特許第6866376号(P6866376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866376
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】選択的に着色されたジルコニア被覆要素
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20210419BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20210419BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20210419BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20210419BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G04B37/22 J
   G04B19/06 B
   A44C25/00 Z
   A44C27/00
   A44C5/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-532124(P2018-532124)
(86)(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公表番号】特表2019-513221(P2019-513221A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2016078036
(87)【国際公開番号】WO2017102239
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】15201251.4
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】キュルショー,ロイク
(72)【発明者】
【氏名】フォール,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュプリンガー,ジーモン
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−72270(JP,A)
【文献】 特表2015−520372(JP,A)
【文献】 特開2007−261938(JP,A)
【文献】 特開平10−194834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−99/00
A44C 1/00−3/00
A44C 5/00−5/24
A44C 7/00−27/00
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用物品(1)のための被覆要素(10)であって、
前記被覆要素はジルコニア製である、被覆要素において、
前記被覆要素は、炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムのパターンを備えるジルコニア表面を有し、
前記表面は少なくとも1つの突出部分(17a)を備え、
前記表面は、炭化物又は窒化物に変換されるよう処理され、前記突出部分の前記変換を削除するために研磨される
ことを特徴とする、被覆要素。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆要素(10)を備える、携帯用物品。
【請求項3】
前記携帯用物品は、裏蓋(22)及び風防ガラス(3)で閉鎖された、ベゼルを備えるミドルケース(21)によって形成されたケース(2)を備える、時計であり、前記携帯用物品はまた、制御手段(24、24’)と、文字盤と、2対の角状部によって前記ミドルケースに取り付けられた、クラスプを有する手首ストラップ(4)とを備えること、
前記被覆要素は、前記ミドルケース、前記ベゼル、前記文字盤、前記制御手段、前記裏蓋、前記手首ストラップ及び前記クラスプを含むリスト内に含まれるよう選択されること
を特徴とする、請求項2に記載の携帯用物品。
【請求項4】
ジルコニア製の携帯用物品のための被覆要素(10)を処理するプロセスであって、
前記プロセスは:
・前記被覆要素を用意するステップ;
・前記被覆要素を、化学元素の原子が装入された雰囲気を内包する気密チャンバ内に配置して、前記被覆要素の表面を加熱することにより、前記チャンバの前記雰囲気に由来する前記原子を、第1の材料の表面に結合させる、前記被覆要素(10)を処理するステップ
