North America,Inc.,Houston,Texasから入手可能な商品名「DISPERAL」及び「DISPAL」を有する、又はBASF Corporation,Florham Park,New Jerseyから入手可能な商品名「HiQ−40」を有する製品が挙げられる。これらの酸化アルミニウム一水和物は、比較的純粋であり、すなわち、一水和物以外の水和物相を含んでいたとしても比較的少量であり、かつ高表面積を有する。
【0048】
得られた成形研磨粒子の物理的特性は、概ね、αアルミナ前駆体分散体に使用される材料のタイプによって決まる。1つの実施形態において、αアルミナ前駆体分散体はゲル状態である。本明細書において使用される「ゲル」は、液体に分散した固体の3次元ネットワークである。
【0049】
αアルミナ前駆体分散体は、改質用添加剤又は改質用添加剤の前駆体を含んでいてもよい。改質用添加剤は、研磨粒子のいくつかの所望の特性を強化するため、又は後に続く焼結ステップの有効性を高めるために機能することができる。改質用添加剤又は改質用添加の剤前駆体は、可溶性塩、典型的には水溶性塩の形態とすることができる。これらは、典型的には、金属含有化合物からなり、マグネシウム、亜鉛、鉄、ケイ素、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、イットリウム、プラセオジウム、サマリウム、イッテルビウム、ネオジム、ランタン、ガドリニウム、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、チタンの酸化物の前駆体、及びこれらの混合物とすることができる。αアルミナ前駆体分散体中に存在することができるこれらの添加剤の具体的な濃度は、当該分野の技術に基づいて変更することができる。
【0050】
典型的には、改質用添加剤又は改質用添加剤の前駆体を導入することによって、αアルミナ前駆体分散体はゲルになる。αアルミナ前駆体分散体はまた、一定の時間をかけて加熱することによってゲルにすることもできる。αアルミナ前駆体分散体はまた、水和又はか焼された酸化アルミニウムのαアルミナへの転移を促進するために、核形成剤(種晶)を含むこともできる。本開示に好適な核形成剤としては、αアルミナ、α酸化第二鉄若しくはその前駆体、酸化チタン及びチタン酸塩、酸化クロム、又は転移の核となる任意の他の材料の微粒子が挙げられる。核形成剤を使用する場合、その量は、αアルミナの転移をもたらすのに十分な量とするべきである。このようなαアルミナ前駆体分散体の核を生成することは、米国特許第4,744,802号(Schwabel)に開示されている。
【0051】
解膠剤をαアルミナ前駆体分散体に添加し、より安定なヒドロゾル又はコロイド状αアルミナ前駆体分散体を製造することができる。好適な解膠剤は、酢酸、塩酸、ギ酸及び硝酸等の、一塩基酸又は酸化合物である。多塩基酸を使用してもよいが、多塩基酸はαアルミナ前駆体分散体を急速にゲル化することがあり、取り扱い又は追加成分をそこに導入することを困難にする。ベーマイトの一部の市販供給源は、安定なαアルミナ前駆体分散体の形成を助ける(吸収されたギ酸又は硝酸等の)酸タイターを含む。
【0052】
αアルミナ前駆体分散体は、例えば単に、酸化アルミニウム一水和物を解膠剤含有水と混合することによって、又は酸化アルミニウム一水和物のスラリーを生成し、そこに解膠剤を加えることによって等、任意の好適な手段によって形成することができる。
【0053】
消泡剤又は他の好適な化学物質を添加し、気泡を形成する傾向又は混合中に空気が混入する傾向を低減することができる。湿潤剤、アルコール、又はカップリング剤等の追加の化学物質を必要に応じて添加することができる。αアルミナ研磨粒子は、米国特許第5,645,619号(Ericksonら)に開示されているように、シリカ及び酸化鉄を含んでいてもよい。αアルミナ研磨粒子は、米国特許第5,551,963号(Larmie)に開示されているように、ジルコニアを含んでいてもよい。あるいは、αアルミナ研磨粒子は、米国特許第6,277,161号(Castro)に開示されているように、マイクロ構造体又は添加剤を有することができる。
【0054】
第2のプロセスステップは、少なくとも1つの金型キャビティ、好ましくは複数のキャビティを有する金型を準備することを伴う。金型は、概ね、平面の底面と複数の金型キャビティとを有することができる。複数のキャビティを、生産工具に形成することができる。生産工具は、ベルト、シート、連続ウェブ、輪転グラビア等のコーティングロール、コーティングロール上に取り付けられたスリーブ、又はダイとすることができる。1つの実施形態において、生産工具はポリマー材料を含む。好適なポリマー材料の例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはこれらの組み合わせ等の熱可塑性樹脂、又は熱硬化性材料が挙げられる。1つの実施形態において、工具全体がポリマー材料又は熱可塑性材料から作製される。他の実施形態において、乾燥中にゾルゲルと接触する工具表面、例えば複数のキャビティ表面は、ポリマー材料又は熱可塑性材料を含み、工具の他の部分は、他の材料から作製することができる。好適なポリマーコーティングを金属工具に適用して、実施例の方法によって表面張力特性を変更してもよい。
【0055】
ポリマー工具又は熱可塑性工具は、金属マスター工具から複製することができる。マスター工具は、生産工具に望ましい逆パターンを有することになる。マスター工具は、生産工具と同一の方法で作製することもできる。1つの実施形態において、マスター工具は、金属、例えばニッケルで作製し、ダイヤモンドターニング加工される。ポリマーシート材料は、マスター工具とともに、2つを一緒に加圧成形することによりポリマー材料がマスター工具パターンでエンボス加工されるように、加熱することができる。ポリマー又は熱可塑性材料をまた、マスター工具上へ押し出し又はキャスティングし、次いで加圧成形することもできる。熱可塑性材料を冷却し、固化させ生産工具を生産する。熱可塑性生産工具を利用する場合、熱可塑性生産工具を歪めて寿命を制限するような過度の熱を生成しないよう注意が必要である。生産工具又はマスター工具の設計及び作製に関する更なる情報は、米国特許第5,152,917号(Pieperら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,672,097号(Hoopmanら)、同第5,946,991号(Hoopmanら)、同第5,975,987号(Hoopmanら)、及び同第6,129,540号(Hoopmanら)に見出すことができる。