を含み、
前記プロセスは、炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムのパターンを形成するために、前記被覆要素を構造形成するステップも含み、前記構造形成するステップは:
・前記被覆要素を処理する記ステップの前又は後に、記被覆要素の表面上に起伏(17)を形成すること
・前記被覆要素を処理する記ステップの後に、ジルコニアの色を露出させて、炭化又は窒化した前記表面とのコントラストを生成こと
をできるようにすることも含み、
前記プロセスはまた、前記被覆要素を処理する記ステップの前に前記被覆要素に起伏を形成することを実施する際に、前記ジルコニアの色を露出させることのために、前記被覆要素の、起伏を有する前記表面から突出した部分の炭化/窒化表面層を除去するための、前記被覆要素を処理する前記ステップの後に実施される研磨ステップを含む、処理プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆要素及びその製造プロセスに関し、上記被覆要素はジルコニアタイプのセラミック製であり、その色は選択的に改変される。
【背景技術】
【0002】
腕時計、宝飾品又はブレスレットといった、部分的にセラミック製の携帯用物品が公知である。公知のセラミックは、ジルコニアZrO2である。
【0003】
白色若しくは黒色の顔料によるバルク着染によって、又はジルコニアの表面を一定の深さにわたって炭化ジルコニウムの層に変換する炭化プロセスによる表面着染によって、このジルコニアを着色することが現在可能である。この炭化ジルコニウムの層は、被覆要素上に、白金のような色の輝く外観を付与する。
【0004】
更に、上記炭化プロセスと同様に、ジルコニアの表面を一定の深さにわたって窒化ジルコニウムに変換して、被覆要素上に黄金色に近い色の輝く外観を付与する、窒化プロセスが公知である。
【0005】
現在、着色済みジルコニア部品は均一に着染され、即ちある領域が着染されるのではなく表面全体が着染される。従って欠点は、現行の方法では色のバリエーションが実現できず、従って機能的又は審美的目的のパターンの生成が不可能であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、色のバリエーション及びこれに伴うパターンの生成が可能な、セラミック被覆要素及びその製造プロセスを提案することにより、従来技術の欠点を克服することである。
【0007】
この目的のために本発明は、第1の材料で作製された携帯用物品のための被覆要素に関し、上記第1の材料は、第1の色を有するセラミック材料であり、上記被覆要素は、上記被覆要素の少なくとも1つの表面が、上記第1の色とは異なる色を有する変換を呈するように少なくとも部分的に処理されることを特徴とする。
【0008】
本発明により、深さ方向に着色された被覆要素、即ち表面的でないために容易に消すことのできない着色を得ることができる。
【0009】
第1の実施形態では、上記第1の材料はジルコニアである。
【0010】
第2の実施形態では、上記表面を選択的に処理して炭化物に変換する。
【0011】
第3の実施形態では、上記表面を選択的に処理して窒化物に変換する。
【0012】
第4の実施形態では、局所的領域に金属堆積物が現れるように、上記表面を選択的に処理する。
【0013】
第5の実施形態では、上記表面は少なくとも1つの凹部を備え、上記表面を処理して炭化物又は窒化物に変換した後に研磨して、この変換を上記凹部に局在化させる。
【0014】
第6の実施形態では、上記表面は少なくとも1つの突出部分を備え上記表面を処理して炭化物又は窒化物に変換した後に研磨して、上記突出部分の上記変換を取り除く。
【0015】
第7の実施形態では、上記表面を炭化物又は窒化物に均一に変換した後、局所的に機械加工して、上記変換を未機械加工部分に局在化させる。
【0016】
第8の実施形態では、上記表面を選択的に処理して、上記被覆要素の上記表面上に顔料を拡散させる。
【0017】
本発明はまた、上述のような被覆要素を備える携帯用物品に関する。
【0018】
第1の実施形態では、上記携帯用物品は時計であり、上記時計は:ベゼル並びにボタン及び/又はクラウンを設けることができる、裏蓋及び風防ガラスで閉鎖されたミドルケースによって形成されたケース;並びに2対の角状部によって上記ミドルケースに取り付けられた手首ストラップを備え、上記被覆要素は、上記ミドルケース、ベゼル、文字盤、ボタン、クラウン、裏蓋、手首ストラップ及びバックルを含むリスト内に含まれるよう選択される。
【0019】
本発明はまた、第1の材料で作製された携帯用物品のための被覆要素を処理するプロセスに関し、上記第1の材料は、第1の色を有するセラミック材料であり、上記プロセスは以下のステップ:
・上記被覆要素を用意し、化学元素の原子が装入された雰囲気を内包する気密チャンバ内に配置するステップ;
・例えばレーザ等の第1の集束熱源によって、上記被覆要素の上記表面を局所的に加熱することによって、上記チャンバの上記雰囲気に由来する上記原子を、上記表面が加熱された部位において、上記第1の材料の上記表面と局所的に結合させるステップ
を含む。
【0020】
第1の実施形態では、上記雰囲気は、上記被覆要素の上記表面を局所的に加熱する上記熱源と同一の熱源によって、ガスを分解することによって生成される。
【0021】
第2の実施形態では、上記雰囲気は、上記被覆要素の上記表面を局所的に加熱する上記熱源とは独立した第2の熱源によって、ガスを分解することによって生成される。
【0022】
第3の実施形態では、上記雰囲気は、上記被覆要素の上記表面を局所的に加熱する上記第1の熱源とは独立した第2の熱源によって、ガスを分解することによって生成され、上記被覆要素は、第3の熱源によって、上記雰囲気に由来する上記原子が上記第1の材料と結合できる温度より低い温度で、均一に加熱され、上記第1の熱源は、上記被覆要素の上記表面の温度を局所的に上昇させることによって、上記雰囲気に由来する上記原子が上記第1の材料と結合できるようにする役割を果たす。
【0023】
第1の変形例では、上記プロセスは以下のステップ:
・上記被覆要素を用意するステップ;
・上記被覆要素の上記表面に金属層を局所的に堆積させるステップ;
・上記被覆要素を、化学元素の原子が装入された雰囲気を内包する気密チャンバ内に配置して、上記被覆要素の上記表面を加熱することにより、上記チャンバの上記雰囲気に由来する上記原子を、上記金属堆積物によって被覆されなかった上記第1の材料の上記表面に結合させるステップ
を含む。
【0024】
第1の実施形態では、上記プロセスはまた、上記被覆要素の上記表面を選択的に化学腐食して、上記被覆要素の上記表面の炭化又は窒化前に上記金属堆積物を局所的に除去することからなるステップを含む。
【0025】
第2の実施形態では、上記選択的な金属堆積物は、事前に上記被覆要素上に配置したマスクを通した堆積によって生成される。
【0026】
第3の実施形態では、選択的な金属層を堆積させることからなる上記ステップは、上記被覆要素の上記表面全体に犠牲層を堆積させることと、上記犠牲層を所望の形状に従って選択的にエッチングすることと、上記被覆要素の上記表面全体にわたって上記金属層を堆積させることとからなる。その後、残った上記犠牲層を化学腐食によって除去し、上記犠牲層が選択的にエッチングされた部位にだけ上記金属層を残す。
【0027】
第4の実施形態では、上記選択的な金属堆積物は、堆積と、それに続く上記被覆要素の上記表面のレーザ構造形成ステップによって生成される。
【0028】
第5の実施形態では、上記選択的な金属堆積物は、堆積と、それに続く上記被覆要素の上記表面のフォトリソグラフィステップによって生成される。
【0029】
第2の変形例では、上記プロセスは以下のステップ:
・上記被覆要素を用意するステップ;
・上記被覆要素を、化学元素の原子が装入された雰囲気を内包する気密チャンバ内に配置して、上記被覆要素の上記表面を加熱することにより、上記チャンバの上記雰囲気に由来する上記原子を、上記第1の材料の上記表面に結合させるステップ
を含み、上記プロセスは、上記被覆要素を処理することからなる上記ステップの前又は後に、上記被覆要素を構造形成して、上記被覆要素の表面上に起伏を形成できるようにするステップも含むことを特徴とする。
【0030】
第1の実施形態では、上記被覆要素に構造形成する上記ステップは、上記被覆要素の上記表面を処理することからなるステップの後に実施され、上記構造形成は、構造形成された領域上の上記犠牲層を除去することにより、上記ジルコニア被覆要素のコアの色を局所的に露出させる。
【0031】
第2の実施形態では、上記プロセスはまた、上記被覆要素の上記表面を処理することからなるステップの前に上記被覆要素に構造形成する上記ステップを実施する際に、上記被覆要素の、起伏を有する上記表面の上部の表面層を除去して、上記ジルコニア被覆要素のコアの色を局所的に露出させるための、研磨ステップを含む。
【0032】
第3の変形例では、上記プロセスは以下のステップ:
・上記被覆要素を用意するステップ;
・上記被覆要素の上記表面に、顔料を含む第2の材料を堆積させるステップ;