【0056】
キャビティへは、金型の天面又は底面にある開口部からアクセスすることができる。場合によっては、キャビティは、金型の厚さ全体まで延在することができる。あるいは、キャビティは、金型の厚さの一部分のみに延在することができる。1つの実施形態において、天面は、実質的に一様な深さを有するキャビティを備えた金型の底面と実質的に平行である。金型のうちの少なくとも1つの側、すなわちキャビティが形成される側は、揮発性構成成分を除去するステップの間、周囲の外気に曝露したままにすることができる。
【0057】
キャビティは、成形研磨粒子を作製するための特定の3次元形状を有する。深さの寸法は、天面から底面の最下点までの垂直距離と等しい。所与のキャビティの深さは、一様とすることができ、又はその長さ及び/若しくは幅に沿って変化することができる。所与の金型のキャビティは、同一の形状又は異なる形状とすることができる。
【0058】
第3のプロセスステップは、金型内のキャビティにαアルミナ前駆体分散体を(例えば、従来の技法によって)充填することを伴う。いくつかの実施形態において、ナイフロールコーター又は真空スロットダイコーターを使用することができる。必要に応じて、金型からの粒子の取り出しを支援するために離型剤を使用することができる。典型的な離型剤としては、ピーナッツオイル又は鉱油、魚油等の油、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、及び黒鉛が挙げられる。概して、離型剤を所望の場合、金型の単位面積当たり、約0.1mg/in
2(0.02mg/cm
2)〜約3.0mg/in
2(0.46mg/cm
2)、又は約0.1mg/in
2(0.02mg/cm
2)〜約5.0mg/in
2(0.78mg/cm
2)の離型剤が存在するように、水又はアルコール等の液体中でピーナッツオイル等の離型剤が、ゾルゲルと接触する生産工具の表面に適用される。いくつかの実施形態において、金型の天面は、αアルミナ前駆体分散体で被覆される。αアルミナ前駆体分散体は、天面上にポンプ注入することができる。
【0059】
次に、スクレーパ又はならし棒を使用し、αアルミナ前駆体分散体を金型のキャビティに完全に押し入れることができる。キャビティに入らないαアルミナ前駆体分散体の残り部分は、金型の天面から除去し、再利用することができる。いくつかの実施形態において、αアルミナ前駆体分散体のごく一部分が天面に残ることがあり、他の実施形態において、天面は分散体が実質的に存在しない。スクレーパ又はならし棒により適用される圧力は、典型的には、100psi(0.7MPa)未満、50psi(0.3MPa)未満、又は更には10psi(69kPa)未満である。いくつかの実施形態において、αアルミナ前駆体分散体の曝露表面が実質的に天面を超えて延在することはなく、結果として得られる成形研磨粒子の一様な厚さが確保される。
【0060】
第4のプロセスステップは、揮発性構成成分を除去し、分散体を乾燥することを伴う。望ましくは、揮発性構成成分は速い蒸発速度で除去される。いくつかの実施形態において、蒸発による揮発性構成成分の除去は、この揮発性構成成分の沸点を上回る温度で生じる。乾燥温度の上限は、金型を作製する材料によって決まることが多い。ポリプロピレン工具に関しては、温度はプラスチックの融点未満とするべきである。1つの実施形態において、固体が約40〜50%の水分散体及びポリプロピレン製金型に関しては、乾燥温度は、約90℃〜約165℃、又は約105℃〜約150℃、又は約105℃〜約120℃とすることができる。高い温度によって、生産速度を向上することができるが、ポリプロピレン工具が劣化し、金型としての耐用年数が制限されることがある。
【0061】
第5のプロセスステップは、結果として得られた成形研磨粒子前駆体を金型キャビティから取り出すことを伴う。成形研磨粒子前駆体は、重力、振動、超音波振動、真空、又は加圧空気のプロセスを、単独で又は組み合わせて金型に使用し、金型キャビティから粒子を取り出すことによって、キャビティから取り出すことができる。
【0062】
研磨粒子前駆体は、金型の外で更に乾燥することができる。αアルミナ前駆体分散体を、金型内で所望のレベルに乾燥する場合には、この追加の乾燥ステップは不要である。しかし、場合によっては、この追加の乾燥ステップを採用し、金型内にαアルミナ前駆体分散体が滞留する時間を最低限にすることが経済的であり得る。典型的には、成形研磨粒子前駆体は、10〜480分間又は120〜400分間、50℃〜160℃又は120℃〜150℃の温度で乾燥する。
【0063】
第6のプロセスステップは、成形研磨粒子前駆体をか焼することを伴う。か焼の間、本質的に全ての揮発性材料は除去され、αアルミナ前駆体分散体に存在していた種々の構成成分が金属酸化物へ変換される。成形研磨粒子前駆体は、概ね、400℃〜800℃の温度に加熱され、水分がなくなり、かつ90重量%を超える任意の揮発性結合材料が除去されるまで、この温度範囲内で維持される。任意選択のステップにおいて、含浸プロセスによって改質用添加剤を導入することが望ましい場合がある。水溶性塩は、か焼された成形研磨粒子前駆体の孔に含浸することによって導入できる。次いで、成形研磨粒子前駆体を再び予備燃焼する。この選択肢は、米国特許第5,164,348号(Wood)に更に記載されている。
【0064】
第7のプロセスステップは、か焼された成形研磨粒子前駆体を焼結し、αアルミナ粒子を形成することを伴う。焼結前は、か焼された成形研磨粒子前駆体は完全に緻密ではなく、したがって、成形研磨粒子として使用するには所望の硬度に欠けている。か焼された成形研磨粒子前駆体を1000℃〜1650℃の温度に加熱し、実質的に全てのαアルミナ一水和物(又は同等のもの)がαアルミナに変換され、多孔率が15体積%未満に低減されるまで、それらをこの温度範囲内で維持することにより焼結を行う。このレベルの変換を達成するために、か焼された成形研磨粒子前駆体を焼結温度に曝露しなくてはならない時間の長さは、種々の因子によって決まるが、通常、5秒〜48時間が典型的である。
【0065】
他の実施形態において、焼結ステップの持続時間は1分間〜90分間の範囲である。焼結後、成形研磨粒子は、10GPa、16GPa、18GPa、20GPa、又はこれらを超えるビッカース硬度を有することができる。
【0066】
他のステップを使用して、例えば、か焼温度から焼結温度まで材料を急速に加熱すること、αアルミナ前駆体分散体を遠心分離し、スラッジ及び/又は廃棄物を除去することによって、記載したプロセスを変更することができる。更に、必要に応じて、2つ以上のプロセスステップを組み合わせることによってこのプロセスを変更することができる。本開示のプロセスを変更するために使用できる従来のプロセスステップは、米国特許第4,314,827号(Leitheiser)により完全に記載されている。
【0067】
成形研磨粒子を作製する方法に関する更なる情報は、米国特許出願公開第2009/0165394(A1)号(Cullerら)に開示されている。
【0068】
成形研磨粒子は、好ましくは、ダイヤモンド工具を使用して彫られた工具(すなわち、金型)を使用して作製し、それによって例えばスタンピング又はパンチング等の他の作製代替手段よりも、極めて精細な形状が得られる。典型的には、工具表面におけるキャビティは、鋭角沿いに合流する平坦な面を有し、切頭角錐形の側部及び頂部を形成する。結果として得られる成形研磨粒子は、それぞれの名目上の平均形状を有し、これは工具表面におけるキャビティの形状(例えば切頭角錐形)に対応するが、名目上の平均形状からの変形(例えばランダムな変形)が製造中に生じる場合があり、このような変形を呈する成形研磨粒子は、本明細書において使用される成形研磨粒子の定義内に含まれる。
【0069】
好ましくは、成形研磨粒子の底部及び頂部は実質的に並行であり、プリズム形状又は切頭角錐形状をもたらし、かつ底部と各側部との間の2面角は独立して45〜90度、典型的には70〜90度、より典型的には75〜85度の範囲であってもよいが、これらは必須要件ではない。
【0070】
本明細書において成形研磨粒子に言及して使用される「長さ」という用語は、成形研磨粒子の最大寸法を指す。「幅」は、長さに垂直である成形研磨粒子の最大寸法を指す。「厚さ」又は「高さ」は、長さ及び幅に垂直である成形研磨粒子の寸法を指す。
【0071】
成形研磨粒子は、典型的には、0.001mm〜26mm、より典型的には0.1mm〜10mm、より典型的には0.5mm〜5mmの範囲の長さを有するように選択されるが、他の長さも使用してもよい。いくつかの実施形態において、長さは、樹脂結合研磨物品(例えば、ホイール)の厚さの分数として表してもよく、樹脂結合研磨物品の厚さに含まれる。例えば、成形研磨粒子は、樹脂結合研磨ホイールの厚さの半分を超える長さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、成形研磨粒子の長さは、樹脂結合研磨ホイールの厚さを超えていてもよい。
【0072】
成形研磨粒子は、典型的には、0.001mm〜26mm、より典型的には0.1mm〜10mm、より典型的には0.5mm〜5mmの範囲の幅を有するように選択されるが、他の長さも使用してもよい。
【0073】
成形研磨粒子は典型的には、0.005mm〜1.6mm、より典型的には0.2〜1.2mmの範囲の厚さを有するように選択される。
【0074】
いくつかの実施形態において、成形研磨粒子は、少なくとも2、3、4、5、6、又はこれらを超えるアスペクト比(長さ対厚さ)を有していてもよい。
【0075】
成形研磨粒子上の表面コーティングを使用し、研磨物品中の成形研磨粒子とバインダー材料との間の接着性を改質してもよく、又は成形研磨粒子の静電沈着を促進することができる。1つの実施形態において、米国特許第5,352,254号(Celikkaya)に記載されているような表面コーティングを、成形研磨粒子の重量に対して0.1〜2%表面コーティング量で使用してもよい。このような表面コーティングは、米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)、同第5,011,508号(Waldら)、同第1,910,444号(Nicholson)、同第3,041,156号(Rowseら)、同第5,009,675号(Kunzら)、同第5,085,671号(Martinら)、同第4,997,461号(Markhoff−Mathenyら)、及び同第5,042,991号(Kunzら)に記載されている。更に、表面コーティングは成形研磨粒子のキャッピングを防ぐことができる。キャッピングは、金属粒子が研磨中の被加工物から成形研磨粒子の頂部に溶着される現象を説明する用語である。上記の機能を果たす表面コーティングは、当業者には公知である。
【0076】
樹脂結合研磨物品は、破砕研磨粒子を含んでいてもよく、砕研磨粒子だけで含んでいても、成形研磨粒子との組み合わせで含んでいてもよい。成形研磨粒子と破砕研磨粒子の両方を使用する場合、破砕研磨粒子は、典型的には、成形研磨粒子よりも細かいサイズ等級又は複数のサイズ等級(例えば、複数のサイズ等級を使用する場合)であるが、それは必須要件ではない。
【0077】
有用な破砕研磨粒子としては、例えば、溶融酸化アルミニウム、熱処理した酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、商品名3M CERAMIC ABRASIVE GRAINとして3M Company,St.Paul,Minnesotaから市販されているもの等のセラミック酸化アルミニウム材料、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、ゾルゲル由来研磨粒子、酸化鉄、クロミア、セリア、ジルコニア、チタニア、ケイ酸塩、酸化スズ、(石英、ガラスビーズ、ガラス泡、及びガラスファイバーなどの)シリカ、(タルク、粘土(例えば、モンモリロナイト)、長石、雲母、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸塩カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等の)ケイ酸塩、フリント、並びにエメリーの粉砕粒子が挙げられる。ゾルゲル由来研磨粒子の例は、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、同第4,623,364号(Cottringerら)、同第4,744,802号(Schwabel)、同第4,770,671号(Monroeら)、及び、同第4,881,951号(Monroeら)に見出すことができる。研磨粒子は、例えば、米国特許第4,652,275号(Bloecherら)又は同第4,799,939号(Bloecherら)に記載されているもの等の研磨粒塊を含み得ることも考えられる。
【0078】