・上記被覆要素を加熱して、上記顔料を上記被覆要素の上記表面で溶融又は拡散させるステップ
を含む。
【0033】
第1の実施形態では、上記被覆要素を加熱することからなる上記ステップを、化学元素の原子が装入された雰囲気を内包する気密チャンバ内で、実施することにより、上記チャンバの上記雰囲気に由来する上記原子を、上記第2の材料によって被覆されなかった上記第1の材料の上記表面に結合させる。
【0034】
本発明の目的、利点及び特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態の、以下の詳細な説明からよりはっきりと明らかになるだろう。上記少なくとも1つの実施形態は、非限定的な例として与えられており、添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明による携帯用物品の概略図である。
図2図2は、本発明による携帯用物品の概略図である。
図3図3は、本発明によるプロセスの第1の実施形態の概略図である。
図4図4は、本発明によるプロセスの第1の実施形態の概略図である。
図5図5は、本発明によるプロセスの第1の実施形態の概略図である。
図6図6は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図7図7は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図8図8は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図9図9は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図10図10は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図11図11は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図12図12は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図13図13は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図14図14は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図15図15は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図16図16は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図17図17は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図18図18は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図19図19は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図20図20は、本発明によるプロセスの第2の実施形態の概略図である。
図21図21は、本発明によるプロセスの第3の実施形態の概略図である。
図22図22は、本発明によるプロセスの第3の実施形態の概略図である。
図23図23は、本発明によるプロセスの第4の実施形態の概略図である。
図24図24は、本発明によるプロセスの第4の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1、2は、本発明による携帯用物品1を示す。本発明による携帯用物品の一例は時計である。このような時計は、裏蓋22及び風防ガラス3で閉鎖されたミドルケース21で形成された、ケース2を備える。このケース2は、電子式又は機械式又は電子機械式時計ムーブメント5を内包する。この携帯用物品は、2つのバンド4’又は複数のリンクを備える手首ストラップ4も備えてよい。従って本発明による被覆要素は、ミドルケース、裏蓋、手首ストラップ、手首ストラップを閉鎖するために必要な折りたたみクラスプ又はバックル‐プロングを含むリストに含まれる。当然のことながら腕時計は、回転式であるか又は回転式ではない、ミドルケースに一体化されているか又は一体化されていないベゼル23、及びクラウンヘッド24又は押しボタン24’といった制御手段も備えてよい。ミドルケース21は、一体化された又は追加されたベゼルを備えてよい。
【0037】
本発明による被覆要素は第1の材料で作製される。この材料は、セラミックタイプのものが選択される。ここで使用されるセラミックは、酸化ジルコニウムZrO2であり、これはジルコニアとも呼ばれる。