典型的には、破砕研磨粒子は、研磨剤工業界で認められている特定の名目上の等級にしたがって独立して分級される。研磨剤工業界で認められている例示的な等級規格としては、ANSI(American National Standards Institute)、FEPA(Federation of European Producers of Abrasives)、及びJIS(日本工業規格)によって公表されているものが挙げられる。このような工業界で認められている等級規格としては、例えば、ANSI4、ANSI6、ANSI8、ANSI16、ANSI24、ANSI30、ANSI36、ANSI40、ANSI50、ANSI60、ANSI80、ANSI100、ANSI120、ANSI150、ANSI180、ANSI220、ANSI240、ANSI280、ANSI320、ANSI360、ANSI400、及びANSI600、FEPA P8、FEPA P12、FEPA P16、FEPA P24、FEPA P30、FEPA P36、FEPA P40、FEPA P50、FEPA P60、FEPA P80、FEPA P100、FEPA P120、FEPA P150、FEPA P180、FEPA P220、FEPA P320、FEPA P400、FEPA P500、FEPA P600、FEPA P800、FEPA P1000、FEPA P1200、FEPA F8、FEPA F12、FEPA F16、及びFEPA F24、並びにJIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、及びJIS10,000が挙げられる。より典型的には、破砕酸化アルミニウム粒子及び種晶非添加ゾルゲル由来アルミナ系研磨粒子は、個別にANSI60及び80、又はFEPA F36、F46、F54及びF60、又はFEPA P60及びP80の等級規格に分級される。
【0079】
あるいは、研磨粒子は、ASTM E−11「Standard Specification for Wire Cloth and Sieves for Testing Purposes」に適合するUSA標準試験用ふるいを使用して名目上のふるい等級に等級分けすることができる。ASTM E−11は、指定された粒子サイズにしたがって物質を分類するために、枠に取り付けられた織ワイヤクロス媒体を使用している試験用ふるいの設計及び構造に関する必要条件を規定している。典型的な表記は、−18+20のように表される場合があり、これは、成形研磨粒子が、18号ふるいのASTM E−11規格に適合する試験用ふるいを通過し、20号ふるいのASTM E−11規格に適合する試験用ふるいに残ることを意味する。1つの実施形態において、成形研磨粒子は、大部分の粒子が18号のメッシュ試験用ふるいを通過し、20、25、30、35、40、45、又は50号のメッシュ試験用ふるいに残ることができるような粒子サイズを有する。種々の実施形態において、成形研磨粒子は、−18+20、−20/+25、−25+30、−30+35、−35+40、−40+45、−45+50、−50+60、−60+70、−70/+80、−80+100、−100+120、−120+140、−140+170、−170+200、−200+230、−230+270、−270+325、−325+400、−400+450、−450+500、又は−500+635を含む名目上のふるい等級を有することができる。あるいは、−90+100などのカスタムメッシュサイズを使用してもよい。
【0080】
研磨粒子は、例えば、樹脂結合研磨物品全体に一様に又は多様に分配されてもよい。例えば、樹脂結合研磨ホイールが研削ホイール又はカットオフホイールである場合は、研磨粒子は、(例えば、研削ホイール若しくはカットオフホールの外周面から離れて位置する)中央部に向かって、又は外側縁部に、すなわち、研削ホイール若しくはカットオフホイールの外縁部のみに集中していてもよい。中央部分は、より少量の研磨粒子を含んでもよい。他の変形において、第1の研磨粒子がホイールの片側に存在し、別の研磨粒子が反対側に存在していてもよい。しかし、典型的には、ホイールの製造が容易であるため、全ての研磨粒子は互いの間で均質的に分布する。
【0081】
本開示による樹脂結合研磨ホイールは、他の構成成分の重量範囲必要要件が満たされていることを条件として、上述のもの以外の追加の研磨粒子を含んでいてもよい。例としては、(溶融アルミナジルコニアを含む)溶融酸化アルミニウム、褐色酸化アルミニウム、青色酸化アルミニウム、(緑色炭化ケイ素を含む)炭化ケイ素、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、クロミア、セリア、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
研磨粒子のうちの少なくとも一部は、本開示によるエポキシ官能性カップリング剤で表面処理され、バインダー材料に対する研磨粒子の接着性が強化される。研磨粒子を処理してから、それをバインダー材料前駆体と組み合わせても、又はエポキシ官能性カップリング剤をバインダー材料前駆体中に含ませることによって、それをin situで表面改質してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示による樹脂結合研磨ホイールは、他の構成成分の重量範囲必要要件が満たされていることを条件として、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子、氷晶石、塩化ナトリウム、FeS
2(二硫化鉄)、又はKBF
4等の追加の研削助剤を、典型的には1〜25重量%、より典型的には10〜20重量%の量で含む。研削助剤は、概ね、切断境界面の温度を低下させることによってカットオフホイールの切断特性を改良するために添加される。研削助剤は、研削助剤粒子の単一粒子又は粒塊の形態であってもよい。精確に成形された研削助剤粒子の例は、米国特許出願公開第2002/0026752(A1)号(Cullerら)に教示されている。
【0084】
いくつかの実施形態において、バインダー材料は、例えばSANTICIZER 154 PLASTICIZERとしてUNIVAR USA,Inc.Chicago,Illinoisから入手可能なもの等の可塑剤を含む。
【0085】
本開示による樹脂結合研磨物品は、他の構成成分の重量範囲必要要件が満たされていることを条件として、例えば充填剤粒子等の追加成分を含んでいてもよい。充填剤粒子は、すき間を占有するためにかつ/又は多孔性をもたらすために添加してもよい。多孔性は、樹脂結合研磨物品が、使用済みの又は摩耗した研磨粒子を取り除き、新規の又は未使用の研磨粒子を露出させることを可能にする。
【0086】
本開示による樹脂結合研磨物品(例えば、ホイール)は、任意の範囲、例えば、約1体積%〜50体積%、典型的には1体積%〜40体積%の多孔率を有する。充填剤の例としては、バブル及びビーズ(例えば、ガラス、セラミック(アルミナ)、粘土、ポリマー系、金属)、コルク、石膏、大理石、石灰岩、フリント、シリカ、ケイ酸アルミニウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
本開示による樹脂結合研磨物品(例えば、ホイール)は、任意の好適な方法にしたがって作製することができる。1つの好適な方法において、種晶非添加ゾルゲル由来アルミナ系研磨粒子は、カップリング剤で被覆してから硬化性レゾールフェノールと混合する。エポキシ官能性シランカップリング剤の量は、概ね、有効量となるように選択される。例えば、エポキシ官能性シランの量は、研磨粒子100部当たり、0.01〜3部、好ましくは0.1〜0.3の量で存在するように選択されるが、この範囲外の量も用いてもよい。得られた混合物に、液状樹脂、並びに硬化性ノボラックフェノール樹脂及び氷晶石が添加される。混合物は、室温で金型に(例えば、直径4インチ当たり20トンの適用圧力(244kg/cm
2で)加圧成形される。次いで、成型ホイールを、最高約185℃の温度で、硬化性フェノール樹脂が硬化するのに十分な時間加熱することによって硬化させる。
【0088】
本開示による樹脂結合研磨ホイールは、例えば、切削ホイール及び研磨剤工業Type27(例えば、American National Standards Institute standard ANSI B7.1−2000(2000)、1.4.14項にあるような)中央部落ち込み型研削ホイールとして有用である。
【0089】
カットオフホイールは、典型的には、厚さ0.80ミリメートル(mm)〜16mm、より典型的には1mm〜8mmであり、典型的には、直径2.5cm〜100cm(40インチ)、より典型的に約7cm〜13cmを有するが、他の寸法もまた使用してもよい(例えば、直径100cmの大きさのホイールも公知である)。任意選択の中央孔は、カットオフホイールを動力駆動工具に取り付けるために使用してもよい。中央孔は、存在する場合には、典型的には直径0.5cm〜2.5cmであるが、他のサイズを使用してもよい。任意選択の中央孔は、例えば金属フランジによって補強されていてもよい。あるいは、機械的留め具を、カットオフホイールの1つの表面に対して軸方向に固定してもよい。例としては、ねじ切りポスト、ねじ切りナット、Tinnermanナット、及び差し込みピン取り付けポストが挙げられる。
【0090】
任意選択で、本開示による樹脂結合研磨ホイール、特にカットオフホイールは、例えば樹脂結合研磨ホイールの1つ若しくは2つの主表面上に配置された、又は樹脂結合研磨ホイール内に配置された、樹脂結合研磨ホイールを強化するスクリム及び/又はバッキングを更に含んでいてもよい。例としては、紙、ポリマーフィルム、金属箔、バルカン繊維、合成繊維及び/又は天然繊維の不織材(例えば、目の粗い不織合成繊維ウェブ及びメルトスパンスクリム)、合成及び/又は天然繊維の編み布地、合成繊維及び/又は天然繊維の織布(例えば、織ガラス布地/スクリム、織ポリエステル布地、これらを処理したもの、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。好適な多孔質強化スクリムの例としては、(例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、ポリイミド、及び/又はポリウレタンを含む)多孔質繊維ガラススクリム及び多孔質ポリマースクリムが挙げられ、例えば、これらはメルトスパン式、メルトブロー式、湿式、又は乾式であり得る。場合によっては、強化短繊維が結合媒体内に含まれることが望ましい場合があり、これによって繊維はカットオフホイール全体に均質的に分散される。
【0091】
本明細書において述べられている種々の補強部材(例えば、スクリム及びバッキング)の多孔率及び基本重量の選択は、研磨剤技術分野における当業者の能力の範囲内であり、典型的には目的の用途によって決まる。
【0092】
本開示による樹脂結合研磨ホイールは、例えば被加工物を研磨するのに有用である。例えば、これらは、良好な研削特性を呈すると同時に、被加工物への熱による損傷を回避し得る比較的低い操作温度を維持する研削ホイール若しくはカットオフホイールに形成されてもよい。
【0093】
カットオフホイールは、例えばIngersoll−Rand、Sioux、Milwaukee及びDotcoから入手可能なものなどの任意の直角研削工具に使用することができる。工具は、概ね、約1000〜50000RPMの速度で、電気式又は空気圧式で駆動することができる。
【0094】
使用中、樹脂結合研磨ホイールは、湿式又は乾式で使用することができる。湿式研削中、ホイールは、水、油性潤滑剤、又は水性潤滑剤と併用して使用される。本開示による樹脂結合研磨ホイールは、例えばカーボン鋼鉄シート若しくはバーストック、更にエキゾチック(exotic)な金属(例えば、ステンレス鋼若しくはチタン)等の種々の被加工物、又は更に柔軟な鉄系金属(例えば、軟鋼、低合金鋼、鋳鉄)に特に有用であり得る。
【0095】
本開示の目的及び利点を、以下の非限定的な実施例によって更に例証するが、これらの実施例で述べられる特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0096】
本開示の選択的実施形態
実施形態1. 化学結合した表面水酸基を有する基材の表面を処理する方法であって、
ポリエポキシドと
式
HNR
1R
2
[式中、R
1は−Z−SiL
3を表し、
R
2は−Z−SiL
3又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
各Zは独立して1〜18個の炭素原子を含む二価結合基を表し、
各Lは独立して加水分解性基を表す]
によって表されるアミノシランとの反応生成物を含むエポキシ官能性カップリング剤を用意することと、
エポキシ官能性カップリング剤を基材表面と接触させることと、
を含む方法。
【0097】
実施形態2.平均すると、ポリエポキシドのエポキシ基のうち半分以下がアミノシランと反応している、実施形態1に記載の方法。
【0098】
実施形態3.ポリエポキシドがエポキシ化大豆油の構成成分を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0099】
実施形態4.R2が−Z−SiL
3を表す、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