【0038】
本発明によると有利には、このセラミック被覆要素10は表面処理される。この表面処理は、選択的なものとなるよう、即ち被覆要素が必ずしもその表面全体にわたって処理されないよう、実施される。この表面処理を用いて、色の多様性の改善を得ることができ、又はパターンによる装飾の可能性の向上を得ることができる。
【0039】
図3〜5で確認できる第1の実施形態では、本発明による処理は、レーザ等の集束熱源による被覆要素10の選択的炭化/窒化からなる。なお、炭化/窒化は、炭素又は窒素原子を装入された雰囲気内で部品を加熱することによって、炭化/窒化されることになる部品を活性化させることからなる。
【0040】
従って第1のステップは、処理されることになる被覆要素10を用意し、これをチャンバE内に配置することからなる。このチャンバEは気密封止されており、炭化又は窒化のいずれを実施するかに応じて炭素C又は窒素N原子を装入された雰囲気Aを内包する。炭素C又は窒素N原子を装入された上記雰囲気Aは、メタン、CH4、二窒素N2又はアンモニアNH3といった化合物の分解によって生成してよい。この分解は、ベースとなる化合物を加熱して分子結合を破壊し、原子雰囲気を得ることによって実施される。
【0041】
第2のステップは、選択領域10’の一部の表面を加熱することで活性化させることによって、被覆要素10を選択的に炭化又は窒化させることからなる。選択領域10’の上記表面を選択的に加熱できるようにするために、集束熱源S、例えばレーザビームLを提供するレーザを用いる。このレーザビームは、パルスレーザビームであることが好ましい。被覆要素10の表面を、領域10’において、700〜1100℃の温度で30〜180分の持続時間にわたって局所的に加熱する。この温度の影響下で、チャンバEの雰囲気Aの炭素又は窒素原子は、被覆要素10の領域10’のジルコニア表面と結合する。これは、被覆要素10の領域10’の表面の、10〜500nm程度の小さな厚さにわたる、それぞれ白金のような色又は黄金色に近い色の金属的な外観を有する炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムへの変換である。従ってこれは、炭化ジルコニウム/窒化ジルコニウムの結晶学的構造に対応する新しい結晶学的構造を与える、ジルコニアの構造の表面修飾であり、特に物品が過酷な摩擦条件又は衝撃にさらされた場合に物品の表面から剥がれやすい、又は取り外せるようになりやすい追加のコーティングではない。より詳細には、炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムの構造を有する表面層は、表面から、10〜500nmの深さまで延在する。
【0042】
上記様々なステップを実施するために、複数の実施態様を提供できる。
【0043】
第1の実施態様では、炭素C又は窒素N原子を装入された雰囲気を得るためのガスの分解、及び上記被覆要素10の表面の局所的活性化は、同一のレーザを用いる。
【0044】
第2の実施態様では、炭素C又は窒素N原子を装入された雰囲気を得るためのガスの分解を第1の熱源で実施し、上記被覆要素10の表面の局所的活性化は、レーザを用いる。
【0045】
第3の実施態様では、炭素C又は窒素N原子を装入された雰囲気を得るためのガスの分解を第1の熱源で実施し、被覆要素を第2の熱源で加熱するが、上記被覆要素の表面の局所的活性化は、レーザを用いる。この第3の実施態様により、被覆要素10の均一な予熱が可能となり、また集束熱源で処理した後の被覆要素10の表面の領域における温度差を小さくすることができる。
【0046】
この第1の実施形態の利点は、被覆要素10の表面の選択的活性化を容易に実現できることである。実際には、レーザビームは、調整可能なビーム直径を有するという利点を有する。
【0047】
図6〜20で確認できる第2の実施形態では、使用される原理は選択的金属化である。
【0048】
従って第1のステップは、被覆要素10を用意すること、及びその表面に金属化11を適用することからなる。この金属化11は選択的であり、即ち炭化又は窒化を望まない1つ以上の領域に対して実施される。この金属堆積物は例えば、クロム、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、チタン、ケイ素及びホウ素を含むリストからの材料から作製され、複数の実施態様に従って形成される。
【0049】