実施形態5.Lが独立してメトキシ、エトキシ、及びアセトキシからなる群から選択される、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
実施形態6.基材が研磨粒子を含む、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
実施形態7.外面を有する研磨粒子であって、外面に共有結合された接着性改質層を有しており、表面改質層が、エポキシ官能性カップリング剤と研磨粒子の外面に共有結合している水酸基との反応生成物を含み、エポキシ官能性カップリング剤が、
ポリエポキシドと
式
HNR
1R
2
[式中、R
1は−Z−SiL
3を表し、
R
2は−Z−SiL
3又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
各Zは独立して1〜6個の炭素原子を有する二価結合基を表し、
各Lは独立して加水分解性基を表す]
によって表されるアミノシランとの反応生成物を含む、研磨粒子。
【0103】
実施形態8.ポリエポキシドがエポキシ化大豆油の構成成分を含む、実施形態7に記載の研磨粒子。
【0104】
実施形態9.平均すると、ポリエポキシドのエポキシ基のうち半分以下がアミノシランと反応している、実施形態7又は8に記載の研磨粒子。
【0105】
実施形態10.R2が−Z−SiL
3を表す、実施形態7〜9のいずれか一項に記載の研磨粒子。
【0106】
実施形態11.Lが独立してメトキシ、エトキシ、及びアセトキシからなる群から選択される、実施形態7〜10のいずれか一項に記載の研磨粒子。
【0107】
実施形態12.アルミナを含む、実施形態7〜11のいずれか一項に記載の研磨粒子。
【0108】
実施形態13.バインダー材料内に保持された実施形態7〜12のいずれか一項に記載の複数の研磨粒子を含む、樹脂結合研磨物品。
【0109】
実施形態14.バインダー材料がフェノール樹脂を含む、実施形態13に記載の樹脂結合研磨物品。
【0110】
実施形態15.樹脂結合研磨ホイールを含む、実施形態13又は14に記載の樹脂結合研磨物品。
【0111】
実施形態16.樹脂結合研磨カットオフホイールを含む、実施形態13又は14に記載の樹脂結合研磨物品。
【0112】
実施形態17.ポリエポキシドと
式
HNR
1R
2
[式中、R
1は−Z−SiL
3を表し、
R
2は−Z−SiL
3又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
各Zは独立して1〜18個の炭素原子を有する二価結合基を表し、
各Lは独立して加水分解性基を表す]
によって表されるアミノシランとの反応生成物を含むエポキシ官能性カップリング剤であって、平均すると、ポリエポキシドのエポキシ基のうち半分以下がアミノシランと反応している、エポキシ官能性カップリング剤。
【0113】
実施形態18.ポリエポキシドがエポキシ化大豆油の構成成分を含む、実施形態17に記載のエポキシ官能性カップリング剤。
【0115】
本開示の目的及び利点を、以下の非限定的な実施例によって更に例証するが、これらの実施例で述べられる特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0116】
別途記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、百分率、比率等は、重量による。実施例において、別途記載のない限り、グラムは「g」と省略され、wt%は、総重量を基準とした重量パーセントを意味する。
【0117】
以下の表1に、実施例で使用された種々の材料を一覧で示す。
【表1】
【0118】
研磨粒子SAP1〜SAP3の調製
実施例中の正確に成形されたαアルミナ研磨粒子SAP1〜SAP3は、米国特許第8,142,531号(Adefrisら)実施例1の開示内容にしたがって、正三角形のポリプロピレン金型キャビティでアルミナゾルゲルを成型することによって調製した。SAP2及びSAP3は、93.1重量%のMg(NO
2)
3、6.43重量%の脱イオン水、及び0.47重量%のCo(NO
3)
2からなる溶液を含浸させることを除いて同様に作製した。更に、SAP1及びSAP2は、アルミナ微(約0.5マイクロメートル)粒子(HYDRAL COAT 5、Almatis,Pittsburgh,Pennsylvaniaから入手した)のコーティングを有しており、この粒子コーティングは米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)の教示にしたがって適用した。
【0119】
接着促進剤の合成
AP1
ESO(20g)を、50mLガラスバイアル中のSCA8.5gへ添加した。不均一な混合物は、激しく撹拌することによって急速に均一な液体になり、結果として色が(淡黄色から淡ピンク色に)変化した。次いで、混合物を、室温で少なくとも24時間連続的に混合した。混合後に得られた溶液は、典型的には淡黄色に戻っていた。
【0120】
AP2
EPB(26g)を、50mLガラスバイアル中のSCA8.51gへ添加した。不均一な混合物は、激しく撹拌することによって均一な液体になった。次いで、混合物を、少なくとも48時間連続的に混合した。得られた生成物は、典型的には無色の液状物であった。
【0121】
AP3
EPR(100g)を、200mLガラスバイアル中のSCA9.90gへ添加した。不均一な混合物は、激しく撹拌することによって均一な液体になった。次いで、混合物を、少なくとも48時間連続的に混合した。得られた生成物は、典型的には無色の液状物であった。
【0122】
AP4
DGO(2.77g)を、100mLガラスバイアル中のSCA4.26g及びTOL28.1gへ添加した。混合物を、少なくとも48時間連続的に混合した。得られた生成物は、典型的には無色の液状物であった。
【0123】
研磨粒子上へのAP1の適用−方法1
AP1を、ACEを用いて5%固形物に希釈した。次いで、AP1の100部当たりCAT1の1部を添加した。得られた溶液をよく混合し、スプレーガン(PREVAL SPRAYER、Preval,Coal City,Illinoisから入手した)を使用することによって研磨粒子上に適用した。典型的なコーティングプロセスを、研磨粒子250〜350gを含むガラスビーカー(1L)で行った。スプレープロセス中は、一様なコーティングを促進するために、ガラスビーカーを連続的に振とうした。スプレープロセスが完了したらすぐに、ビーカーを、被覆粒子表面が乾燥してくるまで室温で連続的に撹拌した。次いで、処理された粒状物を、65℃のオーブン中で30分間更に乾燥した。調製された粒状物は、カットオフホイール調製前は、プラスチックバッグ又はガラスジャーで保管した。