図7、8で確認できる第1の実施態様では、金属化は、被覆要素10の表面をマスク12でマスキングすること、及びそれに続く、物理蒸着(PVD)タイプのプロセスによる金属堆積によって実施される。よって、マスクで被覆されない領域Zのみが金属堆積11を受け取る。
【0050】
図9〜12で確認できる第2の実施態様では、金属化は、カプトンの層又はインク若しくはラッカー若しくは樹脂の層といった犠牲層13を被覆要素の表面に堆積させることによって実施される。次にこの層13を、所望の審美性に応じて選択的にエッチングし、アパーチャ13’を露出させる。続いて表面全体を、PVD蒸着によって金属層11で被覆するが、この層は、犠牲層13上、及び上記犠牲層に作製された凹部13’の両方に堆積される。最後に犠牲層13を化学腐食によって除去し、除去した犠牲層の凹部13’の部位に対応する領域Zにのみ、金属層11を残す。
【0051】
図13〜15で確認できる第3の実施態様では、選択的な金属堆積物は、金属11を被覆要素10の表面全体にわたって堆積させ、続いてレーザ等の集束熱源Sを用いて、堆積させた金属層11に構造形成することからなる。この構造形成は、被覆要素10の表面を剥がして、望ましくない部位において金属層11を除去し、所望の領域Zに金属層11を残すことからなる。
【0052】
図16〜18で確認できる第4の実施態様では、選択的な金属堆積物は、被覆要素10の表面全体にわたって金属を堆積させることからなる。これに続いて、マスク12を用いたフォトリソグラフィステップを用いて、堆積させた金属層を局所的に修飾する。この局所的修飾の後に、化学腐食ステップを行い、これにより、望ましくない部位において金属層11を除去し、所望の領域Zに金属層11を残す。
【0053】
この金属堆積を実施した後、次のステップは、被覆要素10をその表面の領域Zにおいて金属層11で炭化又は窒化することからなる。この目的のために、図19に示すように、被覆要素10を、炭素C又は窒素N原子が装入された雰囲気Aを内包するチャンバE内に配置する。次にアセンブリ全体を、欧州特許第0850900号に記載のプラズマ技法を用いて加熱する。この場合、金属堆積物11は、図20で確認できるように、この金属層11によって被覆された領域の炭化/窒化を防止して、被覆されていない領域10’の変換を可能とする、シールドの役割を果たす。
【0054】
被覆要素10が白色ジルコニア製である場合、上記炭化/窒化中に発生する還元により、PVD層の下のジルコニアに、灰色の外観が発生する。黒色ジルコニアの場合、被覆要素10はその黒色を保持し、これにより、金属堆積物11を科学的に溶解させて黒色ジルコニアを露出させる追加のステップが可能となる。これにより、黒色ジルコニアと、炭化又は窒化された被覆要素10との間でコントラストが得られる。
【0055】
図21、22で確認できる第3の実施形態では、被覆要素10の選択的な着色は、炭化/窒化の原理及び構造形成の原理を用いる。
【0056】
図21で確認できる第1の実施態様では、第1のステップは、ジルコニア被覆要素10を用意することからなる。好ましくは、使用されるジルコニアは黒色ジルコニアである。この第1のステップはまた、この被覆要素に構造形成することからなる。この構造形成は、2つの異なる方法、即ち:被覆要素の製造中、又はこの製造の後に実施してよい。これらの構造形成物17は、へこみ17b又は突出部分17aの形状である。
【0057】
被覆要素10の製造中に構造形成を実施する場合、この製造は、複数の粉体を混合し、これらを鋳型内に入れて焼結する、即ち変換が発生するような温度及び圧力に曝露することからなることが理解されるだろう。よって、粉体が入れられる鋳型は、所望の構造形成物17を含む形状を有してよい。
【0058】
構造形成を被覆要素10の製造後に実施する場合、機械的な又はレーザによる機械加工を想定できる。
【0059】
第2のステップでは、被覆要素を炭化又は窒化する。この目的のために、構造形成済み被覆要素10を、炭素又は窒素原子が装入された雰囲気Aを内包するチャンバE内に配置する。次にアセンブリ全体を、所定の持続時間にわたってプラズマで加熱することにより、被覆要素の表面をそれぞれ炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムに変換する。従ってこの炭化/窒化は、被覆要素10の表面全体にわたって実施される。
【0060】
第3のステップでは、被覆要素10を研磨ステップに供する。この研磨ステップは、被覆要素の表面層を除去することからなる。被覆要素は、へこみ17b又は突出部分17aの形状の構造形成物17を備え、これらのへこみ17b又は突出部分17aもまた炭化/窒化される。その結果、研磨は被覆要素10の表面全体に影響を及ぼさなくなる。実際には、構造形成物17が凹部17bである場合、研磨動作は、凹部内に炭化/窒化部分を残す。構造形成物17が突出部分17aである場合、研磨動作は、これらの突出部分17aにおいて炭化/窒化部分を除去する。