【0124】
研磨粒子上へのAP1の適用−方法2
100部当たりCAT1 1部をAP1へ添加し、完全に混合した。得られた溶液を、溶媒を添加せずに、純粋な研磨粒子へ適用し、研磨粒子を市販のKitchenAidミキサーで混合した。典型的なコーティングプロセスを、研磨粒子1000〜2000gを含むステンレス鋼ボウルで行った。研磨粒状物を連続的に混合しながら、AP1及びCAT1溶液を、ピペットを用いて研磨粒状物へ添加した。研磨粒状物の混合を、一様なコーティングが達成されるまで継続した。研磨粒子をそのままにし、室温で10分〜1カ月間静置してから使用した。混合後の長期にわたる時間によって、AP1と研磨粒子との縮合反応が可能になった。
【0125】
研磨粒子上へのAP1の適用−方法3
AP1を、ACEを用いて5%固形物に希釈した。次いで、AP1の100部当たりCAT2の1部を添加した。得られた溶液をよく混合し、スプレーガン(PREVAL SPRAYER、Preval,Coal City,Illinoisから入手した)を使用することによって研磨粒子上に適用した。典型的なコーティングプロセスを、研磨粒子250〜350gを含むガラスビーカー(1L)で行った。スプレープロセス中は、一様なコーティングを促進するために、ガラスビーカーを連続的に振とうした。スプレープロセスが完了したらすぐに、ビーカーを、被覆粒子表面が乾燥してくるまで室温で連続的に撹拌した。次いで、処理された粒状物を、65℃のオーブン中で30分間更に乾燥した。調製された粒状物は、カットオフホイール調製前は、プラスチックバッグ又はガラスジャーで保管した。
【0126】
研磨粒子に対するAP1の適用−方法4
AP1を、ACEを用いて5%固形物に希釈した。得られた溶液をよく混合し、スプレーガン(PREVAL SPRAYER、Preval,Coal City,Illinoisから入手した)を使用することによって研磨粒子上に適用した。典型的なコーティングプロセスを、研磨粒子250〜350gを含むガラスビーカー(1L)で行った。スプレープロセス中は、一様なコーティングを促進するために、ガラスビーカーを連続的に振とうした。スプレープロセスが完了したらすぐに、ビーカーを、被覆粒子表面が乾燥してくるまで室温で連続的に撹拌した。次いで、処理された粒状物を、65℃のオーブン中で30分間更に乾燥した。調製された粒状物は、カットオフホイール調製前は、プラスチックバッグ又はガラスジャーで保管した。
【0127】
ガラス基材上への接着促進剤の適用
対照材料及び前項で合成された接着促進剤を、TOLで5%固形物に希釈した。次いで、選択された接着促進剤100部当たりCAT1の1部を溶液へ添加し、数分間完全に混合した。調製された接着促進剤を、36番のマイヤーコーティングロッド(RD Specialties,Webster,New York,3.24ミル(0.0823mm)名目上の湿潤厚さ)を用いてソーダ石灰ガラスプレート(2.5インチ×5.0インチ×1/8インチ(6.4cm×12.7cm×0.32cm)(IPAで予め洗浄した))に適用した。適用されたコーティングを、65℃のオーブン中で30分間乾燥し、乾燥したコーティングを観察し、コーティング品質を確認した。観察されたコーティング品質を表2に要約する。
【表2】
【0128】
接着促進剤で処理されたガラス基材上へのフェノール樹脂の適用
ACEで1:1の重量比に希釈されたPRの薄層を、36番のマイヤーコーティングロッド(RD Specialties)を用い、接着促進剤で被覆されたガラス基材上に作製した。次いで、調製されたフェノール樹脂コーティングを、対流式オーブン中で硬化させた。実験用の温度プロファイル及び時間は、70℃(2時間)、100℃(2時間)、140℃(2時間)、188℃(24時間)、及び40℃(1時間)であった。
【0129】
接着性試験
次いで、硬化したフェノール樹脂を有する調製されたガラス基材試料を、ダイヤモンドガラスカッターを使用することによって1インチ×2インチ(2.5cm×5.1cm)のサイズに切断した。次いで、切断した試料を、25℃又は100℃の脱イオン水を含むビーカー中に沈めた。浸した試料を、指定の間隔(最初の10分に関しては1分毎に、かつ後の間隔に関しては60分毎に)で水浴から取り出し、フェノール樹脂コーティングを、スポンジパッドがプラスチック棒に取り付けられているスワブで静かに擦った。次いで、擦った試料を、脱イオン水で流しながら静かに洗浄した。接着性を、擦った後に残っているコーティング面積を測定することによって決定した。試験は、各試料に対して3検体で行った。結果を、室温での評価に関しては表3に、100℃での評価に関しては表4に示す。表3及び4において、測定値は3検体の平均を示す。
【表3】
【表4】
【0130】
実施例5
RP(120g)を、SAP1−3Snの400g及びSAP2−3Snの800gへ添加し、市販のKitchenAidミキサー(5KPM50モデル)にてスピード1で7分間混合した。次いで、この混合物をPPの680gと合わせ、更に7分間混合した。第2の混合ステップの途中で、PO 5mLを混合物へ添加した。
【0131】
比較例F
使用した研磨粒状物がSAP1の400g及びSAP2の800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0132】
実施例6
使用した研磨粒状物がSAP3−3Snの1200gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0133】
比較例G
使用した研磨粒状物がSAP3の1200gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0134】
研磨物品の調製
40%の相対湿度及び19℃で14時間劣化(aging:エージング)させた後に、実施例5〜12及び比較例F〜Iの混合物を、1.5mm×1.5mmの開口部を有する振動メッシュを通してそれぞれふるいにかけた。直径125mmの金型キャビティを6個有するMaternini加圧成形機を使用し、ホイールを加圧成形した。全てのホイールに関して、6個のキャビティ全てに対する加圧成形力は、3秒の滞留時間で210bar(21MPa)であった。充填する間の底部プレートの深さは−3.00mmであり、かつ鉱物が反応する間の底部プレートの深さは+0.1mmであった。加圧成形中の室温は18.0〜19.4℃であり、湿度範囲は39〜40%の相対湿度(RH)であった。125mm径ディスクのSCRIM2を、125mm径金型キャビティの底部に置いた。金型は、23mmの内径を有していた。次いで、加圧成形機の自動シャトルボックスによって、充填混合物33.5gをスクリム頂部の各キャビティ中に広げた。次いで、SCRIMを充填混合物の頂部に置き、直径の小さい実験ラベルをスクリムの頂部に置いた。Lumet PPUH in Jaslo,Poland製の28mm×22.45mm×1.2mmの金属フランジを各ラベルの頂部に置いた。金型を閉じ、スクリム−充填物−スクリムのサンドイッチを、210バール(21MPa)の荷重、3秒の滞留時間で加圧成形した。24個のホイールが各ロットから作成され、硬化前のホイール厚さは1.25〜1.30mmであり、硬化前のホイール重量は約33.5±0.5gであった。加圧成形後に、ホイールは、硬化プログラム中に形状を維持するために、アルミニウムプレートとPTFEシートとの間に積層体状に置いた。次いで、カットオフホイール前駆体を金型から取り出し、積層体中で、30時間の硬化サイクルで、詳細には、2時間で75℃に上昇、2時間で90℃に上昇、5時間で110℃に上昇、3時間で135℃に上昇、3時間で188℃に上昇、13時間に亘り188℃に維持、次いで2時間で60℃に冷却、で硬化した。ホイールの最終的な厚さは約0.053インチ(1.35mm)であった。
【0135】
切断試験方法
シート長が40インチ(16cm)、厚さが1/8インチ(3.2mm)のステンレス鋼を、その主表面が水平に対して35度の角度で傾斜した状態で固定した。ガイドレールを、傾斜しているシートの下り傾斜の天面に沿って固定した。DeWalt Model D28114 4.5インチ(11.4cm)/5インチ(12.7cm)のカットオフホイールアングルグラインダーを、工具が重力によって下方に導かれるようにガイドレールに固定した。
【0136】
評価されるカットオフホイールを、カットオフホイール工具が解放され、重力によりレールに沿って下向きに移動したとき、カットオフホイールがステンレス鋼シートの全厚みに当たるように、工具に取り付けた。カットオフホイール工具を作動し、カットオフホイールを10000rpmで回転させ、工具を解放してその下降を開始し、ステンレス鋼シートの切断された長さを、60秒後に測定した(1分の切断)。切断試験の前後にカットオフホイールの寸法を測定し、摩耗量を決定した。各実施例及び比較例から6個のカットオフホイールを、作製後そのままで試験し、かつ90%RH及び90°F(32℃)の環境室で3週間劣化させ、次いで50℃で2時間コンディショニングした後にも試験を行った。
【0137】
1分の切断は、切断ホイールがステンレス鋼シートを1分で切断する距離である。摩耗速度は、ホイールの切断時間の関数としてのホイール体積の損失である。G比率とも呼ばれる性能係数は、1分の切断を摩耗速度で割ったものである。
【0138】
実施例5〜6及び比較例F〜Gに関する切断試験の結果を以下の表5に示す。測定値は3検体の平均を示す。
【表5】
【0139】
各実施例において、研磨グリット上のAP1コーティングは、被覆されていないグリットと比較して、製品を水分から保護するのを改善した。AP処理された粒状物で作製された劣化製品の1分の切断は、処理されていない粒状物のものの140%である。劣化ホイールの摩耗速度は8〜15%に低下し、処理された粒状物を含む劣化ホイールの総合的性能(1分の切断/摩耗速度)は、処理されていない粒状物を使用して作製されたホイールのものの1.4〜1.75倍である。接着促進剤もまた、非劣化試料の性能を1.18〜1.25に改善した。
【0140】
実施例7
使用した研磨粒状物がSAP1−1Snの400g及びSAP2−1Snの800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0141】
実施例8
実施例5を繰り返した。
【0142】
実施例9
使用した研磨粒状物がSAP1−5Snの400g及びSAP2−5Snの800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0143】
実施例10
使用した研磨粒状物がSAP1−5Tiの400g及びSAP2−5Tiの800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0144】
実施例11
使用した研磨粒状物がSAP1−5NCの400g及びSAP2−5NCの800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0145】
実施例12
使用した研磨粒状物がSAP1−3Sn−SLの400g及びSAP2−3Sn−SLの800gであったことを除いて、実施例5を繰り返した。
【0146】
比較例H
実施例Fを繰り返した(使用した研磨粒状物はSAP1の400g及びSAP2の800gであった)。
【0147】
比較例I
実施例Fを繰り返した(使用した研磨粒状物はSAP1の400g及びSAP2の800gであった)。
【0148】
実施例7〜12及び比較例H〜Iに関する切断試験の結果を以下の表6に示す。測定値は3検体の平均を示す。
【表6】
【0149】
各実施例において、研磨グリット上のAP1コーティングは、被覆されていないグリットと比較して、製品を水分から保護するのを改善した。AP処理された粒状物で作製された劣化製品の1分の切断は、処理されていない粒状物を使用して作製された製品と比較して改善された。劣化ホイールの摩耗速度は低下した。粒状物上のAP1コーティング(実施例7〜8)の量は性能に対して有意な影響を有しており、AP1コーティングレベルが低いことが好ましい。触媒のタイプ及び使用(実施例9〜11)は、ホイールの総合的性能に対して影響を有さない。接着促進剤は、溶媒を用いずに使用したとき(実施例12)に有効に作用し、このことは製造プロセスをより単純なものにする。
【0150】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許及び特許出願は、一貫してその全文が参照によって本明細書に組み込まれるものとする。組み込まれた参照文献の一部分と本出願の一部分との間に不一致又は矛盾がある場合は、前述の説明の情報が優先されるものとする。前述の説明は、特許請求されている開示を当業者が実施することを可能にするために示されており、特許請求の範囲及びその全ての均等物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。