【0061】
よって、被覆要素10の研磨された部分と、炭化/窒化済み部分との間で、コントラストが得られる。
【0062】
図22で確認できる第2の実施態様では、第1のステップは、ジルコニア被覆要素10を用意することからなる。
【0063】
第2のステップでは、上記被覆要素を炭化/窒化させる。この目的のために、構造形成済みの被覆要素10を、炭素又は窒素原子が装入された雰囲気Aを内包するチャンバE内に配置する。次にアセンブリ全体を、所定の持続時間にわたってプラズマで加熱することにより、被覆要素の表面をそれぞれ炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムに変換する。従ってこの炭化/窒化は、被覆要素10の表面全体にわたって実施される。
【0064】
第3のステップでは、被覆要素10を構造形成ステップに供する。この目的のために、機械的な又はレーザによる機械加工を使用する。炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムに変換された10〜500nmの表面層のみを局所的に除去するように、材料を除去してよい。しかしながら、材料を除去することにより、視認できる凹部を形成して、コントラストを起伏と結び付けることもでき、この起伏は上記コントラストを強調できる。
【0065】
図23及び24で確認できる第4の実施形態では、被覆要素10の選択的着色は、例えばエナメル又はインクである顔料を使用する。この実施形態は第1のステップにおいて、被覆要素10を用意することからなる。
【0066】
第2のステップでは、色付きのエナメル又はインク16を用意する必要がある。これらのエナメルは、色付きの顔料の粉体を含む油脂の形態である。
【0067】
これらのインク又はエナメル16を、所望のパターンに従って被覆要素10の表面上に配置する。この目的のために、印刷機を使用する。
【0068】
第3のステップでは、インク又はエナメル16が選択的に堆積された被覆要素10を拡散ステップに供する。この拡散ステップは、被覆要素を加熱して色を固定することからなる。
【0069】
第1の実施態様では、拡散ステップは、色を固定するためのアニーリングからなる。このアニーリングは、被覆要素をオーブンに入れることからなる。エナメルに関しては、オーブンの温度はおよそ800℃に達する。この温度において、顔料が懸濁された油脂が蒸発し、その一方で顔料が被覆要素の表面において溶融するか、又は被覆要素の表面に拡散する。
【0070】
第2の実施態様では、拡散ステップは炭化/窒化からなる。そしてこのステップは、炭化又は窒化のいずれを実施するかに応じて、インク又はエナメル16が選択的に堆積された被覆要素を、気密封止され、炭素C又は窒素N原子が装入された雰囲気Aを内包するチャンバE内に配置することからなる。上記部品の表面を、所定の持続時間にわたって700〜1100℃でプラズマ加熱することによって活性化する。この温度の影響下では、チャンバEの雰囲気Aの炭素又は窒素原子は、被覆要素10のジルコニア表面と結合する。これは10〜500nm程度の小さな厚さにわたる被覆要素の変換であり、被覆要素の外側領域のジルコニア(酸化ジルコニウム)が、それぞれ白金のような色又は黄金色に近い色の金属的な外観を有する、炭化ジルコニウム又は窒化ジルコニウムに変換される。同時に、オーブンからの熱によりインク又はエナメル16を加熱して、被覆要素10の表面においてこれらを溶融させるか、又は被覆要素10の表面にこれらを拡散させることができる。このようにして、図24で確認できるように、表面が領域10’において炭化又は窒化され、インク又はエナメル16が堆積した領域において着色された、被覆要素10が得られる。
【0071】
有利なことに、この技法により、炭化/窒化部分と着色部分との間のコントラストを得ることができる。
【0072】
添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上で提示した本発明の様々な実施形態に対して、当業者には明らかな様々な修正及び/又は改善及び/又は組み合わせを導入してよいことが理解されるだろう。
【0073】
よって、上記被覆要素を、その表面上の様々な位置において処理できることが理解されるだろう。
図1
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